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review - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-22 17:50

2024-03-15 Fri

#5436. 私の『英語語源辞典』推し活履歴 --- 2024年3月15日版 [link][etymology][review][voicy][heldio][helwa][lexicography][kdee][hel_herald][notice][khelf][hellog][fujiwarakun][asacul][yurugengogakuradio][notice]


寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.



 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)の推し活を本格的に始めて8ヶ月ほどが経ちます.この期間に様々な媒体でこの辞典を推薦し,話題にしてきました.推し活に加わる方も周囲に増えてきており,喜ばしい限りです.この辺りで推し活履歴を振り返っておきたいと思います.以下,KDEE (= The Kenkyusha Dictionary of English Etymology) の略称も適宜用います (cf. kdee) .

 ・ 2023年7月18日 「ゆる言語学ラジオ」にお招きいただいて収録した YouTube 回「英単語帳の語源を全部知るために,研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」が配信される.49分30秒辺りから堀田による KDEE の激推しがスタート.その後の数日間,KDEE がオンラインで入手しにくくなるという事態が発生したとか.
 ・ 2023年7月27日 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 にて「#787. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)のスゴさをご紹介 --- 田辺春美先生との対談」を配信し,制作にも携わられた田辺春美先生(成蹊大学)とともに KDEE の実力を語る.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第8位に入った.
 ・ 2023年8月1日 「研究社note」より「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」と題する記事が公開される(研究社編集部の N. A. さんが元研究社印刷社長の小酒井英一郎さんにインタビューして執筆された記事).
 ・ 2023年8月2日 hellog にて「#5210. 世界最強の英語語源辞典 --- 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)」 ([2023-08-02-1]) が公開される.
 ・ 2023年9月6日 heldio にて「#828. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (1)」が配信され,画期的なインタビューシリーズ3部作の開始となる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第5位に入った.
 ・ 2023年9月12日 heldio にて「#834. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (2)」が配信される.
 ・ 2023年9月20日 heldio にて「#842. 『英語語源辞典』(研究社,1997年)ってスゴい --- 研究社会議室での対談 (3)」が配信される.
 ・ 2023年9月22日 hellog にて「#5261. 研究社会議室での3回にわたる『英語語源辞典』をめぐるインタビューが完結」 ([2023-09-22-1]) が公開される.
 ・ 2023年10月23日 heldio にて「#875. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (1) --- 藤原くんと foot を語る」が配信され,藤原郁弥さんとの画期的なシリーズの幕開きとなる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第2位に入った.
 ・ 2023年10月26日 heldio にて「#878. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (2) --- 藤原くんと foot を語る」が配信される.
 ・ 2023年11月8日 heldio にて「#891. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (3) --- khelf 藤原くんと marble を語る第1弾」が配信される.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第9位に入った.
 ・ 2023年11月11日 heldio にて「#894. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (4) --- khelf 藤原くんと marble を語る第2弾」が配信される.
 ・ 2023年11月14日 heldio にて「#897. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (5) --- khelf 藤原くんと marble を語る第3弾」が配信される.
 ・ 2023年12月15日 heldio にて「#928. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (6) --- khelf 藤原くんと2重語 compute/count を語る」が配信される.
 ・ 2024年1月6日 Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) にて「【英語史の輪 #77】umisio さんと『英語語源辞典』で England と English を精読する」が配信される.heidio/helwa リスナーの umisio さんとの差しでの KDEE 熟読会.
 ・ 2024年1月9日 umisio さんにより上記熟読会の手書きノートが note 上に公開される.
 ・ 2024年1月19日 heldio/helwa リスナーの lacolaco さんが note にて「英語語源辞典通読ノート」と題するマガジンを公開し始める.前代未聞の企画.これまでに11本の記事があり,すでに animal にまで到達している.
 ・ 2024年1月25日 helwa にて「【英語史の輪 #85】「『英語語源辞典』を読む(飲む)会」を画策しています」として,KDEE オンライン読書会の企画案が堀田により初めて提案される.その後,初回が2月20日に実施されることになった.
 ・ 2024年1月31日 heldio にて「#975. 『英語語源辞典』の収録語彙」が公開される.
 ・ 2024年2月2日 heldio にて「#977. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (7) --- khelf 藤原くんと同音異義語 bank の項を精読する」が配信される.
 ・ 2024年2月3日 heldio にて「#978. 『英語語源辞典』の語義・初出年代 --- khelf 藤原くんと凡例を読もう」が配信される.凡例を熟読するという稀代な企画がスタート.
 ・ 2024年2月20日 helwa のオンラインオフ会にて「『英語語源辞典』を漫然と読む/飲む」企画が初めて実現する.
 ・ 2024年2月22日 helwa にて「【英語史の輪 #97】「置換」か「駆逐」か」が配信される.この配信回では,上記オンラインオフ会で話題となった KDEE 中の「駆逐」という用語が議論された.
 ・ 2024年3月4日 khelf による『英語史新聞』第8号が発行され,その第1面にて「『英語語源辞典』を使ってみよう」という記事(藤原郁弥さん執筆)が公開される.
 ・ 2024年3月5日 hellog にて「#5426. 『英語史新聞』第8号が発行されました」 ([2024-03-05-1]) が公開され,改めて KDEE が言及される.
 ・ 2024年3月12日 helwa にて「【英語史の輪 #105】近代英語と中英語の anigh に直接の関連はない? --- lacolaco さんも二度見した『英語語源辞典』の記述」が配信される.

 以上がこの8ヶ月間の KDEE 推し活履歴です.今後の主立った予定を2点挙げておきます.

 ・ 本日2024年3月15日の夕方,helwa のオンラインオフ会にて「『英語語源辞典』を漫然と読む/飲む」企画の第2回が開催される予定です.
 ・ 新年度4月より朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」が開講される予定です.毎月1回のペースで指定土曜日に開催されます.KDEE 以外の英語語源辞典も参照しますが,メインはもちろん KDEE.なお,2018年にも『英語語源辞典』に注目しつつ朝カルで英語語源講座を開いたことがあります(cf. 「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1])).

 皆さんも,ぜひ KDEE 推し活にご参加ください!

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.

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2024-02-28 Wed

#5420. 保坂道雄(著)『文法化する英語』(開拓社,2014年) --- 英語の文法化の入門書 [toc][review][grammaticalisation]


保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.



 英語の文法化 (grammaticalisation) を学び始めたいという方に,標題の入門書をお薦めします.こちらの本については,先日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でも取り上げました.「#1001. 英語の文法化について知りたいなら --- 保坂道雄(著)『文法化する英語』(開拓社,2014年)」です.ぜひお聴きください.



 今朝配信した heldio でも「#1003. There is an apple on the table. --- 主語はどれ?」と題して,本書を参照しながら存在構文の謎についてのお話しをお届けしています.最近の heldio では他にも文法化にまつわる話題をシリーズで配信していますので「#5411. heldio で「文法化」を導入するシリーズをお届けしました」 ([2024-02-19-1]) のリンク集もご参照ください.
 さて,『文法化する英語』で取り上げられている英語史上の文法化の事例はたいへんに豊富です.しかも重要な文法項目ばかりです.以下に掲げる目次を見ればわかるかと思います.



