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heldio - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-25 12:19

2023-08-14 Mon

#5222. 「英語は(私にとって)○○である」 --- heldio リスナーさんから寄せられた回答集 [voicy][heldio][notice][khelf][metaphor][conceptual_metaphor]

 「#5219. あなたにとって英語とは? --- 明後日8月13日(日)19:00--20:00 の Voicy heldio 生放送企画のお知らせ」 ([2023-08-11-1]) でご案内した通り,昨晩,khelf(慶應英語史フォーラム)協賛のイベントとして,heldio 生放送をお届けしました.ライヴで聴取・参加いただいたリスナーの皆さん,ありがとうございました.英語は世界の多くの人々が共有するコミュニケーションの道具ではありますが,それを学び,用いている個々人の英語に対する思いは本当にそれぞれですね.皆さん一人ひとりが異なる英語観をもって英語と付き合っていることがよく分かりましたし,何よりも各回答の心に関心してしまいました.
 1時間弱の生放送の様子は,今朝の通常配信としてアーカイヴに置いてあります.「#805. 「英語は○○である」 ― あなたにとって英語とはなんですか?(生放送)」をお聴き下さい.



 今回の呼びかけと関連する最近の関連過去回も挙げておきます.

 ・ 「【英語史の輪 #18】「英語は(私にとって)○○です」企画の発進」
 ・ 「【英語史の輪 #19】「私にとって英語は○○です」お披露目会
 ・ 「#800. 「英語は(私にとって)○○です」を募集します --- (日)の生放送に向けたリスナー参加型企画」
 ・ 「#803. 中山匡美先生にとって英語とは何ですか? --- 「英語は○○です」企画の関連対談回」
 ・ 「#804. 今晩7時の生放送を念頭に英語学者4名に尋ねてみました「あなたにとって英語とは何?」 --- 尾崎萌子さん,金田拓さん,まさにゃんとの対談」

 今回リスナーの皆さんから寄せられた回答(とその心)は,主にこちらこちらのコメント欄に集まっています.以下にざっと回答を一覧しておきます(本当はもっと書き込まれているので,ここに示したのは抜粋にすぎません).回答の多くには「私にとって」が付されていましたが,ここでは一律に省いて提示しています.

 ・ 英語はナビゲータである
 ・ 英語は手がかりである
 ・ 英語(学習)は大ベストセラー本である
 ・ 英語は料理である
 ・ 英語はアクセサリーである
 ・ 英語とは飴玉の一つである
 ・ 英語は対岸の街である.
 ・ 英語は「気になるアイツ」である
 ・ 英語は「自己肯定感」である
 ・ 英語は「宿命」である,あるいは「神様のいたずら」である
 ・ 英語は腐れ縁の幼なじみである
 ・ 英語は言葉の捉え方を激変させた「味変(あじへん)スパイス」のような存在である
 ・ 英語とは「終わりのない旅~Never Ending Journey」である
 ・ 英語とは「日本刀」のようなものである
 ・ 英語は好奇心への扉である
 ・ 英語は「未知との遭遇」である
 ・ 英語はA語である
 ・ 英語はバイキング料理である
 ・ 英語は二台目の捨象装置である
 ・ 英語は「第二母語」である
 ・ 英語は私のこどもたちの第一言語である
 ・ 英語は「人生を変えたもの」である
 ・ 英語は多くの日本人にとって「眠れる獅子」である
 ・ 英語は鍵である
 ・ 英語は人間が世界を頭で理解するのではなく心で感じる経験を与えてくれるものである
 ・ 英語は使っている言語の語彙の説明を上達させてくれるものである
 ・ 英語学習は下りエスカレーターを登る様なものである
 ・ 英語とは「生きる糧」である
 ・ 英語は筋肉である
 ・ 英語は歴史的存在である
 ・ 英語は糊である
 ・ 英語は海苔である
 ・ 英語はノリである
 ・ 英語は則(のり)である
 ・ 英語は宣り(のり)である
 ・ 英語は,大木の奥まったところから細々と生えていたのに途中から急にどんどん太く成長して,先端は一番日当たりのいいところまで伸びている妙な枝である
 ・ 英語学習はダイエットである
 ・ 英語は不思議な樹である
 ・ 英語は「ずっと気になっているカッコいい同級生」である
 ・ 英語は親友である
 ・ 英語は憧れであり葛藤であり片思いである
 ・ 英語は打ち込めるゲームである
 ・ 英語は杖である
 ・ 英語は永遠の憧れである
 ・ 英語は現代日本人の教養である
 ・ 英語は私にとって生涯の趣味である
 ・ 英語はコンプレックス商法の恰好の商材である
 ・ 英語は人格である
 ・ 英語(学習)とは鏡である
 ・ 英語はアイドル(偶像)である
 ・ 英語は会いに行けるアイドル」 (AKB48) である
 ・ 英語は(日本語話者にとって)一番やさしい第二言語です
 ・ 英語とは美空ひばりである
 ・ 英語とは人生の中で見つけた青い鳥である
 ・ 英語は徳川家康である
 ・ 英語はピアノである
 ・ 英語は「別れても好きな人」である
 ・ 英語は許嫁である
 ・ 英語は人間関係である
 ・ 英語はドイツ語の姉妹言語である

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2023-08-11 Fri

#5219. あなたにとって英語とは? --- 明後日8月13日(日)19:00--20:00 の Voicy heldio 生放送企画のお知らせ [voicy][heldio][khelf][notice]



 一昨日の8月9日に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で,「#800. 「英語は(私にとって)○○です」を募集します --- (日)の生放送に向けたリスナー参加型企画」を配信しました.
 リスナーの皆さんに「あなたにとって英語とはどんな存在ですか?」と問いかけ,コメント欄を通じて答えを募る企画です.khelf(慶應英語史フォーラム)協賛のイベントです.
 回答への呼びかけから2日経ちましたがが,リスナーの方から多くのコメントが寄せられています.「英語は(私にとって)○○です」というフォーマットに必ずしも当てはまらなくてもかまいませんので,そう考える理由や根拠なども添えて,自由にご回答いただければ幸いです.
 今日,明日と皆さんからのさらなる回答を待ち,明後日8月12日(日) 19:00--20:00 に,寄せられた回答を読み上げつつ皆で鑑賞し愛でるという heldio 生放送のイベントを開催する予定です.
 英語に対する思いは十人十色だと思います.様々な「英語観」があり得るということを互いに理解していけば,それだけ英語学習・教育をめぐる議論も円滑になりますし,本ブログでいつも話題にしている「英語史」を学ぶ意義にも幅が出てくるものと期待します.
 ぜひ皆さんの考える「英語とは何か?」へ回答をお寄せ下さい.こちらからどうぞ.

Referrer (Inside): [2023-08-14-1]

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2023-08-09 Wed

#5217. 「名前プロジェクト」が立ち上がりました [voicy][heldio][name_project][onomastics][notice]

 8月7日(月)に,仲間3名とともに「名前プロジェクト」なるものを立ち上げました.主に英語史・言語学の観点から「名前」について議論していこうという企画です.向こう数ヶ月間,本ブログや Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」などで関連するコンテンツを公開していくほか,様々なイベントも開催していく予定です.khelf(慶應英語史フォーラム)にも協力を仰いで,「名前」をめぐる議論を盛り上げていきたいと思っています.本ブログをお読みの皆さんも,ぜひ伴走していただければ.
 プロジェクトを進めていく主たるメンバーは,私を含めて4名となります.3名はすでに heldio などではお馴染みの方々です.

