先日の「#5422. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんをゲストにお迎えしての「言語学バル」が公開されています」 ([2024-03-01-1]) に引き続き,ゆる学徒カフェのスタジオにて水野さんとともに公開収録した「いのほた言語学チャンネル」のおしゃべり回第2弾が昨晩公開されました.「#212. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん再登場第2回・出版人/読書人としての水野さんにとっての言語学本」と題する27分ほどの動画となっています.昨晩の公開以来,いつもより多くの方々に視聴いただいており,コメント欄も賑わってきています.ぜひお時間のあるときにどうぞ.
今回のおしゃべりもおおよそランダムに展開しました.小見出しをつけるとすれば,次のような感じです.
・ 今井むつみ・秋田喜美(著)(『言語の本質』中公新書,2023年)の再紹介
・ 水野さんによる言語学系書籍の出版事情と未来についての持論
・ 日本の出版界における新書の位置づけ
・ audible などの音声メディアは日本で普及していくか?
・ 「ラジオ型言語」と「テレビ型言語」
最後の論点は,故鈴木孝夫先生による区分に基づきます.関連する話題は,本ブログの「#1655. 耳で読むのか目で読むのか」 ([2013-11-07-1]),「#2919. 日本語の同音語の問題」 ([2017-04-24-1]),「#3023. ニホンかニッポンか」 ([2017-08-06-1]) などで触れています.そちらもご参照ください.
水野さんとのおしゃべり回は,向こう2週間続いていく予定です.どうぞ水曜日の午後6時をお楽しみに!
「#5394. 2月9日,ゆる学徒カフェにて,ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんをゲストにお迎えして「いのほたチャンネル」の公開収録!」 ([2024-02-02-1]) で案内した通り,予定通りに公開収録終えました.その後編集を加えた動画が,一昨日の「いのほた言語学チャンネル」(旧「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」)最新回にて公開されています.「#210. 水野太貴さん(ゆる言語学ラジオ)再登場!ゆる学徒カフェにお邪魔してます!」です.28分30秒ほどの動画です.ぜひお時間のあるときにご覧ください.
「言語学バル」の1シリーズとして水野さんをゲストにお迎えしたわけですが,収録場所はむしろ逆に我々がお呼ばれされたかのような具合で,池袋のゆる学徒カフェのスタジオにて収録させていただきました.30名ほどの聴衆の方々に温かく見守られながらの楽しいおしゃべりタイムとなりました.差し入れのシャンパンまで賜わり,それを味わいながらの収録でした.水野さん,聴衆の皆さん,カフェのスタッフ皆さんにお礼申し上げます.ありがとうございました.
話題としては,カタカナ語から始まり,水野さんが番組作りのためにいかにして生成文法を学んだか,生成文法以降の言語学の潮流,「ゆる言語学ラジオ」のコンテンツがいかにして制作されているかなどに飛び,語源のトポスにまで至ります.今回は水野さんシリーズの第1回で,今後第4回まで続く予定です.毎週水曜日の午後6時をお楽しみに!
水野さんを「言語学バル」にお呼びしたのは2度目のことです(1度目はまだ「言語学バル」という呼称はありませんでしたが).今回の配信と合わせて前シリーズの4回もご覧ください.
・ 第1弾 「#120. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんにお越しいただきました!」(2023年4月19日)
・ 第2回 「#122. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第2弾・語に始まって語に終わる」(2023年4月26日)
・ 第3回 「#124. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第3弾・ゆる言語学ラジオはゆるくない!」(2023年5月3日)
・ 第4回 「#126. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第4弾・水野さんから見たこのチャンネル?」(2023年5月10日)
引き続き「ゆる言語学ラジオ」と「いのほた言語学チャンネル」をよろしくお願いします!
1月24日(水)の19:00より,同僚の井上逸兵先生と運営しているYouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」で初のライヴ配信を試みました.200回記念としての挑戦企画でした.当日は無事にライヴ配信できたようで一安心.多くの方々に生で視聴していただき,多くのコメントもチャットを通じて寄せていただき,ありがとうございました.目下,アーカイヴ配信として視聴できますので,観ていない方はぜひどうぞ.「#200. 井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネルライブ配信」(64分ほどの配信です).
200回記念の飲み会回ということで,英語学・言語学の話題は時折挟み込まれる程度で,実質的には雑談となっていますが,今後「いのほたチャンネル」(←公式の略称と決定しました)を続けていくにあたり様々な示唆を得ました.とりわけ寄せていただいたコメントからはおおいに刺激を受けました.チャットはまさにライヴ感満載という感じで楽しかったですね.「200回おめでとうございます」「家族でみています」「楽しそう」などのコメントをいただきましたが,2人は本当に楽しかったですヨ.また時折ライヴでお届けできればと.
「いのほたチャンネル」は毎週(水)(日)の午後6時に配信しています.水曜日はゲストをお招きしての飲み会回「言語学バル」,日曜日は井上・堀田の2人による選りすぐりの英語学・言語学の話題をお届けしています.
このチャンネルにゲスト出演してしてもよいという言語学界隈の方,ぜひお声がけください!
