hellog〜英語史ブログ

#5712. Norman の複数形に Normans のほか Normen もあった[number][plural][compound][metanalysis][analogy][folk_etymology][oed]

2024-12-16

 German (ドイツ人)の複数形は Germans であり *Germen にはならない.語源的に -man 複合語ではないからだ.同様に human (人間), Ottoman (オスマン・トルコ人), talisman (護符)なども,-man はあくまで語幹の一部であり,語源的に -man 複合語ではないために,複数形は規則的に - s をつけて humans, Ottomans, talismans とする.*humen, *Ottomen, *talismen とはならない.
 これと若干事情が異なるのが「#707. dragoman」 ([2011-04-04-1]) で紹介した名詞の複数形である.dragoman (通訳)は語源的には -man 複合語ではないものの,複数形としては dragomans のみならず dragomen も用いられる.後者は一種の勘違い,あるいは異分析 (metanalysis) に基づく語形だが,歴史的には許容されてきた.
 さらに異なるタイプが,今回取り上げる Norman の複数形だ.この名詞は,語源的には north + -man であり,明らかに -man 複合語である(cf. 「#1568. Norman, Normandy, Norse」 ([2013-08-12-1])).したがって,複数形は *Normen となることが予想されるが,実際には全体として1つの名詞語幹として解釈されるようになったのだろう,Normans という語形が通用されてきた.
 ところが Norman の語史をひもとくと,かつては複数形として Normen も用いられていたことがわかる.OED より古英語からの最初期の例文を挙げてみよう.

OE Þær wæs Harold cyning of Norwegan & Tostig eorl ofslagen, & gerim folces mid heom, ægðer ge Normana ge Englisca, & þa Normen [flugon þa Englis[c]a].
Anglo-Saxon Chronicle (Tiberius MS. B.i) anno 1066

OE Harold for to Norwegum, Magnus fædera, syððan Magnus dead wæs, & Normen hine underfengon.
Anglo-Saxon Chronicle (Tiberius MS. B.iv) anno 1049


 一方,古くから Normans のほうが普通の複数形だったようではある.

c1275 (?a1200) Seoððen comen Normans [c1300 Otho MS. Normains]..and nemneden heo Lundres.
Laȝamon, Brut (Caligula MS.) (1963) 7115

c1325 (c1300) þus was in normannes hond þat lond ibroȝt.
Chronicle of Robert of Gloucester (Caligula MS.) 7498


 -man 語の民間語源的な複数形をめぐる事例は,ほかにもあるかもしれない.

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