去る6月10日に刊行された新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ三人称単数のsを付けるのか』(NHK出版新書)をめぐり,全国のリアル書店での発見報告を募る「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が連日盛り上がっています.毎朝の Voicy heldio のコメント欄などを通じて,有志の読者の皆さんから全国津々浦々のリアル書店での目撃証言が続々と寄せられており,感謝に堪えません.私が皆さんからの報告をもとに Google マップ上にピンを1本ずつ立てていくという企画ですが,本日までに累計で73本もの熱いピンが立っています.地図を画面で開くたびに,あちらこちらに熱いピンが灯っていく様子は,壮観です.
関連して重要なのは先日6月29日に出来した第2刷分が,今まさに全国の書店の棚に並び始めていることです.リアルな本の流通というダイナミックな動きと,デジタル上のマップが連動していくおもしろさ.今回は,著者の視点から,単なる本書のプロモーションを超えた,この目撃マップ企画の真の狙いを,学問論・メディア論の観点からお話ししてみたいと思います.
結論から申し上げれば,この「なぜさんたんげん目撃マップ」企画は,もちろん販促活動の一環ではあるのですが,3つのレイヤーにおいて学問と社会の新しいつなぎ方の実験でもあるのです.
第1のレイヤーは,書店員さんへのエールです.日々無数の新刊に囲まれるなかで,『なぜさんたんげん』に注目し,平積みや面陳をしてくれる全国の書店員さんがいらっしゃいます.その熱意をマップ上で可視化すること.また,それを見た他の書店員さんに影響を与えていただくこと.それによって,私の「英語史をお茶の間に」も,現実的な意味で達成されるからです.
第2のレイヤーとして,読者の皆さんに,hel活の当事者になっていただきたい,という思いがあります.ただ本を買って読むだけの存在から,目撃情報を寄せていただくことで,英語史を世の中へ流通させる同志兼当事者になっていただきたいという趣旨です.読者・著者・書店・出版社の「運命共同体」の創造ですね.
第3のレイヤーは,人文系アカデミアにとってのメディアサバイバル戦略としての側面です.とりわけ人文系に関して大学や学界が縮小の危機に瀕している現代,研究者が研究室や論文のみに閉じこもっている時代は終わりました.研究者がマルチメディア/クロスメディアを自前で構築し,時間をかけて,新しいインフラを整えていくこと.これこそが新しい時代においてアカデミアの活力となるだろうと信じています.
先日の記事「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1]) で触れた地方レベルでの第1次全国制覇に続き,ここからの目標は第2次全国制覇,すなわち47都道府県完全制覇です.以下の通り,まだピンの立っていない空白地帯は数多く残っています.
【 まだピンが立っていない県 】
・ 東北:青森県,岩手県,秋田県,山形県
・ 関東:栃木県
・ 中部:富山県,福井県,山梨県,静岡県
・ 中国:鳥取県,島根県,岡山県,広島県
・ 四国:徳島県,香川県
・ 九州:佐賀県,熊本県,宮崎県
もちろん,すでに多くのピンが立っている東京都,大阪府,愛知県などの皆さんも,さらに密度を濃くして面で埋め尽くすための追加報告は大歓迎です.「〇〇県〇〇市の〇〇書店に平積みされていました!」という一言の報告が,日本地図を英語史で埋め尽くしていく原動力になります.2刷を店頭で見つけた hellog 読者の皆さん,そして書店員さんからも,さらなる目撃情報をお待ちしています.皆さんとともに日本地図がピンで埋め尽くされる日を楽しみにしています!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
去る6月28日,「英語史をお茶の間に」届けようと日々奮闘している有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 7月号が公開されました.通算第21号となります.
今号のキャッチコピーは「まだまだ続く,#なぜさんたんげん そしてhel活の波」です.6月10日に世に送り出された新著『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)に関連する記事や熱い応援記事が,前号に引き続き,誌面を埋め尽くしています.
まずは ykagata さんによる「表紙のことば」から覗いてみましょう.瀬戸内海から四国をめぐる旅の記憶とともに,ドイツ語の "Straße von Hormus" (ホルムズ海峡)が英語 street に対応するという興味深い話題を展開してくれています.広い海峡を「ストリート」と呼ぶ言語的なおもしろさを,旅の実感と結びつける筆致はさすがです.ykagata さんは他にも「[古英語]名詞屈折表が stān で始まる本,始まらない本」など,英語史に直接・間接に関わる魅力的な記事を多数寄稿されています.
今号の収載記事をいくつかカテゴリー別に紹介していきましょう.
何といっても今号のお祭りの中心は『なぜさんたんげん』です.ari さんによる「英子さんたんげんシリーズ」は,普段のユーモアとダジャレのセンスが凝縮された4コマ漫画で,『なぜさんたんげん』のエッセンシャル版としての期待が集まっています.Grace さんの「『なぜさんたんげん』目撃の巻」は,書店での劇的な「昇格」の瞬間を淡々と描き出し,多くのリスナーの涙を誘う秀逸なドキュメンタリー「石巻の奇跡」を世に送り出しました.さらに umisio さんは「告白・懺悔」と題して,自身が過去に「3単現の s」に疑問を抱かなかった理由を深く掘り下げるシリーズを連載されています.
一方,お祭りの熱気の中でも淡々と学びを進めるレギュラー陣の記事も輝いています.その代表格が,listener kawakami さんによる「Prologue to Eneydos を読むシリーズ」です.Caxton の印刷技術と英語史の深淵に迫るこの硬派な連載は,編集委員の umisio さんをして「浮かれた頭を冷やしてくれる,ウェーランドの経済学言論の講義のようだ」と言わしめるほどのシリーズとなっています.私自身も,専門家の観点から,これが貴重な中英語精読シリーズになっているものと評価しています.
語源やクイズの分野も百花繚乱です.mozhi gengo さんは「Beryl と同語源の日本語は○○」やヒンディー語の借用語コラムなど,圧倒的な知識量で独自の深掘りを展開されています.lacolaco さんによる「英語語源辞典通読ノート D」は,着実に歩みを進める職人技の鑑です.『英語語源辞典』の読み方解説も加わり,ますます有用性が高まっています.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」は,学校の授業ですぐに使える実践的な内容とすぐれた出題センスが相変わらず光っています.