昨年大晦日に井上・堀田の YouTube (いのほたチャンネル)で公開した「#193. インド・ヨーロッパ祖語という着想のどこがすごいのか?! --- 近代言語学の祖と言われる Sir William Jones はどのような人物?」がよく視聴されています.本ブログでもご紹介しましょう.
Jones は,「比較言語学」 (comparative_linguistics) という近代的で科学的な言語学の扉を開いた人物として言語学史上に名を残しています.しかし,動画の中でも述べている通り,私が考える Jones の最大の功績は,共通の祖語(後の比較言語学で「印欧祖語」と呼ばれることになる言語)が今や失われているだろうと看破し喝破した点にあります.ヘブライ語やギリシア語など,ユダヤ・キリスト教と関わりの深い宗教的威信のある既存の言語のいずれでもなく,もう失われてしまった言語なのだろうと予言した慧眼に敬服します.
この事情については,上記 YouTube のほか hellog や Voicy heldio でも取り上げてきましたので,合わせて参照していただければ
・ hellog 「#282. Sir William Jones,三点の鋭い指摘」 ([2010-02-03-1])
・ hellog 「#658. William Jones 以前の語族観」 ([2011-02-14-1])
・ hellog 「#1272. William Jones 以前の語族観 (2)」 ([2012-10-20-1])
・ hellog 「#3705. Sir William Jones」 ([2019-06-19-1])
・ heldio 「#352. Sir William Jones --- 語学の天才にして近代言語学・比較言語学の祖」(2022年5月18日配信)
今年も英語史・英語学・言語学に関して様々な発信活動を行なってきました.YouTube チャンネル「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」でも,毎週水・日の午後6時に動画を配信してきました.2023年中に配信してきた,元日の第89回から12月27日(水)に公開された第193回までの104回分を対象に,最もよく視聴された動画10本を紹介します.
1. 「#120. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さんにお越しいただきました!」
2. 「#122. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第2弾・語に始まって語に終わる」
3. 「#124. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第3弾・ゆる言語学ラジオはゆるくない!」
4. 「#126. ゆる言語学ラジオ・水野太貴さん登場!第4弾・水野さんから見たこのチャンネル?」
5. 「#160. もりてつさんにお越しいただきました!!!人気 YouTuber,人気予備校講師,人気 TOEIC 等英語講師もりてつさんの礎は認知言語学!?」
6. 「#176. 国際的音声学者・川原繁人さんが語る音声学・音韻論の遍歴!」
7. 「#103. アメリカもイギリスもオーストラリアも英語は公用語ではない.ニュージーランドは英語は公用語.なぜ? 日本語が公用語のところはあるけど日本じゃない!」
8. 「#141. ベストセラー本,今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』を語ってみました.」
9. 「#91. ゆるーい中世の英語の世界では綴りはマイルール?! through のスペリングは515通り! 堀田的ゆるさベスト10!」
10. 「#139. 現存する最古の英文の謎を堀田はどう読み解く?」
最上位にランクインした多くは,著名な方々との対談回でした.最もよく視聴されたのは,人気 YouTube/Podcast チャンネル「ゆる言語学ラジオ」のパーソナリティの1人である水野太貴さんとの飲み会対談回でした.2.5万回の再生数です.水野さんは今年も大活躍で,私自身「ゆる言語学ラジオ」に出演する機会もいただきまして,たいへんお世話になりました.本ブログの yurugengogakuradio の記事群もご参照ください.
YouTuber としてご活躍の英語予備校界で著名なもりてつさん,音韻論者・音声学者として破竹の勢いの川原繁人さんとの対談回も上位にランクイン.その後,井上さんと堀田からの話題も上位に食い込みました.視聴して下さった方々に御礼申し上げます.
本 YouTube チャンネルは,開設して1年10ヶ月ほどになります.来年2月末には2周年を迎えますが,その前の1月24日(水)には第200回の記念回も迎えることになります.この第200回には,初めて YouTube ライヴで配信しようと思っています.先日水曜日に公開された最新回「英語史,古英詩,文学史,英国文化エッセイをストレスゼロで縦横無尽に書きまくる唐澤一友さん(立教大学)第1弾!」の概要欄で告知している通り,「事前のご質問も大募集!」ですので,そちらのコメント欄などから寄せていただければと思います.
明日からの新年も「英語史をお茶の間に」届けるべく,英語史活動(hel活)を続けています.引き続きよろしくお願いいたします.
標記の企画のために日々5件の投票フォームへのリンクを張りつけていきますので,こちらより多くの皆さんのご投票をお待ちしています(12月12日(火)以降の分は「後記」となります).
・ 1日目,12/11(月) ABCDE の投票フォーム
・ 2日目,12/12(火) FGHIJ の投票フォーム
・ 3日目,12/13(水) KLMNO の投票フォーム
・ 4日目,12/14(木) PQRST の投票フォーム
・ 5日目,12/15(金) UVWXYZ の投票フォーム
こちらの Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) は今朝の配信回です.「#924. 今週は「変なアルファベット表」のための投票週間です」として,khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんとともに重要な「投票の呼びかけ」についての告知をいたしました.ぜひお聴き下さい.
