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khelf - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-05-02 08:35

2022-07-12 Tue

#4824. 『英語史新聞』第2号 [hel_herald][notice][khelf][hel_education][hel_contents_50_2022][link]

 khelf(慶應英語史フォーラム)による『英語史新聞』第2号が,昨日ウェブ上で一般公開されましたので,ご案内します.こちらよりPDFでご覧になれます.

『英語史新聞』第2号



 創刊号および号外第1号の発行より3ヶ月余が経ちましたが,この間 khelf ではゆっくりながらも第2号編集企画が進行しており,昨日お披露目できる段階に達した次第です.本記事をご覧になっている皆様には,創刊号に引き続き今回の第2号の発行も,khelf の「英語史の魅力を広く伝えたい」という活動理念に沿った一企画として理解していただき,ぜひ広めていただければ幸いです.なお,4月1日に発行された創刊号は,予想以上に多くの方に閲覧していただきました(現時点で1,192プレビュー).第2号もよろしくお願い致します.
 第2号については,今後 khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio を通じて,関連する話題やお知らせを投稿していく予定です.ぜひフォローして関連情報のリマインダーとしてご利用ください.また,第2号へのご意見,ご感想,ご質問等も,そちらからお寄せいただけますと幸いです.
 第2号の内容と関連するリンクを以下に一覧しておきます.あわせてご訪問ください.

 ・ 「#4724. 慶應英語史フォーラム (khelf) の活動」 ([2022-04-03-1])
 ・ 「#4723. 『英語史新聞』創刊号」 ([2022-04-02-1])
 ・ 「#4731. 『英語史新聞』新年度号外! --- 英語で書かれた英語史概説書3冊を紹介」 ([2022-04-10-1])
 ・ 「#4725. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が始まっています」 ([2022-04-04-1])
 ・ 「#4791. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が終了しました」 ([2022-06-09-1])

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2022-07-09 Sat

#4821. something of a(n) は「ちょっとした」なのか「かなりの」なのか? [pragmatics][semantics][intensifier][sobokunagimon][khelf][chiguhagu_channel]

 khelf(慶應英語史フォーラム)内で,以下のちぐはぐ案件が発生しました.

英語学習者用の文法参考書『Vintage 英文法・語法』(第2版,p. 295)には,something of a+名詞「ちょっとした〈名詞〉/かなりの〈名詞〉」と出ています.新英和中辞典にも同様なことが書いてあります.「ちょっとした」と「かなりの」は日本語的に異なりますが.なぜこのような違いがあるのでしょう.そもそも something の意味が分かっていないから違いが理解できないのでしょうか???


 日本語としては確かに「ちょっとした」と「かなりの」は意味が異なるように思われます.原義で考えれば,前者は程度が低く,後者は程度が高いものと理解されており,むしろ対義の感があります.しかし「(意外なことにも)彼はちょっとした/かなりの音楽家なんですよ」という文を考えると,その語用論的意味は近似しているようにも思われます.英語の something of a(n) も日本語の「ちょっとした」も,意味論と語用論のキワに関わる微妙な問題のようです.
 関連して quite が「完全に」「そこそこ」の両義をもつことが思い起こされます.「#4247. quite の「完全に」から「そこそこ」への意味変化」 ([2020-12-12-1]),「#4233. なぜ quite a few が「かなりの,相当数の」の意味になるのか?」 ([2020-11-28-1]),「#4235. quite a few は,下げて和らげ最後に皮肉で逆転?」 ([2020-11-30-1]) をご参照ください.広く強意語 (intensifier) の語用論に関する話題ですので,「#4236. intensifier の分類」 ([2020-12-01-1]) も参考になるかと思います.
 さて,something of a について『ジーニアス英和大辞典』では次のように記載されています.

▼ *sómething of a ...
((略式))[通例肯定文で] ちょっとした…;かなりの…?She is ~ of a musician. 彼女の音楽の才はかなりのものです《◆音楽家ではない人に用いる》/I found it ~ of a disappointment. それにはかなりがっかりしました(=I found it rather disappointing.)/Life has always been ~ of a puzzle. 人生はこれまで常に謎めいたところがあった.


 「《◆音楽家ではない人に用いる》」という指摘は,きわめて重要で示唆に富んだ注だと思います.参照した他の辞書には,このような注はありませんでした.
 次に学習者用英英辞書からいくつか例文を拾ってみましょう.

 ・ She found herself something of a (= to some degree a) celebrity.
 ・ Charlie's always been something of an expert on architecture.
 ・ The news came as something of a surprise.
 ・ The city proved to be something of a disappointment. . .
 ・ He has a reputation as something of a troublemaker.

 ここで改めて something of a(n) は「ちょっとした」なのか「かなりの」なのかという問題に戻って考えてみましょう.この表現には anything of a(n)nothing of a(n) という関連表現があります.some, any, no の3者の関係については「#679. assertion and nonassertion (1)」 ([2011-03-07-1]),「#680. assertion and nonassertion (2)」 ([2011-03-08-1]) で考察しました.
 私は no(thing) の基本義が「無」であるのに対して some(thing) の基本義は「有」であると考えています.「無」の場合にはゼロですから無いものは無いと言っておしまいですが,「有」である場合には「ちょっとした」なのか「かなりの」なのかなど程度の問題が生じます.しかし,あくまで「無」ではなく「有」なのだというのが some(thing of a(n)) の「意味論」的な原義なのではないでしょうか.その程度については「意味論」としては限定せず,あくまで「語用論」的な解釈に任せるといったところではないかと睨んでいます.
 「無」が前提とされているところに,その前提をひっくり返して「有」であることを主張するのが some(thing of a(n)) の基本的な働きだろうと考えます.結果として,程度の低い/高い意味になるのかは,文脈に依存する語用論的な判断に委ねられるのではないかと.とはいえ,一般的傾向としては,「無」に対して「有」であることをあえて主張する目的で用いられるわけですから,高めの程度が意図されているケースが多いのではないかと思われます.ただし,最終的な判断はやはり都度の文脈次第なのではないかと.
 なかなか難しそうですね.

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2022-06-09 Thu

#4791. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が終了しました [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_contents_50_2022][khelf_hel_intro_2021][link]

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 新年度の2ヶ月余りにわたり khelf(慶應英語史フォーラム)で繰り広げられてきた企画「英語史コンテンツ50」が,昨日をもって無事に終了しました.学部生・大学院生を中心に卒業生なども含めた khelf メンバーの各々が,日替わりで英語史に関するコンテンツを khelf HP 上に公開してきました.「英語史コンテンツ50」と銘打って始めた企画でしたが,メンバーの献身により最終的には59件のコンテンツが集まりました.日々のコンテンツについて,多くの方に追いかけていただきました.お付き合いいただいた皆さんには感謝いたします.ありがとうございました.
 この企画については hellog でもおよそ半月ごとにまとめて紹介・レビューしてきました(cf. 「#4722. 新年度の「英語史スタートアップ」企画を開始!」 ([2022-04-01-1]),「#4739. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が3週目に入っています」 ([2022-04-18-1]),「#4757. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が折り返し地点を過ぎました」 ([2022-05-06-1])).「#4773. khelf イベント「英語史コンテンツ50」がそろそろ終盤戦です」 ([2022-05-22-1])).最後の紹介となりますが,直近の15件のコンテンツを一覧します.

