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demography - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-04-20 10:59

2010-06-28 Mon

#427. 英語話者の泡ぶくモデル [elf][model_of_englishes][variety][demography]

 英語話者の分類については,いろいろな形で記事にしてきた ( see [2009-10-17-1], [2009-11-30-1], [2009-12-05-1], [2010-01-24-1], [2010-03-12-1], [2010-06-15-1] ) .もっとも基本的なモデルは[2009-11-30-1]の記事でみた Kachru による同心円モデルだが,Kachru はその後もこれに基づく応用モデルをいくつか公開してきた.今回は,そのうちの一つ,私が「泡ぶくモデル」と呼んでいるものを紹介する.下図は,各種のモデルを批評している McArthur の論文に掲載されていた図をもとに,私が改変を加えたものである.

Bubble Model of English Speakers by Kachru

 これが同心円モデルの発展版であることは,国名の掲載されている楕円のうち,一番下が Inner Circle,真ん中が Outer Circle,一番上が Expanding Circle に対応することからも分かる.しかし,泡ぶくモデルが特徴的なのは以下の点においてである.

 ・ 太古の昔が下方,現在から未来にかけてが上方に位置づけられており,英語の拡大の歴史が「湧き上がるあぶく」としてより動的に表現されている
 ・ 英語の拡大が具体的な人口統計の情報とともに示されている.[2010-03-12-1]で示した銀杏の葉モデルも人口を示している点で類似するが,泡ぶくモデルでは主要な国について具体的な数値が挙げられている.なお,上記の人口統計は,[2010-05-07-1]で挙げた情報源を参照して,最新の2010年における数値を私が書き入れたものである.挙げた国名については網羅はできないので,[2009-10-21-1]のリストを参照しながら,特に人口の多い国をピックアップした.
 ・ 英語話者の中核を占めるのは Inner Circle ではなく,むしろ Outer Circle や Expanding Circle であるという解釈を誘う

 ・ McArthur, Tom. "Models of English." English Today 32 (October 1992). 12--21.

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2010-06-15 Tue

#414. language shift を考慮に入れた英語話者モデル [language_shift][model_of_englishes][demography]

 昨日の記事[2010-06-14-1]で,カメルーンで英語を巡って起こっている language shift を取りあげた.カメルーンで ENL 話者が徐々に増加するという傾向が続けば,同国は ESL 的な地域からより ENL 的な地域へと位置づけが変わることになるのかもしれない.一方,EFL 地域から ESL 地域へと位置づけが変わりつつある国については[2009-06-23-1]で列挙した.
 [2009-11-30-1][2009-10-17-1]で導入した ENL, ESL, EFL という英語話者の同心円モデルはあくまで静的であるが,カメルーンを含めたこうした国々の言語事情をみていると,実際にはもっと動的なモデルが必要であることがわかる.この問題意識から,Graddol (10) は三つの円を部分的に重ね合わせた動的な英語話者モデルを新たに提案した.

Dynamic Circle Mode of English Speakers by Graddol

 このモデルの要点は二つある.一つは,language shift の現実が反映されているということだ.EFL から L2 ( ESL ) への乗り換えのほうが,L2 ( ESL ) から L1 ( ENL ) への乗り換えよりも数が大きいことが移行線の太さで示唆されている.もう一つは,L2 speakers が今後の英語話者の中核を担う層になってゆくことを暗示している点だ.L2 speakers は EFL 話者から language shift による大量の移行を受け,内部でも India, Pakistan, Bangladesh, Nigeria, the Philippines など人口増加率の大きい国を擁しているために ([2010-05-07-1]),規模と影響力において英語話者全体のなかで中心的な役割を果たすことになる可能性がある.このことは,L2 speakers が三つの円のなかで中央に位置づけられていることにより表されている.
 Graddol のモデルは,少なくとも21世紀前半の英語話者のトレンドを表すものとして有効だと思われる.

