この新年度も,1年間続いてきたNHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」での連載「英語のソボクな疑問」が継続されることになりました.読者の方々に毎月ご愛読いただいたおかげと感謝しております.ありがとうございました.ソボクな疑問を歴史的な観点からなるべくわかりやすく解説するというのが連載の趣旨です.引き続きご愛読のほど,よろしくお願いいたします.
昨日発売された4月号テキストに,連載の第13回が掲載されました.新年度に向けての一発目は「なぜ one, two はこの綴字でこの発音なの?」という綴字と発音の乖離に関する話題です.皆さん,すでに見慣れ,読み慣れている単語ですので不思議など感じないかと思いますが,普通であれば one で「ワン」,two で「トゥー」などとはひっくり返っても読めないはずです.なぜ素直に「オネ」や「トゥウォー」などとならないのでしょうか.そこには,あっと驚く歴史的な理由があったのです.
one, two に限らず,英語には発音と綴字がかみ合っていない単語がごまんとあります.実のところ基本的な単語であればあるほどチグハグなケースが多いので,初学者にとっては特にキツいのです.規則から入るのではなく,いきなり不規則から入るに等しいわけですから.
連載記事ではできる限り丁寧な説明を心がけました.同じ問題について本ブログや音声メディアでも取り上げたことがありますので,そちらも合わせて参照し,理解を深めていただければと思います.関連する記事セットよりどうぞ.音声メディアについては,以下より直接お聴きください.
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の3月号のテキストが発売されました.今回で連載「英語のソボクな疑問」も第12回となります.この1年間で読者の皆さんからも反響をいただきました.ありがとうございます.年度の締めとして,少々変わり種の話題を用意しました.「単数の they って何?」です.
「みんな,自分が正しいと思っている」という意味で Everyone thinks they are right. という英文は可能ですが,何か違和感を感じませんか? そう,everyone は意味こそ「みんな」でも,文法的には単数扱いと習いましたね.とすれば,Everyone thinks he is right. とすればよいでしょうか.しかし,「みんな」は男性だけではないはずですので,he の使用にも違和感があります.であれば,Everyone thinks he or she is right. ほどが妥当でしょうか.ただ,まどろっこしくて舌をかみそうですね.結局,単複の問題は残りますが,ぐるっと一周して Everyone thinks they are right. 辺りに戻るのがよいのでは,という方向で落ち着きつつあります.「単数の they」 (singular_they) と呼ばれる用法です.
連載記事では,この「単数の they」について英語史の観点からできるかぎり分かりやすく解説しました.単なる文法の問題にとどまらず,社会的なテーマであり歴史的なトピックでもあることが理解ます.言葉の話題は,思いのほか広くて深いのですね.
「単数の they」を深掘りしたいという方は,singular "they" に関する一連の記事セットをご参照ください.
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の2月号のテキストが発売されました.本年度連載中の「英語のソボクな疑問」の第11回の話題は「なぜ eleven, twelve というの?」です.13から19までは X-teen という語形成で「X + 10」という構成原理がわかりやすいのですが,11と12については期待される *oneteen, *twoteen とはなりません.これはなぜなのでしょうか.
本ブログでは「#3279. 年度初めの「素朴な疑問」を3点」 ([2018-04-19-1]) にて,この問題に簡単に触れました.わからないことも多々あるのですが,そこでの説明を膨らませたのが今回の連載記事です.記事では,その他 thirteen と fifteen についての謎にも迫っています.なぜ素直に *threeteen や *fiveteen とならないのか,という素朴な疑問です.ぜひテキストを手に取っていただければと思います.
数詞というのは非常に身近な語彙ですが,eleven, twelve の問題に関わらず謎が多い語群でもあります.むしろ日常的で頻度が高すぎるからこそ,イレギュラーなことが多いのだろうと思われます.数詞の不思議については,本ブログでも numeral の各記事で取り上げてきましたので,そちらもご覧ください.
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の1月号のテキストが発売となりました.連載中の「英語のソボクな疑問」の第10回は「なぜ英語には省略語が多いの?」です.piano, bus, cute, sport, Paralympics, AI, CEO, GDP, EU, USA などの英単語は,ほぼそのまま日本語にも入ってきている日常語といってよいですが,なんといずれも何らかの点で省略されている語なのです.それぞれオリジナルの長い形を復元できるでしょうか.かなり難しいのではないでしょうか.
英語にも日本語にもその他の言語にも省略語は存在します.すべてを口にするには長ったらしいけれども情報量が詰まっていて有用な表現というものは,たくさんあるものですね.そのような表現をぐっと約めて簡潔な1単語に省略できれば,便利に違いありません.言語には省略語が付きものです.