2ヶ月近く前のことになりますが khelf によるの英語史活動の一環として「変なアルファベット表」を作ろうという企画が立ち上がりました.この企画については「#5303. 『英語史新聞』第7号が発行されました」 ([2023-11-03-1]) で紹介した『英語史新聞』第7号で触れたほか,Voicy heldio の配信で何度か広報してきました.さらに,やや遅ればせながら,つい先日のことになりますが「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」でも宣伝しました.この企画に関する広報関連リンクを以下に張っておきます.
・ heldio 「#872. 変なアルファベット表を作ろうと思っています --- khelf 企画」
・ heldio 「#873. スペリングの規則と反則 --- 「変なアルファベット表」企画に寄せて」
・ heldio 「#887. khelf 寺澤志帆さんと「変なアルファベット表」企画の中間報告」
・ helwa 「【英語史の輪 #42】変なアルファベット表を作る企画」
・ helwa 「【英語史の輪 #43】変なアルファベット表企画への反響」
・ YouTube 「eye はもっとへんなつづりだった!!三文字規則が生み出した現象たち?--へんなアルファベット表向け単語大募集!【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル 第185回」
この2ヶ月ほどの間,皆さんから多くの「変な綴字の単語」の候補が寄せられてきました.予期していたよりも多く寄せていただきまして,応募にご協力いただいた方々には心より感謝申し上げます.ありがとうございました.
先日,単語応募を締め切りました.今週からは「変なアルファベット表」を作成するために次のステージに進みたいと思います.皆さんから寄せられた候補単語を整理し,Google Forms を利用して1人1票の投票を実現する「投票用紙」を準備しました.アルファベットの各文字で始まる単語のうち,「変なアルファベット表」に掲載するのに皆さんが最もふさわしいと考える「変な単語」を選択肢より1つ選び,ご回答いただければと思います.
上記の今朝の heldio 配信回で詳しくご案内していますが,今週1週間を集中的な投票期間としたいと思っております.本日(月)から始めて(金)までの5日間,毎日アルファベット順で5--6文字に注目し,それぞれの文字で始まる候補単語群から1つベスト(ワースト?)な単語を選んでいただきます.向こう数日間,毎朝の heldio,あるいは khelf の X(旧ツイッター)アカウント @khelf_keio より,投票用の Google Forms へのアクセスをリマインド致しますので,ぜひご投票いただけますと幸いです(khelf HP でも案内します).本日より順次公開されてくる全5件の Google Forms につきましては,皆さんの投票の便を図るために上記の通り毎朝都度ご案内していく予定ですが,その日の終わりに各フォームを閉じるわけではありません.向こう2週間12月24日(日)まですべてのフォームをオープンしていますので,都度でもまとめてでも,お時間の許すときにご投票いただければと思います.
伊藤雄馬さんによる『ムラブリ』(集英社インターナショナル,2023年)は,「ゆる言語学ラジオ」や「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」他でもすでに紹介されており,言語学界隈ではよく知られた存在になっています.
本書はインドシナ最後の森の狩猟民,ムラブリ (Mlabri) とその言語をフィールド調査した記録ですが,そのままムラブリに「持っていかれてしまった」言語学者,伊藤雄馬さんの青春記というべきものにもなっています.
先日,井上・堀田の YouTube に伊藤さんをゲストとしてお招きし,ムラブリや言語一般をめぐる対談回を収録しました.ただいま準備中ですが,いずれ公開されますので,そちらもお楽しみに!
・ 伊藤 雄馬 『ムラブリ』 集英社インターナショナル,2023年.
一昨日配信された YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回は「英語史研究は超絶推理ゲーム!!!」と題して,表記の素朴な疑問に答えています.
なぜ書き言葉でしか残っていない古英語や中英語の発音がわかるのか? この問いは定期的に寄せられてくる素朴な疑問ですので,今回 YouTube チャンネルで答えてみました.
本ブログを始めとして別の媒体でも同じ素朴な疑問に回答してきた経緯がありますので,そちらにもリンクを張っておきます.
・ hellog 「#437. いかにして古音を推定するか」 ([2010-07-08-1])
・ hellog 「#758. いかにして古音を推定するか (2)」 ([2011-05-25-1])
・ hellog 「#4015. いかにして中英語の発音を推定するか」 ([2020-04-24-1])
・ hellog 「#4499. いかにして Shakespeare の発音を推定するか」 ([2021-08-21-1])
・ heldio 「#326. どうして古英語の発音がわかるのですか?」(2022年4月22日)
昨日,人気 YouTube/Podcast チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回が配信されました.今回は英語史ともおおいに関係する「不規則動詞はなぜ存在するのか?【カタルシス英文法_不規則動詞】#280」です.
ゆる言語学ラジオの水野太貴さんには,拙著,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio),および YouTube チャンネル「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」のいくつかの関連コンテンツに言及していただきました.抜群の発信力をもつゆる言語学ラジオさんに,この英語史上の第一級の話題を取り上げていただき,とても嬉しいです.このトピックの魅力が広く伝わりますように.
概要欄に掲載していただいたコンテンツ等へのリンクを,こちらにも再掲しておきます.
