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demography - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-10-13 11:14

2015-08-25 Tue

#2311. Tristan da Cunha [enl][world_englishes][map][geography][demography][statistics]

 「#2305. 英語を説明する25の地図」 ([2015-08-19-1]) の11番目として挙げられている Tristan da Cunha について付け加える.Tristan da Cunha は,アフリカ南部と南アメリカ大陸のどちらからも遠く離れた絶海の孤島.南アフリカからは約2400キロ,南アメリカからは約3360キロ離れている.6つの小島からなり,有人島は Tristan da Cunha と Gough Island の2つのみである.この群島は,1506年にポルトガル人の海軍将官 Tristão da Cunha によって発見された.17世紀以降,何度かにわたって定住の試みがあったが失敗し,初めて成功したのは1816年のイギリス駐屯軍によるものである.St. Helena に島流しにされたナポレオンの救出を阻止するための派兵とされる.その1816年に英国領として併合されたが,翌1817年に軍は撤退し,それ以降は,島に残った少数の者たちと,難破したヨーロッパ人の漂流者たちが島民人口のほとんどであった.1886年には97人がいたとの報告がある.1938年には St. Helena の保護領となったが,2009年にその地位は解消され,英国海外領 St Helena, Ascension and Tristan da Cunha の一部となっている.2015年現在,人口は259人であり,そのほとんとが英語を母語とする ENL 地域である.

Map of Tristan da Cunha

 以下,関連する外部リンクを張っておく.

 ・ Website of the Tristan da Cunha Government and Tristan Association
 ・ Wikipedia による Tristan da Cunha の記事
 ・ BBC による St Helena, Ascension, Tristan da Cunha profiles
 ・ CIA: The World Factbook による Saint Helena, Ascension, and Tristan da Cunha
 ・ Edgar Allan Poe による The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket (1838) の Chapter 15 に,Tristan da Cunha の歴史的,地理的な詳しい記述がある.

 なお,St. Helena については,「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]),「#215. ENS, ESL 地域の英語化した年代」 ([2009-11-28-1]),「#1919. 英語の拡散に関わる4つの crossings」 ([2014-07-29-1]) でも軽く触れている.

(後記 2015/09/01(Tue): McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992. の "TRISTAN DA CUNHA" (1056) の項も参照.この英語変種は,Highland English と同じ特徴を有すると考えられている.)

 ・ McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.

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2015-07-15 Wed

#2270. イギリスからアメリカへの移民の出身地 (3) [history][ame][bre][ame_bre][geography][map][demography][rhotic]

 「#2261. イギリスからアメリカへの移民の出身地 (1)」 ([2015-07-06-1]),「#2262. イギリスからアメリカへの移民の出身地 (2)」 ([2015-07-07-1]) に引き続いての話題.[2015-07-07-1]では,Fisher を参照した Gramley による具体的な数字も示しながら,初期移民の人口統計を簡単に確認したが,この Fisher 自身は David Hackett Fischer による Albion's Seed (1989年) に拠っているようだ.さらに,この D. H. Fischer という学者は,アメリカ英語史研究者の先達である Hans Kurath, George Philip Krapp, Allen Walker Read, Albert Marckwardt, Raven McDavid, Cleanth Brooks 等に依拠しつつ,具体的な人口統計の数字を提示しながら,イギリス英語とアメリカ英語の連続性を主張しているのである.
 Fischer の記述を信頼して Fisher がまとめた(←名前の綴りが似ていて混乱するので注意!)初期移民史について,以下に引用しよう (Fisher 60) .初期植民地への移民の95%以上がイギリスからであり,それは4波にわかれて行われたという.

1. 20,000 Puritans largely from East Anglia to to New England, 1629--41, to escape the tyranny of the crown and the established church that led to the Puritan revolution;
2. 40,000 Cavaliers and their servants largely from the southwestern counties of England to the Chesapeake Bay area and Virginia, 1642--75, to escape the Long Parliament and Puritan rule;
3. 23,000 Quakers from the North Midlands and many like-minded evangelicals from Wales, Germany, Holland, and France, to the Delaware Valley and Pennsylvania, 1675--1725, to escape the Act of Uniformity in England and the Thirty Years War in Europe;
4. 275,000 from the North Border regions of England, Scotland, and Ulster to the backcountry of New England, western Pennsylvania, and the Appalachians, 1717--75, to escape the endemic conflict and poverty of the Border regions, and especially the 1706--7 Act of Union between England and Scotland, which brought about the "pacification" of the border, transforming it from a combative society in need of many warriors to a commercial and industrial society in need of no warriors, with the consequent large-scale displacement of the rural population.


 Fischer は伝統的なアメリカへの初期移民史の記述を人口統計によって補強したということだが,これは英語変種の連続性を考える上では非常に重要な情報である.
 イギリス変種からアメリカ変種への連続性を論じる際に必ず話題になるのは,non-prevocalic /r/ である.この話題については「#452. イングランド英語の諸方言における r」 ([2010-07-23-1]) と「#453. アメリカ英語の諸方言における r」 ([2010-07-24-1]) で合わせて導入し,「#1267. アメリカ英語に "colonial lag" はあるか (2)」 ([2012-10-15-1]) で問題の複雑さに言及したとおりだが,Fisher (75--77) も慎重な立場からこの問題に対している.確かに,250年ほど前に non-prevocalic /r/ の消失がロンドン近辺で始まったということと,アメリカへの移民が17世紀前半に始まったということは,アナクロな関係ではあるのだ.それでも,歴史言語学的な連続性に関する軽々な主張は慎むべきであるものの,一方で英語史研究において連続性の可能性に注意を払っておくことは常に必要だとも感じている.

 ・ Gramley, Stephan. The History of English: An Introduction. Abingdon: Routledge, 2012.
 ・ Fisher, J. H. "British and American, Continuity and Divergence." The Cambridge History of the English Language. Vol. 6. English in North America. Ed. J. Algeo. Cambridge: CUP, 2001. 59--85.

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2015-07-08 Wed

#2263. 世界の主要言語の母語話者数の比較 [demography][statistics][world_languages]

 言語の話者人口について,数え方の問題や各種の統計を以下の記事で扱ってきた.

 ・ 「#270. 世界の言語の数はなぜ正確に把握できないか」 ([2010-01-22-1])
 ・ 「#274. 言語数と話者数」 ([2010-01-26-1])
 ・ 「#397. 母語話者数による世界トップ25言語」 ([2010-05-29-1])
 ・ 「#398. 印欧語族は世界人口の半分近くを占める」 ([2010-05-30-1])
 ・ 「#1060. 世界の言語の数を数えるということ」 ([2012-03-22-1])
 ・ 「#1949. 語族ごとの言語数と話者数」 ([2014-08-28-1])
 ・ 「#1375. インターネットの使用言語トップ10」 ([2013-01-31-1])

 今回は,ウェブ上で INFOGRAPHIC: A world of languages - and how many speak them と題する記事と以下のような図を見つけたので,紹介しておきたい.

Top Languages in Infographics

 図示されている母語話者数に関する人口統計は,Ethnologue に基づいているようである.世界で行なわれている7102の言語のうち,5千万人以上の母語話者を擁しているのは23言語のみであり,この23言語だけで41億人をカバーするという.
 大雑把な図なので慎重に読まなければならないが,大言語について内部の諸方言の区分も表現されているなど,よく工夫されている.下方には学習されている言語のランキングもあり,そのうち英語は群を抜いてのトップで15億人の学習者を擁すると見込まれている.

