1月21日(木)の読売新聞の朝刊の記事より.
香港政府は昨年、約400校ある中学の教育改革案を公表、来年度から英語教育を強化する方針を打ち出した。これにより、英語で授業を行う学校が増加、同校[景嶺書院中学]もその一つとなる。
英国の植民地だった香港は1997年の中国変返還時、「中学の授業は原則、母語の中国語で行う」という方針を決めた。多くの中学の使用言語が英語から中国語に切り替わり、英語で授業を行う中学は100校ほどに限られた。
しかし、保護者の反発は大きかった。英語力は入試だけでなく、就職や留学の正否に直結。また、香港の大学は通常、英語で授業が行われ、市民は英語力を社会的成功への必須能力と考えているからだ。
香港は1842年から1997年の返還時まで英国植民地だった.第一次世界大戦までは英語は植民地支配のための言語であり,その使用は政治,法律,専門職,教育の分野に限られていた.第二次世界大戦までには,西洋で教育を受けた中国人エリートの間では商業や専門職の分野で英語使用が広がった.そして,大戦後には,英語は広く地域のコミュニケーションのための言語へと成長した.もちろん,これは香港が商業・金融センターとして世界的に発展してきたことと密接に関連している.
返還直前の統計だが,香港の600万余の人口のうち約3分の1(200万人ほど)が主に第二言語として英語を話すとされる.返還後どのように英語話者の分布が変わったか,あるいは変わっていないかについて確認する必要があるが,上の記事にあるように,教育の現場での英語の揺り戻しが起きていることは明確なようだ.独立後の英語教育の揺り戻しは Malaysia にも例があるが,EIL ( English as an International Language ) の観点からは,Hong Kong English や Malaysian English などの地域変種の出現・確立といった話題にアンテナを張っておきたい.
現在,Hong Kong English は,英語の一変種として国際的に広く認知されているわけではない.しかし特有の発音や語彙があることは間違いなく,今後,どのように発展し,どのように認知されてゆくか見守ってゆきたい.
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