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notice - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-06-28 22:36

2020-10-23 Fri

#4197. 小澤実氏による「ルーン文字の遍歴」の連載(研究社)がスタートしています [runic][notice]

 「研究社 Web マガジン Lingua」にて,小澤実氏(立教大学)による「ルーン文字の遍歴」と題する連載がスタートしています.第1回のプロローグは「ルーン文字とは何か」で,ルーン文字史の概説となっています.読みやすい,おもしろい! 専門家によるルーン文字史がこういう形で読めるとは,何とも素晴らしい時代になりました.小澤氏と研究社に感謝いたします.
 私自身はルーン文字やその背景の歴史を専門にしているわけはないのですが,ルーン文字について,英語史あるいは文字論の話題として runic の各記事で様々に取り上げてきました.かつてルーン文字の起源について駄文を記した折には,当の小澤氏に突っ込み(=ご指摘)を入れていただくなどしてお世話になりました.
 第1回の記事から,初期近代の北欧において,当時発展した文献学を後ろ盾にして「自分探し」としてのルーン文字研究が流行したという趣旨の文章を引用させていただきます

初期近代,北欧の過去に対する関心が高まった結果,「ゴート・ルネサンス」と呼ばれる古代スカンディナヴィアの文化の復興運動が起こりました.ギリシアやローマとつながりのない北欧において,北欧が出身地と考えられたゲルマン人の一派ゴート人と自らのつながりを明らかにしようとする知的運動です.そこで注目されたのが,ヘブライ文字,ギリシア文字,ラテン文字といった聖書で使われる文字とも異なるルーン文字です.自らの歴史をどこまで遡ることができるかという意識に囚われた初期近代の北欧知識人らは,ルーン文字の収集と研究に意を注ぎました.


 まったく同じ時期,イングランドでも同様に,文献学を後ろ盾にしてアングロサクソン研究という「自分探し」が流行りました.このブログの主題でもある「英語史」は,この時期の「自分探し」の副産物として,英語に関する歴史的な知識が蓄積された結果の姿といっても過言ではありません.当時の流行として「ある種の意図」をもって収集された知識が,現代の「英語史」のベースとなっています.
 連載のなかで述べられているように,ルーン文字の誕生は2世紀頃という大昔であり,しかも中世後期までには実用上は廃用となったわけではありますが,それは初期近代,そして現代という異なる時期に,その時々の「意味づけ」を与えられ,蘇ってきたという事実があります.同じように,英語史における「古英語」も,やはりその時々の「意味づけ」を与えられつつ受容されてきました.
 ルーン文字と古英語の上記の平行性も念頭におきつつ,今後の連載の展開を楽しみにしたいと思います.

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2020-10-10 Sat

#4184. 10月31日,英語史研究会主催「英語史コンテンツ展覧会」のお知らせ [notice][academic_conference][hel_education]

 3週間後の10月31日(土)の13:00?16:00に,英語史研究会が主催するオンライン特別企画「英語史コンテンツ展覧会」が開催されます.詳細な案内はこちらのPDFをご覧ください.
 同研究会の会員か否かは問わず,英語史に関心のあるすべての大学(学部)生・院生に開かれた英語史ファンイベントです.お互いに「英語史の小ネタ」を披露し,ツイート風にコメントしあい,楽しく英語史を学ぼうという企画です.コロナ下でオンライン授業の続いている大学も多いかと思いますが,英語史への関心を共有する全国からの大学生どうしが横につながることのできる貴重な機会となるのではないでしょうか.
 原則として審査はなく,参加費もかからず,本番ではコンテンツも匿名で出されるので,学生の皆さんは安心して「出展」できます.本ブログもいわば「英語史の小ネタ」集ですので,このブログを講読している大学(院)生の方は,ぜひ出展を検討してみてはいかがでしょうか.
 出展希望者は,1週間後の10月17日(土)までにこちらのフォームより事前登録をどうぞ.事前登録では,名前,メールアドレス,所属大学(院),コンテンツの仮題等の記入が求められます.その後,10月24日(土)までにコンテンツの完成品をオンラインで提出し,10月31日(土)午後の「展覧会」で互いに鑑賞し合うという流れです.ふるってご出展ください.

jashel_exhibition_20201031.png

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2020-10-06 Tue

#4180. 講座「英語の歴史と語源」の第7回「ノルマン征服とノルマン王朝」を終えました [asacul][notice][norman_conquest][monarch][french][history][link][slide]

 「#4170. 講座「英語の歴史と語源」の第7回「ノルマン征服とノルマン王朝」のご案内」 ([2020-09-26-1]) でお知らせしたように,10月3日(土)の15:30?18:45に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・7 ノルマン征服とノルマン王朝」と題する講演を行ないました.久し振りのシリーズ再開でしたが,ご出席の皆さんとは質疑応答の時間ももつことができました.ありがとうございます.
 ノルマン征服 (norman_conquest) については,これまでもその英語史上の意義について「#2047. ノルマン征服の英語史上の意義」 ([2014-12-04-1]),「#3107. 「ノルマン征服と英語」のまとめスライド」 ([2017-10-29-1]) 等で論じてきましたが,今回の講座では,ノルマン征服という大事件のみならず,ノルマン王朝イングランド (1066--1154) という88年間の時間幅をもった時代とその王室エピソードに焦点を当て,そこから英語史を考え直すということを試してみました.いかがだったでしょうか.講座で用いたスライドをこちらに公開しておきます.以下にスライドの各ページへのリンクも張っておきます.

   1. 英語の歴史と語源・7 「ノルマン征服とノルマン王朝」
   2. 第7回 ノルマン征服とノルマン王朝
   3. 目次
   4. 1. ノルマン征服,ten sixty-six
   5. ノルマン人とノルマンディの起源
   6. エマ=「ノルマンの宝石」
   7. 1066年
   9. ノルマン王家の仲違いとその後への影響
   10. ウィリアム2世「赤顔王」(在位1087--1100)
   11. ヘンリー1世「碩学王」(在位1100--1135)
   12. 皇妃マティルダ(生没年1102--1167)
   13. スティーヴン(在位1135--1154)
   14. ヘンリー2世(在位1154--1181)
   15. 3. 英語への社会的影響
   16. ノルマン人の流入とイングランドの言語状況
   17. 4. 英語への言語的影響
   18. 語彙への影響
   19. 綴字への影響
   20. ノルマン・フランス語と中央フランス語
   21. ノルマン征服がなかったら,英語は・・・?
   22. まとめ
   23. 補遺: 「ウィリアムの文書」 (William’s writ)
   24. 参考文献

 次回は12月26日(土)の15:30?18:45を予定しています.話題は,今回のノルマン王朝に続くプランタジネット王朝の前期に注目した「ジョン失地王とマグナカルタ」についてです.いかにして英語がフランス語の「くびき」から解放されていくことになるかを考えます.詳細はこちらからどうぞ.