 ・ Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm

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2010-05-30 Sun

#398. 印欧語族は世界人口の半分近くを占める [indo-european][world_languages][statistics][demography]

 印欧語族 ([2009-06-17-1]) は世界最大の語族であり,世界最大の母語話者人口を誇っている.他書(何だったか失念)では印欧語族は世界の 1/4 を占めると記されており,私もその概数をそのまま信じて本ブログでも [2009-08-05-1] で言及したことがあった.ところが EthnologueTable 4. Major language families of the world によると相当に異なる数値が提示されている.印欧語族に属する諸言語は,世界人口の 45.67% に相当する27億余りの人々によって話されているという.1/4 どころかほぼ半数であり,大きな違いだ.人口統計は様々な前提・仮定の上ではじき出されるものなのでなかなか評価が難しいが,Ethnologue に基づく限り,2位のシナ・チベット語族 ( Sino-Tibetan ) の人口 12.5 億人を大きく引き離してのトップである.昨日の記事[2010-05-29-1]でまとめた母語話者数による言語のランキング表でも,トップ10言語のなかで7言語までが印欧語族に属するので,世界における影響力が知れよう.
 Ethnologue の Summary by language family によると,世界の言語は116の語族 ( language family ) に分かれ,そのなかの主要6語族のみで世界の言語の 2/3 を占め,世界の人口の 5/6 を占めるという.
 また,Ethnologue の Indo-European の区分 では,印欧語族を Albanian, Armenian, Baltic, Celtic, Germanic, Greek, Indo-Iranian, Italic, Slavic の9語派に下位分類していることがわかる.

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2010-05-29 Sat

#397. 母語話者数による世界トップ25言語 [statistics][world_languages][demography]

 このブログでも何度も参照している Ethnologue の16版が2009年に出版された.オンライン版の Ethnologue で世界の言語にまつわる様々な数値を眺めていたら,英語の母語話者人口について新事実に出くわした.Table 3. Languages with at least 3 million first-language speakers によると,英語はスペイン語に僅差で追い越され,2位から3位に転落していたのである.すっかり見逃していた.
 以下は上記のページから取った上位25位までの言語のデータを見やすくまとめたもの.右隅の列には,1996年出版の Ethnologue 13版に基づく数値を比較のために添えた( Graddol, p. 8 から埋められた部分のみ).Hindi については,Hindi と Urdu を一つとして扱った場合の数値をかっこ内に示した.

RankLanguagePrimary CountryCountriesSpeakers (16th ed, 2009)(13th ed, 1996)
1ChineseChina311,213 million1,123
2SpanishSpain44329266
3EnglishUnited Kingdom112328322
4ArabicSaudi Arabia57221202
5HindiIndia20182 (242.6 with Urdu)(236 with Urdu)
6BengaliBangladesh10181189
7PortuguesePortugal37178170
8RussianRussian Federation33144288
9JapaneseJapan25122125
10GermanGermany4390.398
11JavaneseIndonesia584.6 
12LahndaPakistan878.3 
13TeluguIndia1069.8 
14VietnameseViet Nam2368.6 
15MarathiIndia568.1 
16FrenchFrance6067.872
17KoreanSouth Korea3366.3 
18TamilIndia1765.7 
19ItalianItaly3461.763
20UrduPakistan2360.6 
21TurkishTurkey3650.8 
22GujaratiIndia2046.5 
23PolishPoland2340.0 
24MalayMalaysia1439.147
25BhojpuriIndia338.5 


 この十数年の間で,トップを走っていた中国語と英語の母語話者数の伸び率は少ないが,4位につけていたスペイン語の伸び率は24%近くになる.一方,十数年前には3位につけていたロシア語が激減した.(ただし,これについては数え方の問題があるようで,別の独立した統計によれば当時のロシア語の母語話者数は 155 million ということだった.Ethnologue の 288 million とは著しい差である.)日本語はなんとかトップ10以内の座を守っているが,ヨーロッパの主要語とされるドイツ語やフランス語は低迷気味だ.
 爆発的な影響力を誇るのはインドの言語である.Hindi を筆頭に,Telugu, Marathi, Tamil, Gujarati, Bhojpuri がトップ25位に入っている.トップ50位までに,主としてインドで行われている言語が14も入っているのだから驚きだ.Bengali や Lahnda などを合わせるとインド亜大陸の猛威を感じざるを得ない.
 使用されている国の数でいうと,英語が群を抜いている.母語話者の数値だけでは表現されない実力があるということだろう.同様に,非母語話者の数を加えて評価すれば,相当に見栄えの異なるランキング表になるだろう.
 英語使用国の人口増加率については[2010-05-07-1]を参照.

