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doublet - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2021-12-07 08:53

2016-03-11 Fri

#2510. Johnson の導入した2種類の単語・綴字の(非)区別 [johnson][spelling][orthography][lexicography][doublet][latin][french][etymology]

 Samuel Johnson (1709--84) の A Dictionary of the English Language (1755) は,英語史上の語彙や綴字の問題に関する話題の宝庫といってよい.その辞書とこの大物辞書編纂者については,「#1420. Johnson's Dictionary の特徴と概要」 ([2013-03-17-1]),「#1421. Johnson の言語観」 ([2013-03-18-1]) ほか,johnson の記事ほかで話題を提供してきた.今回は,現代英語の書き手にとって厄介な practice (名詞)と practise (動詞)のような2種類の単語・綴字の区別について,Johnson が関与していることに触れたい.
 Horobin (148) によれば,中英語では practicepractise も互いに交換可能なものとして用いられていたが,Johnson の辞書の出版により現代の区別が確立したとしている.Johnson は見出し語として名詞には practice を,動詞には practise を立てており,意識的に区別をつけている.ところが,Johnson 自身が辞書の別の部分では品詞にかかわらず practice の綴字を好んだ形跡がある.例えば,To Cipher の定義のなかに "To practice arithmetick" とあるし,Coinage の定義として "The act or practice of coining money" がみられる.
 Johnson が導入した区別のもう1つの例として,councilcounsel が挙げられる.この2語は究極的には語源的なつながりはなく,各々はラテン語 concilium (集会)と consilium (助言)に由来する.しかし,中英語では意味的にも綴字上も混同されており,交換可能といってよかった.ところが,語源主義の Johnson は,ラテン語まで遡って両者を区別することをよしとしたのである (Horobin 149) .
 さらにもう1つ関連する例を挙げれば,現代英語では非常に紛らわしい2つの形容詞 discreet (思慮のある)と discrete (分離した)の区別がある.両語は語源的には同一であり,2重語 (doublet) を形成するが,中英語にはいずれの語義においても,フランス語形 discret を反映した discrete の綴字のほうがより普通だった.ところが,16世紀までに discreet の綴字が追い抜いて優勢となり,とりわけ「思慮深い」の語義においてはその傾向が顕著となった.この2つの形容詞については,Johnson が直に区別を導入したというわけではなかったが,辞書を通じてこの区別を広め確立することに貢献はしただろう (Horobin 149) .
 このように Johnson は語源主義的なポリシーを遺憾なく発揮し,現代にまで続く厄介な語のペアをいくつか導入あるいは定着させたが,妙なことに,現代ではつけられている区別が Johnson では明確には区別されていないという逆の例もみられるのだ.「#2440. flowerflour (2)」 ([2016-01-01-1]) で取り上げた語のペアがその1例だが,ほかにも現代の licence (名詞)と license (動詞)の区別に関するものがある.Johnson はこの2語をまったく分けておらず,いずれの品詞にも license の綴字で見出しを立てている.Johnson 自身が指摘しているように名詞はフランス語 licence に,動詞はフランス語 licencier に由来するということであれば,語源主義的には,いずれの品詞でも <c> をもつ綴字のほうがふさわしいはずだと思われるが,Johnson が採ったのは,なぜか逆のほうの <s> である (Horobin 148) .Johnson は,時々このような妙なことをする.なお,defence という名詞の場合にも,Johnson は起源がラテン語 defensio であることを正しく認めていたにもかかわらず,<c> の綴字を採用しているから,同じように妙である (Horobin 149) .Johnson といえども,人の子ということだろう.

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.

Referrer (Inside): [2017-10-07-1]

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2016-01-01 Fri

#2440. flowerflour (2) [doublet][spelling][shakespeare][johnson][orthography][standardisation]

 年が明けました.2016年も hellog を続けます.新年の一発目は,以前にも「#183. flowerflour」 ([2009-10-27-1]) で取り上げた話題でお届けします.
 この2つの単語は,先の記事で説明したように,もともと1つの語のなかの2つの異なる語義だった.しかし,おそらく語義が離れすぎてしまったために,多義語としてではなく同音異義語として認識されるようになり,少なくとも綴字上は区別するのがふさわしいと感じられるようになったのだろう,近代英語期には綴り分ける傾向が生じていた.
 さて,この語が「花」の意味でフランス語から借用されたのは13世紀初頭のことである.MEDflour (n.(1)) によれば,"c1230(?a1200) *Ancr. (Corp-C 402) 92a: & te treou .. bringeð forð misliche flures .. uertuz beoð .. swote i godes nease, smeallinde flures." が初例である.一方,関連する「小麦粉(=粉のなかの最も上等の「華」)」の意味でも13世紀半ばには英語で初例が現われている.MEDflour (n.(2)) によれば," a1325(c1250) Gen. & Ex. (Corp-C 444) 1013: Kalues fleis and flures bred..hem ðo sondes bed." が初例となっている.見出し語の綴字や例文の綴字を見ればわかるように,当初はいずれの語義においても <flour> や <flur> が普通だった.
 その後,近代英語では両語義の関係が不明瞭となり,「花」が「小麦粉」から分化して,中英語以来のマイナーな異綴字であった <flower> を採用するようになった.綴字上の棲み分けは意外と遅く18世紀頃のことだったが,その後も19世紀までは「小麦粉」が <flower> と綴られるなどの混用がみられた.綴り分けるか否かは,個人によっても異なっていたようで,Shakespeare や Cruden の Concordance to the Bible (1738) では現在のような区別が付けられていたが,Johnson の辞書では,いまだ flower という1つの見出しのもとに両語義が収められている.OED の flour, n. の語源欄でも "Johnson 1755 does not separate the words, nor does he recognize the spelling flour." と述べられているが,Horobin (150) が指摘しているように Johnson の辞書の biscotin の定義のなかでは "A confection made of flour, sugar, marmalade, eggs. Etc." のように <flour> が使用されている.綴り分けが定着するには,ある程度の時間がかかったということだろう.標準綴字の定着,正書法の確立は,かくも心許なく緩慢な過程である.

 ・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.

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2015-11-16 Mon

#2394. フランス語にもかつて存在した th [french][phonetics][consonant][doublet][th]

 通常,フランス語と th 音(歯摩擦音)は結びつかないのではないかと思われる.しかし,ラテン語の語末の d などが後のフランス語の歴史において弱化・消失していく過程において,歯摩擦音の途中段階を経たということは,調音音声学的には極めて自然である.そして,その段階にあるフランス語の単語が,語末の歯摩擦音もろともに英語へ借用されたということがあったと想定しても,それほど突飛ではない.どうやら,faith という単語が,まさにこのような過程を経た例として挙げられるようだ.
 発音にせよ綴字にせよ,この語は風貌からしてゲルマン系のように見える.しかし,語源辞典を繰ると明らかなように,古英語には存在せず,中英語期の借用語であると分かる.ラテン語 fidēs (信義,信頼)が古フランス語で feid, feit となり,この語尾子音が11--12世紀頃には,上述のように弱化して摩擦音化していたと考えられる.この摩擦音をもっていた中世の語形が,当時の英語へ借用された.『英語語源辞典』によると,「faith において例外的に th 音が残ったのはおそらく truth, sooth などの影響であろう」とある.
 なお,後にフランス語では語尾が完全に消失し,現代フランス語では foi へと発展している.この語尾子音のない語形は別途中英語期に fei, fay として入っており,ほぼ廃用に近い状態で fay が現代にも伝わる (cf. PDE by my fay < OF par ma fei) .したがって,faithfay は2重語 (doublet) ということになる.
 中英語の諸形態には MED より feith (n.) を,Anglo-Norman の諸形態には The Anglo-Norman Dictionary より fei を参照されたい.
 OED の faith, n. and int. の項より,問題の語末子音について,解説を引用しておく.

The dental fricative in English apparently reflects the pronunciation of the final consonant in the earliest stages of Anglo-Norman and Old French (before its deletion, probably in the 11th cent.), this would make faith the only borrowing from Anglo-Norman to preserve this feature in a monosyllabic word (compare the parallel borrowing FAY n. 1 without it); it may have been preserved under the influence of the semantically related TRUTH n. and TROTH n. (For preservation of the early French final dental in suffixes, compare e.g. DAINTETH n. and the β. forms at PLENTY n., adj.., and adv..

