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lexicology - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-22 17:50

2019-12-16 Mon

#3885. 『英語教育』の連載第10回「なぜ英語には類義語が多いのか」 [rensai][notice][lexicology][synonym][loan_word][borrowing][french][latin][lexical_stratification][sobokunagimon][link]

 12月13日に,『英語教育』(大修館書店)の1月号が発売されました.英語史連載「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」の第10回となる今回は「なぜ英語には類義語が多いのか」という話題を扱っています.

『英語教育』2020年1月号



 英語には「上がる」を意味する動詞として risemountascend などの類義語があります.「活発な」を表わす形容詞にも lively, vivacious, animated などがあります.名詞「人々」についても folk, people, population などが挙がります.これらは「英語語彙の3層構造」の典型例であり,英語がたどってきた言語接触の歴史の遺産というべきものです.本連載記事では,英語語彙に特徴的な豊かな類義語の存在が,1066年のノルマン征服と16世紀のルネサンスのたまものであり,さらに驚くことに,日本語にもちょうど似たような歴史的事情があることを指摘しています.
 「英語語彙の3層構造」については,本ブログでも関連する話題を多く取り上げてきました.以下をご覧ください.

 ・ 「#334. 英語語彙の三層構造」 ([2010-03-27-1])
 ・ 「#1296. 三層構造の例を追加」 ([2012-11-13-1])
 ・ 「#1960. 英語語彙のピラミッド構造」 ([2014-09-08-1])
 ・ 「#2072. 英語語彙の三層構造の是非」 ([2014-12-29-1])
 ・ 「#2279. 英語語彙の逆転二層構造」 ([2015-07-24-1])
 ・ 「#2643. 英語語彙の三層構造の神話?」 ([2016-07-22-1])
 ・ 「#387. trisociationtriset」 ([2010-05-19-1])
 ・ 「#2977. 連載第6回「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」」 ([2017-06-21-1])
 ・ 「#3374. 「示相語彙」」 ([2018-07-23-1])

 ・ 「#335. 日本語語彙の三層構造」 ([2010-03-28-1])
 ・ 「#3357. 日本語語彙の三層構造 (2)」 ([2018-07-06-1])
 ・ 「#1630. インク壺語,カタカナ語,チンプン漢語」 ([2013-10-13-1])
 ・ 「#1526. 英語と日本語の語彙史対照表」 ([2013-07-01-1])

 ・ 堀田 隆一 「なぜ英語には類義語が多いのか」『英語教育』2020年1月号,大修館書店,2019年12月13日.62--63頁.

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2019-11-25 Mon

#3864. retard, pulse の派生語にみる近代英語期の語彙問題 [word_formation][latin][french][emode][lexicology][borrowing][loan_word][derivation][word_family]

 昨日の記事「#3863. adapt の派生語にみる近代英語期の語彙問題」 ([2019-11-24-1]) に引き続き,Durkin (334) より retard および pulse に関する派生語の乱立状況をのぞいてみよう.
 retard (1490) と retardate (1613) の2語が,動詞としてライバル関係にある基体である.ここから派生した語群を年代順に挙げよう(ただし,時間的には逆転しているようにみえるケースもある).retardation (n.) (c.1437), retardance (n.) (1550), retarding (n.) (1585), retardment (n.) (1640), retardant (adj.) (1642), retarder (n.) (1644), retarding (adj.) (1645), retardative (adj.) (1705), retardure (n.) (1751), retardive (adj.) (1787), retardant (n.) (1824), retardatory (adj.) (1843), retardent (adj.) (1858), retardent (n.) (1858), retardency (n.) (1939), retardancy (n.) (1947) となる.
 同じように pulse (?a.1425) と pulsate (1674) を動詞の基体として,様々な派生語が生じてきた(やはり時間的には逆転しているようにみえるケースもある).pulsative (n.) (a.1398), pulsatile (adj.) (?a.1425), pulsation (n.) (?a.1425), pulsing (n.) (a.1525), pulsing (adj.) (1559), pulsive (adj.) (1600), pulsatory (adj.) (1613), pulsant (adj.) (1642), pulsating (adj.) (1742), pulsating (n.) (1829) である.
 このなかには直接の借用語もあるだろうし,英語内で形成された語もあるだろう.その両方であると解釈するのが妥当な語もあるだろう.混乱,類推,勘違い,浪費,余剰などあらゆるものが詰まった word family である.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-11-24 Sun

#3863. adapt の派生語にみる近代英語期の語彙問題 [word_formation][latin][french][emode][lexicology][borrowing][loan_word][derivation][word_family]

 初期近代英語期の語彙に関する問題の1つに,同根派生語の乱立がある.「#3157. 華麗なる splendid の同根類義語」 ([2017-12-18-1]),「#3258. 17世紀に作られた動詞派生名詞群の呈する問題 (1)」 ([2018-03-29-1]),「#3259. 17世紀に作られた動詞派生名詞群の呈する問題 (2)」 ([2018-03-30-1]) などで論じてきたが,今回は adapt という基体を出発点にした派生語の乱立をのぞいてみよう.以下,Durkin (332--33) に依拠する.
 OED によると,15世紀初期に adapted が現われるが,adapt 単体として出現するのは1531年である.これ自体,ラテン語 adaptāre とフランス語 adapter のいずれが借用されたものなのか,あるいはいずれの形に基づいているものなのか,必ずしも明確ではない.
 その後,両形を基体とした様々な派生語が次々に現われる.adaptation (n.) (1597), adapting (n.) (1610), adaption (n.) (1615), adaptate (v.) (1638), adaptness (n.) (1657), adapt (adj.) (1658), adaptability (n.) (1661), adaptable (adj.) (1692), adaptive (adj.) (1734), adaptment (n.) (1739), adapter (n.) (1753), adaptor (1764), adaptative (adj.) (1815), adaptiveness (n.) (1815), adaptableness (n.) (1833), adaptorial (adj.) (1838), adaptational (adj.) (1849), adaptivity (n.) (1840), adaptativeness (n.) (1841), adaptationism (n.) (1889), adaptationalism (n.) (1922) のごとくだ.
 いずれの語がいずれの言語からの借用なのかが不明確であるし,そもそも借用などではなく英語内部において造語された語である可能性も高い.後者の場合には「英製羅語」や「英製仏語」ということになる.歴史語彙論的に,このような語群を何と呼んだらよいのか悩むところである.
 この問題に関する Durkin (333) の解説を引いておく.

Very few of these words show direct borrowing from Latin or French (probably just adapt verb, adaptate, adaptation, and maybe adapt adjective), but a number of others are best explained as hybrid or analogous formations on Latin stems. The group as a whole illustrates the impact of the borrowing of a handful of key words in giving rise to an extended word family over time, including many full or partial synonyms. In some cases synonyms may have arisen accidentally, as speakers were simply ignorant of the existence of earlier formations; some others could result from misrecollection of earlier words. . . . However, such profligacy and redundancy is typical of such word families in English well into the Later Modern period, well beyond the period in which 'copy' was particularly in vogue in literary style.


 ここからキーワードを拾い出せば "hybrid or analogous formations", "ignorant", "misrecollection", "profligacy and redundancy" などとなろうか.
 今回の内容と関連する話題として,以下の記事も参照されたい.

 ・ 「#1493. 和製英語ならぬ英製羅語」 ([2013-05-29-1])
 ・ 「#1927. 英製仏語」 ([2014-08-06-1])
 ・ 「#3165. 英製羅語としての conspicuousexternal」 ([2017-12-26-1])
 ・ 「#3166. 英製希羅語としての科学用語」 ([2017-12-27-1])
 ・ 「#3179. 「新古典主義的複合語」か「英製羅語」か」 ([2018-01-09-1])
 ・ 「#3348. 初期近代英語期に借用系の接辞・基体が大幅に伸張した」 ([2018-06-27-1])
 ・ 「#3858. 「和製○語」も「英製△語」も言語として普通の現象」 ([2019-11-19-1])

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-11-19 Tue

#3858. 「和製○語」も「英製△語」も言語として普通の現象 [waseieigo][contact][borrowing][loan_word][japanese][lexicology]

 「和製英語」の話題について,本ブログで waseieigo の各記事で取り上げてきた.関連して「和製漢語」,さらに「英製羅語」や「英製仏語」についても話題を提供してきた.以下の記事を参照.

 ・ 「#1624. 和製英語の一覧」 ([2013-10-07-1])
 ・ 「#3793. 注意すべきカタカナ語・和製英語の一覧」 ([2019-09-15-1])
 ・ 「#1629. 和製漢語」 ([2013-10-12-1])
 ・ 「#1493. 和製英語ならぬ英製羅語」 ([2013-05-29-1])
 ・ 「#1927. 英製仏語」 ([2014-08-06-1])

 一般に現代の日本では「和製英語」はいくぶん胡散臭い響きをもって受け取られているが,日本語と英語の比較的長い言語接触の結果として,極めて自然な語形成上の現象だと私は考えている.同じ見方は,ずっと長い歴史のある「和製漢語」にも当てはまる.「和製漢語」のほとんどはすっかり日本語語彙に定着しているために違和感を感じさせないだけであり,語形成論や語彙論という観点からみれば「和製英語」も何ら異なるところがない.佐藤 (115--16) も,このことを示唆している.

漢語・外来語は,本来,借用語であるが,中には,借用した要素を日本語で組み合わせ,本来の漢語・外来語に似せて作ったものもある.これを,それぞれ,「和製漢語」「和製外来語」という.和製漢語は,古くから見られるが(「火事」「大根」「尾籠」「物騒」など),特に,江戸末期から明治にかけて西洋の近代的な事物や概念の訳語として多く作られた(「引力」「映画」「汽車」「酸素」「波動」「野球」など).「イメージ・アップ」「サラリー・マン」「ノー・カット」「ワンマン・バス」などの和製外来語は,本来の外来語が単語の要素として用いられているわけで,漢語の日本語化に共通するものがある.


 英語史の観点からいえば,上と同じことが「英製羅語」「英製仏語」にも当てはまる.ある言語との接触がそれなりに長く濃く続けば,「◇製☆語」という新語は自然と現われるものである.そして,他種の新語と異ならず,それらが導入された当初こそ,多少なりとも白い目で見られたとしても,一般的に用いられるようになれば自言語に同化していくし,流行らなければ廃れていくのである.他の語形成による新語のたどるパターンと比べて,特に異なるところはない.

 ・ 佐藤 武義(編著) 『展望 現代の日本語』 白帝社,1996年.

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2019-11-10 Sun

#3849. 「綴字語源学」 [etymology][lexicology][spelling][spelling_pronunciation_gap][writing][grammatology][orthography][standardisation][terminology]

 語源学 (etymology) が単語の語源を扱う分野であることは自明だが,その守備範囲を厳密に定めることは意外と難しい.『新英語学辞典』の etymology の項を覗いてみよう.

etymology 〔言〕(語源(学)) 語源とは,本来,語の形式〔語形・発音〕と意味の変化の歴史を可能な限りさかのぼることによって得られる文献上または文献以前の最古の語形・意味,すなわち語の「真の意味」 (etymon) を指すが,最近では etymon と同時に,語の意味・用法の発達の歴史,いわゆる語誌を含めて語源と考えることが多い.このように語の起源および派生関係を明らかにすることを目的とする語源学は,語の形態と意味を対象とする点において語彙論 (lexicology) の一部をなすが,また etymon を明らかにする過程において,特定言語の歴史的な研究 (historical linguistics) や比較言語学 (comparative linguistics) の方法と成果を用い,ときに民族学や歴史・考古学の成果をも援用する.従って語源学は,単語を中心とした言語発達史,言語文化史ということもできよう.