 ・ 「#45. 英語のなまえ,日本語のなまえ」(5月23日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ 「#46. 性差を区別しない主格は結局どれが相応しいの?」(5月24日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ 「#47. どっちそっち『チラ見』?」(5月25日(水),院生によるコンテンツ)
 ・ 「#48. if it were not for A の it って何者?」(5月26日(木),学部生によるコンテンツ)
 ・ 「#49. 黄金は『赤い』」(5月27日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ 「#50. 婚約お金」(5月28日(土),学部生によるコンテンツ)
 ・ 「#51. 生徒の素朴な質問にハッとした」(5月30日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ 「#52. 海を渡った『カツカレー』」(5月31日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ 「#53. 古英詩の紹介 (4):The Battle of Brunanburh(6月1日(水),院生によるコンテンツ)
 ・ 「#54. まぬけなグーフィーとアメリカ南部方言」(6月2日(木),学部生によるコンテンツ)
 ・ 「#55. orange cat はオレンジ色をしているか?」(6月3日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ 「#56. なんでそんな意味になる!? ―タブー英語表現―」(6月4日(土),学部生によるコンテンツ)
 ・ 「#57. human, humble, humility(6月6日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ 「#58. English words that finish with -ish(6月7日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ 「#59. 英語史は役に立たない,か」(6月8日(水),博士課程OBによるコンテンツ)

 新年度企画ということで,一般の皆さんの英語史の学び始め・学び続けを応援するという趣旨で始めました.khelf メンバーもこの趣旨をよく汲み取ってコンテンツの題材を選んでくれたと思います.結果として導入的で読みやすいコンテンツが多く公開されることになり,英語史のおもしろさが広く伝わる機会となったのではないでしょうか.
 59件のコンテンツはアーカイヴとして HP 上に残しておく予定ですので,今後もゆっくりとご参照ください.合わせて,昨年度の同企画「英語史導入企画2021」の49件のコンテンツもアーカイヴ化されていますので,そちらもどうぞ.

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2022-05-22 Sun

#4773. khelf イベント「英語史コンテンツ50」がそろそろ終盤戦です [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_contents_50_2022][hel_herald][link]

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 khelf(慶應英語史フォーラム)では,4月1日より2ヶ月にわたる新年度企画「英語史コンテンツ50」を実施中です.日曜日を除く毎日,khelf メンバーが次々と英語史に関する読み物をアップするという企画です.順調に継続してきましたが,そろそろ終盤戦に入ります.
 この hellog でもおよそ半月ごとに紹介・レビューしてきました(cf. 「#4722. 新年度の「英語史スタートアップ」企画を開始!」 ([2022-04-01-1]),「#4739. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が3週目に入っています」 ([2022-04-18-1]),「#4757. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が折り返し地点を過ぎました」 ([2022-05-06-1])).今回もこの2週間ほどのコンテンツの一覧を示します.後半に入ってからも相変わらず力作が目立ちます.英語史の扱うトピックの広さがよく分かるのではないでしょうか.

 ・ #30. 「動詞は動詞でも,3単現の -s をつけない動詞ってなーんだ!!」(5月5日(木),学部生によるコンテンツ)
 ・ #31. 「日本語でもよく見る「アイツら」」(5月6日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ #32. 「青くないブルームーン!?」(5月7日(土),学部生によるコンテンツ)
 ・ #33. 「She の S とは何か?」(5月9日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ #34. 「かわいいだけじゃない!」(5月10日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ #35. 「英語になった意外な日本語」(5月11日(水),院生によるコンテンツ)
 ・ #36. 「ズボンは結局何て呼べばいい」(5月12日(木),学部生によるコンテンツ)
 ・ #37. 「古英詩の紹介 (3): The Battle of Maldon(5月13日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ #38. 「怒りのメタファー」(5月14日(土),通信生によるコンテンツ)
 ・ #39. 「do-gooding な匿名投稿」(5月16日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ #40. 「at で始まるイディオムの拡大」(5月17日(火),卒業生によるコンテンツ)
 ・ #41. 「避けられる言葉と新しい言葉 --- 身近な例から ---」(5月18日(水),院生によるコンテンツ)
 ・ #42. 「「鍛冶屋」は最強の名字?!」(5月19日(木),卒業生によるコンテンツ)
 ・ #43. 「どこでも通ずる英語」(5月20日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ #44. 「ox を食べないイギリス人と「ウシ肉」を食べない日本人」(5月21日(土),卒業生によるコンテンツ)

 企画は残り2週間ほどですが,この勢いを衰えさせずに走りきりたいと思います.皆様にも,ご愛読のほどよろしくお願いいたします.

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2022-05-06 Fri

#4757. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が折り返し地点を過ぎました [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_contents_50_2022][hel_herald][link]

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 4月1日に khelf(慶應英語史フォーラム)として立ち上げた新年度企画「英語史コンテンツ50」が軌道に乗ってきて,おもしろく勉強になるコンテンツが続出するようになりました(cf. 「#4722. 新年度の「英語史スタートアップ」企画を開始!」 ([2022-04-01-1])).2ヶ月間ほどの企画ですが,ちょうど折り返し地点を越えたところなので,「#4739. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が3週目に入っています」 ([2022-04-18-1]) に引き続き,コンテンツをいくつか紹介します.英語史のカバーする領域の広さが分かるかと思います.

 ・ #15.「南極って,かわいそう!?」 (4月18日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ #16.「"Watch your step" vs. "Mind the gap"」 (4月19日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ #17.「動詞は「二番目」から「主語の次」へ」 (4月20日(水) ,院生によるコンテンツ)
 ・ #18.「億劫な屈折」 (4月21日(木),学部生によるコンテンツ)
 ・ #19.「英独における同語源だけど少し違う助動詞」 (4月22日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ #20.「曜日の謎」 (4月23日(土),学部生によるコンテンツ)
 ・ #21.「古英詩の紹介2: The Seafarer (4月25日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ #22.「楽+楽=難しい!?」 (4月26日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ #23.「食事って一日何回?」 (4月27日(水),院生によるコンテンツ)
 ・ #25.「r にまつわる2つの現象 rhotacism と intrusive r (4月29日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ #26.「ショートケーキってどんなケーキ?」 (4月30日(土),学部生によるコンテンツ)
 ・ #27.「God bless you」 (5月2日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ #28.「僕の好きな歌手は King Gnu です」 (5月3日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ #29.「日本語から英語に入った単語たち」 (5月4日(水),院生によるコンテンツ)

 ちなみに,最もよく読まれているベスト3コンテンツは以下のとおりです.

 ・ #13.「||||||||||←読めますか?」 (4月15日(金),院生によるコンテンツ,5月6日現在187プレビュー)
 ・ #1.「冠詞はなぜ生まれたのか」 (4月1日(金),院生によるコンテンツ,168プレビュー)
 ・ #3.「第一回 古英語模試」 (4月4日(月),院生によるコンテンツ,155プレビュー)

 今後も「英語史コンテンツ50」の後半戦が続きます.khelf では,日々英語史の情報を発信していく活動を重視しています.hellog 読者の皆様にも,引き続きこの企画に注目していただければと思います.khelf 活動と関連して,以下も改めて宣伝しておきます.