It has also been suggested that the final dental in English faith is -TH suffix 1 (i.e. showing suffixation of fei FAY n. 1 within English), but this rarely combines with nouns and not normally with first elements of non-Germanic origin.


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2015-07-22 Wed

#2277. 「行く」の意味の repair [etymology][latin][loan_word][homonymy][doublet][indo-european][cognate]

 repair (修理する)は基本語といってよいが,別語源の同形同音異義語 (homonym) としての repair (行く)はあまり知られていない.辞書でも別の語彙素として立てられている.
 「修理する」の repair は,ラテン語 reparāre に由来し,古フランス語 réparer を経由して,中英語に repare(n) として入ってきた.ラテン語根 parāre は "to make ready" ほどを意味し,印欧祖語の語根 *perə- (to produce, procure) に遡る.この究極の語根からは,apparatus, comprador, disparate, emperor, imperative, imperial, parachute, parade, parasol, pare, parent, -parous, parry, parturient, prepare, rampart, repertory, separate, sever, several, viper, parent, prepare などの語が派生している.
 一方,「行く」の repair は起源が異なり,後期ラテン語 repatriāre が古フランス語で repairier と形態を崩して,中英語期に repaire(n) として入ってきたものである.したがって,英語 repatriate (本国へ送還する)とは2重語を構成する.語源的な語根は,patria (故国)や pater (父)であるから,「修理する」とは明らかに区別される語彙素であることがわかる.印欧祖語 *pəter- (father) からは,ラテン語経由で expatriate, impetrate, padre, paternal, patri-, patrician, patrimony, patron, perpetrate が,またギリシア語経由で eupatrid, patriarch, patriot, sympatric が英語に入っている.
 現代英語の「行く」の repair は,古風で形式的な響きをもち,「大勢で行く,足繁く行く」ほどを意味する.いくつか例文を挙げよう.最後の例のように「(助けなどを求めて)頼る,訴える,泣きつく」の語義もある.

 ・ After dinner, the guests repaired to the drawing room for coffee.
 ・ (humorous) Shall we repair to the coffee shop?
 ・ He repaired in haste to Washington.
 ・ May all to Athens backe againe repaire. (Shakespeare, Midsummer Night's Dream iv. i. 66)
 ・ Thither the world for justice shall repaire. (Sir P. Sidney tr. Psalmes David ix. v)


 中英語からの豊富な例は,MEDrepairen (v) を参照されたい.

Referrer (Inside): [2018-04-01-1]

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2014-01-15 Wed

#1724. Skeat による2重語一覧 [doublet][etymology][lexicology]

 昨日の記事「#1723. シップリーによる2重語一覧」 ([2014-01-14-1]) に引き続き,今度は Skeat の語源辞典 (748--51) に掲載されている2重語 (doublet) を一覧しよう.その前に,Skeat (748) の2重語の定義を掲げよう.

Doublets are words which, though apparently differing in form, are nevertheless, from an etymological point of view, one and the same, or only differ in some unimportant suffix. Thus aggrieve is from L. aggrauāre; whilst aggravate, though really from the pp. aggrauātus, is nevertheless used as a verb, precisely as aggrieve is used, though the senses of the words have been differentiated.


 では,以下に645組の2重語一覧を掲げる.(なお,本ブログ右欄に「今日の doublet」コーナーを設けてみました.)

