名詞 death と形容詞 dead の語末子音の関係が Verner's Law で説明される関係であることを最近になって知った.Verner's Law といえば,[2009-08-09-1], [2010-08-20-1]で紹介したように hundred や father の例が典型として言及されるが,身近にこのような対応する好例があったかと感心した.
名詞 death は古英語では dēaþ という形態だった.さらに遡って Gmc *dauþuz, IE *dhóutus が再建されている.IE から Gmc にかけては /dh/ > /d/ および /t/ > /þ/ の変化が想定されており,これは Grimm's Law に対応する ( see [2009-08-08-1], grimms_law ) .
一方,形容詞 dead は古英語では dēad という形態で,さらに古い再建形は Gmc *dauðaz, IE *dhoutós である( -to- は過去分詞語尾).IE から Gmc にかけての子音変化で,語頭子音については death の場合と同じように Grimm's Law に則っているが,第2子音は /t/ > /ð/ と変化している.ついで,それが古英語までに脱摩擦音化して /d/ となった.「アクセントが先行しない,有声音にはさまれた環境における /t/ は,グリムの法則の予想する /θ/ にはならず,それが有声化した音である /ð/,さらにはそれが脱摩擦音化した */d/ となる」のがヴェルネルの法則であるから,まさにそれが適用されたと想定される.
いずれの語においても,古英語の2重母音は中英語では長母音 /ɛː/ となったが,近代英語期までに d および th の前で短縮化をうけた ( cf. bread, breath ) .
名詞接尾辞 -th については,[2009-05-14-1], [2009-05-12-1]を参照.
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