Referrer (Inside): [2016-12-09-1]

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2015-07-07 Tue

#2262. イギリスからアメリカへの移民の出身地 (2) [history][ame][bre][ame_bre][geography][map][demography]

 昨日の記事「#2261. イギリスからアメリカへの移民の出身地 (1)」 ([2015-07-06-1]) に引き続いての話題.「#1301. Gramley の英語史概説書のコンパニオンサイト」 ([2012-11-18-1]) と「#2007. Gramley の英語史概説書の目次」 ([2014-10-25-1]) で紹介した Gramley の英語史書は,地図や図表が多く,学習や参照に便利である.イギリスからアメリカへの初期の移民のパターンについても,"Major sources and goals of immigration" (248) と題する有用なアメリカ東海岸の地図が掲載されている.Gramley の地図では,ブリテン諸島からの移民のルートのほか,ドイツ,カリブ諸島,ドイツからの移民の流入の経路なども示されている.

Map of Major Sources and Goals of Immigration from Britain to America (Gramley 248)

 いずれの移民もアメリカ英語の方言形成に何らかの貢献をしていると考えられるが,昨日の記事 ([2015-07-06-1]) および「#1700. イギリス発の英語の拡散の年表」 ([2013-12-22-1]) を参照してわかるとおり,ブリテン諸島からの移民がとりわけ重要な役割を果たしたことはいうまでもない.ブリテン諸島からの移民について,人口統計を含めた要約的な文章が Gramley (246) にあるので,引用しよう.

The English language which the settlers carried along with them was, of course, that of England. The colonists surely brought various regional forms, but it is generally accepted that the largest number of those who arrived came from southern England. Baugh (1957) concludes --- on the limited evidence of 1281 settlers in New England and 637 in Virginia for whom records exist for the time before 1700 --- that New England was predominantly settled from the southeastern and southern counties of England (about 60%) as was Virginia (over 50%). Fisher's figures indicate that 20,000 Puritans came between 1629 and 1641, the largest part from Essex, Suffolk, Cambridgeshire, and East Anglia with fewer than 10% from London, and that 40,000 "Cavaliers" fled especially from London and Bristol during the Civil War and went to the Chesapeake area and Virginia (Fisher 2001: 60). The Middle Colonies of Pennsylvania, new Jersey, and Delaware probably had a much larger proportion from northern England, including 23,000 Quakers and Evangelicals from England, Wales, Germany, Holland, and France. Over 250,000 from northern England, the Scottish Lowlands, and especially Ulster settled in the back country . . . . In each of the areas settled the nature of the language was set by speech patterns established by the first several generations.


 アメリカの New England や南部への移民には,イングランド南部の出身者が多く関与し,アメリカの中部諸州そしてさらに奥地へは,イングランド北部,ウェールズ,スコットランド,アイルランドからの移民が多かったことが改めて確認できるだろう.

 ・ Gramley, Stephan. The History of English: An Introduction. Abingdon: Routledge, 2012.
 ・ Baugh, A. C. A History of the English Language. 2nd ed. New York: Appleton-Century-Crofts, 1957.
 ・ Fisher, J. H. "British and American, Continuity and Divergence." The Cambridge History of the English Language. Vol. 6. English in North America. Ed. J. Algeo. Cambridge: CUP, 2001. 59--85.

Referrer (Inside): [2015-07-15-1]

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2015-07-06 Mon

#2261. イギリスからアメリカへの移民の出身地 (1) [history][ame][bre][ame_bre][rhotic][geography][map][demography]

 標題は「#1701. アメリカへの移民の出身地」 ([2013-12-23-1]) で取り上げた話題だが,今回は地図を示しつつ解説する.
 アメリカ英語の方言形成過程を理解するには,17世紀に始まるイギリス諸島からの初期の移民と,その後のアメリカ内での移住の歴史が大きく関わってくる.イギリス人によるアメリカへの植民は,1607年の Jamestown の建設に始まるが,この植民に携わったのは主としてイングランド南部出身者だった.最初の入植者として彼らの言語的な役割は大きく,イングランド南部方言が Jamestown にもたらされ,後にアメリカ南部に拡がる契機が作られた.
 1620年に Plymouth にたどり着いた "Pilgrim fathers" にも,イングランド南部(および東部)出身者が多かった.彼らは,先の入植者と同様に,およそイングランド南部の方言特徴を携えて新大陸に渡ったのであり,New England を中心とした北東部海岸地域にその方言特徴を定着させた.
 一方,1680年代からはイングランド中部・北部やウェールズからのクエーカー教徒 (Quakers) が大挙して Pennsylvania へ入植した.Pennsylvania などの中部へは,さらに18世紀の半ばにスコットランド系アイルランド人 (Scots-Irish) が数多く流入し,後の西部開拓の原動力となった.また,19世紀半ばにも多くのアイルランド人が押し寄せた.中部諸州に入り,西部へと展開したこれらイングランド南部以外の地域からやってきた移民たちは,いわば非標準的といえるイギリス諸方言を携えて新大陸にやってきたのだが,この諸方言こそが,後のアメリカにおける主たる方言となる中部方言 (Midland dialect) の種だったのである.
 イギリス諸島からの移民の出身地と方言を念頭に,上記をまとめると次のようになる.標準的なイングランド南部方言を携えたイングランド南部出身者は,その標準変種をアメリカの New England や南部諸州へと伝えた.一方,非標準的なイングランド中部・北部,ウェールズ,スコットランド,アイルランドの諸方源を携えた地方出身者は,その非標準変種をアメリカの Pennsylvania や中部諸州,そして西部へと広く伝えた.大雑把に図式化すると,以下の地図の通りである.

Map of Major Sources and Goals of Immigration from Britain to America

 このようなアメリカ英語形成期 (1607--1790) における初期移民の効果は,現代アメリカ英語の non-prevocalic /r/ の分布によく反映されていると言われる.「#453. アメリカ英語の諸方言における r」 ([2010-07-24-1]) の地図に示した通り,大雑把にいってアメリカ中部・西部の広い地域では car, four などの語末の /r/ は発音される,すなわち rhotic である.これは,「#452. イングランド英語の諸方言における r」 ([2010-07-23-1]) で見たように,現代のイングランド周辺地域の方言が non-rhotic であることに対応する.一方,アメリカの New England と南部諸州では,およそ non-rhotic である.これは,イングランドの中心部がおよそ rhotic であることと符合する.[2010-07-24-1]で触れたとおり,この分布は偶然ということではなく,歴史的な連続性を疑うべきだろう.
 移民先の方言の形成や分布を論じるにあたっては,移民の出身地と携えてきた方言に注目することが肝要である.関連して,以下の記事も参照.

 ・ 「#1698. アメリカからの英語の拡散とその一般的なパターン」 ([2013-12-20-1])
 ・ 「#1699. アメリカ発の英語の拡散の年表」 ([2013-12-21-1])
 ・ 「#1700. イギリス発の英語の拡散の年表」 ([2013-12-22-1])
 ・ 「#1702. カリブ海地域への移民の出身地」 ([2013-12-24-1])
 ・ 「#1711. カリブ海地域の英語の拡散」 ([2014-01-02-1])

Referrer (Inside): [2015-07-15-1] [2015-07-07-1]

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2015-05-21 Thu

#2215. Niue,英語を公用語としてもつ最小の国(最新版) [map][austronesian][esl][demography][statistics]

 明日5月22日(金)と23日(土)に,福島県いわき市で「いわき太平洋・島サミット2015」が開かれる.日本,オーストラリアを含め,太平洋諸国が参加するサミットで,太平洋地域の相互外交を強化することを狙いとする.ホスト国である日本は,サミット開催に合わせ,一週間前の5月15日に駆け込みでニュージーランド自治領のニウエ (Niue /niˈuːeɪ/; 国民名と形容詞は Niuean /n(j)uːˈ(w)eɪən/) を国家承認することを決定した.日本が承認する国家はこれで195カ国となる.ニュージーランド,中国,インドなどは先だって国家承認しているが,国連には加盟していない.
 ニウエは,ニュージーランドの北東約2400kmに位置し,面積は約259平方km(鹿児島県徳之島とほぼ同じ),人口は約1,500人の島国である.首都は Alofi.以下に,地図と国旗を示す.