abbreviateabridge
abetbet
acajoucashew
adamantdiamond
adventureventure
advocateavouch, avow
aggrieveaggravate
aiteyot
alarmalarum
allocateallow
ameeremir, omrah
amiableamicable
anone
ancientensign
announceannunciate
antemmet
anthemantiphon
anticantique
appalpall
appeal (sb)peal
appearpeer
appraiseappreciate
apprenticeprentice
aptitudeattitude
arcarch
armyarmada
arrackrack, raki
asphodeldaffodil
assayessay
assembleassimilate
assessassize (vb)
assoilabsolve
attachattack
attiretire, tire
baleball
balmbalsam
bandbond
banjomandoline
barbbard
basebasis
bashawpasha
batonbatten
bawdbold
beadlebedell
beakerpitcher
beefcow
beldambelladonna
benchbank, bank
benisonbenediction
blameblaspheme
boilbile
bossbotch
boughbow
boundbourn
bowerbyre
bowlbull
boxpyx, bush
bravebravo
brevebrief
brotherfriar
brownbruin
buffbuffalo
cadencechance
caitiffcaptive
caldron, cauldronchaldron
calibercaliver
calumnychallenge
camerachamber
cancercanker
cannoncanon
caravanvan
cardchart, carte
casechase, cash
caskcasque
castigatechasten
catchchase
cattlechattels, capital
cavalierchevalier
cavalrychivalry
cessassess
chaisechair
chalkcalx
champaigncampaign
channelcanal, kennel
chantcant
chapitercapital
chargecark, cargo
chateaucastle
cheatescheat
check (sb)shah
chicorysuccory
chiefcape
chieftaincaptain
chirurgeonsurgeon
choirchorus, quire
cholercholera
chordcord
chuckshock, shog
churchkirk
cipherzero
cistchest
cithernguitar, gittern, kit
civechive
clauseclose (sb)
climateclime
coffercoffin
coincoign, quoin
colekail
collectcull, coil (vb)
collocatecouch
comfitconfect
commendcommand
commodorecommander
complacentcomplaisant
complete (vb)comply
compostcomposite
comprehendcomprise
computecount
conduct (sb)conduit
confoundconfuse
construeconstruct
conveyconvoy
coolgelid
corngrain
cornhorn
coronationcarnation
corralkraal
corsairhussar
costumecustom
cotcote
couple (vb)copulate
coyquiet, quit, quite
coycage
crapecrisp
creamchrism
creasecrest
crevicecrevasse
cribcratch
crimsoncarmine
cropcoup
crowdrote
cryptgrot
cudquid
cuequeue
curariwourali
curriclecurriculum
curtle-axecutlass
cyclewheel
dacedart, dare
daintydignity
damedam, donna, duenna
dandon, domino
dauphindolphin
deckthatch
defencefence
defendfend
delaydilate
delldale
demesnedomain
dentdint
deploydisplay, splay
depotdeposit (sb)
descrydescribe
desideratedesire (vb)
despitespite
deucetwo
devilishdiabolic
diedado
direct (vb)dress
dishdisc, desk, daïs
disportsport
distainstain
ditchdike
dittodictum
diurnaljournal
dogeduke
doitthwaite
doledeal (sb)
dominiondungeon
doom-dom (suffix)
dragondragoon
dropsyhydropsy
duedebt
dunedown
eatableedible
éclatslate
elfoaf, ouphe
éliteelect
emeraldsmaragdus
emerodshemorrhoids
employimply, implicate
endowendue, indue
enginegin
entireinteger
enviousinvidious
escapescape
eschewshy (vb)
escutcheonscutcheon
especialspecial
espyspy
esquiresquire
establishstablish
estatestate, status
estimateesteem
estopstop
estreatextract
etiquetteticket
exampleensample, sample
exemplarsampler
extraneousstrange
fabricforge (sb)
factfeat
facultyfacility
fanvan
fancyfantasy, phantasy
fashionfaction
fatvat
fauteuilfaldstool
fealtyfidelity
feeblefoible
fellpell
fester (sb)fistula
feudfief, fee
feverfewfebrifuge
fiddleviol
fifepipe, peep
finchspink
finitefine
fitchvetch
flagflake, flaw
flowerflour
flushflux
foamspume
fontfount
forcefarce
foremostprime
fosterforester
fragilefrail
frayaffray
frofrom
frounceflounce
fungussponge
furlfardel
gabblejabber
gadged
gaffergrandfather
gagewage
gambadogambol
gamegammon
gaoljail
garthyard
geargarb
genteelgentle, gentile
genuskin
germgermen
gigjig
ginjuniper
girdgride
girdlegirth
glamourgramarye
graincorn
granarygarner
grece, grisegrade
guarantee (sb)warranty
guardward
guardianwarden
guesthost
guilewile
guisewise
gulletgully
gustgusto
guyguide (sb)
gypsyEgyptian
hackbutarquebus
halewhole
hamperhanaper
haranguering, rank, rink
hash (vb)hatch
hatchmentachievement
hautboyoboe
heaphope
hecklehackle, hatchel
hemi-semi-
henthint
historystory
hockhough
hoopwhoop
hospitalhostel, hotel, spital, spittle
hubhob
humanhumane
hyacinthjacinth
hydraotter
hyper-super-
hypo-sub-
illuminelimn
inaptinept
inchounce
inditeindict
influenceinfluenza
innocuousinnoxious
invitevie
invokeinvocate
iotajot
isolateinsulate
jaggerysugar
jealouszealous
jinngenie
jointjunta, junto
jointurejuncture
jutjet
juttyjetty
ketchcatch
labellapel, lappet
laclake
lacelasso
lairleaguer
lakeloch, lough
lateenLatin
launch, lanchlance (vb)
lealloyal, legal
lectionlesson
libglib
lieulocus
limblimbo
limbeckalembic
lineallinear
liquorliqueur
listlust
loadlode
lobbylodge
locustlobster
lonealone
losellorel
lurchlurk
madammadonna
majormayor
malemasculine
maledictionmalison
mandatemaundy
manglemangonel
manœuvremanure
marchmark, marque
marginmargent, marge
marishmorass
maulmall
mauvemallow
maximmaximum
mazermazzard
meanmesne, mizen
memorymemoir
mentormonitor
metalmettle
miltmilk
minimminimum
minstermonastery
mintmoney
mistermaster
mobmobile, movable
modemood
mohairmoire
momentmomentum, movement
monstermuster
morrowmorn
moslemmussulman
mouldmodule
munnionmullion
musketmosquito
naivenative
nakednude
namenoun
natronnitre
naught, noughtnot
nauseanoise
neatnet
niaseyas
noyaunewel
obedienceobeisance
octaveutas
ofoff
onionunion
orationorison
ordinanceordnance
orpimentorpine
ospreyossifrage
ottoattar
ouchnouch
outerutter
overplussurplus
paddlespatula
paddockpark
pain (vb)pine
paladinpalatine
palepallid, fallow
palettepallet
paperpapyrus
paradeparry
paradiseparvis
paralysispalsy
paroleparable, parle, palaver
parsonperson
passpace
pastelpastille
pastypatty
pateplate
patronpattern
pausepose
pawnpane, vane
paynimpaganism
peerappear
peisepoise
pelissepilch
pellitoryparitory
penancepenitence
peregrinepilgrim
perukeperiwig, wig
pewterspelter
phantasmphantom
piazzaplace
pickpeck, pitch (vb)
picketpiquet
pietypity
pigmentpimento
pikepeak, pick (sb), pique (sb), spike
pippinpip
pistilpestle
pistolpistole
plaintiffplaintive
plaitpleat, plight
planplain, plane, llano
plateauplatter
plumprune
poignantpungent
pointpunt
poisonpotion
pokepouch
polepale, pawl
pomade, pommadepomatum
pomppump
poorpauper
popepapa
porchportico
posypoesy
potentpuissant
poultpullet
pouncepunch
pouncepumice
poundpond
poundpun (vb)
powerposse
praiseprice
preachpredicate
premierprimero
priestpresbyter
privateprivy
probe (sb)proof
proctorprocurator
prolongpurloin
prosecutepursue
providepurvey
providentprudent
punchpunish
punypuisne
purlprofile
purposepropose
purviewproviso
quarternquadroon
queenquean
racemeraisin
rackwrack, wreck
radixradish, race, root, wort
raidroad
railrally
raiserear
rampromp
ransomredemption
rapineravine, raven
raseraze
ratioration, reason
rayradius
rayahryot
rear-wardrear-guard
reaverob
reconnaissancerecognisance
regalroyal, real
relicrelique
renegaderunagate
renewrenovate
reprievereprove
residueresiduum
respectrespite
revengerevindicate
rewardregard
rhomb, rhombusrumb
ridgerig
rodrood
rondeauroundel
roteroute, rout, rut
roundrotund
rouserow
roverrobber
sacksac
sacristansexton
sawsaga
saxifragesassafras
scabbyshabby
scaleshale
scandalslander
scar, scaurshare
scarfscrip, scrap
scattershatter
schoolshoal, scull
scot(free)shot
screenshriek
screedshred
screwshrew
scurscour
scuttleskillet
sect, sept, setsuite, suit
sennetsignet
separatesever
sequinsicca
sergeant, serjeantservant
settlesell, saddle
shammychamois
sharksearch
shawm, shalmhaulm
sheaveshive
shedshade
shirtskirt
shrubsherbet, syrup
shufflescuffle
sicker, sikersecure, sure
sinesinus
sir, siresenior, seignior, señor, signor
size, sizeassise
skewershiver
skiffship
skirmishscrimmage, scaramouch
slabberslaver
sleightsloid
sleuthslot
slobberslubber
sloopshallop
snivelsnuffle
snubsnuff
soilsole, sole
sopranosovereign
soughsurf
soupsup
sousesauce
spadespade
speciesspice
spellspill
spenddispend
spiritsprite, spright
spoorspur
spraysprig, asparagus
spritsprout (sb)
sprout (vb)spout
spryspark
squallsqueal
squinancyquinsy
squiresquare
stanktank
stavestaff
steerTaurus
stilldistil
stocktuck
stovestew (sb)
straitstrict
strapstrop
stressdistress
superficiessurface
supersedesurcease
suppliantsupplicant
sweepswoop
tabortambour
tachetack
taintattaint
tampertemper
tarpaulingtar
tasktax
taunttempt, tent
tawnytenny
teasetose
teetaw
teindtithe, tenth
tendtender
tensetoise
terceltassel
threadthrid
thrill, thirldrill
tinetooth
tippettape
titteat
titletittle
totoo
tontun
tonetune
tourturn
towtug
towndown
tracktrick
tracttrait
traditiontreason
travailtravel
trebletriple
trifletruffle
tripodtrivet
triumphtrump
trothtruth
tucktug
tucktouch
tulipturban
tweaktwitch
umbelumbrella
unityunit
ureopera
vadefade
vairvarious
valetvarlet
vantageadvantage
vastwaste
vawardvanguard
vealwether
veldtfield
veneerfurnish
venew, veneyvenue
verbword
vermeilvermillion
vertexvortex
vervainverbena
viaticumvoyage
viperwyvern, wivern
visorvizard
vizier, visieralguazil
vocalvowel
wainwagon, waggon
waleweal
wattlewallet
weetwit
whirlwarble
wightwhit
woldweald
yelpyap


 ・ Skeat, Walter William, ed. An Etymological Dictionary of the English Language. 4th ed. Oxford: Clarendon, 1910. 1st ed. 1879--82. 2nd ed. 1883.

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2014-01-14 Tue

#1723. シップリーによる2重語一覧 [doublet][etymology][lexicology]

 本ブログでは2重語 (doublet) に関する記事を多く書いてきたが,一覧を作っておくと便利である.シップリーの語源辞典の巻末に,2重語(と3重語以上の多重語)のリストが載っていたので,以下に転載する.その前に,シップリー (708) による2重語の定義と説明を示しておこう.

二重語とは,同じ語源の言葉が異なった経路を経て英語になった一組の言葉(あるいはその組の一語)を意味する。下記はその例に数えられるもので,それらの語源や経路をたどろうと思えば,すべて OED (『オックスフォード英語大辞典』)で見ることができ,これらの二重語から,英語の豊かさと,言葉についてのさまざまな興味ある話しを読み取ることができる。二重語には,語源は同じでありながら,その意味は互いに大いに異なるものがある。


 では,以下に126組の2重語一覧を掲げる.