 上記によると,語源学とは語の起源と発達を明らかにする分野ということになるが,そもそも語とは形式と意味の関連づけ(シニフィアンとシニフィエの結合)によって成り立っているものであるから,結局その関連づけの起源と発達を追究することが語源学の目的ということになる.ここで語の「形式」というのは,主として発音のことが念頭に置かれているようだが,当然ながら歴史時代にあっては,文字で表記された綴字もここに含まれるだろう.しかし,上の引用では語の綴字(の起源と発達)について明示的には触れられておらず,あたかも語源学の埒外であるかのように誤解されかねない.語の綴字も語源学の重要な研究対象であることを明示的に主張するために,「綴字語源学」,"etymology of spelling", "orthographic etymology" のような用語があってもよい.
 もちろん多くの英語語源辞典や OED において,綴字語源学的な記述が与えられていることは確かである.しかし,英単語の綴字の起源と発達を記述することに特化した語源辞典はない.英語綴字語源学は非常に豊かで,独立し得る分野と思われるのだが.
 (英語)語源学全般について,以下の記事も参照.

 ・ 「#466. 語源学は技芸か科学か」 ([2010-08-06-1])
 ・ 「#727. 語源学の自律性」 ([2011-04-24-1])
 ・ 「#1791. 語源学は技芸が科学か (2)」 ([2014-03-23-1])
 ・ 「#598. 英語語源学の略史 (1)」 ([2010-12-16-1])
 ・ 「#599. 英語語源学の略史 (2)」 ([2010-12-17-1])
 ・ 「#636. 語源学の開拓者としての OED」 ([2011-01-23-1])
 ・ 「#1765. 日本で充実している英語語源学と Klein の英語語源辞典」 ([2014-02-25-1])

 ・ 大塚 高信,中島 文雄 監修 『新英語学辞典』 研究社,1987年.

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2019-11-08 Fri

#3847. etymon [terminology][etymology][borrowing][lexicology][word_formation][morphology]

 単語の語源に関する話題で用いられる標題の術語は,少し分かりにくいところがある.定義を求めて OED をはじめ各種の辞書に当たってみたが,最も有用なのは『ジーニアス英和大辞典』なのではないか.以下のようにある.

1 (派生語のもとである)語の原形,(派生語[複合語]の)形成要素.
2 (ある単語の)原形《現代英語の two に対する古英語の twā》.
3 外来語の原語.


 特に定まった訳語もなく「エティモン」(複数形は etyma 「エティマ」)と呼ぶほかないが,試みに訳を当てるなら「語源素」ほどだろうか.
 『ジーニアス英和大辞典』で3つの語義が挙げられているとおり,etymon は「語源」の複数の側面に光を当てており,それゆえに少々分かりにくくなっているが,実はとても便利な用語である.「○○という単語の語源は何?」という日常的な質問に対する様々な答え(方)に対応しているからだ.
 たとえば「poorly という単語の語源は何?」という質問について考えよう.これに対する1つの答え(方)は「中英語の poureliche に遡る」というものだ.現代よりも前の時代から祖先形が確認されれば,それを持ち出して,poorly の語源だといえばよい.poureliche は,"the Middle English etymon of poorly" ということになる.これは先の語義2に対応する.
 もう1つの答え(方)は,poorly は形容詞 poor と副詞形成接尾辞 -ly からなっていると説明するやり方である.これは一見すると語源の説明というよりは語形成の説明のように思われる.それでも語源に関する一般的な質問において求められている情報にはちがいない.実際,中英語の poureliche は当時の形容詞 poure と副詞形成接尾辞 -liche を組み合わせて造語したものであるから,これは厳密な意味においても語源の説明になっているのである.この場合,poor/poure と -ly/-liche は,各々が etymon ということになる(つまり "the two etyma of poorly").これは先の語義1に対応する.
 最後に,poorly の1つ目の etymon である poor/poure に注目して質問に答えると,「この単語はフランス語 povre を借用したもの」ということになる.借用語の場合には,借用元言語とその言語での形態(「#901. 借用の分類」 ([2011-10-15-1]) の用語に従えば "model")を示すのが典型的な答え方である.ここで説明しているのは "the French etymon of poor" ということになる.これは先の語義3に対応する.
 もちろん,フランス語 povre は,これ自体がさらに古い語源をもっており,ラテン語 pauper や,さらに印欧祖語 *pau- にまで遡る.これらの各々も,語義2の意味での etymon という言い方ができる.さらに,2つ目の etymon である接尾辞 -ly/-liche のほうに注目するならば,それはそれとしてゲルマン祖語に遡る豊かな歴史と etymon をもっている.究極の etymon に至るまで etymon の連鎖が続くというわけだ.
 etymon はこのように様々な単位を指して用いられるので少々分かりにくく,それゆえ訳語も定まらないのかもしれない.しかし,「○○という単語の語源は何?」という問いに対してどのように答えたとしても,その答えはたいてい etymon/etyma の指摘となっているはずである.このように etymon をとらえると,むしろ分かりやすくなるのではないか.

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2019-11-07 Thu

#3846. 黄道十二宮・星座名の語彙階層 [lexical_stratification][latin][lexicology][astrology][loan_word]

 『英語便利辞典』 (178--79) より,黄道十二宮と星座に関する一覧表を掲げよう(星座名については「#3707. 88星座」 ([2019-06-21-1]) も参照).

Signs of the Zodiac (黄道十二宮)
宮 (house)獣帯星座 (zodiacal constellations)太陽が通過する期間運勢・性格
spring signs (春の星座宮)
Aries (白羊宮)*the Ram (おひつじ座)3月21日?4月20日energetic, ambitious, generous, aggressive
Taurus (金牛宮)*the Bull (おうし座)4月21日?5月22日charming, witty, kind, restless
Gemini (双子宮)*the Twins (ふたご座)5月23日?6月21日strong, loyal, determined, quiet
summer signs (夏の星座宮)
Cancer (巨蟹宮)*the Crab (かに座)6月22日?7月22日sensitive, materialistic, careful, humorous
Leo (獅子宮)the Lion (しし座)7月23日?8月22日dignified, honest, vain
Virgo (処女宮)the Virgin (おとめ座)8月23日?9月22日perfectionist, dependable, gentle, efficient
autumn signs (秋の星座宮)
Libra (天秤宮)the Balance [*Scales] (てんびん座)9月23日?10月22日gracious, harmonious, logical, fair
Scorpio (天蠍宮)the Scorpion (さそり座)10月23日?11月21日courageous, intense, secretive, intelligent
Sagittarius (人馬宮)the Archer (いて座)11月22日?12月22日truthful, friendly, optimistic, adventurous
winter signs (冬の星座宮)
Capricorn (磨羯宮)*the Goat (やぎ座)12月23日?1月20日hardworking, kind, determined, disciplined
Aquarius (宝瓶宮)*the Water Bearer [Carrier] (みずがめ座)1月21日?2月19日loyal, wise, creative, aloof
Pisces (双魚宮)*the Fish (うお座)2月20日?3月20日kind, quiet, romantic, easygoing


Signs of the Zodiac

 この表から気づくのは,1列目の占星術・天文学上の名称と,2列目の星座を表わす動物・人などの名前とが,しばしば似ていないことだ.Leo/the Lion, Virgo/Virgin, Scorpio/Scorpion は明らかに類似しているが,それ以外はすべて似ていないようにみえる.前者は学問的な用語としてすべてラテン語(さらに遡ってギリシア語)由来だが,後者はすべてとは言わずとも多くが英語本来語の庶民的な単語である.表中で * を付しているものがそれである(Scales については,厳密には英語由来ではなく古ノルド語由来だが,少なくともゲルマン系の単語ではある).* の付されていない2列目の5つの名前については,確かにラテン語かフランス語に由来するものの,古英語期や中英語期など比較的早い段階に借用されており,早々に英語化していた語といってよい.
 全体としていえば,1列目はラテン語の威厳を背負った学問用語,2列目は(事実上)英語的な庶民性を帯びた動物・人などの一般名といってよい.これは有名な「動物と肉の語彙」の話題にも比較される.例の ox/beef, swine/pork, sheep/mutton, fowl/poultry, deer/venison, calf/veal の語彙階層の対立である.これについては,以下の記事を参照.

 ・ 「#331. 動物とその肉を表す英単語」 ([2010-03-24-1])
 ・ 「#332. 「動物とその肉を表す英単語」の神話」 ([2010-03-25-1])
 ・ 「#1583. swine vs pork の社会言語学的意義」 ([2013-08-27-1])
 ・ 「#1603. 「動物とその肉を表す英単語」を最初に指摘した人」 ([2013-09-16-1])
 ・ 「#1604. 「動物とその肉を表す英単語」を次に指摘した人たち」 ([2013-09-17-1])
 ・ 「#2352. 「動物とその肉を表す英単語」の神話 (2)」 ([2015-10-05-1])

 ・ 小学館外国語辞典編集部(編) 『英語便利辞典』 小学館,2006年.

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2019-10-22 Tue

#3830. 古英語のラテン借用語は現代まで地続きか否か [lexicology][latin][loan_word][oe][borrowing]

 古英語に借用されたラテン単語について,以下の記事で取り上げてきた.

 ・ 「#32. 古英語期に借用されたラテン語」 ([2009-05-30-1])
 ・ 「#1895. 古英語のラテン借用語の綴字と借用の類型論」 ([2014-07-05-1])
 ・ 「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1])
 ・ 「#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧」 ([2019-09-12-1])
 ・ 「#3829. 650年以後のラテン借用語の一覧」 ([2019-10-21-1])

 これらのラテン借用語に関する1つの問題は,そのうちの少なからぬ数の語が確かに現代英語にもみられるが,それは古英語期から生き残ってきたものなのか,あるいは一度廃れたものが後代に再借用されたものなのかということだ.いずれにせよラテン語源としては共通であるという言い方はできるかもしれないが,前者であれば古英語期の借用語として英語における使用の歴史が長いことになるし,後者であれば中英語期や近代英語期の比較的新しい借用語ということになる.英語は歴史を通じて常にラテン語と接触してきたという事情があり,しばしばいずれのケースかの判断は難しい.前代と後代とで語形や語義が異なっているなどの手がかりがあれば,再借用と認めることができるとはいえ,常にそのような手がかりが得られるわけでもない.
 とりわけ650年以後の古英語期のラテン借用語に関して,判断の難しいケースが目立つ.昨日の記事 ([2019-10-21-1]) で眺めたように,一般的なレジスターに入っていなかったとおぼしき専門語な語彙が少なくない.これらの多くは地続きではなく後代の再借用ではないかと疑われる.
 Durkin (131) は,650年以前のラテン借用語について,現代まで地続きで生き残ってきた可能性の高いものを次のように一覧している.

abbot; alms; anthem; ass; belt; bin; bishop; box; butter; candle; chalk; cheap; cheese; chervil; chest; cock; cockle (plant name); copper; coulter; cowl; cup; devil; dight; dish; fennel; fever; fork; fuller; inch; kiln; kipper; kirtle; kitchen; line; mallow; mass (= Eucharist); mat; (perhaps) mattock; mile; mill; minster; mint (for coinage); mint (plant name); -monger; monk; mortar; neep (and hence turnip); nun; pail; pall (noun); pan (if borrowed); pear; (probably) peel; pepper; pilch (noun); pile (= stake); pillow; pin; to pine; pipe; pit; pitch (dark substance); (perhaps) to pluck; (perhaps) plum; (perhaps) plume; poppy; post; (perhaps) pot; pound; priest; punt; purple; radish; relic; sack; Saturday; seine; shambles; shrine; shrive (and shrift, Shrove Tuesday); sickle; (perhaps) silk; sock; sponge; (perhaps) stop; street; strop (and hence strap); tile; toll; trivet; trout; tun; to turn; turtle-dove; wall; wine