・ 拙著 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(研究社,2016年)
・ 拙著 『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』(中央大学出版部,2011年)
・ heldio 「#58. なぜ高頻度語には不規則なことが多いのですか?」
・ YouTube 「新説! go の過去形が went な理由」 (cf. 「#4774. go/went は社会言語学的リトマス試験紙である」 ([2022-05-23-1]))
・ YouTube 「英語の不規則活用動詞のひきこもごも --- ヴァイキングも登場!」 (cf. hellog 「#4810. sing の過去形は sang でもあり sung でもある!」 ([2022-06-28-1]))
・ YouTube 「昔の英語は不規則動詞だらけ!」 (cf. 「#4807. -ed により過去形を作る規則動詞の出現は革命的だった!」 ([2022-06-25-1]))
・ heldio 「#9. first の -st は最上級だった!」
・ heldio 「#10. third は three + th の変形なので準規則的」
・ heldio 「#11. なぜか second 「2番目の」は借用語!」
「不規則動詞はなぜ存在するのか?」という英語に関する素朴な疑問から説き起こし,補充法 (suppletion) の話題(「ヴィヴァ・サンバ!」)を導入した後に,不規則形の社会言語学的意義を経由しつつ,全体として言語における「規則」あるいは「不規則」とは何なのかという大きな議論を提示していただきました.水野さん,堀元さん,ありがとうございました! 「#5130. 「ゆる言語学ラジオ」周りの話題とリンク集」 ([2023-05-14-1]) もぜひご参照ください.
日曜日に配信した YouTube の「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回は「#171. OED(オクスフォード英語辞典 --- Oxford English Dictionary)の特徴まるわかり!」です.本ブログでも何度となく登場している,世界最強の英語辞典 OED を一から導入しています.14分ほどの対談動画です.「OED ってよく聞くけど何?」という方は,ぜひご覧ください.画面の背景に OED 第2版の全20冊が並んでいます.
本ブログには OED の様々な側面を紹介する記事も多いですし,OED を実践的に用いて調査し執筆した記事も少なくありません(cf. oed の記事群を参照).今回の YouTube は OED とは何かという導入動画でしたので,同様にイントロ風の趣旨で執筆した記事,および Voicy heldio 配信回へのリンクを一覧しておきます.
・ 「#304. OED 制作プロジェクトののろし」 ([2010-02-25-1])
・ 「#638. 国家的事業としての OED 編纂」 ([2011-01-25-1])
・ 「#644. OED とヨーロッパのライバル辞書」 ([2011-01-31-1])
・ 「#898. OED2 と Web3 の比較対照表」 ([2011-10-12-1])
・ 「#2451. ワークショップ:OED Online に触れてみる」 ([2016-01-12-1])
・ 「#3544. 英語辞書史の略年表」 ([2019-01-09-1])
・ 「#4122. 物凄いツールが現われた --- OED Text Visualizer (beta)」 ([2020-08-09-1])
・ 「#4130. 英語語彙の多様化と拡大の歴史を視覚化した "The OED in two minutes"」 ([2020-08-17-1])
・ 「#4131. イギリスの世界帝国化の歴史を視覚化した "The OED in two minutes"」 ([2020-08-18-1])
・ 「#4133. OED による英語史概説」 ([2020-08-20-1])
・ 「#4141. 1150年を越えて残らなかった古英語単語は OED から外されている」 ([2020-08-28-1])
・ 「#4172. 映画『博士と狂人』の原作者による OED 編纂法の紹介文」 ([2020-09-28-1])
・ 「#4198. 映画『博士と狂人』を観ました」 ([2020-10-24-1])
・ 「#5220. OED と World Englishes」 ([2023-08-12-1])
・ heldio 「#503. OED は歴史的原則にもとづく辞書」(2022年3月2日配信)
・ heldio 「#275. どれだけ長くかかっているのよ,OED の編纂?」(2022年3月3日配信)
上記にもありますが,OED 編纂をめぐる映画『博士と狂人』(原題 The Professor and the Madman)は必見です.
また,「#5158. 家入葉子・堀田隆一著『文献学と英語史研究』(開拓社,2023年)を改めて紹介します」 ([2023-06-11-1]) で紹介した『文献学と英語史研究』の第2章1.1節では,研究ツールとしての OED について詳しく紹介しています.
一昨日配信した YouTube の「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回は「#169. なぜ Z はアルファベットの最後に追いやられたのか? --- 時代に翻弄された日陰者 Z の物語」です.歴史的に「日陰者 Z」と称されてきたかわいそうな文字にスポットライトを当て,12分ほど集中して語りました.これで Z が多少なりとも汚名返上できればよいのですが.
z の文字については,この hellog,および Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」等の媒体でも,様々に取り上げてきました.Z の汚名返上のために助力してきた次第ですが,さすがに Z に関する話題はこれ以上見つからなくなってきましたので,ネタとしてはいったん打ち切りになりそうです.
これまでの Z の推し活の履歴を列挙します.