 ・ 小河舜さん(フェリス女学院大学ほか)
 ・ 矢冨弘さん(熊本学園大学)
 ・ 五所万実さん(目白大学)

 プロジェクト立ち上げの4人がオンラインで集結した際に収録した座談会ぽいものを,昨日の heldio で配信しました.「#799. 「名前プロジェクト」立ち上げ記念収録 with 小河舜さん,矢冨弘さん,五所万実さん」(30分ほどの長さ)をお聴き下さい.



 一言で「名前」といっても,カバーする範囲はきわめて広いです.そもそも「名前」とは何ぞや,というところから始まり,意外とたいへんです.また,言語によっても「名前」の捉え方が異なる場合もあります.
 言語学の下位分野として onomastics固有名詞学」という領域があります(私は本当は「名前学」と呼びたいところです).これについては,すでに本ブログでも onomastics の多くの記事で書いてきましたので,ぜひご一読ください.とりわけ以下の記事をお勧めします.

 ・ 「#5187. 固有名詞学のハンドブック」 ([2023-07-10-1])
 ・ 「#5189. 固有名詞学の守備範囲」 ([2023-07-12-1])
 ・ 「#5191. 「名前」とは何か?」 ([2023-07-14-1])

 ぜひこれからの「名前プロジェクト」の動向にご注目ください.

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2023-08-08 Tue

#5216. Beowulf について専門家にアレコレ尋ねてみました [beowulf][oe][literature][voicy][heldio][manuscript][rhetoric]

 先日の hellog 「#5206. Beowulf の冒頭11行を音読」 ([2023-07-29-1]) や Voicy heldio 「#783. 古英詩の傑作『ベオウルフ』 (Beowulf) --- 唐澤一友さん,和田忍さん,小河舜さんと飲みながらご紹介」を通じて,古英語で書かれた代表的な英雄詩 Beowulf に関心をもたれた方もいるかと思います.
 前回に引き続き,古英語を専門とする唐澤一友氏(立教大学),和田忍氏(駿河台大学),小河舜氏(フェリス女学院大学ほか)の3名と,酒を交わしながら Beowulf 談義を繰り広げました.とりわけこの作品の専門家である唐澤氏に,Beowulf はいかにして現代に伝わってきたのか,その言葉遣いの特徴は何か,その物語はいつ成立したのか等の質問を投げかけ,回答をいただきました.
 本編のみで40分ほどの長尺となっており(しかも終わりの方は少々荒れてい)ますが,時間のあるときにお聴きいただければ.

 ・ heldio 「#797. 唐澤一友さんに Beowulf のことを何でも質問してみました with 和田忍さん and 小河舜さん」



 この作品に関心を抱いた方は,本ブログの beowulf の各記事もご覧下さい.

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2023-08-07 Mon

#5215. 句動詞から品詞転換した(ようにみえる)名詞・形容詞の一覧 [dictionary][lexicography][phrasal_verb][conversion][punctuation][hyphen][gerund][voicy][heldio]

 「#5213. 句動詞の品詞転換と ODPV」 ([2023-08-05-1]),「#5214. 句動詞の品詞転換と ODPV (2)」 ([2023-08-06-1]) を受けて,Oxford Dictionary of Phrasal Verbs (= ODPV) の巻末 (514--17) に挙げられている表記の語の一覧を再現する.数えてみると372件あった.ただし,これも氷山の一角なのだろうと思う.
 関連して今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で,この話題と間接的に関わる「#798. outbreak か breakout か --- 動詞と不変化詞の位置をめぐる問題」を配信したので,お聴きいただければ.



 以下の一覧に挙がっているほぼすべての語が「動詞+不変化詞」の語形成となっているが,upliftupturn のみが「不変化詞+動詞」となっている.この2語は各々 a1845, 1868 が初出となっており,歴史的にいえば「不変化詞+動詞」の語形成として遅めの造語ということになる.



back-up
balls-up
bawling-out
beating-up
blackout/black-out
blast-off
blowout
blowout (main entry)
blowing-up
blow-up
botch-up
(a) breakaway (group)
(a) break-away (state)
break-back
breakdown
break-in
break-out
breakthrough
break-up
brew-up
brush(-)down
brush-off
build-up
bust-up
bust-up (main entry)
call(ing)-up
carry-on
carryings-on
carve-up
castaway
cast-off
cave-in
change-down
change-over
change-up
check-in
check-out
check-over
check-through
check-up
clamp-down
clawback
clean-out
clean-up
clear-up
climb-down
clip-on (ear-rings)
clock-in (time)
clock-off (time)
clock-on (time)
clock-out (time)
close-down
cock-up
come-back
come-back (main entry)
come-down (main entry)
come-hither (look) (main entry)
come-on
cop-out
count-down
cover-up
crack-down
crack-up
crossing(s)-out
cut-away
cut-back
cut-off
cut-out
die-back
dig-in
doss-down
downpour
drawback (main entry)
dressing-down
drive-in (main entry)
drop-out
drying-up
fade-out
falling-off
fall-out (main entry)
feedback
fight-back
fill-up
fit-up
flare-up
flashback (main entry)
flick(-)through
flip(-)through
flyover (main entry)
flypast
follow-on
follow-through
follow-up
foul-up
frame-up
freak-out
freeze-off
freeze-up
freshen-up
fuck-up
gadabout
getaway (main entry)
get-together
get-up
give-away
glance-over/through
(the) go-ahead (to do sth)
(a) go-ahead (organization)
go-between (main entry)
go-by (main entry)
goings-on (main entry)
going-over (main entry)
hand-me-down(s)
hand-off
hand-out
hand-over
hang-out
hangover/hung over (main entry)
hang-up/hung up (main entry)
hideaway
hold-up, holdup
hook-up/hooked up (main entry)
hose down
hush-up
jump-off
kick-back
kick-off
kip-down
knockabout (main entry)
knock-down, knockdown (price)
knock-down, knockdown (furniture)
knock-on
knock-on effect (main entry)
knock-out
knock-up
lace-up(s)
layabout (main entry)
laybay (main entry)
lay-off
lay-out
lead-in
lead-off
leaf-through
leaseback
left-over(s)
let-down
let-out
let-up
lie-down
lie-in
lift-off
lift-up
limber-up
line-out (main entry)
line-up
listen-in
(a) live-in (maid)
(a) living-out (allowance)
lock-out
lock-up (main entry)
(a) look about/around/round
look-in (main entry)
looker(s)-on
look-out
(be sb's) look-out (main entry)
look-over
(a) look round
look-through
make-up
makeshift(s)
march-past
mark-down
mark-up
marry-up
meltdown (main entry)
mess-up
mix-up
mock-up (main entry)
(a) mop-up (operation)
muck-up
(a) nose(-)about/around/round
offprint
onlooker(s)
outbreak
outcast
outlay
output
overspill
passer(s)-by
paste-up
pay-off, payoff
peel-off
phone-in
pick-me-up
pick-up
pick-up (truck) (main entry)
pile-up
pile-up (main entry)
pin-up (main entry)
play-back
play-off
(a) poke(-)about/around
(a) pop-up (book)
(a) potter(-)about/around
print-off
print-out
pull-in
(a) pull-out (section)
pull-up
punch-up
push-off
pushover (main entry)
put-down
(a) put-down (point)
(a) put-up (bed)
quickening-up
(a) rake(-)about/around/round
rake-off
rake(-)round
rave-up
read-through
read-through (main entry)
riffle(-)through
rig-out
rinse-out
rip-off
roll-on/roll-off (main entry)
roll-up (main entry)
round-up
rub-down
rub-up
runabout (main entry)
run-around (main entry)
runaway (children)
runaway (main entry)
(a) runaway (marriage)
(a) runaway (victory)
run-down
run-down (main entry)
run-in (with) (main entry)
run-off
run-through
run-up
(a) scout-about/around
(a) see-through (blouse etc)
seize-up
sell-off
sell-out
sell-out/sold-out (main entry)
send-off (main entry)
send-up
setback
set-to
set-up
setback
set-to
set-up
set-up (main entry)
shake-down
shake-out
shake-up
share-out
shoot-out
(a) shop around
show-down (main entry)
show-off
shut-down
sit-down
sit-down (demonstration/strike) (main entry)
sit-in
skim-through
sleep-in
(a) sleep-in (nanny)
slip-up
smash-up
snarl-up
snoop(-)about/around/round
speed-up
spin-off (main entry)
splash-down
(a) spring-back (binder)
stack-up
stake-out
standby
stand-in
stand-off (main entry)
stand-to
stand-up comedian/comic (main entry)
start-up (capital)
step-up
(a) stick-on (label)
stick-up
stitch-up
stop-over
stowaway
strip-down
summing-up
sun-up
swab(-)out
sweep-out
sweep-up
swill-out
swing-round
switch-over
tailback
take-away
take-home (pay)
take-off
take-out
take-up
talk-in (main entry)
talk-through
teach-in (main entry)
tearaway (main entry)
tee off (main entry)
telling(s)-off
(a) through-away (can)
(a) throw-away (remark)
throw-back
throw-back (main entry)
throw-in
throw-out
(a) thumb(-)through
ticking(s)-off
tick-over
tidy-up
tie-up/tied up (main entry)
tip-off
(a) tip-up (seat)
top-up
toss-up
touch-down
trade-in
trade-off
try-on
try-out
turnabout
turn-around
turndown
turn-off
turn-on
turn-out
turn-over
turn-over (main entry)
turn-round
turn-up(s) (main entry)
turn-up for the books (main entry)
upturn
uplift
(a) wake-up (call)
walkabout (main entry)
walk on (main entry)
(a) walk-on (part)
walk-out
walk-over
walk-through
warm-up
wash-down
wash-out
wash-out (main entry)
watch-out
weigh-in
whip-round (main entry)
wind-up
wipe-down
wipe-over
work-in (main entry)
work-out (main entry)
write-in (main entry)
write-off
write-up
(a) zip-up (jacket)