さらに,前橋市での英語史講座を満員御礼のなかで終えられた kendama_player さんの熱い報告記事や,あまねちゃんによる「オフ会感想」と『英語語源ハンドブック』1周年記念記事,こじこじ先生の楽曲「不規則動詞戦争」,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,各世代や地域におけるhel活のリアルな息吹が伝わってきます.佐久間さんの「日本語由来の医学英語」も専門家らしい視点を与えてくれます.
巻末の「あゆみ」では,Grace さんが北千住オフ会の定着や helwa 開設3周年の軌跡をきれいにまとめてくださいました.そして umisio さんによる「編集後記」は,今号の多様な熱量をユーモアたっぷりに総括してくれています.
最後になりますが,今号を編み上げてくださった編集委員の Lilimi さん,Galois さん,Grace さん,umisio さんには深く感謝いたします.そして,素晴らしいコンテンツを寄稿してくださったヘルメイトの皆さんも,本当にありがとうございました.
hellog 読者の皆さんも,ぜひこの熱気溢れる Helvillian 7月号のページを訪れて,じっくりと味わってみてください.そして,自分も日頃のhel活の成果をこのウェブマガジンに載せてみたい,英語史の輪に加わりたい,と思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への参加をご検討いただければと思います.helwa にお入りになった瞬間から,あなたもヘルメイトです.一緒に英語史をお茶の間に届けていきましょう!
一昨日の6月28日,「いのほた言語学チャンネル」の最新回「本は読むのも作るのも楽しい!出版には未来がある!」が公開されました.
今回の動画では,今月10日に刊行され,おかげさまで発売前増刷を達成した新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の制作体験の舞台裏を,相棒の井上逸兵さんとともに熱く語っています.今回は本の内容そのものというよりも,「本を作る,売る,届ける」という出版メディアのからくりや裏側にスポットを当てた,メディア論的な対談となっています.
今回の本は,6年ほど担当の編集者さんと二人三脚で文体調整や構成を練り上げてきたものであり,本の半分は編集者さんの作品であるといっても過言ではないほどのコラボレーション作品となりました.著者の名前が前面に出る本というメディアも,背後には編集長,校正・校閲の方々など多くの人々が関わっており,まさに「皆で担ぎ上げて作るもの」なのだと改めて実感させられました.
対談の後半では,井上さんより,英米における日本文学の翻訳を小規模な出版社が仕掛けてブームを起こしている興味深い現象が紹介され,出版不況と言われる現代における「小さな出版」の可能性について議論が及びました.また,新聞の書評欄の広告出稿の変化など,時代の移り変わりを示す生々しい業界事情に触れつつ,これからのアカデミアや出版界を盛り上げるための「ソーシャルメディア」「出版」「リアルイベント」という3本柱の重要性について熱く語り合っています.
本というメディアの特性や,言葉が読者に届くまでのダイナミズムに関心のある方は,ぜひ動画をご視聴ください.動画を視聴し終わった後には,本書やリアル書店の棚の見え方が少し変わってくるかもしれません.
本書の刊行を支えてくださったNHK出版の編集や営業の皆さん,熱心に店頭に並べてくださっている書店員の皆さん,そして様々な形で応援し,本書を手に取ってくださっている読者の皆さんに,この場を借りて心より深く御礼申し上げます.
『なぜさんたんげん』は,昨日,元気に2刷出来しています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
本日6月29日,いよいよ新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の第2刷が出来となります!
おかげさまで6月10日の発売以来,非常に好調な滑り出しとなり,今週中には増刷分が全国の書店の店頭に並び始める予定です.未入手の方は,ぜひこの機会にお近くのリアル書店などで手に取っていただければ幸いです.
さて,この直近の週末に,本書の編集を担当してくださったNHK出版の田中菜乃香さんとともに,Voicy heldio にて3回にわたる対談を収録・公開しました.読者の皆さんよりお寄せいただいたたくさんのレビューやご感想に対して,2人でじっくりとコメントバックしていくという企画です.まずは,本書をいち早く読み,貴重な声を届けてくださったすべての皆さんに,この場を借りて心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
配信した3回分のリンクを以下に集約しておきますので,ぜひお聴きください.
・ 「#1854. 『なぜさんたんげん』最速レビューへ2人でコメントバック(前編) with 編集者・田中菜乃香さん」 (2026/06/27)
・ 「#1855. 『なぜさんたんげん』最速レビューへ2人でコメントバック(後編) with 編集者・田中菜乃香さん」 (2026/06/28)
・ 「#1856. 『なぜさんたんげん』2刷出来! --- 編集者・田中菜乃香さんとのアフタートーク」 (2026/06/29)
上記2つめの「後編」配信回において,私が問題提起も含めて「英語史は役に立たない」という趣旨の発言をしたところ,heldio/helwa のコアリスナーである ykagata さんより,洞察に満ちたコメントをいただきました.とても腑に落ちる内容だったので,こちらにも引用させていただきます.
「英語史は役に立たない」は強烈なパンチラインですね。「役に立つ」は美徳のようでいて、同じことに「役に立つ」別のものと交換できてしまう弱みあります。その点「おもしろい」は唯一無二で替えの効かないところが、歴史のようなエヴァーグリーンなものにふさわしい美徳だと思いました。なぜさんたんげん」、長く書店に置かれますように。
「役に立つ」という実用性の軸だけで言語や歴史を測ろうとすると,より効率的な別の手段が現れた瞬間に,その存在意義が代替されてしまう --- まさに鋭い一喝ですね.それに引き換え,ことばの歴史を紐解くプロセスから得られる「おもしろさ」や知的好奇心の充足は,他の何物にも替えがたい唯一無二の価値をもっています.英語史という分野の価値をこれ以上ない形でことばにしていただき,著者としても深く励まされました.ykagata さん,素敵なメッセージをありがとうございました.
改めまして,『なぜさんたんげん』は今回の増刷(第2刷)を経て,さらに多くの読者のもとへ羽ばたこうとしています.すでに入手されている皆さんにおかれましては,全国各地の書店での並び具合を報告し合うお祭り企画「なぜさんたんげん目撃マップ」企画へのご協力を,引き続きよろしくお願いいたします.皆さんとともに,この英語史の輪をさらに広げていければと願っています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

発売からほぼ18日が経ちました.新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)のプロモーションとして,Google マップ上で展開してきた「なぜさんたんげん目撃マップ」企画にて,ついに第1次全国制覇(地方レベルでの全制覇)を成し遂げました.