 ・ khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio がオープンしています.「英語史コンテンツ50」に上がってくる日々のコンテンツの紹介も,このアカウントから発信されています.ぜひフォローをお願いします!
 ・ 『英語史新聞』創刊号が発行されています(「#4723. 『英語史新聞』創刊号」 ([2022-04-02-1]) を参照)
 ・ 『英語史新聞』新年度号外も発行されています(「#4731. 『英語史新聞』新年度号外! --- 英語で書かれた英語史概説書3冊を紹介」 ([2022-04-10-1]) を参照)

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2022-05-03 Tue

#4754. 懸垂分詞 [participle][syntax][khelf][dangling_participle]

 慶應英語史フォーラム (khelf) で,このGW中に盛り上がっている話題が1つある.英文法で「懸垂分詞」 (dangling participle) と呼ばれている現象だ.今後,議論が深まっていきそうなので,今回は用語辞典より基本的な解説をあげておきたい.まず『新英語学辞典』 (283) より.

 dangling participle 〔文〕(懸垂分詞)
 Curme (1931, pp. 159--60) の用語.分詞構文 (participial construction) において意味上の主語が主文の主語と異なるのに主語を表現していない分詞(句)をいう.Having walked two miles, I was tired. (2マイル歩いたので私は疲れた)はふつうの分詞構文であるが,Having walked two miles, the cabin was a welcome sight. (2マイル歩いた後で小屋が見えたので,嬉しかった)は懸垂分詞構文である.懸垂分詞は学者によって,hanging participle, loose participle, unrelated participle (非関連分詞),unattached participle, unrelated adjunct (非関連付加詞)などさまざまな呼び方をされている.
 懸垂分詞は正しくない用法であると見なす人も多いが,分詞の意味上の主語として総称人称の one を補いうる generally speaking, judging from [by] や慣用的に I を表わさない talking [speaking] of のようなものは,その使用が慣用的に確立している.また,形式的には整っていないが意味が不明確でない限り標準用法として認めようとする立場や,許容される段階に差をつけて考える立場もある.Quirk & Greenbaum (UGE, §11.35) によれば,?Since leaving her, life has seemed empty. では主文の seemed empty に to me を補いうるので分詞の意味上の主語として I が推定できるのに対し,*Reading the evening paper, a dog started barking. は主文に分詞の意味上の主語を推定させるものがないので許容されない.


 もう1つ,Crystal の用語辞典より.

dangling participle In traditional grammar, a term describing the use of a participle, or a phrase introduced by a participle, which has an unclear or ambiguous relationship to the rest of the sentence; also called a misrelated participle. If taken literally, the sentence often appears nonsensical or laughable: Driving along the street, a runaway dog gave John a fright. To avoid such inadvertent effects, manuals of style recommend that such sentence be rephrased, with the participial construction moved or replaced, as in When John was driving along the street, a runaway dog gave him a fright.


 目下 khelf 内で議論になっているのは,なぜ judging from のような懸垂分詞は慣用として認められているのか,という問題だ.歴史的な関心からは,いつ,どのように,なぜ慣用化するに至ったかという問いとなる.

 ・ 大塚 高信,中島 文雄(監修) 『新英語学辞典』 研究社,1982年.
 ・ Crystal, David, ed. A Dictionary of Linguistics and Phonetics. 6th ed. Malden, MA: Blackwell, 2008. 295--96.

Referrer (Inside): [2022-06-01-1] [2022-05-13-1]

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2022-04-18 Mon

#4739. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が3週目に入っています [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_contents_50_2022][hel_herald][link]

 この4月1日に立ち上げた新年度企画「英語史スタートアップ」も少々落ち着いてきました(cf. 「#4722. 新年度の「英語史スタートアップ」企画を開始!」 ([2022-04-01-1])).
 目玉イベントの1つであった『英語史新聞』第1号は,おかげさまで多くの方々に読んでいただきました.目下1,000ビューの大台に近づいています! これには編集委員会自身がびっくりしている状況です.第1号についてはいくつかの反省点もありますが,それを活かしつつ第2号発行に向けて始動したいと考えています.
 「英語史スタートアップ」企画のもう1つの目玉イベントは「英語史コンテンツ50」です.慶應英語史フォーラム (khelf) のメンバー(主に大学院と学部の堀田ゼミ生)が,手軽に読める英語史のコンテンツを,4月と5月の日曜日を除く毎日,ホームページ上にアップしていくというリレー企画です(cf. 「#4725. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が始まっています」 ([2022-04-04-1])).
 この「英語史コンテンツ50」も,本日より3週目に突入しました.『英語史新聞』と同様,こちらにも一般から多数のアクセスをいただいています.まだまだ前半ではありますが,このタイミングで改めて広報したいと思います.
 これまでに以下の14件のコンテンツが公開されてきました.khelf メンバーの各々は,学び始めの新年度という時期にふさわしい内容を念頭にコンテンツのトピックを選んでいます.結果として力作も多くなっていますので,まだ読んでいないようであれば,ぜひ各コンテンツを堪能していただければと思います.今後も日々「英語史コンテンツ50」にてコンテンツが加えられていく予定です.khelf 公式ツイッターアカウント @khelf_keio からも,日々アップされたコンテンツの情報を発信していますので,そちらも合わせてご利用ください.

 ・ #1.「冠詞はなぜ生まれたのか」 (4月1日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ #2. 「休日が欲しい,休暇が欲しい --- 休暇とは何か ---」 (4月2日(土),学部生によるコンテンツ)
 ・ #3.「第一回 古英語模試」 (4月4日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ #4. 「deer から意味変化へ,意味変化から英語史の世界へ!」 (4月5日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ #5.「古英詩の紹介1: The Wanderer (4月6日(水),院生によるコンテンツ)
 ・ #6.「恩と義理」 (4月7日(木),学部生によるコンテンツ)
 ・ #7.「おとぎ話のなかにみる英語史」 (4月8日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ #8.「穀物犬?アメリカの犬?熱い犬??」 (4月9日(土),学部生によるコンテンツ)
 ・ #9.「英語の擬音語・擬態語」 (4月11日(月),院生によるコンテンツ)
 ・ #10.「日本の子供が避けて通れないラテン語」 (4月12日(火),学部生によるコンテンツ)
 ・ #11.「Johnnie Walker は歩いていたか」 (4月13日(水),院生によるコンテンツ)
 ・ #12.「"Girl", "Lady" は差別?」 (4月14日(木),学部生によるコンテンツ)
 ・ #13.「||||||||||←読めますか?」 (4月15日(金),院生によるコンテンツ)
 ・ #14.「パラリンピックの "パラ" ってなに?」 (4月16日(土),学部生によるコンテンツ)

 新年度の「英語史スタートアップ」企画はまだまだ続いていきます.引き続きよろしくお願いいたします.

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2022-04-12 Tue

#4733. 英語史はおもしろい! --- Voicy「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) での連続対談 [heldio][start_up_hel_2022][notice][khelf][hel_education][bibliography][link][youtube][masanyan]

 4月1日より「#4722. 新年度の「英語史スタートアップ」企画を開始!」 ([2022-04-01-1]) と題して英語史の学びを応援しています.hellog の姉妹版というべき Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) でも,連日,新年度の勢いを借りて普段とは異なる風味の放送をお届けしています.具体的には英語史・英語学を専攻する方々を招いて対談を行ない,様々な角度から同分野の魅力を伝えてきました.この11日間続いてきた対談企画について,改めて振り返りつつ紹介します.