省略の方法についていえば種類は限られています.連載記事で詳しく述べていますが,基本となるのは「切り落とし」「切り貼り」「イニシャル取り」の3種です.それぞれの例をたくさん挙げていますので,どうぞご覧ください.
言語には省略語が付きものとは述べましたが,英語に関する限り,とりわけ20世紀以降におびただしい省略語が生み出されてきたという事情があります.過去にもまして現代は省略語の時代といってもよいほどです.なぜなのでしょうか.連載記事では,この謎解きも披露しています.
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の12月号のテキストが発売となりました.連載中の「英語のソボクな疑問」の第9回は「なぜ英語の語順は SVO なの?」について取り上げました.
6節からなる今回の連載記事の小見出しはそれぞれ以下の通りです.
1. 「私」「話します」「英語」
2. 世界の言語の語順
3. 基本語順とは?
4. 昔の英語は SVO ばかりではなかった!
5. 「助詞」に相当するものが消えてしまって
6. 語順というのは,割とテキトー!?
英語は語順の言語ですね.日本語についての文法用語は多く知らずとも,英語について「5文型」や「SVO」などの用語を聞いたことのない人はいないのではないでしょうか.英文法といえば語順の文法のことだといって大きな間違いはありません.語の並べ方がしっかり決まっているのが英語という言語の著しい特徴です.
しかし,です.確かに現代の英語は語順の言語といってよいのですが,歴史を遡って古い英語を覗いてみると,実は語順は比較的自由だったのです.英語のおよそ千年前の姿である古英語 (Old English) でも SVO 語順は確かに優勢ではあったものの,SOV も普通にみられましたし VSO などもありました.現代ほどガチガチに語順が決まっている言語ではなかったのです.
私も初めてこの事実を知ったときには腰を抜かしそうになりましたね.英語は最初から語順の言語だったわけではなく,歴史を通じて語順の言語へ変化してきたということなのです.
では,いつ,どのようにして,なぜ語順の言語となったのか.これは英語史における最も重要な問題の1つであり,その周辺の問題と合わせて今なお議論が続いています.
今回の連載記事では,英語史におけるこの魅力的な問題をなるべく易しく紹介しました.どれくらい成功しているかは分かりませんが,少なくとも p. 132 の古英語の叙事詩『ベーオウルフ』にちなんだ主人公ベーオウルフと怪物グレンデルのイラストは必見!?(←イラストレーターのコバタさん,いつもありがとうございます)
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の11月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」は第8回となっています.今回は英語の母音字の読みに関する,きわめて素朴な疑問「なぜ A の読みは「アー」ではなく「エイ」なの?」を取り上げています.
本ブログの読者の多くの方々は,この疑問が英語史でいうところの「大母音推移」 (gvs) に関わるものであることがお分かりかと思います.しかし,連載は中高生を対象読者とするものですので,この用語を持ち出すことは控えたいと考えました.そして,もちろん音声学の用語や概念なども前提とすることはできません.ということで,真正面から大母音推移の伝統的な説明を施すことはせず,なるべく易しく噛み砕いて伝えようと努めました.結果として,前舌母音のみの説明にとどめて後舌母音については触れないでおくなど,理解しにくくなりそうな部分を思い切って割愛しました.このような次第で,今回は私にとって1つの挑戦となりました(どのくらい成功しているかは分かりませんねえ).
大母音推移の教科書的な説明としては本ブログの「#205. 大母音推移」 ([2009-11-18-1]) をどうぞ.もう少し詳しくは,拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』の1.3節と2.5節をご参照ください.専門的には gvs の各記事で扱っています.
・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の10月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」も第7回となっています.今回の話題は「なぜ know や high には発音されない文字があるの?」です.
英語には綴字では書かれているのに発音されない文字というのがありますね.これは黙字 (silent_letter) と呼ばれ,英語に関する素朴な疑問の定番といってよい話題です.歴史的な由来としてはいろいろなパターンがあるのですが,最も多いのが,かつてはその文字がきちんと発音されていたというパターンです.昔の英語では,know は「クノウ」,high は「ヒーヒ」などとすべて文字通りに発音されていたのが,後に発音の変化により問題の音が消えてしまったというケースが多いのです.その一方で綴字は古いままに据え置かれ,現在までゾンビのように生き残っているというわけです.要するに,綴字が発音の変化に追いついていかなかったという悲劇ですね.
今回の話題と関連して,以下の記事を発展編として読んでみてください.英語の綴字には,本当に黙字が多いです.