実際の達成は6月24日のことだったのですが,日本全国すべての地方(北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州・沖縄)にヘルメイトの皆さんの熱い視線が届き,ピンが灯りきりました!
このスピードでの地方レベル全制覇は,在外の著者1人の力では到底成し遂げられませんでした.まさに「応援読者×全国の書店様×NHK出版営業さん」という三位一体の熱量が,見事なパスを繋ぎ続けた結果にほかなりません.
まずは,ヘルメイトの皆さんの草の根の力がありました.未来屋書店石巻店での素晴らしいドラマを note で熱く語ってくださった Grace さんの「石巻の奇跡」をはじめ,khelf 藤平さん作の特製POPを携えて三省堂書店岐阜店にアプローチしてくれたあまねちゃんの見事なパスなど,全国の有志による「hel活」 (helkatsu) がすべての起点となりました.
そして,その熱量を受け止めてくださった全国の書店員の皆さんの熱い共感に,最大の敬意を表します.三省堂書店岐阜店の書店員さんの「中学生の時のなんで??を思い出した」というコメントに代表されるように,「丸暗記の呪縛を解く」という本書の思想に深く共感し,一等地で平積みしてくださっている現場の力には感謝しかありません.直近でも,くまざわ書店エキア北千住店などが素早く連動し,棚を盛り上げてくださいました.書店員の皆さんにおかれましては,ぜひ以下の note 記事もご参照ください.
さらに,この動きを公式の武器として全面バックアップしてくれたのが,NHK出版営業部の皆様の総進撃です.前線から,まだピンの立っていなかった中国・四国地方を中心に14件ものピン写真をドカドカっと送り届けてくれたプロの組織力と熱量には脱帽するばかりです.この週末の連続新聞広告などの強力な空中戦も含め,この本を届けようとするプロフェッショナルなエネルギーを感じました.
さて,お祭りのような初速の盛り上がりを経て,本書は次のステージへと進みます.明日6月29日は,待望の第2刷出来となります.全国の書店の棚が再び『なぜさんたんげん』で燃え上がります.ここからは,英語の丸暗記の圧力に苦しんでいる一般の学習者や教育現場に,英語史から救いを届けるフェーズに入ります.
そして,目指すは第2次全国制覇.すなわち都道府県レベルでの完全制覇です.東北,中国・四国を含め,まだ白地図のまま残っている県がいくつもあります.ぜひ,お近くの書店で本書を見かけましたら,「#なぜさんたんげん目撃マップ」のハッシュタグとともに,heldio のコメント欄や X 投稿などで目撃情報をお寄せください.引き続き,皆様の熱い応援をよろしくお願いいたします!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
3ヶ月ほど前の記事「#6177. 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』関連シリーズを heldio で配信しています」 ([2026-03-26-1]) でご案内した Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」での古英語入門講義シリーズが,先日12回をもって完結しました.本日は hellog 読者の皆さんへ,シリーズ完結の報告を兼ねて,アーカイヴに残っている配信回をいつでも復習していただけるよう,リンクを一覧としてまとめました.
本講義シリーズは,今年2月の刊行以来お薦めし続けている市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社)の古英語テキストパートより,歴史的・文献学的にきわめて重要な記述である Early Britain (pp. 86--89) から抜粋された1節を対象とし,じっくりと精読・解説を加えてきたものです.
音声配信という特性を最大限に活かし,紙面だけでは捉えきれない古英語原文の読み上げにも力を注いでお届けしてきました.不規則で複雑に見える文法体系や現代とは一見異なる語彙の解説はもちろん,歴史的な背景を踏まえつつ,語源の話題を随所に盛り込むなど,可能な限り現代英語の知識に引き付けながら分かりやすく解きほぐしてきました.このような音声による本格的な古英語入門講義が一般に広く公開される機会はほとんどないため,貴重なアーカイヴ資料としてぜひ何度もお聴きいただき,古い時代の英語の世界を立体的に味わっていただければと思います.
シリーズ全12回(+最初の導入回)の配信タイトルと各リンクは以下の通りです
・ 「#1751. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を音読する」 (2026/03/16)
・ 「#1755. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (1)」 (2026/03/20)
・ 「#1758. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (2)」 (2026/03/23)
・ 「#1761. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (3)」 (2026/03/26)
・ 「#1764. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (4)」 (2026/03/29)
・ 「#1767. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (5)」 (2026/04/01)
・ 「#1771. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (6)」 (2026/04/05)
・ 「#1774. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (7)」 (2026/04/08)
・ 「#1777. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (8)」 (2026/04/11)
・ 「#1787. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (9)」 (2026/04/21)
・ 「#1799. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (10)」 (2026/05/03)
・ 「#1813. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (11)」 (2026/05/17)
・ 「#1851. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (12)」 (2026/06/24)
講義の精読対象となった古英語の原文テキスト,詳細な文法注釈,そして現代英語訳については,ぜひ本書『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』の該当箇所 (pp. 86--89) を直接開いて確認しながらお聴きいただければと思います.もし現時点で本書をまだ入手されていないという方は,当面の間は本ブログの過去記事「#2909. Peterborough Chronicle の Early Britain の記述」 ([2017-04-14-1]) をあわせて参照していただければ原文の一端を追うことができます.しかし,講義内でもたびたび言及している詳しい語彙解説やグロッサリーの利便性は,やはり本書の紙面を通じてしか十分にアクセスすることができないため,知的好奇心に従って学びを深めたいと思われた方は,ぜひこの機会に本書をご自身の本棚に迎え入れてください.
また,このたび完結を迎えた Early Britain シリーズに先立ち,heldio にて本書の冒頭に位置する重要な基礎パート「綴りと発音」をじっくりと解説した全4回の先行シリーズについても,ここで改めてご紹介し,合わせて宣伝しておきます.古英語を本格的に読み進める上での堅牢な基礎知識を養うための講義となっており,解説対象となった中身は研究社の本書に関する公式HPの試し読みコーナーでも手軽に閲覧することができます.本書がお手元にない段階からでも十分に理解を深められるように工夫しましたので,こちらもぜひアーカイヴよりチェックしてみてください.
・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」
このように hellog や heldio では,復刊された名著を道標としながら,古い時代の英語の姿を皆さんと共有していくための活動を今後も展開して行ければと考えています.ぜひ『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』に息づく原文の世界にご注目ください.