abbreviate (略記する)abridge (短縮する)
acute (先の尖った)cute (かわいい)ague (激しい熱,【病理】悪寒)
adamant (剛直な)diamond (ダイアモンド)
adjutant (助手の)aid (手伝う)
aggravate (さらに悪化させる)aggrieve (悲しませる)
aim (狙いを定める)esteem (尊重する)estimate (評価する)
allocate (割り当てる)allow (置く)
alloy (合金)ally (同盟する)
an (一つの:不定冠詞)one (一つの)
antic (こっけいなしぐさ)antique (古臭い)
appreciate (高く評価する)appraise (値段をつける)apprize (尊重する)
aptitude (適正)attitude (態度)
army (軍隊)armada (艦隊)
asphodel (《詩語》スイセン)daffodil (ラッパスイセン)
assemble (集合させる)assimilate (消化吸収する)
astound (仰天させる)astonish (驚かす)stun (呆然とさせる)
attach (貼り付ける)attack (攻撃する)
band (バンド)bond (きずな)
banjo (バンジョー)mandolin (マンドリン)
bark (バーク船)barge (平底荷船)
beaker (ビーカー)pitcher (ピッチャー)
beam (梁)boom (【海事】帆桁)
belly (腹部)bellows (ふいご)
benison (祝福の祈り)benediction (祝福)
blame (非難する)blaspheme (冒瀆する)
block (大きな塊)plug (栓)
book (本)buck(wheat) (ソバ)beech (ブナ)
boulevard (広い並木道)bulwark (堡塁)
brother (兄弟)friar (托鉢修道士)
cadet (仕官候補生)cad (育ちの悪い男)
cadence (拍子)chance (偶然)
cage (鳥かご)cave (洞窟)
calumny (誹謗)challenge (挑戦)
cancel (取り消す)chancel (《教会堂の》内陣)
cant (偽善的な説教)chant (詠唱)
captain (首領)chieftain (《山賊などの》かしら)
cavalry (騎兵隊)chivalry (騎士道)
cell (《大組織の》基本組織)hall (ホール)
charge (負担させる,請求する)cargo (船荷)
chariot (《馬で引く》二輪戦車)cart (荷馬車)
chattel (【法律】動産)cattle (畜牛)capital (資本)
check (阻止する,【チェス】王手)shah (イラン国王)
costume (服装)custom (慣習)
crate (わく箱)hurdle (ハードル)
daft (ばかな)deft (器用な)
dainty (上品な)dignity (威厳)
danger (危険)dominion (支配権)
dauphin (【歴史】《フランスの》王太子)dolphin (イルカ)
deck (デッキ)thatch (わら葺き屋根)
defeat (負かす)defect (欠陥)
depot (停車場)deposit (預金)
devilish (悪魔のような)diabolical (邪悪な)
diaper (多彩に小柄模様にする)jasper (碧玉)
disc (レコード)discus (円盤)dish (皿)dais (演壇)desk (机)
ditto (同上)dictum (公式見解,金言)
employ (雇う)imply (暗に意味する)implicate (暗に示す)
ensign (軍旗)insignia (記章)
etiquette (エチケット)ticket (切符)
extraneous (外部からの)strange (奇妙な)
fabric (織物)forge (鍛冶場)
fact (事実)feat (偉業)
faculty (才能)facility (容易さ)
fashion (ファッション)faction (派閥)
feeble (弱い)foible (《愛嬌のある》弱点)
flame (炎)phlegm (痰)
flask (フラスコ)fiasco (完全な失敗)
flour (小麦粉)flower (花)
fungus (菌類)sponge (海綿)
genteel (上品ぶった)gentle (優しい)gentile (異教徒の)jaunty (陽気な)
glamour (魅惑的な)grammar (文法)
guarantee (保証)warranty (保証,権限)
hale (健全な)whole (全体の)
inch (インチ)ounce (オンス)
isolation (孤立)insulation (隔離)
jay (カケス)gay (同性愛の,快活な)
kennel (溝)channel (海峡)canal (運河)
kin (血縁)genus (《分類上の》属)
lace (締めひも)lasso (投げ輪)
listen (聴く)lurk (待ち伏せする)
lobby (ロビー)lodge (山小屋)
locust (バッタ)lobster (カキ)
maneuver (作戦行動)manure (肥料をやる;肥料)
monetary (通貨の)monitory (警告の)
monster (怪物)muster (召集する)
musket (マスケット銃)mosquito (蚊)
naive (単純な)native (生まれた時からの)
onion (タマネギ)union (結合)
paddock (小放牧地)park (公園)
parable (寓話)parabola (放物線)parole (執行猶予)parley (討議)palaver (商談)
parson (教区牧師)person (人)
particle (分子)parcel (小包)
patron (後援者)pattern (模様)
piazza (《イタリア都市の》広小路)place (場)plaza ((スペイン都市などの)広場)
poignant (痛切な)pungent (辛らつな)
poison (毒薬)potion (《毒液の》一服)
poor (貧しい)pauper (乞食)
pope (ローマ教皇)papa (パパ)
praise (ほめる)price (価格)
quiet (静かな)quit (やめる)quite (すっかり)coy (内気な)
raid (襲撃)road (道路)
ransom (身代金)redemption (買い戻し)
ratio (比率)ration (割り当て)reason (理由)
respect (尊敬する)respite (《仕事などの》小休止)
restrain (抑制する)restrict (制限する)
rover (放浪者)robber (泥棒)
saliva (唾液)slime (ねば土,ぬめり)
scandal (恥辱)slander (中傷)
scourge (むち,天罰)excoriate (皮をはぐ)
scout (斥候)auscultate (聴診する)
secure (安全な)sure (自信を持って)
sergeant (軍曹)servant (使用人)
sovereign (主権者)soprano (ソプラノ)
stack (干し草の山)stake (杭)steak (ステーキ)stock (蓄え)
supervisor (管理者)surveyor (測量者)
tamper (干渉する)temper (気性)
triumph (勝利)trump (トランプ)
tulip (チューリップ)turban (ターバン)
two (2の)deuce (ジュース)
utter (口に出す)outer (外側の)
valet (近侍)varlet (従者)
vast (広大な)waste (荒廃させる)
veneer (ベニア)furnish (家具を設備する)
verb (動詞)word (言葉)
whirl (旋回する)warble (さえずる)
yelp (かん高い声を上げる)yap (キャンキャン吠え立てる)
zero (ゼロ)cipher (暗号)


 ・ ジョーゼフ T. シップリー 著,梅田 修・眞方 忠道・穴吹 章子 訳 『シップリー英語語源辞典』 大修館,2009年.

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2013-09-27 Fri

#1614. 英語 title に対してフランス語 titre であるのはなぜか? [etymology][reduplication][consonant][phonetics][dissimilation][doublet][metathesis][french][sobokunagimon]

 9月12日に「素朴な疑問」コーナーで次のような質問をいただいた.「#1597. starstella」 ([2013-09-10-1]) を受けて,同じ [r] と [l] の交替に関する質問である.

uca 2013-09-12 02:50:55
先日のトピックで羅stellaと英starの関係について触れられていましたが、さらに疑問に感じたことがあります。それは、仏titreと英titleの関係です。これにはどういう経緯があったのでしょうか。ラテン語ではtitulusなので、この変化はあくまでフランス語内での変化なのでしょうか。ご教授いただければ幸いです。


 英語の title に対してフランス語は確かに titre である.語源をひもとくと,印欧祖語 *tel- (ground, floor, board) に遡る.この語根の加重形 (reduplication) をもとに印欧祖語 *titel- が再建されており,これが文証されるラテン語 titulus (inscription, label) へ発展したとされる.「平な地面や板に刻んだもの」ほどの原義だろう.ここから「銘(文),説明文,表題」などの語義が,すでにラテン語内で発達していた.このラテン語形は,古フランス語 title として発展し,これが英語へ借用された.初出は14世紀の初め頃である.ただし,古英語期に同じラテン語形を借用した titul が用いられていたことから,中英語の tītle は,この古英語形から発達したものと解釈する OED のような立場もある.いずれにせよ,英語では一貫して語源的な [l] が用いられていたことは確かである.
 すると,現代フランス語 titre の [r] は,フランス語史の内部で説明されなければならないということになる.英語やフランス語の語源辞典などにいくつか当たってみたが,多くは単に [l] > [r] と記述があるのみで,それ以上の説明はなかった.ただし,唯一 Klein は,"OF. title (in French dissimilated into titre)" と異化 (dissimilation) の作用の結果であることを,明示的に述べていた.
 Klein ならずとも,[r] と [l] の交替といえば,思いつく音韻過程は異化である.しかし,「#1597. starstella」 ([2013-09-10-1]) でも説明したとおり,異化は,通常,同音が語の内部で近接している場合に生じるものであり,今回のケースを異化として説明するには抵抗がある.例えば,フランス語でも典型的な異化の例は,couroir > couloir (廊下) や murtrir > multrir (傷つける)のようなものである.しかし,同音の近接とはいわずとも,調音音声学的な動機づけは,あるにはある.[t] と [l] は舌先での調音位置が歯(茎)でほぼ一致しているので,調音位置の繰り返しを嫌ったとも考えられるかもしれない.だが,[r] とて,現代フランス語と異なり当時は調音位置は [t] や [l] とそれほど異ならなかったはずであり,やはり調音音声学的な一般的な説明はつけにくい.異化そのものが不規則で単発の音韻過程だが,title > titre は,そのなかでもとりわけ不規則で単発のケースだったと考えたくなる.
 だが,類例がある.ラテン語で -tulus/-tulum の語尾をもつ語で,[l] が [r] へ交替したもう1つの例に,capitulum > chapitle > chapitre がある.共時的には,フランス語には英語風の -tle は事実上ないので,音素配列上の制約が働いているのだろう.歴史的に -tle が予想されるところに,-tre が対応しているということかもしれない.この辺りの通時的な過程および共時的な分布はフランス語(史)の話題であり,残念ながらこれ以上私には追究できない.
 話題として付け加えれば,英語 title あるいはフランス語 titre の派生語における [l] と [r] の分布をみてみるとおもしろい.フランス語では,派生語 titulaire, titulariser では,ラテン語からの歴史的な [l] を保っている.もちろん,英語 titular も [l] である.化学用語の英語 titrate (滴正する), titration, titrable, titrant は,フランス語の名詞 titre から作った動詞 titrer の借用であり,[r] を表わしている.また,英語で title と同根の tittle (小点;微少)についても触れておこう.この2語は2重語であり,形態上は母音の長短の差異を示すにすぎない.スペイン語の文字 ñ の波形の記号は tilde と呼ばれるが,これはラテン語 titulus より第2子音と第3子音が音位転換 (metathesis) したスペイン語形がもとになっている.したがって,title, tittle, tilde は,形態的にも意味的にも緩やかに結びつけられる3重語といってもよいかもしれない.