・ 「#4164. なぜ know の綴字には発音されない k があるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-09-20-1])
・ 「#122. /kn/ で始まる単語」 ([2009-08-27-1])
・ 「#1095. acknowledge では <kn> が /kn/ として発音される」 ([2012-04-26-1])
・ 「#3675. kn から k が脱落する音変化の過程」 ([2019-05-20-1])
・ 「#1290. 黙字と黙字をもたらした音韻消失等の一覧」 ([2012-11-07-1])
・ 「#210. 綴字と発音の乖離をだしにした詩」 ([2009-11-23-1])
・ 「#1195. <gh> = /f/ の対応」 ([2012-08-04-1])
・ 「#2085. <ough> の音価」 ([2015-01-11-1])
・ 「#2590. <gh> を含む単語についての統計」 ([2016-05-30-1])
・ 「#2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート」 ([2015-08-06-1])
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の9月号のテキストが発売となりました.連載している「英語のソボクな疑問」も第6回となりましたが,今回の話題は「なぜ形容詞の比較級には -er と more があるの?」です.
これは素朴な疑問の定番といってよい話題ですね.短い形容詞なら -er,長い形容詞なら more というように覚えている方が多いと思いますが,何をもって短い,長いというのかが問題です.原則として1音節語であれば -er,3音節語であれば more でよいとして,2音節語はどうなのか,と聞かれるとなかなか難しいですね.同じ2音節語でも early, happy は -er ですが,afraid, famous は more を取ります.今回の連載記事では,この辺りの複雑な事情も含めて,なるべく易しく歴史的に謎解きしてみました.どうぞご一読を.
定番の話題ということで,本ブログでも様々な形で取り上げてきました.連載記事よりも専門的な内容も含まれますが,こちらもどうぞ.
・ 「#4234. なぜ比較級には -er をつけるものと more をつけるものとがあるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-11-29-1])
・ 「#3617. -er/-est か more/most か? --- 比較級・最上級の作り方」 ([2019-03-23-1])
・ 「#4442. 2音節の形容詞の比較級は -er か more か」 ([2021-06-25-1])
・ 「#3032. 屈折比較と句比較の競合の略史」 ([2017-08-15-1])
・ 「#2346. more, most を用いた句比較の発達」 ([2015-09-29-1])
・ 「#403. 流れに逆らっている比較級形成の歴史」 ([2010-06-04-1])
・ 「#2347. 句比較の発達におけるフランス語,ラテン語の影響について」 ([2015-09-30-1])
・ 「#3349. 後期近代英語期における形容詞比較の屈折形 vs 迂言形の決定要因」 ([2018-06-28-1])
・ 「#3619. Lowth がダメ出しした2重比較級と過剰最上級」 ([2019-03-25-1])
・ 「#3618. Johnson による比較級・最上級の作り方の規則」 ([2019-03-24-1])
・ 「#3615. 初期近代英語の2重比較級・最上級は大言壮語にすぎない?」 ([2019-03-21-1])
・ 「#456. 比較の -er, -est は屈折か否か」 ([2010-07-27-1])
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」の8月号のテキストが発刊されました.「英語のソボクな疑問」を連載していますが,今回は第5回となります.話題は「なぜ未来には will を使うの?」です.いつものように中高生の読書向けに,なるべく易しく解説しました.
最も重要なポイントは,英語をはじめとするゲルマン語には,もともと未来時制という時制 (tense) はなかったということです.過去時制と非過去時制の2つしかなく,後者が現在と未来を一手に引き受けていました.一方,古くから希望・意志・義務などを含意する will や shall のような法助動詞 (auxiliary_verb) は存在していました.これらの法助動詞は,使用されているうちに本来の含意が弱まり,単なる未来を表わす用法へと発展していきました.これが近代英語以降に一般的に未来表現のために用いられるようになり,現在に至ります.一見するとこの過程を通じて,過去・非過去の2区分だった英語の時制が過去・現在・未来の3区分に移行したようにみえます.しかし,未来の will/shall は歴史的には新参者にすぎませんので,いまだに英語の時制体系のなかに完全にフィットしているわけではなく,所々にすわりの悪いケースが見受けられるのです.
未来の will が歴史的に出現し定着してきた背景は,英語史では様々に研究されてきています.本ブログでも関連する記事を書いてきましたので,より詳しく専門的に知りたい方は,以下の記事群をお読みください.