 ・ Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm

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2010-05-07 Fri

#375. 主要 ENL,ESL 国の人口増加率 [statistics][demography][elf][future_of_english]

 ELF ( English as a Lingua Franca ) あるいは EIL ( English as an International Language ) としての英語の現状と未来を考えるうえで,人口統計は重要な示唆を与えてくれる.Crystal (71) では,2001年における人口統計により主要な ENL 国と ESL 国の人口および直近5年間の人口増加率が示され,前者が減少し後者が増加するという構図が鮮明に浮かび上がった.単純化していえば,英語母語話者の人口が減る一方で英語非母語話者の人口が増えているということであり,今後もこの傾向が続いてゆくとなると,[2009-10-17-1]で示した英語話者の分布において ENL 比率(円グラフの黄色部分)がますます圧迫されてゆくということになる.従来より規範的な変種として認められてきた British English や American English のブランドが,はたしてこの数的な圧迫のもとで今後も維持されてゆくのかどうか.英語の未来にかかわるエキサイティングな問題である.
 Crystal の示した統計はすでに古くなったので,今回は最新版の統計を用いて Crystal と同様の表を作成してみた.ENS 国,ESL 国の詳しいリストは[2009-10-21-1]に掲げたとおりだが,今回は主要国に限った.ENS 国については7カ国(参考までに日本も加えた),ESL 国については原則として2010年年央時において人口2000万人を超える国を対象とした.統計値の典拠は UN, World Population Prospects: The 2008 Revision Population Database だが,これに基づいて作成された便利な表が国立社会保障・人口問題研究所のページから入手できたので,主にこれを利用した.人口の単位は1000人.人口増加率の読み方は,一年間に人口が1%ずつ増加する国は70年後には人口がほぼ2倍になる.

ENL countriespopulation (2010)population growth rate (2005-2010) (%)
USA317,6410.96
UK61,8990.54
South Africa50,4920.98
Canada33,8900.96
Australia21,5121.07
Ireland4,5891.83
New Zealand4,3030.92
Japan (for reference)126,995-0.07

ESL countriespopulation (2010)population growth rate (2005-2010) (%)
India1,214,4641.43
Pakistan184,7532.16
Bangladesh164,4251.42
Nigeria158,2592.33
the Philippines93,6171.82
Egypt84,4741.81
Tanzania45,0402.88
Kenya40,8632.64
Uganda33,7963.27
Nepal29,8531.85
Malaysia27,9141.71
Ghana24,3332.09
Sri Lanka20,4100.88


 ENL 国はいわゆる先進国なので,今後,人口は伸び悩む.一方,ESL 国には開発途上国が多いので,2%を超える増加率も珍しくない.とりわけインド亜大陸の爆発力がものすごいことは,今後の英語の行方に影響を与える可能性が高い ( see [2009-10-07-1] ).

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2010-03-31 Wed

#338. Norman Conquest 後のイングランドのフランス語母語話者の割合 [french][demography][bilingualism]

 1066年の Norman Conquest の後,イングランドはフランス語を母語とする者たちの支配下に入った.とはいっても,イングランドの居住者の大多数は相変わらずアングロサクソン系であり,フランスから渡ってきた者といえば王侯貴族,そのお仕えの者たち,高位聖職者が主だったが,その数は多くなかった.英語の復権の兆しが見えるまで Norman Conquest から優に300年はかかったが,英語が地下に潜りながらもたくましく生き延びた原因の一つは,英語母語話者の絶対数が圧倒的に多かったことである.では,ノルマン貴族とアングロサクソン庶民の人口比は具体的にはどれくらいだったのだろうか.
 歴史人口統計学をもってしても11世紀後半における人口比を正確に知ることはできない.しかし,Blake によるおよその見積もりは参考になるかもしれない.