 はしがき
 第1章 文法化と英語
   1. はじめに
   2. 文法化とは何か
   3. 英語の構造
   4. 英語の歴史
   5. 文法化を動かす「見えざる手」
 第2章 冠詞の文法化
   1. はじめに
   2. 不定冠詞の歴史
   3. 定冠詞の歴史
   4. 冠詞の出現と文法化
 第3章 存在構文における there の文法化
   1. はじめに
   2. There 構文の発達
   3. 虚辞 there の出現と文法化
 第4章 所有格の標識 -'s の文法化
   1. はじめに
   2. 所有格の標識 -'s の文法化
   3. of 属格の発達
 第5章 接続詞の文法化
   1. はじめに
   2. 並列構造から従属構造へ
    2.1. 古英語における従属構造の発達
    2.2. 多様な接続詞の発達
   3. 接続詞の文法化
 第6章 関係代名詞の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の関係代名詞
   3. 関係代名詞 that の文法化
   4. WH 関係代名詞の発達
 第7章 再帰代名詞の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の再帰代名詞
   3. 再帰代名詞の文法化
 第8章 助動詞 DO の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の疑問文と否定文
   3. DO の文法化
 第9章 法助動詞の文法化
   1. はじめに
   2. 現代英語の法助動詞
   3. 法助動詞の文法化
 第10章 不定詞標識 to の文法化と準助動詞の発達
   1. はじめに
   2. 不定詞標識 to の文法化
   3. for + 名詞句 + to 不定詞の発達
   4. 準助動詞の文法化
    4.1. be going to の文法化
    4.2. have to の文法化
 第11章 進行形の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の進行表現
   3. 進行形の文法化
 第12章 完了形の文法化
   1. はじめに
   2. 古英語の完了表現
    2.1. HAVE 完了形
    2.2. BE 完了形
   3. 完了形の文法化
 第13章 受動態の文法化
   1. はじめに
   2. 受動態の発達
   3. 受動態の文法化
   4. 二重目的語構文の受動態について
 第14章 形式主語 it の文法化
   1. はじめに
   2. 非人称構文の衰退
   3. 虚辞 it の文法化
 第15章 文法化と言語進化
   1. はじめに
   2. 英語の多様な文法化
   3. 文法化と構造変化
   4. 言語の小進化
   5. 英語の格と語順
   6. おわりに
 主要作品略語表
 参考文献
 さらなる研究のために
 索引




 本書は,この hellog でも何度か参照してきました.以下の記事もご覧いただければと思います.いずれにせよ『文法化する英語』は英語史の視点からの文法化の入門書としてイチオシです.

 ・ 「#2144. 冠詞の発達と機能範疇の創発」 ([2015-03-11-1])
 ・ 「#2146. 英語史の統語変化は,語彙投射構造の機能投射構造への外適応である」 ([2015-03-13-1])
 ・ 「#2490. 完了構文「have + 過去分詞」の起源と発達」 ([2016-02-20-1])
 ・ 「#3669. ゼミのグループ研究のための取っ掛かり書誌」 ([2019-05-14-1])
 ・ 「#5132. なぜ be going to は未来を意味するの? --- 「文法化」という観点から素朴な疑問に迫る」 ([2023-05-16-1])

 ・ 保坂 道雄 『文法化する英語』 開拓社,2014年.

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2024-02-26 Mon

#5418. A Dictionary of Japanese Loanwords の前書きを読んでみよう [review][loan_word][japanese][lexicography][lexicology][dictionary][inohota][notice][oed]



 昨日,「いのほたチャンネル」(旧「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」)の最新動画が公開されました.「最初の日本語由来の英語は?いまや hikikomori や enjo kosai も!---外来語の諸相-「ナイター」「柿」【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル 第209回】」です.英語に入った日本語単語の歴史を概説しています.馴染み深い日本語が多く出てくるので,入りやすい話題かと思いますが,れっきとした英語史の話題です.
 動画内では典拠として OED のほか,A Dictionary of Japanese Loanwords というおもしろい辞書を用いており,紹介もしています.この辞書については,最近の hellog でも「#5410. A Dictionary of Japanese Loanwords --- 英語に入った日本語単語の辞書」 ([2024-02-18-1]) にて取り上げていますので,そちらもご一読ください.


Toshie M. Evans, ed. ''A Dictionary of Japanese Loanwords''. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.



 同辞書の冒頭の説明書きを読んでみましょう (ix--x) .

A Dictionary of Japanese Loanwords is a lexical index of terms borrowed from the Japanese language that are listed in standard English dictionaries and in publications that analyze new words. Therefore, this dictionary covers both the loanwords that have withstood the test of time and those whose test has just started.
   American standard dictionaries keep records of borrowings from the Japanese language; most of them, however, do not furnish quotations. A Dictionary of Japanese Loanwords adds a special contribution by providing illustrative quotations from many entries. These quotations were collected from books, newspapers, magazines, advertisements, and databases, all of which were published or distributed in the United States between 1964 and 1995. They give details about the entry, demonstrate how it is used in a natural context, and indicate the degree of its assimilation into American English.
   Recent studies report that Japanese is the second most productive source of new loanwords to English, which indicates that the English-speaking world is paying attention to Japan more closely than ever before. The entries and illustrative quotations present the aspects of Japan that Americans have been exposed to and have adopted. Karaoke, for example, first appeared in English in 1979, when English-speaking societies observed and read about a karaoke fever in Japan. Today, Americans find themselves enjoying karaoke. Karaoke showcase, a weekly television talent contest, appeared on 120 U.S. stations in June 1992. A phenomenon like this is shown in this book in the form of lexical entries.
   The impact that Japan has made on America covers all aspects of life: aesthetics, architecture, arts and crafts, astronomy, biology, botany, business management, clothing, economics, education, electronics, fine art, food and food technology, medicine, oceanography, pathology, philosophy, physics, politics, religion, sports, technology, trade, weaponry, zoology, and so on. Some entries are not accompanied by a quotation; nevertheless, when dictionaries record words they indicate that these words are somehow linked to people's everyday lives. A Dictionary of Japanese Loanwords is also meant to be fun to read. I hope that it will provide the meaning for Japanese words the reader has come across on many occasions, and that it will be an occasion for happy browsing.

    
     この辞書の魅力は,何よりも引用文が豊富なところ.まさに "happy browsing" に最適な「読める辞書」です.
    
 ・ Toshie M. Evans, ed. A Dictionary of Japanese Loanwords. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.

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2024-02-24 Sat

#5416. 言語多様性の価値 [variety][world_languages][language_death][sociolinguistics][review]


Words and Worlds: World Languages Review



 研究室で積ん読状態になっていた言語多様性 (language diversity) に関する本をパラパラとめくってみた.UNESCO ETXEA より2005年に出版された Words and Worlds: World Languages Review という題名の本だ.いつどのような経緯で入手したのかも覚えていないような多数の図書のうちの1冊である.
 冒頭の1節を読んでいると,なかなか読ませる英文である.序章 (Prologue) の "The value of language diversity" と小見出しのついた1節の第1段落である (p. x) .以下に引用するので,ぜひ味わっていただければ.

Languages are humanity's most valuable cultural heritage. They are fundamental to understanding. Each language provides a system of concepts which helps us to interpret reality. The complexity of reality is easier to understand thanks to the diversity of languages. Progress in understanding is due, amongst other things, to the growing linguistic diversity that has characterised the human species. Languages are also fundamental in the generation and transmission of values. Each language expresses a differentiated ethical sensibility. Each language provides us with symbols and metaphors to deal with the mysterious and the sacred. Furthermore, languages are not closed or exclusive universes. All of them express the rationality of the human species as well as its common fears and hopes. Linguistic diversity is the most obvious manifestation of cultural diversity. In a world characterised by growing processes of globalisation, it seems necessary to assert the value of cultural diversity as a guarantee of more democratic and more creative coexistence. Cultural uniformity would mean a decline, to the extent that we would lose our ability to give specialised answers to specific challenges. The report "Our Creative Diversity", published by UNESCO in 1995, pointed out what orientations were necessary to preserve diversity without renouncing positive aspects of globalisation in the field of cultural and linguistic diversity. We often coincide with the criteria of the defenders of diversity of living species in the natural environment. In both cases it is said that there is a need to protect the heritage. The reason is not exclusively ethical. Both the defence of biological diversity and the defence of cultural and linguistic diversity are necessary conditions for the well-being of humans, for the balances that protect life and for the life quality we aspire to develop.


