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productivity - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-07-20 06:59

2011-11-19 Sat

#936. 語形成の生産性 (2) [productivity][morphology][word_formation][affix]

 昨日の記事「#935. 語形成の生産性 (1)」 ([2011-11-18-1]) に続いて,productivity に関する話題.昨日,生産性を論じる視点の1つに "frequency of base type" があると紹介した.ある接辞が付加される基体の数や範囲が大きければその語形成の生産性は高いということになり,数や範囲が限定されていればその分だけ生産性が低いということになる,という考え方だ.
 では,基体のタイプが限定される場合,限定の基準にはどのようなものがあるだろうか.以下に,Lieber (64--65) の解説を要約する.

 (1) categorial restrictions: 品詞の限定.ほとんどの接辞は,基体が特定の品詞であることを要求する.-ness や -ity は原則として基体に形容詞を要求し,-ize は基体に名詞か形容詞を要求する,等々.
 (2) phonological restrictions: 接辞のなかには,基体に特定の音韻構造を要求するものがある.例えば,-ize は基体に2音節以上からなる語で,かつ最終音節に主強勢の落ちない語を要求する.形容詞から動詞を作る -en は,末尾に阻害音をもつ基体に限定して付加される (ex. darken, brighten, deafen but not *slimmen, *tallen) .
 (3) the meaning of the base: 否定の un- は,基体がすでに否定的な意味を帯びている場合には付加されない (ex. unlovely but not *unugly; unhappy but not *unsad) .
 (4) etymological restrictions: 名詞から形容詞を作る -en は,基体に主として本来語を要求する (ex. wooden, waxen but not *metalen, *carbonen) .一方で,-ic は,基体に主としてフランス借用語あるいはラテン借用語を要求する (ex. parasitic, dramatic) .
 (5) syntactic restrictions: -able は他動詞,より限定的には受動化できる他動詞に付加される傾向がある (ex. loveable but not *snorable ) .(これについては,[2011-10-30-1]の記事「#916. bouncebackability の運命と "non-lexicalizability" (1)」とその続編[2011-10-31-1]を参照.)
 (6) pragmatic restrictions: 英語からの例ではないが,オーストラリア北東部で話される Dyirbal 語において,-ginay (〜に覆われた)という接尾辞は,基体に汚いものや不快なものを表わす語を要求するという.ここには,当該言語の文化に根ざした語用論的な要因が作用していると考えられる.また,結果としてできる派生語の register が限定されるような接辞の存在も示唆される(例えば,-ish はくだけた文脈で使われがちな形容詞を派生させるなど).

 語形成の生産性はすぐれて形態論的な問題ではあるが,それを論じるにあたって,音韻,語種,統語,意味・語用といった言語体系のあらゆる側面の考慮が必要になってくるというのが,難しいところであり,同時に魅力でもある.

 ・ Lieber, Rochelle. Introducing Morphology. Cambridge: CUP, 2010.

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2011-11-18 Fri

#935. 語形成の生産性 (1) [productivity][morphology][word_formation][affix][frequency][mental_lexicon]

 語形成の生産性 (productivity) については,productivity の各記事で話題にしてきた.そこでは,生産性をどのように定義するか,どのように測定するかは,形態理論における難問であると述べるにとどまったが,今回は,この問題にもう少し踏み込みたい.
 まずは,Lieber (61) による,"productive" と "unproductive" の日常語による定義を挙げよう.

Processes of lexeme formation that can be used by native speakers to form new lexemes are called productive. Those that can no longer be used by native speakers, are unproductive; so although we might recognize the -th in warmth as a suffix, we never make use of it in making new words. The suffixes -ity and -ness, on the other hand, can still be used, although perhaps not to the same degree.


 この定義により,生産性の指し示している概念は直感的に理解できるが,より専門的に定義しようとするとなかなか難しい.生産性に関与する要因としては,3点が考えられる (Lieber 61--64) .

 (1) transparency: 音韻と意味の透明性が確保されており,基体と接辞が明確に区別される語形成は productive である.例えば,candidnesscrudity において,それぞれ形態上 candid + -ness, crude + -ity と明確に線引きできるだけでなく,その意味も基体と接辞(「〜である状態」)の純粋な和 (compositional) として解釈できる.この点で,-ness や -ity を用いた語形成は透明度が高いと言える.
 しかし,-ity は -ness に比べて透明度が低い.1つには,rusticity において,綴字上は rustic + -ity と透明的に分析されるが,発音上は基体の最後の子音が /k/ から /s/ へ変化しており,その分だけ透明性が低くなる.別の例では,timid の強勢は第1音節だが,timidity の強勢は基体の第2音節へ移動しており,透明性が低くなっている.さらに,oddity は,odd + -ity から容易に想像されるとおり,透明的に「異常であること」を意味するのみならず,「変人」をも意味する.後者の語義については,予測可能性(=透明性)が低いとみなすことができる.最後に,dexterity では,基体として *dexter が予想されるところだが,これは実際には存在しない基体である.ここでは,透明性が確保されていない.
 oddity (変人)の例で触れた意味の予測(不)可能性という指標は,その派生語が mental lexicon に登録されているかどうかという問題,語彙化 (lexicalization) の問題に関連する.この場合,「異常であること」の語義での oddity は語彙化されていないが,「変人」の意味でのoddity は語彙化されているということになる.したがって,透明性が高いほど語彙化されにくく,透明性が低いほど語彙化されやすいという関係が成り立つ.