 ・ Klein, Ernest. A Comprehensive Etymological Dictionary of the English Language, Dealing with the Origin of Words and Their Sense Development, Thus Illustrating the History of Civilization and Culture. 2 vols. Amsterdam/London/New York: Elsevier, 1966--67. Unabridged, one-volume ed. 1971.

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2013-08-15 Thu

#1571. stateestate [french][latin][phonetics][euphony][loan_word][doublet]

 英語には標題のような,語頭の e の有無による2重語 (doublet) がある.類例としては special -- especial, spirit -- esprit, spouse -- espouse, spy -- espy, squire -- esquire などがあり,stable -- establish も関連する例だ.それぞれの対では発音のほか意味・用法の区別が生じているが,いずれもフランス語,さらにラテン語の同根に遡ることは間違いない.語頭の e が独立した接頭辞であれば話はわかりやすいのだが,そういうわけでもない.
 また,現代英語と現代フランス語の対応語を比べても,語頭の e に関して興味深い対応が観察される.sponge (E) -- éponge (F), stage -- étage, establish -- établir などの類である.英語の2重語についても,英仏対応語についても,e と /sk, sp, st/ の子音群との関係にかかわる問題であるらしいことがわかるだろう.この関係は,歴史的に考察するとよく理解できる.
 e の有無にかかわらず,これらすべての語の語頭音は,ラテン語における語頭子音群 /sk-, sp-, st-/ に遡る.俗ラテン語後期には,この語頭子音群は発音しにくかったのか,直前に ie の母音が添加された.これは一種の音便 (euphony) であり,「#739. glide, prosthesis, epenthesis, paragoge」 ([2011-05-06-1]) でみた語頭音添加 (prosthesis) の典型例といえる.例えばラテン語 spiritus は,古フランス語 ispirtu(s) などへ発展した(ホームズ,p. 52).結果としてラテン語に起源をもつ古フランス語の単語では,軒並み esc-, esp-, est- などの語頭音群が一般的となったのであり,この時代に古フランス語から英語に借用された語も,同じくこの語頭音群を示した.これらは,現代英語へ estate, especial, esprit, espouse, espy, esquire, establish などとして伝わっている.一方,e をもつ古フランス語の形態と並んで,e のないラテン語の語形を参照した形態も英語に採用され,state, special, spirit, spouse, spy, squire, stable などが現代に伝わっている.
 実際,中英語や近代英語では,両形態が大きな意味・用法の相違なく併用されることもこともあり,例えば establishstablish のペアでは,中英語では後者のほうが普通だった.なお,The Authorised Version では両形態が用いられ,Shakespeare ではすでに establish が優勢となっている.このようなペアは,後に(stablish のように)片方が失われたか,あるいはそれぞれが意味・用法の区別を発達させて,2重語として生き延びたかしたのである.
 さて,フランス語史の側での,esc-, esp-, est- のその後を見てみよう.古フランス語において音便の結果として生じたこれらの語頭音群では,後に,s が脱落した.後続する無声破裂音との子音連続が嫌われたためだろう.この s 脱落の痕跡は,直前の e の母音が,現代フランス語ではアクサンつきの <é> で綴られることからうかがえる (ex. éponge, étage, établir) .
 もっとも,フランス語で e なしの /sk-, sp-, st-/ で始まる語がないわけではない.15世紀以前にフランス語に取り込まれたラテン単語は上述のように e を語頭添加することが多かったが,特に16世紀以降にラテン語から借用した語では,英語における多くの場合と同様に,ラテン語の本来の e なしの形態が参照され,採用された.
 結論として,state -- estate にせよ,stage (E) -- étage (F) にせよ,いずれの形態も同じラテン語 /st-, sk-/ の語頭子音群に遡るものの,古フランス語での音便,その後の音発達,フランス語から英語への借用,ラテン語形の参照,英語での2重語の発展と解消といった,言語内外の種々の歴史的過程により,現在としてみれば複雑な関係となった,ということである.

 ・ U. T. ホームズ,A. H. シュッツ 著,松原 秀一 訳 『フランス語の歴史』 大修館,1974年.

Referrer (Inside): [2018-05-06-1]

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2012-11-12 Mon

#1295. フランス語とラテン語の2重語 [doublet][french][latin][etymology][loan_word][syllable]

 「#944. rationreason」 ([2011-11-27-1]) で,フランス語とラテン語から借用された2重語 (doublet) の例をいくつか見た.reason -- ration, treason -- tradition, poison -- potion, lesson -- lection といったペアである.Schmitt and Marsden (87) に他の例が挙がっていたので,下に示したい.左列は中英語期に先に入っていたものでフランス語,右列は初期近代英語期に改めて借用されたラテン語である.

French (in ME)Latin (in EModE)
armorarmature
chambercamera
choirchorus
frailfragile
gendergenus
jealouszealous
proveprobe
straitstrict
strangeextraneous
treasurethesaurus


 フランス語形をラテン語形と比べてみると,いかに子音が消失あるいは変化したり,音節が失われているかがわかる.概してラテン語形は音節数が多い.英語はこれらの異なる語形を豊富に取り入れることによって,語彙そのものを増やしてきたことはもちろん,語彙の音節数別の分布をも変化させてきたのだろう.英語語彙と音節数については,syllable statistics の各記事を参照.

 ・ Schmitt, Norbert, and Richard Marsden. Why Is English Like That? Ann Arbor, Mich.: U of Michigan P, 2006.

Referrer (Inside): [2015-03-29-1]

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2012-11-08 Thu

#1291. フランス借用語の借用時期の差 [french][loan_word][gsr][rsr][stress][doublet]

 フランス借用語については,french loan_word の多くの記事で取り上げてきた.標題に関連する話題としては,「#117. フランス借用語の年代別分布」 ([2009-08-22-1]) ,「#1209. 1250年を境とするフランス借用語の区分」 ([2012-08-18-1]) ,Norman French と Central French のそれぞれから借用された2重語 (norman_french doublet などについて述べた.今回は,標題と関係するがこれまでに触れる機会のなかった例や話題を,Schmitt and Marsden (135--36) より,3点ほど取り上げる.
 まずは,Norman French と Central French からの2重語を1対追加.スコットランド英語で聞かれる leal /liːl/ "faithful, loyal, true" は13世紀に Anglo-Norman French より入った.一方,Central French より,同根語 loyal が16世紀に入った.
 同じフランス語でも時代を違えて Old French と French からの2重語としては,feast (C13) と fete (C18) ,hostel (C13) と hotel (C17) がある.それぞれの後者の語には,/st/ という音韻環境において /s/ が脱落するというフランス語での音韻変化が反映されている.
 hostelhotel に関連してもう1つ興味深い点は,早くに借用された前者では,強勢位置が第1音節へと英語化しているが,遅くに借用された後者では,強勢はいまだに原語通りに第2音節に置かれていることだ.これは,適用されている強勢規則が Germanic Stress Rule (GSR) か Romans Stress Rule (RSR) かの違いであると説明できる.GSR と RSR については,「#200. アクセントの位置の戦い --- ゲルマン系かロマンス系か」 ([2009-11-13-1]) や「#718. 英語の強勢パターンは中英語期に変質したか」 ([2011-04-15-1]) で論じたように,理論的に難しい問題が含まれているが,フランス借用語について大雑把にいえば,中世以前に入った語は GSR に従い,近代以降に入った語は RSR に従う傾向が強い([2010-12-12-1]の記事「#594. 近代英語以降のフランス借用語の特徴」を参照).以下に例を示す.