 言語多様性の問題は生物多様性の問題と平行的に論じられることが多く,その旨がこの引用文でも明確に述べられている.ただし,前者は後者に比べて現代的課題として認知度が低い.
 引用の最後にかけて,言語多様性を擁護する理由は倫理的なものだけではない,というくだりにとりわけ説得力を感じた.その点では生物多様性も言語多様性も同じであり,多様性の擁護は,人類の安寧,生活を守るバランス,生活の質の発展のための必要条件なのだという.多様性は "specialised answers to specific challenges" を提供してくれるという議論も同様に説得力がある.
 以下,本書の目次を掲げておきたい.パラパラとしか読んでいないが,通読したい本が1冊増えた.



 Prologue
 Introduction
 Chapter 1. Linguistic Communities
 Chapter 2. The Linguistic Heritage
 Chapter 3. The Official Status of Languages
 Chapter 4. The Use of Languages in Public Administration
 Chapter 5. Language and Writing
 Chapter 6. Language and Education
 Chapter 7. Languages and the Media
 Chapter 8. Language and Religion
 Chapter 9. Transmission and Intergenerational Use of Language
 Chapter 10. Linguistic Attitudes
 Chapter 11. The Threats to Languages
 Chapter 12. The Future of Languages




 ・ Martí, Fèlix, Paul Ortega, Itziar Idiazabal, Andoni Barreña, Patxi Juaristi, Carme Junyent, Belen Uranga, and Estibaliz Amorrortu. Words and Worlds: World Languages Review. UNESCO ETXEA, 2005.

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2024-02-18 Sun

#5410. A Dictionary of Japanese Loanwords --- 英語に入った日本語単語の辞書 [review][loan_word][japanese][lexicography][lexicology][false_friend][semantic_change][oed][dictionary]


Toshie M. Evans, ed. ''A Dictionary of Japanese Loanwords''. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.



 眺めているだけでおもしろい,決して飽きない辞書の紹介です.Toshie M. Evans 氏により編集された,英語に入った日本語単語を収録する辞書 A Dictionary of Japanese Loanwords です.1997年に出版されています.この hellog でも「#142. 英語に借用された日本語の分布」 ([2009-09-16-1]) で参照した通りですが,820語の日本語由来の「英単語」がエントリーされています.単に見出し語が列挙されているだけでなく,多くの語には,1964年から1995年の間にアメリカで出版された資料から取られた例文が付されており,たいへん貴重です.
 雰囲気を知っていただくために「火鉢」こと hibachi のエントリーを覗いてみましょう.

hibachi [hibɑːtʃi] n. pl. -chi or s, 1. a brazier used indoors for burning charcoal as a source of heat.
In an old-style shop, the selling activity took place in a front room on a tatami (straw mat) platform about one foot above the ground level. Customers removed their shoes, warmed themselves by sitting on the floor next to a hibachi (earthen container with glowing embers) and were served tea and sweets. (Places, Summer 1992, p. 81)
2. a portable brazier with a grill, used for outdoor cooking.
Double stamped steel hibachi, lightweight & portable. Goes with you to the backyard or even the beach for tasty cookouts? (Los Angeles Times, Jul. 7, 1985, Part I, p. 13, advertisement)
[< hibachi < hi fire + bachi < hachi pot] 1874: hebachi 1863 (OED)


 語義1は日本の「火鉢」そのものなのですが,語義2の「バーベキューコンロ」にはたまげてしまいますね.この語とその意味変化については「#4386. 「火鉢」と hibachi, 「先輩」と senpai」 ([2021-04-30-1]) でも扱っているので,ご参照ください.
 日本語から英語に入った借用語に関心のある方は,ぜひ以下の記事もどうぞ.

 ・ 「#126. 7言語による英語への影響の比較」 ([2009-08-31-1])
 ・ 「#45. 英語語彙にまつわる数値」 ([2009-06-12-1])
 ・ 「#2165. 20世紀後半の借用語ソース」 ([2015-04-01-1])
 ・ 「#3872. 英語に借用された主な日本語の借用年代」 ([2019-12-03-1])
 ・ 「#4140. 英語に借用された日本語の「いつ」と「どのくらい」」 ([2020-08-27-1])
 ・ 「#5055. 英語史における言語接触 --- 厳選8点(+3点)」 ([2023-02-28-1])
 ・ 「#5147. 「ゆる言語学ラジオ」出演第3回 --- 『ジーニアス英和辞典』第6版を読む回で触れられた諸々の話題」 ([2023-05-31-1])

 ・ Toshie M. Evans, ed. A Dictionary of Japanese Loanwords. Westport, Conn.: Greenwood, 1997.

Referrer (Inside): [2024-02-26-1]

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2024-01-23 Tue

#5384. 言語学史の名著の目次 [toc][history_of_linguistics][review]


ミルカ・イヴィッチ 著,早田 輝洋・井上 史雄 訳 『言語学の流れ』 みすず書房,1974年.



 「#5371. 言語学史のハンドブックの目次」 ([2024-01-10-1]) の記事で,現代の言語学史のハンドブックを1冊紹介した.言語学史の本も数あれど,私が名著だと思って何度も読み返しているのは,上記のイヴィッチ著『言語学の流れ』である.原著はセルボクロアチア語による Pravci u lingvistici (19563年)だが,これが1965年に Trends in Linguistics (Mouton) として英訳され,その英訳版に基づいて1974年に邦訳されたのが上掲の本である.
 英米や西欧のみならずスラヴ系の言語学の伝統をも視野に入れた広い言語学史となっており,現代の多くの読み手には独特な雰囲気が感じられるかもしれないが,むしろ全体としては偏りの少ないすぐれた言語学史である.英米や西欧に慣れ親しんだ日本において,もっと読まれてよい言語学史の著作ではないかと思っている.以下に目次を掲げておきたい.



【 18世紀の終りまでの言語研究 】

  1. 概論
  2. 古代ギリシャの言語研究
  3. インドの文法学派
  4. ローマ帝国時代から文芸復興期の終りまで
  5. 文芸復興期から18世紀の終りまで

【 19世紀の言語研究 】

  6. 概論
  7. 初期の比較言語学者の時期
  8. アウグスト・シュライヒャーの生物学的自然主義
  9. 言語学におけるフンボルト主義(世界観理論)
  10. 言語学における心理主義
  11. 若手文法学派
  12. 「独立派」の代表者フーゴ・シュハルト

【 20世紀の言語研究 】

  13. 概論
    13.1 20世紀の学問の基本特徴
    13.2 言語学発展の動向
  14. 非構造主義言語学
    14.1 言語地理学
        方法の基礎 近代方言学
    14.2 フランス言語学派
        心理生理学的・心理学的・社会学的言語研究 文体論的研究
    14.3 言語学における美的観念論
        概論 フォスラーの学派 新言語学
    14.4 進歩的スラヴ学派
        カザン学派 フォルトゥナートフ(モスクワ)学派 ベーリチの言語間
    14.5 マール主義
    14.6 実験音声学
  15. 構造主義言語学
    15.1 発展の基本的傾向
    15.2 フェルディナン・ドゥ・ソシュール
    15.3 ジュネーヴ学派
    15.4 音韻論の時代
        先駆者 トルベツコイの音韻論の原理 プラーグ言語学サークル ロマーン・ヤーコブソンの二項論 音韻変化の構造主義的解釈
    15.5 アメリカ言語学の諸学派
        先駆者:ボアズ,サピア,ブルームフィールド 分布主義の時代 人類学的言語学 心理言語学
    15.6 コペンハーゲン学派
        学派の基礎づけ---ヴィッゴ・ブレナル イェルムスレウの言語学
  16. 言語学における論理記号主義
    16.1 論理演算学
    16.2 記号学
    16.3 言語学的意味論
  17. 構文論と生成的手法
  18. 数理言語学
    18.1 概論
    18.2 計量(統計)言語学
    18.3 情報理論
    18.4 機械翻訳




 私自身が言語観を形成する上で,おおいに影響を受けた一冊である.