 ・ 「市川誠先生との対談 長万部はイングランドか!?」(4月2日放送):市川誠先生(東京理科大学)とのおしゃべりです.まさかの「長万部」からつながる地名の英語史.英語史との接点は,日常の身近なところにあります.
 ・ 「khelf 会長「まさにゃん」による『英語史新聞』の紹介」(4月3日放送):khelf として世界初(?)の『英語史新聞』第1号を発行しました.その編集委員長も務めた khelf 会長からのお話しです.
 ・ 「khelf 会長「まさにゃん」による「英語史コンテンツ50」の紹介」(4月4日放送):続いて,khelf のもう1つの新年度目玉企画「英語史コンテンツ50」の紹介です.毎日,1つ英語史の話題が上がってきます.同企画の会場はこちらです.
 ・ 「khelf 会長「まさにゃん」による「第一回古英語模試」」(4月5日放送):khelf 会長が研究・教育活動と趣味(?)の延長で,世界初となる古英語の模試を作成しました.添削サービスあり.
 ・ 「山本史歩子先生との対談 英語教員を目指す大学生への英語史のすすめ」(4月6日放送):山本史歩子先生(青山学院大学)と,英語教育と英語史の接点について熱く語りました.
 ・ 「矢冨弘先生との対談 グラスゴー大学話しを1つ」(4月7日放送):矢冨弘先生(熊本学園大学)との,英語史およびグラスゴー大学の話題で盛り上がりました.矢冨先生も私も同大学に留学し,同じ Jeremy J. Smith 先生に師事しました.
 ・ 「古田直肇先生との対談 標準英語幻想について語る」(4月8日放送):古田直肇先生(東洋大学)との標準英語にまつわる神話を巡る熱い対談です.この問題は,英語史の知恵が最も活かされるトピックだと思っています.
 ・ 「唐澤一友先生との対談 今なぜ世界英語への関心が高まっているのか?」(4月9日放送):唐澤一友先生(立教大学)との,人気が高まる World Englishes についての対談.なぜ今なのか,議論しました.
 ・ 「泉類尚貴先生との対談 手に取って欲しい原書の英語史概説書3冊」(4月10日放送):泉類尚貴先生(福島高専)による厳選3冊の紹介.新年度の学び始めに,たいへん役に立つ情報です.その3冊については『英語史新聞』新年度号外としても紹介しています.
 ・ 「和田忍先生との対談 Baugh and Cable の英語史概説書を語る」(4月11日放送):和田忍先生(駿河台大学)が,世界中の大学で最も広く読まれている英語史概説書といわれる Baugh and Cable について詳しく解説しています.こちらの関連記事もどうぞ.
 ・ 「井上逸兵先生との対談 YouTube を始めて1月半になりますが」(4月12日放送):井上逸兵先生(慶應義塾大学)と私が週2回公開している「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」について,これまで13回放送の振り返りと未来の展望を語ります.

 連続対談はいったんここで終わりますが,今後も折をみて対談を行なっていきたいと思っています.よろしくどうぞ.

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2022-04-05 Tue

#4726. 昨年度のコンテンツ企画のベスト10 [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_contents_50_2022][khelf_hel_intro_2021]

 昨日の記事「#4725. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が始まっています」 ([2022-04-04-1]) で案内したように,今年度始めの4月1日より,khelf メンバーが日々代わる代わる英語史に関する話題を1つウェブ上にアップするという企画をこちらの特設ページにて実施中です.
 今朝は,「第一回 古英語模試」と題する変わり種の英語史コンテンツが上がってきました.出題者は khelf 会長その人です.古英語の「模試」って何? しかも,答案を DM で送ったら採点してくれるってどんなサービス? と驚くばかりの世界初の試みですが,学び心と遊び心の混じった良・珍コンテンツです.
 さて,今年度の「英語史コンテンツ50」はまだ始まったばかりですが,1年前の同趣旨の企画「英語史導入企画2021」では49本の英語史コンテンツが集まりました.一覧とリンクは「#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました」 ([2021-05-31-1]) よりご覧ください.
 昨年度の「英語史導入企画2021」でも日々上がってくるコンテンツをウェブ上に一般公開してきましたが,企画終了後,閲覧数(プレビュー数+ダウンロード数)を集計してみました.最もよく閲覧された上位10コンテンツを以下に掲載します.さすがに,いずれもおもしろいので,ぜひご一読ください.しばし英語史の魅力を堪能することができます.

 ・ 第1位(閲覧725回),1. 「be surprised at―アッと驚くのはもう古い?(1)」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第2位(閲覧711回),8. 「日本人はなぜ Japanese?」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第3位(閲覧531回),23. 「先生,ここに前置詞いらないんですか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第4位(閲覧493回),41. 「なぜ未来のことを表すための文法が will と be going to の二つ存在するのか?」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第5位(閲覧485回),20. 「goodbye の本当の意味」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第6位(閲覧478回),5. 「コロナ(Covid-19)って男?女?」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第7位(閲覧482回),42. 「この世で一番「美しい」のは誰?」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第8位(閲覧481回),2. 「借用語は面白い! --- "spaghetti" のスペルからいろいろ ---」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第9位(閲覧425回),4. 「それ,英語?」 (hellog 紹介記事はこちら
 ・ 第10位(閲覧416回),46. 「複数形は全部 -s をつけるだけなら良いのに!」 (hellog 紹介記事はこちら

 閲覧数はコンテンツのおもしろさの1つの指標ではありますが,すべてではありません.数字には反映されない,洞察に富むおもしろいコンテンツは,実は他にもたくさんあります.ぜひ1年前の「英語史導入企画2021」も振り返ってみてください.2,3時間は楽しく過ごせます.
 また,昨年度は春のみならず秋にも類似企画を行なっていました.「#4560. ゼミ合宿でのコンテンツ展覧会のベスト作品」 ([2021-10-21-1]) より良作をご堪能ください.
 今年度の「英語史コンテンツ50」でも,昨年度を超えるおもしろさのコンテンツが続々と上がってくるはずです.これから毎日,乞うご期待!

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2022-04-04 Mon

#4725. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が始まっています [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_contents_50_2022][khelf_hel_intro_2021][masanyan]

 連日,新年度に開始した,khelf による「英語史スタートアップ」企画に関する話題をお知らせしています.本日は4月1日から始まっている「英語史コンテンツ50」についてご案内です.
 4月1日より開始して,6月上旬までの2ヶ月間ほど,日曜日を除く毎日,khelf メンバーが作成した英語史に関する「コンテンツ」がウェブ上にアップされてきます.いわば,サクッと読める,しかし限りなく知的好奇心をそそる「英語史ネタ」が,日々楽しめるという企画です.
 掲載される場所は,khelf ホームページのなかの「英語史コンテンツ50」です.ここに毎日コンテンツが追加されてきますので,ぜひ尽きることのない英語史ネタを堪能してください.新年度ということで,英語史に初めて触れる初学者を念頭に置いたコンテンツが多く上がってくると思います.主として学部生・大学院生によるコンテンツですので,学びの応援という意味合いも含めてどうぞよろしくお願いいたします.日々のコンテンツ情報は khelf の公式ツイッターアカウント @khelf_keio でもお知らせすることになっていますので,ぜひフォローしてリマインダーとしてご利用ください.
 実は,昨年度の4月と5月にも同趣旨の「英語史導入企画2021」を実施し,49本の英語史コンテンツが集まりました.当時は,本ブログでも毎日のようにコンテンツを追いかけてレビューしましたが,アレはきつかったです(笑)(「#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました」 ([2021-05-31-1]) および khelf_hel_intro_2021 の記事を参照).素晴らしいトピックが集まったと思います.昨年度のコンテンツについては,今からでもじっくりご鑑賞ください.暇つぶし以上の良質の読書となります.
 今回の「英語史コンテンツ50」の催しは,その2022年度版ということになります.「英語史コンテンツ50」については,本日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) にて,khelf 会長である「まさにゃん」と対談しながら紹介していますので,そちらもお聴きください.



 ちなみに,4月1日の一発目は,大学院生による「冠詞はなぜ生まれたのか」と題するたいへん興味深いコンテンツです.ぜひご一読を.