 このリストに,やや可能性は低くなるが,地続きと考え得るものとして次を追加している (131) .

anchor; angel; antiphon; arch-; ark; beet and beetroot; capon; cat; crisp; drake (= dragon, not duck); fan; Latin; lave; master; mussel; (wine-)must; pea; pine (the tree); plant; to plant; port; provost; psalm; scuttle; table; also (where the re-borrowing would be from early Scandinavian) kettle


 続いて,650年以後のラテン借用語について,現代まで地続きであると根拠をもっていえる少数の語を次のように挙げている (132) .

aloe; cook; cope (= garment); noon; pole; pope; school; (if borrowed) fiddle; (in some of these cases re-borrowing in very early Middle English could also be possible)


 そして,根拠がやや弱くなるが,650年以後のラテン借用語として現代まで地続きの可能性のあるものは次の通り (132) .

altar; canker; cap; clerk; comet; creed; deacon; false; flank; hyssop; lily; martyr; myrrh; to offer; palm (tree); paradise; passion; peony; pigment; prior; purse; rose; sabbath; savine; sot; to spend; stole; verse; also (where the re-borrowing would be from early Scandinavian) cole


 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-10-21 Mon

#3829. 650年以後のラテン借用語の一覧 [lexicology][latin][loan_word][oe][borrowing]

 「#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧」 ([2019-09-12-1]) に続き,今回は反対の650年「以後」のラテン借用語を,Durkin (116--19) より列挙しよう.ただし,こちらは先の一覧と異なり網羅的ではない.あくまで一部を示すものなので注意.
 650年以前と以後の借用語の傾向について比較すると,後者は学問・宗教と結びつけられる語彙が目立つことがわかるだろう.「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1]) も参照.

[ Religion and the Church ]

 ・ acolitus 'acolyte' [L acoluthus, acolitus]
 ・ altare, alter 'altar' [L altare]
 ・ apostrata 'apostate' [L apostata]
 ・ apostol 'apostle' [L apostrolus]
 ・ canon 'canon, rule of the Church; canon, cleric living under a canonical rule' [L canon]
 ・ capitol 'chapter, section; chapter, assembly' [L capitulum]
 ・ clauster 'monastic cell, cloister, monastery' [L claustrum]
 ・ cleric, also '(earlier) clīroc 'clerk, clergyman' [L clericus]
 ・ crēda, crēdo 'creed' [L credo]
 ・ crisma 'holy oil, chrism; white cloth or garment of the newly baptized; chrismatory or pyx' [L chrisma]
 ・ crismal 'chrism cloth' [L chrismalis]
 ・ crūc 'cross' [L cruc-, crux]
 ・ culpa 'fault, sin' [L culpa]
 ・ decan 'person who supervises a group of (originally) ten monks or nuns, a dean' [L decanus]
 ・ dēmōn 'devil, demon' [L aemon]
 ・ dīacon 'deacon' [L diaconus]
 ・ discipul 'disciple; follower; pupil' [L discipulus]
 ・ eretic 'heretic' [L haereticus]
 ・ graþul 'gradual (antiphon sung between the Epistle and the Gospel at Mass)' [L graduale]
 ・ īdol 'idol' [L idolum]
 ・ lētanīa 'litany' [L letania]
 ・ martir, martyr 'martyr' [L martyr]
 ・ noctern 'nocturn, night office' [L nocturna]
 ・ nōn 'ninth hour (approximately 3 p.m.); office said at this time' [L nona (hora)]
 ・ organ 'canticle, song, melody; musical instrument, especially a wind instrument'
 ・ orgel- (in orgeldrēam 'instrumental music') [L organum]
 ・ pāpa 'pope' [L papa]
 ・ paradīs 'paradise, Garden of Eden, heaven' [L paradisus]
 ・ passion 'story of the Passion of Christ' [L passion-, passio]
 ・ prīm 'early morning office of the Church' [L prima]
 ・ prior 'superior office of a religious house or order, prior' [L prior]
 ・ sabat 'sabbath' [L sabbata]
 ・ sācerd 'priest; priestess' [L sacerdos]
 ・ salm, psalm, sealm 'psalm, sacred song' [L psalma]
 ・ saltere, sealtere 'psalter, also type of stringed instrument' [L psalterium]
 ・ sanct 'holy person, saint' [L sanctus]
 ・ stōl, stōle 'long outer garment; ecclesiastical vestment' [L stola]
 ・ tempel 'temple' [L templum]

[ Learning and scholarship ]

 ・ accent 'diacritic mark' [L accentus]
 ・ bærbære 'barbarous, foreign' [L barbarus]
 ・ biblioþēce, bibliþēca 'library' [L bibliotheca]
 ・ cālend 'first day of the month; (in poetry) month' [L calendae]
 ・ cærte, carte '(leaf or sheet of) vellum; piece of writing, document, charter' [L charta, carta]
 ・ centaur 'centaur' [L centaurus]
 ・ circul 'circle, cycle' [L circulums]
 ・ comēta 'comet' [L cometa]
 ・ coorte, coorta 'cohort' [L cohort-, cohors]
 ・ cranic 'chronicle' [L chronicon or chronica]
 ・ cristalla, cristallum 'crystal; ice' [L crystallum]
 ・ epistol, epistola, pistol 'letter' [L epistola, epistula]
 ・ fers, uers 'verse, line of poetry, passage, versicle' [L versus]
 ・ gīgant 'giant' [L gigant- gigas]
 ・ grād 'step; degree' [L gradus]
 ・ grammatic-cræft 'grammar' [L grammatica]
 ・ legie 'legion' [L legio]
 ・ meter 'metre' [L metrum]
 ・ nōt 'note, mark' [L nota]
 ・ nōtere 'scribe, writer' [L notarius]
 ・ part 'part (of speech)' [L part-, pars]
 ・ philosoph 'philosopher' [L philosophus]
 ・ punct 'quarter of an hour' [L punctum]
 ・ tītul 'title, superscription' [L titulus]
 ・ þēater 'theatre' [L theatrum]

[ Plants, fruit, and products of plants ]

 ・ alwe 'aloe' [L aloe]
 ・ balsam, balzam 'balsam, balm' [L balsamum]
 ・ berbēne 'vervain, verbena' [L verbena]
 ・ cāl, cāul, cāwel (or cawel) 'cabbage' [L caulis]
 ・ calcatrippe 'caltrops, or another thorny or spiky plant' [L calcatrippa]
 ・ ceder 'cedar' [L cedrus]
 ・ coliandre, coriandre 'coriander' [L coliandrum, coriandrum]
 ・ cucumer 'cucumber' [L cucumer-, cucumis]
 ・ cypressus 'cypress' [L cypressus]
 ・ fēferfuge (or feferfuge), fēferfugie (or feferfugie) 'feverfew' [L febrifugia, with substitution of Old English fēfer or fefer for the first element]
 ・ laur, lāwer 'laurel, bay, laver' [L laurus]
 ・ lilie 'lily' [L lilium]
 ・ mōr- (in mōrberie, mōrbēam) 'mulberry' [L morus]
 ・ murre 'myrrh' [L murra, murrha, mytrrha]
 ・ nard 'spikenard (name of a plant and of ointment made from it)' [L nardus]
 ・ palm, palma, pælm 'palm (tree)' [L palma]
 ・ peonie 'peony' [L paeonia]
 ・ peruince, perfince 'periwinkle' [L pervinca]
 ・ petersilie 'parsley' [L ptetrosilenum, petrosilium, petresilium]
 ・ polente (or perhaps polenta) 'parched corn' [L polenta]
 ・ pyretre 'pellitory' (a plant) [L pyrethrum]
 ・ rōse (or rose) 'rose' [L rosa]
 ・ rōsmarīm, rōsmarīnum 'rosemary' [L rosmarinum]
 ・ safine 'savine (type of plant)' [L sabina]
 ・ salfie, sealfie 'sage' [L salvia]
 ・ spīce, spīca 'aromatic herb, spice, spikenard' [L spica]
 ・ stōr 'incense, frankincense' [probably L storax]
 ・ sycomer 'sycamore' [L sycomorus]
 ・ ysope 'hyssop' [L hyssopus]

[ Animals ]

 ・ aspide 'asp, viper' [L aspid-, aspis]
 ・ basilisca 'basilisk' [L basiliscus]
 ・ camel, camell 'camel' [L camelus]
 ・ *delfīn 'dolphin' [L delfin]
 ・ fenix 'phoenic; (in one example) kind of tree' [L phoenix]
 ・ lēo 'lion' [L leo]
 ・ lopust 'locust' [L locusta]
 ・ loppestre, lopystre 'lobster' [probably L locusta]
 ・ pndher 'panther' [L panther]
 ・ pard 'panther, leopard' [L pardus]
 ・ pellican 'name of a bird of the wilderness' [L pellicanus]
 ・ tiger 'tiger' [L tigris]
 ・ ultur 'vulture' [L vultur]

[ Medicine ]

 ・ ātrum, atrum, attrum 'black vitriol; atrament; blackness' [L atramentum]
 ・ cancer 'ulcerous sore' [L cancer]
 ・ flanc 'flank' [L *flancum]
 ・ mamme 'teat' [L mamma]
 ・ pigment 'drug' [L pigmentum]
 ・ plaster 'plaster (medical dressing), plaster (building material)' [L plastrum, emplastrum]
 ・ sċrofell 'scrofula' [L scrofula]
 ・ tyriaca 'antidote to poison' [L tiriaca, theriaca]

[ Tools and implements ]

 ・ pāl 'stake, stave, post, pole; spade' [L palus]
 ・ (perhaps) paper '(probably) wick' [L papirus, papyrus]
 ・ pīc 'spike, pick, pike' [perhals L *pic-]
 ・ press 'press (specifically clothes-press)' [L pressa or French presse]

[ Building and construction; settlements ]

 ・ castel, cæstel 'village, small town; (in late manuscripts) castle' [L castellum]
 ・ foss 'ditch' [L fossa]
 ・ marman-, marmel- (in marmanstān, marmelstān 'marble' [L marmor]

[ Receptacles ]

 ・ purs, burse 'purse' [L bursa]

[ Money; units of measurement ]

 ・ cubit 'cubit, measure of length' [L cubitum]
 ・ mancus 'a money of account equivalent to thirty pence, a weight equivalent to thirty pence' [L mancus]
 ・ talente 'talent (as unit of weight or of money)' [L talentum]

[ Clothing ]

 ・ cæppe, also (in cantel-cāp 'cloak worn by a cantor') cāp 'cloak, hood, cap' (with uncertain relationship to cōp in the same meaning) [L cappa]
 ・ tuniċe, tuneċe 'undergarment, tunic, coat, toga' [L tunica]

[ Roles, ranks, and occupations (non-religious or not specifically religious) ]

 ・ centur, centurio, centurius 'centurion' [L centurion-, centurio]
 ・ cōc 'cook' [L *cocus, coquus]
 ・ consul 'consul' [L consul]
 ・ fiþela 'fiddler' (also fiþelere 'fiddler', fiþelestre '(female) fiddler') [probably L vitula]

[ Warfare ]

 ・ mīlite 'soldiers' [L milites, plural of miles]

[ Verbs ]