なお,月に一度オンライン開催している朝日カルチャーセンター新宿教室での講座でも,本書を参照しながら短めの古英語・中英語原文を丁寧に読む試みを続けており,7月からの夏期シリーズでも継続していきます.詳細・お申し込みはこちらのページよりどうぞ.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) の周辺が実に熱くなっています.本ブログでも要注目としてたびたび紹介してきた,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの lacolaco さんが,「英語語源辞典通読ノート」シリーズにて,目下 D の項目をひた走っています.
驚くべきは,その圧倒的な継続力のみならず,そこに込められた「hel活」スピリットの進化にあります.最新の2つの記事,すなわち6月13日公開の desire -- desk,および6月20日公開の despite, develop, device を拝読し,胸が熱くなりました.
この最新の2回において,lacolaco さんは貴重で有用な,新しい試みを始められています.前者では desk を,後者では device をサンプルとして取り上げ,『英語語源辞典』初心者に向けて,同辞典の読み方をきわめて丁寧に解説してくれているのです.同辞典特有の専門記号,略称,句読点などの1つひとつにまでこだわり,それが何を意味しているのかを噛み砕いて説明しているセクションは,『英語語源辞典』を所有していながらも,専門的すぎて使いこなせていなかった多くの方々にとって福音となるはずです.
これは,1ヶ月ほど前の hellog 記事「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) における問題提起を受けての,lacolaco さんによる見事なイニシアチブであり,実践です.さらに先立つ「いのほた言語学チャンネル」の研究社ロケ回でも話題となったように,『英語語源辞典』は世界最高峰の辞典でありながら,一般読者がその価値を本格的に享受するためには「読み解き方の手ほどき」がどうしても必要でした.まさにそのギャップを埋める体系的なガイドを,1人のヘルメイトが自らの note で,これほどハイレベルな形で実現してくれたわけです.これぞ草の根から湧き上がる純粋なhel活であり,hel活コミュニティのつながりが生んだ貴い果実です.
この丁寧な解説は,同辞典の魅力と威力をお茶の間に届ける素晴らしい踏み台となるはずです.一般の英語学習者の皆さんにとどまらず,同辞典の出版元である研究社の方々をはじめ,英語史の研究・教育に携わる専門の関係者の皆さんにも,大いに注目していただきたい画期的な試みです.ぜひ lacolaco さんのノートを訪問し,『英語語源辞典』の読み方解説を味読してみてください
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

「#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています」 ([2026-06-14-1]) でお知らせしたとおり,6月10日に発売されたNHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)について,リアル書店での目撃情報を Google Map 上にピン留めして可視化していくという試みを進めています.
発売・企画開始から2週間が経ちますが,全国津々浦々より,書店で平積みになっていた,面陳されていた,などのご報告が届いています.書店員さんによる撮影・SNS投稿の許可をいただくことができた写真については,写真も地図上に反映しています.こちらの目撃マップより現時点での状況をご確認いただければと思います.
ありがたいことに,NHK出版公式からは「地域の偏りなく全国の書店でよく売れている」という非常に嬉しい報告が入ってきています.この全国的な展開には大きな意義があります.というのも,本書のような英語史の専門知識をベースとした書籍が,一部の限られた大都市圏だけでなく,全国各地の書店で手にとられているということは,「英語史をお茶の間に」広げていきたいという私の長年掲げてきたモットーがが,着実に実を結びつつあることを示すものだからです.著者としてこれほど心強いことはありません.
さて,手元にある6月21日付けの「なぜさんたんげん目撃マップ」のデータを紐解いてみましょう.現時点での登録状況を分析すると,やはり東京や大阪をはじめとする大都市圏の大型書店を中心に多くのピンが集中していることが見て取れます.どうしても人口や書店の規模に比例して目撃情報が集まりやすいため,マップの上では都市部にピンが重なる傾向にあります.本書の全国展開という観点からすれば,非都市部の書店での目撃情報はまだまだこれからという段階ではありますが,特筆すべきはピンの数が日々どんどん増えてきているという事実です.日々草の根のように情報が寄せられ,地図がジワジワと埋まっていく動態そのものが,本書が世の中に受け入れられていく様子を物語っています.
また,目撃マップを注意深く眺めてみると,岐阜の辺りにぽつんと紫色のピンが付されているのにお気づきの方もいるかもしれません.実はこれ,いずれ本格化するはずの新企画の「前哨戦の跡」です.この企画については,いずれ時期が来ましたら告知したいと考えておりますので,今は静かにその伏線を示唆するにとどめておきたいと思います.どうぞお楽しみに.
今後とも,皆様からの目撃情報をお待ちしております.SNS などでハッシュタグ「#なぜさんたんげん目撃マップ」あるいは単に「#なぜさんたんげん」と付していただけますと,私のほうで必ず捕捉します.ぜひ引き続き本書を応援していただけますと幸いです.ともにこのお祭りを盛り上げていきましょう!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
6月10日(水),NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が発売され,おかげさまで全国各地より温かい反響をいただいています.今回は,先日宮城県の未来屋書店石巻店で起きた,ある胸の熱くなる実話を枕にして,英語史という学問分野の地位の変遷について考えてみたいと思います.
ことの始まりは,熱心な「ヘルメイト」(英語史を広める活動をしている仲間)の1人である Grace さんが発売直後に同書店を訪れた際,拙著が入荷直後のラックの最下段,「日陰の棚」にひっそりと置かれているのを目撃したことでした.Grace さんはその様子を note に投稿され,それに感銘を受けた私がさらに note で応答,すると今度は Grace さんが本書のレビューをお書きになるという流れで,それこそ本書が目立つ特等席へと「昇格」を果たすという,劇的なドラマが展開しました.
この一連の「棚の昇格」をめぐる応酬は,単なる人情話や一著者の嬉しかった報告にとどまらない,きわめて象徴的な意味を帯びています.ぜひ,以下の note 記事のダイナミックな流れを直接ご覧いただければと思います.
・ 6月13日の Grace さんによる note 記事「『なぜさんたんげん』目撃の巻」
・ 6月19日の堀田による note 記事「石巻の奇跡――『なぜさんたんげん』がラックの最下段から「昇格」した日」
・ 6月20日の Grace さんによる note 記事「心に刻みたい「英語史が教えてくれること」」
この「ラックの最下段(日陰)から,教養新書棚の正面(表舞台)への昇格」という物理的な移動の軌跡は,昨今の「英語史」という学問分野そのものが辿ってきた,そして向かっていくメタファーのように思われます.
