京都大学の家入葉子先生と堀田の共著となる,英語史研究のハンドブック『文献学と英語史研究』が開拓社より出版されます.発売は新年の1月中旬辺りになりますが,Amazon ではすでに予約可能となっています(A5版,264ページ,税込3,960円).
本書は,開拓社の最新英語学・言語学シリーズ(全22巻の予定)の第21巻としての位置づけで,それ自体が変化と発展を続けるエキサイティングな分野である「英語史」と「英語文献学」の過去40年ほどの研究動向を振り返りつつ,未来への新たな方向を提案するという趣旨となっています.なお,本書の英文タイトルは Current Trends in English Philology and Historical Linguistics です.
本書で取り上げている話題は,英語史研究の潮流と展望,資料とデータ,音韻論,綴字,形態論,統語論が主です.英語史分野で研究テーマを探すためのレファレンスとして利用できるほか,通読すれば昨今の英語史分野で何が問題とされ注目されているのかの感覚も得られると思います.本の扉にある【本書の内容】は以下の通りです.
文献資料の電子化が進んだ20世紀の終盤以降は,英語史研究においてもコーパスや各種データベースが標準的に利用されるようになり,英語文献研究は飛躍的な展開を遂げた.英語史研究と現代英語研究が合流して英語学の分野間の連携が進んだのも,この時代の特徴である.本書はこの潮流の変化を捉えながら,音韻論・綴字・形態論・統語論を中心に最新の英語史研究を紹介するとともに,研究に有用な電子的資料についても情報提供する.
章立ては以下の通りです.章ごとに執筆者は分かれていますが,互いに原稿を交換し検討が加えられています.
第1章 英語史研究の潮流 (執筆者:家入)
第2章 英語史研究の資料とデータ (堀田,家入)
第3章 音韻論・綴字 (堀田)
第4章 形態論 (堀田)
第5章 統語論 (家入)
第6章 英語史研究における今後の展望にかえて (家入)
家入先生がウェブ上ですでに本書の紹介をされていますので,リンクを張っておきます.
・ 研究・授業関連の投稿ページ
・ 「コトバと文化のフォーラム - Castlecliffe」のブログ記事
本書については,今後 hellog や Voicy の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」などの媒体で情報発信していく予定です.長く参照され続ける本になればと思っています.どうぞよろしくお願いいたします.
・ 家入 葉子・堀田 隆一 『文献学と英語史研究』 開拓社,2022年.
hellog でも何度か宣伝していますが,この5月に 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館,2022年)が上梓されました.
私が執筆担当した箇所の1つに,第1章の「導入:標準語の形成史を対照するということ」の第2節「標準化の切り口(パラメータ)」 (6--15) があります.本書の出版企画につながった過去5年間の研究会活動のなかで検討してきた標準化のパラメータを列挙した部分です.小見出しがそのままパラメータに対応しているので,そちらを一覧しておきます.
2.1 統一化,規範化,通用化
2.2 標準化の程度
2.3 標準化と脱標準化
2.4 使用域
2.5 領域別の標準化とその歴史的順序
2.6 標準化のタイミングと要した時間
2.7 標準化の諸段階・諸側面
2.8 通用空間
2.9 標準化の目標となる変種の種類・数
2.10 標準化を推進する主体・方向
2.11 標準化に対する話者の態度
2.12 言語の標準化と社会の言語標準化
時間をかけてブレストし,まとめてきたパラメータの一覧なので,対照言語史的に標準化 (standardisation) を検討する際のタイポロジーやモデルとして広く役立つのではないかと考えています.
hellog では言語標準化の話題は standardisation の記事で頻繁に取り上げてきましたが,研究会での発表を念頭に作成した,英語の標準化の歴史についてのある程度まとまった資料としては「#3234. 「言語と人間」研究会 (HLC) の春期セミナーで標準英語の発達について話しました」 ([2018-03-05-1]) と「#3244. 第2回 HiSoPra* 研究会で英語史における標準化について話しました」 ([2018-03-15-1]) を参照ください.