[ hellog ]
・ 「#305. -ise か -ize か」 ([2010-02-26-1])
・ 「#314. -ise か -ize か (2)」 ([2010-03-07-1])
・ 「#446. しぶとく生き残ってきた <z>」 ([2010-07-17-1])
・ 「#447. Dalziel, MacKenzie, Menzies の <z>」 ([2010-07-18-1])
・ 「#799. 海賊複数の <z>」 ([2011-07-05-1])
・ 「#964. z の文字の発音 (1)」 ([2011-12-17-1])
・ 「#965. z の文字の発音 (2)」 ([2011-12-18-1])
・ 「#1914. <g> の仲間たち」 ([2014-07-24-1])
・ 「#2916. 連載第4回「イギリス英語の autumn とアメリカ英語の fall --- 複線的思考のすすめ」」 ([2017-04-21-1])
・ 「#2925. autumn vs fall, zed vs zee」 ([2017-04-30-1])
・ 「#4990. 動詞を作る -ize/-ise 接尾辞の歴史」 ([2022-12-25-1])
・ 「#4991. -ise か -ize か問題 --- 2つの論点」 ([2022-12-26-1])
・ 「#5042. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第24回(最終回)「アルファベット最後の文字 Z のミステリー」」 ([2023-02-15-1])
[ heldio (Voicy) ]
・ 「#171. z と r の発音は意外と似ていた!」 (2021/11/18)
・ 「#540. Z について語ります」 (2022/11/22)
・ 「#541. Z は zee か zed か問題」 (2022/11/23)
[ helsta (stand.fm) ←数日前に始めました ]
・ 「#3. 動詞を作る接尾辞 -ize の裏話」 (2023/10/08)
ただし,いずれ Z に関する新ネタを仕込むことができれば,もちろん Z の汚名返上活動に速やかに戻るつもりです.皆様,これからも Z にはぜひとも優しく接してあげてくださいね.
中公新書の新刊書『言語の本質』.言語学界隈ではすでに多くのメディアで取り上げられ,話題となっている.中央公論新社のサイトでは特設サイトが設けられており,盛り上がりの様子がわかる.
私が同僚の井上逸兵氏とともに運営している YouTube の「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」でも「#141. ベストセラー本,今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』を語ってみました.」を2ヶ月ほど前に紹介している.また,人気 YouTube/Podcast チャンネル「ゆる言語学ラジオ」でも,本書の著者の1人である今井むつみ氏の出演回を含め多くの関連回が配信されている.
本書では,(1) 従来の言語学研究では周辺的な扱いを受けてきたオノマトペ (onomatopoeia) が,言語進化・言語習得の初期段階においてきわめて大きな役割を演じており,(2) その基盤の上に,仮説形成推論 (abduction) というヒト固有の推論に駆動される形で,言語能力が雪だるま式に発展・向上していく(=ブートストラッピング)モデルが提案されている.仮説モデルではあるものの,豊富な先行研究に基づきつつ発達心理学の実証実験に裏打ちされた議論には,強い知的興奮を感じる.
本書は,言語変化や言語変異を考える上でも示唆的な指摘に富む.終章では7点の「言語の大原則」が提案されているが,その2点目に「変化すること」が掲げられている.そちらを引用する (258) .
・ 慣習を守る力と,新たな形式と意味を創造して慣習から逸脱しようとする力の間の戦いである
・ 典型的な形式・意味からの一般化としては完全に合っていても,慣習に従わなければ「誤り」あるいは「不自然」と見なされる
・ ただし,言語コミュニティの大半が新たな形式や意味,使い方を好めば,それが既存の形式,意味,使い方を凌駕する
・ 変化は不可避である
言語は,維持しようとする力と変化しようとする力の拮抗と均衡により,結局は変化していくとはいえ体系としては維持されていくという,まさに動的平衡 (dynamic_equilibrium) を体現する不思議な存在であることが,ここでは謳われている.
『言語の本質』,ぜひご一読を.
・ 今井 むつみ・秋田 喜美 『言語の本質 --- ことばはどう生まれ,進化したか』 中公新書,2023年.
ここ数日間で,知識共有サービス Mond に寄せられてきた言語系の質問に5件ほど回答しました.こちらでもリンクを共有します.
(1) 敬語の表現が少ない英語の話者には,日本人よりも敬意を示す機会が少ないのでしょうか?
(2) 歴史的に見て「言語の変化=簡略化」なのでしょうか?
(3) ブログ,ラジオ,YouTubeなど,様々なメディアを通じて英語の歴史や語源に関する情報を発信していらっしゃいますが,これらのメディアごとにアプローチやコンセプトを変えて情報を提供していますか?
(4) なぜ人々は(もちろん個人差はあれど)イギリスやフランスなどのアクセントを“魅力的”とし,アジアやインドのアクセントを“魅力がない”とするのでしょうか?
(5) 言語の変化は,どの程度の速度で起こりますか? 例えば,新しい言葉や表現は,どのくらいの頻度で生まれるものなのでしょうか?
Mond に寄せられる言語系の質問は多様ですが,日本語と諸外国語との比較というジャンルの質問が目立ちます.今回も (1) や (4) がそのジャンルに属するかと思います.母語は万人にとって特別な存在であり,あまりに思い入れが強いために,他の言語と比べてきわめて特異な性質をもっているものと錯覚してしまうことがしばしば起こります.とりわけ語学を通じて理解の深まった他言語と比較するときに,母語の際立った言語特徴が目に付くことが多く,母語の特別視に拍車がかかります.
長年言語学に触れてきた経験から感じることは,母語の特別視は往々にして行き過ぎる傾向があるということです.確かに各々の言語には固有の特徴があるもので,その点では日本語も例外ではないのですが,日本語のみに観察される言語特徴というのは,さほど多くあるわけではなく,広く古今東西の諸言語を見渡せば類例はおおよそ見つかるものです.言語の素朴な疑問に関する直感は,当たることもありますが,割と外れることも多いのです.