 ・ acordan 'to reconcile' [perhaps L accordare, although more likely a post-Conquest borrowing from French]
 ・ acūsan 'to accuse (someone)' [L accusare]
 ・ ġebrēfan 'to set down briefly in writing' [L breviare]
 ・ dēclīnian 'to decline or inflect' [L declinare]
 ・ offrian 'to offer, sacrifice' [L offerre]
 ・ *platian 'to make or beat into thin plates' (implied by platung 'metal plate' and ġeplatod and aplatod 'beaten into thin plates') [L plata, noun]
 ・ predician 'to preach' [L predicare, praedicare]
 ・ prōfian 'to assume to be, to take for' [L probare]
 ・ rabbian 'to rage' [L rabiare]
 ・ salletan 'to sing psalms, to play on the harp' [L psallere]
 ・ sċrūtnian, sċrūdnian 'to examine' [L scrutinare]
 ・ *spendan 'to spend' (recorded in Old English only in the derivatives spendung, aspendan, forspendan) [L expendere]
 ・ studdian 'to look after, be careful for' [L studere]
 ・ temprian 'to modify; to cure, heal; to control' [L temperare]
 ・ tonian 'to thunder' [L tonare]

[ Adjectives ]

 ・ fals 'false' [L falsus]
 ・ mechanisċ 'mechanical' [L mechanicus]

[ Miscellaneous ]

 ・ fals 'fraud, trickery' [L falsum]
 ・ rocc (only in stānrocc) 'cliff or crag' [L rocca]
 ・ sott 'fool', also adjective 'foolish' [L sottus]
 ・ tabele, tabul, tabule 'tablet, board; writing tablet; gaming table' [L tabula]

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

Referrer (Inside): [2024-07-21-1] [2019-10-22-1]

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2019-10-19 Sat

#3827. lexical set (2) [terminology][lexicology][vowel][sound_change][phonetics][dialectology][lexical_set]

 昨日の記事 ([2019-10-18-1]) に引き続き,lexical set という用語について.Swann et al. の用語辞典によると,次の通り.

lexical set A means of enabling comparisons of the vowels of different dialects without having to use any particular dialect as a norm. A lexical set is a group of words whose vowels are uniformly pronounced within a given dialect. Thus bath, brass, ask, dance, sample, calf form a lexical set whose vowel is uniformly [ɑː] in the south of England and uniformly [æː] in most US dialects of English. The phonetician J. C. Wells specified standard lexical sets, each having a keyword intended to be unmistakable, irrespective of the dialect in which it occurs (see Wells, 1982). The above set is thus referred to as 'the BATH vowel'. Wells specified twenty-four such keywords, since modified slightly by Foulkes and Docherty (1999) on the basis of their study of urban British dialects.


 第1文にあるように,lexical set という概念の強みは,ある方言を恣意的に取り上げて「基準方言」として据える必要がない点にある.問題の単語群をあくまで相対的にとらえ,客観的に方言間の比較を可能ならしめている点ですぐれた概念である.この用語のおかげで,「'BATH' を典型とする,あの母音を含む単語群」を容易に語れるようになった.

 ・ Swann, Joan, Ana Deumert, Theresa Lillis, and Rajend Mesthrie, eds. A Dictionary of Sociolinguistics. Tuscaloosa: U of Alabama P, 2004.

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2019-10-18 Fri

#3826. lexical set (1) [terminology][lexicology][vowel][sound_change][phonetics][dialectology][lexical_set]

 音声学,方言学,語彙論の分野における重要な概念・用語として,lexical set というものがある.「#3505. THOUGHT-NORTH-FORCE Merger」 ([2018-12-01-1]) などで触れてきたが,きちんと扱ってきたことはなかったので,ここで導入しよう.Trudgill の用語辞典より引用する.

lexical set A set of lexical items --- words --- which have something in common. In discussions of English accents, this 'something' will most usually be a vowel, or a vowel in a certain phonological context. We may therefore talk abut the English 'lexical set of bath', meaning words such as bath, path, pass, last, laugh, daft where an original short a occurs before a front voiceless fricative /f/, /θ/ or /s/. The point of talking about this lexical set, rather than a particular vowel, is that in different accents of English these words have different vowels: /æ/ in the north of England and most of North America, /aː/ in the south of England, Australia, New Zealand and South Africa.


 通時的には,ある音変化が,しばしばあるように,限定された音声環境においてのみ生じた場合や,あるいはその他の理由で特定の単語群のみに生じた場合に,それが生じた単語群を,その他のものと区別しつつまとめて呼びたい場合に便利である.共時的には,そのような音変化が生じた変種と生じていない変種を比較・対照する際に,注目すべき語群として取り上げるときに便利である.
 要するに,音変化の起こり方には語彙を通じて斑があるものだという事実を認めた上で,同じように振る舞った(あるいは振る舞っている)単語群を束ねたとき,その単語群の単位を "lexical set" と呼ぶわけだ.たいしたことを言っているわけではないのだが,そのような単位名がついただけで,何か実質的なものをとらえられたような気がするから不思議だ.用語というのはすこぶる便利である(たたし,ときに危ういものともなり得る).

 ・ Trudgill, Peter. A Glossary of Sociolinguistics. Oxford: Oxford University Press, 2003.

Referrer (Inside): [2019-10-19-1]

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2019-10-13 Sun

#3821. Old Saxon からの借用語 [loan_word][borrowing][lexicology][old_saxon][germanic][dutch][flemish][german][oe][germanic]

 英語史において,英語と同じ西ゲルマン語群の姉妹言語である Old Saxon の存在感は薄い.しかし,ゼロではない.昨日の記事「#3819. アルフレッド大王によるイングランドの学問衰退の嘆き」 ([2019-10-11-1]) で触れた,アルフレッド大王の教育改革に際して,John という名の古サクソン人が補佐を務めていたという記録がある.また,Genesis B として知られる古英詩には,9世紀の Old Saxon から翻訳された1節が含まれていることも知られている.
 Genesis B には,hearra (lord), sima (chain), landscipe (region), heodæg (today) を含む少数の Old Saxon に由来するとおぼしき語が確認される.いずれも後代に受け継がれなかったという点では,英語史上の意義は小さいといわざるを得ない.しかし,必要とあらばありとあらゆる単語を多言語から借りるという,後に発達する英語の雑食的な特徴が,古英語期にすでに現われていたということは銘記しておいてよい (Crystal 27) .
 一般に,英語史において「遺伝的」関係が近い西ゲルマン語群からの借用語は多くはない.遺伝的関係が近いのであれば,現実の言語接触も多かったはずではないかと想像されるが,そうでもない.たとえば,(高地)ドイツ語からの借用語は「#2164. 英語史であまり目立たないドイツ語からの借用」 ([2015-03-31-1]),「#2621. ドイツ語の英語への本格的貢献は19世紀から」 ([2016-06-30-1]) でみたように,全体としては目立たない.それなりの規模で英語に影響を与えたといえるのは,オランダ語やフラマン語くらいだろう.これらの低地諸語からの語彙的影響については,「#149. フラマン語と英語史」 ([2009-09-23-1]),「#2645. オランダ語から借用された馴染みのある英単語」 ([2016-07-24-1]),「#2646. オランダ借用語に関する統計」 ([2016-07-25-1]),「#3435. 英語史において低地諸語からの影響は過小評価されてきた」 ([2018-09-22-1]),「#3436. イングランドと低地帯との接触の歴史」 ([2018-09-23-1]) を参照されたい.

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. Cambridge: CUP, 2019.

Referrer (Inside): [2024-07-21-1]

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2019-10-10 Thu

#3818. 古英語における「自明の複合語」 [lexicology][word_formation][oe][kenning][compound][disguised_compound]

 「#3801. gan にみる古英語語彙の結合的性格」 ([2019-09-23-1]) では,主として古英語の派生語 (derivative) の広がりをみたが,古英語語彙の結合的性格は,複合語 (compound) によって一層よく示される.複合語とは,自立した2つ以上の単語をつなぎ合わせて新たに1つの単語を作ったもので,現代英語でも girlfriendconvenience store などでお馴染みのタイプの単語である.
 したがって,現代英語でも複合 (compounding) という語形成はおおいに活躍しているのだが,古英語ではその活躍の幅が広く,また天真爛漫,天衣無縫ですらある.複合語の各要素の意味を知っていれば,それらをつなぎ合わせた複合語自体の意味もおよそ容易に理解できることから,"self-explaining compounds" と呼ばれることもある.Crystal (22) より,古英語からの「自明の複合語」の例をいくつか挙げてみよう.

 ・ gōdspel < gōd 'good' + spel 'tidings': gospel
 ・ sunnandæg < sunnan 'sun's' + dæg 'day': Sunday
 ・ stæfcræft < stæf 'letters' + cræft 'crat': grammar
 ・ mynstermann < mynster 'monastery' + mann 'man': monk
 ・ frumweorc < frum 'beginning' + weorc 'work': creation
 ・ eorþcræft < eorþ 'earth' + cræft 'craft': geometry
 ・ rōdfæstnian < rōd 'cross' + fæstnian 'fasten': crucify
 ・ dægred < dæg 'day' + red 'red': dawn
 ・ lēohtfæt < lēoht 'light' + fæt 'vessel': lamp
 ・ tīdymbwlātend < tīd 'time' + ymb 'about' + wlātend 'gaze': astronomer


 もちろん「自明の」といっても程度の差はあり,最後の tīdymbwlātend などは本当に自明かどうかは疑わしい.また,形式的な変形により本来の自明度が失われた偽装複合語 (disguised_compound) なるものもあれば,あえて自明さを封じ込めることで文学的効果やナゾナゾ効果を醸し出す隠喩的複合語 (kenning) なるものもある(各々「#260. 偽装合成語」 ([2010-01-12-1]),「#472. kenning」 ([2010-08-12-1]) を参照).ただし,いずれも「自明の複合語」という基礎があった上での応用編ともいうべきものではあろう.「自明の複合語」は,古英語の語形成における際立った特徴の1つといってよい.

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. Cambridge: CUP, 2019.

Referrer (Inside): [2023-04-01-1]

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2019-10-09 Wed

#3817. hale の語根ネットワーク [etymology][oe][word_family][lexicology][old_norse][word_formation][affixation][derivation][cognate]

「#1783. whole の <w>」 ([2014-03-15-1]),「#3275. 乾杯! wassail」 ([2018-04-15-1]) の記事で触れたように,hail, hale, heal, holy, whole, wassail などは同一語根に遡る,互いに語源的に関連する語群である.古英語 hāl (完全な,健全な,健康な)からの派生関係をざっと見てみよう.
 まず,古英語 hāl の直接の子孫が,halewhole である.後者は,それ自体が基体となって wholesome, wholesale, wholly などが派生している.
 次に名詞接尾辞を付した古英語 hǣlþ からは,お馴染みの単語 health, healthy, healthful が現われている.
 動詞形 hǣlan からは heal, healer が派生した.また,行為者接尾辞を付した Hælend は「救済者(癒やす人)」を意味する重要な古英語単語だった.
 形容詞接尾辞を付加した hālig からは holy, holiness, holiday が派生している.hālig を元にして作られた動詞 hālgian からは,hallow, Halloween が現われている.
 一方,古英語 hāl に対応する古ノルド語の同根語 heill の影響化で,hail, hail from, hail fellow, wassail なども英語で用いられるようになった.
 古英語の語形成の豊かさと意味変化・変異の幅広さを味わうには,うってつけの単語群といえるだろう.以上,Crystal (22) より.

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. Cambridge: CUP, 2019.