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2022-04-03 Sun

#4724. 慶應英語史フォーラム (khelf) の活動 [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_herald][hel_contents_50_2022][masanyan]

 「慶應英語史フォーラム」,通称「khelf」 (= Keio History of the English Language Forum) については,本ブログで何度も触れてきましたが,新年度開始を機に正式にお披露目します.

khelf logo    khelf banner
(上記のロゴとバナーは khelf メンバーが作成)



 khelf(= Keio History of the English Language Forum = 慶應英語史フォーラム)は,2020年1月に立ち上げられた慶應義塾大学文学部・文学研究科英米文学専攻の英語史ゼミ(堀田隆一研究会)をベースとした,英語史について議論したり,情報共有するためのフォーラムです.
 英語史を専攻する現役の学部ゼミ生と院生を中心とする「拡大版ゼミ」に相当しますが,一部 OB・OG や通信教育課程の英語史専攻の学生なども含めた,ある程度の緩さをもったフォーラムです.
 世の中に存在する英語史関係の学会・研究会は,年に1回か2回の大会を中心とする季節イベントにとどまっていますが,khelf は「日常的な活動」を目指します.英語史を学ぶ人々が数十名という規模で「日常的に」集まっている場所は他にはほとんどありませんので,khelf は小刻みながらも「日常的な活動」を重視します.
 随時,研究発表会,セミナー,講演,コンテンツ展覧会などのイベントを企画・開催していきますが,それ以上に,英語史の話題が日々空気のように漂っているというようなフォーラムを目指しています.たまの点的なイベントもおもしろいですが,それよりも日々の線的な活動に力を入れていきたいと思っています.
 英語史の学術を通じて,内部的には互いに学びを促し,対外的には情報を発信して社会貢献を行なっていくことを目標とします.英語史の学び方,教え方,研究の仕方について議論し,情報発信していくことはもちろん,(現代)英語の素朴な疑問を取り上げ,それを英語史の観点から解きほぐしていくという啓発的な活動も推進していきます.

 これまでの khelf の活動実績については,khelf ホームページより「活動実績」をご覧ください.
 また,本日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) では,本記事とも連動して khelf 会長「まさにゃん」による『英語史新聞』の紹介を放送していますので,ぜひお聴きください.



 khelf では,この新年度の4月1日より「英語史スタートアップ」企画と称して,以下のようなさまざまなイベントを展開しています.

 1. 『英語史新聞』創刊号のウェブ公開
 2. khelf の公式ツイッターアカウント @khelf_keio の開設
 3. 「英語史コンテンツ50」のウェブ公開(日曜日を除く毎日,khelf メンバーが作成した英語史に関する「コンテンツ」が掲載されます)
 4. 本ブログや Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) でも連動企画を毎日実施しています

 連日,イベントが続きます.日々の案内や情報は,上記の khelf のツイッターアカウント および khelf ホームページに流れてきますので,ぜひ本ブログの読者の皆さんにも追いかけていただければと思います.

Referrer (Inside): [2022-07-12-1] [2022-04-07-1]

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2022-04-02 Sat

#4723. 『英語史新聞』創刊号 [khelf][notice][hel_education][start_up_hel_2022][hel_herald]

 慶應英語史フォーラム (khelf) による『英語史新聞』創刊号がウェブ上で一般公開されました.こちらよりPDFでご覧になれます.

『英語史新聞』創刊号



 昨日の記事「#4722. 新年度の「英語史スタートアップ」企画を開始!」 ([2022-04-01-1]) でチラッと述べましたが,この『英語史新聞』創刊号の制作は,同企画の第1弾となります.khelf メンバーが企画・編集したもので,私は監修という立場で新聞作りに関わりました.英語名も押さえておきましょうということで,The HEL Herald としてみました(HEL = "History of the English Language") .h で頭韻,みたいな(笑).
 これと合わせて,昨日「英語史スタートアップ」企画のために khelf の公式ツイッターアカウント @khelf_keio も開設されました.関心のある方は,ぜひ企画のためにこのツイッターアカウントもフォローしていただければ幸いです.英語史情報の発信基地としていく予定です.『英語史新聞』創刊号はこちらの案内ツイートからもアクセスできます.
 英語史の学び始め/続けを応援する企画の一環ですので,4ページの紙面には「英語史って(やっぱり)おもしろいなぁ」と思ってもらえるような話題ばかりを集めました.英語史などまったく初めて,という方にも読んでもらえる内容となっていると思います.khelf 会長(←私ではありません)の編集後記より引用します.

古英語や中英語といった話題から,スペルと発音の不一致の謎,語源など,幅広い話題が扱われています.英語学習の際に感じる「なぜ?」といった疑問は,実は英語史的な観点から見ると,その謎が解明できる場合も多くあります.そうした英語史のおもしろさを,今後もこの『英語史新聞』を通して皆様と共有出来ましたら幸いです.


 この創刊号だけでも,企画から完成まで共同作業で2ヶ月ほどかかりましたので,今後,矢継ぎ早に出していくというわけにはいきませんが,早速第2号発行に向けて動き出したいと思っています.
 『英語史新聞』創刊号につきまして,ご意見などがありましたら,ぜひ @khelf_keio までお寄せください.今後も応援のほどよろしくお願いいたします!

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2022-04-01 Fri

#4722. 新年度の「英語史スタートアップ」企画を開始! [khelf][notice][hel_education][start_up_hel_2022][hel_herald][heldio]

 本日より新年度です.そして,東京はちょうど桜が満開です.
 新年度の始まりですので,この4月,5月は本ブログ読者の皆さんの英語史の学び始め/続けを促すべく「英語史スタートアップ」企画を実施します.慶應英語史フォーラム (khelf) の協力を受けながら,この「hellog~英語史ブログ」はもちろん,その姉妹版というべき Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio)khelf ホームページ,新規開設した khelf ツイッターアカウント @khelf_keio などを通じて,連動的に企画を展開していきます.
 本日よりしばらくの間,ほぼ毎日,皆さんの「英語史スタートアップ」に役立つ内容をお届けしていく予定です.英語(史)に関係するすべての方々に注目していただければ幸いです.具体的には,

 ・ 新学期に初めて「英語史」という分野に接する大学生の皆さんにとって,学び始めに有用な情報がたくさん紹介されていきますので,ぜひご注目ください.
 ・ 「英語史」の知識が重要だとは分かっているけれども自力では手が出しにくい,とお考えの全国の英語の教員・先生方にとっても,役立つ情報が満載です.
 ・ その他,中高生の英語学習者のみならず英語学習を続けている一般の社会人の皆さんにも,英語史という分野の魅力を知っていただけるよう,なるべく分かりやすく勉強になる話題を提供していきたいと思っています.
 ・ 英語史を専攻する大学(院)生や,大学などで英語史関連の授業を担当する専門家の先生方にもご笑覧いただき,ご批判やご意見をいただければ幸いです.

 さて,「英語史スタートアップ」は慶應英語史フォーラム (Keio History of the English Language Forum; khelf) による企画です.このフォーラムについて詳しくは khelf ホームページをご覧いただければと思いますが,筆者の所属する慶應義塾大学文学部で英語史を専攻する学部・大学院の堀田ゼミのメンバーを中心とした集団です.新年度を機に,khelf ツイッターアカウント @khelf_keio も公式に開設しました(そのために,以下のロゴとバナーをメンバーが作成してくれました).ぜひフォローのほどお願いいたします

khelf logo    khelf banner



 上記のツイッターアカウントにすでに案内ツイートがありますが,「英語史スタートアップ」企画の第1弾として khelf による『英語史新聞』創刊号が本日発行されましたので,ぜひそちらをご覧ください.この『英語史新聞』については,明日の記事で詳しく触れたいと思います.
 同企画に関する今後のラインアップとしては,英語史に関するコンテンツを日々 khelf メンバーがウェブ上に公開していく「英語史コンテンツ50」や,英語史を専攻する研究者たちと堀田との Voicy 対談,英語史を学び始める/続けるに当たってのお役立ち情報の発信など,様々に展開していきますので,どうぞご期待ください.
 皆さんの充実した英語史の学びに期待します.本年度もよろしくお願いいたします.
 本日の連動している Voicy 放送「新年度初日から走り出します! 「英語史スタートアップ」企画」もどうぞ.