Referrer (Inside): [2022-03-12-1]

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2020-10-01 Thu

#4175. 「なぜ英語とフランス語は似ているの?」の記事紹介 [french][history_of_french][norman_conquest][norman_french][sobokunagimon][hel_education][notice]

 三省堂のことばのコラムのシリーズとして,「歴史で謎解き!フランス語文法(フランス語教育 歴史文法派)」が展開しています.今回は,英語史との関連でその第18回「なぜ英語とフランス語は似ているの?」の記事をご紹介します.英語史の学徒として実に読みやすく,英仏海峡の向こうから英語史を記述してもらったようで,こそばゆいような,瑞々しいような気持ちになりました.英語とフランス語に関心のあるすべての方に一読をお薦めします.
 英語史の専門家がフランス語史を学ぶことは重要ですし,フランス語史に通じている方より英語史に関心を示してもらえるのは,お互いにメリットのあることだと思っています.学界的にも,この辺りの相互交流が欠如しているのは残念なことだと思っています.中世ヨーロッパにおいては現代のような厳密な国境意識はなく,言語的にいえば multilingual な世界が常態だったわけですから.今回の記事で扱われている時期の「イギリス」でも,「国語」が英語だったのか,フランス語だったのか,はたまたラテン語だったのか,はっきりしません.西欧近代諸国の「標準語」とて,背後にあるイギリス,フランス,ドイツ等の主権国家の「主たる言語」が前面に出てきたにすぎないわけです.
 21世紀の現在,英語が世界的な言語となったのは歴史の偶然にすぎません.英語という言語の本質的な力によるものではなく,主に18世紀から20世紀まで続いたイギリス,アメリカという二大国家の覇権のなせるわざです.
 そのような覇権的な動きが始まる近代より前の時代に焦点を移せば,ヨーロッパには「主権国家」もなければ「国語」も,厳密な意味においてはありませんでした.英語もヨーロッパのありふれた言語の1つにすぎませんでした.英語が大陸のゲルマン語にルーツを持ちつつも,同じく大陸のラテン系のロマンス諸語と長らく接触してきた歴史を,この機会にあらためて顧みてはいかがでしょうか.

Referrer (Inside): [2024-03-28-1]

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2020-09-26 Sat

#4170. 講座「英語の歴史と語源」の第7回「ノルマン征服とノルマン王朝」のご案内 [asacul][notice][norman_conquest][french][history][link]

 10月3日(土)の15:30?18:45に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・7 ノルマン征服とノルマン王朝」と題する講演を行ないます.趣旨は以下の通りです.

1066年のノルマン征服はイギリス史上最大の事件といわれますが,英語史の観点からも,その後の英語がたどってゆく進路を大きく方向づけた点できわめて重大な出来事でした.以後,英語はノルマン王朝の公用語であるフランス語との接触を強め,主に語彙,語法,綴字の領域で大きな言語的影響を被ることになりました.また,当時英語が一時的にフランス語のくびきの下で社会的権威を奪われ,標準形をも失ったという事実は,近代以降の英語の世界的な発展を思うとき,実に意味深長です.本講座で,ノルマン征服の英語史上の意義を改めて考えてみましょう.


 ノルマン征服とは? ノルマン人とは何者? 彼らは何語を話していたのか? イングランドや英語とはどのような関係があるのか? 現代の英語にいかなる影響を及ぼしたのか? 英国史のみならず英語史においても計り知れないインパクトをもつ1066年の事件とその余波に迫ります.
 本シリーズもしばらく中断を余儀なくされていましたが,久し振りの再開となります.関心のある方は是非お申し込みください.よろしくどうぞ.

Referrer (Inside): [2020-10-06-1]

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2020-06-23 Tue

#4075. なぜ大文字と小文字があるのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hel_education][alphabet][capitalisation][notice]

 昨日の記事「#4074. 「素朴な疑問」にひたすら音声で答える英語史の講義を行ないました」 ([2020-06-22-1]) で予告したように,恥を晒して「hellog ラジオ版」をオープンします.
 初回となる今回は「なぜ大文字と小文字があるのですか?」という疑問に答えます.2分20秒ほどの音声 (mp3) によるお手軽な話題です.以下よりどうぞ.



 皿洗いをしながらでも気軽に聴けるようなコンテンツかと思います.とはいっても,完全な聞き流しをするには濃密なコンテンツかもしれません.深く知りたいと思ったら,やはり文字情報がベストです.じっくりと文章で読みたい方は,hellog より##1309,3668の記事セットをご覧ください.
 今後たまに発信していく予定の「hellog ラジオ版」では,新しい話題を提示するというよりも,すでに hellog 本体で扱ってきた話題へと誘う「入り口」を提供することを意識していきます.各メディアの特性を活かして,皆さんの英語史への好奇心を掻き立てることができればと思います.

Referrer (Inside): [2022-03-13-1] [2020-06-27-1]

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2020-06-22 Mon

#4074. 「素朴な疑問」にひたすら音声で答える英語史の講義を行ないました [sobokunagimon][hel_education][notice]