・ 「#2208. 英語の動詞に未来形の屈折がないのはなぜか?」 ([2015-05-14-1])
・ 「#2317. 英語における未来時制の発達」 ([2015-08-31-1])
・ 「#2189. 時・条件の副詞節における will の不使用」 ([2015-04-25-1])
・ 「#3692. 英語には過去時制と非過去時制の2つしかない!?」 ([2019-06-06-1])
・ 「#4408. 未来のことなのに現在形で表わすケース」 ([2021-05-22-1])
・ 「#2209. 印欧祖語における動詞の未来屈折」 ([2015-05-15-1])
また,去る7月4日付けの「英語の語源が身につくラジオ」にて,関連する「時・条件の副詞節では未来でも現在形を用いる?」を放送しましたので,そちらの音声解説もお聴きください.
NHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」のテキストにて「英語のソボクな疑問」を連載しています.7月号のテキストが発刊されました.第4回となる今回の話題は「なぜ疑問文に do が現われるの?」です.
be 動詞および助動詞を用いる文は,疑問文を作るのに主語とその(助)動詞をひっくり返して Are you Japanese? とか Can you cook? とかすればよいのですが,その他の一般動詞を用いる文の場合には do (あるいは適宜 does, did)が幽霊のごとく急に現われます.英語初学者であれば,これは何なのだと言いたくなるところですね.
驚くことに,古くは一般動詞も,主語とひっくり返すことにより疑問文を作っていたのです.つまり Do you speak English? ではなく Speak you English? だったわけです.動詞の種類にかかわらず1つのルールで一貫していたので,ある意味で簡単だったことになります.ところが,16世紀以降,初期近代英語期に,一般動詞に関しては do を用いるというややこしい方法が広まっていきます.なぜそのような面倒くさいことが起きたのか,今回の連載記事ではその謎に迫ります.
本ブログでも関連記事を書いてきました.以下の記事,さらにより専門的には do-periphrasis の記事群をお読みください.
・ 「#486. 迂言的 do の発達」 ([2010-08-26-1])
・ 「#491. Stuart 朝に衰退した肯定平叙文における迂言的 do」 ([2010-08-31-1])
この新年度に向けて始まったNHKラジオ講座「中高生の基礎英語 in English」のテキストに,英語のソボクな疑問に関する連載記事を寄稿しています.読者層は中高生ですが,それだけに易しくかみくだいて執筆する必要があり,私にとってなかなかの課題です.内容は英語史の超入門です.関心のある方は是非テキストを手にとってみてください.先日6月号のテキストが発刊されました.第3回となる今回の話題は,必殺の「なぜ go の過去形は went になるの?」です.
なぜ go の過去形が *goed ではなく went というまったく異なる形になってしまうのでしょうか.端的に答えれば,語源の異なる類義語 wend の過去形である went が,こともあろうに go の過去形の席に割り込んできたからです.連載記事では用語こそ出していませんが,専門的には補充法 (suppletion) と呼ばれる現象です.どの言語にも観察される現象で,とりわけ超高頻度語に多くみられるという共通の特徴があります.補充法は一見不思議に思われますが,実は言語において理に適っているのです.連載記事では,その辺りを易しく解説しました.
補充法全般,とりわけ go/went の補充法については,本ブログでも様々な形で扱ってきましたので,以下にリンクを張っておきます.一気に読みたい方はこちらの記事セットからどうぞ.
・ 「#43. なぜ go の過去形が went になるか」 ([2009-06-10-1])
・ 「#1482. なぜ go の過去形が went になるか (2)」 ([2013-05-18-1])
・ 「#4094. なぜ go の過去形は went になるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-07-12-1])
・ 「#3859. なぜ言語には不規則な現象があるのですか?」 ([2019-11-20-1])
・ 「#764. 現代英語動詞活用の3つの分類法」 ([2011-05-31-1])
・ 「#765. 補充法は古代人の実相的・質的・単一的な観念の表現か」 ([2011-06-01-1])
・ 「#3254. 高頻度がもたらす縮小効果と保存効果」 ([2018-03-25-1])
・ 「#694. 高頻度語と不規則複数」 ([2011-03-22-1])
・ 「#67. 序数詞における補充法」 ([2009-07-04-1])
・ 「#2600. 古英語の be 動詞の屈折」 ([2016-06-09-1])
・ 「#2090. 補充法だらけの人称代名詞体系」 ([2015-01-16-1])
・ 「#1580. 補充法研究の限界と可能性」 ([2013-08-24-1])
一ヶ月ほど前に「#4340. NHK『中高生の基礎英語 in English』の新連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」がスタートします」 ([2021-03-15-1]) で紹介した通り,新年度に向けて開講された新講座「中高生の基礎英語 in English」のテキストのなかで,英語のソボクな疑問に関する連載を始めています.中高生向けに「ミステリー仕立ての謎解き」というモチーフで執筆しており,英語史の超入門というべきものとなっていますので,関心のある方は是非どうぞ.先日5月号のテキストが発刊されましたので,ご案内します.