 ・ ミルカ・イヴィッチ 著,早田 輝洋・井上 史雄 訳 『言語学の流れ』 みすず書房,1974年.

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2024-01-04 Thu

#5365. 「インドの英語」をめぐって榎木薗鉄也先生と対談 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の第4章 [voicy][heldio][review][notice][world_englishes][we_nyumon][indian_english][esl]

 年末の12月29日,10月に昭和堂から出版された『World Englishes 入門』を紹介する Voicy heldio のシリーズ企画の一環として「#942. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 榎木薗鉄也先生とのインドの英語をめぐる対談」を配信しました.榎木薗先生(元中京大学)は,本書の第4章「インドの英語」の著者の1人です(もう1方は加藤拓由先生).33分ほどの音声コンテンツとなっています.お時間のあるときにお聴きください.



 今回ご紹介いただいた第4章「インドの英語」 (pp. 69--84) は,以下の構成となっています.章末には「研究テーマ」コーナーと参考文献が付されています.



1 インドの地理と言語的多様性
   コラム インドの武術とアーユルヴェーダー
2 インドの教育と英語
   (1) 教育制度
   (2) 三言語方式語彙
   (3) インドと日本の初等英語教育
      - 文字の積極的活用
      - 多様な活動中心の教材
      - 書く事への段階的な指導
   コラム ガンジーと孫娘の素敵なエピソード
3 インドの未来と英語教育
   コラム インド人と映画
4 インド英語の特徴
   (1) 発音
   (2) 語彙
   (3) 文法
   (4) 表現




 インドでは日本や韓国とは比べものにならないくらい英語が出世のための必須のスキルとして認識されており,英語教育の過熱化が激しく起こっていることについては考えさせられました.グローバルサウスの盟主とされ,世界で最も英語話者人口が多いインドと,この国の言語事情については,今後も目を光らせていく必要がありそうです.インド英語については hellog より indian_english の記事群もご参照ください.
 『World Englishes 入門』関連の heldio 配信回を以下にまとめておきます.関連の hellog 記事については we_nyumon よりどうぞ.

 ・ 「#865. 世界英語のお薦め本の紹介 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)
 ・ 「#869. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 和田忍さんとの対談」
 ・ 「#883. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 今村洋美先生とのアメリカ・カナダ英語をめぐる対談」
 ・ 「#901. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 梅谷博之先生とのモンゴルの英語をめぐる対談」
 ・ 「#925. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 小林めぐみ先生との韓国の英語をめぐる対談」
 ・ 「#942. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 榎木薗鉄也先生とのインドの英語をめぐる対談」

 近日中に,榎木薗鉄也先生との対談のアフタートークも heldio よりお届けする予定です.ぜひそちらも楽しみにしていただければ.


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

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2023-12-27 Wed

#5357. 井出新先生との対談 --- 新著『シェイクスピア それが問題だ!』(大修館,2023年)をめぐって [notice][voicy][heldio][shakespeare][review]


井出 新 『シェイクスピア それが問題だ!』 大修館,2023年.



 同僚の井出新先生(慶應義塾大学文学部英米文学専攻)の新著『シェイクスピア それが問題だ!』(大修館,2023年)について,hellog でも「#5316. Shakespeare の作品一覧(執筆年代順) --- 井出新(著)『シェイクスピア それが問題だ!』(大修館,2023年)より」 ([2023-11-16-1]) や「#5323. Shakespeare 時代の主な劇団 --- 井出新(著)『シェイクスピア それが問題だ!』(大修館,2023年)より」 ([2023-11-23-1]) で取り上げてきました.
 このたび新著をめぐって井出先生との Voicy heldio での対談が実現しましたので,お知らせします.「#934. 『シェイクスピア,それが問題だ!』(大修館,2023年) --- 著者の井出新先生との対談」(33分ほどの尺)です.ぜひお聴きください.



 対談のなかでは,

 (1) 本書の出版や執筆の舞台裏
 (2) 関連する heldio 配信回「#898. 井出新先生のご著書の紹介 --- 『シェイクスピア それが問題だ!』(大修館,2023年)」でリスナーさんから寄せられてきた大きな問い「なぜシェイクスピアは世界でこれほど突出した劇作家として知られているのか?」への回答
 (3) 『ハムレット』における conscience の文献学的解釈

などが語られました.とりわけ (3) の話題は必聴です.文献学的解釈の醍醐味を味わっていただければと思います.
 井出先生には,これまでも Shakespeare や初期近代の英語について英語史上興味深いお題を出していただく機会があり,例えば hellog でも「#4309. shall we の代わりとしての shall's (= shall us)」 ([2021-02-12-1]) などで触れています.今回の対談でもいろいろなお題を出していただきました.リラックスした雰囲気ながらも頭を刺激され続けた,楽しすぎる対談でした.井出先生,またよろしくお願いします!

 ・ 井出 新 『シェイクスピア それが問題だ!』 大修館,2023年.

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2023-12-15 Fri

#5345. 「韓国の英語」 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の第10章 [voicy][heldio][review][notice][world_englishes][we_nyumon][korean][elt]

 10月に昭和堂から出版された『World Englishes 入門』について,本ブログでも多く取り上げてきています.先日,本書の第12章「韓国の英語」を執筆された小林めぐみ先生(成蹊大学)と Voicy heldio にて対談しました.韓国は身近な国ですし,韓国が過酷な学歴社会であることや,関連する教育事情についての情報も入ってくることはあります.しかし,とりわけ英語教育事情については,知っているようでほとんど知らなかったことに,本書を読んで気づきました.今回の対談では執筆者の先生に直接お話しを伺い,たいへん勉強になりましたし,何よりもおしゃべりを楽しむことができました.小林先生,ご出演ありがとうございました.そして,今後ともどうぞよろしくお願いいたします.
 本編で30分ほどの音声コンテンツとなっています.「#925. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 小林めぐみ先生との韓国の英語をめぐる対談」です.ぜひお聴き下さい.



 今回話題となった本書の第10章「韓国の英語」 (pp. 163--75) は,以下の構成となっています.章末には「研究テーマ」コーナーと参考文献も付されています.



1 韓国の言語事情と英語教育
   (1) 韓国の公用語(韓国語)
   (2) 韓国における英語使用・教育の歴史
   (3) 近年の英語教育と英語熱
   コラム 韓国の住宅事情
2 韓国英語の特徴
   (1) 発音
   (2) 語彙
   (3) 文法・表現
   コラム 韓国人の姓とスペリング
   コラム 韓国語の親族の呼び名
3 メディアに見る韓国英語
   (1) 韓国ドラマ・映画の英語
   (2) 韓国映画『英語完全征服』ほか
   (3) K-pop の英語




 韓国語の対外戦略,加熱する英語教育と英語留学事情,英語村のその後,韓製英語,K-pop の歌詞の「コードの曖昧化」など,おもしろい話題が盛りだくさんです.
 『World Englishes 入門』関連の heldio 配信回を以下にまとめておきます.関連の hellog 記事については we_nyumon よりどうぞ.