It would be reasonable to suggest that the number of native French speakers can never have been greater than 10 per cent of the total population of England, and a more realistic estimate is probably less than 5 per cent. The greatest part of the population in England at this time consisted of the peasants who tilled the land. They probably formed anything between 85 and 90 per cent of all people here, . . . . (107)


 要するにフランス人は人口の約5%を占めたに過ぎないとの見積もりである.さらに Blake は,聖職者階級に入り込んだフランス人の人口比だけをとってもやはり非常に低いと見積もっている.

. . . the number of native French speakers in the clergy at any one time cannot have been very large. Perhaps it amounted to no more than 2 per cent of the total clergy. (108)


 上記の人口統計を含め,当時の社会状況を考察した結果として導き出されるのは,イングランドは真の意味で bilingual ではなかったという主張である.

Although two languages, English and French, were spoken in England, it is doubtful whether it ever became a truly bilingual country. The majority of the population was monolingual and only used English. (109--10)



 "truly bilingual" がどのような状況を指すのかが不明ではあるが,単純に人口の半々がそれぞれの言語を母語としており,かつ他の言語もある程度は理解可能であるという状況のことだと想定すると,中世イングランドを bilingual society とみなす慣習的なとらえ方は不適切ということになる.Blake 的な感覚でいえば,"barely bilingual" くらいの表現が適切なのかもしれない.

 ・ Blake, N. F. A History of the English Language. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 1996.

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2010-03-12 Fri

#319. 英語話者人口の銀杏の葉モデル [elf][model_of_englishes][statistics][demography]

 近代以降,特に19世紀から20世紀にかけて英語の話者人口が爆発的に増えてきたことは,本ブログでもたびたび話題に取りあげている.例えば,英語話者人口の様々な分類の仕方と問題点は[2009-10-17-1], [2009-11-30-1], [2009-12-05-1], [2010-01-24-1]で扱った.英語話者の分類はともかくとして話者人口そのものが増えてきた点に焦点をあてたとき,よく引き合いに出されるのがマッシュルームモデルである.最近では,Svartvik and Leech (8) でも掲載されたモデルである.
 子供に図を見せて何に見えるかと尋ねたら,マッシュルームではなくイチョウの葉だというので,ここでは名称を改め「銀杏の葉モデル」と呼んでおきたい.これの意味するところは図を見れば一目瞭然だろう.

Ginkgo of English

 図中の数値は ENS, ESL, EFL を含めた概数だが,過去2世紀の間に約40倍も増えているのだから驚きだ.この図を見て思うところが3点あるので,コメントしておきたい.

(1) 話者人口数を表すこの銀杏の葉モデルを側面図ととらえて,立体的に真上からのぞき込むと,話者人口の分類を表す同心円モデル([2009-11-30-1])に近くなるのではないか.透明の円錐をとがった方を下にして,上からのぞき込んだ感じである.話者人口増加にもっとも貢献しているのは,Outer Circle 及び Expanding Circle に所属する人々である.

(2) 銀杏の葉の上端にある筋状の葉脈の一つひとつが,英語の変種 ( variety ) に相当すると見ることができるのではないか.上端に近いほど筋は互いに離れていくが,実際には葉っぱ本体に埋め込まれている筋なので,つながっている.現代の英語の変種間に働く遠心力と求心力を思い起こさせる.

(3) 近代以前と以降とで英語史が二分されるというイメージ.近年,英語史研究の世界では,特に近代英語期以降に関する研究において,話者と言語との関係を意識した社会言語学なアプローチが活気づいている.また,変種間の微妙な違いに留意する研究も増えてきている.話者が増え,その分だけ変種も増え,現在に近いだけに言語現象の背後にある社会言語学的な情報にもアクセスできる,ということが関与していると思われる.
 それに対して,中英語期の研究は,確かに社会言語学的な視点からのアプローチが増えてきているとはいえ,アクセスできる情報には限りがある.変種も地域変種(方言)の研究は盛んだが,地理的な広がりといえばイングランド(とせいぜいその周辺)に限られ,近代以降の世界中に展開する複雑きわまれる変種の分布とは規模が異なる.
 だが,英語史をこのように二分する考え方が必ずしもいいとは思っていない.変種の規模や広がりこそ大きく異なるが,変種のあり方については近代も中世も古代もそれほど変わらない点があるのではないか.