Map of Polynesia Map of Niue National Flag of Niue

 この島国の略史を記そう.Captain James Cook が1774年に上陸し,島民の示した敵意にちなんで "Savage Island" と命名.1830年代に宣教団が来島し,1852年に島民がキリスト教化.1900年に英国がサモア分割の一部としてニウエを併合した.翌1901年には,ニュージーランドがクック諸島の一部として同島を併合したが,1904年には島は分離して自治体となった.1974年にニュージーランドと自由連合を組む自治政府が樹立した.内政的にはこのときに事実上独立したいってよいが,島民はニュージーランド市民であり,防衛・外交はニュージーランドに任意で依存してきた.ニュージーランドへの移住者も多い.
 用いられている言語についていえば,EthnologueNiue の項によれば,ニウエ語 (Niuean) と英語が公用語となっている.国民のほとんどがニウエ語を話すが,英語も広く通用する.ニウエ語は,オーストロネシア語族ポリネシア語派に属し,隣接するトンガ語やサモア語に類似する.
 英語史の観点から話題にできることが1つある.ニウエがより広く国際的に国家承認されるのは今後のことになるのかもしれないが,正式に承認されることで,ニウエは「英語を公用語としてもつ最小の国」のタイトルをナウルより奪うことになる.「#1747. 英語を公用語としてもつ最小の国」 ([2014-02-07-1]) で取り上げたナウルは,面積ではニウエよりもずっと小さく,その意味ではいまだ「最小」だが,人口についていえばナウルは約1万人いるのに対し,ニウエは千数百人という規模であるから「最小」と呼ぶことができる.英語とその分布に関連する統計その他の情報を更新する必要が生じてくるだろう.
 関連して,直接ニウエの話題こそ含まれていないが,「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]),「#1591. Crystal による英語話者の人口」 ([2013-09-04-1]),「#1676. The Commonwealth of Nations」 ([2013-11-28-1]),「#1700. イギリス発の英語の拡散の年表」 ([2013-12-22-1]) などを参照されたい.英語の拡散との関連では,「#1919. 英語の拡散に関わる4つの crossings」 ([2014-07-29-1]) を参照.
 ニウエに関する外部リンクとしては,以下のものがある.

 ・ 外務省によるニウエ基礎データ
 ・ CIA: The World Factbook による Niue のデータ
 ・ Wikipedia による Niue の記事

Referrer (Inside): [2017-06-07-1]

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2015-04-29 Wed

#2193. La Francophonie (2) [french][statistics][demography][francophonie][map]

 昨日に引き続き,La Francophonie について.La Francophonie の公式サイト数で見るフランコフォニー に,フランス語に関する人口統計を含む様々な数字が掲載されている.これらの数字は,OIF (Organisation internationale de la Francophonie) による2014年の報告(4年ごとに更新される)に基づくものという.数字をいくつか示そう.

 ・ La Francophonie は80の国・地域が参加する連合(54の加盟国,23のオブザーバー,3の準加盟国)
 ・ フランス語は英語とともに5大陸で話されている言語である
 ・ 世界に2億7400万人のフランス語話者(うち5大陸で2億1200万人が日常言語として使用)
 ・ 世界で1億2500万人のフランス語学習者(7600万人が教育言語として,4900万人が外国語として学習)
 ・ ヨーロッパで7700万人の日常的なフランス語話者,及び5200万人のフランス語能力を有する者
 ・ 世界で5番目によく話される言語
 ・ 世界で3番目の業務用言語(ヨーロッパでは2番目)
 ・ 世界で4番目のインターネット用言語
 ・ 世界で2番目に国際機関で用いられている言語

 上記のサイトにはフランス語に関連する世界地図もいくつか掲載されている.以下に貼り付けよう.

Estimation de francophones

Le monde de la Francophonie

Le monde de la Francophonie et Commonwealth

 上の2つ目の地図にあるように,La Francophonie には54の加盟国 (États de gouvernements membres de l'OIF),23のオブザーバー (États observateurs), 3の準加盟国 (États associés) の計80の国・地域が参加している.地域ごとに名前を挙げよう.

Afrique de l'Ouest

  • Bénin
  • Burkina Faso
  • Cap-Vert
  • Côte d'Ivoire
  • Ghana (État associé)
  • Guinée
  • Guinée Bissau
  • Mali
  • Niger
  • Sénégal
  • Togo
Afrique centrale et océan Indien
  • Burundi
  • Cameroun
  • Centrafrique
  • Congo
  • Congo RD
  • Gabon
  • Guinée équatoriale
  • Rwanda
  • Sao Tomé et Principe
  • Tchad
  • Comores
  • Djibouti
  • Madagascar
  • Maurice
  • Mozanbique (État observateur)
  • Seychelles
Afrique du Nord et Moyen-Orient
  • Egypte
  • Émirats arabes unis (État observateur)
  • Liban
  • Maroc
  • Mauritanie
  • Tunisie
  • Quatar (État associé)
Amérique --- Caraïbe
  • Canada
  • Canada Nouveau-Brunswick
  • Canada Québec
  • Costa Rica (État observateur)
  • Mexique (État observateur)
  • République dominicaine (État observateur)
  • Dominique
  • Haïti
  • Sainte-Lucie
  • Uruguay (État observateur)
Asie --- Pacifique
  • Cambodge
  • Laos
  • Thaïlande (État observateur)
  • Vanuatu
  • Vietnam
Europe
  • Albanie
  • Andorre
  • Arménie
  • Autriche (État observateur)
  • Belgique
  • Bosnie herzégovine (État observateur)
  • Bulgarie
  • Chypre (État associé)
  • Estonie (État observateur)
  • Croatie (État observateur)
  • Ex-Rép. yougoslave de Macédoine
  • France
  • Géorgie (État observateur)
  • Grèce
  • Hongrie (État observateur)
  • Kosovo (État observateur)
  • Lettonie (État observateur)
  • Lituanie (État observateur)
  • Luxembourg
  • Moldavie
  • Monaco
  • Montégnégro (État observateur)
  • Pologne (État observateur)
  • Réep. Tchèque (État observateur)
  • Roumanie
  • Serbie (État observateur)
  • Slovaquie (État observateur)
  • Slovénie (État observateur)
  • Suisse
  • Ukraine (État observateur)
  • Fédération Wallonie-Bruxelles

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2014-08-28 Thu

#1949. 語族ごとの言語数と話者数 [statistics][world_languages][language_family][demography]

 「#270. 世界の言語の数はなぜ正確に把握できないか」 ([2010-01-22-1]),「#1060. 世界の言語の数を数えるということ」 ([2012-03-22-1]),「#274. 言語数と話者数」 ([2010-01-26-1]),「#398. 印欧語族は世界人口の半分近くを占める」 ([2010-05-30-1]) などの記事で,現代世界の言語の数やそれぞれの話者数を話題にしてきた.この種の統計の難しさは再三指摘してきたが,それを認めた上で,今回は語族 (language_family) ごとの言語数とその話者数の統計を示そう.とはいっても,W. Bright 編の言語学百科事典 (International Encyclopedia of Linguistics. New York and Oxford: OUP, 1992.) に拠っている Crystal (289) の統計値の受け売りにすぎない.1980年代後半現在の推計である.

Language FamilyLanguagesSpeakers
Indo-European3862,500,000,000
Sino-Tibetan2721,088,000,000
Austronesian1212269,000,000
Afro-Asiatic338250,000,000
Niger-Congo1354206,000,000
Dravidian70165,000,000
Japanese12126,000,000
Altaic60115,000,000
Austro-Asiatic17375,000,000
Tai6175,000,000
Korean160,000,000
Nilo-Saharan18628,000,000
Uralic3324,000,000
Amerindian (North, Central, South America)98522,400,000
Caucasian387,800,000
Miao-Yao155,600,000
Indo-Pacific7343,500,000
Khoisan37300,000
Australian aborigine26230,000
Palaeosiberian818,000
Isolates2962,000,000
Total6,5335,022,648,000


 言語数の推計には,310の死滅した言語,71の pidgin/creole,75の手話言語も含まれている.大雑把な推計であることを斟酌しつつも,印欧語族の話者は(当時の)世界人口の約半分を担う大語族であることが知れる.以下は,参考までに,上の図を割合を示す帯グラフにしたものである.