これまで英語史という分野は,実用英語や記述文法,あるいはTOEIC対策といった華やかな「表舞台」の影に隠れ,いわば書棚の「最下段」のような扱いを受けることが少なくありませんでした.「そんな古い言葉の歴史を知って何になるのか」「試験に出ないから不要だ」という実利主義の波に押され,日陰の道を歩まざるを得なかった時代が長かったのです.
しかし,現代の英語学習者が抱く「なぜ3単現には s がつくのか」「なぜ go の過去形は went になるのか」といった素朴な「なぜ」にもっとも上手に答えを与えられるのは,多くの場合,英語史の知見なのです.暗記の呪縛から学習者を解放する力をもつこの学問,そして言語と歴史の深い教養を内包するこの学問が,いつまでも最下段に眠っていてよいはずがないのです.
今回の石巻での出来事は,全国の「hel活」(英語史を広める活動)の仲間たちの草の根の熱意が書店員さんの心を動かし,学問をついに表舞台へと引き上げている象徴です.背景には,もちろん,多くの英語史研究者によるたゆまぬ研究・教育・啓蒙活動の努力があったことも事実です.
読者の皆さんとともに,この英語史の表舞台への登場を静かに愛でつつ,今後とも「英語史をお茶の間に」浸透させていくことをここに改めて宣言したいと思います.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

去る6月18日,あの熱狂の発売からちょうど1周年を迎えることとなりました.『英語語源ハンドブック』(研究社)です.
刊行から1年が経ち,ありがたいことに重版を重ねておりますが,それに伴う正誤表がこちらの研究社公式HPより公開されています.最新版は2026年6月17日に更新されたものとなりますので,お手元の書籍と合わせてご確認いただければ幸いです.
さらに,本書で言及されている実に4083語もの単語・表現を網羅した索引が,追加資料としてダウンロードできるようになっています.それもこちらの研究社公式HPよりEXCELファイルやPDFフィあるとして入手できます,最新版が,同じく2026年6月17日付けで公開されています.この索引を活用することで,本書の利便性は一層高まるはずです.この索引を用いると,いろいろなことが可能となります.ぜひ「#6084. 『英語語源ハンドブック』の索引の歩き方」 ([2025-12-23-1]) の記事をお読みください.
最新のリンクを含め,『英語語源ハンドブック』に関する各種情報は,『英語語源ハンドブック』の特設HPに集約されていますので,ぜひ訪れていただければ.
この1年間,読者の皆さんの手によって,実におもしろく多様な『英語語源ハンドブック』関連コンテンツが制作・公開されてきました.それらの素晴らしい広報活動の足跡も,上記の特設HPに一覧としてまとめられております.皆さんの熱量には本当に脱帽するばかりです.
関連コンテンツの盛り上がりについては,6月20日に Voicy heldio で配信した「#1847. 『英語語源ハンドブック』発売1周年 --- 読者の皆さんによる関連コンテンツがたくさん」でも詳しくお話ししております.1周年の記念に,ぜひ合わせてお聴きください.
なお,1周年記念日となる6月18日の夜には,著者3名がオンラインで一堂に会し「居酒屋KKY」を開催しました.その様子は近々に heldio にてオンエアしますので,ご期待ください.
『英語語源ハンドブック』が,拙著新刊『『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)とともに,多くの人々にとって英語史へのジャンプ台であり続けることを願っています.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

1週間後の6月27日(土) 15:30--17:00 に,今年度の3回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の通算第15弾ということで,今回は「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して,皆が気になる単語 ghost を深掘りしていきます.
現代英語の ghost の最も普通の語義は「幽霊」ですね.この世ではしばしば恐れられている,あの不思議な存在です.しかし,本来は広く「精霊」 (spirit) を表わし,あらゆるものに生命を吹き込むパワーを表わしていましたが,歴史の過程で意味の縮小が起こったことになります.キリスト教の「聖霊」は the Holy Spirit と言いますが,古くは the Holy Ghost と言われたのも,この経緯と関係しています.
また,発音や綴字の観点からも興味深い事実があります.古英語や中英語では gast のような綴字が普通でした.母音として ā という長母音をもっていたのです.ところが現代では /oʊ/ という2重母音になっていますね.また,後期中英語以降,どこからともなく綴字に <h> の文字が紛れ込み,現代では ghost となっていますね.講座では,<gh> という綴字の様々な謎にも触れていきたいと思っています.その他,動詞としての ghost,「幽霊語」 (ghost_word) の話題,もちろん ghost の語源自体にも触れていきます.
講座の後半には,本シリーズの「古い英語の原文で味わう」趣旨に沿って,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)より古英語のなかに実際に現われる "ghost" を覗いてみます.丁寧に解説しますので,古英語初心者の方も心配無用です.また,上掲書をお持ちでなくても講座資料として配付しますのでご安心ください.
講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.
なお,この先の夏期クールのテーマと日程をお伝えしておきます.夏期もシリーズを継続していきます.そちらの詳細・お申し込みはこちらのページよりどうぞ.
・ 夏期第1回(2026年7月25日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "king" を探って古英語原文の世界へ
・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ
いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.
(以下,後記:2026/06/22(Mon))
今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1849. 6月27日(土)の朝カル講座は ghost を深掘り」をお聴きください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
去る5月23日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の第2回となるオンライン講座を開きました.春期クール全体のタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語 語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」です.今回は,「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,平凡ながらも豊かな歴史と含蓄をもつ単語 again に迫りました.具体的な中英語原文を抜き出し,文脈を押さえながら読み解くことで,この基本語の理解を深めようという趣旨です.参考としたテキストは前回に続き市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)です.
今回の講座でまず注目したのは,現代英語の again と前置詞 against の関係です.本来は同一語であり,両方とも副詞・前置詞として用いられていましたが,中英語期に副詞を示す属格語尾 -es が付与され,さらに1300年頃から謎の -t が添加されることで against が誕生しました.この -t の添加には,最上級語尾 -st との類推説(betwixt,amongst,amidst など)や異分析説が指摘されています.近代英語期に入ると,again が副詞,against が前置詞という棲み分けが生じるに至ったドラマも詳しく扱いました.
語源としては,古英語の ongēan (接頭辞 on- + -ȝeȝn)に遡り,原義は「まっすぐに,真正面に」でした.現代の g の綴字と発音は古ノルド語の影響を受けた北部方言に由来するもので,中英語期の南部方言では onyen のように y が優勢でした.かつては gainsay (否定する)などのように接頭辞としても活躍していましたが,現代ではその多くが衰退してしまっている点も興味深いところです.