 この4月下旬から5月上旬にかけて,遅れた年度の始まりとなりましたが,大学の初回オンライン授業にて例年通り「英語に関する素朴な疑問」を集めました.結果として,すでに本ブログでも紹介したように「#4045. 英語に関する素朴な疑問を1385件集めました」 ([2020-05-24-1]) という多数の疑問が回収され,ここまで反応してくれた学生に対して少しでも回答を返さなければと焦っていました.
 そこで,英語史の講義のまるまる1回分を割いて,先の素朴な疑問に千本ノック風にひたすら答えていくという趣旨のラジオ・コーナー風の音声コンテンツを作り,それを学生に聴いてもらいました.今学期は異常事態ですし,従来の授業方式をいろいろと変えてみたいという事情もありました.
 答える方としても緊張感とゲーム性がほしかったので,あらかじめ答えやすい問題を選ぶということはせず,ランダムに疑問がディスプレイに出現するようにし,突如として現われる鋭い(あるいはとんでもない)疑問に対して,鋭い(あるいはとんでもない)コメントをもって矢継ぎ早に答えていくというやり方で実施してみました.同時に,なるべく既存の hellog 記事の内容と引っかける形での回答を心がけました.
 結果としては,エキサイティングな体験となりました.講義後のリアクションペーパーによれば,種々の改善すべき点も指摘されましたが,そこそこ楽しく聴いてもらえたようで,やってみて良かったと思っています.(見る方も作る方も)堅苦しくて疲れる動画による講義が続いていたので,息抜き的な位置づけでもありました.
 ただし,この調子で1385件に答えていこうとすると,文字通りの千本ノックとなり,少なくとも10年はかかりそうですので,ほどほどにしておきます.ですが,文章という書き言葉で説明する/されるのと,講義,映像,ラジオなどを通じて話し言葉で説明する/されるのとでは,情報の伝わり方がかなり違うようです.私も活字は好きですが,中高生のときに深夜ラジオばかり聴いていたので,耳から入る情報の質と量が侮れないことはよく分かっています.言語学的にも話し言葉と書き言葉の区別について様々に考えてきましたが,両メディアは根本的に伝わり方が違うのです(cf. 「#3886. 話しことばと書きことば (6)」 ([2019-12-17-1]) とそのリンク先の諸記事を参照).
 書物の学問も良いですが耳学問もたいへん結構,という考え方ですので,コロナ禍のドサクサに紛れて,恥を晒して「hellog ラジオ版」をオープンしようと思っています.簡易的,導入的なものであれ,音声という取っつきやすいメディアで英語史の情報を発信していけば,戯れに聴いてくれる方もいるのではないかと思ったからです.もっとも,オンライン授業期の副産物という程度の位置づけではありますが.
 今後,気が向いたときに英語史の話題に関して数分程度の音声コンテンツを作成し,アップロードするということを試みたいと思います.目下,明日のオープンに向けて準備しているところです.
 先に触れた千本ノックの講義後のリアクションペーパーがいろいろな意味で興味深かったので,私のコメントとともにいくつか挙げておきたいと思います.

 ・ 皿洗いしながら聴きました(←あくまで息抜き企画だったので,実にこういうシーンを想定していました.ながら聴き推奨です,ナイス.)
 ・ 電車に乗りながら聴きました(←これもありそう)
 ・ 短くて寝る前に毎日聴けるようなシステム(←かつての深夜ラジオのリスナーとしてよく理解できます)
 ・ オンライン授業が続いているとPCの画面を見つめる時間がどうしても長くなり,負担が特に目にかかるので音声の資料というのはそういった点でもとてもありがたいです(←この種のコメントは思いのほか多かったです.オンライン授業で学生の皆さんも目がやられているようですね.)
 ・ この媒体の方がより気軽に hellog の記事について入りやすくなりました(←情報を耳から入れるのを好むタイプの意見でしょうか)
 ・ 簡単なスライドなどを同時にのせてくれるとやりやすくて嬉しい.例えば,そのときに話しているテーマだけが書いてあるスライドでもよいので.(←文字や映像のほうが情報として頭に入ってきやすいというタイプでしょうか.やはり視覚情報も欲しいという意見は根強く,たくさん寄せられました.hellog 記事へのリンクを張って示すなどの策を講じる予定です.)
 ・ 自分の抱いた疑問がきちんと届いているのを回答とともに確認できて良かった(←1385件に貢献してくれてありがとう)
 ・ プロのナレーターではなく hellog 執筆者本人の肉声を聴くことができるのは大変画期的(←これは嬉しいコメント.講義と同様,噛み噛みでろれつの回っていないしゃべりですが,話し手は hellog の書き手と同一人物なので,内容は一致しているはずです.)
 ・ 他の受講者がどのような疑問を抱いているのかという自分になかった発想を知る機会にもなるし,その疑問についてさらに考えるきっかけにもなり良いなと感じた(←これもとても多かった意見.オンライン授業期で,他の履修者の存在が見えないということも大きいのだろうと想像します.)
 ・ 基本的には面白かったのですが,ランダムより事前に絞ったほうが,1つ1つについてよく知れ,考えられると思いました(←これも多かった意見.緊張感とゲーム性があったほうが私自身が楽しめると思ったわけなのですが,確かにとんでもない質問もありましたね.話題を選ぶことにします.)

 ということで,いろいろなフィードバックをもらいましたので,それを活かす形で,従来の hellog に加えて「hellog ラジオ版」として音声コンテンツも発信していきたいと思います.

Referrer (Inside): [2020-06-23-1]

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2020-05-31 Sun

#4052. 「今日の素朴な疑問」コーナーを設けました [notice][sobokunagimon][hel_education]

 「#4045. 英語に関する素朴な疑問を1385件集めました」 ([2020-05-24-1]) で紹介した通り,この年度初めに大学の英語史関連の授業を通じて,非常に多くの「英語に関する素朴な疑問」を寄せてもらいました.学生のみなさん,改めて協力に感謝します.改めて一覧はこちらです.
 これだけ集まったからには,皆さん回答を期待するでしょうし,私も回答する義務を感じています.ですが,さすがの数ではあります.なかには英語史にお任せという質問もあれば,逃げたくなるほどストレートで手強い質問もあります.今後は,限界はあるものの,授業を通じて,あるいは hellog を通じて,ゆっくりと回答していきたいと思っています.むしろ知的好奇心をそそるこれらの「素朴な疑問」を通じて,皆さんも私も一緒に学んでいきましょう,というのが疑問収集のそもそもの趣旨でした.(我慢できない方は,少なからぬ素朴な疑問に対して hellog ですでに回答していますのでこちらをご覧ください.)
 「回答する」というと偉そうな言い方ですが,実際にはそこで提案する「回答」らしきものは,すべて英語史・英語学の知見に基づこそすれ私の仮説にすぎません.比較的説得力のある仮説もあれば,根拠の弱い仮説もあるでしょう.私がここかしこでオープンにするのは,あくまでそのような意味での「回答」です.言葉の問題に関しては絶対的な正解などない,というのが私の考え方です.いつしかもっと良い視点や洞察が出ることを期待しての,当面の「回答」です.
 読者の皆さんにも私自身にも英語史思考を促すために,本ブログ右欄上部に「今日の素朴な疑問」コーナーを設けました.先の1385件からランダムに選び出された疑問が,毎日ここに掲載されます.ぜひ日々の英語(史)学習のインスピレーションに役立ててもらえればと思います.