5月号の連載第2回で取り上げた話題は,不規則な複数形の代表例といえる feet についてです.なぜ *foots ではなく feet になるのでしょうか.
本ブログでも「#157. foot の複数はなぜ feet か」 ([2009-10-01-1]),「#2017. foot の複数はなぜ feet か (2)」 ([2014-11-04-1]),「#4304. なぜ foot の複数形は feet なのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2021-02-07-1]),「#4320. 古英語にはもっとあった foot -- feet タイプの複数形」 ([2021-02-23-1]) で扱ってきた問題ですが,この語が歴史的にたどってきた複雑な変化を,「磁石」の比喩を用いて,これまで以上に分かりやすく解説しました.どうぞご一読ください.
私としては初めての経験となるのですが,英語を学ぶ中高生に的を絞った連載「歴史で謎解き 英語のソボクな疑問」が新年度に向けてスタートします.NHKラジオで3月29日に開講する新講座「中高生の基礎英語 in English」のテキストのなかで,毎月,英語のソボクな疑問をミステリー仕立てで易しく謎解きしていきます.筆者として新連載の執筆に当たって最も心がけたいと思っていることは,おもしろく,分かりやすく解説することです.
4月号のテキストはすでに3月14日に発刊されています.連載の初回は「第1回 なぜ3単現の s をつけるの?」です.
英語に関する素朴な疑問については,これまでも以下のように異なる媒体で頻繁に公にしてきました.
・ 本ブログの英語に関する素朴な疑問集
・ 本ブログの hellog ラジオ版コンテンツ
・ 『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』(研究社,2016年)
・ 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』(中央大学出版部,2011年)
・ 大修館『英語教育』の連載(2019年4月号から2020年3月号までの12回)「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」
・ 研究社のオンライン連載(2017年1月から12月の12回)「現代英語を英語史の視点から考える」
・ 『CNN English Express』2019年2月号の記事「歴史を知れば納得! 英語の『あるある大疑問』」 (pp. 41--49)
・ 大修館『英語教育』2018年9月号の記事「素朴な疑問に答えるための英語史のツボ」 (pp. 12--13)
・ 「3単現の -s の問題とは何か――英語教育に寄与する英語史的視点――」『これからの英語教育――英語史研究との対話――』 (Can Knowing the History of English Help in the Teaching of English?). Studies in the History of English Language 5. 家入葉子(編),大阪洋書,2016年.105--31頁.
実際,3単現の -s の問題も,上記の媒体で2度や3度にとどまらず繰り返し取り上げてきた話題です.その点では,話題そのものの新鮮みはあまりないかもしれません.しかし,今回は,ある程度その問題について理解している読者にとっても,なるほどと思ってもらえるような新しい知見や視点を含めるように努めました.どのレベルの読者にとっても,おもしろく読める内容に仕上がっているのではないかと思います.
今回の試みが従来のものと決定的に異なる点は,やはり第一に中高生を対象としているという事実です.これまでも易しい解説を心がけてきたつもりではありますが,想定していた読者はたいてい大学生以上の英語学習者や英語教育関係者でした.ところが,今回は英語を学ぶ中高生を直接に意識した連載なのです.その意味で,今回の新連載は,筆者にとってもチャレンジングな機会だと思っています.
英語史に関心をもってもらえるよう,編集者の方とも協議し,なるべく噛み砕いた記述を心がけました.また,謎解き探偵風のイラストをふんだんに入れてもらい,取っつきやすさも出ているかと思います.
英語学習者や英語教員の皆さん,ぜひ毎月テキストを手にとってみてください.よろしくお願いします.
なお,テキスト末尾にも掲載されていますが,NHKテキストより,英語に関する疑問やこの連載で扱って欲しいテーマを募集しています.NHKテキストのウェブサイトのアンケートよりどうぞ.
2月14日に,『英語教育』(大修館書店)の3月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」としては今回が最終回となります.最後の話題は「なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」です.