Referrer (Inside): [2020-07-14-1] [2020-03-22-1]

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2019-10-01 Tue

#3809. "Rise up, rebel, revolt --- how the English language betrays class and power" [lexical_stratification][lexicology][register][sociolinguistics][diglossia]

 The Guardian にて,英語語彙の3層構造に関する標題の記事が挙げられていた(記事はこちら).  *
 英語語彙の3層構造については本ブログでも「#2977. 連載第6回「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」」 ([2017-06-21-1]) やそこから張ったリンク先の記事でいろいろと解説し議論してきたので,ここで詳しく繰り返すことはしない.概要のみ述べておくと,英語語彙は3段のピラミッドを構成しており,一般には最下層に英語本来語が,中間層にフランス借用語が,最上層にラテン借用語が収まっている.これは歴史的な言語接触の遺産であるとともに,中世から初期近代のイングランド社会において英語話者,フランス語話者,ラテン語話者の各々がいかなる社会階層に属していたかを映し出す鏡でもある.非常に単純化していえば,下層から上層に向かって,"those who work" or "workers", "those who fight" or "clerks", "those who pray" or "the powerful"という集団が所属していたということになる.
 標題の記事の内容は,この伝統的な階層区分について,EU離脱などを巡って分断している現代イギリス社会にも対応物があるという趣旨であり,それによると最下層が "workers" というのは変わらないが,中間層は "the middle class" に,最上層は "the clerkly class" に対応するという."the clerkly class" に含まれるのは,"academics, thinktankers, lawyers, writers, many artists, scientists, journalists and students, some comedians and politicians, even some entrepreneurs, as well as actual clerics --- anyone whose sense of self depends on an abstract frame of reference" ということらしい.
 記事の書き手は,中世の社会階層,現代の社会階層,英語の語彙階層の平行性(および,ときに非平行性)を指摘しながら現代イギリス社会を批評しており,議論の内容は言語学的というよりは,明らかに政治的である.しかし,語彙の3層構造について1つ重要なことを述べている."[French and Latin] seeped into what we call English and made themselves at home, giving the language its fantastical redundancy, creating something half-Germanic, half-Romance. Trilinguality was internalised." というくだりだ.もともとは社会的な現象である diglossia における上下関係が,いかにして意味論・語用論的な register の上下関係へと「言語内化」するのか,というのが私の長らくの問題意識なのだが,ここでさらっと "internalised" と述べられている現象の具体的なプロセスこそが知りたいのである.
 未解決の問題ではあるが,関連する話題を以下のような記事で扱ってきたので,ご参照を.

 ・ 「#1583. swine vs pork の社会言語学的意義」 ([2013-08-27-1])
 ・ 「#1491. diglossia と borrowing の関係」 ([2013-05-27-1])
 ・ 「#1489. Ferguson の diglossia 論文と中世イングランドの triglossia」 ([2013-05-25-1])
 ・ 「#1380. micro-sociolinguistics と macro-sociolinguistics」 ([2013-02-05-1])

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2019-09-23 Mon

#3801. gan にみる古英語語彙の結合的性格 [lexicology][word_formation][oe][lexical_stratification]

 現代英語の語彙に3層構造が認められることは,本ブログで「#2977. 連載第6回「なぜ英語語彙に3層構造があるのか? --- ルネサンス期のラテン語かぶれとインク壺語論争」」 ([2017-06-21-1]) を始め,そこに張ったリンク先の記事や,lexical_stratification の各記事で注目してきた.端的にいえば,歴史を通じて様々な言語と接触してきたなかで,語形的に関連しない類義語が借用され蓄積されてきたことに起因する.おかげで,ask -- question -- interrogate のように,語形としては結びつかない「分離的な」 (dissociated) 語彙の性格をもつことになった.
 一方,語彙の借用が僅かしかなかった古英語は,1つの基本的な語彙素をもとにして関連語を累々と作り出していく語形成が得意であり,結果として生じた語彙は「結合的な」 (associative) 性格を示した (Kastovsky 294) .この古英語語彙の結合的性格を例証するために,Kastovsky (294--96) に拠って,「行く」を意味する単純な語彙素 gan を取り上げ,そのおびただしい関連語を挙げてみよう.

(1) gan/gangan 'go, come, move, proceed, depart; happen'
(2) derivatives:
   (a) gang 'going, journey; track, footprint; passage, way; privy; steps, platform'; compounds: ciricgang 'churchgoing', earsgang 'excrement', faldgang 'going into the sheep-fold', feþegang 'foot journey', forlig-gang 'adultery', hingang 'a going hence, death', hlafgang 'a going to eat bread', huselgang 'partaking in the sacrament', mynstergang 'the entering on a monastic life', oxangang 'hide, eighth of a plough-land', sulhgang 'plough-gang = as much land as can properly be tilled by one plough in one day'; gangern, gangpytt, gangsetl, gangstol, gangtun, all 'privy'
   (b) genge n., sb. 'troops, company'
   (c) -genge f., sb. in nightgenge 'hyena, i.e. an animal that prowls at night'
   (d) -genga m., sb. in angenga 'a solitary, lone goer', æftergenga 'one who follows', hindergenga 'one that goes backwards, a crab', huselgenga 'one who goes to the Lord's supper', mangenga 'one practising evil', nihtgenga 'one who goes by night, goblin', rapgenga 'rope-dancer', sægenga 'sea-goer, mariner; ship'
   (e) genge adj. 'prevailing, going, effectual, agreeable'
   (f) -gengel sb. in æftergengel 'successor' (perhaps from æftergengan, wk. vb. 'to go')
(3) compounds with verbal first constituent, i.e. V + N (some of them might, however, also be treated as N + N, i.e. with gang as in (2a): gangdæg 'Rogation day, one of the three processional days before Ascension day', gangewifre 'spider, i.e. a weaver that goes', ganggeteld 'portable tent', ganghere 'army of foot-soldiers', gangwucu 'the week of Holy Thursday, Rogation week'
(4) gengan wk. vb. 'to go' < *gang-j-an; æftergengness 'succession, posterity'
(5) prefixations of gan/gangan;
   (a) agan 'go, go by, pass, pass into possession, occur, befall, come forth'
   (b) began/begangan 'go over, go to, visit; cultivate; surround; honour, worship' with derivatives begánga/bígang 'practice, exercise, worship, cultivation'; begánga/bígenga 'inhabitant, cultivator' and numerous compounds of both; begenge n. 'practice, worship', bigengere 'worker, worshipper'; bigengestre 'hand maiden, attendant, worshipper'; begangness 'calendae, celebration'
   (c) foregan 'go before, precede' with derivatives foregenga 'forerunner, predecessor', foregengel 'predecessor'
   (d) forgan 'pass over, abstain from'
   (e) forþgan 'to go forth' with forþgang 'progress, purging, privy'
   (f) ingan 'go in' with ingang 'entrance(-fee), ingression', ingenga 'visitor, intruder'
   (g) niþergan 'to descend' with niþergang 'descent'
   (h) ofgan 'to demand, extort; obtain; begin, start' with ofgangende 'derivative'
   (i) ofergan 'pass over, go across, overcome, overreach' with ofergenga 'traveller'
   (j) ongan 'to approach, enter into' with ongang 'entrance, assault'
   (k) oþgan 'go away, escape'
   (l) togan 'go to, go into; happen; separate, depart' with togang 'approach, attack'
   (m) þurhgan 'go through'
   (n) undergan 'undermine, undergo'
   (o) upgan 'go up; raise' with upgang 'rising, sunrise, ascent', upgange 'landing'
   (p) utgan 'go out' with utgang 'exit, departure; privy; excrement; anus'; ?utgenge 'exit'
   (q) wiþgan 'go against, oppose; pass away, disappear'
   (r) ymbgan 'go round, surround' with ymbgang 'circumference, circuit, going about'.


 これらの語彙素には,すべて語幹 gan (多少の変形が加えられているとしても)が含まれている.古英語語彙の結合的な性格の一端を垣間見ることができただろう.
 古英語の語形成の類型論的な位置づけについては,同じく Kastovsky に拠った「#3358. 印欧祖語は語根ベース,ゲルマン祖語は語幹ベース,古英語以降は語ベース (1)」 ([2018-07-07-1]),「#3359. 印欧祖語は語根ベース,ゲルマン祖語は語幹ベース,古英語以降は語ベース (2)」 ([2018-07-08-1]),「#3360. 印欧祖語は語根ベース,ゲルマン祖語は語幹ベース,古英語以降は語ベース (3)」 ([2018-07-09-1]) を参照.

 ・ Kastovsky, Dieter. "Semantics and Vocabulary." The Cambridge History of the English Language. Vol. 1. Ed. Richard M. Hogg. Cambridge: CUP, 1992. 290--408.

Referrer (Inside): [2019-10-10-1]

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2019-09-22 Sun

#3800. 語彙はその言語共同体の世界観を反映する [semantics][lexeme][lexicology][sapir-whorf_hypothesis][linguistic_relativism]

 語彙がその言語を用いる共同体の関心事を反映しているということは,サピア=ウォーフの仮説 (sapir-whorf_hypothesis) や Humboldt の「世界観」理論 (Weltanschauung) でも唱えられてきた通りであり,言語について広く関心をもたれる話題の1つである(「#1484. Sapir-Whorf hypothesis」 ([2013-05-20-1]) を参照) .
 言語学には語彙論 (lexicology) という分野があるが,この研究(とりわけ歴史的研究)が有意義なのは,1つには上記の前提があるからだ.Kastovsky (291) が,この辺りのことを上手に言い表わしている.

It is the basic function of lexemes to serve as labels for segments of extralinguistic reality that for some reason or another a speech community finds noteworthy. Therefore it is no surprise that even closely related languages will differ considerably as to the overall structure of their vocabulary, and the same holds for different historical stages of one and the same language. Looked at from this point of view, the vocabulary of a language is as much a reflection of deep-seated cultural, intellectual and emotional interests, perhaps even of the whole Weltbild of a speech community as the texts that have been produced by its members. The systematic study of the overall vocabulary of a language is thus an important contribution to the understanding of the culture and civilization of a speech community over and above the analysis of the texts in which this vocabulary is put to communicative use. This aspect is to a certain extent even more important in the case of dead languages such as Latin or the historical stages of a living language, where the textual basis is more or less limited.


 したがって,たとえば英語歴史語彙論は,過去1500年余にわたる英語話者共同体の関心事(いな,世界観)の変遷をたどろうとする壮大な試みということになる.そのような試みの1つの結実が,OED のような歴史的原則に基づいた大辞典ということになる.
 語彙が世界観を反映するという視点は言語相対論 (linguistic_relativism) の視点でもあるし,対照言語学的な関心を呼び覚ましてもくれる.そちらに関心のある向きは,「#1894. 英語の様々な「群れ」,日本語の様々な「雨」」 ([2014-07-04-1]),「#1868. 英語の様々な「群れ」」 ([2014-06-08-1]),「#2711. 文化と言語の関係に関するおもしろい例をいくつか」 ([2016-09-28-1]),「#3779. brother と兄・弟 --- 1対1とならない語の関係」 ([2019-09-01-1]) などを参照されたい.一方,単純な語彙比較とそれに基づいた文化論に対しては注意すべき点もある.「#364. The Great Eskimo Vocabulary Hoax」 ([2010-04-26-1]),「#1337. 「一単語文化論に要注意」」 ([2012-12-24-1]) にも目を通してもらいたい.

 ・ Kastovsky, Dieter. "Semantics and Vocabulary." The Cambridge History of the English Language. Vol. 1. Ed. Richard M. Hogg. Cambridge: CUP, 1992. 290--408.