 ・ Cowie, A. P. and R Mackin, comps. Oxford Dictionary of Phrasal Verbs. Oxford: OUP, 1993.

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2023-08-05 Sat

#5213. 句動詞の品詞転換と ODPV [dictionary][lexicography][phrasal_verb][conversion][voicy][heldio]

 句動詞 (phrasal_verb) の品詞転換 (conversion) について,今朝の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で取り上げました.「#796. get-together, giveaway --- 句動詞の品詞転換」をお聴き下さい.



 配信のなかで触れた Oxford Dictionary of Phrasal Verbs (= ODPV) について紹介します.新版も出ているようですが,配信のために私が参照したのは1993年版のこちらでした.


Cowie, A. P. and R Mackin, comps. ''Oxford Dictionary of Phrasal Verbs''. Oxford: OUP, 1993.



 この辞書の巻末 (514--17) に句動詞が品詞転換してできた多くの名詞(ときに形容詞)が一覧されています.400個近くあるのではないでしょうか.出版から20年経っていますが,現在までに品詞転換した句動詞も少なくないものと想像されます.
 句動詞の品詞転換については,本ブログでも以下の記事で触れていますのでご参照下さい.
 
 ・ 「#420. 20世紀後半にはやった二つの語形成」 ([2010-06-21-1])
 ・ 「#1695. 句動詞の品詞転換」 ([2013-12-17-1])

 また,句動詞に限らず一般の品詞転換の話題については,本ブログの記事としては conversion を,heldio の配信回としてはこの辺りをお訪ねいただければ.

 ・ Cowie, A. P. and R Mackin, comps. Oxford Dictionary of Phrasal Verbs. Oxford: OUP, 1993.

Referrer (Inside): [2023-08-07-1] [2023-08-06-1]

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2023-08-02 Wed

#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年) [notice][review][etymology][voicy][heldio][yurugengogakuradio][youtube][link][kenkyusha][kdee]


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.



 日々の hellog 記事の執筆のためにも,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の収録のためにも,標題の『英語語源辞典』を引かない日は私にとってないと言い切ってよいと思います(もう1つ引かないことがないのは OED).
 先日,「ゆる言語学ラジオ」への出演,および田辺春美先生(成蹊大学)との Voicy 対談の2回にわたり,英語の語源に関心のある方々に向けて『英語語源辞典』を強く推奨しました.それぞれ YouTube 「英単語帳の語源を全部知るために,研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」(とりわけ49分30秒辺りから)と Voicy 「#787. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)のスゴさをご紹介 --- 田辺春美先生との対談」です.ぜひご視聴ください.



 この『英語語源辞典』と関連して,昨日 「研究社note」より「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」と題する興味深い記事が公開されました.研究社編集部の N. A. さんが,元研究社印刷社長の小酒井英一郎さんにインタビューして執筆された記事です.



 『英語語源辞典』制作の裏側について,知らないことばかりで驚きました.例えば:

 ・ 研究社最後の活字で組版された辞典
 ・ 17年近い年月をかけて編纂された辞典
 ・ 使用した活字は,本が刷り終わったら全部溶かす(保管場所も文字も足りなくなるので)

 制作に携わったすべての方々に改めて感謝しつつ,今日も『英語語源辞典』をめくっていきたいと思います.
 hellog の語源(辞典)関連の記事は数多くありますが,以下に主だったものを抜き出します.ご参考までに.

 ・ 「#600. 英語語源辞書の書誌」 ([2010-12-18-1])
 ・ 「#1765. 日本で充実している英語語源学と Klein の英語語源辞典」 ([2014-02-25-1])
 ・ 「#485. 語源を知るためのオンライン辞書」 ([2010-08-25-1])

 ・ 「#5051. 語源を利用した英語ボキャビルのために hellog と heldio の活用を!」 ([2023-02-24-1])
 ・ 「#3546. 英語史や語源から英単語を学びたいなら,これが基本知識」 ([2019-01-11-1])
 ・ 「#3696. ボキャビルのための「最も役に立つ25の語のパーツ」」 ([2019-06-10-1])
 ・ 「#3698. 語源学習法のすゝめ」 ([2019-06-12-1])
 ・ 「#4360. 英単語の語源を調べたい/学びたいときには」 ([2021-04-04-1])
 ・ 「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1])(←5年前に『英語語源辞典』にも注目しつつ英語語源講座を開いたことがあります)

 ・ 「#466. 語源学は技芸か科学か」 ([2010-08-06-1])
 ・ 「#727. 語源学の自律性」 ([2011-04-24-1])
 ・ 「#1791. 語源学は技芸が科学か (2)」 ([2014-03-23-1])
 ・ 「#598. 英語語源学の略史 (1)」 ([2010-12-16-1])
 ・ 「#599. 英語語源学の略史 (2)」 ([2010-12-17-1])

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2023-07-31 Mon

#5208. 田辺春美先生と17世紀の英文法について対談しました [voicy][heldio][review][corpus][emode][syntax][phrasal_verb][subjunctive][complementation]


秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.



 6月に開拓社より近代英語期の文法変化に焦点を当てた『近代英語における文法的・構文的変化』が出版されました.秋元実治先生(青山学院大学名誉教授)による編著です.6名の研究者の各々が,15--20世紀の各世紀の英文法およびその変化について執筆しています.
 このたび,本書の第3章「17世紀の文法的・構文的変化」の執筆を担当された田辺春美先生(成蹊大学)と,Voicy heldio での対談が実現しました.17世紀は英語史上やや地味な時代ではありますが,着実に変化が進行していた重要な世紀です.ことさらに取り上げられることが少ない世紀ですので,今回の対談はむしろ貴重です.「#790. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 田辺春美先生との対談」をお聴き下さい(21分ほどの音声配信です).