 ・ 「#865. 世界英語のお薦め本の紹介 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)
 ・ 「#869. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 和田忍さんとの対談」
 ・ 「#883. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 今村洋美先生とのアメリカ・カナダ英語をめぐる対談」
 ・ 「#901. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 梅谷博之先生とのモンゴルの英語をめぐる対談」
 ・ 「#925. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 小林めぐみ先生との韓国の英語をめぐる対談」

 今回の対談とは別に,小林先生とは別の対談回の配信も近日中に予定しています.英語教育と社会言語学と世界諸英語を掛け合わせた,おもしろいトークとなるはずですので,ぜひそちらにもご期待ください.


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

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2023-12-07 Thu

#5337. 野矢茂樹(著)『言語哲学がはじまる』(岩波新書,2023年) [philosophy_of_language][review][voicy][heldio][link]


野矢 茂樹 『言語哲学がはじまる』 岩波書店〈岩波新書〉,2023年.


 先日 heldio にて Voicy のデイリートークテーマ「#今年読んでよかった本」に参加する形で,言語哲学 (philosophy_of_language) の入門書を紹介しました.「#913. 野矢茂樹(著)『言語哲学がはじまる』(岩波新書,2023年)です.この秋に出版されたばかりの新書で,言語哲学といういかにも堅そうな分野の書籍ではありますが広く読まれているようです.
 実際,私も言語哲学入門書には何度挫折してきたことでしょう(「おわりに」に挙げられている入門書の何冊かに打ちのめされてきました).それくらい私の頭では追いついていけていない領域なのですが,このたびの野矢茂樹先生の本は,語り口調の文体で書かれており抜群に読みやすいです.ただし,読みやすいとはいえ,やはり十分に難しいのが言語哲学の分野です.そのため読みやすいとは言えても分かりやすいとは言いにくいのが本当のところです.
 本書では Gottlob Frege (1848--1925),Bertrand Russel (1872--1970), Ludwig Wittgenstein (1889--1951) という3人の言語哲学者による意味をめぐる考察が丁寧に解説されていきます.読者は相互の比較対照を通じて意味への多様な対し方に触れていくことになります.言語学でも立場によって意味のとらえ方は様々ですが,一般に深入りしすぎることはありません.深入りしない程度にとどめておき,この本質的な問題を一度脇に置いて,何食わぬ顔で意味論 (semantics) や語用論 (pragmatics) の議論を展開していくことが多いように思われます.しかし,言語哲学では当然ながらそこにぐいぐい深入りしていきます.この辺りがおもしろく,気持ちのよいところです.
 語の意味とは何か,文の意味とは何か.なぜ私たちは言葉の意味を理解できているのか.考え出すと止まらなくなりますね.皆さんも,ぜひこの知的冒険にお出かけください.
 意味をめぐる議論としては,以下の hellog 記事もご参照ください.

 ・ 「#1782. 意味の意味」 ([2014-03-14-1])
 ・ 「#1990. 様々な種類の意味」 ([2014-10-08-1])
 ・ 「#2199. Bloomfield にとっての意味の意味」 ([2015-05-05-1])
 ・ 「#2795. 「意味=指示対象」説の問題点」 ([2016-12-21-1])
 ・ 「#5197. 固有名に意味はあるのか,ないのか?」 ([2023-07-20-1])
 ・ 「#5289. 名前に意味はあるのか?」 ([2023-10-20-1])
 ・ 「#5290. 名前に意味はあるのか論争の4つの論点」 ([2023-10-21-1])

 ・ 野矢 茂樹 『言語哲学がはじまる』 岩波書店〈岩波新書〉,2023年.

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2023-11-20 Mon

#5320. 「モンゴルの英語」 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の第12章 [voicy][heldio][review][notice][world_englishes][hel_education][we_nyumon][variety][mongolian]

 本ブログでたびたび紹介している,この10月に昭和堂から出版された『World Englishes 入門』より,第12章「モンゴルの英語」というユニークな話題を紹介します.モンゴルの言語事情や英語学習・教育事情は,多くの日本人にとって未知の領域ではないでしょうか.私自身も,まったくといってよいほど知りませんでした.
 先日,この章を執筆された梅谷博之先生(明海大学)と Voicy heldio にて対談する機会を得ました.初めてお目にかかっての対談でしたが,あまりに楽しくおもしろいおしゃべりとなり,いろいろな意味で目を開かれました.梅谷先生,ありがとうございました.そして,今後ともどうぞよろしくお願いいたします.「#901. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 梅谷博之先生とのモンゴルの英語をめぐる対談」です.本編で20分ほどの音声コンテンツとなっています.



 今回取り上げた本書の第12章「モンゴルの英語」 (pp. 189--99) は,以下の構成となっています.



1 モンゴル国の地理・歴史と民族構成
   (1) 地理と歴史
   (2) 民族構成
   コラム モンゴル国外に分布するモンゴル語族の諸言語
2 モンゴル国の言語事情とモンゴル語の特徴
   コラム モンゴル国でのラテン文字の使用
3 モンゴル国の英語教育事情
   コラム モンゴル国における日本語学習
4 モンゴル語母語話者の英語の特徴
   (1) 発音
   (1) 文法・語彙




 とりわけコラムのおもしろさが光ります.他の章と同様に,写真や図表が豊富で,章末には「研究テーマ」と題する演習問題,および参考文献が付されています.梅谷先生とは,上記の heldio 収録と別に,アフタートーク的な(しかし,なかなか専門的な)回も収録しており,そちらも近日中に公開予定です.どうぞお楽しみに.
 これまでの『World Englishes 入門』関連 heldio 配信回を以下にまとめておきます.関連の hellog 記事については we_nyumon よりどうぞ.

 ・ 「#865. 世界英語のお薦め本の紹介 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)
 ・ 「#869. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 和田忍さんとの対談」
 ・ 「#883. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 今村洋美先生とのアメリカ・カナダ英語をめぐる対談」
 ・ 「#901. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 梅谷博之先生とのモンゴルの英語をめぐる対談」


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

Referrer (Inside): [2023-11-24-1]

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2023-11-19 Sun

#5319. 伊藤雄馬(著)『ムラブリ』(集英社インターナショナル,2023年) [review][mlabri][writing][linguistics][youtube][notice][yurugengogakuradio]


伊藤 雄馬 『ムラブリ』 集英社インターナショナル,2023年.


 伊藤雄馬さんによる『ムラブリ』(集英社インターナショナル,2023年)は,「ゆる言語学ラジオ」「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」他でもすでに紹介されており,言語学界隈ではよく知られた存在になっています.



 本書はインドシナ最後の森の狩猟民,ムラブリ (Mlabri) とその言語をフィールド調査した記録ですが,そのままムラブリに「持っていかれてしまった」言語学者,伊藤雄馬さんの青春記というべきものにもなっています.
 先日,井上・堀田の YouTube に伊藤さんをゲストとしてお招きし,ムラブリや言語一般をめぐる対談回を収録しました.ただいま準備中ですが,いずれ公開されますので,そちらもお楽しみに!

 ・ 伊藤 雄馬 『ムラブリ』 集英社インターナショナル,2023年.

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2023-11-13 Mon

#5313. セシリア・ワトソン(著),萩澤 大輝・倉林 秀男(訳) 『セミコロン --- かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』 左右社,2023年. [semicolon][punctuation][review][voicy][helwa]


セシリア・ワトソン(著),萩澤 大輝・倉林 秀男(訳) 『セミコロン --- かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』 左右社,2023年.