『言語の標準化を考える』の紹介についてはこちらの記事セットをどうぞ.とりわけ7月8日に音声収録した編者鼎談はお薦めです.本書の狙いや読みどころを編者3人で紹介しています.近々に編者鼎談第2弾も企画しています.本書について,あるいは一般・個別言語における標準化の話題について,ご意見,ご感想,ご質問等をこちらのコメントフォームお寄せください.第2弾で話題として取り上げられればと思っています.
昨日の記事「#4825. 英米史略年表 --- 『英語の教養』より」 ([2022-07-13-1]) で紹介した大井光隆(著)『英語の教養』(ベレ出版,2021年)とよく似た趣旨の本をもう1冊紹介したい.
同じく2021年に出版された,亀田尚己・中道キャサリン(著)『起源でたどる日常英語表現事典』(丸善出版)である.英語に関わる文化・歴史上の各キーワードを1ページで簡潔に解説してくれる事典だ.とりわけ単語の語源や使い方に焦点が当てられているが,文化・歴史的背景についても半ページほど割かれている.以下に章立てを示そう.
第I部 歴史・文化・制度に関する英語の起源
1 古代史・英米史にまつわる英語
2 聖書・文学にまつわる英語
3 権威・身分制度にまつわる英語
4 教育制度にまつわる英語
第II部 宗教・戦争・政治に関する英語の起源
1 宗教にまつわる英語
2 戦争にまつわる英語
3 政治・法律にまつわる英語
第III部 経済・商業・職業に関する英語の起源
1 経済活動にまつわる英語
2 契約にまつわる英語
3 両替・銀行・為替にまつわる英語
4 貿易にまつわる英語
5 工業・農業・職業にまつわる英語
第IV部 家庭・身体・道具に関する英語の起源
1 労働・運動・娯楽にまつわる英語
2 身体・食事・飲み物にまつわる英語
3 道具・乗り物・動物にまつわる英語
第V部 自然・気象・季節に関する英語の起源
1 海陸・地形・地勢・神霊にまつわる英語
2 気象・季節・降雨・日照にまつわる英語
3 天体・暦・時間にまつわる英語
第VI部 外国語に由来する英語の起源
1 ラテン語由来の英語
2 フランス語由来の英語
3 その他の外国語由来の英語
合計286の単語・表現が見出しに挙げられ解説されているが,パラパラめくって眺めているだけで飽きない.例えば,最後の第VI部の「外国語に由来する英語の起源」からの単語を挙げてみると,ラテン語由来として A.D., Alma Mater, Bona fide, Candle, Confidence, De facto, e.g., etc./et cetera, i.e., Mile, per, per cent/percent, v.v/vice versa, Verse が,フランス語由来として Attaché, Connoisseur, Gourmet, Novice, Vogue が,その他として Chocolate, Kindergarten, Magazine, Pyjamas/Pajamas, Tea が扱われている.
・ 亀田 尚己・中道 キャサリン 『起源でたどる日常英語表現事典』 丸善出版,2021年.
昨年出版された大井光隆(著)『英語の教養』(ベレ出版)をパラパラ眺めて楽しんでいる.文化的なキーワードを挙げつつ1テーマを1ページで解説する,手軽に読める英米文化誌の本となっている.どこから読んでもためになる.章立てを示そう.
第1章 英米の歴史
第2章 年中行事と祝日
第3章 ギリシャとローマの神話
第4章 聖書とキリスト教
第5章 伝説と民間伝承
第6章 生活のことば
第7章 スポーツの文化
第8章 架空の人物と民間のヒーロー
第9章 動物の世界
第10章 植物の世界
第1章を開いたところに「英米史略年表」が掲げられている (10--11) .英米史の全体像を大づかみするには,細かい年表よりも,このくらいの略年表が便利である.要点だけを押さえた英米史年表として以下に記しておきたい.
