hellog〜英語史ブログ

#5498. 中英語期で最もよくある職業名ベースの姓は何?[onomastics][personal_name][name_project][by-name][occupational_term][ranking][voicy][heldio]

2024-05-16

 Fransson (33) が,中英語期の職業名ベースの姓をめぐる研究において,調査資料のなかで100回以上現われる姓 (by-name) を抜き出し,そのランキングを25位まで挙げている.中英語の綴字で示そう.

 ・ Taillour (仕立屋)
 ・ Chapman (行商人)
 ・ Marescal (馬丁)
 ・ Carpenter (大工)
 ・ Mason (石工)
 ・ Smyth (鍛冶屋)
 ・ Coke (料理人)
 ・ Coupere (おけ屋)
 ・ Tannere (なめし皮職人)
 ・ Fullere (縮絨工)
 ・ Turnour (旋盤工)
 ・ Milner (粉屋)
 ・ Muleward (粉屋)
 ・ Keu (料理人)
 ・ Mouner (粉屋)
 ・ Bakere (パン屋)
 ・ Barber (床屋)
 ・ Ferrour (鍛冶屋)
 ・ Pottere (陶器職人)
 ・ Coliere (石炭商)
 ・ Mercer (服地屋)
 ・ Feuere (鍛冶屋)
 ・ Skynnere (皮職人)
 ・ Deyer (染物屋)
 ・ Leche (医者)

 英語本来語のものもあればフランス語由来のものもある.現代でも広く用いられている名前もあれば,そうでもないものもある.英語でも日本語でも時代によって人気のある first name が移り変わってきたことはよく知られているが,姓にも通時的な分布の変化があるのだろうか.中英語期は姓が導入され固まった時代ではあるが,特にその前期には,まだ流動的な代物にすぎなかったということも考え合わせたい.
 なお,今回の話題については,すでに先日の5月11日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」配信回にて取り上げている.「#1076. 「中英語の職業名の姓」人気ランキング」をお聴きいただければ.



 ・ Fransson, G. Middle English Surnames of Occupation 1100--1350, with an Excursus on Toponymical Surnames. Lund Studies in English 3. Lund: Gleerup, 1935.

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