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2020-03-28 Sat

#3988. 講座「英語の歴史と語源」の第6回「ヴァイキングの侵攻」を終えました [asacul][notice][slide][link][old_norse][lexicology][loan_word][borrowing][contact][history]

 「#3977. 講座「英語の歴史と語源」の第6回「ヴァイキングの侵攻」のご案内」 ([2020-03-17-1]) でお知らせしたように,3月21日(土)の15:15?18:30に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・6 ヴァイキングの侵攻」と題する講演を行ないました.新型コロナウィルス禍のなかで何かと心配しましたが,お集まりの方々からは時間を超過するほどたくさんの質問をいただきました.ありがとうございました.
 講座で用いたスライド資料をこちらに置いておきます.以下にスライドの各ページへのリンクも張っておきます.

   1. 英語の歴史と語源・6 「ヴァイキングの侵攻」
   2. 第6回 ヴァイキングの侵攻
   3. 目次
   4. 1. ヴァイキング時代
   5. Viking の語源説
   6. ヴァイキングのブリテン島襲来
   7. 2. 英語と古ノルド語の関係
   8. 3. 古ノルド語から借用された英単語
   9. 古ノルド借用語の日常性
   10. 古ノルド借用語の音韻的特徴
   11. いくつかの日常的な古ノルド借用語について
   12. イングランドの地名の古ノルド語要素
   13. 英語人名の古ノルド語要素
   14. 古ノルド語からの意味借用
   15. 4. 古ノルド語の語彙以外への影響
   16. なぜ英語の語順は「主語+動詞+目的語」なのか?
   17. 5. 言語接触の濃密さ
   18. 言語接触の種々のモデル
   19. まとめ
   20. 参考文献

 次回は4月18日(土)の15:30?18:45を予定しています(新型コロナウィルスの影響がますます心配ですが).「ノルマン征服とノルマン王朝」と題して,かの1066年の事件の英語史上の意義を考えます.詳細はこちらよりどうぞ.

Referrer (Inside): [2022-07-08-1] [2022-03-12-1]

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2020-03-17 Tue

#3977. 講座「英語の歴史と語源」の第6回「ヴァイキングの侵攻」のご案内 [asacul][notice][old_norse][history][oe][anglo-saxon][borrowing][contact][loan_word][link]

 今週末の3月21日(土)の15:15?18:30に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・6 ヴァイキングの侵攻」と題する講演を行ないます.趣旨は以下の通りです.

8世紀後半,アングロサクソン人はヴァイキングの襲撃を受けました.現在の北欧諸語の祖先である古ノルド語を母語としていたヴァイキングは,その後イングランド東北部に定住しましたが,その地で古ノルド語と英語は激しく接触することになりました.こうして古ノルド語の影響下で揉まれた英語は語彙や文法において大きく変質し,その痕跡は現代英語にも深く刻まれています.ヴァイキングがいなかったら,現在の英語の姿はないのです.今回は,ヴァイキングの活動と古ノルド語について概観しつつ,言語接触一般の議論を経た上で,英語にみられる古ノルド語の語彙的な遺産に注目します.


 ヴァイキングや古ノルド語 (old_norse) について,本ブログでも関連する話題を多く扱ってきました.以下,主要な記事にリンクを張っておきます.

 ・ 「#59. 英語史における古ノルド語の意義を教わった!」 ([2009-06-26-1])
 ・ 「#111. 英語史における古ノルド語と古フランス語の影響を比較する」 ([2009-08-16-1])
 ・ 「#169. getgive はなぜ /g/ 音をもっているのか」 ([2009-10-13-1])
 ・ 「#170. guesthost」 ([2009-10-14-1])
 ・ 「#340. 古ノルド語が英語に与えた影響の Jespersen 評」 ([2010-04-02-1])
 ・ 「#818. イングランドに残る古ノルド語地名」 ([2011-07-24-1])
 ・ 「#827. she の語源説」 ([2011-08-02-1])
 ・ 「#881. 古ノルド語要素を南下させた人々」 ([2011-09-25-1])
 ・ 「#931. 古英語と古ノルド語の屈折語尾の差異」 ([2011-11-14-1])
 ・ 「#1146. インドヨーロッパ語族の系統図(Fortson版)」 ([2012-06-16-1])
 ・ 「#1167. 言語接触は平時ではなく戦時にこそ激しい」 ([2012-07-07-1])
 ・ 「#1170. 古ノルド語との言語接触と屈折の衰退」 ([2012-07-10-1])
 ・ 「#1179. 古ノルド語との接触と「弱い絆」」 ([2012-07-19-1])
 ・ 「#1182. 古ノルド語との言語接触はたいした事件ではない?」 ([2012-07-22-1])
 ・ 「#1183. 古ノルド語の影響の正当な評価を目指して」 ([2012-07-23-1])
 ・ 「#1253. 古ノルド語の影響があり得る言語項目」 ([2012-10-01-1])
 ・ 「#1611. 入り江から内海,そして大海原へ」 ([2013-09-24-1])
 ・ 「#1937. 連結形 -son による父称は古ノルド語由来」 ([2014-08-16-1])
 ・ 「#1938. 連結形 -by による地名形成は古ノルド語のものか?」 ([2014-08-17-1])
 ・ 「#2354. 古ノルド語の影響は地理的,フランス語の影響は文体的」 ([2015-10-07-1])
 ・ 「#2591. 古ノルド語はいつまでイングランドで使われていたか」 ([2016-05-31-1])
 ・ 「#2625. 古ノルド語からの借用語の日常性」 ([2016-07-04-1])
 ・ 「#2692. 古ノルド語借用語に関する Gersum Project」 ([2016-09-09-1])
 ・ 「#2693. 古ノルド語借用語の統計」 ([2016-09-10-1])
 ・ 「#2869. 古ノルド語からの借用は古英語期であっても,その文証は中英語期」 ([2017-03-05-1])
 ・ 「#2889. ヴァイキングの移動の原動力」 ([2017-03-25-1])
 ・ 「#3001. なぜ古英語は古ノルド語に置換されなかったのか?」 ([2017-07-15-1])
 ・ 「#3263. なぜ古ノルド語からの借用語の多くが中英語期に初出するのか?」 ([2018-04-03-1])
 ・ 「#3969. ラテン語,古ノルド語,ケルト語,フランス語が英語に及ぼした影響を比較する」 ([2020-03-09-1])
 ・ 「#3972. 古英語と古ノルド語の接触の結果は koineisation か?」 ([2020-03-12-1])
 ・ 「#3606. 講座「北欧ヴァイキングと英語」」 ([2019-03-12-1])

Referrer (Inside): [2020-03-28-1]

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2020-02-17 Mon

#3948. 『英語教育』の連載第12回「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」 [rensai][notice][sobokunagimon][ame_bre][link]

 2月14日に,『英語教育』(大修館書店)の3月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」としては今回が最終回となります.最後の話題は「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」です.

