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analogy - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-07-10 11:20

2023-06-07 Wed

#5154. なぜ height はこの綴字でこの発音なの? [spelling_pronunciation_gap][sobokunagimon][gvs][analogy][vowel][consonant][spelling][pronunciation]

 形容詞 high と名詞 height は,それぞれ /haɪ/, /haɪt/ と発音されます.綴字と発音の関係について,前者は規則通りと考えられますが,後者は例外的です.これはなぜでしょうか.
 まず high の綴字と発音の発達を振り返ってみましょう.古英語 hēah は中英語にかけて hēh > hēih > heih/hīh と発達しました.最後の段階で異形が2つ現われますが,後者の hīh が大母音推移を経て現代英語の high /haɪ/ に至ります.前者の heih は中英語ではむしろ有力でしたが,後に high に首席を明け渡しました.
 ちなみに,古英語 nēah "near" もまったく同じ発達を遂げています.中英語にかけて nēh > nēih > neih/nīh と変化しました.最終段階の異形のうち前者は neighbour の第1要素に現われており,後者は nigh に連なります.
 さて,名詞 height の古英語の形態は hēhþu でした.これは形容詞 hēah と歩調を揃えて中英語にかけて語形を発達させていき,hēhþ > hēihþ > heiht に帰着しました.ただし,形容詞と異なり,最後の段階に予想される異形 *hīht はありませんでした.名詞接尾辞に含まれる þ が後続する環境では,形容詞には生じた音変化が抑止されたからです.
 こうして,名詞の綴字については,その後に綴字の若干の変化を経つつも height に落ち着きました.ところが,発音のほうは形容詞に引きつけられるようにして /haɪt/ で定着しました.こうして発音と綴字の複雑な発達過程と類推作用の結果, height ≡ /haɪt/ というちぐはぐな関係になってしまったのです.
 以上,Prins (97) を参照して執筆しました.関連して,heldio より「#595. heah/hih/high --- 「ゆる言語学ラジオ」から飛び出した通時的パラダイム」をご参照ください.

 ・ Prins, A. A. A History of English Phonemes. 2nd ed. Leiden: Leiden UP, 1974.

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2022-11-05 Sat

#4940. 再分析により -ess から -ness [reanalysis][metanalysis][analogy][suffix][morpheme]

 形態論的な再分析 (reanalysis) にはいくつかの種類があるが,今回は Fertig (32) を引用しつつ,名詞化接尾辞 -ness が実は -ess に由来するという事例を紹介する.

This [type of reanalysis] occurs frequently when the reanalysis affects the location of a boundary between stem and affix. A well-known example involves the Germanic suffix that became English -ness. The corresponding suffix in proto-Germanic was -assu. This suffix was frequently attached to stems ending in -n, and this n was subsequently reanalyzed as belonging to the suffix rather than the stem. In Old English, we find examples based on past participles, such as forgifeness 'forgiveness', which could still be analyzed as forgifen + ess, but also many instances based on adjectives, such as gōdness 'goodness' or beorhtness 'brightness', which provide unambiguous evidence of the reanalysis and the new productive rule of -ness suffixation . . . . Similar reanalyses give us the common Germanic suffix -ling --- as in English darling, sapling, nestling, etc. --- from attachment of -ing (OED -ing, suffix3 'one belonging to') to stems ending in l, as well as the German suffixes -ner and -ler, attributable to words where -er was attached to stems ending in -n or -l and then extended to give us new words such as Rentner 'pensioner' < Rente 'pension' and Sportler 'sportsman'.


 『英語語源辞典』よりもう少し補っておこう.接尾辞 -ness は強変化過去分詞の語尾に現われる n が,ゲルマン祖語の弱変化動詞の接辞 *-atjan に由来する *-assus (後の古英語の -ess)に接続したものである.つまり n は本来は基体の一部だったのだが,それが接尾辞 -ess と一体化して,-ness なる新たな接尾辞ができたというわけだ.
 オランダ語 -nis,ドイツ語 -nis,ゴート語 -inassus のような平行的な例がゲルマン諸語に確認されることから,この再分析の過程はゲルマン祖語の段階で起こっていたと考えられる.ゲルマン諸語間の母音の差異については不詳である.英語内部でみても初期中英語では -nes(se) と -nis(se) が併存していたが,後期中英語以降は前者が優勢となった.
 身近な -ness という接尾辞1つをとっても,興味深い歴史が隠れているものだ.

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.
 ・ 寺澤 芳雄(編) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2022-02-18 Fri

#4680. Bybee による言語変化の「なぜ」 [language_change][causation][how_and_why][multiple_causation][cognitive_linguistics][usage-based_model][context][analogy]

 言語変化論の第一人者である Bybee (9) が,標題の問題について大きな答えを与えている.

A very general answer is that the words and constructions of our language change as they cycle through our minds and bodies and are passed through usage from one speaker to another.


 言語変化の「なぜ」というより「どのように」への答えに近いのではないかと考えられるが,いずれにせよこの1文だけで Bybee の言語変化観の枠組みをつかむことができる.一言でいえば,認知基盤および使用基盤の言語変化観である.
 続けて Bybee は,言語変化には3つの傾向が見いだされると主張する.引用により,その3点の骨子を示す.

Because language is an activity that involves both cognitive access (recalling words and constructions from memory) and the motor routines of production (articulation), and because we use the same words and constructions many times over the course of a day, week, or year, these words and constructions are subject to the kinds of processes that repeated actions undergo. (9)


Another pervasive process in the human approach to the world is the formation of patterns from our experience and application of these patterns to new experiences or ideas. (10)


The other major factor in language change is the way words or patterns of language are used in context. Very often the meaning supplied by frequently occurring contexts can lead to change. Words and constructions that are used in certain contexts become associated with those contexts. (10)


 1つめは認知・運動基盤,2つめは広い意味での類推作用 (analogy),3つめは使用基盤 (usage-based_model) と言い換えてもよいだろう.

 ・ Bybee, Joan. Language Change. Cambridge: CUP, 2015.

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2022-01-20 Thu

#4651. なぜ fire から派生した形容詞 fiery はこの綴字なのですか? [sobokunagimon][spelling][pronunciation][adjective][gvs][vowel][syllable][analogy][suffix]

 この素朴な疑問は私も長らくナゾだったのですが,最近ゼミの学生に指摘してもらう機会があり,改めて考え出した次第です.fire に派生接尾辞 -y を付すのであれば,そのまま *firy でよさそうなものですが,なぜ fiery となるのでしょうか.expireexpiry, miremiry, spirespiry, wirewiry などの例はあるのですが,firefiery のタイプは他に例がないようなので,ますます不思議です.
 暫定的な答え,あるいはヒントとしては,近代英語期に fire が1音節ではなく2音節で,fiery が2音節ではなく3音節で発音されたことが関係するのではないかと睨んでいます.
 教科書的にいえば,中英語の [fiːr], [ˈfiː ri] は大母音推移 (gvs) を経て各々 [fəɪr], [ˈfəɪ ri] へ変化しました.長母音が2重母音に変化しただけで,音変化の前後でそれぞれ音節数に変化はありませんでした.
 しかし,語幹末の r の影響で,その直前に渡り音として曖昧母音 [ə] が挿入され,それが独立した音節の核となるような発音が,初期近代英語期には変異形として存在したようなのです.要するに fi-er, fi-e-ry のようなプラス1音節の異形態があったということです.似たような音構成をもつ語について,その旨の報告が同時代からあります.Jespersen (§11.11)の記述を見てみましょう.