 セミコロン (semicolon) の悲喜こもごもの歴史と用例をめぐるセシリア・ワトソンによるエッセイ集の訳書を,訳者よりご献本いただきました(ありがとうございます).読み始めたら止まらなくなり,一気に読み切りました.ユーモラスで軽快な文体を一貫させながらも,全体として句読法の規則とは何か,ひいては言語における規範とは何かを問う論考となっています.
 セミコロンを含む(あるいは含まない)英文が多く挙げられていますが,真似をしたい名文もあれば,真似をしたくない珍文もあります.句読点ひとつで,これほど悲喜こもごもの状況が生み出されるのかと思うと,滑稽でもあり恐ろしくもあります.
 その中でも,とりわけ印象的なエピソードは,第4章「ゆるい条文と自制心 --- 句読点ひとつでボストン中が大混乱」で紹介されている,マサチューセッツ州の酒類販売制限をめぐる「セミコロン法」に関するものです.もともとの法文のコンマが後からセミコロンに書き換えられたことによって重要な解釈上の相違が生じてしまい,飲酒生活をめぐる大きな社会的混乱がもたらされた,というのです.句読点の書き換え前後の条文をみてみましょう(各々54, 55ページより).

[ オリジナルの条文(1875年) ]

   That no sale of spirituous or intoxicating liquor shall be made between the hours of 11 at night and 6 in the morning, nor during the Lord's day, except that if the licensee is also licensed as an Innholder he may supply such liquor to guests who have resorted to his house for food and lodging.
   夜11時から朝6時までの間において,及び安息日には酒類の販売を認めないが,ただし販売免許保有者が宿泊施設の免許も有する場合,食事ならびに宿泊のために施設を利用する客への酒類提供はその限りでない.


[ 「セミコロン版」の条文(1880年) ]

   That no sale of spirituous or intoxicating liquor shall be made between the hours of 11 at night and 6 in the morning; nor during the Lord's day, except that if the licensee is also licensed as an Innholder he may supply such liquor to guests who have resorted to his house for food and lodging.
   夜11時から朝6時までの間においては酒類の販売を認めない;これは安息日にも及ぶが,ただし販売免許保有者が宿泊施設の免許も有する場合,食事ならびに宿泊のために施設を利用する客への酒類提供はその限りでない.


 句読点の書き換え後の「セミコロン版」では,夜間の酒類販売制限は,後続の但し書きのスコープ外となるため,例外なく常に適用されることになります.つまり,飲酒制限をより強める条文になっているのです.これだけでもいろいろな意味で恐ろしい事件ですが,本書ではさらに恐ろしい事件(文字通り生命に関わる事件)が詳述されることになります.ぜひ本書を手に取っていただければ.
 なお,先日 Voicy heldio のプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) の配信回「【英語史の輪 #53】酒飲みが大騒ぎしたセミコロン」にて,上記のエピソードを導入しました.



 ・ セシリア・ワトソン(著),萩澤 大輝・倉林 秀男(訳) 『セミコロン --- かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』 左右社,2023年.
 ・ Watson, Cecelia. Semicolon: How a Misunderstood Punctuation Mark Can Improve Your Writing, Enrich Your Reading and Even Change Your Life. London: 4th Estate, 2019.

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2023-11-02 Thu

#5302. 「アメリカとカナダの英語」 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の第2章 [voicy][heldio][review][notice][world_englishes][ame][canadian_english][hel_education][we_nyumon][variety]


 新著『World Englishes 入門』は,本ブログでもすでに何度か取り上げてきました.その第2章「アメリカとカナダの英語」を執筆された今村洋美先生(中部大学)と,Voicy heldio にて対談させていただきました.「#883. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 今村洋美先生とのアメリカ・カナダ英語をめぐる対談」です.本編とアフタートークを合わせて20分ほどの音声コンテンツです.ぜひお聴きください.
 以下,第2章の内部の小見出し等を紹介します.



1 アメリカ英語の歴史と現状
   (1) 初期のアメリカ英語
   (2) イギリス人以外の入植者たち
   (3) アメリカ独立宣言から19世紀にかけて
   (4) 「アメリカ語」から「アメリカ英語」へ
   コラム ニューヨークはオランダの香り
   コラム イングリッシュ・オンリー vs. イングリッシュ・プラス
2 アメリカ英語の言語的特徴
   (1) アメリカ英語の特徴
   (2) 地域方言
   (3) 黒人英語 (African-American English)
   (4) チカノ英語からアメリカ先住民の英語まで
3 カナダ英語の歴史と現状
   (1) フランス人入植者からイギリス人入植者へ
   (2) 一般カナダ英語とカナダ英語の誕生
   (3) イギリス人/フランス人以外の入植者たち
   コラム 英語とフランス語の公用2言語主義
4 カナダ英語の言語的特徴
   (1) 一般カナダ英語
   (2) カナダ英語の話し方と発音
   (3) カナダ英語の辞書と語彙




 図表や地図も豊富で,章末には「研究テーマ」と題する演習問題,そして信頼できる参考文献も付されています.アメリカ英語,カナダ英語について学びたい方は必読です!


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

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2023-10-19 Thu

#5288. 「イギリスとケルトの英語」 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の第1章 [voicy][heldio][review][notice][world_englishes][celtic][scots_english][wales][irish_english][hel_education][we_nyumon][variety]


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 このブログでもすでに何度か紹介している新刊書『World Englishes 入門』の第1章「イギリスとケルトの英語」を執筆された和田忍先生(駿河台大学)と,直接対談する機会を得ました.一昨日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて配信しました.「#869. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 和田忍さんとの対談」です(15分ほどの音声コンテンツ).ぜひお聴きいただければ.



 本書は文字通り世界英語 (world_englishes) に関する本ですが,その礎となる第1章は,実は凝縮された英語史概説となっています.つまり,古英語期以前から近代英語までを要領よくカバーした,18ページほどの英語史入門として読めるということです.
 世界英語入門を謳う本書を手に取る読者の多くは,英米以外の英語の諸変種,例えばインド英語,シンガポール英語,ジャマイカ英語などの状況についてとりわけ知りたいと思っているのではないでしょうか.そのような読者にとっては,伝統的かつ主流派に属する英語変種であるイギリス英語やアメリカ英語には,むしろあまり関心が湧かないということもあるかと思います.
 しかし,なぜ世界英語がこのように多様なのかという本質的な謎を解くためには,英語がたどってきた歴史の理解が欠かせません.その礎として,英語史の概略的な知識がぜひとも必要になります.第1章は,そのような位置づけとして読めるのではないかと思います.
 しかも,単なる「イギリスの英語」ではなく「イギリスとケルトの英語」と「ケルト」がタイトルに添えてあるのが,心憎い演出です.英語は主に近代以降にイギリスの植民地支配を通じて世界展開していきますが,すでにその千年以上前から,ケルト人が住まっていたブリテン諸島において植民地支配の練習のようなことが行なわれていたからです.第1章は近代以降の英語の世界展開のミニチュア版を示してくれている --- そのような読み方が可能です.また,英語が歴史的に言語接触の多かった言語であることもよく分かる章となっています.
 以下,第1章のなかの小見出しとコラムを挙げておきます.