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2022-03-05 Sat

#4695. 2021年度,卒論報告会を開催しました [hel_essay][hel_education][sotsuron][khelf][world_englishes][variety]

 昨日3月4日の午前から午後にかけて,ゼミ内で2021年度の卒論報告会(オンライン)を開催しました.1日がかりでしたが,報告者である4年生はもちろん,khelf に所属の学部2年生,3年生,院生その他も出席し,盛会となりました.
 今年度は13件の卒論が提出され,その一覧は「#4665. 2021年度に提出された卒論論文の題目」 ([2022-02-03-1]) で挙げましたのでここで繰り返しませんが,改めて英語史・英語学が扱う範囲の広さを確認することができました.今年度も,時代を超えて人気のテーマもあれば,時代性を反映した時事的なテーマもありました.それでもここ数年の卒論題目を眺めながら一つひとつの卒論を思い出してみると,大まかな傾向も見えてくるように思われます.
 例えば,近年,研究手法として電子資料を用いる研究が当たり前となってきました.これ自体は予想できることかと思いますが,とりわけこの2年間は皆がコロナ禍で巣ごもりを余儀なくされたために,その傾向に拍車がかかったように思われます.各種のコーパスや OED などの辞書を用いた研究はますます多くなってきましたし,ネット上の音声や動画を利用する研究,ウェブ上で英語話者などにアンケートを実施するケースも増えてきました.
 もう1つの傾向として,様々な英語変種,とりわけ世界英語 (world_englishes) への関心も明らかに高まってきました.以前は英語変種に関する研究といえば英米差を扱うものが多く,たまにカナダ英語やオーストラリア英語が参入してくるといったふうに主要な ENL 変種をターゲットとした話題が多かったと思います.しかし,特にここ数年で,主要でない ENL 変種,ESL 変種,ピジン語,クレオール語を含む様々な英語変種への関心が高まってきました.ただし,数年間で生じた急激な変化というよりは,徐々に強まってきた傾向だろうと理解しています.
 最後に,報告会後の懇親会で院生から指摘があったのですが,社会言語学的な視点の研究が目立ってきているのではないかということでした.これは,研究の潮流ということもありますが,一方で堀田ゼミや慶應英文の特徴(バイアス?)が反映されているだけかもしれません.ですので,何とも言えませんが,今年度そのような視点からの卒論が多かったというのは事実だと思います.
 さて,これで今年度の公式なゼミ活動は一応終わりました.しかし,すでに新年度にかけての様々な企画が動き出しています.例えばこの4月と5月には,1年前と同様に「英語史導入企画」を打ち上げる予定です(cf. 「#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました」 ([2021-05-31-1])).4月より,またよろしくお願いいたします.
 参考までに,これまでの卒業論文の題目についてはこちらの記事セットにまとめました.関連して sotsuron あるいは khelf メンバー・研究テーマ紹介にも参考になる情報があります.1年前の「#4330. 春のゼミ合宿にて卒論・修論報告会を開催しました」 ([2021-03-05-1]) もどうぞ.

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2022-02-03 Thu

#4665. 2021年度に提出された卒論論文の題目 [hel_essay][hel_education][sotsuron][khelf]

 今年度,慶應義塾大学文学部英米文学専攻の私の英語史ゼミより計13本の卒業論文が提出されました.昨日,卒業論文面接も無事に終了し公式に承認されましたので,ここに13本の題目を記録・紹介します.ゼミの雰囲気が伝わるかと思います.

 ・ "A Corpus-Based Study of Word-initial h- in Late Modern and Present-Day English from the Perspective of Phonological Weakness"
 ・ "The Reasons and Factors David Beckham Has Corrected His Cockney Accent"
 ・ "Suffixes for Demonyms: The History and Causations of Demonymic Diversity in English"
 ・ "The Linguistic Attitude of English toward Borrowings: Focusing on Borrowings from Italian and Spanish"
 ・ "Semantic Changes of Adjectives 'Kind' and 'Gentle': Similarities and Differences of How the Two Adjectives Have Acquired the Meaning of 'Tender'"
 ・ "Analysis of Expansion of Meaning in Blue: Focused on Cultural Background of Color Blue"
 ・ "The Development of Gender-Neutral Language: A Corpus-Based Study on Chairman and Chairperson"
 ・ "A Comparison of Words in Picture Books between the 19th Century and 20th Century: Focusing on Adjectives"
 ・ "Female Names in the 19th Century: The Characteristics of Female Names Derived from Male Names"
 ・ "Naming 'Pokémon' from the Perspective of the Three-layered Axiom of English History"
 ・ "The Study of Relationship between Rastafarianism and Jamaican English"
 ・ "The Chronological Change in the Language Use of Hispanic: Analysis on Broadway Musicals"
 ・ "Rhetorical Features and Analysis of Obama's 'A More Perfect Union' Speech"

 並び順は,主題別でも時代別でもきれいな仕分けが難しいために,あくまで緩いものです.逆にいえば,それくらい多様だったということです.
 近年の大学生の関心のありかが学界の潮流とも連動していることが興味深いところだと思っています.とりわけ標準英語以外の変種への関心,広く World Englishes への関心が高まってきているようです.題目内に "Jamaican English", "Hispanic", "Cockney" といったキーワードを見つけることができます.また,今年度のゼミでたまたま意味変化に焦点を当ててきたこともあり,意味変化の話題もよく見られました.
 広い意味での「名前」に関するテーマも好まれたようですが,これは偶然なのでしょうか・・・.ただ,「名前」は普遍的に関心を持たれやすいテーマであることは確かですね.
 私のゼミは普段は「英語史ゼミ」を謳っていますが,必ずしも歴史的・通時的な話題ばかりを扱うわけではなく実質的には広い「英語学ゼミ」です.それでも,今年度は昨年度に引き続き歴史的・通時的な観点が比較的強かったと思います.
 過年度の卒業論文の題目についてはこちらの記事セットあるいは sotsuron をご覧ください.これからこの分野で卒論テーマを書こうとしている方にも,きっと参考になると思います.khelf (= Keio History of the English Language Forum) にも参考になる関連情報があります.

Referrer (Inside): [2022-03-05-1]

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2022-01-31 Mon

#4662. 都立高入試の英語スピーキングテストを巡る問題 [elt][khelf][world_englishes][rp][walker][pronunciation]

 昨年末,12月27日のことになりますが,朝日新聞 Edua「どうなる中学・高校入試 都立高入試の英語スピーキングテスト 教員らが「導入反対」の記者会見」と題する記事が掲載されました.ゼミ生の1人がこの問題を紹介してくれまして,少々遅ればせながらもここ数日で内輪のフォーラム khelf で議論が活発化してきています.
 いろいろと論点はあるのですが,とりわけ注目すべきは以下の点です(同記事より引用).

評価の信頼性については,どのような間違いがどれだけ減点されるか不透明だとし,特に都教委が示している採点基準にある「音声」の項目(3点満点)について疑問を呈した.この項目は,「母語の影響を非常に強く受けている」だと1点,「母語の影響を強く受けている」だと2点,「母語の影響を受けている場合があるが,概(おおむ)ね正しい」だと3点としている.法政大講師で新英語教育研究会長の池田真澄さんは「厳密な区別がつくとは思えない.日本語話者は日本語の影響は必ず受けており,気にしていたらまともに話なんてできない.世界には多様な英語があるのに,入試は別というのはおかしいのではないか」と話す.