The glide before /r/ was even before that time [= 1588 or †1639] felt as a distinct vowel-sound [ə], especially after the new diphthongs that took the place of /iˑ, uˑ/. This is shown by the spelling in some cases after ow: shower < OE scūr bower < OE būr . cower < Scn kūra . lower by the side of lour < Scn lūra 'look gloomy'. tower < F tour; cf. on flower and flour 3.49. Thus also after i in brier, briar, frier, friar, ME brere, frere; fiery, fierie, fyeri (from the 16th c.) for earlier fyry, firy. The glide-vowel [ə] is also indicated by Hart's phonetic spellings 1569: [feiër/ fire (as /heiër/) higher) . /meier/ mire /oˑer/ oar . [piuër] pure . /diër/ dear . [hier/ here (hie r, which also occurs, many be a misprint).


 要するに,fire の形容詞形に関する限り,もともとは発音上2音節であり,綴字上も2音節にみえる由緒正しい firy もあったけれども,初期近代英語期辺りには発音上渡り音が挿入されて3音節となり,綴字上もその3音節発音を反映した fiery が併用されたということのようです.そして,もとの名詞でも同じことが起こっていたと.
 ところが,現代英語の観点から振り返ってみると,名詞では渡り音を反映していないかのような fire の綴字が標準として採用され,形容詞では渡り音を反映したかのような fiery の綴字が標準として採用されてしまったように見えます.どうやら,英語史では典型的な(というよりも,お得意の)「ちぐはぐ」が,ここでも起こってしまったということではないでしょうか.
 あるいは,意味上の「激しさ」つながりで連想される形容詞 fierce との綴字上の類推 (analogy) もあったかもしれないと疑っています.いかがでしょうか.
 上の引用でも触れられていますが,flowerflour が,同語源かつ同じ発音でありながらも,異なる綴字に分化した事情と,今回の話題は近いように思われます.「#183. flowerflour」 ([2009-10-27-1]),「#2440. flower と flour (2)」 ([2016-01-01-1]),および 「flower (花)と flour (小麦粉)は同語源!」 (heldio) も参照ください.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part 1. Sounds and Spellings. London: Allen and Unwin, 1909.

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2021-09-06 Mon

#4515. <gn> の発音 [phonetics][consonant][spelling][phoneme][nasal][etymological_respelling][analogy]

 英語の綴字 <gn> について,語頭に現われるケースについては <kn> との関係から「#3675. kn から k が脱落する音変化の過程」 ([2019-05-20-1]) の記事で簡単に触れた.16--17世紀に [gn] > [n] の過程が生じたということだった.では,語頭ではなく語中や語末に <gn> の綴字をもつ,主にフランス語・ラテン語由来の語について,綴字と発音の関係に関していかなる対応があるだろうか.Carney (247, 325) を参照してみよう.
 まず <gn(e)> が語末にくる例を挙げてみよう.arraign, assign, benign, campaign, champagne, cologne, deign, design, ensign, impugn, malign, reign, resign, sign などが挙がってくる.これらの語においては <g> は黙字として機能しており,結果として <gn(e)> ≡ /n/ の関係となっている.ちなみに foreignsovereign は非歴史的な綴字で,勘違いを含んだ語源的綴字 (etymological_respelling) あるいは類推 (analogy) の産物とされる.
 ただし,上記の単語群の派生語においては <g> と <n> の間に音節境界が生じ,発音上 /g/ と/n/ が別々に発音されることが多い.assignation, benignant, designate, malignant, regnant, resignation, signature, significant, signify の通り.
 上記の単語群のソースとなる言語はたいていフランス語である.フランス語では <gn> は硬口蓋鼻音 [ɲ] に対応するが,英語では [ɲ] は独立した音素ではないため,英語に取り込まれる際には,近似する歯茎鼻音 [n] で代用された.[ɲ] に近い音として英語には [nj] もあり得るのだが,音素配列的に語末には現われ得ない規則なので,結果的に [n] に終着したことになる.なお,語末でなければ /nj/ で取り込まれたケースもある.例えば,cognac, lorgnette, mignonette, vignette などである.イタリア語からの Bologna, Campagna も同様.poignant については,/nj/ のほか /n/ の発音もある.
 綴字について妙なことが起こったのは,フランス語 ligne に由来する line である.本来であればフランス語 signe が英語に取り込まれて <sign> ≡ /saɪn/ として定着したように,ligne も英語では <lign> ≡ /laɪn/ ほどで定着していたはずと想像される.だが,後者については英語的な綴字規則に則って <line> と綴り替えられて現在に至る.これに接頭辞をつけた動詞形にあっては <align> が普通の綴字(ただし aline もないではない)であるし,別に sign/assign というペアも見られるだけに,<line> はなんとも妙である.
 line/align という語幹を共有する語の綴字上のチグハグは,ほかにも deign/disdainfeign/feint に見られる (Upward and Davidson 140) .

 ・ Carney, Edward. A Survey of English Spelling. Abingdon: Routledge, 1994.
 ・ Upward, Christopher and George Davidson. The History of English Spelling. Malden, MA: Wiley-Blackwell, 2011.

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2021-02-13 Sat

#4310. shall's (= shall us = shall we) は初期近代英語期でそこそこ使われていた [eebo][personal_pronoun][speech_act][analogy]

 昨日の記事「#4309. shall we の代わりとしての shall's (= shall us)」 ([2021-02-12-1]) で取り上げたように,shall we の代用としての shall's は Shakespeare などにもみられる.関心をもって,初期近代英語の巨大コーパス EEBO corpus により "shall 's" と "shal 's" で検索してみると,135例もヒットした.すべてのコンコーダンスラインを精査したわけではないが,多少のゴミは混じっているものの,大部分は目下問題にしている shall we の代用としての用例とみてよさそうだ.いくつか例を挙げよう(最初の4例は Shakespeare より).

 ・ if he couetously reserue it, how shall 's get it?
 ・ where shall 's lay him?
 ・ shall 's haue a play of this?
 ・ shal 's to the Capitoll?
 ・ shall 's daunce?
 ・ shall 's to th' Taverne?
 ・ come, shal 's shake hands, sirs?
 ・ what shall 's do this evening?
 ・ shall 's to dinner now?
 ・ come, come, shall 's go drink?