(紀元前) | |
600年頃 | ブリテン島に大陸からケルト人が移住 |
55年~4 | ローマの将軍カエサル,ブリテン島に侵攻(~54) |
このころ,イエス・キリスト誕生 | |
(紀元後) | |
43 | ローマによるブリテン島支配が始まる |
409 | ローマ軍,ブリテン島より撤退 |
597 | ローマの宣教師アウグスティヌスによるキリスト教の布教始まる |
800 | このころからバイキングの侵攻が始まる |
871 | アルフレッド王即位 |
1016 | デンマーク王クヌート (Canute) がイングランドを征服,王位に就く |
1066 | 「ノルマン征服」で,ウィリアム1世即位 |
1215 | ジョン王,マグナカルタを認める |
1337 | 英仏間の「百年戦争」始まる (~1453) |
1348 | 黒死病,猛威を振るう |
1455 | 「ばら戦争」始まる (~85) |
1509 | ヘンリー8世即位 (~47) |
1534 | 国教会 (Church of England) 成立,ローマ・カトリック教会と絶縁 |
1558 | エリザベス1世即位 (~1603) |
1588 | ドレイク,スペインの無敵艦隊を破る |
このころ,劇作家シェイクスピアが活躍 | |
1600 | 東インド会社が設立され,東洋との直接貿易始まる |
1607 | イギリス人が初めてアメリカに入植し,現在のバージニアに植民地ジェームズタウン (Jamestown) を設立 |
1620 | ピルグリム・ファーザーズがアメリカに移住 |
1640 | ピューリタン革命 (~60) |
1649 | チャールズ1世が処刑され,イングランド共和国成立 |
1660 | 王政復古 (the Restoration) で,チャールズ2世即位 (~85) |
1665 | ロンドンで黒死病が大流行 |
1666 | ロンドン大火で,市街の80%が消失 |
1688 | 名誉革命 (the Glorious Revolution) 始まる (~89) |
1707 | イングランドとスコットランドが合同し,グレートブリテン連合王国が成立 |
1775 | アメリカ独立戦争始まる |
1776 | アメリカ独立宣言が採択される |
1789 | フランス革命勃発 |
1801 | イギリス,アイルランドと合同 |
1815 | ウェリントン,ワーテルローの戦いでナポレオン軍を破る |
1830 | リバプール・マンチェスター間に鉄道が開業し,鉄道時代がスタート |
1837 | ビクトリア女王即位 (~1901) |
1840 | アヘン戦争勃発 (~42) |
1845 | アイルランドで大飢饉 (~46) |
1851 | ロンドンで第1回万博(ロンドン大博覧会)開催 |
1861 | アメリカで南北戦争始まる |
1914 | 第一次世界大戦始まる (~18) |
1939 | 第二次世界大戦始まる (~45) |
1952 | エリザベス2世即位 |
1960 | アメリカで公民権運動 |
1965 | ベトナム戦争 (~75) |
1989 | 「ベルリンの壁」崩壊 |
2019 | 世界各地で「新型コロナウィルス感染症」 (COVID-19) が発生 |
・ 大井 光隆 『英語の教養』 ベレ出版,2021年.
様々な言語における標準化の歴史を題材とした本が出版されました.
・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
私も編著者の1人として関わった本です.5年近くの時間をかけて育んできた研究会での発表や議論がもととなった出版企画が,このような形で結実しました.とりわけ「対照言語史」という視点は「海外の言語学の動向を模倣したものではなく,われわれが独自に提唱するもの」 (p. 4) として強調しておきたいと思います.例えば英語と日本語を比べるような「対照言語学」 (contrastive_linguistics) ではなく,英語「史」と日本語「史」を比べてみる「対照言語史」 (contrastive_language_history) という新視点です.
この本の特徴を3点に絞って述べると,次のようになります.
(1) 社会歴史言語学上の古くて新しい重要問題の1つ「言語の標準化」 (standardisation) に焦点を当てている
(2) 日中英独仏の5言語の標準化の過程を記述・説明するにとどまらず,「対照言語史」の視点を押し出してなるべく言語間の比較対照を心がけた
(3) 本書の元となった研究会での生き生きとした議論の臨場感を再現すべく,対話的脚注という斬新なレイアウトを導入した
目次は以下の通りです.