1 英語のおこり --- 古代から中世末期まで
   (1) ブリトン人とローマン・ブリテン
   (2) ゲルマン人の襲来と英語のおこり
   (3) ヴァイキングとノルマン・フレンチの影響
   コラム ケルト文化の英語への影響
2 世界に広がる英語の原点 --- 近代英語以降
   (1) 大母音推移とシェイクスピアの英語
   (2) 辞書と文法書の発展
   コラム ヴァイキングのことばの影響 --- 古ノルド語と英語の姉妹語
   (3) 英語語彙の拡充
3 イングランド地域の英語
   (1) 容認発音
   (2) イングランド南部の英語 --- ロンドン近郊の英語から
   (3) イングランド北部の英語 --- 南部の英語との比較から
   コラム 大母音推移による音の変化
4 ケルト地域の英語
   (1) ケルト地域とは
   (2) スコットランドの英語
   (3) ウェールズの英語
   (4) アイルランドの英語




 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

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2023-10-04 Wed

#5273. 英語に関する最新統計 --- 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)の序章より [world_englishes][notice][hel_education][hel][statistics][demography][review][we_nyumon]

 先日の記事「#5268. 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年)」 ([2023-09-29-1]) で紹介したこちらの本,一般発売が開始となったようです.


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 これまで本ブログでもWorld Englishes世界英語')については多く取り上げてきました (cf. (world_englishes)) .21世紀に入ってから英語学・英語史でも驚くほど注目されるようになった今をときめく話題です.この15年ほどを振り返ってみても,英語学・英語史を専攻する大学生の研究テーマとして大人気のトピックといってよいでしょう.この World Englishes の人気の高まりには,間違いなく社会的な背景があると考えています.この問題についていろいろな機会に書いたり話したりしてきましたが,今後も注目していく予定です.
 そんな折りに,この『World Englishes 入門』が出版されました.これから,本書を参照しつつ本ブログや Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,関連する話題を取り上げていくつもりですので,ぜひ伴走していただければ.
 大石晴美・梅谷博之氏による「序章 World Englishes---世界諸英語」では,世界の言語や英語に関する最新の事実や統計が示されています.いくつか引用します.

 ・ 現在,世界には196か国が存在し,7000以上の言語が使われている.(p. 6)
 ・ 2022年11月,世界の総人口は80億人を超えた(世界人口推計 2022).そのうち英語を使用する人口(母語,第二言語,外国語としての英語使用者)は約14億5000万人,そのうち母語話者が約3億7000万,第二言語,外国語としての使用者は約10億8000万人である (Ethnologue 2022) .このことから非母語話者の数が母語話者の数をはるかに上回っていることがわかる.(p. 9--10)
 ・ 世界で,英語を公用語もしくは準公用語と定めている国は54か国である.4か国のうち1か国が英語を公用語や準公用語にしていることになる.(p. 10)
 ・ 世界のインターネット総人口は,約41億6000万人(全人口の69%)である (Internet World Stats 2023) .そのうち,26%が英語仕様人口であり,インターネット普及率が英語の広がりにつながっている.(p. 10)
 ・ 世界で上映されている映画のうち英語が用いられているのは8割以上である. (p. 10)

 本書はコラムも充実しています.例えば,序章のなかの2つめのコラムにおいて「世界の英語を映画で学ぶ研究会」(京都府立大学)が紹介されています.すべての映画が観たくなってしまい,たいへん困っています.

 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

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2023-09-29 Fri

#5268. 大石晴美(編)『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) [world_englishes][review][notice][hel_education][hel][toc][we_nyumon]


大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.



 待望の世界英語 (World Englishes) に関する最新の入門書が,来週半ばに出版されます(税込定価2,640円;Amazon で予約受付中).私自身,とりわけここ数年間,英語史の観点から世界英語の現象に関心を寄せ,いろいろと考えたり執筆・講演などをしてきました.手に取りやすく読みやすい本書の出版は,この現代的な問題のおもしろさが広く一般に知られる好機となると期待しています.関係者よりご献本いただきまして,目下楽しく拝読しています(ありがとうございました!).
 本書は,2012年に昭和堂より出版された『World Englishes---世界の英語への招待』(田中春美・田中幸子(編))の続編に当たる本です.前著から,執筆メンバー,文献,データなどにおいて大きく刷新が加えられています.考察対象とされる世界英語変種も幅広さを増し,知りたくても知り得なかった,盲点というべきアジア地域の英語変種 --- 例えば中東地域,韓国,中華世界,モンゴル,ミャンマー --- なども取り上げられています.
 以下,目次と各章の執筆者を掲載します.



序章 World Englishes --- 世界諸英語(大石 晴美・梅谷 博之)
第I部 母語としての英語
   第1章 イギリスとケルトの英語(和田 忍)
   第2章 アメリカとカナダの英語(今村 洋美)
   第3章 オーストラリアとニュージーランドの英語(岡戸 浩子)
第II部 公用語・第二言語としての英語
   第4章 インドの英語(榎木薗 鉄也・加藤 拓由)
   第5章 東南アジアの英語(大石 晴美)
   第6章 アフリカの英語(山本 忠行)
   第7章 カリブ海の英語(山口 美知代)
第III部 国際語・外国語としての英語
   第8章 ヨーロッパと中東の英語(高橋 真理子)
   第9章 日本の英語(今村 洋美)
   第10章 韓国の英語(小林 めぐみ)
   第11章 中華世界の英語(山口 美知代)
   第12章 モンゴルの英語(梅谷 博之)
   第13章 ミャンマーの英語(大石 晴美)
終章 World Englishes の未来(大石 晴美)
発音について(梅谷 博之)




 これまでも繰り返し述べてきましたが,世界英語はすぐれて現代的なトピックのように見えますし,実際にそうなのですが,実のところ英語史との親和性が非常に強い領域です.むしろ歴史的次元を抜きにして世界英語を論じることはできないだろうと私は考えています.英語史の国際学会でも世界英語に関する研究発表部屋が特別に用意されることは珍しくなくなってきていますし,世界英語に関するハンドブックの章なども英語史研究者が執筆していることが多いです.さらにいえば,本書の序章と第1章は,合わせて事実上の英語史概説となっていると言ってよいでしょう(第1章の著者は英語史を研究している和田忍先生(駿河台大学)です).
 これから熟読した上で,今後も本書から話題を取り上げつつ,本ブログ記事を執筆したり,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で紹介していきたいと思っています.ご著者の先生方で,もし heldio 対談などをお受けくださるようであれば,ぜひよろしくお願いいたします!
 本ブログの世界英語に関する記事群へは world_englishes よりご訪問ください.

 ・ 大石 晴美(編) 『World Englishes 入門』 昭和堂,2023年.

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2023-09-26 Tue

#5265. 今井むつみ・秋田喜美著『言語の本質』(中公新書,2023年) [review][linguistics][language_change][yurugengogakuradio][youtube][onomatopoeia][abduction][language_acquisition][evolution][dynamic_equilibrium]


今井 むつみ・秋田 喜美 『言語の本質 --- ことばはどう生まれ,進化したか』 中公新書,2023年.


 中公新書の新刊書『言語の本質』.言語学界隈ではすでに多くのメディアで取り上げられ,話題となっている.中央公論新社のサイトでは特設サイトが設けられており,盛り上がりの様子がわかる.
 私が同僚の井上逸兵氏とともに運営している YouTube の「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」でも「#141. ベストセラー本,今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』を語ってみました.」を2ヶ月ほど前に紹介している.また,人気 YouTube/Podcast チャンネル「ゆる言語学ラジオ」でも,本書の著者の1人である今井むつみ氏の出演回を含め多くの関連回が配信されている.
 本書では,(1) 従来の言語学研究では周辺的な扱いを受けてきたオノマトペ (onomatopoeia) が,言語進化・言語習得の初期段階においてきわめて大きな役割を演じており,(2) その基盤の上に,仮説形成推論 (abduction) というヒト固有の推論に駆動される形で,言語能力が雪だるま式に発展・向上していく(=ブートストラッピング)モデルが提案されている.仮説モデルではあるものの,豊富な先行研究に基づきつつ発達心理学の実証実験に裏打ちされた議論には,強い知的興奮を感じる.
 本書は,言語変化や言語変異を考える上でも示唆的な指摘に富む.終章では7点の「言語の大原則」が提案されているが,その2点目に「変化すること」が掲げられている.そちらを引用する (258) .