 田辺先生の最後の台詞「17世紀も忘れないでね~」が印象的でしたね.
 本書については,すでに YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」,hellog, heldio などの各メディアで紹介してきましたので,そちらもご参照いただければ幸いです.

 ・ YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」より「#137. 辞書も規範文法も18世紀の産業革命富豪が背景に---故山本史歩子さん(英語・英語史研究者)に捧ぐ---」

 ・ hellog 「#5166. 秋元実治(編)『近代英語における文法的・構文的変化』(開拓社,2023年)」 ([2023-06-19-1])
 ・ hellog 「#5167. なぜ18世紀に規範文法が流行ったのですか?」 ([2023-06-20-1])
 ・ hellog 「#5182. 大補文推移の反対?」 ([2023-07-05-1])
 ・ hellog 「#5186. Voicy heldio に秋元実治先生が登場 --- 新刊『近代英語における文法的・構文的変化』についてお話しをうかがいました」 ([2023-07-09-1])

 ・ heldio 「#769. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 秋元実治先生との対談」
 ・ heldio 「#772. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 16世紀の英語をめぐる福元広二先生との対談」
 ・ heldio 「#790. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 田辺春美先生との対談」

 ・ 秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.

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2023-07-30 Sun

#5207. 朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」を終えました [asacul][writing][grammatology][alphabet][notice][spelling][oe][literature][beowulf][runic][christianity][latin][alliteration][distinctiones][punctuation][standardisation][voicy][heldio]

 先日「#5194. 7月29日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」」 ([2023-07-17-1]) でご案内した通り,昨日,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回となる「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」を開講しました.多くの方々に対面あるいはオンラインで参加いただきまして感謝申し上げます.ありがとうございました.
 古英語期中に,いかにして英語話者たちがゲルマン民族に伝わっていたルーン文字を捨て,ローマ字を受容したのか.そして,いかにしてローマ字で英語を表記する方法について時間をかけて模索していったのかを議論しました.ローマ字導入の前史,ローマ字の手なずけ,ラテン借用語の綴字,後期古英語期の綴字の標準化 (standardisation) ,古英詩 Beowulf にみられる文字と綴字について,3時間お話ししました.
 昨日の回をもって全4回シリーズの前半2回が終了したことになります.次回の第3回は少し先のことになりますが,10月7日(土)の 15:00~18:45 に「中英語の綴字 --- 標準なき繁栄」として開講する予定です.中英語期には,古英語期中に発達してきた綴字習慣が,1066年のノルマン征服によって崩壊するするという劇的な変化が生じました.この大打撃により,その後の英語の綴字はカオス化の道をたどることになります.
 講座「文字と綴字の英語史」はシリーズとはいえ,各回は関連しつつも独立した内容となっています.次回以降の回も引き続きよろしくお願いいたします.日時の都合が付かない場合でも,参加申込いただけますと後日アーカイブ動画(1週間限定配信)にアクセスできるようになりますので,そちらの利用もご検討ください.
 本シリーズと関連して,以下の hellog 記事をお読みください.

 ・ hellog 「#5088. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」 ([2023-04-02-1])
 ・ hellog 「#5194. 7月29日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」」 ([2023-07-17-1])

 同様に,シリーズと関連づけた Voicy heldio 配信回もお聴きいただければと.

 ・ heldio 「#668. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」(2023年3月30日)
 ・ heldio 「#778. 古英語の文字 --- 7月29日(土)の朝カルのシリーズ講座第2回に向けて」(2023年7月18日)


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2023-07-29 Sat

#5206. Beowulf の冒頭11行を音読 [voicy][heldio][beowulf][oe][literature][oe_text][popular_passage][manuscript]

 「#2893. Beowulf の冒頭11行」 ([2017-03-29-1]) と「#2915. Beowulf の冒頭52行」 ([2017-04-20-1]) で,古英詩の傑作 Beowulf の冒頭を異なるエディションより紹介しました.今回は Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」と連動させ,この詩の冒頭11行を Jack 版から読み上げてみたので,ぜひ聴いていただければと思います.「#789. 古英詩の傑作『ベオウルフ』の冒頭11行を音読」です.以下に,Jack 版と忍足による日本語訳のテキスト,および写本画像を掲げておきます.



1Hwæt, wē Gār-Dena     in geārdagum, いざ聴き給え,そのかみの槍の誉れ高きデネ人の勲,民の王たる人々の武名は,
2þēodcyninga     þrym gefrūnon,貴人らが天晴れ勇武の振舞をなせし次第は,
3hū ðā æþelingas     ellen fremedon.語り継がれてわれらが耳に及ぶところとなった.
4     Oft Scyld Scēfing     sceaþena þrēatum, シェーフの子シュルドは,初めに寄る辺なき身にて
5monegum mǣgþum     meodosetla oftēah,見出されて後,しばしば敵の軍勢より,
6egsode eorl[as],     syððan ǣrest wearð数多の民より,蜜酒の席を奪い取り,軍人らの心胆を
7fēasceaft funden;     hē þæs frōfre gebād,寒からしめた.彼はやがてかつての不幸への慰めを見出した.
8wēox under wolcnum,     weorðmyndum þāh,すなわち,天が下に栄え,栄光に充ちて時めき,
9oðþæt him ǣghwylc þ[ǣr]     ymbsittendra遂には四隣のなべての民が
10ofer hronrāde     hȳran scolde,鯨の泳ぐあたりを越えて彼に靡き,
11gomban gyldan.     Þæt wæs gōd cyning!貢を献ずるに至ったのである.げに優れたる君王ではあった.



Beowulf MS, fol. 132r



 Beowulf については,本ブログでも beowulf の各記事で取り上げてきました.また,この作品については,先日 Voicy heldio で専門家との対談を収録・配信したので,そちらもお聴き下さい.「#783. 古英詩の傑作『ベオウルフ』 (Beowulf) --- 唐澤一友さん,和田忍さん,小河舜さんと飲みながらご紹介」です.



 古英語の響きに関心を持った方は,ぜひ Voicy heldio より以下もお聴きいただければ.

 ・ 「#326. どうして古英語の発音がわかるのですか?」
 ・ 「#321. 古英語をちょっとだけ音読 マタイ伝「岩の上に家を建てる」寓話より」
 ・ 「#735. 古英語音読 --- マタイ伝「種をまく人の寓話」より毒麦の話」
 ・ 「#766. 古英語をちょっとだけ音読 「キャドモンの賛歌」」

 ・ Jack, George, ed. Beowulf: A Student Edition. Oxford: Clarendon, 1994.
 ・ 忍足 欣四郎(訳) 『ベーオウルフ』 岩波書店,1990年.

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2023-07-28 Fri

#5205. Baugh and Cable の英語史概説書を1節ずつ読み進めながら Voicy heldio で自由にコメントしていく試みを始めています [voicy][heldio][hel_education][link][notice][bchel]

 本ブログでは英語史に関心を持ち始めた方のために,たびたびお勧めの英語史概説書を紹介してきました.英語史という分野は,実用的な英語の語学の陰に隠れて,一見マイナーな領域のように思われるかもしれません.しかし,研究の歴史は思いのほか長く,概説書の類いも洋書・和書を含めて数十冊では効かないくらい多く著わされてきました.
 その中でも,本ブログでも強く推奨してきた英語で書かれた英語史概説書の1冊として,Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013. があります.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 この一押しの概説書は12章264節からなる英語史の通史ですが,これを最初から1節ずつ読んでいき,Voicy heldio にて私が自由自在にコメントしていくという有料配信(1回200円)の試みを始めています.以下の通り,第1回を7月17日に,第2回を7月24日に配信しました.各配信回の第1チャプターは試聴できるチャプターとして無料公開していますので,ぜひお聴きいただければと思います.