 ツッコミだしたらキリがないというのは,まさにこのことです.だからこそフォーラム内で盛り上がっているというわけで,ある意味でとてもよい論題となっています.(ただし,こちらのページより令和3年度のプレテスト採点基準では「母語の影響」に関する項目は削除されています.)
 英語史研究者の立場から言えることは,発音を中心とする話し言葉に関する強い規範化は,いまだかつて例がないということです.18世紀の規範主義の時代の発音辞書についても,19世紀後半からの RP についても,あくまで目指すべき発音を示したものであり,今回の「公的な試験での点数化」という強さの規範化には遠く及びません(cf. 「#768. 変化しつつある RP の地位」 ([2011-06-04-1]),「#1456. John Walker の A Critical Pronouncing Dictionary (1791)」 ([2013-04-22-1]),「#3356. 標準発音の整備は18世紀後半から」 ([2018-07-05-1])).話し言葉について標準化・規範化し得る水準は,せいぜい "focused" にとどまり "fixed" を目指すことは現実には不可能です (cf. 「#3207. 標準英語と言語の標準化に関するいくつかの術語」 ([2018-02-06-1])) .そのような目標を,せめて試験では何とか実現したいということなのでしょうか.
 また,現代世界の "World Englishes" では,多様な英語の発音が行なわれているという事実があります.教育上,参照すべき英語変種や発音を定めることは必要です.しかし,一方で他の変種や発音の存在を認めることも必要です.両方の必要性に目配りすべき状況において,上記の採点基準のような,一方にのみ振り切った方針を取るのは適切ではないと考えます.
 本ブログの読者の皆さんも,この問題について考えてみてはいかがでしょうか.

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2022-01-25 Tue

#4656. 英語に関するチグハグ12本 [chiguhagu_channel][khelf][sobokunagimon][hel_education]

 内輪の話しで恐縮ですが,慶應義塾大学文学部英米文学専攻の私の英語史ゼミを中心とするフォーラム khelf (= Keio History of the English Language Forum) では,オンライン授業期となったこの1年半ほど,チャットツールを用いて「ちぐはぐチャンネル」 (chiguhagu_channel) なる遊び(いえいえ,重要な学術的交流です)を実践しています.
 メンバーの皆に「英語の素朴な疑問を教えてください」と投稿を呼びかけても,すでにネタが尽きており,なかなか新しいものが出てきません.しかし「日々の英語の学びなどで気づいた様々なチグハグ案件を教えてください」と呼びかけ方を変えると,少しは出てきます.日英語のチグハグでも,英語内部でのチグハグでもよいですし,何なら全然チグハグでなくても可,という自由な発言の機会です.
 いろいろとおもしろいものが出てきているのですが,皆から寄せられた大事な「チグハグ案件」をここで直接公開するわけにもいきませんので,私自身がこの1ヶ月ほどで書きためてきたチグハグをいくつか披露したいと思います.たいしたものではありませんが,こんなノリでネタが少しずつ集まってきているということです.
 このような素朴な疑問の蓄積が,しばしば本ブログや Voicy の「英語の語源が身につくラジオ」で取り上げる話題のソースとなっています.

child は2重母音なのに,children は短母音.同じく,wild は2重母音なのに,wilderness は短母音.ちぐはぐチャンネル!


規範文法では,2重比較級の worser はダメ.しかし同じく2重比較級の lesser は OK.ちぐはぐチャンネル.


sometimes の -s は属格(所有格)語尾に由来する.some times の -s は複数語尾に由来する.ちぐはぐチャンネル!


・ well written: (本が)うまく書かれている
・ well read: (人が)本をよく読んでいて博学である
同じ過去分詞形容詞なのに.ちぐはぐチャンネル!


・ 普通の英語の先生:英語では r と l は明確に区別されますので気をつけましょうね.rice/lice, right/light など間違えたら大変ですよ.
・ 英語史を知っている英語の先生:ネイティヴだって混乱していたようですよ.coriander は古くは coliandre だったし,marble も同じように marbre だったので.
ちぐはぐチャンネル!


調子に乗ってもう1つ.
・ 普通の英語の先生:英語では v と b は明確に区別されますので気をつけましょうね.very/berry, vest/best など間違えたら大変ですよ.
・ 英語史を知っている英語の先生:ネイティヴだって混乱していたようですよ.have, live の古英語の原形は habban, libban だったので.
ちぐはぐチャンネル!


目下,話題のにっくき「オミクロン」.ご存じの通り,ギリシア・アルファベットの第15文字 ο は "o-miron" (オ・ミクロン)と呼ばれ「小さい o」(=短母音の o)の意.一方,最後の第24文字 ω は "o-mega" (オ・メガ)は「大きい o」(=長母音の o)の意.
 では,これを前提に英語の話しに移ります.英語では長母音の「オー」は,歴史的に <oo> で綴られ [o:] と発音されてきました.大母音推移により [o:] > [u:] となったために food, moon, pool では [u:] と発音されます.英語版の「オメガ発音」と呼んでおきましょう.
 ところが,中には [o:] > [u:] となった後に,発音が短母音化、いわば「ミクロ化」して [ʊ] となったものがあります.それが、good, look, took のタイプです.英語版の「オミクロン発音」と呼んでおきましょうか.
 ということで、まとめると.
・ オメガ発音: food, moon, pool, etc.
・ オミクロン発音: good, look, took, etc.
 新型コロナウィルスが「オメガ」まで行かないことを願って、ちぐはぐチャンネル!


16--17世紀の英語:
・ 発音は大母音推移 (Great Vowel Shift) により大変化を遂げようとしていた
・ 綴字は標準化の機運に乗り,古い発音に忠実なままに固定化しようとしていた
これが現代の spelling-pronunciation gap の不幸な起源.発音と綴字がたどったチグハグな運命.


皆さん both と either は反意語だと思いますか? 確かに both A and B は「AとBと両方」で,either A or B は「AかBかどちらか」と学んだはずです.いかにも反意ですよね.しかし,
・ Unfortunately I was sitting at the table with smokers on both sides of me.
・ Unfortunately I was sitting at the table with smokers on either side of me.
という2つの文は同義なのです.ちぐはぐチャンネル!


形容詞 free に対応する副詞としては単純副詞の free と,-ly 副詞の freely がありますね.
・ to travel free: 無料の旅行,ただ乗り
・ to travel freely: 時間も場所も自由で,制限なしの旅行
どちらも好きですけどね.チグハグ!


こういうの困りますねぇ.
・ conceive - conceit - concept - conception
・ deceive - deceit - decept - deception
・ receive - receit - receipt - reception
・ perceive - perceit - percept - perception
異なる時代にラテン語から借りたり,フランス語から借りたり,個々別々の動きをしてきたから,後から整理してみると,こんな風になっちゃうわけです.


ある言語が他言語(文化)と接触し大きな刺激を受けたときに,大規模な語彙拡充が起こることがあります.その際に,そのまま他言語から語を借用する「オープン借用」と,翻訳して取り込む「むっつり借用」という2つの方法があり得ます.言語や時代によって,この方針がおよそきれいに分かれます.
・ 「オープン借用」の方針:フランス語より影響を受けた中英語,ラテン語より影響を受けた初期近代英語,漢語より影響を受けた上代以降の日本語
・ 「むっつり借用」の方針:ラテン語より影響を受けた古英語,ラテン語の影響を受けた近代期のドイツ語,西洋語より影響を受けた明治期の日本語
2つの方針を巡って,各々の言語・時代で何がどう異なっていたのか? ちぐはぐチャンネル.