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2019-09-15 Sun

#3793. 注意すべきカタカナ語・和製英語の一覧 [waseieigo][japanese][katakana][borrowing][semantic_change][word_formation][lexicology][false_friend]

 和製英語の話題については「#1624. 和製英語の一覧」 ([2013-10-07-1]) を始めとして (waseieigo) の各記事で取り上げてきた.英語史上も「英製羅語」「英製仏語」「英製希語」などが確認されており,「和製英語」は決して日本語のみのローカルな話しではない.ひとかたならぬ語彙借用の歴史をたどってきた言語には,しばしば見られる現象である.
 すでに先の記事で和製英語の一覧を示したが,小学館の『英語便利辞典』に別途「注意すべきカタカナ語・和製英語」 (pp. 450--53) と題する該当語一覧があったので,それを再現しておこう.日本語としてもやや古いもの(というよりも死語?)が少なくないような・・・.

アース(米)ground; (英)earth
アットマークat sign
アドバルインadvertising balloon
アニメanimation
アパート(米)apartment house; (英)block of flats
アフターサービスafter-sales service
アルミホイルtinfoil; aluminum foil
アンカーanchor(man/woman)
アンプamplifier
イージーオーダーsemi-tailored
イエスマンyes-man
イメチェン(イメージチェンジ)makeover
イラストillustration
インクエットプリンターink-jet printer
インターホンintercom
インフォマーシャル(情報コマーシャル)info(r)mercial
インフラinfrastructure
ウィンカー(米)turn signal; (英)indicator
ウーマンリブwomen's liberation
エアコンair conditioner
エキスextract
エネルギッシュなenergetic
エンゲージリングengagement ring
エンジンキーignition key
エンストengine stall; engine failure
エンタメentertainment
オーダーメードcustom-made; tailor-made; made to order
オートバイmotorcycle
オープンカーconvertible
オールラウンドの(網羅的)(米)all-around; (英)all-round
オキシフルhydrogen peroxide
送りバントsacrifice bunt
ガーター(米)suspender; (英)garter
ガードマン(security) guard
カーナビcar navigation system
(カー)レーサーracing driver
ガソリンスタンド(米)gas station; (英)petrol station
カタログ(米)catalog; (英)catalogue
ガッツボーズvictory pose
カメラマン(写真家)photographer
カメラマン(映画などの)cameraman
カンニングcheating
缶ビールcanned beer
キータッチkeyboarding
キーホルダーkey chain; key ring
キスマークhickey; kiss mark
ギフトカード(ギフト券)gift certificate
キャスター(総合司会者)newscaster
キャッチボールをするplay catch
キャッチホンtelephone with call waiting
クーラー(冷房装置)air conditioner
クラクション(car) horn
クリスマス (X'mas)Xmas; Christmas
ゲームセンター(米)(penny) arcade; amusement arcade
コインロッカーcoin-operated locker
ゴーカートgo-kart
コークハイcoke highball
ゴーグルgoggle
ゴーサインall-clear; green light
ゴーストップtraffic signal
コーヒーsたんどcoffee bar
コーポラスcondominium
ゴールデンアワーprime time
コールドマーマcold wave
ゴムバンドrubber band; (英)elastic band
ゴロ(野球)grounder
コンセント(米)(electrical) outlet; (英)(wall) socket
コンパparty; get-together
コンパニオン(案内係)escort; guide
コンビcombination
コンビニconvenience store
サイダーsoda
サイドビジネス(アルバイト)sideline
サイドミラー(米)side(view) mirror; (英)wing mirror, door mirror
サイン(署名)signature
サイン(有名人などの)autograph
サントラsound track
シーズンオフoff season
ジーバンjeans
ジェットコースターroller coaster
シスアドsystem administrator
システムキッチンbuilt-in kitchen unit
シャー(プ)ペン(米)mechanical pencil; (英)propelling pencil
ジャージjersey
シュークリームcream puff
シルバー(お年寄り)senior citizen
シルバーシートpriority seat
シンパ(支持者)sympathizer
スカッシュsquash
スキンシップphysical contact
スタンドプレーgrandstand play
ステッキ(walking) stick
ステン(レス)stainless steel
ストーブheater
スパイクタイヤ(米)studded tire; (英)studded tyre
スピードダウンslowdown
スピードメーターspeedometer
スペルミスspelling error; misspelling
スマートなstylish; dashing
スリッパmules; scuffs
セーフティーバントdrag bunt
セクハラsexual harassment
セレブceleb(rity)
セロテープadhesive tape; Scotch tape
ソフト(コンピュータ)software
タイプミスtypo; typographical error
タイムリミットdeadline
タイムレコーダーtime clock
タキシード(米)dinner suit; (英)tuxedo
タレントpersonality; star
ダンプカー(米)dump truck; (英)dumper truck
?????c?????fastener; 鐚?膠鰹??zipper; 鐚???縁??zip (fastener)
チョーク(車の)choke
テーブルスピーチafter-dinner speech
テールランプ(米)tail light; (英)tail lamp
デジカメdigital camera
デモ(示威運動)demonstration
テレホンサービスtelephone information service
電子レンジmicrowave oven
ドアボーイdoorman
ドクターヘリmedi-copter
ドットプリンターdot matrix printer
トップバッターlead-off batter; lead-off man
トランク(車の)(米)trunk; (英)boot
トランプ(playing) card
???????????鐚?膠鰹??sweat pants; 鐚???縁??track-suit trousers
ナイターnight game
ナンバープレート(米)license plate; (英)number plate
ニュースキャスターanchor(man/woman)
ニューフェースnewcomer
ネームBリューrecognition value
??????negative
ノースリーブ(の)sleeveless
ノート(帳面)notebook
ノルマquota
ノンステップバスkneeling bus
バイキングbuffet; buffet-style dinner; smorgasbord
バイクmotorcycle; motorbike
ハイティーンlate teens
?????ゃ?????high tech(nology)
ハイビジョンhigh-definition TV system
ハウスマヌカンsales clerk
バスローブ(米)bathrobe; (英)dressing gown
パソコンpersonal computer
バックアップ(支援)backing; support
バックネットbackstop
バックマージンkickback
バックミュージックbackground music
バックミラーrear-view mirror
バックライト(米)backup light; (英)reversing light
バッターボックスbatter's box
ハッピーエンドhappy ending
パネラーpanelist
バリカンhair clippers
ハローワーク(米)employment agency; employment bureau
パンク(米)flat tire; (英)puncture
ハンストhunger strike
パンスト(米)pantyhose; (英)tights
ハンドマイク(米)bullhorn; (英)loudhailer
ハンドル(車の)steering wheel
?????若?????green pepper
ピッチ(速度)pace
ビニール袋plastic bag
??????flyer; flier
ビル(建物)building
フォアボールbase on balls
プッシュホンpush-button phone; touch-tone phone
ブラインドタッチtouch typing
プラモデルplastic model
ブランド物brand-name goods
フリーサイズone size fits all
フリーターjob-hopping part-timer worker
フリーダイヤル(米)toll-free; (英)freephone; freefone
プリンpudding
プレイガイドticket agency
ブレーキランプbrake light
ブレスレットbracelet
プレゼンpresentation
フレックスタイムflexible working hours; flextime; flexible time
???????????prefabricated house
ブロックサイン(野球)block signal
プロレスprofessional wrestling
フロント(米)front desk; (英)reception
フロントガラス(米)windsheeld; (英)windscreen
ペイオフdeposit insurance cap; deposit payoff
ベースアップ(米)(pay) raise; (英)(pay) rise
ペーパーテストwritten test
ペーパードライバーdriver in name only; driver on paper only
ベッドシーンbedroom scene
ベッドタウンbedroom suburb
ペットボトルplastic bottle; PET(ピーイーティー)bottle
ヘッドライト(米)headlight; (英)headlamp
ベテランexpert
ベビーカー(米)stroller; (英)pushchair
ベビーベッドbaby crib
ヘルスメーターbathroom scales
ペンションresort inn
ホイールキャップhub cap
ボーイ(ホテルなどの)page; bellboy; bellhop
ホーム(駅の)platform
ホームドクターfamily doctor
ホームヘルパー(米)caregiver; (英)carer
ボールペン(米)ball-point pen; (英)biro
??????positive
ホッチキスstapler
ボディーチェックbody search
ホテルマンhotel employee
ボンネット(米)hood; (英)bonnet
マークシートcomputerized answer sheet
マイカーowned car; private car
マグカップmug
マザコンmother complex
マジックインキmarker, marking pen, felt-tip (pen)
マスコミmass communication(s), (mass) media,
マルチ商法(ねずみ講式)pyramid selling
マンションcondominium
ミシンsewing machine
ミスタイプtype; typographical error
ミルクティーtea with milk
メーター(機器)(米)(英)とも meter
メートル(距離)(米)meter; (英)metre
メロドラマsoap opera
モーニングコールwake-up call
モーニングサービスbreakfast special
ユビキタスubiquitous
ラケット(ピンポンの)(米)paddle; (英)bat
ラフな(スタイル)casual; informal
リハビリrehabilitation
リビングキッチンliving room with a kitchenette
リフォームする(家など)remodel
リムジンバスlimousine
リモコンremote control
レトルトretort
レモンティーtea with lemon
ローティーンearly teens
ワープロword processor
ワイシャツ(dress) shirt
ワイドショーvariety program
ワンボックスカーvan
ワンマンautocrat
ワンルームマンションstudio apartment; one-room apartment


 ・ 小学館外国語辞典編集部(編) 『英語便利辞典』 小学館,2006年.

Referrer (Inside): [2019-11-19-1]

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2019-09-12 Thu

#3790. 650年以前のラテン借用語の一覧 [lexicology][latin][loan_word][oe][borrowing]

 過去3日間の記事(「#3787. 650年辺りを境とする,その前後のラテン借用語の特質」 ([2019-09-09-1]),「#3788. 古英語期以前のラテン借用語の意外な日常性」 ([2019-09-10-1]),「#3789. 古英語語彙におけるラテン借用語比率は1.75%」 ([2019-09-11-1]))でも触れたように,650年辺りより前にラテン語から英語へ流入した単語には,意外と日常的なものが多く含まれている.
 これを確認するには,具体的な単語一覧を眺めてみるのが一番だ.Durkin (107--16) を参照して,以下に,意味の分野ごとに,各々の単語について古英語の借用形,現代の対応語(あるいは語義),ラテン語形を示す.先頭に "?" を付している語は,早期の借用語であると強い根拠をもっては認められない語である.