講座の終盤では,初期中英語の第1級の史料でもある『ピーターバラ年代記』 (pchron) の1137年の記述より,中世イングランドの拷問シーンの原文を味読しました.その直前の部分に "agænes him hēolden" 「王に敵対して(城を)保持した」という表現が見え,今回注目した単語の前置詞用法が現われています.古英語の屈折体系が崩壊しつつある時期の英語の雰囲気がつかめたかと思います.
次回の講座は,6月27日(土)に「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して開かれます.次回も引き続き『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』より古英語のテキストを参照しながら,魅力的な言葉の歴史をひもといていきます.ご関心のある方は,ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
去る5月23日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の第2回となるオンライン講座を開きました.春期クール全体のタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語 語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」です.今回は,「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,平凡ながらも豊かな歴史と含蓄をもつ単語 again に迫りました.具体的な中英語原文を抜き出し,文脈を押さえながら読み解くことで,この基本語の理解を深めようという趣旨です.参考としたテキストは前回に続き市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)です.
今回の講座でまず注目したのは,現代英語の again と前置詞 against の関係です.本来は同一語であり,両方とも副詞・前置詞として用いられていましたが,中英語期に副詞を示す属格語尾 -es が付与され,さらに1300年頃から謎の -t が添加されることで against が誕生しました.この -t の添加には,最上級語尾 -st との類推説(betwixt,amongst,amidst など)や異分析説が指摘されています.近代英語期に入ると,again が副詞,against が前置詞という棲み分けが生じるに至ったドラマも詳しく扱いました.
語源としては,古英語の ongēan (接頭辞 on- + -ȝeȝn)に遡り,原義は「まっすぐに,真正面に」でした.現代の g の綴字と発音は古ノルド語の影響を受けた北部方言に由来するもので,中英語期の南部方言では onyen のように y が優勢でした.かつては gainsay (否定する)などのように接頭辞としても活躍していましたが,現代ではその多くが衰退してしまっている点も興味深いところです.
講座の終盤では,初期中英語の第1級の史料でもある『ピーターバラ年代記』 (pchron) の1137年の記述より,中世イングランドの拷問シーンの原文を味読しました.その直前の部分に "agænes him hēolden" 「王に敵対して(城を)保持した」という表現が見え,今回注目した単語の前置詞用法が現われています.古英語の屈折体系が崩壊しつつある時期の英語の雰囲気がつかめたかと思います.
次回の講座は,6月27日(土)に「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して開かれます.次回も引き続き『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』より古英語のテキストを参照しながら,魅力的な言葉の歴史をひもといていきます.ご関心のある方は,ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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6月12日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の7月号が刊行されました.今年度,同雑誌において,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を展開しています.今回の第4回の記事は井上さんによる言語行為の日英差に迫っています.「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」です.
今回の井上さんの論考は,日常の何気ない表現に潜む語用論の話題をおもしろく掘り下げています.たとえば,誰かが転びそうになった際,日本語ではとっさに「あぶない!」という言葉が出ます.これは形式としては危険な状況の描写にすぎません.ところが,英語では同様の場面で Watch out! と表現するのが一般的です.日本語が状況を言うことで相手を動かそうとするのに対し,英語は相手にしてほしい具体的な行為を指示することで相手を動かそうとする傾向が見られます.この対比は「うるさい!」に対する Shut up! や Be quiet!,「じゃまだ!」に対する Move! などの日常表現,さらには山手線のホームの「降車位置」という表示に対する英語の Keep out という指示のあり方にまで通底しています.
なぜこのような言語行為 (speech_act) の違いが生まれるのかについて,井上さんは2つの切り口から整理されています.この最も重要なポイントについては,ぜひ雑誌を手に取って連載記事にてお読みください.
社会言語学 (sociolinguistics) 的に重要なのは,こうした違いを「日本人は察しの文化で,英語圏は直接的だ」といった国民性や民族性の違いに雑に単純化しないという点です.酒場でよく耳にする「日本は島国だからね」という言説への鋭いツッコミを披露されていますが,これには思わずニヤリとしてしまいました.
最後に,私も少しコメントを寄せています.近年,英語史の分野では歴史語用論の研究が非常に盛んです.今回のトピックはその角度から見ても示唆に富んでいます.英語は歴史を通じて直接的な行為の要求ばかりを好んできたわけではありません.たとえば,Will you be quiet? のように相手の意志の確認を通じて間接的に依頼や軽い命令を表わす言語行為の型も,後期中英語期以降のことではありますが,発達してきています.つまり,英語もまた直接命令するのではない「新たな間接性の型」を自ら開拓してきた歴史をもっているのです.共時的な社会言語学の知見と通時的な英語史の視点が交差する speech act は,エキサイティングな話題ですね.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第4回 「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」『英語教育』2026年7月号,大修館書店,2026年6月12日.44--45頁.

6月10日(水),NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が発売されました.大変ありがたいことに,皆さんの熱い応援のおかげで発売前増刷となり,発売後もご好評いただいています.心より御礼申し上げます.
本書の刊行に合わせて,このたび全国のリアル書店での本書の目撃情報を皆さんと共有し,ともに楽しむための新企画「なぜさんたんげん目撃マップ」を立ち上げました.
本企画は,全国のリアル書店を訪れた皆さんから「ここに『なぜさんたんげん』が並んでいた!」「こんな風に平積みされていた!」という目撃情報を寄せていただき,それをもとに著者が Google Map 上にピンを立てて「見える化」していくという試みです.私自身は現在,イギリスのスコットランドに滞在しているところですが,数千キロ離れた地からも,日本地図の上に次々とピンが立っていく様子を不思議な,かつ熱い気持ちで見つめています.
企画がスタートしてまだ間もない状況ですが,本日23:50の段階で,日本全国のあちらこちらの書店に計19本のピンが立っており,素晴らしい走り出しです.これまでにご報告をいただいた皆さん,本当にありがとうございます.地図は,直接 Google Map の URL からアクセスできるほか,こちらの 『なぜさんたんげん』著者公式HPからもジャンプすることができます.
hellog 読者の皆さんにも,地元や学校・職場近くや旅先のリアル書店へ足を運ばれた際には,ぜひ本書を探していただき,目撃情報をテキストや写真でご報告いただけますと幸いです.SNS へは #なぜさんたんげん目撃マップ とハッシュタグを付けて投稿していただけますと,著者が定期的に巡回して受け取ることができます.あるいは,毎朝お届けしている Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の任意の配信回のコメント欄より,お知らせいただく形でもけっこうです.