アメリカ合衆国とイギリスを国として比較した場合,典型的なイメージとしては,アメリカは新しいもの好きの革新主義,イギリスは古いもの好きの保守主義といったところでしょう.しかし,アメリカ英語とイギリス英語を英語変種として比較した場合,上のステレオタイプはしばしば当てはまりません.むしろアメリカ英語のほうが古い語法をよく保持していたり,イギリス英語のほうが新しい言葉使いを発達させていたりということが,よくあります.もちろんステレオタイプ通りにアメリカ英語が革新的で,イギリス英語が保守的であるという事例も少なくないことは事実なので,全体としていえば,両英語変種は革新・保守という軸でことさらに対立させるよりも,単に様々な点で互いに異なっていると表現したほうが妥当のように思われます.英米変種の異なり方には,表面的に眺めるだけでは見えてこない,歴史的な様々なパターンがあったのです.
今回の連載記事では主に発音と綴字の英米差に焦点を当て,アメリカへの移民のタイミングやアメリカ人ノア・ウェブスターによる綴字改革といった社会的な要因が,いかにして変種間の差異をもたらしたかを紹介しました.なぜアメリカ英語では car, four, star などの r が独特の巻き舌で発音されるのに,イギリス英語では子音として発音されないのか.なぜ color (米)/colour (英),center/centre, traveling/travelling のような綴字の差が存在するのか.いずれの問題も,英語の歴史をたどることによって理由が明らかになります.
今回の記事で英語の英米差に関心をもった方は,本ブログからの以下の記事(および ame_bre の全記事)もお読みください.
・ 「#357. American English or British English?」 ([2010-04-19-1])
・ 「#359. American English or British English? の解答」 ([2010-04-21-1])
・ 「#1343. 英語の英米差を整理(主として発音と語彙)」 ([2012-12-30-1])
・ 「#244. 綴字の英米差のリスト」 ([2009-12-27-1])
・ 「#240. 綴字の英米差は大きいか小さいか?」 ([2009-12-23-1])
・ 「#312. 文法の英米差」 ([2010-03-05-1])
・ 「#315. イギリス英語はアメリカ英語に比べて保守的か」 ([2010-03-08-1])
・ 「#1304. アメリカ英語の「保守性」」 ([2012-11-21-1])
・ 「#1266. アメリカ英語に "colonial lag" はあるか (1)」 ([2012-10-14-1])
・ 「#1267. アメリカ英語に "colonial lag" はあるか (2)」 ([2012-10-15-1])
・ 「#1268. アメリカ英語に "colonial lag" はあるか (3)」 ([2012-10-16-1])
・ 「#468. アメリカ語を作ろうとした Webster」 ([2010-08-08-1])
・ 「#3089. 「アメリカ独立戦争と英語」のまとめスライド」 ([2017-10-11-1])
・ 「#2916. 連載第4回「イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall --- 複線的思考のすすめ」」 ([2017-04-21-1])
・ 「#2925. autumn vs fall, zed vs zee」 ([2017-04-30-1])
12回の連載を読んでいただいた読者の方々には,1年間お付き合いいただきましてありがとうございます.連載を通じて主張してきたことは,現在の英語は歴史的に英語が変化してきた結果の姿である,ということです.もっと正確にいえば,英語を使用する社会全体が歴史的に英語を変化させてきた結果の姿である,ということです.英語史を通じて新しい英語の見方のツボが伝わったでしょうか.「英語史のツボ」は,本ブログでも引き続き追求していく予定です.今後ともよろしくお願い致します.
・ 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第12回 なぜアメリカ英語はイギリス英語と異なっているのか」『英語教育』2020年3月号,大修館書店,2020年2月14日.62--63頁.
1月14日に,『英語教育』(大修館書店)の2月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第11回となる今回は「なぜ英語には省略語が多いのか」という話題です.
今回の連載記事は,タイトルとしては省略語に焦点を当てているようにみえますが,実際には英語の語形成史の概観を目指しています.複合 (compounding) や派生 (derivation) などを多用した古英語.他言語から語を借用 (borrowing) することに目覚めた中英語.品詞転換 (conversion) あるいはゼロ派生 (zero-derivation) と呼ばれる玄人的な技を覚えた後期中英語.そして,近現代英語にかけて台頭してきた省略 (abbreviation) や短縮 (shortening) です.
英語史を通じて様々に発展してきたこれらの語形成 (word_formation) の流れを,四則計算になぞらえて大雑把にまとめると,(1) 足し算・掛け算の古英語,(2) ゼロの後期中英語,(3) 引き算・割り算の近現代英語となります.現代は省略や短縮が繁栄している引き算・割り算の時代ということになります.
英語の語形成史を上記のように四則計算になぞらえて大づかみして示したのは,今回の連載記事が初めてです.荒削りではありますが,少なくとも英語史の流れを頭に入れる方法の1つとしては有効だろうと思っています.ぜひ原文をお読みいただければと思います.