Earlier borrowings (--C14)Later borrowings (C15--)
mústardduét
léttucepanáche
cárriagebrunétte
cólorelíte
cóurageensémble
lánguageprestíge
sávagerappórt
víllagevelóur
fígurevignétte


 ・ Schmitt, Norbert, and Richard Marsden. Why Is English Like That? Ann Arbor, Mich.: U of Michigan P, 2006.

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2012-03-11 Sun

#1049. 英語の多重語と漢字の異なる字音 [kanji][grammatology][doublet][buddhism]

 英語の語源について特に関心をもたれる話題として,2重語 (doublet) や3重語 (triplet) などの多重語がある.英語は,互いに親族関係にある複数の言語(例えばラテン語とフランス語)や方言(例えば中央フランス語とノルマン方言のフランス語)のそれぞれから,多少なりとも異なる時代に,同根語 (cognate) を借用していることが少なくない.多重語は,英語の言語接触の豊富さという観点からみても興味深いし,多重語それぞれの間の形態的,意味的な差をみるのもおもしろい.最近では[2012-02-18-1]の記事「#1027. コップとカップ」で例を取り上げたが,過去の doublet の諸記事でも多くの具体例を挙げてきた.
 日本語における多重語の例としては,[2012-02-18-1]の記事でコップとカップ,ゴムとガム,カルタとカードとカルテなどを挙げた.いずれも洋語からの例だが,実はもっと身近なところに多重語は無数に転がっている.通常,多重語という術語で呼ばれないので見落としているが,冒頭で示した「互いに親族関係にある複数の言語や方言のそれぞれから,多少なりとも異なる時代に,同根語を借用し」た各語を多重語と定義づけるのであれば,漢字の異なる字音はまさに多重語である.
 日本語における漢字の字音(音読み)は,中国語自体の音韻変化と日本語に入った時期により4種類が区別される.以下,佐藤 (63--64) により概説する.まず,古音(上古音・推古音)は推古朝 (592--628) の遺文などで,万葉仮名「意・奇・宜・移・止・里」をそれぞれ「オ・ガ・ガ・ヤ・ト・ロ」と読むもので,現代では用いられない.ついで,呉音は,中国の六朝時代 (229--589) の江南地方音に基づき,日本では古くは6世紀頃から用いられた.主として仏教社会で根付いたもので,現代にも仏教語に多く反映されている.次に,漢音は唐 (618--907) の洛陽あるいは長安の標準音に基づき,日本では7世紀末から平安時代にかけて漢籍の音読などに広く用いられ,朝廷でも正式として奨励された.現在まで最もよく残っている字音である.次に,平安時代末期から,禅宗の伝来や交易によりもたらされたのが唐音(宋音)である.宋 (960--1279) や元 (1271--1368) の南方音に由来するものと,明 (1368--1644) や清 (1616--1912) の南方音に由来するものがある.禅宗文化に関わる語に宋音が残っているが,数は多くない.それぞれの例を示そう.

 呉音漢音唐音
脚気(かっけ)脚本(きゃくほん)行脚(あんぎゃ)
行事(ぎょうじ)行軍(こうぐん)行灯(あんどん)
勧請(かんじょう)招請(しょうせい)普請(ふしん)
下界(げかい)下層(かそう)下火(あこ)
外典(げてん)外国(がいこく)外郎(ういろう)
頭脳(ずのう)頭部(とうぶ)塔頭(たっちゅう)
経文(きょうもん)経済(けいざい)看経(かんきん)


 呉音,漢音,唐音で表わされる音形に対応する語は起源を同じくし,その異なる発音は中国語内での方言的,歴史的な異形にすぎない.したがって,各行の同一漢字で表わされる3語は,読みこそ異なれ,同根語であり3重語である.
 ただし,異なる字音で表わされるこのような多重語が,英語の典型的な多重語,例えば rationreason ([2011-11-27-1]) のような2重語と決定的に異なる点がある.それは,日本語では「脚」なり「行」なりの漢字の字形,視覚に訴える表語文字が,字音の差異を目立たなくしているのに対して,英語では表音文字であるアルファベットを用いているがゆえに,語源に詳しくないかぎり,rationreason のあいだに明らかな関係を見いだすことができないということだ.音を犠牲にし,語を表わす機能を優先させるのが表語文字としての漢字であり,逆に語を犠牲にし,音を表わす機能を優先させるのが表音文字としてのアルファベットであることを考えれば,音声変化によって影響を受けにくいのは漢字のほうであることは明らかだろう.rationreason の発音(聴覚映像)の差異が,漢字では「理」なる一字(視覚映像)のもとへ統合されていると想像すればよいだろうか.
 日本語の漢字使用者は,「脚気」「脚本」「行脚」をそれぞれ正しく読むとき,それと気付かずに多重語の同根確認をしているのである.だが,あまりに慣れすぎているので多重語といわれてもあまり感心しない.それに引きかえ,英語の rationreason は,普段その関係に気付く可能性が低いので,同根だと学ぶとナルホド感が生じるのだろう.

 ・ 佐藤 武義(編著) 『展望 現代の日本語』 白帝社,1996年.

Referrer (Inside): [2014-06-09-1]

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2012-02-18 Sat

#1027. コップとカップ [etymology][doublet][triplet][japanese][loan_word][history]

 日本語のコップとカップはどう違うか.『類義語使い分け辞典』によると,コップは,ガラス,プラスチック,金属製の冷たい飲み用の円筒形容器で,取っ手がない.一方,カップは陶磁製の熱い飲み物の容器で,取っ手がついている.前者の容量は200ccくらい,後者は250ccくらいというから,ここまで厳密に区別されていたのかと感心した.
 以上は各語の指示対象の外見や用途の違いだが,語それ自体の違いはといえば,コップはオランダ語 kop に由来し,カップは英語 cup に由来する語である.コップは18世紀にすでに見られ,日本語に借用されて古い語である.
 オランダ語 kop と英語 cup はもちろん同根語 (cognate) で,ラテン語 cūpa "vat, tub, cask" に遡る.これが両言語に借用され別々の語形で行なわれていたものが,そのまま日本語へ別々に借用され,意味を違えて定着したものである.
 コップとカップのように,語源的には同根に遡るが,異なる借用元言語から別々に借用されて,異なる形態と意味をもって共存しているペアのことを2重語 (doublet) と呼ぶ.日本語で定着した2重語としては,ほかに,ゴムとガムがある.ゴムはオランダ語 gom から,ガム gum は英語から借用した語である.ポルトガル語 bolo のボーロと,英語 ball のボールも類例だ.また,3重語の例として,ポルトガル語 carta からのカルタ,英語 card からのカード,ドイツ語 Karte からのカルテが挙げられる.
 さて,英語における2重語,3重語の例は,doublet の各記事で取り上げているのでそちらを見ていただくとして,日本語のコップとカップ,英語の regardreward ([2009-07-13-1]) 及び rationreason ([2011-11-27-1]) との関係を図示してみよう.

kop and cup

 借用元言語のペアは,第1例のオランダ語と英語では姉妹語どうしの関係,第2例の中央フランス語とノルマン・フランス語では方言どうしの関係,第3例のラテン語とフランス語では母娘の関係であり,それぞれ異なっている.しかし,受け入れ側の言語にしてみれば,そのような系統関係はどうでもよい.後世の人間が調べてみたら,たまたまそのような関係にある2つの言語から借用したのだとわかる,という話しである.しかし,私たちのような後世の人間にとっては,こうした例は言語史や文化史の観点から実に興味深い.言語と文化の接触の歴史を雄弁に物語る例だからである.