『英語教育』2020年3月号



 アメリカ合衆国とイギリスを国として比較した場合,典型的なイメージとしては,アメリカは新しいもの好きの革新主義,イギリスは古いもの好きの保守主義といったところでしょう.しかし,アメリカ英語とイギリス英語を英語変種として比較した場合,上のステレオタイプはしばしば当てはまりません.むしろアメリカ英語のほうが古い語法をよく保持していたり,イギリス英語のほうが新しい言葉使いを発達させていたりということが,よくあります.もちろんステレオタイプ通りにアメリカ英語が革新的で,イギリス英語が保守的であるという事例も少なくないことは事実なので,全体としていえば,両英語変種は革新・保守という軸でことさらに対立させるよりも,単に様々な点で互いに異なっていると表現したほうが妥当のように思われます.英米変種の異なり方には,表面的に眺めるだけでは見えてこない,歴史的な様々なパターンがあったのです.
 今回の連載記事では主に発音と綴字の英米差に焦点を当て,アメリカへの移民のタイミングやアメリカ人ノア・ウェブスターによる綴字改革といった社会的な要因が,いかにして変種間の差異をもたらしたかを紹介しました.なぜアメリカ英語では car, four, star などの r が独特の巻き舌で発音されるのに,イギリス英語では子音として発音されないのか.なぜ color (米)/colour (英),center/centre, traveling/travelling のような綴字の差が存在するのか.いずれの問題も,英語の歴史をたどることによって理由が明らかになります.
 今回の記事で英語の英米差に関心をもった方は,本ブログからの以下の記事(および ame_bre の全記事)もお読みください.

 ・ 「#357. American English or British English?」 ([2010-04-19-1])
 ・ 「#359. American English or British English? の解答」 ([2010-04-21-1])
 ・ 「#1343. 英語の英米差を整理(主として発音と語彙)」 ([2012-12-30-1])
 ・ 「#244. 綴字の英米差のリスト」 ([2009-12-27-1])
 ・ 「#240. 綴字の英米差は大きいか小さいか?」 ([2009-12-23-1])
 ・ 「#312. 文法の英米差」 ([2010-03-05-1])

 ・ 「#315. イギリス英語はアメリカ英語に比べて保守的か」 ([2010-03-08-1])
 ・ 「#1304. アメリカ英語の「保守性」」 ([2012-11-21-1])
 ・ 「#1266. アメリカ英語に "colonial lag" はあるか (1)」 ([2012-10-14-1])
 ・ 「#1267. アメリカ英語に "colonial lag" はあるか (2)」 ([2012-10-15-1])
 ・ 「#1268. アメリカ英語に "colonial lag" はあるか (3)」 ([2012-10-16-1])

 ・ 「#468. アメリカ語を作ろうとした Webster」 ([2010-08-08-1])
 ・ 「#3089. 「アメリカ独立戦争と英語」のまとめスライド」 ([2017-10-11-1])
 ・ 「#2916. 連載第4回「イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall --- 複線的思考のすすめ」」 ([2017-04-21-1])
 ・ 「#2925. autumn vs fall, zed vs zee」 ([2017-04-30-1])

 12回の連載を読んでいただいた読者の方々には,1年間お付き合いいただきましてありがとうございます.連載を通じて主張してきたことは,現在の英語は歴史的に英語が変化してきた結果の姿である,ということです.もっと正確にいえば,英語を使用する社会全体が歴史的に英語を変化させてきた結果の姿である,ということです.英語史を通じて新しい英語の見方のツボが伝わったでしょうか.「英語史のツボ」は,本ブログでも引き続き追求していく予定です.今後ともよろしくお願い致します.

 ・ 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第12回 なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」『英語教育』2020年3月号,大修館書店,2020年2月14日.62--63頁.

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2020-01-17 Fri

#3917. 『英語教育』の連載第11回「なぜ英語には省略語が多いのか」 [rensai][notice][sobokunagimon][shortening][abbreviation][blend][acronym][compound][compounding][derivation][derivative][conversion][disguised_compound][word_formation][lexicology][borrowing][link]

 1月14日に,『英語教育』(大修館書店)の2月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第11回となる今回は「なぜ英語には省略語が多いのか」という話題です.

『英語教育』2020年2月号



 今回の連載記事は,タイトルとしては省略語に焦点を当てているようにみえますが,実際には英語の語形成史の概観を目指しています.複合 (compounding) や派生 (derivation) などを多用した古英語.他言語から語を借用 (borrowing) することに目覚めた中英語.品詞転換 (conversion) あるいはゼロ派生 (zero-derivation) と呼ばれる玄人的な技を覚えた後期中英語.そして,近現代英語にかけて台頭してきた省略 (abbreviation) や短縮 (shortening) です.
 英語史を通じて様々に発展してきたこれらの語形成 (word_formation) の流れを,四則計算になぞらえて大雑把にまとめると,(1) 足し算・掛け算の古英語,(2) ゼロの後期中英語,(3) 引き算・割り算の近現代英語となります.現代は省略や短縮が繁栄している引き算・割り算の時代ということになります.
  英語の語形成史を上記のように四則計算になぞらえて大づかみして示したのは,今回の連載記事が初めてです.荒削りではありますが,少なくとも英語史の流れを頭に入れる方法の1つとしては有効だろうと思っています.ぜひ原文をお読みいただければと思います.
  省略や短縮について,連載記事と関連するブログ記事へリンクを集めてみました.あわせてご一読ください.