 (2) frequency of base type: 接辞の付加しうる基体の数や範囲が大きければ大きいほど,その語形成は生産的であるとみなすことができる.接尾辞 -esque (〜風の)は名詞に付加されるが,主として固有名詞に限定される.単音節の基体には付加されにくいという条件もあるため,どんな名詞にも付加される接尾辞に比べれば,基体の範囲が狭い分,生産性が低いということになる.([2009-11-29-1]の記事「#216. 人名から形容詞を派生させる -esque の特徴」を参照.)

 (3) usefulness: 語形成の有用性.常識的に,すべての形容詞について対応する名詞があることは有用であり,便利であると考えられる.この場合,形容詞を名詞化する接尾辞 -ness, -ity は有用であり,生産的であるということになる.反対に,女性を表わす接尾辞 -ess は,現代の性差別廃止の社会的な風潮により有用性が失われてきており,その分だけ生産性も低くなってきていると考えられる.

 語形成の生産性は,少なくともこの3点に基づいて論じる必要がある.
 音韻形態変化や意味変化によって (1) が,語彙の増加などによって (2) が,社会的な価値観の変化によって (3) が影響を受けるということを考えると,語形成の生産性もまた通時的な変化に晒されているということは明らかだろう.

 ・ Lieber, Rochelle. Introducing Morphology. Cambridge: CUP, 2010.

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2011-09-20 Tue

#876. 現代英語におけるかばん語の生産性は本当に高いか? [blend][productivity][pde][pde_language_change][word_formation][statistics][lexicology]

 [2011-01-18-1]の記事「#631. blending の拡大」で,現代英語においてかばん語が増加している件について取り上げた.かばん語は,現代英語の傾向の1つとして Leech et al. が指摘している "densification" (50) の現われと考えられそうである([2011-01-12-1]の記事「現代英語の文法変化に見られる傾向」を参照).多数のかばん語の例を示されれば,確かにさもありなんと直感されるところではある.しかし,[2011-09-17-1]の記事「#873. 現代英語の新語における複合と派生のバランス」で触れたとおり,Bauer の新語調査によれば,新語におけるかばん語の割合は1880--1982年の期間で p < 0.05 のレベルでも有意な増加を示していない(ただし絶対数は増加している).複数の観察者が指摘しており,私たちの直感にも適うかばん語の増加傾向と,客観的な統計値とのあいだに差があるのはどういうことだろうか.
 1つには,Bauer の調査対象期間が1982年で終わっているということがあるだろう.当時の客観的状況と2011年の時点で私たちの抱いている直感とが食い違っていても不思議はない.この30年ほどの間に blending が激増したという可能性も考えられる.
 もう1つ,直感と数値のギャップを説明し得る要因がある.この点に関して,Algeo の調査を紹介したい.多くの語彙研究が OED 系の辞書を利用しているが,Algeo はそれとは別系列の辞書を利用して独立した新語調査を行なった.彼の採った方法は,1963年以降の新語を収録した Barnhart の辞書から1000語を無作為抽出し,それをソースや語形成ごとに振り分けるというものである.その調査によると,かばん語は調査した新語語彙全体の4.8%を占めるにすぎず,他の主要な語形成のなかでは目立たないカテゴリーであるという結果となった.しかし,Algeo (271) はこの数値は過小評価だろうと述べている.

Last in numerical importance as a source of new words is blending. Less than a twentieth of our new words have been formed in that way (4.8 percent); however, blending is more popular than that statistic suggests. Its principal areas of use are popular journalism and advertising. Time magazine and Madison Avenue dearly love a blend. Most of the popular coinages are nonce forms that were unreported in the Barnhart dictionary and consequently are not included in these statistics. But every new word begins as a nonce form, so a source that is prolific of nonce forms today may be expected to increase its contribution to the general vocabulary tomorrow. Blending may look like a long shot, but the smart money will keep an eye on it.


 "nonce-form" あるいは "nonce-word" (臨時語)に blending が多用されるというのは客観的に確かめにくいが,直感には適う.形態の生産性 (productivity) とは何を指すかという問題は,[2011-04-28-1], [2011-04-29-1], [2011-05-28-1]の記事でも触れてきたように,明確な解答を与えるのが難しい問題である.この問いは,何を(辞書に掲載するに値する)語とみなすかというもう1つの難問にも関係してくる([2011-03-28-1]の記事「#700. 語,形態素,接辞,語根,語幹,複合語,基体」を参照).blending の真の生産性は辞書や辞書に基づいた統計値には現われにくいが,言語使用の現場において活躍している語形成であることは恐らく間違いない.問題は,この主観的評価を,いかにして客観的に支持し得るかという方法の問題なのではないか.

 ・ Leech, Geoffrey, Marianne Hundt, Christian Mair, and Nicholas Smith. Change in Contemporary English: A Grammatical Study. Cambridge: CUP, 2009.
 ・ Bauer, Laurie. Watching English Change: An Introduction to the Study of Linguistic Change in Standard Englishes in the Twentieth Century. Harlow: Longman, 1994.
 ・ Algeo, John. "Where Do the New Words Come From?" American Speech 55 (1980): 264--77.
 ・ Barnhart, Clarence L., Sol Steinmetz, and Robert K. Barnhart, eds. The Barnhart Dictionary of New English since 1963. Bronxville, N.Y.: Barnhart, 1973.