 ・ 慣習を守る力と,新たな形式と意味を創造して慣習から逸脱しようとする力の間の戦いである
 ・ 典型的な形式・意味からの一般化としては完全に合っていても,慣習に従わなければ「誤り」あるいは「不自然」と見なされる
 ・ ただし,言語コミュニティの大半が新たな形式や意味,使い方を好めば,それが既存の形式,意味,使い方を凌駕する
 ・ 変化は不可避である


 言語は,維持しようとする力と変化しようとする力の拮抗と均衡により,結局は変化していくとはいえ体系としては維持されていくという,まさに動的平衡 (dynamic_equilibrium) を体現する不思議な存在であることが,ここでは謳われている.
 『言語の本質』,ぜひご一読を.

 ・ 今井 むつみ・秋田 喜美 『言語の本質 --- ことばはどう生まれ,進化したか』 中公新書,2023年.

Referrer (Inside): [2023-09-27-1]

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2023-09-10 Sun

#5249. 川端朋広先生と現代英語の言語変化をいかに研究するかについて対談しました [voicy][heldio][review][corpus][pde][syntax][philology][methodology][link]


秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.



 『近代英語における文法的・構文的変化』が,6月に開拓社より出版されています.15--20世紀の英文法およびその変化が実証的に記述されています.本書のユニークな点は,6名の研究者の各々が各世紀の言語事情を定点観測的に調査していることです.個々の章を読むのもよいですし,ある項目に注目して章をまたいで読むのもよいと思います.
 本書については,本ブログ,Voicy heldio,YouTube で様々にご紹介してきました.昨日の heldio では川端朋広先生(愛知大学)との対談回の第2弾「#831. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 川端朋広先生との対談 (2)」を配信しました.今回は,現代英語の言語変化を研究する際の難しさ,悩み,魅力などに注目し,最終的には研究法をめぐる談義に発展しました.35分ほどの音声となります.お時間のあるときにどうぞ.



 こちらの回をもって,本書紹介シリーズが出そろったことになります.改めてこれまでの関連コンテンツへのリンクを張っておきます.著者の先生方の声を聴きつつ本書を読んでいくというのも,一つの味わい方かと思います.



 ・ YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」より「#137. 辞書も規範文法も18世紀の産業革命富豪が背景に---故山本史歩子さん(英語・英語史研究者)に捧ぐ---」

 ・ hellog 「#5166. 秋元実治(編)『近代英語における文法的・構文的変化』(開拓社,2023年)」 ([2023-06-19-1])
 ・ hellog 「#5167. なぜ18世紀に規範文法が流行ったのですか?」 ([2023-06-20-1])
 ・ hellog 「#5182. 大補文推移の反対?」 ([2023-07-05-1])
 ・ hellog 「#5186. Voicy heldio に秋元実治先生が登場 --- 新刊『近代英語における文法的・構文的変化』についてお話しをうかがいました」 ([2023-07-09-1])
 ・ hellog 「#5208. 田辺春美先生と17世紀の英文法について対談しました」 ([2023-07-31-1])
 ・ hellog 「#5224. 中山匡美先生と19世紀の英文法について対談しました」 ([2023-08-16-1])
 ・ hellog 「#5235. 片見彰夫先生と15世紀の英文法について対談しました」 ([2023-08-27-1])
 ・ hellog 「#5242. 川端朋広先生と20世紀の英文法について対談しました」 ([2023-09-03-1])
 ・ hellog 「#5249. 川端朋広先生と現代英語の言語変化をいかに研究するかについて対談しました」 ([2023-09-09-1])

 ・ heldio 「#769. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 秋元実治先生との対談」
 ・ heldio 「#772. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 16世紀の英語をめぐる福元広二先生との対談」
 ・ heldio 「#790. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 田辺春美先生との対談」
 ・ heldio 「#806. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 中山匡美先生との対談」
 ・ heldio 「#824. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 川端朋広先生との対談 (1)」
 ・ heldio 「#831. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 川端朋広先生との対談 (2)」
 ・ heldio 「#837. 18世紀の英語の文法変化 --- 秋元実治先生との対談」(←こちらは 2023/09/15(Fri) の後記)




 ・ 秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.

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2023-09-03 Sun

#5242. 川端朋広先生と20世紀の英文法について対談しました [voicy][heldio][review][corpus][pde][syntax][phrasal_verb][subjunctive][complementation][preposition]


秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.



 こちらの本は6月に開拓社より出版された『近代英語における文法的・構文的変化』です.6名の研究者の各々が,15--20世紀の各世紀の英文法およびその変化について執筆されています.
 本書については本ブログや Voicy heldio で何度かご紹介してきましたが,今回は,第6章「20世紀の文法的・構文的変化」を執筆された川端朋広先生(愛知大学)との heldio 対談をご案内します.「#824. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 川端朋広先生との対談 (1)」と題し,40分超でじっくりお話しをうかがっています.



 2023年の現在,20世紀の英語は正確にいえば「過去の英語」となりますが,事実上は私たちが日常的に触れている英語と同じものと考えられます.しかし,100年余の時間を考えれば,当然ながら細かな言語変化はたくさん起こってきたはずです.1901年と2023年の英語とでは,お互いに通じないことはないにせよ,やはり微妙なズレはあるはずです.現代英語の文法にも確かに変化が生じてきたのです.
 英語史ときくと,古英語や中英語のような古文を研究する分野という印象があるかもしれませんが,直近数十年に生じた英語の変化を追うのも立派な英語史研究の一部です.今回の川端先生のお話しからも,言語変化のダイナミックさと複雑さが伝わるのではないでしょうか.
 本書についてご関心をもった方は,ぜひ以下のコンテンツも訪問していただければと思います.



 ・ YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」より「#137. 辞書も規範文法も18世紀の産業革命富豪が背景に---故山本史歩子さん(英語・英語史研究者)に捧ぐ---」

 ・ hellog 「#5166. 秋元実治(編)『近代英語における文法的・構文的変化』(開拓社,2023年)」 ([2023-06-19-1])
 ・ hellog 「#5167. なぜ18世紀に規範文法が流行ったのですか?」 ([2023-06-20-1])
 ・ hellog 「#5182. 大補文推移の反対?」 ([2023-07-05-1])
 ・ hellog 「#5186. Voicy heldio に秋元実治先生が登場 --- 新刊『近代英語における文法的・構文的変化』についてお話しをうかがいました」 ([2023-07-09-1])
 ・ hellog 「#5208. 田辺春美先生と17世紀の英文法について対談しました」 ([2023-07-31-1])
 ・ hellog 「#5224. 中山匡美先生と19世紀の英文法について対談しました」 ([2023-08-16-1])
 ・ hellog 「#5235. 片見彰夫先生と15世紀の英文法について対談しました」 ([2023-08-27-1])

 ・ heldio 「#769. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 秋元実治先生との対談」
 ・ heldio 「#772. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 16世紀の英語をめぐる福元広二先生との対談」
 ・ heldio 「#790. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 田辺春美先生との対談」
 ・ heldio 「#806. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 中山匡美先生との対談」
 ・ heldio 「#817. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 片見彰夫先生との対談」




 ・ 秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.

Referrer (Inside): [2023-09-10-1]

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