 あれやこれやと,この図から想像してみた.

 ・ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006.

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2010-01-26 Tue

#274. 言語数と話者数 [statistics][world_languages][language_death][demography]

 [2010-01-22-1]で世界の言語の数を話題にした.今回は,言語数と各言語の母語話者数との関係を考えてみる.
 以下の表は,世界に約6000言語が存在すると仮定し,その母語話者数との関係を一覧にしたものである.これは,1999年版の Ethnologue を参考に,Crystal がまとめたものである (14--15).

Population of Native SpeakersNumber of Languages%Cumulative downwards %Cumulative upwards %
more than 100 million80.13 99.9
10--99.9 million721.21.399.8
1--9.9 million2393.95.298.6
100,000--999,99979513.118.394.7
10,000--99,9991,60526.544.881.6
1,000--9,9991,78229.474.255.1
100--9991,07517.791.925.7
10--993025.096.98.0
1--91813.099.9 


 この表あるいはこの表の背後にある事実から明らかなことは,第一言語に関する限り,ごく少数の言語が世界の人口の大部分をまかなっているということである.母語話者が1億人を超える言語は Mandarin (Chinese), Spanish, English, Bengali, Hindi, Portuguese, Russian, Japanese のわずか8言語に過ぎず,これだけで実に世界人口の4割ほど(24億人)がまかなわれているという.トップ20までの言語を考えると,それだけで世界人口の半分以上を占めるというから驚きである.
 さらに象徴的な数字を示せば,世界の言語の4%が世界人口の96%を覆っているという.逆にいうと,世界の言語の96%が世界人口の4%に相当する数の話者にしか母語として使用されていないことになる.より具体的にいうと,一番右の列の数値をみれば,世界の言語の約25%が千人未満しか母語話者をもたず,世界の言語の半数以上が一万人未満しか母語話者をもたないことがわかる.世界の言語と母語話者の数は,まさにピラミッド状の分布を示すのである.
 ピラミッドの中部以下に属する大多数の言語が消滅の危機にあることは明らかである.消滅の速度については様々な予想がなされているが,今後100年で世界の言語の半数が失われるだろうという推計がよく聞かれる (Crystal 19).この推計に基づいて簡単な算数をおこなうと,およそ12日に1言語の割合で消失が進んでいることになる.

 ・Crystal, David. Language Death. Cambridge: CUP, 2000.

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2009-10-17 Sat

#173. ENL, ESL, EFL の話者人口 [demography][elf][model_of_englishes]

 世界語として最有力候補となった英語は,年々その話者を増やし続けている.英語の話者人口のモデル化はいくつか提案されているが,もっとも古典的なモデルは,話者層を三区分する方法である.

 ・ENL ( English as a Native Language )
 ・ESL ( English as a Second Language )
 ・EFL ( English as a Foreign Language )

 ENL は英語を母語とする話者で,人口としては米国や英国がその筆頭に挙がるが,国・地域数でいうと30は優に越える.ある意味では英語留学できる国・地域ということになるが,いくつ挙げられるだろうか?
 ESL は第二言語 ( second language ) として英語を話す人を指す.second language を厳密に定義することは難しいが,歴史的・政治的な背景で,事実上,英語が公用語(の一つ)として機能しているような地域で,母語の次に習得する言語としておきたい.単純に母語の次の2番目に習得する言語という意味での second language ではなく,上記のような歴史的・政治的な背景を有する場合に習得した,母語以外の言語ということで理解しておきたい.まとまった ESL 人口を擁する典型的な国・地域として,インド,ナイジェリア,デンマーク[2009-06-23-1],サモアなどが挙がる.
 EFL は,主に教育機関を通じて外国語として英語を学ぶ人を指し,国・地域でいえば,日本,中国,フランス,ロシアなど世界の大部分がここに属する.
 実際には区分間の境目が明確でない事例もあるが,何しろわかりやすいモデルなので広く受け入れられている.以下の人口統計は数年前の情報であり,現在の総計と分布は少なからず異なっている可能性はあるが,約15億人の英語話者人口の内訳はこの pie chart により容易に頭に入るだろう.see [2009-09-21-1]

ENS, ESL, and EFL populations

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