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2011-09-17 Sat

#873. 現代英語の新語における複合と派生のバランス [romancisation][compound][derivation][lexicology][pde][word_formation][productivity][statistics][pde_language_change]

 英語語彙の歴史は,供給源という観点から,大雑把に次のように概括される.古英語では複合 (composition) と派生 (derivation) が盛んだったが,中英語から初期近代英語にかけては借用 (borrowing) が著しく,後期近代英語以降は再び複合と派生が伸張してきた.この語彙史の流れを受けて,現代は新語の供給源を,借用よりも既存要素(それ自体は本来語とは限らない)の再利用に多く負っている時代ということになる.では,現代英語を特徴づけるとされる複合と派生の2つの語形成では,どちらがより生産性が高いといえるだろうか.Potter (69--70) は,両者のバランスはよく取れていると評価している.

German and Dutch, like ancient Greek, make greater use of composition (or compounding) than derivation (of affixation). French and Spanish, on the other hand, like classical Latin, prefer derivation to composition. Present-day English is making fuller use of both composition and derivation than at any previous time in its history.


 もちろん,両者のバランスが取れているからといって他言語よりも優れた言語ということにはまったくならない.ただし,ゲルマン語派とロマンス語派の語形成の特徴を兼ね備えていることにより,英語がいずれの立場からも「近い」言語と感じられるという効果はあるかもしれない(関連する議論は[2010-05-27-1]の記事「英語のロマンス語化についての評」を参照).ゲルマン系でもありロマンス系でもあるという現代英語の特徴は,語形成に限らず語彙全体にも言えることである.
 さて,Potter は上記のように複合と派生の好バランスを指摘したが,生産性を量的に測ったわけではなく,他の主要なヨーロッパ語あるいは古い英語との比較において評価したにすぎない.この点についてより客観的に調査したのが,Bauer (32--33, 36--39) だ.Bauer は The Supplement to the Oxford English Dictionary (1972--86) を用いた無作為標本調査で,対象に選ばれた本来語要素から成る新語1559語を初出年により (1) 1880--1913, (2) 1914--38, (3) 1939--82 の3期に区分して,造語法別に語を数えた.区別された造語法とは,Abbreviations, Blends, Shortenings, Compounds, Prefixation, Suffixation, Names, Neo-classical compounds, Simultaneous prefix and suffix, Other の10種類である.
 Bauer (38) の掲げた表のデータを Log-Likelihood Tester, Ver. 2 に投げ込んで統計処理してみた(データはHTMLソースを参照;グラフは以下を参照.).全体として時期別の差は p < 0.05 のレベルで有意であり,分布の通時的変化が観察されると言ってよいだろう.次に造語法別に変化を見てみると,Abbreviations が p < 0.01 のレベルで有意な増加を示し,Suffixation と Neo-classical compounds がそれぞれ p < 0.05 のレベルで有意な減少を示した.その他の造語法については,3期にわたる揺れは誤差の範囲内ということになる.Bauer (37--38) は,Blends の増加を有意であると示唆しており,しばしば指摘される同趣旨の傾向を支持しているようだが,計算上は p < 0.05 のレベルでも有意差は認められなかったので注意が必要である([2011-01-18-1]の記事「blending の拡大」を参照).

Processes of Word-Formation: Changes over a Century

 複合系 (Compounds, Neo-classical compounds) と 派生系 (Prefixation, Suffixation, Simultaneous prefix and suffix) で比べると,3時期を通じて後者の割合は前者の割合の2.7倍程度で圧倒している(以下のグラフを参照).数値的には,派生のほうにバランスが偏っているようだ.

Composition and Derivation: Changes over a Century

 ・ Bauer, Laurie. Watching English Change: An Introduction to the Study of Linguistic Change in Standard Englishes in the Twentieth Century. Harlow: Longman, 1994.
 ・ Potter, Simon. Changing English. London: Deutsch, 1969.

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2011-05-28 Sat

#761. 古英語の derivation は死んでいたか [derivation][word_formation][productivity][oe]

 一般に古英語の語形成は合成 ( composition ) と派生 ( derivation ) に特徴付けられるとされる.前者については[2011-02-04-1], [2010-08-12-1]などの記事で,後者については[2009-10-31-1], [2009-05-18-1]などの記事で言及してきた.
 ところが,後者の derivation について Bradley が異なる見解を述べている.古英語の派生語は,実は古英語以前に確立していたものであり,derivation という語形成の過程そのものが古英語で生産的であったわけではないという.もしこれが真実だとすると,英語史の概説書は誤った(少なくとも誤解を招く)主張を繰り返してきたということになる.あるいは私が単に誤解していたということだろうか.過程としての派生と結果としての派生語とを勘違いしていたということなのかもしれない.