 当面は,数日に一度の不定期の配信としていく予定ですが,リスナーの皆さんからの反応に応じてペースや内容なども再検討していきたいと思っています.Voicy のコメント欄を通じて,ご意見やご感想を寄せていただければ幸いです.
 この英語史概説書については,hellog や heldio でも多く取り上げてきましたので,以下をご参照ください.

 ・ hellog 「#2089. Baugh and Cable の英語史概説書の目次」 ([2015-01-15-1])
 ・ hellog 「#2182. Baugh and Cable の英語史第6版」 ([2015-04-18-1])
 ・ hellog 「#2588. Baugh and Cable の英語史からの設問 --- Chapters 1 to 4」 ([2016-05-28-1])
 ・ hellog 「#2594. Baugh and Cable の英語史からの設問 --- Chapters 5 to 8」 ([2016-06-03-1])
 ・ hellog 「#2602. Baugh and Cable の英語史からの設問 --- Chapters 9 to 11」 ([2016-06-11-1])
 ・ hellog 「#3091. Baugh and Cable の英語史概説書の目次よりランダムにクイズを作成」 ([2017-10-13-1])
 ・ hellog 「#4557. 「英語史への招待:入門書10選」」 ([2021-10-18-1])
 ・ hellog 「#4731. 『英語史新聞』新年度号外! --- 英語で書かれた英語史概説書3冊を紹介」 ([2022-04-10-1])
 ・ hellog 「#5094. 英語史概説書等の書誌(2023年度版)」 ([2023-04-08-1])

 ・ heldio 「#140. 対談 英語史の入門書」 (2021/10/18)
 ・ heldio 「#313. 泉類尚貴先生との対談 手に取って欲しい原書の英語史概説書3冊」 (2022/04/09)
 ・ heldio 「#315. 和田忍先生との対談 Baugh and Cable の英語史概説書を語る」 (2022/04/10)

 ぜひ一緒に Baugh and Cable の英語史概説書を読み進めていきましょう.書かれている英語も平易かつ豊かですので,英語の勉強にもなります.

 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2023-07-24 Mon

#5201. 古英語で書かれた英雄詩 Beowulf 『ベオウルフ』 [voicy][heldio][oe][literature][link]

 昨日,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で「#783. 古英詩の傑作『ベオウルフ』 (Beowulf) --- 唐澤一友さん,和田忍さん,小河舜さんと飲みながらご紹介」を配信しました(27分ほどの尺となっています)



 出演者の皆さんが Beowulf の専門家といってもよいですが,とりわけ唐澤先生にとってはストライクの話題です,唐澤先生とは一度 heldio で対談しています.そのときには古英語と無関係の「#314. 唐澤一友先生との対談 今なぜ世界英語への関心が高まっているのか?」という話題でお届けしましたが,本来のご専門は古英語とその文学です.
 Beowulf の概要については上記の配信よりお聴きいただければと思いますが,ここでも簡単に紹介しておきます.Beowulf は古英語文学の最高傑作とされる英雄詩であり,ヨーロッパにおいて最も早くヴァナキュラーで著わされた叙事詩です.紀元1000年頃のものと推定される唯一写本 Cotton Vitellius A XV に納められたテキストだが,物語としては6世紀初頭の出来事を扱っており,作られたのは8世紀前半と考えられています.テキストの存在は近代まで広く知られることはなく,ようやく19世紀前半に印刷されることになりました.
 物語は主人公ベオウルフの冒険と生涯を軸に進んでいきますが,この人物が歴史的存在であるという証拠はありません.ただし,物語の登場人物,場所,出来事のなかには,歴史的に確認できるものが含まれています.
 形式,文体,主題の観点からは,Beowulf はゲルマン英雄詩の伝統に乗った作品といえます.主人公が怪物の腕を引き裂く場面や湖に潜る場面を含め多くのエピソードが民間伝承に基づくものです.倫理的価値観としては運命・忠誠心・復讐など明らかにゲルマン的な要素が濃い一方で,キリスト教的な精神も強く,実際にキリスト教の寓意詩であるとの評価も一般的に受け入れられています.
 現代英語訳や和訳もあり,映画化もされている古英語文学の至宝です.ぜひ関心をもっていただければ.hellog でも beowulf の各記事で取り上げてきたので,ご覧ください.
 今回の heldio 出演者の HP 等へリンクを張っておきます.

 ・ 唐澤一友先生(立教大学)
 ・ 和田忍先生(駿河台大学)
 ・ 小河舜先生(フェリス女学院大学ほか)

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2023-07-17 Mon

#5194. 7月29日(土),朝カルのシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」 [asacul][notice][writing][spelling][orthography][oe][link][voicy][heldio]

 来週末7月29日(土)の 15:30--18:45 に,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「文字と綴字の英語史」の第2回となる「古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ」が開講されます.
 シリーズ初回は「文字の起源と発達 --- アルファベットの拡がり」と題して3ヶ月前の4月29日(土)に開講しました.それを受けて第2回は,ローマ字が英語に入ってきて本格的に用いられ始めた古英語期に焦点を当てます.古英語話者たちは,ローマ字をいかにして受容し,格闘しながらも自らの道具として手なずけていったのか,その道筋をたどります.実際にローマ字で書かれた古英語のテキストの読解にも挑戦してみたいと思います.
 ご関心のある方はぜひご参加ください.講座紹介および参加お申し込みはこちらからどうぞ.対面のほかオンラインでの参加も可能です.また,参加登録された方には,後日アーカイヴ動画(1週間限定配信)のリンクも送られる予定です.ご都合のよい方法でご参加ください.全4回のシリーズものではありますが,各回の内容は独立していますので,単発のご参加も歓迎です.
 シリーズ全4回のタイトルは以下の通りとなります.

 ・ 第1回 文字の起源と発達 --- アルファベットの拡がり(春・4月29日)
 ・ 第2回 古英語の綴字 --- ローマ字の手なずけ(夏・7月29日)
 ・ 第3回 中英語の綴字 --- 標準なき繁栄(秋・未定)
 ・ 第4回 近代英語の綴字 --- 標準化を目指して(冬・未定)

 本シリーズと関連して,以下の hellog 記事,および Voicy heldio 配信回もご参照下さい.

 ・ hellog 「#5088. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」 ([2023-04-02-1])
 ・ heldio 「#668. 朝カル講座の新シリーズ「文字と綴字の英語史」が4月29日より始まります」(2023年3月30日)
 ・ (2023/07/18(Tue) 後記)heldio 「#778. 古英語の文字 --- 7月29日(土)の朝カルのシリーズ講座第2回に向けて」(2023年7月18日)


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2023-07-16 Sun

#5193. 「言語は○○のようだ」 --- heldio リスナーさんより寄せてもらったメタファー集 [conceptual_metaphor][metaphor][language_myth][voicy][heldio][notice]

 昨晩7時より60分ほど Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の生放送をお届けしました.参加いただいたリスナーの皆さん,ありがとうございました.生放送を収録したものを,今朝のレギュラー放送として配信しています.「#776. 「言語は○○である」 --- 初のリスナー参加の生放送企画」をお聴き下さい.



 この生放送企画は,先日の「#5188. 「言語は○○のようだ」 --- 言語をターゲットとする概念メタファーをブレストして楽しむ企画のご案内」 ([2023-07-11-1]) を受けたものです.あらかじめリスナーの皆さんに「言語は○○である」のメタファーとその「心」を考えてもらい,Voicy のコメント欄にて寄せてもらった上で,それを生放送で紹介し,鑑賞するという企画でした.
 実は今回の企画に先立ち,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) のほうで,一度「予行演習」を行なっていました.2回の企画を通じてインスピレーションをかき立てる,優れたメタファーが数多く寄せられ,たいへん有意義な機会となりました.リスナーの皆さんには重ねてお礼申し上げます.関連する4回の配信を一覧しておきます.