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2011-11-27 Sun

#944. rationreason [doublet][history_of_french][french][latin][etymology][loan_word]

 英語語彙に散見される 2重語 (doublet) は,そのソース言語(方言)の組み合わせによって様々な種類がみられる.これまでの doublet の記事で取り上げてきた例は,フランス語絡みが多い.今回もフランス語からの借用語を扱うが,さらにその元であるラテン語の形態との間で2重語の関係を作っている例をみてみよう.
 ラテン単語は,その娘言語であるフランス語へ伝わる際に音韻変化を経た.その音韻変化の1つに,ラテン語の典型的な名詞語尾 -tiō(nem) がフランス語で -son へと発達したというものがある.これにより,ラテン語 ratiōnem はフランス語 raison へ,同様に traditiōnemtrahison へ,pōtiōnempoison へ,lectiōnemleçon へと変化した.
 音韻変化は原則として例外なしとすると,フランス語に -tion の形態は残らないはずだが,実際にはいくらでも存在する.それは,フランス語が,音韻変化を遂げた後に改めてラテン語から語源的な形態を借用した(あるいは復活させた)からである.その段階で,すでに,フランス語の内部において語源を一にする2つの異なる形態(フランス語形とラテン語形)が2重語として共存していたことになる.そして,フランス語におけるその2形態が,時期は必ずしも同じでないにせよ,そのまま英語へも借用され,2重語の関係がコピーされたのが,ration -- reason, tradition -- treason, potion -- poison, lection -- lesson のようなペアである.
 ration -- reason には,ratio という同根語も英語に存在し,3重語 (triplet) を形成している.tradition はラテン語 trādere ("through" + "give") からの派生名詞で,「(次世代に)引き継ぐこと,明け渡すこと」が原義である.同語源の英単語 treason (裏切り)は「(人を)売り渡すこと」ほどの語義から発達した.英単語の tradition 自体も,15世紀末から17世紀までは「裏切り」の語義をもっていた.
 [2011-02-09-1]の記事「#653. 中英語におけるフランス借用語とラテン借用語の区別」で見たように,フランス語とラテン語の語形は見分けるのが難しいことも多い.中世ではそれくらい両言語の差は小さく,それだけにラテン語にもある程度慣れていたフランスの書記たちは大いに混乱していた.古フランス語においては,フランス語形とラテン語形の併存は常態であり,その状況のなかで上記のような2重語が生み出された.そして,その余波は海峡を越えてイングランドへも伝わった.英語史の少なくとも一部は,このようにフランス語史と密接に関わっていることがわかるだろう.
 このような2重語の例は,改めて英語語彙の多層性を見せてくれる例として覚えておきたい.

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2011-05-17 Tue

#750. number の省略表記がなぜ no. になるか [phonetics][doublet][sobokunagimon][latin][abbreviation]

 [2011-05-06-1]の記事「glide, prosthesis, epenthesis, paragoge」でわたり音 (glide) を含んだ例の1つとして触れた number と,その省略表記 no., No., no, No について.名詞 number はラテン語 numerus に由来し,フランス語 no(u)mbre を経由して1300年頃までに英語に借用されていた.動詞 number もほぼ同時期に英語に入ってきている.いずれの品詞においても,わたり音 /b/ の挿入はフランス語の段階で起こっていた.
 一方,ラテン語 numerus の奪格形 numerō は "in number" の意味で用いられていたが,この省略表記 no., No. が17世紀半ばに英語に入ってきた.発音は英語形に基づき,あくまで /ˈnʌmbə/ である.複数形は Nos., nos. と綴り,記号表記では "#" が用いられる(この記号は number sign あるいは hash (sign) と呼ばれるが,後者は格子状の模様を表わす hatch(ing) の連想による民間語源と言われる).フランス語では no,ドイツ語では Nr. と綴られる.
 つまり現代英語の numberno. は語源的には厳密に完全形と省略形の関係ではないということになる.むしろラテン語 numerus に起源を一にする2重語 ( doublet ) の例と呼ぶべきだろう.
 なお,わたり音 /b/ の挿入されていない「正しい」形態は,ラテン語 numerus の派生語という形で英語にも多く借用されている.

denumerable, enumerate, enumeration, innumerable, numerable, numeral, numeration, numerator, numerical, supernumerary

Referrer (Inside): [2021-04-18-1] [2019-05-22-1]

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2010-11-17 Wed

#569. discus --- 6重語を生み出した驚異の語根 [doublet][loan_word][etymology]

 語源を一にする形態の異なる2つの語を2重語 ( doublet ) と呼ぶ.これまでも2重語や3重語については多くの記事で話題にしてきた ( see doublet and triplet ) .英語の語彙の豊富さを考えると,最大で何重語まであり得るのかと思っていたが,Bryson (67) で6重語 ( sextuplet ) が存在するという記述をみつけた.
 古代ギリシア語 discos からラテン語に入った discus 「(古代ギリシアの競技用の)円盤」を語根とする以下の英単語群である.

WordMeaningFirst year by OED
dish「大皿」OE
dais「高座,上段」a1259
desk「机」c1386
discus「(古代ギリシアの競技用の)円盤」1656
disk「円盤;(天体の)平円形;(記憶媒体の)ディスク」1664
disc主として disk の英綴りC18?


 discdisk の異綴りであり別の語とみなすことができるかどうか怪しいが,これを差し引いても堂々の5重語 ( quintuplet ) である.dais はフランス語を経由して変形した形態が英語に入ったものである.desk は,プロヴァンス語 desca 「かご」あるいはイタリア語 desco 「台,机」に基づく中世ラテン語の形態が英語に入ったもので,discus からの距離は遠いが,究極的には同根と考えられる.
 古英語以前の借用と考えられる dish から近代英語期の disk, disc まで,よくもこれほど長い期間にわたってラテン語 discus にお世話になってきたものだ.
 Bryson は他にも,4重語 ( quadruplet ) の例としてラテン語 gentilis にさかのぼる jaunty 「陽気な,軽快な」, gentle 「優しい」, gentile 「非ユダヤの」, genteel 「上品ぶった」を挙げている.

 ・ Bryson, Bill. Mother Tongue: The Story of the English Language. London: Penguin, 1990.

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2010-10-27 Wed

#548. example, ensample, sample は3重語 [doublet][triplet][etymological_respelling][etymology][aphaeresis]

 現代英語に残る標題の3語は,語源を一にする3重語 ( triplet ) である.ラテン語の emere "take" に接頭辞 ex- "out" が付加された派生語 eximere がもととなり,exemplum "something taken out" が生じた.意味は「多数の中から取り出されたもの」から「手本,模範;見本,標本」へと変化した.
 ラテン語 exemplum は後に子音変化し essample としてフランス語へ入った.このフランス語の essample,あるいはさらに子音変化したアングロ・フレンチの ensample などの形態が1290年頃に英語へ借用され,後者は中英語期中に特に広く使われた.ensample は古風な響きはあるが,現在でも用いられている.
 一方,1384年頃に大本のラテン語形を参照した example も別途英語に入ってきた ( cf. etymological_respelling ) .ensampleexample は特に意味の相違なく用いられていたが,後者の方が早くから頻度としては優勢になったようである.
 さらにその一方で,1325年以前という早い段階から語頭音消失 ( aphaeresis ) による sample も英語で現われ出す.こうして,中英語後期からは3重語が併存する状況となった.
 関連語としては,exempt 「免除する」がある.これはラテン語 eximere の過去分詞 exemptus が英語に入ったもので,「取り出す」→「外へ排除する」→「免除する」という意味のつながりを示す.

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2010-09-14 Tue

#505. silly の意味変化 [semantic_change][doublet]

 [2010-08-13-1]で意味変化の典型的なパターンを見たが,そのなかの1つ,意味の悪化・下落 ( pejoration ) の例としてよく挙げられる語に silly がある.silly は現在でこそ「馬鹿な,おろかな」を表す一般的な語だが,古英語での意味は「幸せな,祝福された」だった.どのような過程を経て,これほどまでに意味が変化したのだろうか.以下の図は silly の各語義の使用年代を表したものである( OED に基づいて作成).