Old English was considerably less rich than Modern English in methods of making new words by derivation. It is true that a large portion of the Old English vocabulary consists of words derived from other words that existed in the language. But very many of these derivatives had been already formed before the English came over from the continent, and the processes by which they were made had become obsolete before the date of the earliest Old English literature. (91)


The Old English language, at the earliest period at which it is known to us, had already lost one of the most useful of the means for word-making which it originally possessed. . . . Almost all those modes of derivation which were actually current in Old English have continued in constant use down to the present time. (93)


 derivation を古英語に特徴的な語形成の1つとして取り上げる際には注意が必要ということだろう.関連して,derivation の生産性 ( productivity ) をいかにして測定するかという問題は,[2011-04-28-1]の記事「接尾辞 -dom をもつ名詞の通時的分布」でも触れたとおり,理論的には難しい問題であることを再度指摘しておきたい.

 ・ Bradley, Henry. The Making of English. New York: Dover, 2006. New York: Macmillan, 1904.

Referrer (Inside): [2012-06-18-1] [2011-09-20-1]

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2011-04-29 Fri

#732. -dom は生産的な接尾辞か [suffix][productivity]

 [2009-05-18-1], [2011-04-28-1]の記事で接尾辞 -dom について紹介したが,昨日の記事[2011-04-28-1]を書いたあとで,引用に含まれていた Wentworth の論文を読んでみた.-dom に的を絞った驚くほど網羅的な研究だった.結論らしい結論はないのだが,-dom の具体例の列挙により事実上この接尾辞の生産性 (productivity) を示した研究といっていいだろう.論文のあらましに近くなるが,以下に要点を書き留めておく.
 まず,Wentworth (280--81) は主に20世紀の言語学者の -dom の生産性に関する言及を数多く収集し,"inactive" とする論者と "active" とする論者の間で意見が完全に割れていることを示す."inactive" とする言及の1例として,1935年の "-dom . . . is to all intents and purposes now dead" が挙げられる,"active" とするものには同年の ". . . still active, that is to say, regarded as easily available for the coining of new compounds . . ." が挙げられる.
 収集した言及の中に,19世紀後半の同時代の軽蔑的な反応が含まれており興味深い (283--84) .

Among the recent vulgarisms that have crept into the press is an abuse of the suffix dom . . . as legitimately used in kingdom, christendom . . . The word, however, does not admit of unlimited extension at the hands either of neologists or of would-be comic writers. 'Officialdom is strong in France . . . '


 次に,Wentworth は,1840年からの100年間で初めて印刷上に現われた262個の -dom 語を列挙する (284--85) .20世紀に入ってからの40年間だけでほぼ半数の132語が列挙されている.これだけを見ても,昨日の OED に基づく通時的分布が,20世紀における -dom の生産性を相当に過小評価しているということが分かる.ただし,Wentworth は特定の著者や特定の年に -dom の新語が現われていることに注意を喚起している.
 英米の著名な作家による -dom 語の使用例を概観した後,Wentworth は1800年以降に現われた約300語の -dom 語の "usage status" について調査する.そのほとんどが "standard" な語であると指摘しており,-dom の生産性を暗に示しているようである (290) .

Of the approximately 300 Modern English words treated in this inquiry, all but a relative few are standard. Many are rich in connotation of empire, of politic organization, of dominion real or fancied. Some are daring, poetic, curious, whimsical. But such traits hardly disqualify the words as standard English, so broad is that concept.


 次に,-dom の語形成上の特徴,-dom 語の強勢の位置が考察される (293--94) .形容詞の基体に接尾辞のついた少数派の例として halidom, bourgeoisdom, carefreedom, topsyturvydom, awaredom, Englishdom, Germandom, ramshackledom が紹介されるが,最も頻度の高い -dom 語が freedomwisdom など形容詞由来であることが指摘される (293) .
 続けて,各 -dom 語が,権威あるいくつかの辞書に見出し語として含められているかどうかを確認する (294) .しかし,ある -dom 語が文証されたことがあるかどうかということは必ずしも生産性の指標とはならないことを示唆し,Jespersen から次の一節を引用しつつ -dom の潜在的な生産性を評価している (295) .

A word may have been used scores of times without finding its way into any dictionary,---and a word may be an excellent one even if it has never been used before by any human being. If at its first appearance it is just as intelligible as if it had been in constant use for centuries, why should the first occurrence be more faulty than the three-thousandth?


 最後に,1800年以降に現われた -dom 語が300個ほどリストアップされる (296--306) .狭い話題を深く追究するという,研究の王道を行く印象的な論文だった.
 分かっていたつもりだが,接辞の生産性の問題はやはりその定義から始めなければならないなと改めて実感した.

 ・ Wentworth, Harold. "The Allegedly Dead Suffix -dom in Modern English." PMLA 56 (1941): 280--306.

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2011-04-28 Thu

#731. 接尾辞 -dom をもつ名詞の通時的分布 [suffix][oed][corpus][productivity]

 [2009-05-18-1]の記事「接尾辞-dom をもつ名詞」では現代英語で使われる -dom 語をいくつか挙げたが,今回は通時的な観点からこの接尾辞を眺めてみたい.Bauer (220) によると,-dom は一度は瀕死の接尾辞とみなされるほどに衰退していたが,現代英語では一定の生産性を取り戻してきているという.

