hellog〜英語史ブログ

#385. Guyanese Creole の連続体[creole]

2010-05-17

 世界には英語ベースのクレオール ( creole ) が約30あるといわれる.ほとんどがカリブ諸島,西アフリカ,西太平洋で話されている.Guyana は南米では唯一の英語国だが,標準英語と並んでクレオールが広く聞かれる.

Guyana

 Guyana では下層語 ( basilect ) の Guyanese Creole から,中層語 ( mesolect ) を経て,上層語 ( acrolect ) の Standard English まで,途切れることのない連続体 ( continuum ) が共存している.Guyana のクレオールで,標準英語の I gave him という文に対応する連続体を,Svartvik and Leech (177) より見てみよう.

Standard English    I gave him  ↑      Acrolect
a geev him  |  
a geev im  |  
a geev ii  |  
a giv him  |  
a giv im  |  
a giv ii  |  
a did giv hii  |  
a did giv ii  |      Mesolects
a did gi ii  |  
a di gii ii  |  
a di gi ii  |  
mi di gi hii  |  
mi di gii ii  |  
mi bin gi ii  |  
mi bin gii ii  |  
mi bin gii am  |  
Guyanese Creole    mi gii am  ↓      Basilect


 このような連続体をみると,どこからが英語でどこまでが英語かよくわからなくなってくる.両端を比べると異なる言語と呼んで差し支えないほどだが,隣り合う二つを比べると明らかに連続性がある.ということは,言語的にどこかで線引きするということができないということになる.basilect や mesolect のみを用いる話者を英語話者と認めるべきかどうかは,世界における英語話者人口の推計などにおいて重要な問題だが,言語的には解決できない問題であることがわかるだろう.どこまでが英語かという問題は,多分に主観的でイデオロギー的な問題にならざるをえない.

 ・ Svartvik, Jan and Geoffrey Leech. English: One Tongue, Many Voices. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2006.

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