 そもそもこの表現は統語的には疑問文であり,発話行為としては勧誘であり,口語的な色彩も強い.おそらく,当時,そのような響きをもったフレーズとして固定化していたものと思われる.機能的にいえば let's に近いと言えるが,この let's 自身も let us をつづめたものである.後者では us が正規の目的格形として用いられており,shall us の破格的な目的格形 us の使用とは一線を画していることは疑いようもないが,もしかすると両者の間に機能的類似に基づく類推 (analogy) が作用していたのかもしれない (cf. 「#1981. 間主観化」 ([2014-09-29-1])) .
 なお,省略されていない "shall us" でも検索してみた.こちらでは88例がヒットしたが,us が正規の目的格として用いられている例も多く混じっており,省略版 shall's と比べれば shall we の代用表現としての用例は稀のようだ.

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2020-11-25 Wed

#4230. なぜ father, mother, brother では -th- があるのに sister にはないのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][phonetics][consonant][sound_change][grimms_law][verners_law][analogy][etymology][relationship_noun][fricativisation]

 標題の親族名称 (relationship_noun) は,英語を学び始めて最初に学ぶ単語の代表格です.いったん暗記して習得してしまうと「そういうものだ」という捉え方になり,疑うことすらしません.しかし,英語を学び始めたばかりの生徒の視点は異なります.標記のようなドキッとする質問が寄せられるのです.father, mother, brother, sister という親族名詞の基本4単語を眺めると,問題の子音について確かに sister だけが浮いていますね.これはどういうわけでしょうか.音声の解説をお聴きください.



 千年前の古英語期,上記の4単語は fæder, mōdor, brōþor, sweostor という形態でした(<þ> は <th> に相当する古英語の文字です).つまり,<th> に相当するものをもっていたのは,実は brother だけだったのです.第5の親族名称である daughter (OE dohtor) も合わせて考慮すると,2単語で d が用いられ,さらに別の2単語で t が用いられ,そして1単語でのみ th が用いられたということになります.つまり,当時は brōþorþ (= th) こそが浮いていた,ということすら可能なのです.これは,現代人からみると驚くべき事実ですね.
 ここで疑問となるのは,なぜ古英語で d をもっていた fædermōdor が,現代までに当該の子音を th に変化させたかということです.これは中英語後期以降の音変化なのですが,母音に挟まれた d はいくつかの単語で摩擦音化 (fricativisation) を経ました.類例として furder > further, gader > gather, hider > hither, togeder > together, weder > weather, wheder > whether, whider > whither を挙げておきましょう.
 議論をまとめます.現代英語の観点からみると確かに sister が浮いているようにみえます.しかし,親族名称の形態の歴史をひもといていくと,実は brother こそが浮いていたと結論づけることができるのです.英語史ではしばしば出くわす「逆転の発想」の好例です.
 上の音声解説と比べるとぐんと専門的になりますが,音変化の詳細に関心のある方は,ぜひ##698,699,480,481,703の記事セットの議論もお読みください.

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2020-11-24 Tue

#4229. Fertig による analogy の定義 [analogy][history_of_linguistics][terminology][review][morphology]

 言語学史上,類推作用 (analogy) については多くが論じられてきた.「音韻法則に例外なし」を謳い上げた19世紀の比較言語学者たちは analogy を言語変化の例外を集めたゴミ箱として扱った一方で,英語史を含め個別言語の言語史記述においては,analogy を引き合いに出さなければ諸問題を考察することすら不可能なほどに,概念・用語としては広く浸透した(cf. 「#555. 2種類の analogy」 ([2010-11-03-1]),「#1154. 言語変化のゴミ箱としての analogy」 ([2012-06-24-1])).analogy を巡る様々な立場の存在は,それが日常用語でもあり学術用語でもあるという点に関わっているように思われる.学術用語としても,言語学のみならず心理学や認知科学などで各々の定義が与えられており,比較するだけで頭が痛くなってくる.
 ここ数日の記事で引用している Fertig (12) は,言語学における analogy という厄介な代物を本格的に再考し,改めて導入しようとしている.読みながら多くのインスピレーションを受けているが,とりわけ重要なのは Fertig なりの analogy の定義である.これが本書の序盤 (12) に提示されるので,こちらに引用しておきたい.

(3a) analogy1 [general sense] is the cognitive capacity to reason about relationships among elements in one domain based on knowledge or beliefs about another domain. Specifically, this includes the ability to make predictions/guesses about unknown properties of elements in one domain based on knowledge of one or more other elements in that domain and perceived parallels between those elements and sets of known elements in another domain.
(3b) analogy2 [specific sense] is the capacity of speakers to produce meaningful linguistic forms that they may have never before encountered, based on patterns they discern across other forms belonging to the same linguistic system.
(3c) an analogical formation is a form (word, phrase, clause, sentence, etc.) produced by a speaker on the basis of analogy2.
(3d) associative interference is an analogical formation and/or a product of associative interference that deviates from current norms of usage.
(3f) an analogical change is a difference over time in prevailing usage within (a significant portion of) a speech community that corresponds to an analogical innovation or a set of related innovations.


 定義というのは,それだけ読んでもなぜそのようになっているのか,なぜそこまで精妙な言い回しをするのか分からないことも多いが,それはこの analogy についても当てはまる.Fertig の新機軸の1つは,従来の analogy 観に (3d) の項目を付け加えたことである.伝統的な「比例式」を用いた analogy の定義には当てはまらないが,別の観点からは analogy とみなせる事例を加えるために,新たに検討されたのが (3d) だった.
 もちろん Fertig の定義とて1つの定義,1つの学説にすぎず,精査していく必要があるだろう.

 ・ Fertig, David. Analogy and Morphological Change. Edinburgh: Edinburgh UP, 2013.

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2020-10-14 Wed

#4188. なぜ sheep の複数形は sheep なのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hel_education][number][plural][oe][sound_change][analogy][high_vowel_deletion][analogy]

 sheep, deer のような普通名詞の複数形は,どういうわけか無変化で sheep, deer のままです.英語には,このような「単複同形」と呼ばれる名詞が少ないながらもいくつか存在しますが,いったいどのような背景があるのでしょうか.ラジオの解説をお聴きください.