-dom    This suffix forms abstract, uncountable nouns from concrete, countable ones. For a long time it was thought that the suffix was moribund or totally non-productive, but Wentworth (1941) showed that it had never completely died out, and it is still productive in contemporary English, though not very much so. Recent examples include Dollardom, fagdom, gangsterdom, girldom (all OEDS). (220)


 -dom は原則として名詞の基体に付加して抽象名詞を作るが,freedom のように形容詞の基体に付加する例もある.
 OED で通時的分布を調べてみた.[2011-01-05-1]で紹介した「OED の検索結果から語彙を初出世紀ごとに分類する CGI」を利用して世紀ごとに -dom 語を数え上げ,以下のように視覚化した.Sodom などの雑音も多少は混じっており,ざっと見て気付いたものは削除したが,大雑把な数え上げとして理解されたい.数値データはこのページのHTMLソースを参照.

Diachronic Distribution of -dom Words by OED

 中英語から近代英語にかけてのじわじわとした復活,そして19世紀の爆発は印象的である.20世紀の下火は,現実を反映しているのか,あるいは OED の語彙収集上の事情によるものだろうか.いずれにしても19世紀以降の新 -dom 語彙はすべてが低頻度語で,nonce-word も多い.Frequency Sorter によると,ANC (American National Corpus) で10回以上用いられているものは,fandom, boredom, stardom, fiefdom くらいだ.
 接辞の生産性 (productivity) は理論的に計算するのが難しいとされる (Baayen and Lieber) .-dom の19世紀の爆発は20世紀そして21世紀にどの程度続いているのか,直感的に捉えられる接辞の生産性とは客観的にどのように記述されるのか,生産性の問題にコーパスがどのように活用できるのか.-dom に注目するだけでも,様々な問題が持ち上がってくる.

 ・Bauer, Laurie. English Word-Formation. Cambridge: CUP, 1983.
 ・Baayen, Harald and Rochelle Lieber. "Productivity and English Derivation: A Corpus-Based Study." Linguistics 29 (1991): 801--43.

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2011-01-18 Tue

#631. blending の拡大 [word_formation][morphology][phonaesthesia][blend][productivity]

 昨日の記事[2011-01-17-1]blending 「混成」,blend 「混成語」,portmanteau word 「かばん語」といった術語を紹介したが,今日は英語における blending の通時的傾向について概説しつつ,blend の例を挙げたい.
 中英語期以前には,混成語の明らかな例はほとんどない.Chaucer の nifle ( nihil + trifle ) "trifle" が例として挙げられることがあるが,MED の語源によれば Anglo-French からの借用語だという.近代英語以降は少しずつ混成語が現われ始め,2語の意味を合成するという本来の機能に加えて,滑稽・揶揄・嘲笑などの効果を狙ったものも出てくる.foolosopher ( fool + philosopher ), balloonacy ( balloon + lunacy ) などである.Lewis Carroll (1832--98) は昨日の記事で挙げた slithy, mimsy のほかにも chortle ( chuckle + snort ) や galumph ( gallop + triumphant ) などの例を生み出しており,まさに portmanteau word の生みの親といえる.
 しかし,混成語の生産性が真の意味で爆発したのは20世紀に入ってからである.政治・文化・科学など社会のあらゆる側面で情報量が爆発的に増加するに伴って,新しい語彙の需要も増した.少ない音節に多くの情報を詰め込む "densification" の潮流 ( see [2011-01-12-1] ) に合致するスマートな語形成の1つが,混成だったのである.
 上記の経緯で,現代英語にはきわめて多数の混成語が存在する.枚挙にいとまがないが,混成語の生産性の高さと活用の広さをつかむために,ランダムに例を挙げてみよう.

blend1st element2nd element
avionicsaviationelectronics
brunchbreakfastlunch
docudramadocumentarydrama
EbonicsEbonyphonics
edutainmenteducationentertainment
electretelectricitymagnet
electrocuteelectroexecute
EurovisionEuro-television
flushflashblush
FranglaisFrançaisAnglais
infomercialinformationcommercial
ligerliontiger
motelmotorhotel
OxbridgeOxfordCambridge
ParalympicsparallelOlympics
podcastpodbroadcast
simulcastsimultaneousbroadcast
SinglishSingaporeEnglish
smogsmokefog
telethontelephonemarathon


 多くの混成語は一方の語の前部と他方の語の後部を組み合わせる構成になっているが,docudramapodcast のように一方の語は縮約されずに語幹全体が活用されているものもあるし,electrocuteelectro- や EurovisionEuro- のように combining form ( see [2010-10-31-1] ) として定着している要素が用いられているものもある.
 最新の例としては,2010年の流行語 ( see [2011-01-10-1] ) としてノミネートされた語から,メキシコ湾への石油流出事件に引っかけた「多数」を意味する spillion ( spill + million ) ,米政治家 Sarah Palin による造語 refudiate ( refute + repudiate ) ,hacktivism ( hacking + activism ) などがある.現代英語で最も勢いのある語形成の1つであることは間違いないだろう.
 なお,[2010-01-10-1]の記事で挙げた phonaesthesia の各例も広い意味では blending の一種と考えられるかもしれない.