 ・ 「【英語史の輪 #10】言語は○○のようだ --- あなたは言語を何に喩えますか?」: 【第1ラウンド】 企画を公開しブレストを呼びかけた回
 ・ 「【英語史の輪 #11】言語は○○のようだ --- 生激論」: 【第1ラウンド】 上記を受けて,寄せられた概念メタファーを読み上げながら鑑賞した生放送回
 ・ 「#771. 「言語は○○のようだ」 --- 概念メタファーをめぐるリスナー参加型企画のご案内」: 【第2ラウンド】 企画を公開しブレストを呼びかけた回
 ・ 「#776. 「言語は○○である」 --- 初のリスナー参加の生放送企画」: 【第2ラウンド】 上記を受けて,寄せられた概念メタファーを読み上げながら鑑賞した生放送回
 ・ (2023/07/17(Mon) 後記)「#777. 「言語は○○のようだ」--- 生放送で読み上げられなかったメタファーを紹介します」: 【第2ラウンド】 生放送で取り上げ切れなかったものを改めて読み上げる回

 以下に,今回の企画のために寄せられてきた「言語は○○である」メタファーを列挙します(cf. 「#4540. 概念メタファー「言語は人間である」」 ([2021-10-01-1]) とそこに張ったリンク先も参照).それぞれのメタファーの「心」を言い当ててみる,という楽しみ方もできるかと思います.

 ・ 言語は絵の具である
 ・ 言語は眼鏡である
 ・ 言語は生物である
 ・ 外国語学習は生まれ変わることである
 ・ 言語は壁ではなく階段である
 ・ 言葉は可能性である
 ・ 外国語の習得は思考法のインストールである
 ・ ことばはサーチライトである
 ・ 概念メタファーはサーチライトである
 ・ 言語はリフォームを繰り返す家である
 ・ 言葉は品物である
 ・ 言葉は食べ物である
 ・ 言語は扉である
 ・ 言語(認識)は恋に似ている
 ・ 言葉は川の流れのようだ
 ・ 言語は惑星である
 ・ 言語は自転車である
 ・ 言語は筋肉である
 ・ 言語空間はメタバースである
 ・ 言葉は声かけによる手当である
 ・ 言葉は玉手箱である
 ・ 言語は多面体である

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2023-07-13 Thu

#5190. 小河舜さんとの heldio 対談と YouTube 共演 [ogawashun][voicy][heldio][youtube][wulfstan][oe][old_norse][history][anglo-saxon][literature][toponymy][onomastics]

 昨日「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回がアップされました.「#144. イギリスの地名にヴァイキングの足跡 --- ゲスト・小河舜さん」です.小河舜さんを招いての全4回シリーズの第1弾となります.



 小河さんの研究テーマは後期古英語期の説教師・政治家 Wulfstan とその言語です.立教大学の博士論文として "Wulfstan as an Evolving Stylist: A Chronological Study on His Vocabulary and Style." を提出し,学位授与されています.Wulfstan については本ブログより「#5176. 後期古英語の聖職者 Wulfstan とは何者か? --- 小河舜さんとの heldio 対談」 ([2023-06-29-1]) をご覧ください.また,小河さんは今回の YouTube の話題のように,イギリスの地名(特に古ノルド語要素を含む地名)にも関心をお持ちです.
 小河さんとは,今回の YouTube 共演以前にも,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で複数回にわたり対談し,その様子を配信してきました.実際,今朝の heldio 最新回でも小河さんとの対談を配信しています.これまでの対談回を一覧にまとめましたので,ぜひお時間のあるときにお聴きいただければ.

 ・ 「#759. Wulfstan て誰? --- 小河舜さんとの対談【第1弾】」(6月29日配信)
 ・ 「#761. Wulfstan の生きたヴァイキング時代のイングランド --- 小河舜さんとの対談【第2弾】」(7月1日配信)
 ・ 「#763. Wulfstan がもたらした超重要単語 "law" --- 小河舜さんとの対談【第3弾】」(7月3日配信)
 ・ 「#765. Wulfstan のキャリアとレトリックの変化 --- 小河舜さんとの対談【第4弾】」(7月5日配信)
 ・ 「#767. Wulfstan と小河さんのキャリアをご紹介 --- 小河舜さんとの対談【第5弾】」(7月7日配信)
 ・ 「#770. 大学での英語史講義を語る --- 小河舜さんとの対談【第6弾】」(7月10日配信)
 ・ 「#773. 小河舜さんとの新シリーズの立ち上げなるか!?」(本日7月13日配信)

 小河さんの今後の英語史活動(hel活)にも期待しています!

(以下は,2023/08/02(Wed) 付で加えた後記です)

 ・ YouTube 小河舜さんシリーズ第1弾:「#144. イギリスの地名にヴァイキングの足跡 --- ゲスト・小河舜さん」です
 ・ YouTube 小河舜さんシリーズ第2弾:「#146. イングランド人説教師 Wulfstan のバイキングたちへの説教は歴史的異言語接触!」
 ・ YouTube 小河舜さんシリーズ第3弾:「#148. 天才説教師司教は詩的にヴァイキングに訴えかける!?」
 ・ YouTube 小河舜さんシリーズ第4弾:「#150. 宮崎県西米良村が生んだ英語学者(philologist)でピアニスト小河舜さん第4回」

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2023-07-11 Tue

#5188. 「言語は○○のようだ」 --- 言語をターゲットとする概念メタファーをブレストして楽しむ企画のご案内 [conceptual_metaphor][metaphor][language_myth][voicy][heldio][helwa][notice]

 毎朝6時にお届けしている Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のなかで,先月よりプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) を始めています(原則として毎週火曜日と金曜日の午後6時に配信).新チャンネル開設の趣旨については,本ブログでは「#5145. 6月2日(金),Voicy プレミアムリスナー限定配信の新チャンネル「英語史の輪」を開始します」 ([2023-05-29-1]) で詳述しており,heldio でも音声で「#727. 6月2日(金),Voicy プレミアムリスナー限定配信の新チャンネル「英語史の輪」を開始します」として説明していますので,ぜひご確認いただければと思います.基本的には,英語史活動(hel活)をますます盛り上げていくための基盤作りのコミュニティです.
 「英語史の輪」 (helwa) の過去2回の配信回では,リスナー参加型企画を展開しました.前もって「言語は○○のようだ」の概念メタファー (conceptual_metaphor) をプレミアムリスナーの皆さんより寄せていただき,それを話の種として,生放送で一部のプレミアムリスナーもゲストとして音声参加してもらいつつ盛り上がろうという企画でした.ご関心をもった方は,ぜひプレミアムリスナーになっていただければと.

 ・ 「【英語史の輪 #10】言語は○○のようだ --- あなたは言語を何に喩えますか?」: 企画を公開しブレストを呼びかけた回
 ・ 「【英語史の輪 #11】言語は○○のようだ --- 生激論」: 上記を受けて,寄せられた概念メタファーを読み上げながら鑑賞した生放送回

 この企画は大成功のうちに終了しましたが,非常におもしろかったので,これで終わらせるにはもったいない,heldio のレギュラー配信でも同じことをやってみよう,と思い立った次第です.今朝の heldio レギュラー回「#771. 「言語は○○のようだ」 --- 概念メタファーをめぐるリスナー参加型企画のご案内」で,企画を案内しコメントを募りましたので,ぜひお聴きいただければ.