Numbers of Languages and Speakers by the Language Family

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 1997.

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2014-05-11 Sun

#1840. スペイン語ベースのクレオール語が極端に少ないのはなぜか [creole][sociolinguistics][spanish][demography]

 クレオール語研究には1つの大きな謎がある.スペイン語は英語,フランス語,ポルトガル語,オランダ語と並ぶ植民地支配の大言語だが,スペイン語ベースのクレオール語が異常に少ないという事実だ.数え方にもよるが,「#1531. pidgin と creole の地理分布」 ([2013-07-06-1]) では3つ,ショダンソン (31) は7つとしている.いずれにせよ,スペインが植民地支配の大国としてならしていた歴史を考えると,不思議なくらいにそのクレオール語は目立たない.例えば,同じイスパニョーラ島にあって,ハイチにはフランス語クレオールがあるが,ドミニカ共和国にはスペイン語クレオールはない.ジャマイカに英語クレオールがあるが,キューバにはスペイン語クレオールはない.
 この謎を解く鍵は,近年クレオール研究において区別されるようになってきた,小農園社会 (homestead) の段階とプランテーション社会 (plantation) の段階との差にある.フランス植民地におけるクレオール語の発展について社会言語学に論考したショダンソン (89--90) は次のように述べている.

最初の段階において、黒人奴隷は主人の家庭と白人集団のなかにしっかりと組み込まれていたので、奴隷たちは白人との接触をつうじてフランス語を学んだ。ところが第二段階になると、白人と多数の黒人奴隷とのあいだにはもはや接触がなくなった。そこで黒人奴隷たちの手本となったのは、もはやフランス語そのものではなく、自分たちの教育係であり監督係であったクレオール奴隷の話すことば、フランス語になんとなく似たことばであった。
 この点こそ決定的に重要なのである。おそらくここにおいてこそ、フランス語に対する自立化の過程がはじまったのである。黒人奴隷は彼らの言語習得のストラテジーを、白人の中心的な変種に向けてではなく、クレオール奴隷のそれ自体近似的な変種を目標としてはたらかせることとなった。しかも、自分たちの発話を白人の発話と対照させることも、さらには主人を身近にとりまく環境(いわゆる「クール」)のなかで暮らすクレオール奴隷の発話にひきあてることもできなかった。
 けれども、通時的にみても共時的にみても、厳密な意味での断絶があったわけではない。というのは、通時的にみれば、植民地は小農園社会からプランテーション社会へとじょじょに移行していったのであり、しかもプランテーションは「小農園」を完全に駆逐したわけではなかったからである。また共時的にみれば、きわめてへんぴな土地の話してにとっては自分たちの発話をフランス語そのものと対照させる機会はめったになかったとはいえ、小農園社会でもプランテーション社会でも、中心にはフランス語がいすわる求心的なモデルが存在しつづけたからである。


 では,スペイン語クレオールに関する謎に戻ろう.一般的にいえば,スペインは他の植民地支配国よりも,植民地の教育の普及に努めていたということはある.これは,クレオール語の発展を抑制する力にはなっただろう.しかし,これだけでは説明として不十分である.ショダンソン (96) は,ドミニカ共和国やキューバのようなスペイン植民地では,小農園社会からプランテーション社会への移行の時期が遅かったことが,謎の答えであるとしている.

クレオール化がおこらなかったのは、これら二つの島においては、小農園社会がきわめて長く続いたので、「ドミニカ風」や「キューバ風」のスペイン語ではあるにせよ、ともかくスペイン語が住民全体にいきわたるだけの時間があったからであると。つまり、これらの島では、プランテーション社会に移行する段階で奴隷が大量に導入されて、クレオール化の過程が生じることがなかったのである。


 これらの植民地では,17--18世紀と長く小農園社会が続き,黒人人口が白人人口を上回ったのはようやく19世紀のことだった.
 植民地における社会構造の違いが,基盤言語から heteronomous な変種が分化したのか,あるいは基盤言語から autonomous なクレオール語が発生したのかを左右するという仮説は,アメリカにおける黒人英語 (African American Vernacular English) の起源の問題にも応用されうる.これについては,明日の記事で.

 ・ ロベール・ショダンソン 著,糟谷 啓介・田中 克彦 訳 『クレオール語』 白水社〈文庫クセジュ〉,2000年.

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2013-11-23 Sat

#1671. dialect contact, dialect mixture, dialect levelling, koineization [koine][dialect][accommodation_theory][terminology][variation][geography][demography][me_dialect]

 互いに通じるが異なる方言を話す者どうしが接触する場合には,しばしば互いに自らの方言の特徴を緩和させ,言語項目を歩み寄らせる accommodation の作用が観察される.しかし,このような交流が個人レベルではなくより大きな集団レベルで生じるようになると,dialect contact方言接触) と呼ぶべき現象となる.dialect contact は,典型的には,方言境界での交流において,また都市化,植民地化,移民といった過程において生じる.
 dialect contact の結果,ある言語項目はこちらの方言から採用し,別の言語項目はあちらの方言から採用するといったランダムに見える過程,すなわち dialect mixture を経て,人々の間に方言の混合体が生まれる.
 この方言の混合体から1--2世代を経ると,各言語項目の取り得る変異形が淘汰され,少数の(典型的には1つの)形態へと落ち着く.ヴァリエーションが減少してゆくこの水平化過程は,dialect levelling と呼ばれる.
 dialect levelling (および平行して生じることの多い簡略化 (simplification) の過程)を経て,この新たな方言は koiné として発展するかもしれない (koinéization) .さらに,この koiné は,標準語形成の基盤になることもある.
 さて,dialect contact から koinéization までの一連の流れを,Trudgill (157) により今一度追ってみよう.

The dialect mixture situation would not have lasted more than a generation or possibly two, and in the end everybody in a given location would have ended up levelling out the original dialect difference brought from across the Atlantic and speaking the same dialect. This new dialect would have been 'mixed' with respect to its origins, but uniform in its current characteristics throughout the community. Where dialect levelling occurs in a colonial situation of this type --- or in the growth of a new town, for instance --- and that leads to the development of a whole new dialect, the process is known as koinéization (from the Ancient Greek word koiné meaning 'general, common').


 歴史的に確認される koinéization の例を挙げておこう.用語の起源ともなっているが,古代ギリシア語の Attic 方言は典型的な koiné である.中世ラテン語の俗ラテン語も,koinéization により生じた.また,17世紀前期にイギリスからアメリカへ最初の植民がなされた後,数世代の間に植民地で生じたのも,koinéization である.同じ過程が,様々な英語方言話者によるオーストラリア植民やニュージーランド植民のときにも生じた.さらに,近代の都市化の結果として生じた英米都市方言も,多くが koiné である.
 英語史上で dialect contact, dialect mixture, dialect levelling, koinéization の過程が想定されるのは,14世紀後半のロンドン英語においてだろう.様々な方言話者が大都市ロンドンに集まり,dialect mixture と dialect levelling が起こった.この結果として,後に標準語へと発展する変種の原型が成立したのではないか.現代英語で busy, bury, merry の綴字と発音の関係が混乱している背景にも,上記の一連の過程が関与しているのだろう.
 busy, bury, merry 等の問題については,「#562. busy の綴字と発音」 ([2010-11-10-1]),「#563. Chaucer の merry」 ([2010-11-11-1]),「#570. bury の母音の方言分布」 ([2010-11-18-1]),「#1245. 複合的な選択の過程としての書きことば標準英語の発展」 ([2012-09-23-1]),「#1434. left および hemlock は Kentish 方言形か」 ([2013-03-31-1]),「#1561. 14世紀,Norfolk 移民の社会言語学的役割」 ([2013-08-05-1]) を参照.

