現代英語には affect, attract, celebrate, dedicate, indicate, relate などロマンス系の動詞が多く存在する.語幹末尾に /t/ をもつこれらの語形はラテン語の過去分詞形(典型的な語尾は -ātus)に由来するが,英語へ取り込まれる際には /t/ を含めた全体が動詞語幹と解釈された.この背景には,形容詞から動詞への品詞転換 (conversion) が英語において広く生産的であったことが関与していると言われる.この経緯については,「#438. 形容詞の比較級から動詞への転換」 ([2010-07-09-1]) や「#1383. ラテン単語を英語化する形態規則」 ([2013-02-08-1]) の記事で簡単に触れた通りである.
さて,このような語群の一部には,現代英語において古風な用法ではあるが,原形がそのまま過去分詞として用いられるものがある.例えば,create, dedicate, frustrate は,このままの形態で,規則的な過去分詞形 created, dedicated, frustrated と同等の過去分詞として用いられることがある.現代の用法としては限定的だが,中英語や初期近代英語では,これらの動詞において原形と同形の過去分詞形が,規則的な -ed 形と並んで広く行われていた.荒木・宇賀治 (206--08) は,中英語における -ed 形とゼロ形の相対頻度を示した Reuter (45, 89) による以下のデータを掲載しながら,語幹が /t/ で終わる動詞についてはむしろゼロ形のほうが好まれたことを指摘している.
/t/ で終わるもの | /t/ で終わらないもの | ||||
{-ed} | {-ø} | {-ed} | {-ø} | ||
13--14世紀 | Chaucer | 55 | 58 | 19 | 9 |
Wyclif | 17 | 26 | 3 | 0 | |
Trevisa | 15 | 62 | 2 | 1 | |
Gower | 3 | 29 | 2 | 9 | |
15世紀 | Lydgate | 13 | 116 | 7 | 1 |
Tr. Palladius | 5 | 70 | 3 | 7 | |
Tr. Higden | 極く少数 | ほとんど | すべて | 0 | |
Tr. Delm | 1 | 44 | 4 | 0 | |
Capgrave | 9 | 54 | 2 | 0 | |
Ripley | 0 | 48 | 0 | 0 | |
Henryson | 3 | 48 | 0 | 0 | |
Monk of Evesh | 5 | 29 | 1 | 0 | |
Bk. St. Albans | 11 | 1 | 1 | 0 | |
Caxton | 165 | 118 | すべて | 0 |
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