Semantic Change of silly

 古英語での形態は (ġe)sǣliġ であり,意味は "fortuitous; happy, prosperous" だった.宗教的な色彩を帯びた幸福を表す "blessed" 「祝福された,神の恵みを受けた」からは,中英語期に "pious" 「信心深い,敬虔な」の語義が発展した.信仰の篤い人はたいてい "innocent" 「素朴,純朴,無邪気」であり,無邪気な人は多く "pitiable" 「かわいそう」なほどに "foolish" 「愚か」であり "unlearned" 「無学」である.「無学」であることは "weak" 「無力」で "humble" 「卑しく」"frail" 「弱い」ことにもなる."insignificant" 「取るに足りない」人物と見られるのも自然である.こうして,千年の時間をかけて,隣接する意味領域へと意味を広げ,変化していったのである.
 プラスの意味からマイナスの意味への橋渡しをしたのは,"innocent" 辺りと考えられる.無邪気はよく言えば「純朴」,悪く言えば「世間知らず」であるからだ.日本語でも「おめでたい」は,文字通りの肯定的な意味の他に皮肉を込めた否定的な意味をもっている.フランス語 crétin 「馬鹿な」の原義が「キリスト教徒」 ( chrétien ) であること,同じくフランス語 benêt 「間抜けの」がラテン語の benedictus 「祝福された」に遡ることも,意味変化の経路という点で,酷似している.どうも「(宗教的な)無邪気さ」というのは紙一重のようである.
 以上の意味変化の経緯を踏まえると,silly sheep, silly old man, you silly thing などの常套句にこめられたニュアンスは,非難的な「馬鹿な」ではなく,皮肉と同時に憐憫と同情のこもった「馬鹿な」であることがわかるだろう.
 「無邪気」をプラスの意味からマイナスの意味への橋渡しと考える向きが多いが,『シップリー英語語源辞典』では別の解釈が提示されている.ノルマン・コンクェストにより,勝者ノルマン人は狩猟や娯楽に耽る何不自由しない「恵まれた」生活を送ることができるようになった.額に汗して働く庶民にとっては「恵まれた」と「怠惰」とは同義に思われたろう.さらに民主主義の発達によって労働に尊厳が認められるようになると「怠惰」は「愚か」であるとして,明確に否定的な価値を帯びるようになった.ここで意味の正負の逆転が生じたのではないかという.興味深い解釈である.
 さて,silly は意味的には180度の変化を経たが,形態的にも多少の変化を経てきている.中英語では古英語の (ġe)sǣliġ の長母音を保った sēli などの形態が行われたが,15世紀に /e:/ から変化した /i:/ の母音が /i/ へ短音化するに及んで,silly も起こるようになった.以来 silly がこの語の主要な形態となったが,古い発音に基づく seely も16世紀までは存続した.seely は現在方言で残っており,silly とは二重語 ( doublet ) の関係をなしている.

 ・ Room, Adrian, ed. NTC's Dictionary of Changes in Meanings. Lincolnwood: NTC, 1991.
 ・ ジョーゼフ T. シップリー 著,梅田 修・眞方 忠道・穴吹 章子 訳 『シップリー英語語源辞典』 大修館,2009年.

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2010-05-20 Thu

#388. もっとある! Norman French と Central French の二重語 [norman_french][doublet]

 この話題は何度かにわたって取りあげてきた ([2010-05-15-1], [2009-07-31-1], [2009-07-30-1], [2009-07-13-1], [2009-07-12-1]) .英語における Norman French と Central French の対応語ペアで,Gachelin の論文で追加的に見つけたものを整理する.現代に残る代表的な語義と,その語義での初出年も合わせて記す.

NFCF
car 「馬車」 1301chariot 「花馬車」 1358
pocket 「小袋」 1350pouch 「小袋」 a1325
wage 「賃金」 ?a1300gage 「抵当物」 ?a1300
wallop 「ギャロップで走る」 1375-1721gallop 「ギャロップで走る」 a1425
wise 「方法,仕方」 OEguise 「やりかた,流儀」 a1338
convey 「運ぶ」 a1383convoy 「同行する」 1375


 こうして探してみると,結構あるのだなと感心した.Gachelin はフランス語を母語とする英語学者で,フランス借用語の問題に詳しい.具体例が豊富で,読ませる論文だった."Is English a Romance Language?" という論題こそ挑戦的だが,英語がロマンス化したことは評価すべきだという肯定的な態度をとっている.

 ・ Gachelin, Jean-Marc. "Is English a Romance Language?" English Today 23 (July 1990): 8--14.

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2010-05-15 Sat

#383. 「ノルマン・コンケスト」でなく「ノルマン・コンクェスト」 [norman_french][doublet]

 英国史上の最大の出来事である1066年の Norman Conquest については,これまでも様々な形で触れてきた.この事件の名称を日本語でカタカナ表記するとき,「ノルマン・コンクエスト」「ノルマン・コンクェスト」「ノルマン・コンケスト」などの間に揺れがあるようだ.[2010-04-24-1]で紹介した JReK による検索では,「ノルマン・コンクエスト」が圧倒的に多い.しかし,私としては是非とも「ノルマン・コンクェスト」と表記し発音したいと思っている.その理由は,何も /ˈkɒŋkwɛst/ という英語の発音に忠実でありたいからではない.「ノルマン」ときたら「コンクェスト」しかない歴史的な理由がある.
 conquest はフランス語からの借用語だが,特にそのノルマン方言 ( Norman French ) から借りてきた語である.このことは <quest> という綴字と /kwɛst/ という発音によって示されている.一方,中央のパリ方言 ( Central French ) での形は,現代フランス語の conquête 「獲得;征服」や conquêt 「取得財産」の綴字 と発音 /kɛ(t)/ に反映されているように,Norman French とは異なる.ノルマン方言風には「コンクェスト」,パリ方言風には「コンケ(ス)ト」ということになり,「ノルマン」ときたら是が非でも「コンクェスト」と続けたいのである.「エ」か「ェ」かという問題については,/kw/ こそが Norman French の特徴であるから,この子音群を尊重し,正確に反映して「コンクエスト」よりも「コンクェスト」がよい.日本語表記・発音としては少数派のようだが,今後はこれで行きたい.
 それでは,動詞形の conquer /ˈkɒŋkə/ はどうだろうか.conquest と同様に <qu> という綴字を含むものの,現代英語での第二音節の最初の子音(群)は /kw/ でなく /k/ なので,こちらは Central French の形に由来すると考えてよいだろう.
 Norman French と Central French の二重語 doublet に関する話題は[2009-07-13-1], [2009-07-30-1], [2009-07-31-1]を参照.

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2010-04-06 Tue

#344. cherry の異分析 [metanalysis][back_formation][plural][french][etymology][doublet]

 東京は桜が満開である.散り始めているものもあり,花見の興は増すばかりである.言うまでもなく桜は散るからよいわけだが,スコットランド留学中,フラットのそばにあった桜は,あの寒々しい冬のうちから季節感もなく咲き,風の吹きすさぶなか,散らずに屹立していた.はかなさも何もなく,かわいげがないなと思ったものである.桜の種類が異なるのだろう.
 「さくら」はイギリスでも古くから知られている.合成語の一部としては cirisbēam 「桜の木」として古英語から存在していたし,現在の cherry につながる形態も早く1300年くらいにはフランス語から借用されていた.われわれも何かと親しみ深いこの単語,実は英語史では数の異分析 ( numerical metanalysis ) の例として話題にのぼることが多い.借用元の Old Norman French の形態は cherise であり,<s> はもともと語幹の中に含まれている.ところが,借り入れた英語の側がこの <s> を複数語尾の <s> と誤って分析してしまい,<s> を取り除いた形を基底形として定着させてしまった.これが,cherry のメイキングである.ちなみに,フランス語 cerise が「さくらんぼ色(の)」の意味で19世紀に英語に入ったので,cherrycerise二重語 ( doublet ) の関係にあることになる.
 語幹末尾の <s> を複数形の <s> と取り違えて新しい単数形を作り出す例は他にもある.pea 「エンドウマメ」の歴史的な単数形は本来 pease ( < OE pise < LL pīsa ) だが,<s> が複数語尾と間違えられた結果,pea が新しい単数形として生み出された.同様に,sherry 「シェリー酒」はスペイン語の Xeres に由来し,英語へは16世紀に sherris として入ったが,17世紀には異分析されて生じた sherry が使われ出した.(シェリー酒はお酒を覚えたての頃に大飲みしてひどい目にあったので,いまだにあの匂いにはトラウマ的抵抗がある.)
 上の述べた類の numerical metanalysis は,元の語幹の一部を切り取る語形成であるから,逆成 ( back-formation ) の一種ともいえる.逆成については back_formation の各記事を参照.

 ・ 児馬 修 『ファンダメンタル英語史』 ひつじ書房,1996年.111--12頁.

Referrer (Inside): [2014-11-11-1] [2012-01-31-1]

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