 英語の歴史においては,もともとは sheep にせよ deer にせよ,単数形と複数形は形態的に区別されていました.古英語より前の時代には,単数形 scēap に対して *scēapu,同様に単数形 dēor に対して *dēoru のように,語尾によって単複が区別されていたのです.しかし,古英語期までに,専門的には「高母音削除」(high_vowel_deletion) と呼ばれる音変化が生じて語尾の -u が消失し,単複同形となってしまっていたのです.
 さて,このタイプの単語に,動物や単位を表わす名詞が少なからず含まれていたことが,続く中英語期の展開においてポイントとなってきます.主として狩猟対象となる動物(群れ)や数の単位を表わす名詞は,単数よりも複数で用いられることが多いのは自然に理解できるでしょう.これらの名詞は,複数形で使われるのがデフォルトなのです.すると,あえて -s などをつけて複数形であることを明示する必要もなく,そのまま裸の形で実質的に複数を表わすという慣習が拡がりました.もともと古英語期には複数形に -s 語尾をとっていた fish ですら,この慣習に巻き込まれて単複同形となりました.結果として,狭い意味領域ではありますが,動物の群れや数の単位を表わすいくつかの名詞が,英語では特殊な「単複同形」を取ることになったのです.具体的には,sheep, deer, fish, carphundred, thousand, million, billion などの名詞です.
 sheepdeer は,このような傾向のモデルとなった,古英語から続く老舗の名詞なのです.しかし,改めて強調しておきますが,sheepdeer とて,古英語より前の時代には,きちんと形態的に異なる複数形を示していたということです.音変化とその後の語彙・意味的な類推作用 (analogy) の結果,現代のような単複同形になっているのだということを銘記しておきたいと思います.
 この問題と関連して,##12,1512,2232の記事セットを参照していただければと思います.

Referrer (Inside): [2023-01-01-1] [2022-01-01-1]

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2020-10-14 Wed

#4188. なぜ sheep の複数形は sheep なのですか? --- hellog ラジオ版 [hellog-radio][sobokunagimon][hel_education][number][plural][oe][sound_change][analogy][high_vowel_deletion][analogy]

 sheep, deer のような普通名詞の複数形は,どういうわけか無変化で sheep, deer のままです.英語には,このような「単複同形」と呼ばれる名詞が少ないながらもいくつか存在しますが,いったいどのような背景があるのでしょうか.ラジオの解説をお聴きください.



 英語の歴史においては,もともとは sheep にせよ deer にせよ,単数形と複数形は形態的に区別されていました.古英語より前の時代には,単数形 scēap に対して *scēapu,同様に単数形 dēor に対して *dēoru のように,語尾によって単複が区別されていたのです.しかし,古英語期までに,専門的には「高母音削除」(high_vowel_deletion) と呼ばれる音変化が生じて語尾の -u が消失し,単複同形となってしまっていたのです.
 さて,このタイプの単語に,動物や単位を表わす名詞が少なからず含まれていたことが,続く中英語期の展開においてポイントとなってきます.主として狩猟対象となる動物(群れ)や数の単位を表わす名詞は,単数よりも複数で用いられることが多いのは自然に理解できるでしょう.これらの名詞は,複数形で使われるのがデフォルトなのです.すると,あえて -s などをつけて複数形であることを明示する必要もなく,そのまま裸の形で実質的に複数を表わすという慣習が拡がりました.もともと古英語期には複数形に -s 語尾をとっていた fish ですら,この慣習に巻き込まれて単複同形となりました.結果として,狭い意味領域ではありますが,動物の群れや数の単位を表わすいくつかの名詞が,英語では特殊な「単複同形」を取ることになったのです.具体的には,sheep, deer, fish, carphundred, thousand, million, billion などの名詞です.
 sheepdeer は,このような傾向のモデルとなった,古英語から続く老舗の名詞なのです.しかし,改めて強調しておきますが,sheepdeer とて,古英語より前の時代には,きちんと形態的に異なる複数形を示していたということです.音変化とその後の語彙・意味的な類推作用 (analogy) の結果,現代のような単複同形になっているのだということを銘記しておきたいと思います.
 この問題と関連して,##12,1512,2232の記事セットを参照していただければと思います.

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2020-07-07 Tue

#4089. 老年は winter,若年は summer [analogy][semantic_change][metonymy][metaphor][conceptual_metaphor][antonymy]

 昨日の記事「#4088. 古英語で「年」を意味した winter」 ([2020-07-06-1]) のために周辺を調べていたら,現代英語のおもしろい表現に行き当たった.a girl of eighteen summers (芳紀18歳の娘),a child of ten summers (10歳の子供),a youth of twenty summers (20歳の青年)などである.
 古英語の winter は複数形で長い年月を表わすのに用いられるのが通常だった.そこから,an old man of eighty winters (八十路の老人)のような「老年」を表わす表現が生まれてきたわけである.昨日の記事では「年のなかの1季節である冬=年」という部分と全体のメトニミーが作用していることに触れたが,一方で「人生の winter =老年」というメタファーが存在することも間違いなさそうだ.すると,対比的に「人生の summer =若年」というメタファーが類推により生まれてくることも,さほど不可解ではない.summer は,部分と全体のメトニミーはそのままに,とりわけ若年を喚起する年・歳のメタファーとして新たに生じたのである.
 実際,OED の summer, n.1 and adj. の語義4によると「年,歳」を意味する用例の初出は,古英語ではなく,ずっと後の後期中英語である.初期の例とともに引用する.

4. In plural. With a numeral or other quantifier, as two summers, five summers, etc.: used to measure a duration or lapse of time containing the specified number of summers or years; esp. used to denote a person's age. Now chiefly literary and rhetorical.
   Frequently applied particularly to younger people, perhaps with intended contrast with WINTER n.1 2, although cf. e.g. quots. 1821, 2002 for application to older people.

c1400 (?c1380) Cleanness (1920) l. 1686 Þus he countes hym a kow þat watz a kyng ryche, Quyle seven syþez were overseyed someres, I trawe.
1573 T. Bedingfield tr. G. Cardano Comforte ii. sig. E.ii Wee maruaile at flees for theyr long life, if they liue two Sommers.
. . . .
a1616 W. Shakespeare Comedy of Errors (1623) i. i. 132 Fiue Sommers haue I spent in farthest Greece.


 若年を喚起する summer の用法は,したがって古英語以来の winter の用法を参照しつつ,メタファーとメトニミーと相関的類推作用 (correlative analogy) を通じて中英語期に作り出された刷新用法ということになる(相関的類推作用については「#1918. sharpflat」 ([2014-07-28-1]) を参照).多層的な概念メタファー (conceptual metaphor) の例でもある.
 ところで,この summerwinter との対比であるとすれば,季節としては「夏」と解釈してよいのだろうか.そのようにみえるが,実は「春」ではないかと考えている.というのは,「若年=人生の春」のほうが解釈しやすいし,何よりも「#1221. 季節語の歴史」 ([2012-08-30-1]),「#1438. Sumer is icumen in」 ([2013-04-04-1]) で見たように,歴史的には summer は夏ばかりでなく春をも指し得たからだ.冬の反意 (antonymy) は夏なのか,春なのか.そんなことも考えさせる話題である.