省略や短縮について,連載記事と関連するブログ記事へリンクを集めてみました.あわせてご一読ください.
・ 「#631. blending の拡大」 ([2011-01-18-1])
・ 「#876. 現代英語におけるかばん語の生産性は本当に高いか?」 ([2011-09-20-1])
・ 「#887. acronym の分類」 ([2011-10-01-1])
・ 「#889. acronym の20世紀」 ([2011-10-03-1])
・ 「#893. shortening の分類 (1)」 ([2011-10-07-1])
・ 「#894. shortening の分類 (2)」 ([2011-10-08-1])
・ 「#1946. 機能的な観点からみる短化」 ([2014-08-25-1])
・ 「#2624. Brexit, Breget, Regrexit」 ([2016-07-03-1])
・ 「#2982. 現代日本語に溢れるアルファベット頭字語」 ([2017-06-26-1])
・ 「#3075. 略語と暗号」 ([2017-09-27-1])
・ 「#3329. なぜ現代は省略(語)が多いのか?」 ([2018-06-08-1])
・ 「#3708. 省略・短縮は形態上のみならず機能上の問題解決法である」 ([2019-06-22-1])
・ 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第11回 なぜ英語には省略語が多いのか」『英語教育』2020年2月号,大修館書店,2020年1月14日.62--63頁.
12月13日に,『英語教育』(大修館書店)の1月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第10回となる今回は「なぜ英語には類義語が多いのか」という話題を扱っています.
英語には「上がる」を意味する動詞として rise,mount,ascend などの類義語があります.「活発な」を表わす形容詞にも lively, vivacious, animated などがあります.名詞「人々」についても folk, people, population などが挙がります.これらは「英語語彙の3層構造」の典型例であり,英語がたどってきた言語接触の歴史の遺産というべきものです.本連載記事では,英語語彙に特徴的な豊かな類義語の存在が,1066年のノルマン征服と16世紀のルネサンスのたまものであり,さらに驚くことに,日本語にもちょうど似たような歴史的事情があることを指摘しています.
「英語語彙の3層構造」については,本ブログでも関連する話題を多く取り上げてきました.以下をご覧ください.
・ 「#334. 英語語彙の三層構造」 ([2010-03-27-1])
・ 「#1296. 三層構造の例を追加」 ([2012-11-13-1])
・ 「#1960. 英語語彙のピラミッド構造」 ([2014-09-08-1])
・ 「#2072. 英語語彙の三層構造の是非」 ([2014-12-29-1])
・ 「#2279. 英語語彙の逆転二層構造」 ([2015-07-24-1])
・ 「#2643. 英語語彙の三層構造の神話?」 ([2016-07-22-1])
・ 「#387. trisociation と triset」 ([2010-05-19-1])
・ 「#2977. 連載第6回「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」」 ([2017-06-21-1])
・ 「#3374. 「示相語彙」」 ([2018-07-23-1])
・ 「#335. 日本語語彙の三層構造」 ([2010-03-28-1])
・ 「#3357. 日本語語彙の三層構造 (2)」 ([2018-07-06-1])
・ 「#1630. インク壺語,カタカナ語,チンプン漢語」 ([2013-10-13-1])
・ 「#1526. 英語と日本語の語彙史対照表」 ([2013-07-01-1])
・ 堀田 隆一 「なぜ英語には類義語が多いのか」『英語教育』2020年1月号,大修館書店,2019年12月13日.62--63頁.
11月14日に,『英語教育』(大修館書店)の12月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第9回となる今回の話題は「なぜ英語のスペリングには黙字が多いのか」です.
黙字 (silent_letter) というのは,climb, night, doubt, listen, psychology, autumn などのように,スペリング上は書かれているのに,対応する発音がないものをいいます.英単語のスペリングをくまなく探すと,実に a から z までのすべての文字について黙字として用いられている例が挙げられるともいわれ,英語学習者にとっては実に身近な問題なのです.
今回の記事では,黙字というものが最初から存在したわけではなく,あくまで歴史のなかで生じてきた現象であること,しかも個々の黙字の事例は異なる時代に異なる要因で生じてきたものであることを易しく紹介しました.
連載記事を読んで黙字の歴史的背景の概観をつかんでおくと,本ブログで書いてきた次のような話題を,英語史のなかに正確に位置づけながら理解することができるはずです.