 集まってきたコメントを回収した上で,それを話の種として,今週末の晩(目下,日程を調整中です)に heldio 生放送を実施する予定です.生放送の日時を含め,企画の最新情報は明日以降の heldio レギュラー回でお知らせいたします.奮ってご参加ください.
 概念メタファーについては,conceptual_metaphor の各記事,および heldio より「#598. メタファーとは何か? 卒業生の藤平さんとの対談」をどうぞ.



 参考までに「英語史の輪」 (helwa) の同企画で寄せられた「言語は○○のようだ」「言語は○○である」のアイディアを箇条書きで挙げてみます(cf. 「#4540. 概念メタファー「言語は人間である」」 ([2021-10-01-1]) とそこに張ったリンク先も参照).それぞれのメタファーの「心」は何かを考えてみるとおもしろいですね.なお,主語(ターゲット)は「言語」からぐんと狭めていただいてもかまいません.以下の通り「語学」「音読」「声」「言語変化」など,狭めた例は多々あります.ブレストですので質よりも量で行きましょう.

 ・ ことばは鏡である
 ・ 言葉は血液である
 ・ 言語は決して揃うことのないルービックキューブである
 ・ 言語は競争である
 ・ 言語は色である
 ・ 言葉は雪のようである
 ・ 言葉はスノーボードのようである
 ・ 言語は思考の立体断面図である
 ・ 外国語学習は精神的な海外旅行である
 ・ 語学は心の海外旅行である
 ・ 音読は心のストレッチ体操である
 ・ 音読は心のラジオ体操である
 ・ 声は楽器である
 ・ 語源はタイムカプセルである
 ・ 言葉は液体である
 ・ 言葉は食べ物である
 ・ 言語はカクテルである
 ・ 言語は万華鏡である
 ・ 言語はファッションである
 ・ 言語は武器である
 ・ 言語は新陳代謝である
 ・ 言語は南極である
 ・ 言語は実践である
 ・ 言語はパッチワークである
 ・ 言語は手がかりである
 ・ 言語は呼吸である
 ・ 言語変化は発芽である
 ・ 言語(教育)は商品である
 ・ 言語は海である
 ・ 言語は四季である
 ・ 言語は風のようである
 ・ 言語は過去との握手である
 ・ 言語は音楽である
 ・ 言語は異性である
 ・ 言語は化学反応である
 ・ 言語は波紋である

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2023-07-09 Sun

#5186. Voicy heldio に秋元実治先生が登場 --- 新刊『近代英語における文法的・構文的変化』についてお話しをうかがいました [voicy][heldio][review][mode][corpus][syntax][phrasal_verb][subjunctive][complementation][periodisation]

 6月に開拓社より近代英語期の文法変化に焦点を当てた書籍が出版されました.『近代英語における文法的・構文的変化』です.秋元実治先生(青山学院大学名誉教授)が編者を務められ,他に6名の研究者が執筆に加わっています.本書については,すでにこのブログや YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」で紹介する機会がありました.

 ・ hellog 「#5166. 秋元実治(編)『近代英語における文法的・構文的変化』(開拓社,2023年)」 ([2023-06-19-1])
 ・ hellog 「#5167. なぜ18世紀に規範文法が流行ったのですか?」 ([2023-06-20-1])
 ・ hellog 「#5182. 大補文推移の反対?」 ([2023-07-05-1])
 ・ YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」より「#137. 辞書も規範文法も18世紀の産業革命富豪が背景に---故山本史歩子さん(英語・英語史研究者)に捧ぐ---」

 このたび,本書をめぐって編者の秋元実治先生とじきじきに対談する機会に恵まれました.対談の様子は,今朝の Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて「#769. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 秋元実治先生との対談」として配信しています.対談本体は27分ほどとなっています.お時間のあるときにゆっくりお聴きいただければ.



 エンディングチャプター(第5チャプター)では,秋元先生から対談収録後にうかがった,本書の表紙下部のビッグベンの写真についての貴重な裏話を紹介しています.
 皆さん,ぜひ近代英語の文法変化について関心を寄せていただければ!


秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.



 ・ 秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.

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2023-07-08 Sat

#5185. 文字・本の何が残るのか,何を残すのか --- 安形麻理先生との対談 [voicy][heldio]

 先日7月1日,2023年度慶應義塾大学文学部公開講座「越境する文学部」の第3弾として「本と文字は時空を超える」と題する講座が開催されました.高校生や関係者を含め100名ほどが参加するなか,図書館・情報学専攻安形麻理教授と私,堀田隆一(英米文学専攻)が,講演と対談を行ないました.質疑応答を含め2時間ほどの会でしたが,私自身も多くの学びを得ました.
 この講座を終えた後,先日,安形先生と同じテーマで Voicy 対談を実施しました.講座で議論した内容の一部とはなりますが,講座のエッセンスは伝わるのではないかと思います.「#768. 本と文字は時空を超える --- 安形麻理先生との対談」です.全体で27分ほどの長さです.お時間のあるときにお聴きください.



 講座の講演では,すぐに飛んで消えてしまう話し言葉とは異なり,文字や本は書き言葉として時間を超えて生き残ることができ,また移動させることによって空間をも超えることができると強調しました.まず私が「文字は時空を超える」ことをお話しし,その後で安形先生がそれを受ける形で「本は時空を超える」ことを取り上げました.
 しかし,よく考えてみれば,文字も本も放っておいて自動的に時空を超えて残るわけではありません.往々にして,人が残すべきものを選んだ結果,それが残っているにすぎないのです.文字・本は時空を超えるポテンシャルこそ備えていますが,そのポテンシャルが実現するかどうかはまた別の問題です.書き言葉に付された情報は,黙っていて時空を超えてきたわけではなく,人が残そうとしたからこそ残ったのです.講座でも上記の Voicy 配信でも,この辺りが話題の中心となっています.
 文字に関する話題としては,安形先生が翻訳された『カリグラフィーのすべて --- 西洋装飾写本の伝統と美』(2022年)もご紹介しておきます.ぜひどうぞ!


パトリシア・ラヴェット(著),?宮利行(監修),安形麻理(訳) 『カリグラフィーのすべて --- 西洋装飾写本の伝統と美』 グラフィック社,2022年.



 ・ パトリシア・ラヴェット(著),髙宮利行(監修),安形麻理(訳) 『カリグラフィーのすべて --- 西洋装飾写本の伝統と美』 グラフィック社,2022年.

Referrer (Inside): [2024-10-08-1]

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2023-07-03 Mon

#5180. 「学者語源」と「民間語源」あらため「探究語源」と「解釈語源」 --- プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) の最新回より [etymology][folk_etymology][terminology][heldio][helwa][voicy][notice]

 1ヶ月ほど前の6月2日に,毎朝6時に配信している Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の内部で,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) を新しく開設しました.原則として毎週火曜日と金曜日の夕方6時に配信しています.月額800円の有料放送となっています.この1ヶ月の間に,熱心なリスナーの方々にご参加いただいており,コメントのやりとりなども活発に行なわれています.毎月の収益はさらなる英語史活動(hel活)の原資に充てていく予定です.
 新チャンネル開設の趣旨については,本ブログでも「#5145. 6月2日(金),Voicy プレミアムリスナー限定配信の新チャンネル「英語史の輪」を開始します」 ([2023-05-29-1]) で詳述しました.また,heldio の通常配信として「#727. 6月2日(金),Voicy プレミアムリスナー限定配信の新チャンネル「英語史の輪」を開始します」でも話していますので,ぜひお聴きください.
 さて,先日6月30日(金)に配信した「英語史の輪」の最新回は「【英語史の輪 #9】語源って何?」でした.かなり本格的な話題です.