 ・ 「#631. blending の拡大」 ([2011-01-18-1])
 ・ 「#876. 現代英語におけるかばん語の生産性は本当に高いか?」 ([2011-09-20-1])
 ・ 「#887. acronym の分類」 ([2011-10-01-1])
 ・ 「#889. acronym の20世紀」 ([2011-10-03-1])
 ・ 「#893. shortening の分類 (1)」 ([2011-10-07-1])
 ・ 「#894. shortening の分類 (2)」 ([2011-10-08-1])
 ・ 「#1946. 機能的な観点からみる短化」 ([2014-08-25-1])
 ・ 「#2624. Brexit, Breget, Regrexit」 ([2016-07-03-1])
 ・ 「#2982. 現代日本語に溢れるアルファベット頭字語」 ([2017-06-26-1])
 ・ 「#3075. 略語と暗号」 ([2017-09-27-1])
 ・ 「#3329. なぜ現代は省略(語)が多いのか?」 ([2018-06-08-1])
 ・ 「#3708. 省略・短縮は形態上のみならず機能上の問題解決法である」 ([2019-06-22-1])

 ・ 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第11回 なぜ英語には省略語が多いのか」『英語教育』2020年2月号,大修館書店,2020年1月14日.62--63頁.

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2020-01-01 Wed

#3901. 2019年によく読まれた記事 [link][sobokunagimon][notice]

 明けましておめでとうございます.本年も英語史ブログを続けていく予定です.どうぞよろしくお願い申し上げます.
 この1年間でどのような記事がよく読まれてきたか,ざっと調べてみました.12月30日付のアクセス・ランキング (access ranking) のトップ500記事をご覧ください.
 なぜかトップは「#2227. なぜ <u> で終わる単語がないのか」 ([2015-06-02-1]) という記事でした.その他の最上位の記事は,順位の入れ替えはあるにせよ,いつみてもおよそ固定している感じです.英語史ブログなのに,3位が「#1525. 日本語史の時代区分」 ([2013-06-30-1]) というのは,いつみてもコケそうになります(ただし,私自身は英語史と日本語史の比較対照に,並々ならぬ関心を寄せています).ぜひ専門の方に日本語史ブログを始めていただきたいところです.なお,「#1524. 英語史の時代区分」 ([2013-06-29-1]) は107位です.
 昨年より,雑誌『英語教育』(大修館書店)にて英語の素朴な疑問を話題にする連載記事「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」を執筆する機会をいただいていることもあり,2019年は本ブログでも意識して素朴な疑問を取り上げてきました.先のトップ500記事のなかから昨年中に執筆したものを集めると,以下のとおりです.素朴な疑問に関する記事がよく読まれたことが分かります.
 ということで,今年も素朴な疑問をなるべく多く取り上げていきたいと思います.関連して英語に関する素朴な疑問集もどうぞ.

  1. 「#3677. 英語に関する「素朴な疑問」を集めてみました」 (1617)
  2. 「#3717. 音声学と音韻論はどう違うのですか?」 (1107)
  3. 「#3611. なぜ He is to blame.He is to be blamed. とならないのか?」 (664)
  4. 「#3714. 活字体(ブロック体)と筆記体」 (647)
  5. 「#3575. イギリスの貨幣制度の略史」 (616)
  6. 「#3576. 黒人英語 (= AAVE) の言語的特徴 --- 発音」 (565)
  7. 「#3648. なんで *He cans swim. のように助動詞には3単現の -s がつかないのですか?」 (407)
  8. 「#3593. アングロサクソンは本当にケルトを一掃したのか?」 (394)
  9. 「#3694. 朝尾 幸次郎(著)『英語の歴史から考える英文法の「なぜ」』」 (369)
  10. 「#3604. なぜ The house is building. で「家は建築中である」という意味になるのか?」 (365)
  11. 「#3676. 英語コーパスの使い方」 (365)
  12. 「#3670.『英語教育』の連載第3回「なぜ不規則な動詞活用があるのか」」 (344)
  13. 「#3726. Just The Word --- 英作文の強力なお供」 (339)
  14. 「#3654. x で始まる英単語が少ないのはなぜですか?」 (333)
  15. 「#3653. Ebonics 論争」 (328)
  16. 「#3546. 英語史や語源から英単語を学びたいなら,これが基本知識」 (327)
  17. 「#3663. 細江逸記『英文法汎論』 --- 歴史的な観点からの現代英文法書」 (323)
  18. 「#3647. 船や国名を受ける she は古英語にあった文法性の名残ですか?」 (302)
  19. 「#3696. ボキャビルのための「最も役に立つ25の語のパーツ」」 (289)
  20. 「#3566. 2018年度,英語史の授業を通じて何を学びましたか?」 (285)
  21. 「#3719. 日本語は開音節言語,英語は閉音節言語」 (280)
  22. 「#3542. 『CNN English Express』2月号に拙論の英語史特集が掲載されました」 (275)
  23. 「#3680. 『ケルズの書』がオンラインに」 (266)
  24. 「#3831. なぜ英語には冠詞があるのですか?」 (261)
  25. 「#3606. 講座「北欧ヴァイキングと英語」」 (255)
  26. 「#3669. ゼミのグループ研究のための取っ掛かり書誌」 (246)
  27. 「#3692. 英語には過去時制と非過去時制の2つしかない!?」 (226)

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2019-12-16 Mon

#3885. 『英語教育』の連載第10回「なぜ英語には類義語が多いのか」 [rensai][notice][lexicology][synonym][loan_word][borrowing][french][latin][lexical_stratification][sobokunagimon][link]

 12月13日に,『英語教育』(大修館書店)の1月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第10回となる今回は「なぜ英語には類義語が多いのか」という話題を扱っています.

『英語教育』2020年1月号



 英語には「上がる」を意味する動詞として risemountascend などの類義語があります.「活発な」を表わす形容詞にも lively, vivacious, animated などがあります.名詞「人々」についても folk, people, population などが挙がります.これらは「英語語彙の3層構造」の典型例であり,英語がたどってきた言語接触の歴史の遺産というべきものです.本連載記事では,英語語彙に特徴的な豊かな類義語の存在が,1066年のノルマン征服と16世紀のルネサンスのたまものであり,さらに驚くことに,日本語にもちょうど似たような歴史的事情があることを指摘しています.
 「英語語彙の3層構造」については,本ブログでも関連する話題を多く取り上げてきました.以下をご覧ください.