 ・ Trudgill, Peter. Sociolinguistics: An Introduction to Language and Society. 4th ed. London: Penguin, 2000.

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2013-09-05 Thu

#1592. 英語話者の人口を推計することが難しい理由 [statistics][demography][post-creole_continuum]

 昨日の記事「#1591. Crystal による英語話者の人口」 ([2013-09-04-1]) で,Crystal による2001年付けでの英語話者人口の推計を示した.Crystal (69) の脚注に,最近の他の研究者による推計が触れられている.

It is interesting to compare estimates for first (L1), second (L2) and foreign (F) language use over the past 40 years.
-- in Quirk (1962: 6) the totals for first (L1), second (L2) and foreign (F) were 250 (L1) and 100 (L2/F);
-- during the 1970s these totals rose to 300 (L1), 300 (L2) and 100 (F) (cf. McArthur (1922: 355));
-- Kachru (1985: 212) has 300 (L1), 300--400 (L2) and 600--700 (F);
-- Ethnologue (1988) and Bright (1992: II.74), using a Time estimate in 1986, have 403 (L1), 397 (L2) and 800 (F);
-- during the 1990s the L1 and L2 estimates rise again, though with some variation. The Columbia Encyclopedia (1993) has 450 (L1), 400 and 850 (F). Ethnologue (1992), using a World Almanac estimate in 1991, has 450 (L1) and 350 (L2).


 それぞれの推計の変動幅は決して小さくはなく,どれを信用すべきか迷うところだ.様々な推計の平均値をとるという方法も,1つの便宜的な方法かもしれない.
 この種の人口統計はある程度の不確かさを伴うのが常だが,とりわけ英語話者数というような統計には多くの困難がついてまわる.その理由を挙げてみよう.

 (1) この目的のために世界的な規模で利用できる統計がない (Crystal 61) .
 (2) 昨日の Crystal の推計に関連して触れたように,主として Expanding Circle に属する EFL 話者の数を正確に把握することはとりわけ難しい.例えば,21世紀初頭において,世界的に英語学習者の増加率が高まってきていることは確かだが,具体的にどの程度の増加率かを正確に言い当てる直接的な方法はない.
 (3) 人口統計においても英語話者を ENL, ESL, EFL と区分するモデルが用いられることが多いが,その境目がはっきりしない.また,それぞれの国・地域が上記のいずれかの区分に当てはまるという前提が立てられているが,実際には両者は厳密に対応しないことも多い.ENL と ESL の国・地域では,英語が "special place" を占めていることが前提とされているが,"special place" とは実際の英語使用度や理解度によってではなく歴史的・政治的な要因によって与えられるものにすぎない.
 (4) 「英語を話せる」レベルをどこに設定するか,客観的な基準がない.レベルを下げれば ESL や EFL の話者が数億人単位で増えるし,レベルを上げれば話者数は減る.
 (5) どの変種を英語の一種とみなすかについて合意がない.ピジン英語やクレオール英語は英語の一種としてみなすべきだろうか.相互理解可能性を問題にするのであれば,多くのピジン英語やクレオール英語は英語でないという結論になりそうだが,「#1499. スカンジナビアの "semicommunication"」 ([2013-06-04-1]) でも触れたように,理解度は言語的な距離のほかに話し手と聞き手の態度も大きく影響する.また,「#385. Guyanese Creole の連続体」 ([2010-05-17-1]) で触れた post-creole continuum のように,どこからが標準変種でどこからがピジン・クレオール変種なのかが判然としない例もある.

 ・ Crystal, David. English As a Global Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.

Referrer (Inside): [2016-12-09-1]

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2013-09-04 Wed

#1591. Crystal による英語話者の人口 [statistics][demography][enl][esl][efl][elf][new_englishes][pidgin][creole]

 昨日の記事で扱った「#1590. アジア英語の諸変種」 ([2013-09-03-1]) から世界の英語変種へ目を広げると,それこそおびただしい English varieties が,今現在,発展していることがわかる.英語変種の数ばかりでなく英語変種の話者の数もおびただしく,「#397. 母語話者数による世界トップ25言語」 ([2010-05-29-1]) の記事の終わりで触れたように,母語話者数と非母語話者を足し合わせると,英語は世界1の大言語となる.英語話者人口の過去,現在,未来については,以下の記事で扱ってきた.

 ・ 「#319. 英語話者人口の銀杏の葉モデル」 ([2010-03-12-1])
 ・ 「#427. 英語話者の泡ぶくモデル」 ([2010-06-28-1])
 ・ 「#933. 近代英語期の英語話者人口の増加」 ([2011-11-16-1])
 ・ 「#173. ENL, ESL, EFL の話者人口」 ([2009-10-17-1])
 ・ 「#375. 主要 ENL,ESL 国の人口増加率」 ([2010-05-07-1])
 ・ 「#759. 21世紀の世界人口の国連予測」 ([2011-05-26-1])
 ・ 「#414. language shift を考慮に入れた英語話者モデル」 ([2010-06-15-1])

 現在の世界における英語話者人口を正確に把握することは難しい.Crystal (61, 65--67) で述べられているように,この種の人口統計には様々な現実的・理論的な制約が課されるからだ.Crystal (62--65) は,その制約のなかで2001年現在の英語人口を推計した.近年,最もよく引き合いに出される英語話者の人口統計である.

TerritoryL1L2Population (2001)
American Samoa2,00065,00067,000
Antigua & Barbuda*66,0002,00068,000
Aruba9,00035,00070,000
Australia14,987,0003,500,00018,972,000
Bahamas*260,00028,000298,000
Bangladesh 3,500,000131,270,000
Barbados*262,00013,000275,000
Belize*190,00056,000256,000
Bermuda63,000 63,000
Botswana 630,0001,586,000
British Virgin Islands*20,000 20,800
Brunei10,000134,000344,000
Cameroon* 7,700,00015,900,000
Canada20,000,0007,000,00031,600,000
Cayman Islands*36,000 36,000
Cook Islands1,0003,00021,000
Dominica*3,00060,00070,000
Fiji6,000170,000850,000
Gambia* 40,0001,411,000
Ghana* 1,400,00019,894,000
Gibraltar28,0002,00031,000
Grenada*100,000 100,000
Guam58,000100,000160,000
Guyana*650,00030,000700,000
Hong Kong150,0002,200,0007,210,000
India350,000200,000,0001,029,991,000
Ireland3,750,000100,0003,850,000
Jamaica*2,600,00050,0002,665,000
Kenya 2,700,00030,766,000
Kiribati 23,00094,000
Lesotho 500,0002,177,000
Liberia*600,0002,500,0003,226,000
Malawi 540,00010,548,000
Malaysia380,0007,000,00022,230,000
Malta13,00095,000395,000
Marshall Islands 60,00070,000
Mauritius2,000200,0001,190,000
Micronesia4,00060,000135,000
Montserrat*4,000 4,000
Namibia14,000300,0001,800,000
Nauru90010,70012,000
Nepal 7,000,00025,300,000
New Zealand3,700,000150,0003,864,000
Nigeria* 60,000,000126,636,000
Northern Marianas*5,00065,00075,000
Pakistan 17,000,000145,000,000
Palau50018,00019,000
Papua New Guinea*150,0003,000,0005,000,000
Philippine$20,00040,000,00083,000,000
Puerto Rico100,0001,840,0003,937,000
Rwanda 20,0007,313,000
St Kitts & Nevis*43,000 43,000
St Lucia*31,00040,000158,000
St Vincent & Grenadines*114,000 116,000
Samoa1,00093,000180,000
Seychelles3,00030,00080,000
Sierra Leone*500,0004,400,0005,427,000
Singapore350,0002,000,0004,300,000
Solomon Islands*10,000165,000480,000
South Africa3,700,00011,000,00043,586,000
Sri Lanka10,0001,900,00019,400,000
Suriname*260,000150,000434,000
Swaziland 50,0001,104,000
Tanzania 4,000,00036,232,000
Tonga 30,000104,000
Trinidad & Tobago*1,145,000 1,170,000
Tuvalu 80011,000
Uganda 2,500,00023,986,000
United Kingdom58,190,0001,500,00059,648,000
UK Islands (Channel, Man)227,000 228,000
United States215,424,00025,600,000278,059,000
US Virgin Islands*98,00015,000122,000
Vanuatu*60,000120,000193,000
Zambia110,0001,800,0009,770,000
Zimbabwe250,0005,300,00011,365,000
Other dependencies20,00015,00035,000
Total329,140,800430,614,5002,236,730,800