今回の5件の質問のうちの3つ,(1), (2), (4) は,振り返ってみれば,言語にまつわる神話 (language_myth) に関わる質問だったように思います.言語学的な考察を通じて,言語の化けの皮を一枚一枚剥いでいくのが,何ともエキサイティングですね.
昨日,Voicy heldio にて多々良直弘さん(桜美林大学)との対談を配信しました.多々良さんは,スポーツ実況中継の英語(と日本語の比較)を研究されています.他の英語学者仲間数名の同席の上,スポーツ実況中継の言語とは何か,おおいに語り合いました.「#818. 実況中継の英語 with 多々良直弘さん他」をお聴きください(36分ほどの音声配信).
ラジオ,テレビ,最近のネットストリーミングの実況といったメディアによる違い,国・文化・言語による差違,スポーツ種別による差など,様々なパラメータが関わり,調査や分析も難しい領域だと思いますが,文字通りリアルタイム実況的な研究分野であると感じました.
なお,多々良さんには以前「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」に出演していただき,ご専門であるスポーツ実況中継の英語やその他の話題について,4回にわたりお話しをいただきました(cf. 「#5162. 井上・堀田の YouTube でスポーツ英語の多々良直弘さんをゲストに」 ([2023-06-15-1])).ぜひそちらもご視聴ください.
・ 「多々良直弘さん(桜美林大学)登場! --- スポーツ実況は国ごとにぜんぜんちがう!【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル 第136回 】」
・ 「スポーツ実況の詩学 --- とくにあの国の実況はすごい!【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル 第138回 】」
・ 「多々良直弘さんはいかにして言語学者になったか【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル 第140回 】」
・ 「本の話,出版の話,翻訳の話 --- 多々良直弘さん第4弾(最終回)【井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル 第142回 】」
日々の hellog 記事の執筆のためにも,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の収録のためにも,標題の『英語語源辞典』を引かない日は私にとってないと言い切ってよいと思います(もう1つ引かないことがないのは OED).
先日,「ゆる言語学ラジオ」への出演,および田辺春美先生(成蹊大学)との Voicy 対談の2回にわたり,英語の語源に関心のある方々に向けて『英語語源辞典』を強く推奨しました.それぞれ YouTube 「英単語帳の語源を全部知るために,研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」(とりわけ49分30秒辺りから)と Voicy 「#787. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)のスゴさをご紹介 --- 田辺春美先生との対談」です.ぜひご視聴ください.
この『英語語源辞典』と関連して,昨日 「研究社note」より「『英語語源辞典』と活版印刷裏話」と題する興味深い記事が公開されました.研究社編集部の N. A. さんが,元研究社印刷社長の小酒井英一郎さんにインタビューして執筆された記事です.
『英語語源辞典』制作の裏側について,知らないことばかりで驚きました.例えば:
・ 研究社最後の活字で組版された辞典
・ 17年近い年月をかけて編纂された辞典
・ 使用した活字は,本が刷り終わったら全部溶かす(保管場所も文字も足りなくなるので)
制作に携わったすべての方々に改めて感謝しつつ,今日も『英語語源辞典』をめくっていきたいと思います.
hellog の語源(辞典)関連の記事は数多くありますが,以下に主だったものを抜き出します.ご参考までに.
・ 「#600. 英語語源辞書の書誌」 ([2010-12-18-1])
・ 「#1765. 日本で充実している英語語源学と Klein の英語語源辞典」 ([2014-02-25-1])
・ 「#485. 語源を知るためのオンライン辞書」 ([2010-08-25-1])
・ 「#5051. 語源を利用した英語ボキャビルのために hellog と heldio の活用を!」 ([2023-02-24-1])
・ 「#3546. 英語史や語源から英単語を学びたいなら,これが基本知識」 ([2019-01-11-1])
・ 「#3696. ボキャビルのための「最も役に立つ25の語のパーツ」」 ([2019-06-10-1])
・ 「#3698. 語源学習法のすゝめ」 ([2019-06-12-1])
・ 「#4360. 英単語の語源を調べたい/学びたいときには」 ([2021-04-04-1])
・ 「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1])(←5年前に『英語語源辞典』にも注目しつつ英語語源講座を開いたことがあります)
・ 「#466. 語源学は技芸か科学か」 ([2010-08-06-1])
・ 「#727. 語源学の自律性」 ([2011-04-24-1])
・ 「#1791. 語源学は技芸が科学か (2)」 ([2014-03-23-1])
・ 「#598. 英語語源学の略史 (1)」 ([2010-12-16-1])
・ 「#599. 英語語源学の略史 (2)」 ([2010-12-17-1])
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』 研究社,1997年.
「ゆる言語学ラジオ」からこちらの「hellog~英語史ブログ」に飛んでこられた皆さん,ぜひ
(1) 本ブログのアクセス・ランキングのトップ500記事,および
(2) note 記事,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の人気放送回50選
(3) note 記事,「ゆる言井堀コラボ ー 「ゆる言語学ラジオ」×「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」×「Voicy 英語の語源が身につくラジオ (heldio)」」
(4) 「ゆる言語学ラジオ」に関係するこちらの記事群
をご覧ください.
