hellog〜英語史ブログ

#125. 投票と風船[etymology][derivative][suffix]

2009-08-30

 今日は衆議院選挙の投票日.さて,投票とかけて風船ととく,その心は.
答えは, 「二つとも球」 である(←クリック).
 英語で「投票(用紙)」は ballot (paper),「風船」は balloon で,ともに ball 「球」である.かつては小球で投票したということにちなむ.
 語幹はともに共通で,異なるのは接尾辞のみである.ballot は,イタリア語 ballotta が16世紀に借用された語で,-ot という接尾辞がついている.これは「小さいもの」を示す接尾辞で,指小辞 ( diminutive ) と呼ばれる.一方,balloon はフランス語 ballon が16世紀に借用された語で,-oon という接尾辞がついている.これは「大きいもの」を示す接尾辞で,増大辞 ( augmentative ) と呼ばれる.後者は16世紀に借用された当初には「ボールゲーム」の意味だったが,18世紀後半に「気球,風船」の意味を発展させた.
 それぞれイタリア語とフランス語からの借用であるということは,基体の ball 「球」もロマンス系の語かと思いきや,本来はゲルマン系の語である.それが一度ロマンス語へ借用され,指小辞と増大辞が付加された状態で,改めてゲルマン系の英語へ戻ってきたという経緯である.
 指小辞 -ot の例は多くないが,他に chariot 「古代の戦闘馬車」, galliot 「小型ガレー船」, loriot 「ウグイスの一種」, parrot 「オウム」などがある.
 増大辞 -oon の例も少ないが,bassoon 「バスーン」, cartoon 「風刺漫画」, saloon 「大広間」がある.cartoon は,初期の風刺漫画が大判の紙(カード)に描かれたことに由来する.ちなみに,増大辞 -oon のフランス語版として -on という増大辞があり,こちらは flagon 「細口大瓶」や million 「百万」などの例にみられる.
 語源のおもしろさは,一見するとつながりのない二つの語の間に共通点を発見することができることである.開票の結果,頭上の風船が割れて泣きを見るのは,果たしてどの政党か.

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