昨日の記事[2010-06-14-1]で,カメルーンで英語を巡って起こっている language shift を取りあげた.カメルーンで ENL 話者が徐々に増加するという傾向が続けば,同国は ESL 的な地域からより ENL 的な地域へと位置づけが変わることになるのかもしれない.一方,EFL 地域から ESL 地域へと位置づけが変わりつつある国については[2009-06-23-1]で列挙した.
[2009-11-30-1]や[2009-10-17-1]で導入した ENL, ESL, EFL という英語話者の同心円モデルはあくまで静的であるが,カメルーンを含めたこうした国々の言語事情をみていると,実際にはもっと動的なモデルが必要であることがわかる.この問題意識から,Graddol (10) は三つの円を部分的に重ね合わせた動的な英語話者モデルを新たに提案した.
このモデルの要点は二つある.一つは,language shift の現実が反映されているということだ.EFL から L2 ( ESL ) への乗り換えのほうが,L2 ( ESL ) から L1 ( ENL ) への乗り換えよりも数が大きいことが移行線の太さで示唆されている.もう一つは,L2 speakers が今後の英語話者の中核を担う層になってゆくことを暗示している点だ.L2 speakers は EFL 話者から language shift による大量の移行を受け,内部でも India, Pakistan, Bangladesh, Nigeria, the Philippines など人口増加率の大きい国を擁しているために ([2010-05-07-1]),規模と影響力において英語話者全体のなかで中心的な役割を果たすことになる可能性がある.このことは,L2 speakers が三つの円のなかで中央に位置づけられていることにより表されている.
Graddol のモデルは,少なくとも21世紀前半の英語話者のトレンドを表すものとして有効だと思われる.
・ Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm.
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