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2020-03-31 Tue

#3991. なぜ仮定法には人称変化がないのですか? (2) [oe][verb][subjunctive][inflection][number][person][sound_change][analogy][sobokunagimon][conjugation][paradigm]

 昨日の記事 ([2020-03-30-1]) に引き続き,標記の問題についてさらに歴史をさかのぼってみましょう.昨日の説明を粗くまとめれば,現代英語の仮定法に人称変化がないのは,その起源となる古英語の接続法ですら直説法に比べれば人称変化が稀薄であり,その稀薄な人称変化も中英語にかけて生じた -n 語尾の消失により失われてしまったから,ということになります.ここでもう一歩踏み込んで問うてみましょう.古英語という段階においてすら直説法に比べて接続法の人称変化が稀薄だったというのは,いったいどういう理由によるのでしょうか.
 古英語と同族のゲルマン語派の古い姉妹言語をみてみますと,接続法にも直説法と同様に複雑な人称変化があったことがわかります.現代英語の to bear に連なる動詞の接続法現在の人称変化表(ゲルマン諸語)を,Lass (173) より説明とともに引用しましょう.Go はゴート語,OE は古英語,OIc は古アイスランド語を指します.

   (iii) Present subjunctive. The Germanic subjunctive descends mainly from the old IE optative; typical paradigms:

(7.24)
GoOEOIc
sg1baír-a-iber-eber-a
2baír-ai-s   "ber-er
3baír-ai   "ber-e
pl1baír-ai-maber-enber-em
2baírai-þ   "ber-eþ
3baír-ai-na   "ber-e


   The basic IE thematic optative marker was */-oi-/, which > Gmc */-ɑi-/ as usual; this is still clearly visible in Gothic. The other dialects show the expected developments of this diphthong and following consonants in weak syllables . . . , except for the OE plural, where the -n is extended from the third person, as in the indicative. . . .
   . . . .
   (iv) Preterite subjunctive. Here the PRET2 grade is extended to all numbers and persons; thus a form like OE bǣr-e is ambiguous between pret ind 2 sg and all persons subj sg. The thematic element is an IE optative marker */-i:-/, which was reduced to /e/ in OE and OIc before it could cause i-umlaut (but remains as short /i/ in OS, OHG).


 ここから示唆されるのは,古いゲルマン諸語では接続法でも直説法と同じように完全な人称変化があり,表の列を構成する6スロットのいずれにも独自の語形が入っていたということです.一般的に古い語形をよく残しているといわれる左列のゴート語が,その典型となります.ところが,古英語ではもともとの複雑な人称変化が何らかの事情で単純化しました.
 では,何らかの事情とは何でしょうか.上の引用でも触れられていますが,1つにはやはり音変化が関与していました.古英語の前史において,ゴート語の語形に示される類いの語尾の母音・子音が大幅に弱化・消失するということが起こりました.その結果,接続法現在の単数は bere へと収斂しました.一方,接続法現在の複数は,3人称の語尾に含まれていた n (ゴート語の語形 baír-ai-na を参照)が類推作用 (analogy) によって1,2人称へも拡大し,ここに beren という不変の複数形が生まれました.上記は(強変化動詞の)接続法現在についての説明ですが,接続法過去でも似たような類推作用が起こりましたし,弱変化動詞もおよそ同じような過程をたどりました (Lass 177) .結果として,古英語では全体として人称変化の薄い接続法の体系ができあがったのです.

 ・ Lass, Roger. Old English: A Historical Linguistic Companion. Cambridge: CUP, 1994.

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2019-10-17 Thu

#3825. quoth の母音 (2) [vowel][verb][preterite][old_norse][phonetics][sound_change][analogy][inflection][spelling_pronunciation]

 [2019-10-07-1]の記事で取り上げた話題について,少し調べてみた.中英語から近代英語にかけて,この動詞(過去形)の母音(字)には様々なものが認められたようだが,特に <a> や <o> で綴られたものについて,短音だったのか長音だったのかという問題がある(現代の標準的な quoth /kwoʊθ/ は長音タイプである).
 これについて Dobson (II §339) に当たってみた,次の1節を参照.

It is commonly assumed, as by Sweet, New English Grammar, 則1473, that ME quod and quoth are both weak-stressed forms with rounding of ME ă; but they should be distinguished. Quod, which occurs as early as Ancrene Wisse and its group, undoubtedly has ME ŏ < ME ă rounded under weak stress (though its final d is more simply explained from the OE plural stem than, with Sweet, as a special weak-stressed development of OE þ. Quoth, on the other hand, is not a blend-form with a ModE spelling-pronunciation, as Sweet thinks; the various ModE forms (see 則421 below) suggest strongly that the vowel descends from ME long_o_with_polish_hook.png, which is to be explained from ON á in the p.t.pl. kváðum. Significantly the ME quoþ form first appears in the plural quoðen in the East Anglian Genesis and Exodus (c. 1250), and next in Cursor Mundi.


 この引用を私なりに解釈すると,次の通りとなる.中英語以来,この単語に関して短音と長音の両系列が並存していたが,それが由来するところは,前者については古英語の第1過去形の短母音 (cf. cwæþ) であり,後者については古ノルド語の kváðum である.語末子音(字)が thd かという問題についても,Dobson は様々な異形態の混合・混同と説明するよりは,歴史的な継続(前者は古英語の第1過去に由来し,後者は第2過去に由来する)として解釈したいという立場のようだ.

 ・ Dobson, E. J. English Pronunciation 1500--1700. 1st ed. 2 vols. Oxford: Clarendon, 1957.

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2019-10-07 Mon

#3815. quoth の母音 [vowel][verb][preterite][verners_law][phonetics][sound_change][analogy][inflection][old_norse]

 「#2130. "I wonder," said John, "whether I can borrow your bicycle."」 ([2015-02-25-1]),「#2158. "I wonder," said John, "whether I can borrow your bicycle." (2)」 ([2015-03-25-1]) で少し触れたが,quoth /kwoʊθ/ は「?と言った」を意味する古風な語である.1人称単数と3人称単数の直説法過去形のみで,原形などそれ以外の形態は存在しない妙な動詞である.古英語や中英語ではきわめて日常的かつ高頻度の動詞であり,古英語ウェストサクソン方言では強変化5類の動詞として,その4主要形は cweðan -- cwæþ -- cwǣdon -- cweden だった(「#3812. waswere の関係」 ([2019-10-04-1]) を参照).
 ウェストサクソン方言の cweðan の語幹母音を基準とすると,その後の音変化により †queath などとなるはずであり,実際にこの形態は16世紀末まで用いられていたが,その後廃用となった(しかし,派生語の bequeath (遺言で譲る)を参照).したがって,現在の quoth の語幹母音は cweðan からの自然の音変化の結果とは考えられない.
 OEDquoth, v. と †queath, v. を参照してみると,o の母音は,Northumbrian など非ウェストサクソン方言における後舌円唇母音を示す,同語の異形に由来するとのことだ.その背景には複雑な音変化や類推作用が働いていたようだ.OED は,quoth, v. の下で次の3点を紹介している.