昨日7月18日(火)に,YouTube/Podcast チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回がアップされました.これまで3回ゲストとして出演させていただきまして,今回は第4回目となります.「英単語帳の語源を全部知るために,研究者を呼びました【ターゲット1900 with 堀田先生】#247」です.どうぞご覧ください.
最後のほうでも力説しているように,「英語史」は決して狭い学問領域ではなく,英語を学ぶ皆が英語に抱く疑問のほとんどについて,何か言うべきことをもっている頼もしい存在です.ぜひこの機会に英語史の存在を(再)認識していただければ.
過去の3回の出演回も合わせてご視聴ください.
・ 第1弾 「#227. 歴史言語学者が語源について語ったら,喜怒哀楽が爆発した【喜怒哀楽単語1】」(5月6日)
・ 第2弾 「#228. 「英語史の専門家が through の綴りを数えたら515通りあった話【喜怒哀楽単語2】」(5月9日)
・ 第3弾:「#234. 英語史の専門家と辞書を読んだらすべての疑問が一瞬で解決した」(5月30日)
昨日「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回がアップされました.「#144. イギリスの地名にヴァイキングの足跡 --- ゲスト・小河舜さん」です.小河舜さんを招いての全4回シリーズの第1弾となります.
小河さんの研究テーマは後期古英語期の説教師・政治家 Wulfstan とその言語です.立教大学の博士論文として "Wulfstan as an Evolving Stylist: A Chronological Study on His Vocabulary and Style." を提出し,学位授与されています.Wulfstan については本ブログより「#5176. 後期古英語の聖職者 Wulfstan とは何者か? --- 小河舜さんとの heldio 対談」 ([2023-06-29-1]) をご覧ください.また,小河さんは今回の YouTube の話題のように,イギリスの地名(特に古ノルド語要素を含む地名)にも関心をお持ちです.
小河さんとは,今回の YouTube 共演以前にも,Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で複数回にわたり対談し,その様子を配信してきました.実際,今朝の heldio 最新回でも小河さんとの対談を配信しています.これまでの対談回を一覧にまとめましたので,ぜひお時間のあるときにお聴きいただければ.
・ 「#759. Wulfstan て誰? --- 小河舜さんとの対談【第1弾】」(6月29日配信)
・ 「#761. Wulfstan の生きたヴァイキング時代のイングランド --- 小河舜さんとの対談【第2弾】」(7月1日配信)
・ 「#763. Wulfstan がもたらした超重要単語 "law" --- 小河舜さんとの対談【第3弾】」(7月3日配信)
・ 「#765. Wulfstan のキャリアとレトリックの変化 --- 小河舜さんとの対談【第4弾】」(7月5日配信)
・ 「#767. Wulfstan と小河さんのキャリアをご紹介 --- 小河舜さんとの対談【第5弾】」(7月7日配信)
・ 「#770. 大学での英語史講義を語る --- 小河舜さんとの対談【第6弾】」(7月10日配信)
・ 「#773. 小河舜さんとの新シリーズの立ち上げなるか!?」(本日7月13日配信)
小河さんの今後の英語史活動(hel活)にも期待しています!
(以下は,2023/08/02(Wed) 付で加えた後記です)
・ YouTube 小河舜さんシリーズ第1弾:「#144. イギリスの地名にヴァイキングの足跡 --- ゲスト・小河舜さん」です
・ YouTube 小河舜さんシリーズ第2弾:「#146. イングランド人説教師 Wulfstan のバイキングたちへの説教は歴史的異言語接触!」
・ YouTube 小河舜さんシリーズ第3弾:「#148. 天才説教師司教は詩的にヴァイキングに訴えかける!?」
・ YouTube 小河舜さんシリーズ第4弾:「#150. 宮崎県西米良村が生んだ英語学者(philologist)でピアニスト小河舜さん第4回」
昨日の記事「#5166. 秋元実治(編)『近代英語における文法的・構文的変化』(開拓社,2023年)」 ([2023-06-19-1]) で,先日発売された本をご紹介しました.同書については,YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回でも取り上げています.「#137. 辞書も規範文法も18世紀の産業革命富豪が背景に---故山本史歩子さん(英語・英語史研究者)に捧ぐ---」です.どうぞご覧ください.
YouTube では,同書の第4章「18世紀の文法的・構文的変化」(山本史歩子さんが執筆された章)の後半の記述にインスピレーションを得て,なぜ規範文法 (prescriptive_grammar) ,ひいては規範主義 (prescriptivism)が,18世紀というタイミングで盛り上がったのかについてお話しています.実際には様々な要因があるのですが,同章に基づき,とりわけ産業革命 (industrial_revolution) とそれに伴う社会変化に注目しています.詳しくは,ぜひ本書を読んでいただければと思います.
第4章の執筆者である山本史歩子さん(青山学院大学)は,本書の出版を見る前にご逝去されました.英語史活動(hel活)の実践者にして,強力な理解者かつ応援者でもありました.昨年の春,2022年4月6日には,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にご出演いただきました.ぜひ「#310. 山本史歩子先生との対談 英語教員を目指す大学生への英語史のすすめ」をお聴きください.山本史歩子さんの英語史研究へのご貢献に深く感謝しつつ,心よりご冥福をお祈りいたします.