 * の付いている国・地域は,標準英語ではなく pidgin/creole 英語が主として話されている国・地域である.pidgin/creole 変種を英語の一種とみなすか否かは論争の的となっているので,立場に応じて数値を足し引きされたい(具体的には,L1 で主として西インド諸島の約700万人が,L2 で主として西アフリカの約8,000万人が関与する).また,L1 および L2 の人口は原則として少なめの推計とみてよい.さらにこの表には,「#217. 英語話者の同心円モデル」 ([2009-11-30-1]) の図でいうところの Expanding Circle の国・地域は含まれていないことにも注意されたい.
 上で挙げた国・地域については,「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]) および「#215. ENS, ESL 地域の英語化した年代」 ([2009-11-28-1]) も参照.

 ・ Crystal, David. English As a Global Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.

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2013-08-05 Mon

#1561. 14世紀,Norfolk 移民の社会言語学的役割 [sociolinguistics][me_dialect][history][geography][demography][geolinguistics]

 古英語 West-Saxon 方言の y で表わされる母音が,中英語では方言により i, u, e などとして現われることについては,「#562. busy の綴字と発音」 ([2010-11-10-1]),「#563. Chaucer の merry」 ([2010-11-11-1]),「#570. bury の母音の方言分布」 ([2010-11-18-1]),「#1434. left および hemlock は Kentish 方言形か」 ([2013-03-31-1]) などの記事で取り上げた.
 14世紀後半より書き言葉の標準が徐々に発達していたときに,どの方言形が標準的な形態として最終的に選択されたかにより,現代英語の busy, bury, merry などに見られるような,綴字と発音の種々の関係が帰結してしまった.「#562. busy の綴字と発音」 ([2010-11-10-1]) では「個々の語の標準形がどの方言に由来するかはランダムとしかいいようがない」と述べたが,標準化に際して,現代英語の kinsin につらなる単語など,大多数が北部・東部に由来する i を反映することになったことは事実である.傾向として i が多かったという事実については,何らかの説明が可能かもしれない.
 この問題について,地村 (33--35) は G. Kristensson ("Sociolects in 14th-Century London." Nonstandard Varieties of Language: Papers from the Stockholm Symposium 11--13 April 1991. Stockholm: Almqvist & Wiksell International, 1994. 103--10) の議論に拠りながら,14世紀のロンドンに流入した Norfolk 出身の人々が担っていた社会言語学的な役割を指摘している.14世紀初頭のロンドンへの移民リストのなかで,Norfolk 出身者がトップの座を占めていた.Norfolk からの著しい人口流入は少なくとも1360年までは続いており,これらの Norfolk 移民は主として行政や商業に関する職業に就いていたため,ロンドンにおいて社会的に優勢な集団を形成していたと考えられる.そして,彼らの社会的な地位とともに,彼らが故郷からもってきた北部・東部系の i の地位も上昇し,最終的にロンドンにおいて威信ある発音として受け入れられたのではないかという.

ロンドンにいるノーフォーク出身の人々は人口の上層部、つまり行政方面で影響を与える商人の階級を形成したことがわかる。彼らの方言は次の点でロンドンの地方言とは逸脱していた。OE /y(:)/ に対して /i(:)/、stret におけるように OE /æ:/ に対して /ɛ:/ または /e:/、fen におけるように OE /e/ に対して /e/、milk におけるように OE /eo/ に対して /i/、flax, wax のような語では /a/、old, cold のような語では /ɔ:/、fen, fair のような語では /f-/ である。ロンドン英語におけるこの変種は14世紀前半に生じて、14世紀後半では重要な社会方言として目立つようになったと言っても過言ないであろう。この英語は、裕福な商人の階級の属する人達によって使用され、恐らく格式の高い方言となり、フランス語とラテン語が公用語の地位を失った時、(政府の)官庁で使われた模範的な言語となった。政府高官の多くはノーフォークの移住民集団に所属していたように思われる。(地村,pp. 33--35)


 では,なぜ Norfolk からの移民がこの時期これほどまでに著しかったのだろうか.1つには,この地域がイングランドで最も人口密度の高い地域であったことが挙げられる.しかし,より重要なことは,Norfolk 人の多くが,イングランドに大きな富をもたらす羊毛産業に従事していたことである.さらに,Norfolk は古英語後期からの歴史的事情によりスカンディナヴィア系の人口を多く抱えており,農民は他の地域の農奴 (villein) よりも自由な地位を有していたために,産業活動の発達と商人階級の勃興が促されたという事情もあったろう.
 以上のような人口分布,経済活動,歴史的条件が相俟って,Norfolk 方言がロンドンにおいて幅を利かせることとなったということが事実だとすれば,これはまさに「#1543. 言語の地理学」 ([2013-07-18-1]) の話題だろう.その記事の終わりに示した「エスニーの一般的特徴」の図において枠で囲ったキーワードのほとんどが,上の議論に関与している(すなわち,言語,領域,住民,経済,社会階級,都市網,主要都市,政治制度).

 ・ 地村 彰之 『チョーサーの英語の世界』 溪水社,2011年.

Referrer (Inside): [2013-11-23-1]

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2013-07-18 Thu

#1543. 言語の地理学 [geolinguistics][geography][sociolinguistics][demography][language_shift][language_death][world_languages][terminology]

 ブルトンの『言語の地理学』を読み,地理学の観点から言語を考察するという新たなアプローチに気づかされた.言語における地理的側面は,方言調査,言語変化の伝播の理論,言語圏 (linguistic area; see [2012-12-01-1]) の研究などで前提とはされてきたが,あまりに当然のものとみなされ,表面的な関心しか払われてこなかったといえるかもしれない.このことは,「#1053. 波状説の波及効果」 ([2012-03-15-1]) の記事でも触れた.
 言語の地理学,言語地理学,地理言語学などと呼び方はいろいろあるだろうが,これはちょうど言語の社会学か社会言語学かという区分の問題に比較される.Trudgill (56) の用語集で geolinguistics を引いてみると,案の定,この呼称には2つの側面が区別されている.

(1) A relatively recent label used by some linguists to refer to work in sociolinguistics which represents a synthesis of Labovian secular linguistics and spatial dialectology. The quantitative study of the geographical diffusion of words or pronunciations from one area to another is an example of work in this field. (2) A term used by human geographers to describe modern quantitative research on geographical aspects of language maintenance and language shift, and other aspects of the spatial relationships to be found between languages and dialects. An example of such work is the study of geographical patterning in the use of English and Welsh in Wales. Given the model of the distinction between sociolinguistics and the sociology of language, it might be better to refer to this sort of work as the geography of language.


 伝統的な方言研究や言語変化の伝播の研究では,言語項目の地理的な分布を明らかにするという作業が主であるから,それは「地理言語学」と呼ぶべき (1) の領域だろう.一方,ブルトンが話題にしているのは,「言語の地理学」と呼ぶべき (2) の領域である.後者は,民族や宗教や国家や経済などではなく言語という現象に焦点を当てる地理学である,といえる.
 言語の地理学で扱われる話題は多岐にわたるが,その代表の1つに,「#1540. 中英語期における言語交替」 ([2013-07-15-1]) で具体的にその方法論を適用したような言語交替 (language shift) がある.また,失われてゆく言語の保存を目指す言語政策の話題,言語の死の話題も,話者人口の推移といった問題も言語の地理学の重要な関心事だろう.世界の諸言語の地理的な分布という観点からは,先述の言語圏という概念も関与する.諸文字の地理的分布も同様である.
 ブルトンが打ち立てようとしている言語の地理学がどのような性格と輪郭をもつものなのか,直接ブルトンに語ってもらおう.