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2010-12-11 Sat

#593. 現代によみがえった古い接尾辞 -wise [suffix][word_formation][productivity]

 "in the manner or direction of ---" ほどの様態の意味を表わす現代英語の接尾辞 -wise は古英語由来の古い接辞である.古英語の wīse は "way, fashion, custom, habit, manner" を意味する名詞として独立していた.現代英語では単独で用いられることはほとんどないが,例えば clockwise, counterclockwise, crosswise, lengthwise, likewise, otherwise, sidewise, slantwise などの語の最終要素として埋め込まれている.
 接尾辞としての -wise は,英語の歴史を通じて特に生産性が高かったわけではない.むしろ,上記の少数の語のなかに化石的に残存するばかりの存在感でしかなかった.ところが,1930--40年代から -wise はゾンビのように復活し,著しく生産性の高い副詞接辞へと変貌した.くだけた発話では "as regards, concerning, in terms of" ほどの意味で,どんな名詞にでも付加しうる.近年の日本語でいう「〜的に(は)」に相当するといえるだろうか.辞書からいくつか例文を拾ってみた.

 ・ Things aren't too good businesswise.
 ・ Security-wise they've made a lot of improvements.
 ・ Career-wise, this illness couldn't have come at a worse time.
 ・ It was a much better day weather-wise.
 ・ We were housed student-wise in dormitory rooms.
 ・ What shall we do foodwise - do you fancy going out to eat?
 ・ Moneywise, of course, I'm much better off than I used to be.
 ・ What do we need to take with us clothes-wise?
 ・ It was a poor show, talent-wise.


 語法と略史の解説には American Heritage Dictionary of the English Dictionary のコラムが便利である.
 ブランショ (113) によれば,この -wise の復活は「英語話者の集団意識の深層」に関わる問題だという.

思いがけずその起源に戻ることができたことで,長い間古風とみなされてきたゲルマン語の接尾辞 -wise は,1940年以来奇妙な運命を経験することになる.Budgetwise, drugwise, healthwise, personalitywise, securitywise 等である.英米語のこの現象については今日までいかなる説明もされてこなかったが,これは現代の英語を話す人々の集団意識の中に最も古い接辞が存在していることと,深層において力を発揮していることを証明するものである.


 ・ ジャン=ジャック・ブランショ著,森本 英夫・大泉 昭夫 訳 『英語語源学』 〈文庫クセジュ〉 白水社,1999年. ( Blanchot, Jean-Jacques. L'Étymologie Anglaise. Paris: Presses Universitaires de France, 1995. )

Referrer (Inside): [2011-10-23-1]

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2010-11-09 Tue

#561. 接頭辞 post- (2) [prefix][productivity]

 昨日の記事[2010-11-08-1]で取り上げた接頭辞 post- について,生産性の高まった時期についての補足を.Marchand (183-84) によると,post- の生産性の爆発は19世紀以降だという.

3.43. 2 The only type that has really become productive in English word-formation is the type postmeridianus (which in Classical Latin is still weak, but grows in subsequent periods). Though we have coinages from the 17th century on, as postmeridian 1626, post-diluvian 1680 (after antediluvian 1646), post-connubial 1780, the vast majority date from the 19th century, as post-baptismal, -biblical, -classical, -graduate, -natal, -nuptial, -pagan, -prandial, -resurrectional, -Roman / -cretacean, -diluvial, -glacial, -tertiary / -Adamic, -Cartesian, -Darwinian, -Elizabethan, -Homeric, -Kantian, and other derivatives from proper names.

3.43.3 Developing at about the same time as the corresponding types pre- and ante-war years (second half of the 19th century), formed after the prototype anti-court party, we have the type post-war years with combination such as post-Pliocene period 1847, post-Easter time, post-election period, post-Reformation period, post-Restoration period, etc. The idea is always that of 'time following --'.



 この接頭辞が,時間的な前後関係を表現する機会の多い○○史という諸分野でとりわけ活躍していることがよく分かる.また,19世紀に単独で爆発したわけではなく,対義の pre- や ante- とともに生産力を高めてきたこともよく分かる.
 現在生産的に用いられる post- あるいは日本語「ポスト」の語感として,基体が表現している一時代に区切りがつき,その後に新時代が続くという含みがある.ある時代から次の時代への移り変わり,あるいは少なくとも人々が移り変わりを意識するときに post- の表現が現われるとすると,時代の変化を読み取るキーワードとしておもしろい接頭辞かもしれない.post- が表現の需要に答える形態として19世紀に顕著に現われてきたときに一気に爆発したというのも分かるような気がする.

 ・ Marchand, Hans. The Categories and Types of Present-Day English Word-Formation: A Synchronic-Diachronic Approach. 2nd. ed. München: Beck, 1969.

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2010-11-08 Mon

#560. 接頭辞 post- [prefix][productivity]

 国立新美術館ゴッホ展に行ってきた.Vincent Van Gogh ( 1853--90 ) は画家としても作品としても世界で高い人気を誇るが,とりわけ日本人には受けるという.19世紀末,印象主義 ( Impressionism ) の時代を受けて,Paul Cézanne, Georges Seurat, Paul Gauguin とともに後期印象主義 ( Post-Impressionism ) の旗手となったオランダの誇る大画家である.
 さて,「後期印象派」は英語の Post-Impressionist の訳語として大正期からみられたが,この訳語は適切ではない.訳語としてすでに定着してしまっているが,正確には「印象派以降」と訳すべきだったろう.
 接頭辞 post- は "after, behind" を意味するラテン語 post に由来し,本来は動詞に付加されたが,早くから動詞より派生した分詞,形容詞,名詞にも付加されるようになった( 反意 before を表わす接頭辞としては pre-, ante- がある).現在ではこの接頭辞の生産性は非常に高く,意のままに合成語を作ることができる.OEDpost- (prefix) のエントリーには多数の合成語が例示されており,ざっと数えたところ700語を超える.引用例は19世紀後半から20世紀のものが圧倒しており,この接頭辞の爆発的増加が現代英語期にかけての現象であることがうかがえる.
 今年出版の OALD8 に見出し語として挙げられていた13の合成語を示そう.