まえがき
第1部 「対照言語史」:導入と総論
第1章 導入:標準語の形成史を対照するということ(高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一)
第2章 日中英独仏 --- 各言語史の概略(田中 牧郎・彭 国躍・堀田 隆一・高田 博行・西山 教行)
第2部 言語史における標準化の事例とその対照
第3章 ボトムアップの標準化(渋谷 勝己)
第4章 スタンダードと東京山の手(野村 剛史)
第5章 書きことばの変遷と言文一致(田中 牧郎)
第6章 英語史における「標準化サイクル」(堀田 隆一)
第7章 英語標準化の諸相 --- 20世紀以降を中心に(寺澤 盾)
第8章 フランス語の標準語とその変容 --- 世界に拡がるフランス語(西山 教行)
第9章 近世におけるドイツ語文章語 --- 言語の統一性と柔軟さ(高田 博行・佐藤 恵)
第10章 中国語標準化の実態と政策の史話 --- システム最適化の時代要請(彭 国躍)
第11章 漢文とヨーロッパ語のはざまで(田中 克彦)
あとがき
hellog でも言語の標準化の話題は繰り返し取り上げてきました.英語の標準化の歴史は確かに独特なところもありますが,一方で今回の「対照言語史」的な議論を通じて,他言語と比較できる点,比較するとおもしろい点に多く気づくことができました.
「対照言語史」というキーワードは,2019年3月28日に開催された研究会にて公式に初めてお披露目しました(「#3614. 第3回 HiSoPra* 研究会のお知らせ」 ([2019-03-20-1]) を参照).その後,「#4674. 「初期近代英語期における語彙拡充の試み」」 ([2022-02-12-1]) で報告したように,今年の1月22日,ひと・ことばフォーラムのシンポジウム「言語史と言語的コンプレックス --- 「対照言語史」の視点から」にて,今回の編者3人でお話しする機会をいただきました.今後も本書出版の機会をとらえ,対照言語史の話題でお話しする機会をいただく予定です.
hellog 読者の皆様も,ぜひ対照言語史という新しいアプローチに注目していたければと思います.
・ 高田 博行・田中 牧郎・堀田 隆一(編著)『言語の標準化を考える 日中英独仏「対照言語史」の試み』 大修館,2022年.
故宇賀治正朋先生の著書に『英文法学史』がある.御遺族が御遺稿を自費で出版されたとのことで,非売品として一般には知られていない著書である.先日,知り合いの研究者より1部をいただく機会があった.ここに目次を示し,宇賀治先生がいかにして英文法史を紡いだかを概観したい.大きな見取り図が得られる.
敬愛する河西良治先生(中央大学文学部英語文学文化専攻教授)がこの3月でご退職されます.退職記念として,河西ゼミ門下生により編集された記念論文集『言語研究の扉を開く』が開拓社より出版されました.私自身も小論「英語の歴史にみられる3つの潮流」を寄稿させていただいたのですが,その拙論は別として,河西先生ご自身も含めた充実の執筆陣による多種多様な英語学の論文が集まっており,これからじっくり楽しんで読みたいと思っています.
以下,目次を掲げます.
[ 言語心理学・言語教育学 ]
・ 阿佐 宏一郎 「文字サイズと読み効率の言語心理学」
・ 歌代 崇史 「ティーチャートークの適切さの自動推定に向けた探求 --- 日本語教員養成課程において ---」
・ 木塚 雅貴 「英語科教員のための英語音声学」
・ Matthews, John 「Sounds of Language, Sounds of Speech: The Linguistics of Speaking in English but Hearing in Japanese」
[ 応用言語学 ]
・ 石崎 貴士 「Reconsidering the Input Hypothesis from a Connectionist Perspective: Cognitive Filtering and Incomprehensible Input」
・ 平川 眞規子 「日本人英語学習者によるテンスとアスペクトの意味解釈:単純形 -s vs. 現在進行形 -ing」
・ 穂刈 友洋 「誤り研究への招待」
・ 村野井 仁 「第二言語習得と意味」
・ 若林 茂則 「第二言語の解明:統率束縛理論に基づく研究の成果と今後の研究の方向性」
[ 英語学 ]
・ 靭江 静 「日本語の「できる」と英語の can の語用論上の相違と語用論に基づいた指導の必要性」
・ 久米 啓介 「英語学習者の冠詞体系」
・ 倉田 俊二 「英語の自由間接話法と自由直接話法について」
・ 堀田 隆一 「英語の歴史にみられる3つの潮流」
・ 手塚 順孝 「顎・舌・唇:身体的特徴を加味した英語母音の一般化の可能性」
[ 理論言語学 ]
・ 新井 洋一 「That 時制節を焦点として導く疑似分裂文の特性と諸問題」
・ 井筒 勝信 「見えるもの,見えないもの:ミクロ類型論から見えて来るもの」
・ 北原 賢一 「コーパスを用いた言語研究の盲点 --- 同族目的語表現を巡って ---」
・ 篠原 俊吾 「ずらして見る --- メトニミー的視点 ---」
・ 星 英仁 「概念・志向システムによる意味解釈のメカニズム」
・ 山田 祥一 「断言と疑問の混交文 --- ウェブ上の言葉遊びに見られる特殊表現 ---」
・ 河西良治先生経歴と業績一覧
・ 「私の言語研究:言語と人生」 河西 良治
・ 河西良治教授退職記念論文集刊行会(編) 『言語研究の扉を開く』 開拓社,2021年.