 この回は全5チャプターからなる36分ほどの配信でしたが,そこから第4チャプターの一部を文字起こしし,多少の編集を加えたものを以下に公開します.プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」の雰囲気をお伝えしたいと思ったからです.では,どうぞ.



heldio 通常回の742回で「#742. tip 「心付け」の語源」というお話をしたんですね.ここにたくさんコメントをいただきました.ぜひ改めて聞いていただければと思うんですけれども,「心付け」を意味する tip ですね.ホテルやレストランでのあのチップのことなんですけれども,この回の放送で,私はですね,俗説を紹介して,それを切り捨てたっていうことなんですね.俗説というのは,tip というのは,もともと,To Insure Promptness 「迅速さをお約束するために」の頭文字を取って TIP,これを tip と読ませたんだというのが,わりと広く知られているんですね.OED をはじめとして,専門的な語源辞典などでは,この説は根拠が乏しいととして,おそらくでっち上げの説だろうというような見解が多く見られます.

もう1つ似たような例を挙げますと,sirloin ですね.牛肉の良質な部の代表格です.sir + loin と書くことになっているんですが,本来的には16世紀に古いフランス語の *surloigne という単語を借用したものなんですね.sur というのが「~の上」という意味です.英語で言う on にあたります.前置詞,あるいは接頭辞ですね.そして,loigne の部分が腰肉ということなんで,腰肉の上部,要するにその肉が位置している体の部位ですよね.それに由来するといういうことなんですが,後にフランス語に明るくない英語話者が,sur という部分が何のことか分からなかったので,その肉が美味しすぎるあまり,王様が sir の称号を与えたという物語をでっち上げて,この単語を理解したわけです.その結果,綴字も引かれて sir になり,今 sirloin ということなんですが,これは完全なでっち上げであり,俗説ということになるんですね.tip の例もそうですし,この sirloin の例もそうなんですけれども,本当の真実の語源というものと,俗説と呼んできた,いわばでっち上げ,後付けの語源という2種類があるわけですね.「学者語源」と「民間語源」,後者は folk etymology と呼ばれることもあります.

正しい説と俗説,学者語源と民間語源というような対立した概念や用語を作るという発想には抵抗がある人もいます.「俗説」という言葉を学者や研究者が使用することに問題があるのではないかという議論も理解できます.私も正しい説や俗説という表現はあまり好きではありませんし,学者語源と民間語源という言い方も好ましいと思いません.

俗説や民間語源という表現は,いわばクリエイティブな要素を持っていますよね.tip を To Insure Promptness という後付けの語源というのは,うまくハマっていると言えますし,sirloin の話もおもしろいですね.王様が肉に sir の称号を与えたという話は受け入れられますし,クリエイティブな要素も含まれています.したがって,創造的語源や creative etymology といった表現も可能です.

ただし,これまで正しい語源や本来の語源,学者語源と呼ばれてきたものも,実際にはクリエイティブに始まった可能性もあります.俗説や民間語源の方を完全に creative etymology として呼び分けることは行き過ぎかもしれません.対立するものを non-creative etymology とすることになりますから.

では,適切な呼び方は何でしょうか.これはかなり難しい問題で,学者語源や真の語源などの方を,例えば true etymology とか real etymology のような表現で呼ぶことも考えられます.ただし,etymon は「元の」を意味する言葉であり,少々奇妙な用語ではありますが.ただ,学者でさえも,究極の語源は知り得ないということになると,true でも real でもないわけで,やはりこの用語もうまくないと思います.

私は民間語源や俗説といったものを決して馬鹿にするつもりはありません.むしろおもしろいと思いますし,クリエイティブだと考えています.ただし,tip や sirloin の場合,いずれのケースでも,より古い段階に遡った語源があるので,それを考慮する必要があります.

これらの2つの種類の語源は明確に分けて考える必要があると私は考えています.では,この2つの対立にどのような名前をつけるかという点で,「正しい」対「俗説」というのもあまり好ましくありませんし,「学者語源」対「民間語源」というのもあまり適切ではありません.

folk etymology という用語はかなり定着してしまっており,それに関する研究書なども存在していますが,ここで1つ提案したいことは,「探求語源」と「解釈語源」という表現はどうでしょうか.価値観がどちらかに偏っているわけではなく,比較的中立的な表現を選んだつもりです.別の言い方をすると,従来の正しいまたは学者的な語源の方は,語源探求の対象であるということです.語源探求ですね.したがって,探求語源という表現を使用すると.そして,もう1つの,いわゆる俗説や民間語源と呼ばれてきたものについては,解釈語源として捉える方法です.これは語源解釈学の対象となるものです.私はどちらも重要な語源学の下位部門だと考えています.

最善の呼び方かどうかはわかりません.今後,さらに良い表現が現われたり,思いついたりするかもしれませんが,私のこの問題に関する考え方をここでお伝えしました.tip や sirloin の場合でも,2つの語源があるという考え方です.探求語源と解釈語源の2つが存在するということです.どちらが優れているという話ではなく,見方が異なるということです.

探求語源に注目するのは,可能な限り古い形を再現したいという思いからです.一方,解釈語源に注目するのは,人間の言葉に対するクリエイティブな感覚やセンスにポイントがあると思います.言葉のセンスやユーモアセンスを楽しむという側面です.両方の側面が語源学が追求すべき対象だと私は考えています.



 「英語史の輪」の一部にすぎませんが雰囲気はいかがでしょうか.関心をもたれた方は,ぜひ7月分のプレミアムリスナーになっていただければと思います(6月分もバックナンバーとしてアーカイヴされています).7月の「英語史の輪」の初回配信は,明日7月4日(火)の夕方6時を予定しています.
 なお,今回取り上げた話題については,hellog より関連記事「#3539. tip (心付け)の語源」 ([2019-01-04-1]),「#4942. sirloin の民間語源 --- おいしすぎて sir の称号を与えられた牛肉」 ([2022-11-07-1]) もご参照ください.

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2023-07-02 Sun

#5179. アメリカ文学慶友会での千本ノック収録を公開しました [notice][voicy][heldio][keiyukai][senbonknock][sobokunagimon]

 6月17日(土)の午後,アメリカ文学慶友会にてオンライン講演をさせていただきました.「文字と文学の英語史 --- letter(s) の系譜」と題して2時間ほどお話しした後,活発な質疑応答の時間を経て,講演会が終了しました.事前の準備から当日の運営まで労を執っていただいたスタッフの方々,そして参加いただいた皆様にお礼申し上げます.
 本セッションの終了後,続けてオンライン懇親会の場を設けていただきました.その懇親会のなかで,アメリカ文学慶友会のメンバーの皆さんのご協力を得まして,事前に打ち合わせしていたとおり,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のために千本ノックを実施・収録いたしました.本日 heldio にて公開しましたので,お知らせします.「#762. アメリカ文学慶友会の懇親会での千本ノック」です.50分ほどの長さとなっていますので,お時間のあるときにお聴き下さい.



 9本ほどのノックを受けた形になります.以下に分秒を挙げておきますので,聴く際にご利用いただければ.

 (1) 00:19 --- 人称代名詞とジェンダーの問題
 (2) 12:24 --- 同族目的語風の表現
 (3) 15:34 --- 話し言葉と書き言葉における変化の量・速度
 (4) 21:50 --- 数万年前の言語の姿は?
 (5) 26:05 --- イタリック語派に属するフランス語には意外なことにゲルマン語的要素がある!
 (6) 29:17 --- 英語の主語省略
 (7) 33:28 --- 船や国を受ける she
 (8) 38:00 --- 名前隠し
 (9) 42:45 --- 単複同形の名詞

Referrer (Inside): [2023-10-17-1]

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