 ・ 「#334. 英語語彙の三層構造」 ([2010-03-27-1])
 ・ 「#1296. 三層構造の例を追加」 ([2012-11-13-1])
 ・ 「#1960. 英語語彙のピラミッド構造」 ([2014-09-08-1])
 ・ 「#2072. 英語語彙の三層構造の是非」 ([2014-12-29-1])
 ・ 「#2279. 英語語彙の逆転二層構造」 ([2015-07-24-1])
 ・ 「#2643. 英語語彙の三層構造の神話?」 ([2016-07-22-1])
 ・ 「#387. trisociationtriset」 ([2010-05-19-1])
 ・ 「#2977. 連載第6回「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」」 ([2017-06-21-1])
 ・ 「#3374. 「示相語彙」」 ([2018-07-23-1])

 ・ 「#335. 日本語語彙の三層構造」 ([2010-03-28-1])
 ・ 「#3357. 日本語語彙の三層構造 (2)」 ([2018-07-06-1])
 ・ 「#1630. インク壺語,カタカナ語,チンプン漢語」 ([2013-10-13-1])
 ・ 「#1526. 英語と日本語の語彙史対照表」 ([2013-07-01-1])

 ・ 堀田 隆一 「なぜ英語には類義語が多いのか」『英語教育』2020年1月号,大修館書店,2019年12月13日.62--63頁.

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2019-11-21 Thu

#3860. 京大先生シアター,家入葉子先生による「英語史 ことばが変化し続けることの意味」 [hel_education][notice][link]

 京大先生シアターに,京都大学文学研究科(文献文化学専攻英語学英米文学専修)の家入葉子先生が出演しています.「英語史 ことばが変化し続けることの意味」と題した3分弱の動画です.こちらよりどうぞ.
 英語に限らず,すべての言語が過去に変化してきましたし,そして現在も変化しています.言葉は常に変化するものです.家入先生は,動画のなかで do 迂言法 (do-periphrasis) や make の使役構文 (causative) などの話題に触れながら「現代に引きつけた英語史」という視点を押し出されています.英語史の教育・研究において,この視点はますます重要になってくることと私も考えています.
 家入先生のウェブサイトは,英語史関連のコンテンツも充実しています.リンクも様々に張られていますので,英語史の学びに役立ちます.

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2019-11-18 Mon

#3857. 『英語教育』の連載第9回「なぜ英語のスペリングには黙字が多いのか」 [rensai][notice][silent_letter][consonant][spelling][spelling_pronunciation_gap][sound_change][phonetics][etymological_respelling][latin][standardisation][sobokunagimon][link]

 11月14日に,『英語教育』(大修館書店)の12月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第9回となる今回の話題は「なぜ英語のスペリングには黙字が多いのか」です.

『英語教育』2019年12月号



 黙字 (silent_letter) というのは,climb, night, doubt, listen, psychology, autumn などのように,スペリング上は書かれているのに,対応する発音がないものをいいます.英単語のスペリングをくまなく探すと,実に a から z までのすべての文字について黙字として用いられている例が挙げられるともいわれ,英語学習者にとっては実に身近な問題なのです.
 今回の記事では,黙字というものが最初から存在したわけではなく,あくまで歴史のなかで生じてきた現象であること,しかも個々の黙字の事例は異なる時代に異なる要因で生じてきたものであることを易しく紹介しました.
 連載記事を読んで黙字の歴史的背景の概観をつかんでおくと,本ブログで書いてきた次のような話題を,英語史のなかに正確に位置づけながら理解することができるはずです.

 ・ 「#2518. 子音字の黙字」 ([2016-03-19-1])
 ・ 「#1290. 黙字と黙字をもたらした音韻消失等の一覧」 ([2012-11-07-1])
 ・ 「#34. thumb の綴りと発音」 ([2009-06-01-1])
 ・ 「#724. thumb の綴りと発音 (2)」 ([2011-04-21-1])
 ・ 「#1902. 綴字の標準化における時間上,空間上の皮肉」 ([2014-07-12-1])
 ・ 「#1195. <gh> = /f/ の対応」 ([2012-08-04-1])
 ・ 「#2590. <gh> を含む単語についての統計」 ([2016-05-30-1])
 ・ 「#3333. なぜ doubt の綴字には発音しない b があるのか?」 ([2018-06-12-1])
 ・ 「#116. 語源かぶれの綴り字 --- etymological respelling」 ([2009-08-21-1])
 ・ 「#1187. etymological respelling の具体例」 ([2012-07-27-1])
 ・ 「#579. aisle --- なぜこの綴字と発音か」 ([2010-11-27-1])
 ・ 「#580. island --- なぜこの綴字と発音か」 ([2010-11-28-1])
 ・ 「#1156. admiral の <d>」 ([2012-06-26-1])
 ・ 「#3492. address の <dd> について (1)」 ([2018-11-18-1])
 ・ 「#3493. address の <dd> について (2)」 ([2018-11-19-1])

 ・ 堀田 隆一 「なぜ英語のスペリングには黙字が多いのか」『英語教育』2019年12月号,大修館書店,2019年11月14日.62--63頁.

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2019-11-06 Wed

#3845. 講座「英語の歴史と語源」の第5回「キリスト教の伝来」を終えました [asacul][notice][slide][link][christianity][alphabet][latin][loan_word][bible][religion]

 「#3833. 講座「英語の歴史と語源」の第5回「キリスト教の伝来」のご案内」 ([2019-10-25-1]) で案内した朝日カルチャーセンター新宿教室講座を11月2日(土)に終えました.今回も大勢の方に参加していただき,白熱した質疑応答が繰り広げられました.多岐にわたるご指摘やコメントをいただき,たいへん充実した会となりました.
 講座で用いたスライド資料をこちらに置いておきますので,復習等にご利用ください.スライドの各ページへのリンクも張っておきます.

   1. 英語の歴史と語源・5 「キリスト教の伝来」
   2. 第5回 キリスト教の伝来
   3. 目次
   4. 1. イングランドのキリスト教化
   5. 古英語期まで(?1066年)のキリスト教に関する略年表
   6. 2. ローマ字の採用
   7. ルーン文字とは?
   8. 現存する最古の英文はルーン文字で書かれていた
   9. ルーン文字の遺産
   10. 古英語のアルファベット
   11. 古英語文学の開花
   12. 3. ラテン語の借用
   13. 古英語語彙におけるラテン借用語比率
   14. キリスト教化以前と以後のラテン借用
   15. 4. 聖書翻訳の伝統
   16. 5. 宗教と言語
   17. 外来宗教が英語と日本語に与えた言語的影響の比較
   18. 日本語における宗教語彙
   19. まとめ
   20. 補遺:「主の祈り」の各時代のヴァージョン
   21. 参考文献

 次回の第6回は少し先の2020年3月21日(土)の15:15?18:30となります.「ヴァイキングの侵攻」と題して英語史上の最大の異変に迫る予定です.