・ 秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.
近代英語の文法変化についてコーパスを用いて実証的に研究した論考集が開拓社より出版されました.英語史分野の一線で活躍されている著者7名(片見彰夫氏,福元広二氏,田辺春美氏,山本史歩子氏,中山匡美氏,川端朋広氏,秋元実治氏)による書籍です.著者の方々よりご献本いただきました由,ここに感謝致します.
この本の最大の特徴は,各章が15--20世紀の各世紀を考察範囲としていることです.注目する話題は半ば固定されており,その点で定点観測となっているのですが,全体として整理された通時的な統語論の研究となっています.「はしがき」の冒頭に次のようにあります (v) .
本書は近代英語(1500--Present)における文法的・構文的変化についてコーパス等の使用による実証的研究である.
これまで英語史の記述において世紀別に述べることはあまりなかったように思われる.ひとつにはほとんどの言語変化は世紀を横断するため,各世紀の記述が難しいことがある.しかしながら,文学史などでは世紀別はきわめて普通であり(例えば,Oxford History of English Literature 12 volumes),このこともあってか英語史においても最近 Kytö et al. (2006), Mair (2006) などが出版され,それぞれ19世紀,20世紀の英語における変化・特徴に焦点をあてている.
本書では近代英語における上記のような変化の連続性と各世紀の特徴を捉えるために,以下の点を執筆者の間で共有した.
1. 全ての執筆者は共通項目,句動詞,仮定法,補文について述べる.
2. それ以外の項目で,その世紀の特徴と考えられる文法的・構文的変化について述べる.
3. 電子コーパス,テキスト等を使って,実証的に記述する.
英語史の時代区分 (periodisation) については,最近では「#5140. 「英語史の時代区分」月間の振り返り」 ([2023-05-24-1]) で取り上げるなどし,私自身も長らく考えてきました.「古英語」や「近代英語」などとラベルを貼るのではなく,きっぱりと世紀単位で切る,あるいは言及するというのは確かに一般的ではありませんでしたが,Curzan (33) が述べるように,ラベルを避けたい立場の論者は世紀単位を好むようです.一見すると無機質な時代区分のようでいて,むしろ読み手に世紀をまたいだ言語の連続性と断絶性を意識させるという効果があるのではないでしょうか.
本書ではコーパスを用いた具体的で実証的な研究が紹介されており,この分野を研究する学生や研究者には,手法も含めて直接参考になります.また,文法変化・構文変化といっても扱うべき話題は多岐にわたるものですが,各章では各世紀の英語を考察する上でとりわけ重要な項目が選ばれており,たいへん有用です.
最終章は全体のまとめとなっており,いったん各章のために世紀別に分けられたものが建て直され,読み手の視界がすっきりします.参考文献も充実しており,中英語末期から現代に至るまでの文法変化に関心のある方には,ぜひ手に取ってもらいたい一冊です.私も学生に薦めたいと思います.
著者の一人,山本史歩子さん(青山学院大学)におかれましては,本書の出版を見る前にご逝去されたとの報に接しました.悲しみでいっぱいです.ご冥福をお祈りいたします.
・ 秋元 実治(編),片見 彰夫・福元 広二・田辺 春美・山本 史歩子・中山 匡美・川端 朋広・秋元 実治(著) 『近代英語における文法的・構文的変化』 開拓社,2023年.
・ Curzan, Anne. "Periodization in the History of the English Language." Chapter 12 of The History of English. 1st vol. Historical Outlines from Sound to Text. Ed. Laurel J. Brinton and Alexander Bergs. Berlin: Mouton de Gruyter, 2017. 8--35.
昨晩公開された「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の最新回は「#136. 多々良直弘さん(桜美林大学)登場! --- スポーツ実況は国ごとにぜんぜんちがう!」です.
桜美林大学の多々良直弘さんをゲストに迎えての対談回です.多々良さんはスポーツ実況中継における言語行動の日英比較を研究されており,向こう3週の水曜日回に配信される対談の続編でも,スポーツ英語や実況英語の話題が多くなってくると思います.
多々良さんによるスポーツ英語の話題といえば,2019年度に大修館書店の『英語教育』で連載された「知っておきたいスポーツの英語」が思い出されます.2019年4月号から2020年度3月号まで,12回にわたり次のタイトルでスポーツ英語読み物が掲載されました(こちらに公式案内があります).
・ 4月号 「"the ball game" から始めよう」
・ 5月号 「Let's get the ball rolling!」
・ 6月号 「The ball is in your court」
・ 7月号 「Let's Play Cricket!」
・ 8月号 「Don't give up, keep paddling!」
・ 9月号 「One for all and all for one!」
・ 10月号 「Touch down!!」
・ 11月号 「They are in neck-and-neck.」
・ 12月号 「Beautiful shot!」
・ 1月号 「It's your move.」
・ 2月号 「Go for it!!」
・ 3月号 「Experiencing Sports Events Through Media」
ついでに言いますと,同じ年度の『英語教育』で,私自身も「英語指導の引き出しを増やす 英語史のツボ」と題する連載を書いており,多々良さんとは同じタイミングで締切に追われる同志でした.
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