OED のサイトには当然ながら英語史に関する情報が満載である.じっくりと読んだことはなかったのだが,掘れば掘るほど出てくる英語史のコンテンツの宝庫だ.OED が運営しているブログがあり,そこから英語史概説というべき記事を以下に挙げておきたい.
OED らしく語彙史が中心となっているのはもちろん,辞書編纂の関心が存分に反映されたユニークな英語史となっており,実に読み応えがある.とりわけ古い時代の英語の evidence や manuscript dating の問題に関する議論などは秀逸というほかない(例えば Middle English: an overview の "Our surviving documents" などを参照).また,終着点となる20世紀の英語の評論などは,今後の英語を考える上で必読ではないか.
是非,以下をじっくり読んでもらえればと思います.
・ Old English --- an overview
- Historical background
- Some distinguishing features of Old English
- The beginning of Old English
- The end of Old English
- Old English dialects
- Old English verbs
- Derivational relationships and sound changes
- cf. Old English in the OED
・ Middle English: an overview
- Historical period
- The most important linguistic developments
- A multilingual context
- Borrowing from early Scandinavian
- Borrowing from Latin and/or French
- Pronunciation
- A period characterized by variation
- Our surviving documents
・ Early modern English --- an overview
- Boundaries of time and place
- Variations in English
- Attitudes to English
- Vocabulary expansion
- 'Inkhorn' versus purism
- Archaism and rhetoric
- Regulation and spelling reform
- Fresh perspectives: Old English and new science
・ Nineteenth century English: an overview
- Communications and contact
- Local and global English
- Recording the language
- A changing language: grammar and new words
- The science of language
・ Twentieth century English: an overview
- Circles of English
- Convergence: the birth of cool
- Restrictions on language
- Lexis: dreadnought and PEP talk
- Modern English usages
昨日の記事「#3974. 『もういちど読む山川世界史』の目次」 ([2020-03-14-1]) を踏まえ,日本史バージョンもお届けする.もちろん典拠は『もういちど読む山川日本史』だ.日本語史に関しては「#3389. 沖森卓也『日本語史大全』の目次」 ([2018-08-07-1]) を参照.ノードを開閉できるバージョンはこちらからどうぞ.
これまで英語史に隣接する○○史の分野に関して,教科書的な図書の目次をいくつか掲げてきた.「#3430. 『物語 イギリスの歴史(上下巻)』の目次」 ([2018-09-17-1]),「#3555. 『コンプトン 英国史・英文学史』の「英国史」の目次」 ([2019-01-20-1]),「#3556. 『コンプトン 英国史・英文学史』の「英文学史」の目次」 ([2019-01-21-1]),「#3567. 『イギリス文学史入門』の目次」 ([2019-02-01-1]),「#3828. 『図説フランスの歴史』の目次」 ([2019-10-20-1]) などである.
より大きな視点から世界史の目次も挙げておきたいと思ったので『もういちど読む山川世界史』を手に取った.歴史をわしづかみするには,よくできた教科書の目次が最適.ノードを開閉できるバージョンはこちらからどうぞ.
