昨日の記事「#4855. 複合語の認定基準 --- blackboard は複合語で black board は句」 ([2022-08-12-1]) に続き,複合語 (compound) の話題.現代英語期に存在感を増してきた語形成の1つに長い名詞連鎖の複合がある.多くの情報を狭いスペースに詰め込みたいという情報化社会のニーズを反映しているのだろう,World Heath Organization, Trades union congress centenary, New York City Ballet School instructor, railway station waiting room murder inquiry verdict など枚挙にいとまがない.新聞などを漁れば,いくらでも例を集めることができそうだ(cf. 「#399. 現代英語に起こっている言語変化」 ([2010-05-31-1]),「#629. 英語の新語サイト Word Spy」 ([2011-01-16-1]),「#860. 現代英語の変化と変異の一覧」 ([2011-09-04-1])).
竝木 (52--53) は,英語と日本語より長い複合語の例を挙げながら,その「繰り返し可能」 (recursive) な性質に注目している.
・ farm produce delivery truck repair shop (農場で採れた成果物配達用トラックの修理店)
・ student film society committee scandal inquiry (学生映画協会委員会のスキャンダルの調査)
・ bathroom towel rack designer training (浴室用タオル掛けのデザイナー養成)
・ bathroom towel rack designer training program committee (浴室用タオル掛けのデザイナー養成計画委員会)
・ 一人親方組合作り
・ 地方公務員制度調査研究会報告
・ 中高年労働移動支援特別助成金
・ 南関東地区震災応急対策活動要領
両言語とも,このように要素を数珠つなぎにしていくらでも長い複合語を作り出していくことができる.これが "recursive" の意味である.原則として最後に現われる要素(下線部)が意味的な主要部となり,複合語の性質を定めることになる.
戯れに,上記の最後の例で,さらにどこまで長くつなげられるか挑戦してみた.「南関東地区震災応急対策活動要領執筆作業部会副会長失踪事件担当刑事宛書簡集編纂事業支援募金口座解約騒動」というのはいかがでしょう(recursive なのでキリがなく50文字で止めました).
・ 竝木 崇康 「第2章 形態論」『日英対照 英語学の基礎』(三原 健一・高見 健一(編著),窪薗 晴夫・竝木 崇康・小野 尚久・杉本孝司・吉村 あき子(著)) くろしお出版,2013年.
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