[ Religion and the Church ]

 ・ abbod, abbot 'abbot' [L abbat-, abbas]
 ・ abbodesse 'abbess' [L abbatissa]
 ・ antefn, also (later) antifon, antyfon 'antiphon (type of liturgical chant)' [L antifona, antefona]
 ・ ælmesse, ælmes 'alms, charity' [L *alimosina, variant of elemosina]
 ・ bisċeop 'bishop' [probably L episcopus]
 ・ cristen 'Christian' [L christianus]
 ・ dēofol, dīofol 'devil' [perhaps Latin diabulus]
 ・ draca 'dragon, monstrous beast; the devil' [L draco]
 ・ engel, angel 'angel' [probably L angelus]
 ・ mæsse, messe 'mass' (the religious ceremony) [L missa]
 ・ munuc 'monk' [L monachus]
 ・ mynster 'monastery; importan church' [L monasterium]
 ・ nunne 'nun' [L nonna]
 ・ prēost 'priest' [probably L *prebester, presbyter]
 ・ senoð, seonoð, sinoð, sionoð 'council, synod, assembly' [L synodus]
 ・ ? ancra, ancor 'anchorite' [L anachoreta, perhaps via Old Irish anchara]
 ・ ? ærċe-, erċe-, arce- 'arch-' (in titles) [L archi-]
 ・ ? relic- (in relicgang (probably) 'bearing of relics in a procession') [clipping of L reliquiae or OE reliquias]
 ・ ? reliquias 'relics' [L reliquiae]

[ Learning and scholarship ]

 ・ Læden 'Latin; any foreign language', also (later) lātin [L Latina]
 ・ sċolu, also (later) scōl 'troop, band; school' [L schola]
 ・ ? græf 'stylus' [L graphium]
 ・ ? stǣr (or stær) 'history' [probably ultimately L historia, perhaps via Celtic]
 ・ ? traht 'text, passage, commentary' [L tractus]
 ・ ? trahtað 'commentary' [L tractatus]

[ Plants, fruit, and products of plants ]

 ・ bēte 'beet, beetroot' [L beta]
 ・ billere denoting several water plants [L berula]
 ・ box 'box tree', later also 'box, receptable' [L buxus]
 ・ celendre, cellendre 'coriander' [L coliandrum]
 ・ ċerfille, ċerfelle 'chervil' [L caerefolium]
 ・ *ċiċeling 'chickpea' [L cicer]
 ・ ċīpe 'onion' [L cepe]
 ・ ċiris-(bēam) 'cherry tree' [L *ceresia, cerasium]
 ・ ċisten-, ċistel-, ċist-(b&#275;am) 'chestnut tree' [L castinea or castanea]
 ・ coccel 'corn cockle, or other grain-field weed' [L *cocculus < coccum]
 ・ codd-(æppel) 'quince' [L cydonium, cotoneum, or cotonium]
 ・ consolde '(perhaps) daisy or comfrey' [L consolida]
 ・ corn-(trēo) 'cornel tree' [L cornus]
 ・ cost 'costmary' [L constum]
 ・ cymen 'cumin' [L cuminum]
 ・ cyrfet 'gourd' [L cucurbita]
 ・ earfe plant name, probably vetch [L ervum]
 ・ elehtre '(probably) lupin' [L electrum]
 ・ eofole 'dwarf elder, danewor' [L ebulus]
 ・ eolone, elene 'elecampane' (a plant) [L inula, helenium]
 ・ finol, finule, finugle 'fennel' [L fenuculum]
 ・ glædene a plant name (usually for a type of iris) [L gladiola]
 ・ humele 'hop plant' [L humulus]
 ・ lāser 'weed, tare' [L laser]
 ・ leahtric, leahtroc, also (later) lactuce 'lettuce' [L lactuca]
 ・ *lent 'lentil' [L lent-, lens]
 ・ lufestiċe 'lovage' [L luvesticum]
 ・ mealwe 'mallow' [L malva]
 ・ *mīl 'millet' [L milium]
 ・ minte, minta 'mint' [L mentha]
 ・ næp 'turnip' [L napus]
 ・ nefte 'catmint' [L nepeta]
 ・ oser or ōser 'osier' [L osaria]
 ・ persic 'peach' [L persicum]
 ・ peru 'pear' [L pirum, pera]
 ・ piċ 'pitch' (the resinous substance) [L pic-, pix]
 ・ pīn 'pine' [L pinus]
 ・ pipeneale 'pimpernel' [L pipinella]
 ・ pipor 'pepper' [L piper]
 ・ pieir 'pear tree' [L *pirea]
 ・ pise, *peose 'pea' [L pisum]
 ・ plūme 'plum; plum tree' and plȳme 'plum; plum tree' [both perhaps L pruna]
 ・ pollegie 'penny-royal' [L pulegium]
 ・ popiġ, papiġ 'poppy' [L papaver]
 ・ porr 'leek' [L porrum]
 ・ rǣdiċ 'radish' [L radic-, radix]
 ・ rūde 'rue' [L ruta]
 ・ syrfe 'service tree' [L *sorbea, sorbus]
 ・ ynne- (in ynnelēac) 'onion' [L unio]
 ・ ? æbs 'fir tree' [L abies]
 ・ ? croh, crog 'saffron; type of dye; saffron colour' [L crocus]
 ・ ? fīċ 'fig tree, fig' [L ficus]
 ・ ? plante 'young plant' [L planta]
 ・ ? sæðerie, satureġe 'savory (plant name)' [L satureia]
 ・ ? sæppe 'spruce fir' [L sappinus]
 ・ ? sōlsēċe 'heliotrope' [L solsequium, with substitution of a derivative of OE sēċan 'to seek' for the second element]

[ Animals ]

 ・ assa 'ass' [L asinum perhaps via Celtic]
 ・ capun 'capon' [probably L capon-, capo]
 ・ cat, catte 'cat' [L cattus]
 ・ cocc 'cock, rooster' [L coccus]
 ・ *cocc (in sǣcocc) 'cockle' [perhaps L *coccum]
 ・ culfre 'dove' [perhals L columbra, columbula]
 ・ cypera 'salmon at the time of spawning' [L cyprinus]
 ・ elpend, ylpend 'elephant', also shortend to ylp [L elephant-, elephans]
 ・ eosol, esol 'ass' [L asellus]
 ・ lempedu, also (later) lamprede 'lamprey' [L lampreda]
 ・ mūl 'mule' [L mulus]
 ・ muscelle 'mussel' [L musculus]
 ・ olfend 'camel' [probably L elephant-, elephans, with the change in meaning arising from semantic confusion]
 ・ ostre 'oyster' [L ostrea]
 ・ pēa 'peafowl' [L pavon-, pavo]
 ・ *pine- (in *pinewincle, as suggested emendation of winewincle) 'wincle' [perhals L pina]
 ・ rēnġe 'spider' [L aranea]
 ・ strȳta 'ostrich' [L struthio]
 ・ trūht 'trout' [L tructa]
 ・ turtle, turtur 'turtle dove' [L turtur]

[ Food and drink (see also plants and animals) ]

 ・ ċȳse, ċēse 'cheese' [L caseus]
 ・ foca 'cake baked on the ashes of the hearth' (only attested with reference to Biblical contexts or antiquity) [L focus]
 ・ must 'wine must, new wine' [L mustum]
 ・ seim 'lard, fat' (only attested in figurative use) [L *sagimen, sagina]
 ・ senap, senep 'mustard' [L sinapis]
 ・ wīn 'wine' [L vinum]

[ Medicine ]

 ・ butere 'butter' [L butyrum, buturum]
 ・ ċeren 'wine reduced by boiling for extra sweetness' [L carenum]
 ・ eċed 'vinegar' [L acetum]
 ・ ele 'oil' [L oleum]
 ・ fēfer or fefer 'fever' [L febris]
 ・ flȳtme 'lancet' [L fletoma]

[ Transport; riding and horse gear ]

 ・ ancor, ancra 'anchor (also in figurative use)' [L ancora]
 ・ cæfester 'muzzle, halter, bit' [L capistrum, perhaps via Celtic]
 ・ ċæfl 'muzzle, halter, bit' [L capulus]
 ・ ċearricge (meaning very uncertain, perhaps 'carriage') [perhaps L carruca]
 ・ punt 'punt' [L ponton-, ponto]
 ・ sēam 'burden; harness; service which consisted in supplying beasts of burden' [L sauma, sagma]
 ・ stǣt 'road; paved road, street' [L strata]

[ Tools and implements ]

 ・ cucler 'spoon' [L coclear]
 ・ culter 'coulter; (once) dagger' [L culter]
 ・ fæċele 'torch' [L facula]
 ・ fann 'winnowing fan' [L vannus]
 ・ forc, forca 'fork' [L furca]
 ・ *fossere or fostere 'spade' [L fossorium]
 ・ inseġel, insiġle 'seal; signet' [L sigillum]
 ・ līne 'cable, rope, line, cord; series, row, rule, direction' [probably L linea]
 ・ mattuc, meottuc, mettoc 'mattock' [perhaps L *matteuca]
 ・ mortere 'mortar' [L mortarium]
 ・ panne 'pan' [perhaps L panna]
 ・ pæġel 'wine vessel; liquid measure' [L pagella]
 ・ pihten part of a loom [L pecten]
 ・ pīl 'pointed object; dart, shaft, arrow; spike, nail; stake' [L pilum]
 ・ pīle 'mortar' [L pila]
 ・ pinn 'pin, peg, pointer; pen' [probably L penna]
 ・ pīpe 'tube, pipe; pipe (= wind instrument); small stream' [L pipa]
 ・ pundur 'counterpoise; plumb line' [L ponder-, pondus]
 ・ seġne 'fishing net' [L sagena]
 ・ sicol 'sickle' [L *sicula, secul < secare 'to cut']
 ・ spynġe, also (later) sponge 'sponge' [L spongia, spongea]
 ・ timple instrument used in weaving [L templa]
 ・ turl 'ladele' [L trulla]
 ・ ? stropp 'strap' [L stroppus or struppus]
 ・ ? trefet 'trivet, tripod' [L tripes]

[ Warware and weapons ]

 ・ camp 'battle; war; field' [L campus]
 ・ cocer 'quiver' [perhaps L cucurum]

[ Buildings and parts of buildings; construction; towns and settlements ]

 ・ ċeafor-(tūn), cafer-(tūn) 'hall, court' [L capreus]
 ・ ċealc, calc 'chalk, plaster' [L calc-, calx]
 ・ ċeaster, ċæster 'fortification; city, town (especially one with a wall)' [L castra]
 ・ ċipp 'rod, stick, beam (especially in various specific contexts)' [probably L cippus]
 ・ clifa, cleofa, cliofa 'chamber, cell, den, lair' [perhaps L clibanus 'oven']
 ・ clūse, clause 'lock; confine, enclosure; fortified pass' [L clausa]
 ・ clūstor 'lock, bolt, bar, prison' [L claustrum]
 ・ cruft 'crypt, cave' [L crupta]
 ・ cyċene 'kitchen' [L coquina]
 ・ cylen 'kiln, oven' [L culina]
 ・ *cylene 'town' (only as place-name element) [L colonia]
 ・ mūr 'wall' [L murus]
 ・ mylen 'mill' [L molina]
 ・ pearroc 'enclosure; fence that forms an enclosure' [perhaps L parricus]
 ・ pīsle or pisle 'warm room' [L pensilis]
 ・ plætse, plæce, plæse 'open place in a town, square, street' [L platea]
 ・ port 'town with a harbour; harbour, port; town (especially one with a wall or a market)' [L portus]
 ・ post 'post; doorpost' [L postis]
 ・ pytt 'hole in the ground; excavated hole; pit; grave; hell' [pherlaps L puteus]
 ・ sċindel 'roof shingle' [L scindula]
 ・ solor 'upper room; hall, dwelling; raised platform' [L solarium]
 ・ tīġle, tīgele, tigele 'earthen vessel; potshert; tile, brick' [L tegula]
 ・ torr 'tower' [L turris]
 ・ weall 'wall, rampart, earthwork' [L vallum]
 ・ wīċ 'dwelling; village; camp, fortress' [L visum]
 ・ ? port 'gate, gateway' [L porta]
 ・ ? prtiċ 'porch, portico, vestibule, chapel' [L poorticus]

[ Containers, vessels, and receptacles ]