(i) levelling of the rounded vowel resulting from combinative back mutation in Northumbrian Old English (see discussion at queath v.); (ii) rounding of Middle English short a (of the 1st and 3rd singular past indicative) after w; (iii) borrowing of the vowel (represented by Middle English long open ō) of the early Scandinavian plural past indicative forms (compare Old Icelandic kváðum (1st plural past indicative)); both short and long realizations are recorded by 17th-cent. orthoepists (see E. J. Dobson Eng. Pronunc. 1500--1700 (ed. 2, 1968) II. 則則339, 421).


 中英語における異形については MEDquēthen v. も参照.スペリングとして hwat など妙なもの(MED は "reverse spelling" としている)も見つかり,興味が尽きない.

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2019-08-31 Sat

#3778. 過去分詞を作る形態素の一部 -t を語幹に取り込んでしまった動詞 [etymology][verb][participle][-ate][analogy][reanalysis][metanalysis]

 何とも名付けにくい,標題の複雑な形態過程を経て形成された動詞がある.先に具体例を挙げれば,語末に t をもつ grafthoist のことだ.
 昨日の記事「#3777. set, put, cut のほかにもあった無変化活用の動詞」 ([2019-08-30-1]) とも関係するし,「#438. 形容詞の比較級から動詞への転換」 ([2010-07-09-1]),「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]),「#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-16-1]),「#3764. 動詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-17-1]) とも密接に関わる,諸問題の交差点である.
 graft (接ぎ木する,移植する)はフランス語 grafe に遡り,もともと語末の t はなかった.しかし,英語に借用されて作られた過去分詞形 graft が,おそらく set, put, cut などの語幹末に -t をもつ無変化動詞をモデルとして,そのまま原形として解釈されたというわけだ.オリジナルに近い graff という語も《古風》ではあるが,辞書に確認される.
 同様に hoist (揚げる,持ち上げる)も,オランダ語 hyssen を借用したものだが,英語に導入された後で,語末に t を付した形が原形と再解釈されたと考えられる.オリジナルに近い hoise も,現在,方言形として存在する.
 以上は Jespersen (38) の説だが,解説を直接引用しておこう.

graft: earlier graft (< OF grafe). The ptc. graft was mistakenly interpreted as the unchanged ptc of an inf graft. Sh has both graft and graft; the latter is now the only form in use; it is inflected regularly. || hoist: originally hoise (perhaps < Middle Dutch hyssen). From the regular ptc hoist a new inf hoist sprang into use. Sh has both forms; now only hoist as a regular vb. The old ptc occurs in the well-known Shakespearean phrase "hoist with his own petard" (Hml III. 4.207).


 冒頭で名付けにくい形態過程と述べたが,異分析 (metanalysis) とか再分析 (reanalysis) の一種として見ておけばよいだろうか.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part VI. Copenhagen: Ejnar Munksgaard, 1942.

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2019-08-30 Fri

#3777. set, put, cut のほかにもあった無変化活用の動詞 [verb][conjugation][inflection][-ate][analogy][conversion][adjective][participle][conversion]

 set, put, cut の類いの無変化活用の動詞について「#1854. 無変化活用の動詞 set -- set -- set, etc.」 ([2014-05-25-1]),「#1858. 無変化活用の動詞 set -- set -- set, etc. (2)」 ([2014-05-29-1]) の記事で取り上げてきた.そこでは,これらの動詞の振る舞いが,英語の音韻形態論の歴史に照らせば,ある程度説得力のある説明が与えられることをみた.
 語幹末に td が現われる単音節語である,というのがこれらの動詞の共通項だが,歴史的には,この条件を満たしている限りにおいて,ほかの動詞も同様に無変化活用を示していたことがあった.たとえば,fast, fret, lift, start, waft などである.Jespersen (36) から引用例を再現しよう.

   4.42. The influence of analogy has increased the number of invariable verbs. Especially verbs ending in -t tend in this direction. The tendency perhaps culminated in early ModE, when several words now regular had unchanged forms, sometimes side by side with forms in -ed:
   fast. Sh Cymb IV. 2.347 I fast and pray'd for their intelligense. || fret. More U 75 fret prt. || lift (from ON). AV John 8.7 hee lift vp himselfe | ib 8.10 when Iesus had lift vp himselfe (in AV also regular forms) | Mi PL 1. 193 With Head up-lift above the wave | Bunyan P 19 lift ptc. || start. AV Tobit 2.4 I start [prt] vp. || waft. Sh Merch. V. 1.11 Stood Dido .. and waft her Loue To come again to Carthage | John II. 1.73 a brauer choice of dauntlesse spirits Then now the English bottomes haue waft o're.


 Jespersen のいうように,これらは歴史的に,あるいは音韻変化によって説明できるタイプの無変化動詞というよりは,あくまで set など既存の歴史的な無変化動詞に触発された,類推作用 (analogy) の結果として生じた無変化動詞とみるべきだろう.その点では2次的な無変化動詞と呼んでもよいかもしれない.これらは現代までには標準英語からは消えたとはいえ,重要性がないわけではない.というのは,それらが新たな類推のモデルとなって,次なる類推を呼んだ可能性もあるからだ.つまり,語幹が -t で終わるが,従来の語のように単音節でもなければゲルマン系由来でもないものにすら,同現象が拡張したと目されるからだ.ここで念頭に置いているのは,過去の記事でも取りあげた -ate 動詞などである(「#3764. 動詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-17-1]) を参照).
 同じく Jespersen (36--37) より,この旨に関する箇所を引用しよう.

4.43. It was thus not at all unusual in earlier English for a ptc in -t to be = the inf. The analogy of these cases was extended even to a series of words of Romantic origin, namely such as go back to Latin passive participle, e. g. complete, content, select, and separate. These words were originally adopted as participles but later came to be used also as infinitives; in older English they were frequently used in both functions (as well as in the preterit), often with an alternative ptc. in -ed; . . . A contributory cause of their use as verbal stems may have been such Latin agent-nouns as corruptor and editor; as -or is identical in sound with -er in agent-nouns, the infinitives corrupt and edit may have been arrived at merely through subtraction of the ending -or . . . . Finally, the fact that we have very often an adj = a vb, e. g. dry, empty, etc . . ., may also have contributed to the creation of infs out of these old ptcs (adjectives).


 引用の後半で,類推のモデルがほかにも2つある点に触れているのが重要である.corruptor, editor タイプからの逆成 (back_formation),および dry, empty タイプの動詞・形容詞兼用の単語の存在である.「#1748. -er or -or」 ([2014-02-08-1]),「#438. 形容詞の比較級から動詞への転換」 ([2010-07-09-1]) も参照.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part VI. Copenhagen: Ejnar Munksgaard, 1942.