数学に関する年表・図鑑・事典が一緒になったような,それでいて読み物として飽きない『ビジュアル数学全史』を通読した.2009年の原著 The Math Book の邦訳である.250の話題の各々について写真や図形が添えられており,雑学ネタにも事欠かない.ゾクゾクさせる数の魅力にはまってしまった.この本の公式HPはこちら.
原著で読んでいたら数学用語にも強くなっていたかもしれないと思ったが,250のキーワードについては英語版の目次から簡単に拾える.ということで,以下に日英両言語版の目次をまとめてみた.ただ挙げるのでは芸がないので,本ブログの過去の記事と引っかけられそうなキーワードについては,リンクを張っておいた.数学(を含む自然科学)に関連する言語学・英語学・英語史の話題については,たまに取り上げてきたので.
英語史を学ぶ上で間接的ではあるが非常に重要な分野の1つにフランス史がある.今回は,図解資料を眺めているだけで楽しい『図説フランスの歴史』の目次を挙げておきたい.ちなみにイギリス史の目次については「#3430. 『物語 イギリスの歴史(上下巻)』の目次」 ([2018-09-17-1]) を参照.目次シリーズ (toc) の記事も徐々に増えてきた.
Crystal による英語百科事典 The Cambridge Encyclopedia of the English Language が16年振りに改版された.新しい第3版の序文で,この15年の間に英語に関して多くのことが起こったと述べられているとおり,百科事典として,質も量も膨らんでいる.特に本文の2章から7章を構成する Part I は,120ページ近くに及ぶ英語史の話題の宝庫となっている.その部分の目次を眺めるだけでも楽しめる.以下に掲載しよう.
PART I The History of English
2 The Origins of English
3 Old English
Early Borrowings
Runes
The Old English Corpus
Literary Texts
The Anglo-Saxon Chronicle
Spelling
Sounds
Grammar
Vocabulary
Late Borrowings
Dialects
4 Middle English
French and English
The Transition From Old English
The Middle English Corpus
Literary Texts
Chaucer
Spelling
Sounds
Grammar
Vocabulary
Latin borrowings
Dialects
Middle Scots
The Origins of Standard English
5 Early Modern English
Caxton
Transitional Texts
Renaissance English
The Inkhorn Controversy
Shakespeare
The King James Bible
Spelling and Regularization
Punctuation
Sounds
Original Pronunciation
Grammar
Vocabulary
The Academy Issue
Johnson
6 Modern English
Transition
Grammatical Trends
Prescriptivism
American English
Breaking the Rules
Variety Awareness
Scientific Language
Literary Voices
Dickens
Recent Trends
Current Trends
Linguistic Memes
7 World English
The New World
American Dialects
Canada
Black English Vernacular
Australia
New Zealand
South Africa
West Africa
East Africa
South-East Asia and the South Pacific
A World Language
Numbers of Speakers
Standard English
The Future of English
English Threatened and as Threat
Euro-Englishes
現代を扱う第7章の "World English" が充実している.たとえば英語話者の人口統計がアップデートされており,現時点での総計は23億人を少し超えているという (115) .ちなみに第2版での数字は20億だった.
・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. Cambridge: CUP, 2019.
今年3月に出版された朝尾 幸次郎(著)『英語の歴史から考える英文法の「なぜ」』が広く読まれているようだ.拙著の『英語史で解きほぐす英語の誤解 --- 納得して英語を学ぶために』(中央大学出版部,2011年)や『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』(研究社,2016年)と同趣旨の本ということもあり関心をもって手に取ってみたが,実に読みやすく,分かりやすい.
内容をどこまで掘り下げているかという観点からいえば,この新刊書は浅掘りである.しかし,「まえがき」 (iv) にあるように,著者は英語史の事前知識を想定しないという立場をとっており,その趣旨からすると,むしろ詳しすぎない程度に記述を抑えているセンスは素晴らしいと言ってよいだろう.本書が手に取ってもらいやすい理由である.
著者が実例を挙げることを重視したと述べているとおり,本文にも〈英文法こぼれ話〉にも,読者の興味を引く例が掲載されている.ところどころに,見事なキャッチフレーズやセンスの光る解説がみられる.「英語は歴史的かなづかい」のような言い方もその1つだ.