ただし,書店での写真撮影に関しましては,ぜひ留意していただきたいマナーがあります.撮影の可否や SNS へのアップロードに関する対応は書店さんによって対応が異なりますので,必ず事前に書店員さんへ「写真を撮ってよいですか」「SNS にあげても良いですか」と一言お声がけをいただき,そのご指示に従っていただきますようお願いいたします.ご報告はテキストのみでも十分ですので,気軽にご参加ください.
皆さんからお寄せいただく1本1本のピンが,本書を,そして英語史を日本全国へと広げていく大きな力となります.ぜひ,この発売後のお祭りをコミュニティの皆さんと一緒に楽しんでいければと願っています.皆様の積極的なご参加を心よりお待ちしています.
一昨日の heldio でも「#1839. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画を立ち上げました」として本企画をご案内していますので,そちらも合わせてお聴きいただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の版元のNHK出版より,本書に掲載されている古英語・中英語部分を読み上げた音声にアクセスできる特設ページが公開されています.著者による読み上げ音声をお聴きいただけます.
画面上の英文の上をクリック・タップしていただくだけで,簡単に音声を再生することができます.本書の第1章や第3章で登場する Gregorius hine afligde などの古英語文や,Ich was in one sumere dale といった中英語文の「生の響き」を,ぜひ耳から体験してみてください.
古英語や中英語といった古い時代の英語を学ぶ際,誰もが抱く最初の,そして最も素朴な疑問の1つが「どうして大昔の英語の発音がわかるのか」という点ではないでしょうか.録音機器など存在しなかった1000年も前の言語音をいかにして推定するのかという問いは,歴史言語学にとってきわめて本質的な課題です.
この問題については,本ブログでも「#5314. どうして古英語の発音がわかるのですか? --- YouTube で答える素朴な疑問」 ([2023-11-14-1]) や,そこから張られているリンク先の記事でも取り上げていますので,ご参照ください.当時の表音文字としてのローマン・アルファベットの綴字体系を分析すること,あるいは詩の脚韻や頭韻といった韻文の証拠を活用すること,さらには現代の諸方言に残る痕跡から比較言語学的に復元することなど,様々な文献学的・言語学的なアプローチを通じて,かつての発音に迫ることができるのです.
そのような緻密な研究の積み重ねによって明らかになった古音の響きを,今回の特設ページでは実際に再現しています.文字として眺めるだけではなかなか実感が湧きにくい中世の英語ですが,声に出して読まれた音を聴くことで,現代の英語やあるいは他のゲルマン諸語との有機的なつながりが見えて(聞こえて)くるはずです.
新書をお手元に置いていただき,各章の解説と合わせて音声を聴き進めていただけますと,英語の文法が歴史を通じていかにダイナミックに変容してきたか,その立体的な姿をより深く,納得して味わっていただけることと思います.
上記のNHK出版公式の読み上げ音声HPとは別に,本書に関する著者による公式のHPもオープンしており,そちらはすでに1000回を超えるアクセス数となっています.様々な形で本書の魅力を伝えていますので,ぜひどうぞ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

昨日6月11日(木)の朝日新聞朝刊サンヤツ広告に,新刊の拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)が掲載されました.
発売前から略称・ハッシュタグ「#なぜさんたんげん」として広める活動を行なってきましたが,6月10日に発売日を迎え,本日は発売3日目となります.上掲のサンヤツ広告の効果もあると思いますが,ありがたいことに大変な反響をいただいております.Amazon 売れ筋ランキングの総合で,今朝,これまでの最高位となる第80位をマークしました.また,リアル書店においても,地域の偏りなく全国の書店でよく売れているとの報告が入ってきています.本書を手にとってくださった読者の皆様に,この場を借りて心より御礼申し上げます.
発売後も本書に関連する様々なお知らせや企画は盛りだくさんです.最新情報は,日々更新される『なぜさんたんげん』著者公式HP をご覧ください.最速レビューやご感想,NHK出版公式の公開関連コンテンツへのリンク,「なぜさんたんげん目撃マップ」企画の立ち上げなど,HP自体だけでも十分に楽しめる場となっています.
この本が広く世の中に受け入れられることによって,英語のルールに潜む壮大なドラマ,そして英語史そのものの魅力があまねく伝わればよいなと思っています.
引き続き,応援のほどよろしくお願いいたします!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

昨日2026年6月10日に刊行された新著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)ですが,たいへんありがたいことに,発売初日から大きな反響をいただいております.手に取ってくださった皆様に,この場を借りて心より御礼申し上げます.
さて,本日はまだ本書を購入しようか迷っている方,あるいは「英語史という分野に興味はあるけれど,新書1冊を読み通せるか不安だ」という方にお届けしたいニュースがあります.昨日付けで,NHK出版公式のデジタルマガジンにて,本書の「序章」の全文が無料公開されました.記事のタイトルは「英語はどのようにして現在の姿になったのか──英語の歴史を遡る旅【英語史で解く英文法の謎】」です.
今回のデジタルマガジンで公開された「序章」は,本書に沿った「英語史概説」であり,本書全体の「地図」でもあります.壮大なる英語史のタイムラインを一望できる構成となっています.英語が独自の歩みを始める前の「印欧祖語」の時代から,5世紀の西ゲルマン諸民族のブリテン島渡来による「古英語」の誕生,1066年のノルマン征服がもたらした「中英語」の激変期,そして大母音推移や規範主義の台頭をくぐり抜けた「近代英語」を経て,21世紀の「現代英語」にいたるまでの1500年以上の旅路が,コンパクトに凝縮されています.
この序章を読んでいただくと,本書の狙いがよく分かると思います.本書を通読すれば,私たちが日頃学校文法で悩まされている「スペリングと発音の乖離」の謎や,なぜ feet や went のような不規則変化が残っているのかという素朴な疑問に対して,歴史的な視点から「なるほど,そういうことだったのか!」と腑に落ちる感覚を味わっていただけるはずです.英語という言語は,ゲルマン語の頑丈な骨格の上に,フランス語やラテン語の要素を幾重にも積み上げ,社会の荒波に揉まれながら増改築を繰り返してきた「巨大な建築物」なのです.