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2019-08-17 Sat

#3764. 動詞接尾辞 -ate の起源と発達 [suffix][-ate][adjective][participle][verb][word_formation][loan_word][latin][french][conversion][morphology][analogy]

 昨日の記事「#3763. 形容詞接尾辞 -ate の起源と発達」 ([2019-08-16-1]) に引き続き,接尾辞 -ate の話題.動詞接尾辞の -ate については「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) で取り上げたが,今回はその起源と発達について,OED -ate, suffix1 を参照しながら,もう少し詳細に考えてみよう.
 昨日も述べたように,-ate はラテン語の第1活用動詞の過去分詞接辞 -ātus, -ātum, -āta に遡るから,本来は動詞の語尾というよりは(過去分詞)形容詞の語尾というべきものである.動詞接尾辞 -ate の起源を巡る議論で前提とされているのは,-ate 語に関して形容詞から動詞への品詞転換 (conversion) が起こったということである.形容詞から動詞への品詞転換は多くの言語で認められ,実際に古英語から現代英語にかけても枚挙にいとまがない.たとえば,古英語では hwít から hwítian, wearm から wearmian, bysig から bysgian, drýge から drýgan が作られ,それぞれ後者の動詞形は近代英語期にかけて屈折語尾を失い,前者と形態的に融合したという経緯がある.
 ラテン語でも同様に,形容詞から動詞への品詞転換は日常茶飯だった.たとえば,siccus から siccāre, clārus から clārāre, līber から līberāre, sacer から sacrāre などが作られた.さらにフランス語でも然りで,sec から sècher, clair から clairer, content から contenter, confus から confuser などが形成された.英語はラテン語やフランス語からこれらの語を借用したが,その形容詞形と動詞形がやはり屈折語尾の衰退により15世紀までに融合した.
 こうした流れのなかで,16世紀にはラテン語の過去分詞形容詞をそのまま動詞として用いるタイプの品詞転換が一般的にみられるようになった.direct, separate, aggravate などの例があがる.英語内部でこのような例が増えてくると,ラテン語の -ātus が,歴史的には過去分詞に対応していたはずだが,共時的にはしばしば英語の動詞の原形にひもづけられるようになった.つまり,過去分詞形容詞的な機能の介在なしに,-ate が直接に動詞の原形と結びつけられるようになったのである.
 この結び付きが強まると,ラテン語(やフランス語)の動詞語幹を借りてきて,それに -ate をつけさえすれば,英語側で新しい動詞を簡単に導入できるという,1種の語形成上の便法が発達した.こうして16世紀中には fascinate, concatenate, asseverate, venerate を含め数百の -ate 動詞が生み出された.
 いったんこの便法が確立してしまえば,実際にラテン語(やフランス語)に存在したかどうかは問わず,「ラテン語(やフランス語)的な要素」であれば,それをもってきて -ate を付けることにより,いともたやすく新しい動詞を形成できるようになったわけだ.これにより nobilitate, felicitate, capacitate, differentiate, substantiate, vaccinate など多数の -ate 動詞が近現代期に生み出された.
 全体として -ate の発達は,語形成とその成果としての -ate 動詞群との間の,絶え間なき類推作用と規則拡張の歴史とみることができる.

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2019-05-30 Thu

#3685. -ate 語尾をもつ動詞と名詞・形容詞の発音の違い [gvs][vowel][spelling][spelling_pronunciation_gap][stress][analogy][suffix][latin][sobokunagimon][-ate]

 標記について質問が寄せられました.たとえば appropriate は動詞としては「私用に供する」,形容詞としては「適切な」ですが,各々の発音は /əˈproʊpriˌeɪt/, /əˈproʊpriˌɪt/ となります.語末音節の母音が,完全な /eɪt/ が縮減した /ɪt/ かで異なっています.これはなぜでしょうか.
 動詞の /eɪt/ 発音は,綴字と照らし合わせればわかるように,大母音推移 (gvs) の効果が現われています.<-ate> という綴字で表わされる本来の発音 /-aːt(ə)/ が,初期近代英語期に生じた大母音推移により /eɪt/ へと変化したと説明できます.しかし,同綴字で名詞・形容詞の -ate 語では,そのような発音の変化は起こっていません.そこで生じた変化は,むしろ母音の弱化であり,/ɪt/ へと帰結しています.
 この違いは,大母音推移以前の強勢音節のあり方の違いに起因します.一般的にいえば,appropriate のような長い音節の単語の場合,動詞においては後方の音節に第2強勢が置かれますが,形容詞・名詞においては置かれないという傾向があります.appropriate について具体的にいえば,動詞としては第4音節の -ate に(第2)強勢が置かれますが,名詞・形容詞としてはそれが置かれないということになります.
 ここで思い出すべきは,大母音推移は「強勢のある長母音」において作用する音過程であるということです.つまり,-ate 語の動詞用法においては,(第2強勢ではありますが)強勢が置かれるので,この条件に合致して /-aːt(ə)/ → /eɪt/ が起こりましたが,名詞・形容詞用法においては,強勢が置かれないので大母音推移とは無関係の歴史を歩むことになりました.名詞・形容詞用法では,本来の /-aːt(ə)/ が,綴字としては <-ate> を保ちながらも,音としては強勢を失うとともに /-at/ へと短化し,さらに /-ət/ や /-ɪt/ へと曖昧母音化したのです.
 このような経緯で,-ate 語は品詞によって発音を違える語となりました.いったんこの傾向が定まり,パターンができあがると,その後は実際の発音や強勢位置にかかわらず,とにかく確立したパターンが類推的に適用されるようになりました.こうして,-ate 語の発音ルールが確立したのです.
 関連して,「#1242. -ate 動詞の強勢移行」 ([2012-09-20-1]),「#2731. -ate 動詞はどのように生じたか?」 ([2016-10-18-1]) もご参照ください.-age 語などに関しても,ほぼ同じ説明が当てはまると思います.中尾 (310, 313) も要参照.

 ・ 中尾 俊夫 『音韻史』 英語学大系第11巻,大修館書店,1985年.

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2018-06-07 Thu

#3328. Joseph の言語変化に関する洞察,5点 [language_change][contact][linguistic_area][folk_etymology][teleology][reanalysis][analogy][diachrony][methodology][link][simplification]

 連日の記事で,Joseph の論文 "Diachronic Explanation: Putting Speakers Back into the Picture" を参照・引用している (cf. 「#3324. 言語変化は霧のなかを這うようにして進んでいく」 ([2018-06-03-1]),「#3326. 通時的説明と共時的説明」 ([2018-06-05-1]),「#3327. 言語変化において話者は近視眼的である」 ([2018-06-06-1])) .言語変化(論)についての根本的な問題を改めて考え直させてくれる,優れた論考である.
 今回は,Joseph より印象的かつ意味深長な箇所を,備忘のために何点か引き抜いておきたい.

[T]he contact is not really between the languages but is rather actually between speakers of the languages in question . . . . (129)


 これは言われてみればきわめて当然の発想に思われるが,言語学全般,あるいは言語接触論においてすら,しばしば忘れられている点である.以下の記事も参照.「#1549. Why does language change? or Why do speakers change their language?」 ([2013-07-24-1]),「#1168. 言語接触とは話者接触である」 ([2012-07-08-1]),「#2005. 話者不在の言語(変化)論への警鐘」 ([2014-10-23-1]),「#2298. Language changes, speaker innovates.」 ([2015-08-12-1]) .
 次に,バルカン言語圏 (Balkan linguistic_area) における言語接触を取り上げながら,ある忠告を与えている箇所.