post-coital, post-industrial, post-mortem, post-natal, post-natal depression, post-operative, post-paid, post-partum, post-partum depression, post-production, post-sync, post-traumatic stress disorder, post-war


 「ポスト」は日本語でもすでに接頭辞として市民権を得ている.「ポスト小泉」「ポスト構造主義」「ポスト・サンデーサイレンス」「ポスト冷戦期」「ポスト山口百恵」(=聖子ちゃん)など.
 20世紀後半の語形成や接辞の流行については[2010-06-21-1]を参照.

Referrer (Inside): [2016-11-21-1] [2010-11-09-1]

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2009-09-09 Wed

#135. 中東・アジアの民族名称の接尾辞 -i [suffix][lexicology][analogy][productivity]

 英語の語形成では,民族名の基体からその人々や言語を表す名詞や形容詞を派生させるということは普通に行われてきた.American, English, Japanese など,事実上,国・地域の数だけ存在するといってもよい.その派生語尾には様々あり,民族名ごとにどれが付くかは決まっているが,一般に明確なルールはない.基体の音韻形態によって予想が付く場合も少なくないが,ルールとしてまとめることはできない.
 そんな民族名称接尾辞の一つに -i がある.この接尾辞は比較的最近のもので,中東やアジアの国・地域の名称に付加されて派生語を作るのが特徴である.OED では次のように定義が与えられている.

a termination used in the names of certain Near-Eastern and Eastern peoples, as Iraqi, Israeli, Pakistani.


他に例を挙げると,以下のようなものがある.

Adeni, Afghanistani, Bahraini, Bangladeshi, Bengali, Bhutani, Bihari, Iraqi, Israeli, Kashmiri, Kuwaiti, Pakistani, Punjabi, Yemeni, Zanzibari


 ところが,語彙論上この接尾辞の扱いは難しい.そもそも OED では語源が与えられていない.他の辞書によると -i はアラビア語などセム諸語の形容詞語尾とあり,基体とともに借用語として英語に入ってきたという.だが,すべての例がこのように -i 付きで借用されたわけではなく,例えば Kashmiri などは OED では,Kashmir という基体に対して英語が主体的に -i を付加した語であるとしている.とすると,英語は,すでに -i 語尾のついた形で借用された語から -i を改めて英語の接尾辞として切り出し,それを生産的に用いるようになったことになる.
 だが,本当に英語の接尾辞として生産的に活動を開始したと考えてよいのだろうか.そうではなく,いくつかある借用語の例をモデルとした,単純な類推 ( analogy ) が働いただけだと考えることはできないだろうか.別の言い方をすれば,-i は接尾辞として英語化したとは言い切れないのではないか.この問題が生じるのは,-i を含む語の例がいくらもなく,英語の接尾辞としてどれだけ生産性があるのかを計ることができないためである.
 今後 -i の派生語が増えてゆく過程を観察してゆけばこの問題は解決されるかもしれないが,そのような機会はそれほど期待できない.既存の国・地域にはすでに名称が与えられているので ( ex. Egyptian, Iranian, Lebanese ) ,新しい -i 語を見るには,新しい国・地域が生じなければならないが,近い将来,中東やアジアに絞るとしても,それほど多くの機会があるとは考えにくい.
 -i の英語接尾辞としての生産性は,潜在的にはあるかもしれない.しかし,それが試される機会がないということは,事実上,生産性がないのと同じことである.生産性がないのであれば,英語の語彙項目として立てる必要はなく,辞書にも載せる必要がない.
 以上の理由で,-i は英語語彙論上,扱いが難しい項目なのである.

 ・Bauer, Laurie. English Word-Formation. Cambridge: CUP, 1983. 253--55.

Referrer (Inside): [2009-09-10-1]

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2009-09-07 Mon

#133. 形容詞をつくる接尾辞 -ish の拡大の経路 [suffix][language_change][productivity]