結局,地理学者は,社会史学的・経済学的な次元の人文現象と言語とのあいだの空間的相関関係の確立に習熟しているのである.そして中でも,自然環境や生物地理的環境との相関関係はお手のものである.言語が,自然環境に直接働きかけるものでない以上,言語については本来の生態学を語ることはできない.しかしすべての言語は,住民の中に独自の分布を示しており,住民は言語の環境でもある.したがってまた共通の言語を備えた人間集団の生態学が存在するのである.そしてある文化的特徴――言語――がある一つの環境――またはいくつかの環境――の中で,他の文化的・社会的・経済的特質と同様の,あるいは異なったしかたで,どのように拡大しどのように維持されどのように定着できたかを明らかにするには,地理学者はまさに資格十分である.(29--30)


 実際にはブルトンは,言語の地理学を,さらに大きな文化地理学へと結びつけようとしている.

自然現象と文化現象の2つの領域を厳密に分けることによってのみ,人種や人類学的圏域のような概念を理解し利用することが可能となり,これら人種圏の範囲と文化的な集合体の範囲とを比較することができる.この文化的集合体の中でも,言語的,宗教的,政治的属性といった異なる次元のあいだの相違は,長いあいだ,より明確に認識されてきた.そこからエスニー(民族言語的共同体)や信仰社会集団や国家といったような,それぞれの区別に対応する共同体や構造についての認識が派生してきたのである./文化の諸特徴の地理学から,われわれはいまや文化それ自体の地理学へと近づくことができる.すなわち,社会の言語的・宗教的・歴史政治的な遺産を結びつけ,そして思考と仲間意識との個性的な諸体系を生みだすような文化の集合体に関する地理学へ,である.この文化地理学はそれゆえに,大きなあるいは社会全体の人間集団を見極めることを目的とする.これらの集団は,場合に応じて部族,エスニー,国家,大文明の一大単位などと同列視されるのである.地理学者はこれらの集団の生態学を,その内部運動,偶発的な相互依存,さらにそれらの機能的な階層性,依存度または支配度,文化の受容と放棄といった個別的または集団的な現象による浸透力などの側面から研究する.経済活動の優先性が一般に認められている世界では,文化地理学は社会の中で経済人の反対の側に生きいきと存在しているものを見分けるという使命を帯びているのである.(32--33)


 要するに,ブルトンの姿勢は,社会における言語という大局観のもとで言語の地理的側面に焦点を当てるということである.以下は,その大局観と焦点の関係を図示したものである(ブルトン,p. 47,「エスニーの一般的特徴」).言語の社会学や社会言語学のための見取り図としても解釈できる.

General Characteristics of Ethnie


 なお,上の引用文で用いられているエスニーという概念と用語については,「#1539. ethnie」 ([2013-07-14-1]) を参照.

 ・ Trudgill, Peter. A Glossary of Sociolinguistics. Oxford: Oxford University Press, 2003.
 ・ ロラン・ブルトン 著,田辺 裕・中俣 均 訳 『言語の地理学』 白水社〈文庫クセジュ〉,1988年.

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2013-01-31 Thu

#1375. インターネットの使用言語トップ10 [elf][statistics][internet][demography][world_languages]

 世界のインターネット使用が爆発的に増加している.Miniwatts Marketing Group による Internet World Stats: Usage and Population Statistics から Internet World Users by Language: Top 10 Languages のデータを参照すると,2000--2011年のあいだに全世界での使用者数が約5倍増えたと報告されている.では,インターネットの使用言語の分布についてはどうか.同ページより,インターネットにおけるトップ10言語の統計値を再掲しよう.2011年5月31日現在の数値である.

TOP TEN LANGUAGES IN THE INTERNETInternet Users by LanguageInternet Penetration by LanguageGrowth in Internet (2000--2011)Internet Users% of TotalWorld Population for this Language (2011 Estimate)
English565,004,12643.4%301.4%26.8%1,302,275,670
Chinese509,965,01337.2%1,478.7%24.2%1,372,226,042
Spanish164,968,74239.0%807.4%7.8%423,085,806
Japanese99,182,00078.4%110.7%4.7%126,475,664
Portuguese 82,586,60032.5% 990.1%3.9%253,947,594
German75,422,67479.5%174.1%3.6%94,842,656
Arabic65,365,40018.8% 2,501.2%3.3%347,002,991
French59,779,52517.2%398.2%3.0%347,932,305
Russian59,700,00042.8%1,825.8%3.0%139,390,205
Korean39,440,00055.2% 107.1%2.0%71,393,343
TOP 10 LANGUAGES1,615,957,33336.4%421.2%82.2%4,442,056,069
Rest of the Languages350,557,48314.6%588.5%17.8%2,403,553,891
WORLD TOTAL2,099,926,96530.3% 481.7%100.0%6,930,055,154


 トップの言語は,いまだ英語である.トップを守っているという点では,「#1084. 英語の重要性を示す項目の一覧」 ([2012-04-15-1]) で見た通り,1980--90年代の状況と異ならない.しかし,増加率という点では,おそらく当時の勢いから大きく減退している.少なくとも,中国語,スペイン語,ポルトガル語,アラビア語,ロシア語などと比べて相対的に勢いは衰えているといえる([2009-10-08-1]の記事「#164. インターネットの非英語化」を参照).インターネット使用者数そのものでみれば,英語は早晩中国語に抜かれることは間違いないが,第3位のスペイン語との間にはまだ隔たりがある.現在は,英中ツートップの時代といえそうだ.
 なお,最右列の言語話者の人口統計は U.S. Census Bureau に基づくものだというが,そこでは英語話者人口が約13億7千万とされている.これは,母語話者のみならず第2言語話者も含めた値であることは疑いない.
 第2列と最右列の下の3行をみると,いかに少数の言語が世界の大部分を占めているかがわかる.関連して,「#274. 言語数と話者数」 ([2010-01-26-1]) のピラミッド状の分布を参照されたい.
 ほかに英語話者人口にまつわる統計は,本ブログ内の以下の記事でも触れているので,参考までに.

 ・ 「#375. 主要 ENL,ESL 国の人口増加率」 ([2010-05-07-1])
 ・ 「#397. 母語話者数による世界トップ25言語」 ([2010-05-29-1])
 ・ 「#759. 21世紀の世界人口の国連予測」 ([2011-05-26-1])

Referrer (Inside): [2015-07-08-1]

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2011-11-16 Wed

#933. 近代英語期の英語話者人口の増加 [statistics][demography]

 英語話者人口については共時的,通時的な側面から demography のいくつかの記事で取り上げてきた.特に以下を参照.

 ・ [2009-10-17-1]: #173. ENL, ESL, EFL の話者人口
 ・ [2010-03-12-1]: #319. 英語話者人口の銀杏の葉モデル
 ・ [2010-05-07-1]: #375. 主要 ENL,ESL 国の人口増加率
 ・ [2010-06-15-1]: #414. language shift を考慮に入れた英語話者モデル
 ・ [2010-06-28-1]: #427. 英語話者の泡ぶくモデル

 通時的な英語話者人口の推移については,諸文献で様々な推測値が概数として挙げられている.[2010-03-12-1]の「銀杏の葉モデル」の図中に示されている数値もその一つである.値は大きく異ならないが,『英語史総合年表』に記されている概数をもとに,人口の推移グラフを作成してみた.1500年から1900年までの100年刻みでの人口統計である.