. . . an overemphasis on comparisons of standard languages rather than regional dialects, even though the contact between individuals, in certain parts of the Balkans at least, more typically involved nonstandard dialects . . . (130)


 2つの言語変種の接触を考える際に,両者の標準的な変種を念頭に置いて論じることが多いが,実際の言語接触においてはむしろ非標準変種どうしの接触(より正確には非標準変種の話者どうしの接触)のほうが普通ではないか.これももっともな見解である.
 話題は変わって,民間語源 (folk_etymology) が言語学上,重要であることについて.

Folk etymology often represents a reasonable attempt on a speaker's part to make sense of, i.e. to render transparent, a sequence that is opaque for one reason or another, e.g. because it is a borrowing and thus has no synchronic parsing in the receiving language. As such, it shows speakers actively working to give an analysis to data that confronts them, even if such a confrontation leads to a change in the input data. Moreover, folk etymology demonstrates that speakers take what the surface forms are --- an observation which becomes important later on as well --- and work with that, so that while they are creative, they are not really looking beyond the immediate phonic shape --- and, in some instances also, the meaning --- that is presented to them. (132)


 ここでは Joseph は言語変化における話者の民間語源的発想の意義を再評価するにとどまらず,持論である「話者の近視眼性」と民間語源とを結びつけている.「#2174. 民間語源と意味変化」 ([2015-04-10-1]),「#2932. salacious」 ([2017-05-07-1]) も参照.
 次に,話者の近視眼性と関連して,再分析 (reanalysis) が言語の単純化と複雑化にどう関わるかを明快に示した1文を挙げよう.

[W]hen reanalyses occur, they are not always in the direction of simpler grammars overall but rather are often complicating, in a global sense, even if they are simplificatory in a local sense.


 言語変化の「単純化」に関する理論的な話題として,「#928. 屈折の neutralization と simplification」 ([2011-11-11-1]),「#1839. 言語の単純化とは何か」 ([2014-05-10-1]),「#1693. 規則的な音韻変化と不規則的な形態変化」 ([2013-12-15-1]) を参照されたい.
 最後に,言語変化の共時的説明についての引用を挙げておきたい.言語学者は共時的説明に経済性・合理性を前提として求めるが,それは必ずしも妥当ではないという内容だ.

[T]he grammars linguists construct . . . ought to be allowed to reflect uneconomical "solutions", at least in diachrony, but also, given the relation between synchrony and diachrony argued for here, in synchronic accounts as well.


 ・ Joseph, B. D. "Diachronic Explanation: Putting Speakers Back into the Picture." Explanation in Historical Linguistics. Ed. G. W. Davis and G. K. Iverson. Amsterdam: Benjamins, 1992. 123--44.

Referrer (Inside): [2018-08-23-1]

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2018-05-11 Fri

#3301. なぜ wolf の複数形が wolves なのか? (4) [sobokunagimon][genitive][plural][consonant][phonetics][fricative_voicing][analogy][number][inflection][paradigm][clitic]

 3日間にわたり標題の話題を発展させてきた ([2018-05-08-1], [2018-05-09-1], [2018-05-10-1]) .今回は第4弾(最終回)として,この問題にもう一ひねりを加えたい.
 wolves (および間接的に wives)の背景には,古英語の男性強変化名詞の屈折パターンにおいて,複数主格(・対格)形として -as が付加されるという事情があった.これにより古英語 wulfwulfas となり,f は有声音に挟まれるために有声化するのだと説明してきた.wīf についても,本来は中性強変化という別のグループに属しており,自然には wives へと発達しえないが,後に wulf/wulfas タイプに影響され,類推作用 (analogy) により wives へと帰着したと説明すれば,それなりに納得がいく.
 このように,-ves の複数形については説得力のある歴史的な説明が可能だが,今回は視点を変えて単数属格形に注目してみたい.機能的には現代英語の所有格の -'s に連なる屈折である.以下,単数属格形を強調しながら,古英語 wulfwīf の屈折表をあらためて掲げよう.

(男性強変化名詞)単数複数
主格wulfwulfas
対格wulfwulfas
属格wulfeswulfa
与格wulfewulfum
(中性強変化名詞)単数複数
主格wīfwīf
対格wīfwīf
属格wīfeswīfa
与格wīfewīfum


 両屈折パターンは,複数主格・対格でこそ異なる語尾をとっていたが,単数属格では共通して -es 語尾をとっている.そして,この単数属格 -es を付加すると,語幹末の f は両サイドを有声音に挟まれるため,発音上は /v/ となったはずだ.そうだとするならば,現代英語でも単数所有格は,それぞれ *wolve's, *wive's となっていてもよかったはずではないか.ところが,実際には wolf's, wife's なのである.複数形と単数属格形は,古英語以来,ほぼ同じ音韻形態的条件のもとで発展してきたはずと考えられるにもかかわらず,なぜ結果として wolves に対して wolf'swives に対して wife's という区別が生じてしまったのだろうか.(なお,現代英語では所有格形に ' (apostrophe) を付すが,これは近代になってからの慣習であり,見た目上の改変にすぎないので,今回の議論にはまったく関与しないと考えてよい(「#582. apostrophe」 ([2010-11-30-1]) を参照).)
 1つには,属格標識は複数標識と比べて基体との関係が疎となっていったことがある.中英語から近代英語にかけて,属格標識の -es は屈折語尾というよりは接語 (clitic) として解釈されるようになってきた(cf. 「#1417. 群属格の発達」 ([2013-03-14-1])).換言すれば,-es は形態的な単位というよりは統語的な単位となり,基体と切り離してとらえられるようになってきたのである.それにより,基体末尾子音の有声・無声を交替させる動機づけが弱くなっていったのだろう.こうして属格表現において基体末尾子音は固定されることとなった.
 それでも中英語から近代英語にかけて,いまだ -ves の形態も完全に失われてはおらず,しばしば類推による無声の変異形とともに並存していた.Jespersen (§16.51, pp. 264--65) によれば,Chaucer はもちろん Shakespeare に至っても wiues などが規則的だったし,それは18世紀終わりまで存続したのだ.calues も Shakespeare で普通にみられた.特に複合語の第1要素に属格が用いられている場合には -ves が比較的残りやすく,wive's-jointure, staves-end, knives-point, calves-head などは近代でも用いられた.
 しかし,これらとて現代英語までは残らなかった.属格の -ves は,標準語ではついえてしまったのである.いまや複数形の wolves など少数の語形のみが,古英語の音韻規則の伝統を引く最後の生き残りとして持ちこたえている.

 ・ Jespersen, Otto. A Modern English Grammar on Historical Principles. Part VI. Copenhagen: Ejnar Munksgaard, 1942.

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