 現代英語で -ish を語尾にもつ形容詞といえばいろいろと思い浮かべることができるだろう.English, foolish, boyish, selfish, feverish, yellowish, oldish 等々.これらの基体をみてみると,名詞か形容詞である.名詞に -ish が付加されると,その所属や性質を表す形容詞が派生され,形容詞に付加されると,「やや」とか「ぽい」の意味が添えられる.口語を含めれば,somewhat の意味を添えて,事実上すべての形容詞に付加されるといっても過言ではない.
 このように -ish 生産性の高い接尾辞だが,対応する古英語の -isc は,民族を表す名詞についてその形容詞形をつくるという機能に限定されていた.例えば,EnglishAngle 「アングル人」に -isc を付加し,それに伴う i-mutation という母音変化を経た Englisc という語にさかのぼる.British, Scottish, Welsh, Jewish なども同様の形成である.
 だが,民族名詞から形容詞を作るという単機能の接尾辞だった -ish が,あるときからその機能を拡大させ,民族に限らず人を表す名詞へ広く付加されるようになった.childish, foolish, womanish などである.これらの形容詞は,基体の名詞の指示対象のもつ性質にフォーカスを当て,付加的な意味を生じさせている点が興味深い.childish は単に「子供の」ではなく「子供っぽい」である.この辺りの意味変化の事情は,民族形容詞がたいてい元の民族名の単純な形容詞形であるばかりでなく,軽蔑的な意味合いなど感情的な connotation をもつことにも関連しているように思われる.
 -ish の付加によって「性質」の意味が生じるというパターンが定着すると,人を表す名詞だけでなく,一般の名詞にも応用されるようになってくる.bookishfeverish などである.また,色彩名詞について「〜味がかった」を意味する語も生まれたし ( bluish, reddish, etc. ) ,数詞について「〜時くらい」を表す表現などは,現代英語でも多用される ( ex. "I get up about sevenish in the morning" ) .
 ここまで来ると,勢力拡大の勢いは止まらない.色彩名詞などはそのまま形容詞にもなることが貢献しているのかもしれないが,名詞ではなく形容詞にも付加され,「やや」「〜ぽい」「〜がかった」などの意を表すようになった.brightish, coldish, narrowish 等々.さらには,前置詞に付加された uppish などの例もある.
 極めつけは,独立して文末に添えられ,文意に不確かさの mood を込める副詞としての用法が,口語で認められる.ex. "I've finished preparing the food. Ish. I just need to make the sauce."
 以上,-ish の守備範囲の拡大を追ってみたが,拡大経路はランダムではないことがわかる.

民族名詞→人名詞→一般名詞→名詞・形容詞の兼用語→形容詞→前置詞など形容詞的な意味をもちうる他の品詞→法の副詞


 意味と機能において,発展の経路に脈絡なり接点なりがあることがよく分かるだろう.一般に機能が拡大してゆく言語変化を扱う場合には,変化のある段階と次の段階を結ぶ脈絡・接点が何であるのかをこのように同定することが課題となる.

 ・Bradley, Henry. The Making of English. New York: Dover, 2006. 95. New York: Macmillan, 1904.

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2009-08-04 Tue

#99. 生産的な接頭辞 neo- [japanese_english][affix][etymology][compound][productivity][greek]

 先日,小学館の図鑑 NEOシリーズの第1期16巻を一式購入した.図鑑は見ているだけで飽きない.『魚』の巻ではウナギと穴子の見分け方を,『鳥』の巻ではフクロウの左右の耳の位置が異なることを知り,ウームとうならされた.子供の頃に眺めていた図鑑は小学館だったか学研だったか忘れたが,新しい世代に向けて改訂が進み,今「NEOシリーズ」が一式出そろった.昔に比べ,内容も格段に充実している.
 この「NEO(ネオ)」という接頭辞だが,日本語にも定着してきた観がある.『広辞苑』第六版でも「ネオ」の見出しがある.

(ギリシア語で「新しい」意の neos から) 「新しい」の意を表す接頭語.「―‐ロマンティシズム」


 「ネオ」を用いた複合語としては,広辞苑には次のような語がエントリーされている.「ネオ‐アンプレッショニスム」 néo-impressionnisme, 「ネオ‐クラシシズム」 neo-classicism, 「ネオ‐コロニアリズム」 neo-colonialism, 「ネオ‐コン」 neo-con(servatism), 「ネオ‐サルバルサン」 Neosalvarsan (ドイツ語), 「ネオジム」 Neodym (ドイツ語), 「ネオ‐ダーウィニズム」 neo-Darwinism, 「ネオ‐ダダ」 Neo-Dada, 「ネオテニー」 neoteny, 「ネオ‐トミズム」 neo-Thomism, 「ネオ‐ナチズム」 neo-Nazism, 「ネオピリナ」 Neopilina (ラテン語), 「ネオ‐ファシズム」 neo-fascism, 「ネオ‐ブッディズム」 Neo-Buddhism, 「ネオプレン」 Neoprene, 「ネオ‐マーカンティリズム」 neo-mercantilism, 「ネオマイシン」 neomycin, 「ネオ‐ラマルキズム」 neo-Lamarckism, 「ネオ‐レアリスモ」 neorealismo (イタリア語), 「ネオロジズム」 neologism, 「ネオン」 neon, 「ネオン‐サイン」 neon sign, 「ネオン‐テトラ」 neon tetra, 「ネオン‐ランプ」 neon lamp.よく知らない語が多い.
 借用元言語が英語だけではないことから,neo- という接頭辞はヨーロッパ諸語に広がっていることが推測される.そして,日本語でも「小学館の図鑑 NEOシリーズ」のように使われ出しており,接頭辞としての生産性はグローバル化しているのかもしれない.英語では OED の検索によれば neo で始まる英単語は326個ヒットした.
 neo- の起源は,ギリシャ語の néos "new" である.究極的には印欧祖語の *newo- "new, young" にさかのぼり,英語の new と同根である.neo- の英語での接頭辞としての歴史は浅く,19世紀後半から本格的に使われ出し,現代まで生産性を拡大させ続けている.
 対応するラテン語は novus "new" で,ここから派生して英語に借用された語も,以下の通りいくつかある.

innovate, innovation, nova, novel, novelty, novice, renovate, renovation

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