 ・ amber 'vessel, dry or liquid measure' [L amphora, ampora]
 ・ binn, binne 'basket, bin; manger' [L benna]
 ・ buteruc 'bottle' [perhaps from a derivative of L buttis]
 ・ byden 'vessel, container; cask, tub; tub-shaped geographical feature' [probably L *butina]
 ・ bytt 'bottle, flask, cask, wine skin' [L *buttia]
 ・ ċelċ, cælc, calic 'drinking vessel, cup' [L calic-, calix]
 ・ ċist, ċest 'chest, box, coffer; reliquary; coffin' [L cista]
 ・ cuppe 'cup', also copp 'cup, beaker; gloss for Latin spongia sponge' [L cuppa]
 ・ cȳf 'large jar, vessel, or tub' [L cupia < cupa]
 ・ cȳfl 'tub, bucket' [L cupellus]
 ・ cyll, cylle 'leather bottle, leather bag; ladele; oil lamp' [L culleus]
 ・ disċ 'dish, bowl, plate' [L discus]
 ・ earc, earce, earca, also arc, arce, arca 'ark (especially Noah's ark or the ark of the covenent), chest, coffer' [L arca]
 ・ gabote, gafote kind of dish or platter [L gabata]
 ・ ġellet 'jug, bowl, or basin' [L galleta]
 ・ læfel, lebil 'spoon, cup, bowl, vessel' [L labellum]
 ・ orc 'pitcher, crock, cup' [L orca]
 ・ pott 'pot' [perhaps L pottus]
 ・ sacc, also sæcc 'sack, bag' [L saccus]
 ・ sester 'jar, vessel; a measure' [L sextarius]
 ・ spyrte 'basket' [probably L sporta, *sportea]
 ・ ? cæpse 'box' [L copsa]
 ・ ? sċrīn 'chest; shrine' [L scrinium]
 ・ ? sċutel 'dish, platter' [L scutella]
 ・ ? tunne 'cask, tun, barrel' [L tunna]

[ Coins, money; wights and measures, units of measurement ]

 ・ dīner, dīnor type of coin, denarius [L denarius]
 ・ mīl 'mile' [L milia]
 ・ mydd 'a measure' [L modius]
 ・ mynet 'a coin; coinage, money' [L moneta]
 ・ oma 'a liquid measure' [L ama]
 ・ pund 'pound (in weight or money); pint' [L pondo]
 ・ trimes 'unit of weight, a dracm; name of a coin' [L tremissis]
 ・ ynċe 'inch' [L uncia]
 ・ yntse 'ounce' [L uncia]

[ Transactions and payments ]

 ・ ċēap 'perchase, sale, transaction, market, possessions, price' [L cauō or caupōnārī]
 ・ toll, also toln, tolne 'toll, tribute, rent, duty' [L toloneum]
 ・ trifet 'tribute' [L tributum]

[ Clothing; fabric ]

 ・ belt 'belt, girdle' [L balteus]
 ・ bīsæċċ 'pocket' [L bisaccium]
 ・ cælis 'foot-covering', also (later) calc 'sandal' [L calceus]
 ・ ċemes 'shirt, undergarment' [L camisia]
 ・ ġecorded 'having cords, corded (or perhaps fringed)' [L corda]
 ・ cugele '(monk's) cowl' [L cuculla]
 ・ fifele 'broach, clasp' [L fibula]
 ・ mentel 'cloak' [L mantellum]
 ・ pæll, pell 'fine or rich cloth; purple cloth; altar cloth rich robe' [L pallium]
 ・ pyleċe 'fur robe' [L pellicia]
 ・ seolc 'silk' [perhaps L sericum]
 ・ sīde 'silk' [L seta]
 ・ *sīric 'silk' [perhals L sericum]
 ・ socc 'light shoe' [L soccus]
 ・ swiftlēre 'slipper' [L subtalaris]
 ・ ? orel, orl 'robe, garment, veil, mantle' [L orale, orarium]
 ・ ? purpure, purpur 'deep crimson garment; deep crimson colour (imperial purple)' [L purpura]
 ・ ? sabon 'sheet' [L sabanum]
 ・ ? tæpped, teped 'cloth wall or floor covering' [L tapetum, tappetum]

[ Furniture and furnishing ]

 ・ meatte, matte 'mat; underlay for a bed' [L matta]
 ・ mēse, mīse 'table' [L mensa]
 ・ pyle, pylu 'pillow, cushion' [L pulvinus]
 ・ sċamol, sċemol, sċeomol, sċeamol 'stool, footstool, bench' [L *scamellum]
 ・ strǣl, strēaġl 'curtain; quilt, matting, bed' [L stragula]
 ・ strǣt 'bed' [L stratum]

[ Precious stones ]

 ・ ġimm 'gem, precious stone, jewel; also in figurative use' [L gemma]
 ・ meregrot 'pearl' [L margarita, but showing folk-etymological alteration after an English word for 'sea' and (probably) an English word for 'fragment, particple']
 ・ pærl '(very doubtfully) pearl' [perhals L *perla]

[ Roles, ranks, and occupations (non-religious or not specifically religious) ]

 ・ cāsere 'emperor; ruler' [L caesar]
 ・ fullere 'fuller' [L fullo]
 ・ mangere 'merchant, trader' [L mango]
 ・ mæġester, also (later) māgister or magister 'leader, master, teacher' [L magister]
 ・ myltestre 'prostitute' [L meretrix, with remodelling of the ending after the Old English feminine agent noun suffix -estre]
 ・ prafost, also profost 'head, chief, officer' [L praepositus, propositus]
 ・ sūtere 'shoumaker' [L sutor]

[ Punishment, judgement, codes of behaviour ]

 ・ pīn 'pain, fortune, anguish, punishment' [L poena]
 ・ regol, reogol 'rule; principle; code of rules; wooden ruler' [L regula]
 ・ sċrift 'something decreed as a penalty; penance; absolution; confessor; judge' [L scriptum]

[ Verbs ]

 ・ *cōfrian 'to recover' (implied by acōfrian in the same meaning) [L recuperare]
 ・ *cyrtan 'to shorten' (implied by cyrtel 'garment, tunic, cloak, gown' and (probably) ġecyrted 'cut off, shortened') [L curtus, adjective]
 ・ dīligian 'to erase, rub out; to destroy, obliterate' [L delere]
 ・ impian 'to graft; to busy oneself with' [L imputare]
 ・ *mūtian (implied by bemūtian 'to exchange' and mūtung 'exchange') [L mutare]
 ・ *nēomian 'to sound sweetly' or *nēome 'sound' [L neuma, noun]
 ・ pinsian 'to weigh, consider, reflect' [L pensare]
 ・ pīpian 'to play on a pipe' [L pipare]
 ・ pluccian 'to pluck' [perhaps L *piluccare]
 ・ *pundrian (implied by apyndrian, apundrian 'to weigh, to adjudge') [L ponderare, if not a derivative of OE punduru]
 ・ pynġan 'to prick' [L pungere]
 ・ sċrīfan 'to allot, prescribe, impose; to hear confession; to receive absolution; to have regard to' [L scribere]
 ・ seġlian 'to seal' [L sigillare]
 ・ seġnian 'to make the sign of the cross; to consecrate, bless' [L signare, if not < OE seġn]
 ・ *-stoppian (implied by forstoppian) 'to obstruct, stop up' [perhaps L *stuppare]
 ・ trifulian 'to break, bruise, stamp' [L tribulare]
 ・ tyrnan, turnian 'to turn, revolve' [L turnare]
 ・ ? cystan 'to get the value of, exchange for the worth of' [L constare]
 ・ ? dihtan, dihtian 'to direct, command, arrange, set forth' [L dictare]
 ・ ? glēsan 'to gloss, explain' [L glossare (verb) or glossa (noun)]
 ・ ? lafian 'to pour water on, to bathe, wash' [L lavare]
 ・ ? *pilian 'to peel, strip, pluck' [L pilare]
 ・ ? plantian 'to plant' [L plantare, or < OE plante]
 ・ ? *pyltan 'to pelt' (implied by later pilt, pelt) [perhaps L *pultiare, alteration of pultare]
 ・ ? sealtian 'to dance' [L saltare]
 ・ ? trahtian 'to comment on, expound; to interpret' [L tractare, if not < OE traht]

[ Adjectives ]

 ・ cirps, crisp 'curly, curly haired' [L crispus]
 ・ cyrten 'beautiful' [perhals L *cortinus]
 ・ pīs 'heavy' [L pensus]
 ・ sicor 'sure, certain; secure' [L securus]
 ・ sȳfre 'clean, pure, sober' [L sobrius]
 ・ byxen 'of box wood' [probably L buxeus]
 ・ ? cūsc 'virtuous, chaste' [L conscius, perhaps via Old Saxon kusko]

[ Miscellaneous ]

 ・ candel, condel 'candle, taper', (in figurative contexts) 'source of light' [L candela]
 ・ ċēas, ċēast 'quarrel, strife; reproof' [L causa]
 ・ ċeosol, ċesol 'hut; gullet; belly' [L casula, casella]
 ・ copor 'copper' [L cuprum]
 ・ derodine 'scarlet' [probably L dirodinum]
 ・ munt 'mountain, hill' [L mont-, mons]
 ・ plūm-, in plmfeðer '(inplural) down, feathers' [L pluma]
 ・ sælmeriġe 'brine' [L *salmuria]
 ・ sætern- (in sæterndæġ 'Saturday') [L Saturnus]
 ・ seġn 'mark, sign, banner' [L signum]
 ・ tasul, teosol 'dice; small square of stone' [L tessella, *tassellus]
 ・ tæfl 'piece used in a board game, dice; type of game played on a board, game of dice; board on which this is played' [L tabula]
 ・ -ere, forming agent nouns [probably L -arius; if so, borrowed early]
 ・ -estre, forming feminine agent nouns [perhaps L -istria]
 ・ ? coron-(b&#275;ag) 'crown' [L corona]
 ・ ? diht 'act of directing or arranging; direction, arrangement, command' [L dictum]
 ・ ? *pill (perhaps shown by pillsāpe soap for removing hair, depilatory) [perhals L pilus 'hair']

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

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2019-09-11 Wed

#3789. 古英語語彙におけるラテン借用語比率は1.75% [latin][loan_word][borrowing][oe][lexicology][statistics]

 英語語源学の第一人者 Durkin によれば,古英語期までに英語に借用されたラテン単語の数は,少なくとも600語はあるという.650年辺りを境に,前期に300語ほど,後期に300語ほどという見立てである.この600という数字を古英語語彙全体から眺めてみると,1.75%という割合がはじき出される.しかし,これらのラテン借用語単体ではなく,それに基づいて作られた合成語や派生語までを考慮に入れると,古英語語彙における割合は4.5%に跳ね上がる.Durkin (100) の解説を引用しよう.

If we take an estimate of at least 600 words borrowed (immediately) from Latin, and a total of around 34,000 words in Old English, then, conservatively, around 1.75% of the total are borrowed from Latin. If we include all compounds and derivatives formed on Latin loanwords in Old English, then the total of Latin-derived vocabulary probably comes closer to 4.5% . . . , although this figure may be a little too high, since estimates of the total size of the Old English vocabulary (native and borrowed) probably rather underestimate the numbers of compounds and derivatives.


 この数値をどう評価するかは視点の取り方次第である.後の歴史における英語の語彙借用の規模とその影響を考えれば,この段階でのラテン借用語の割合など,取るに足りない数字にみえるだろう.一方,これこそが英語の語彙借用の歴史の第一歩であるとみるならば,いわば0%から出発した借用語の比率が,すでに古英語期中に1.75%(あるいは4.5%)に達しているというのは,ある程度著しい現象であるといえなくもない.さらにいえば,その多くが千数百年を隔てた現代英語にも残っており,日常語として用いられているものも目立つのである(昨日の記事「#3788. 古英語期以前のラテン借用語の意外な日常性」 ([2019-09-10-1]) を参照).
 古英語のラテン借用語については英語史研究においてもさほど注目されてきたわけではないが,見方を変えれば十分に魅力的なトピックになりそうだ.

 ・ Durkin, Philip. Borrowed Words: A History of Loanwords in English. Oxford: OUP, 2014.

Referrer (Inside): [2024-07-21-1] [2019-09-12-1]

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