hellog〜英語史ブログ

#5420. 保坂道雄(著)『文法化する英語』(開拓社,2014年) --- 英語の文法化の入門書[toc][review][grammaticalisation]

2024-02-28


保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.



 英語の文法化 (grammaticalisation) を学び始めたいという方に,標題の入門書をお薦めします.こちらの本については,先日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でも取り上げました.「#1001. 英語の文法化について知りたいなら --- 保坂道雄(著)『文法化する英語』(開拓社,2014年)」です.ぜひお聴きください.



 今朝配信した heldio でも「#1003. There is an apple on the table. --- 主語はどれ?」と題して,本書を参照しながら存在構文の謎についてのお話しをお届けしています.最近の heldio では他にも文法化にまつわる話題をシリーズで配信していますので「#5411. heldio で「文法化」を導入するシリーズをお届けしました」 ([2024-02-19-1]) のリンク集もご参照ください.
 さて,『文法化する英語』で取り上げられている英語史上の文法化の事例はたいへんに豊富です.しかも重要な文法項目ばかりです.以下に掲げる目次を見ればわかるかと思います.



 はしがき
 第1章 文法化と英語
   1. はじめに
   2. 文法化とは何か
   3. 英語の構造
   4. 英語の歴史
   5. 文法化を動かす「見えざる手」
 第2章 冠詞の文法化
   1. はじめに
   2. 不定冠詞の歴史
   3. 定冠詞の歴史
   4. 冠詞の出現と文法化
 第3章 存在構文における there の文法化
   1. はじめに
   2. There 構文の発達
   3. 虚辞 there の出現と文法化
 第4章 所有格の標識 -'s の文法化
   1. はじめに
   2. 所有格の標識 -'s の文法化
   3. of 属格の発達
 第5章 接続詞の文法化
   1. はじめに
   2. 並列構造から従属構造へ
    2.1. 古英語における従属構造の発達
    2.2. 多様な接続詞の発達
   3. 接続詞の文法化
 第6章 関係代名詞の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の関係代名詞
   3. 関係代名詞 that の文法化
   4. WH 関係代名詞の発達
 第7章 再帰代名詞の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の再帰代名詞
   3. 再帰代名詞の文法化
 第8章 助動詞 DO の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の疑問文と否定文
   3. DO の文法化
 第9章 法助動詞の文法化
   1. はじめに
   2. 現代英語の法助動詞
   3. 法助動詞の文法化
 第10章 不定詞標識 to の文法化と準助動詞の発達
   1. はじめに
   2. 不定詞標識 to の文法化
   3. for + 名詞句 + to 不定詞の発達
   4. 準助動詞の文法化
    4.1. be going to の文法化
    4.2. have to の文法化
 第11章 進行形の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の進行表現
   3. 進行形の文法化
 第12章 完了形の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の完了表現
    2.1. HAVE 完了形
    2.2. BE 完了形
   3. 完了形の文法化
 第13章 受動態の文法化
   1. はじめに
   2. 受動態の発達
   3. 受動態の文法化
   4. 二重目的語構文の受動態について
 第14章 形式主語 it の文法化
   1. はじめに
   2. 非人称構文の衰退
   3. 虚辞 it の文法化
 第15章 文法化と言語進化
   1. はじめに
   2. 英語の多様な文法化
   3. 文法化と構造変化
   4. 言語の小進化
   5. 英語の格と語順
   6. おわりに
 主要作品略語表
 参考文献
 さらなる研究のために
 索引




 本書は,この hellog でも何度か参照してきました.以下の記事もご覧いただければと思います.いずれにせよ『文法化する英語』は英語史の視点からの文法化の入門書としてイチオシです.

 ・ 「#2144. 冠詞の発達と機能範疇の創発」 ([2015-03-11-1])
 ・ 「#2146. 英語史の統語変化は,語彙投射構造の機能投射構造への外適応である」 ([2015-03-13-1])
 ・ 「#2490. 完了構文「have + 過去分詞」の起源と発達」 ([2016-02-20-1])
 ・ 「#3669. ゼミのグループ研究のための取っ掛かり書誌」 ([2019-05-14-1])
 ・ 「#5132. なぜ be going to は未来を意味するの? --- 「文法化」という観点から素朴な疑問に迫る」 ([2023-05-16-1])

 ・ 保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.

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