Fransson (33) が,中英語期の職業名ベースの姓をめぐる研究において,調査資料のなかで100回以上現われる姓 (by-name) を抜き出し,そのランキングを25位まで挙げている.中英語の綴字で示そう.
・ Taillour (仕立屋)
・ Chapman (行商人)
・ Marescal (馬丁)
・ Carpenter (大工)
・ Mason (石工)
・ Smyth (鍛冶屋)
・ Coke (料理人)
・ Coupere (おけ屋)
・ Tannere (なめし皮職人)
・ Fullere (縮絨工)
・ Turnour (旋盤工)
・ Milner (粉屋)
・ Muleward (粉屋)
・ Keu (料理人)
・ Mouner (粉屋)
・ Bakere (パン屋)
・ Barber (床屋)
・ Ferrour (鍛冶屋)
・ Pottere (陶器職人)
・ Coliere (石炭商)
・ Mercer (服地屋)
・ Feuere (鍛冶屋)
・ Skynnere (皮職人)
・ Deyer (染物屋)
・ Leche (医者)
英語本来語のものもあればフランス語由来のものもある.現代でも広く用いられている名前もあれば,そうでもないものもある.英語でも日本語でも時代によって人気のある first name が移り変わってきたことはよく知られているが,姓にも通時的な分布の変化があるのだろうか.中英語期は姓が導入され固まった時代ではあるが,特にその前期には,まだ流動的な代物にすぎなかったということも考え合わせたい.
なお,今回の話題については,すでに先日の5月11日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」配信回にて取り上げている.「#1076. 「中英語の職業名の姓」人気ランキング」をお聴きいただければ.
・ Fransson, G. Middle English Surnames of Occupation 1100--1350, with an Excursus on Toponymical Surnames. Lund Studies in English 3. Lund: Gleerup, 1935.
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