・ 「#2518. 子音字の黙字」 ([2016-03-19-1])
・ 「#1290. 黙字と黙字をもたらした音韻消失等の一覧」 ([2012-11-07-1])
・ 「#34. thumb の綴りと発音」 ([2009-06-01-1])
・ 「#724. thumb の綴りと発音 (2)」 ([2011-04-21-1])
・ 「#1902. 綴字の標準化における時間上,空間上の皮肉」 ([2014-07-12-1])
・ 「#1195. <gh> = /f/ の対応」 ([2012-08-04-1])
・ 「#2590. <gh> を含む単語についての統計」 ([2016-05-30-1])
・ 「#3333. なぜ doubt の綴字には発音しない b があるのか?」 ([2018-06-12-1])
・ 「#116. 語源かぶれの綴り字 --- etymological respelling」 ([2009-08-21-1])
・ 「#1187. etymological respelling の具体例」 ([2012-07-27-1])
・ 「#579. aisle --- なぜこの綴字と発音か」 ([2010-11-27-1])
・ 「#580. island --- なぜこの綴字と発音か」 ([2010-11-28-1])
・ 「#1156. admiral の <d>」 ([2012-06-26-1])
・ 「#3492. address の <dd> について (1)」 ([2018-11-18-1])
・ 「#3493. address の <dd> について (2)」 ([2018-11-19-1])
・ 堀田 隆一 「なぜ英語のスペリングには黙字が多いのか」『英語教育』2019年12月号,大修館書店,2019年11月14日.62--63頁.
10月12日に,『英語教育』(大修館書店)の11月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第8回となる今回の話題は「なぜ bus, bull, busy, bury の母音は互いに異なるのか」です.
英語はスペリングと発音の関係がストレートではないといわれますが,それはとりわけ母音について当てはまります.たとえば,mat と mate では同じ <a> のスペリングを用いていながら,前者は /æ/,後者は /eɪ/ と発音されるように,1つのスペリングに対して2つの発音が対応している例はざらにあります.逆に同じ発音でも異なるスペリングで綴られることは,meat, meet, mete などの同音異綴語を思い起こせばわかります.
今回の記事では <u> の母音字に注目し,それがどんな母音に対応し得るかを考えてみました.具体的には bus /bʌs/, bull /bʊl/, busy /ˈbɪzi/, bury /ˈbɛri/ という単語を例にとり,いかにしてそのような「理不尽な」スペリングと発音の対応が生じてきてしまったのかを,英語史の観点から解説します.記事にも書いたように「現在のスペリングは,異なる時代に異なる要因が作用し,秩序が継続的に崩壊してきた結果の姿」です.背景には,あっと驚く理由がありました.その謎解きをお楽しみください.
今回の連載記事と関連して,本ブログの以下の記事もご覧ください.
・ 「#1866. put と but の母音」 ([2014-06-06-1])
・ 「#562. busy の綴字と発音」 ([2010-11-10-1])
・ 「#570. bury の母音の方言分布」 ([2010-11-18-1])
・ 「#1297. does, done の母音」 ([2012-11-14-1])
・ 「#563. Chaucer の merry」 ([2010-11-11-1])
・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第8回 なぜ bus, bull, busy, bury の母音はそれぞれ異なるのか」『英語教育』2019年11月号,大修館書店,2019年10月12日.62--63頁.
9月14日に,『英語教育』(大修館書店)の10月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第7回となる今回の話題は,「なぜ不定詞には to 不定詞 と原形不定詞の2種類があるのか」です.
そもそも不定詞とは何か,なぜそのような呼び名がついているのかから始まり,to 不定詞と原形不定詞の2種類が区別されている歴史的理由,それぞれの用法の守備範囲とその変遷,そして現在にまで続く両不定詞のせめぎ合いを扱いました.後半では,She made me laugh. のように能動態の使役文に用いられる原形不定詞が,受動態の文になると I was made to laugh by her. のように to 不定詞に変わるのはなぜかという素朴な疑問にも迫ります.
本ブログでも,不定詞については infinitive の各記事ですでに取り上げてきましたので,連載記事と合わせてご覧ください.
・ 堀田 隆一 「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ 第7回 なぜ不定詞には to 不定詞 と原形不定詞の2種類があるのか」『英語教育』2019年10月号,大修館書店,2019年9月14日.62--63頁.
8月14日に,『英語教育』(大修館書店)の9月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第6回となる今回の話題は,「なぜ一般動詞の疑問文・否定文には do が現われるのか」です.この do の使用は,英語統語論上の大いなる謎といってよいものですが,歴史的にみても,なぜこのような統語表現(do 迂言法と呼びます)が出現したのかについては様々な仮説があり,今なお熱い議論の対象になっています.
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