本書の目的は,単に過去の歴史的事実を羅列することではありません.一見すると不合理に思える英文法の「例外」や「謎」を歴史の流れの中に正しく位置づけることで,単語や文法の解解像度を上げ,納得しながら英語を学んでいただくことにあります.
まずはこの無料公開された「序章」をお読みいただければと思います.序章に続く本書の本体の部分,第1章から第4章で取り上げられる「謎解き」については,ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,新書の実物を手にお楽しみいただければ幸いです.
1人でも多くの英語学習者、そして英語教育に携わる先生方のもとに本書が届き,英語を学ぶ楽しさがさらに広がっていくことを願ってやみません.SNS などでも、ぜひハッシュタグ「#なぜさんたんげん」をつけて応援していただけますと大変励みになります.どうぞよろしくお願いいたします.
NHK出版デジタルマガジンからは,他にも本書からの2つの部分がすでに公開されています.以下より訪れていただければ.
・ 5月11日公開,「紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか【英語史で解く英文法の謎】」(本書の第1章第5節に相当)
・ 5月28日公開,「英語の「なぜ」には,驚くべき歴史と物語が潜んでいる【英語史で解く英文法の謎】」(本書の「はじめに」に相当)
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

ついに,この日を迎えることができました.長年本ブログを読み,応援してくださっている読者の皆さんに,まずは何よりも先にこの言葉をお届けしたいと思います.
本日2026年6月10日,拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書),通称・略称『なぜさんたんげん』が,公式に全国の書店で発売日を迎えました.月刊誌での2年間にわたる連載期間から数えれば実に長い道のりでした.担当編集者の方とは実に500通を超えるメールのラリーを重ね,時にはニュージーランド,オーストラリア,そしてスコットランドへの移動を跨ぎながら,原稿を書き直し,校正を続けてきました.それらがついに1冊の書籍として結実し,日本の皆さんの手元に届く瞬間を迎えたことになります.著者として実に深い感慨を抱いています.
そして本日,発売当日に当たり,もう1つ爆弾級のご報告を差し上げます.発売日の前日となる昨日6月9日の夕方,NHK出版より公式のアナウンスがありました.なんと「発売前増刷」が決定したというのです.
まだ全国の書店のレジを通っていない段階、つまり発売日前に増刷がかかるというのは,著者にとって名誉です.それはひとえに,SNS や note 等を通じて「hel活」 (helkatsu) を応援してくださっている皆さんが自発的に作り出した圧倒的な熱量と大波ゆえにほかなりません.著者として,これほど嬉しく心強い応援はありません.深く御礼申し上げます.
今日の発売に向けて,1ヶ月前から毎日のように hellog, heldio, SNS, YouTube 等で展開してきた発売前の広報は昨晩をもって無事に全日程を完走いたしました.これは,「著者が自分でできる最大限の広報をやってみたら,一体どこまで行けるか」を確かめる1つの挑戦でもありました.これほどまでにエネルギーを費やし,読者の皆さんと一緒になって駆け抜けた1ヶ月間は,どのような結果になろうとも「完全にやりきった」と言い切れるものです.この爽快なやりきった感があること自体で,私としては大成功だったと考えています.お祭りに付き合ってくださった皆さん,本当にありがとうございました.
さて,本日無事に発売日を迎えたわけですが,もちろん今後も hellog では『なぜさんたんげん』に注目していきます.本書で取り上げた24の英文法の謎について,さらに一歩深掘りした解説や考察を増やしていくつもりです.ここからは本を開きながら,じっくりと英語史の沼を一緒に歩んでいただければと思います.
本日以降,全国のリアル書店の店頭に,本書が並び始めているかと思います.もし書店の棚や新刊コーナーで本書を見かけましたら,写真付きでもテキストのみでも構いませんので,SNS 等で「#なぜさんたんげん」 のハッシュタグを付けつつ,教えてください.皆様からのリアルなご報告を,ドキドキしながらお待ちしております.
『なぜさんたんげん』著者公式HPも,最速レビューのコンテンツを含め,たいへん盛り上がっています.ぜひ訪れていただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
いよいよ明日6月10日,私の最新刊「#なぜさんたんげん」こと『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』が発売となります.これまで本ブログ,Voicy heldio などで大々的に広報活動を展開してまいりましたが,すでに皆さんから温かいご声援やご期待の声を多くいただき,著者としてこれほど嬉しいことはありません.心より御礼申し上げます.
本日の hellog 記事では,発売が明日に迫った発売前最後のタイミングで,あらためて Amazon 予約特典についてご紹介したいと思います.今回の予約購入者に PDF で配布される書き下ろし特別編のタイトルは,「なぜ doubt のスペリングに b があるのか」です.この特典節は一般には出回らない限定コンテンツとなりますので,ぜひこの最後のタイミングで Amazon 予約を検討していただければ幸いです.
今回の書き下ろし特典節は,単なるおまけのコラムではありません.本書の本体とみごとに溶け込むスタイルで書かれており,とりわけ第3章第4節や第3章第5節との連携にご注目いただければと思います.実際に,入手されたら本書を印刷してページの間に折り込んでいただきたいくらいなのです.そのために,なんと配布される PDF は最初から「トンボ」付きの仕様になっているという,編集の田中菜乃香さんの芸の細かさにも要注目です.この仕掛けには私も深く唸らされました.
ここで,特典節 PDF の最初のページの冒頭部分を画像でチラ見せいたします.

いかがでしょうか.ここを入り口として,中身ではルネサンス期の知識人たちの「ラテン語かぶれ」の暴走が描き出されていきます.フランス語から入ってきた doute というシンプルなスペリングに対し,彼らが「由緒正しき語源形」であるラテン語 dubitare の存在とその知識をひけらかしたいがために,わざわざ発音もしない b をねじ込んだという,歴史の人間味あふれるドラマが展開します.
これはいわゆる語源的綴字 (etymological_respelling) の典型例ですが,特典節ではさらに暴走の極めつきである island の勘違いスペリングの謎や,なぜ発音がスペリングについていかなかったのかという深い議論へとつながっていきます.
本書をより深く,立体的に楽しむための強力な橋渡しとなる1節です.発売後にはこの PDF 特典は入手できなくなってしまいますので,まだ迷われている方は,ぜひ今すぐ Amazon の『なぜさんたんげん』のページ よりご予約ください.
それでは,明日の『なぜさんたんげん』の正式な船出を,皆さんと一緒にお祭りとして楽しんでいきましょう!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
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