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2019-10-25 Fri

#3833. 講座「英語の歴史と語源」の第5回「キリスト教の伝来」のご案内 [asacul][notice][christianity][anglo-saxon][link]

 来週末の11月2日(土)の15:15?18:30に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて「英語の歴史と語源・5 キリスト教の伝来」と題する講演を行ないます.ご関心のある方は,こちらよりお申し込みください.趣旨は以下の通りです.

6世紀以降,英語話者であるングロサクソン人はキリスト教を受け入れ,大陸文化の影響に大いにさらされることになりました.言語的な影響も著しく,英語はラテン語との接触を通じて2つの激震を経験しました.(1) ローマ字の採用と (2) キリスト教用語を中心とするラテン単語の借用です.これは,後のイングランドと英語の歴史を規定することになる大事件でした.今回は,このキリスト教伝来の英語史上の意義について,ほぼ同時代の日本における仏教伝来の日本語史的意義とも比較・対照しながら,多面的に議論していきます.


 合わせて,英語史における聖書翻訳の伝統にも触れる予定です.
 以下,予習のために,関連する話題を扱った記事をいくつか紹介しておきます.

 ・ 「#2485. 文字と宗教」 ([2016-02-15-1])
 ・ 「#3193. 古英語期の主要な出来事の年表」 ([2018-01-23-1])
 ・ 「#3038. 古英語アルファベットは27文字」 ([2017-08-21-1])
 ・ 「#3199. 講座「スペリングでたどる英語の歴史」の第2回「英語初のアルファベット表記 --- 古英語のスペリング」」 ([2018-01-29-1])
 ・ 「#1437. 古英語期以前に借用されたラテン語の例」 ([2013-04-03-1])
 ・ 「#32. 古英語期に借用されたラテン語」 ([2009-05-30-1])
 ・ 「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1])
 ・ 「#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧」 ([2019-09-12-1])
 ・ 「#1619. なぜ deus が借用されず God が保たれたのか」 ([2013-10-02-1])
 ・ 「#1439. 聖書に由来する表現集」 ([2013-04-05-1])
 ・ 「#296. 外来宗教が英語と日本語に与えた言語的影響」 ([2010-02-17-1])
 ・ 「#1869. 日本語における仏教語彙」 ([2014-06-09-1])
 ・ 「#3382. 神様を「大日」,マリアを「観音」,パライソを「極楽」と訳したアンジロー」 ([2018-07-31-1])
 ・ 「#1427. 主要な英訳聖書に関する年表」 ([2013-03-24-1])
 ・ 「#1709. 主要英訳聖書年表」 ([2013-12-31-1])
 

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2019-10-24 Thu

#3832. 講座「英語の歴史と語源」の第4回「ゲルマン民族の大移動」を終えました [asacul][notice][slide][link][anglo-saxon]

 「#3806. 講座「英語の歴史と語源」の第4回「ゲルマン民族の大移動」のご案内」 ([2019-09-28-1]) で案内した朝日カルチャーセンター新宿教室講座を10月20日(日)に終えました(当初の予定は10月12日(土)でしたが,台風19号により延期しました).今回も過去3回とともに,質疑応答を含め参加者の方々と活発な交流の時間をもつことができました.
 講座で用いたスライド資料はこちらに置いておきます.自由にご参照ください.以下に,スライドの各ページへのリンクも貼っておきます.

   1. 英語の歴史と語源・4 「ゲルマン民族の大移動」
   2. 第4回 ゲルマン民族の大移動
   3. 目次
   4. 1. ゲルマン民族の大移動とアングロ・サクソンの渡来
   5. ゲルマン語派とゲルマン諸民族
   6. 「アングロ・サクソン人」とは誰?
   7. 「イングランド」「イングリッシュ」「アングロ・サクソン」の名称
   8. 2. 古英語の語彙
   9. 古英語の語形成の特徴
   10. 複合 (compounding) と派生 (derivation)
   11. 隠喩的複合語 (kenning)
   12. 3. 現代に残る古英語の語彙的遺産
   13. 古英語語彙だけで構成された現代英語文
   14. 偽装複合語 (disguised compound)
   15. まとめ
   16. 参考文献
   17. 補遺:Anglo-Saxon Chronicle の449年の記述

 次回,第5回の講座「キリスト教の伝来」は,11月2日(土)の15:15?18:30に予定されています.ご関心のある方は,是非こちらよりお申し込みください.

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2019-10-14 Mon

#3822. 『英語教育』の連載第8回「なぜ bus, bull, busy, bury の母音は互いに異なるのか」 [rensai][notice][vowel][spelling][spelling_pronunciation_gap][me_dialect][sound_change][phonetics][standardisation][sobokunagimon][link]

 10月12日に,『英語教育』(大修館書店)の11月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第8回となる今回の話題は「なぜ bus, bull, busy, bury の母音は互いに異なるのか」です.
 英語はスペリングと発音の関係がストレートではないといわれますが,それはとりわけ母音について当てはまります.たとえば,matmate では同じ <a> のスペリングを用いていながら,前者は /æ/,後者は /eɪ/ と発音されるように,1つのスペリングに対して2つの発音が対応している例はざらにあります.逆に同じ発音でも異なるスペリングで綴られることは,meat, meet, mete などの同音異綴語を思い起こせばわかります.
 今回の記事では <u> の母音字に注目し,それがどんな母音に対応し得るかを考えてみました.具体的には bus /bʌs/, bull /bʊl/, busy /ˈbɪzi/, bury /ˈbɛri/ という単語を例にとり,いかにしてそのような「理不尽な」スペリングと発音の対応が生じてきてしまったのかを,英語史の観点から解説します.記事にも書いたように「現在のスペリングは,異なる時代に異なる要因が作用し,秩序が継続的に崩壊してきた結果の姿」です.背景には,あっと驚く理由がありました.その謎解きをお楽しみください.

『英語教育』2019年11月号



 今回の連載記事と関連して,本ブログの以下の記事もご覧ください.

 ・ 「#1866. putbut の母音」 ([2014-06-06-1])
 ・ 「#562. busy の綴字と発音」 ([2010-11-10-1])
 ・ 「#570. bury の母音の方言分布」 ([2010-11-18-1])
 ・ 「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1])
 ・ 「#563. Chaucer の merry」 ([2010-11-11-1])

 ・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第8回 なぜ bus, bull, busy, bury の母音はそれぞれ異なるのか」『英語教育』2019年11月号,大修館書店,2019年10月12日.62--63頁.

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