 以上12件につき,お粗末様でした.

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2022-01-23 Sun

#4654. either は片方なのか両方なのか問題 [sobokunagimon][pronoun][adjective][dual][logic][semantics][contronym][khelf]

 一昨日の記事「#4652. any が「どんな?でも」を表わせるように either は「いずれの?でも」を表わせる」 ([2022-01-21-1]) でもすでに取り上げましたが,標記は目下私のゼミを中心とする khelf (= Keio History of the English Language Forum) メンバーの間で熱い議論の対象となっている問題です.
 either は,2者のうちのいずれかを選ぶ「片方」の意味を表わすというイメージが強いと思いますが,実は「両方」の意味を表わすケースもあるという問題です.一種の contronym の例といえます.
 『コンパスローズ英和辞典』の either より,それぞれに対応する語義1と語義2を引用しましょう.

--- (形)[単数形の名詞につけて]
(1) (2つ[2人]のうち)どちらか(一方)の;どちらの…でも,どちらでも任意の
   Take either apple.|どちらかのりんごを取りなさい
   You may invite either boy.|どちらの少年を招待しても結構です.
. . . .
(3) どちらの…も,両方の
   There was a chair at either end of the long table.|長いテーブルの両端にそれぞれいすが置かれていた.

(語法)3の意味では特に side, end, hand など対を表わす名詞と用いるが, 次の例のように both(+複数名詞)や each(+単数名詞)を用いることも多い.both は「両方」を同時にまとめて,either, each は「片方」 ずつそれぞれを個別に捉える感じとなる
   There were chairs at both ends of the long table.
   There was a chair at each end of the long table.


 either A or B という高頻度の相関表現がありますし,一般には (1) こそが either の原義だと捉えられていると思いますが,歴史的にみれば驚くことに (3) のほうが古いのです.OED によれば,(3) は古英語から普通に見られる語義ですが,(1) は中英語後期になってようやく現われる新参語義です.
 どうしてこんなことになってしまったのでしょうか.よく似た形態の outher という語とややこしい関係に陥ってしまったという事情があるようです.関連して「#945. either の2つの発音」 ([2011-11-28-1]) もご参照ください.

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2021-12-20 Mon

#4620. ゼミ生たちの研究テーマ紹介 [khelf][seminar][sotsuron][hel_education]

 私が大学で担当している3,4年生を対象とするゼミは「英語史ゼミ」あるいは「フィロロジーゼミ」ということになっています.慶應文学部の専門ゼミは正式には(伝統的かつ大仰に)「研究会」と呼ばれるため,内部では「英語史研究会」や「フィロロジー研究会」,はたまた担当者の名前をとって「堀田研究会」などと呼ばれることもあります(最後のものは,私自身が研究されてしまうかのようで,ゼミ合宿などの折りに貸し切りバスやセミナー室の扉に貼り出されると少々恥ずかしいです).また,大学院でも対応する英語史のゼミがあります.
 1年のこの時期は,現学部2年生が来年度以降に所属する専門ゼミを志望し,選考を経て,およそ決定する時期です.来年度の英語史ゼミ所属予定者も,先日,無事に確定しました.来年度もゼミでは広く英語史・英語学の諸問題を扱っていきたいと考えています.
 さて,大学・大学院の英語史ゼミの現役メンバーや卒業生・修了生などを中心とするコミュニティとして,khelf (= Keio History of the English Language Forum) という組織が立ち上がっています.ほぼ2年前の2020年1月に発足し,同年11月にはホームページもオープンしました(「#4212. ゼミのホームページがオープンしました」 ([2020-11-07-1])).内輪メンバーからなる組織ではありますが,そこでの英語史学習・研究・教育の様子は可能な範囲で一般に公表していくという方針をとっています.この2年間のゼミ活動の足跡も,いくつかコンテンツ化されたものが上記ホームページ上に公開されていますので,ゼミ所属予定者はじっくりと読んでおいてください.また,また,本ブログを読んでいただいている一般の方々も,こんなことまでもが英語史・英語学の話題になり得るのかと,その幅広さを味わってみてください.
 とりわけ,ゼミ生が英語史・英語学のどのような話題に関心をもっているかを眺めてもらえればと思います.この11月にはゼミ生研究テーマ紹介ページが設けられました.テーマ紹介となるコンテンツの作成に当たっては,各ゼミ生に前もってウェブ上での一般公開を前提とするので分かりやすい紹介コンテンツとなるように工夫してくださいと述べてありました.ですので,大学院生の研究テーマなども,本当はいずれも専門的で難解なテーマではありますが,通常よりもずっと分かりやすく紹介されています.昨年度のゼミ生(=卒業生)の卒論題目なども掲載されています.過年度のゼミ生の卒論題目については,合わせて sotsuron の各記事もご参照ください.

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2021-10-21 Thu

#4560. ゼミ合宿でのコンテンツ展覧会のベスト作品 [hel_education][khelf][notice]

 去る9月21日,22日の両日,昨年に引き続きオンライン開催となりましたが,学部・大学院のゼミ合宿を実施しました.本ブログでも「#4530. 今年度のオンラインゼミ合宿の1日目」 ([2021-09-21-1]) と「#4531. 「World Englishes 入門」スライド --- オンラインゼミ合宿の2日目の講義より」 ([2021-09-22-1]) で簡単に報告した通りですが,2日間にわたるゼミ合宿では様々なイベントを催行しました.
 そのなかの目玉の1つが,4大学合同で開催したオンラインの「英語史コンテンツ展覧会」でした(具体的には学習院大学,専修大学,明治学院大学,慶應義塾大学).学生が事前に英語史に関して調べたコンテンツ(雑談以上でレポート以下,ただし学術のルールに則って参考文献などはしっかり付すこと,という仕様)を匿名で公表し,決められた時間内にお互いに読み合って,ツイート風にコメントするというライヴ企画です.
 展覧会の後には出展者である学生同士で投票を行ない,おもしろかったコンテンツを選出するという仕掛けも設けました.そのベスト10コンテンツ(実際には順位タイも含めて12件)が決まりましたので,一般にも公開したいと思います.khelf (= Keio History of the English Language Forum) のサイトに展覧会用特設ページを設けました.
 ぜひ学生たちの柔軟な好奇心と鋭い問題意識,英語史の幅広さと奥深さ,遊び心からスタートする学びの素晴らしさをご堪能ください.以下にもラインアップを示しておきます.軽めで読みやすいものから調査を尽くした力作まで,硬軟のコンテンツが揃っています.なにせ出展者は学部2年生から博士課程シニアの学生までと幅広く,本当に感心するほど多岐にわたっておもしろいです!

 ・ "dog" に対する「人間」のイメージ
 ・ I think, I think うっせえわ
 ・ 主語と時制を無視するスラング 'ain't'
 ・ 「はい、チーズ!」 じゃなきゃダメなんですか?
 ・ フリーランスと騎士
 ・ 自分の名前を紹介するときどちらを使うか?
 ・ 語源から考える人間像
 ・ どっちそっち「チラ見」?
 ・ ちゃんと「カンパイ」出来ていますか?
 ・ アナ雪『Let It Go』はなぜ“ありのまま”と訳される?
 ・ 5文型の先の世界
 ・ ニューヨークの地名から見る英語史

 英語史教育・学習の一環として行なった企画です.趣旨を理解していただき,ぜひ楽しんでお読みいただければ幸いです.

Referrer (Inside): [2022-04-05-1]

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