Growth of English Speaking Population from 1500 to 1900
YearEnglish-Speaking Population
1500about 5 million
1600about 6--7 million
1700about 8 million (including about 2 million that had emigrated to the New World)
180020--40 million
1900about 123 million


 19世紀の爆発的増加が視覚的に表わされている.そして,20世紀のさらなる爆発により,2000年の段階で,上のグラフの高さを10倍にしても足りないほどの話者数を示すことになる.現在,第2言語話者,外国語話者を合わせて,英語を話す人口は15--20億と推定されている.

 ・ 寺澤 芳雄,川崎 潔 編 『英語史総合年表−英語史・英語学史・英米文学史・外面史−』 研究社,1993年.

Referrer (Inside): [2013-09-04-1]

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2011-05-26 Thu

#759. 21世紀の世界人口の国連予測 [demography][statistics][elf]

 2011年5月3日付けで国連の World Population Prospects: The 2010 Revision が公表された.プレスリリースのPDFはこちら
 これによると,世界人口は今年10月末までに70億人に達し,2050年には93億人,2100年には101億人に達するとされる.人口を押し上げる主因は高い出生率を示す国々で,これにはアフリカの39カ国,アジアの9カ国,オセアニアの6カ国,ラテンアメリカの4カ国が含まれるという.
 主な国の数値を示すと,日本の人口は2010年の1億2600万人から2100年には約9130万人へ減少.中国の人口は1925年の約13億9500万人をピークに,2100年には約9億4100万人へ減少.インドの人口は,1925年に中国を追い抜き,1960年には17億1796万人に達し,2100年には約15億5000万人へ減少.
 大規模な人口統計予測には多くの前提が含まれている.例えば,プレスリリースの標題にもあるように "if Fertility in all Countries Converges to Replacement Level" という前提がある.したがって解釈には注意を要するが,英語話者人口を推計する上でも,このような統計値は最重要である.[2010-05-07-1]の記事「主要 ENL,ESL 国の人口増加率」で取り上げた主要ENL国(7カ国;参考として日本を追加)とESL国(13カ国)について,2100年までの人口推移( medium variant に基づく)をグラフ化してみた.

Population Shift in ENL Countries and Japan
Population Shift in ESL Countries


 ENL国はアメリカを除いて今世紀は低迷の予測だ.一方,ESL国は今世紀半ばにかけて伸長著しく,後半も衰えにくい.インドは突き抜けており,ナイジェリア,パキスタン,タンザニアの勢いも目を見張るものがある.
 国別の人口予測をもとに未来の英語話者の人口予測をすることは単純な作業ではないが,少なくともESL国の人口爆発力が具体的な予測に基づいて視覚的に確認されたとはいえるだろう.
 英語話者人口については,[2010-06-28-1], [2010-06-15-1], [2010-05-29-1]の記事も参照.

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2010-06-28 Mon

#427. 英語話者の泡ぶくモデル [elf][model_of_englishes][variety][demography]

 英語話者の分類については,いろいろな形で記事にしてきた ( see [2009-10-17-1], [2009-11-30-1], [2009-12-05-1], [2010-01-24-1], [2010-03-12-1], [2010-06-15-1] ) .もっとも基本的なモデルは[2009-11-30-1]の記事でみた Kachru による同心円モデルだが,Kachru はその後もこれに基づく応用モデルをいくつか公開してきた.今回は,そのうちの一つ,私が「泡ぶくモデル」と呼んでいるものを紹介する.下図は,各種のモデルを批評している McArthur の論文に掲載されていた図をもとに,私が改変を加えたものである.

Bubble Model of English Speakers by Kachru

 これが同心円モデルの発展版であることは,国名の掲載されている楕円のうち,一番下が Inner Circle,真ん中が Outer Circle,一番上が Expanding Circle に対応することからも分かる.しかし,泡ぶくモデルが特徴的なのは以下の点においてである.

 ・ 太古の昔が下方,現在から未来にかけてが上方に位置づけられており,英語の拡大の歴史が「湧き上がるあぶく」としてより動的に表現されている
 ・ 英語の拡大が具体的な人口統計の情報とともに示されている.[2010-03-12-1]で示した銀杏の葉モデルも人口を示している点で類似するが,泡ぶくモデルでは主要な国について具体的な数値が挙げられている.なお,上記の人口統計は,[2010-05-07-1]で挙げた情報源を参照して,最新の2010年における数値を私が書き入れたものである.挙げた国名については網羅はできないので,[2009-10-21-1]のリストを参照しながら,特に人口の多い国をピックアップした.
 ・ 英語話者の中核を占めるのは Inner Circle ではなく,むしろ Outer Circle や Expanding Circle であるという解釈を誘う

 ・ McArthur, Tom. "Models of English." English Today 32 (October 1992). 12--21.

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2010-06-15 Tue

#414. language shift を考慮に入れた英語話者モデル [language_shift][model_of_englishes][demography]

 昨日の記事[2010-06-14-1]で,カメルーンで英語を巡って起こっている language shift を取りあげた.カメルーンで ENL 話者が徐々に増加するという傾向が続けば,同国は ESL 的な地域からより ENL 的な地域へと位置づけが変わることになるのかもしれない.一方,EFL 地域から ESL 地域へと位置づけが変わりつつある国については[2009-06-23-1]で列挙した.
 [2009-11-30-1][2009-10-17-1]で導入した ENL, ESL, EFL という英語話者の同心円モデルはあくまで静的であるが,カメルーンを含めたこうした国々の言語事情をみていると,実際にはもっと動的なモデルが必要であることがわかる.この問題意識から,Graddol (10) は三つの円を部分的に重ね合わせた動的な英語話者モデルを新たに提案した.

Dynamic Circle Mode of English Speakers by Graddol

 このモデルの要点は二つある.一つは,language shift の現実が反映されているということだ.EFL から L2 ( ESL ) への乗り換えのほうが,L2 ( ESL ) から L1 ( ENL ) への乗り換えよりも数が大きいことが移行線の太さで示唆されている.もう一つは,L2 speakers が今後の英語話者の中核を担う層になってゆくことを暗示している点だ.L2 speakers は EFL 話者から language shift による大量の移行を受け,内部でも India, Pakistan, Bangladesh, Nigeria, the Philippines など人口増加率の大きい国を擁しているために ([2010-05-07-1]),規模と影響力において英語話者全体のなかで中心的な役割を果たすことになる可能性がある.このことは,L2 speakers が三つの円のなかで中央に位置づけられていることにより表されている.
 Graddol のモデルは,少なくとも21世紀前半の英語話者のトレンドを表すものとして有効だと思われる.

 ・ Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm

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2010-05-30 Sun

#398. 印欧語族は世界人口の半分近くを占める [indo-european][world_languages][statistics][demography]

 印欧語族 ([2009-06-17-1]) は世界最大の語族であり,世界最大の母語話者人口を誇っている.他書(何だったか失念)では印欧語族は世界の 1/4 を占めると記されており,私もその概数をそのまま信じて本ブログでも [2009-08-05-1] で言及したことがあった.ところが EthnologueTable 4. Major language families of the world によると相当に異なる数値が提示されている.印欧語族に属する諸言語は,世界人口の 45.67% に相当する27億余りの人々によって話されているという.1/4 どころかほぼ半数であり,大きな違いだ.人口統計は様々な前提・仮定の上ではじき出されるものなのでなかなか評価が難しいが,Ethnologue に基づく限り,2位のシナ・チベット語族 ( Sino-Tibetan ) の人口 12.5 億人を大きく引き離してのトップである.昨日の記事[2010-05-29-1]でまとめた母語話者数による言語のランキング表でも,トップ10言語のなかで7言語までが印欧語族に属するので,世界における影響力が知れよう.
 Ethnologue の Summary by language family によると,世界の言語は116の語族 ( language family ) に分かれ,そのなかの主要6語族のみで世界の言語の 2/3 を占め,世界の人口の 5/6 を占めるという.
 また,Ethnologue の Indo-European の区分 では,印欧語族を Albanian, Armenian, Baltic, Celtic, Germanic, Greek, Indo-Iranian, Italic, Slavic の9語派に下位分類していることがわかる.

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