以下に目次を付そう.章節のタイトルがそのまま素朴な疑問になっているものが多い.本ブログでも扱ってきた話題が多く取り上げられているので,ブログ内をキーワード検索などして記事も眺めていただければと思うが,同じ問題でも,人が変われば眺め方も変わるものである.本書の解説を読んでみて,私自身の手持ちの解説とは異なり,ナルホドと思ったケースも多々あった.是非ご一読を.
Harris 著,ローマン・アルファベットの書体に関するイラスト本 The Art of Calligraphy は眺めていて飽きない.歴史上の様々な書体が,豊富な写本写真や筆による実例をもって紹介される.文字や筆記用具に関する蘊蓄も満載.
本書の目次がそのままローマン・アルファベットの書体の歴史となっているので,以下に再現しておこう.
Introduction
The Development of Western Script
Script Timeline
Getting Started
Roman & Late Roman Scripts
Rustic Capitals
Square Capitals
Uncial & Artificial Uncial
Insular & National Scripts
Insular Majuscule
Insular Minuscule
Caroline & Early Gothic Scripts
Caroline Minuscule
Foundational Hand
Early Gothic
Gothic Scripts
Textura Quadrata
Textura Prescisus
Gothic Capitals & Versals
Lombardic Capitals
Bastard Secretary
Bâtarde
Fraktur & Schwabacher
Bastard Capitals
Cadels
Italian & Humanist Scripts
Rotunda
Rotunda Capitals
Humanist Minuscule
Italic
Humanist & Italic Capitals
Italic Swash Capitals
Post-Renaissance Scripts
Copperplate
Copperplate Capitals
Roman & Late Roman Scripts
Imperial Capitals
Script Reference Chart
Glossary
Bibliography
Index & Acknowledgments
・ Harris, David. The Art of Calligraphy. London: Dorling Kindersley, 1995.
日本文学史の概説を学ぶのであれば,『原色シグマ新日本文学史』の目次 (4--9) がよくできている.帯に「わずか630円(税込み)」と書いてあるとおり,これだけ安価にオールカラーのビジュアル解説で,しかもよく整理された文学史が読めるというのは,すごいことだと思う.目次シリーズで是非とも取りあげておきたい好著.日本語史との突き合わせには「#3389. 沖森卓也『日本語史大全』の目次」 ([2018-08-07-1]) を参照.さらに,イギリス文学史ともクロスさせようと思ったら「#3556. 『コンプトン 英国史・英文学史』の「英文学史」の目次」 ([2019-01-21-1]),「#3567. 『イギリス文学史入門』の目次」 ([2019-02-01-1]) もご覧ください.
「#3556. 『コンプトン 英国史・英文学史』の「英文学史」の目次」 ([2019-01-21-1]) に続き,英文学史の目次の第2弾.暗記すると時代の流れがよく呑み込める.
昨日の記事「#3555. 『コンプトン 英国史・英文学史』の「英国史」の目次」 ([2019-01-20-1]) に引き続き,同じ『コンプトン』より今回は「英文学史」の部分の目次 (ix--x) を掲げよう.イギリス史と同じく,要点を押さえたコンパクトな英文学史概説として勧められる.
イギリス史の目次シリーズの一環として『コンプトン 英国史・英文学史』の「英国史」の部分に関する目次 (vii--ix) を掲げよう.『コンプトン』の英国史は,アメリカの百科全書 Compton's Encyclopedia (1987年版)所載の "England" 中の "History" の部分を翻訳したもので,短いながらもよく書かれたイギリス史の概説として勧められる.
もう1つのイギリス史の目次として「#3430. 『物語 イギリスの歴史(上下巻)』の目次」 ([2018-09-17-1]) も参照.
英語史や英語語源学が英語学習に貢献できる最大のものは,語源を利用した英単語の暗記である.ラテン系の接頭辞や接尾辞など,語源的な知識を用いて英語語彙を増やす方法は昔から試みられている.最近では『英単語の語源図鑑』が注目されているようだ.
この学習用の効果は私も疑わないが,この方向でさらにステップを目指すのであれば,ぜひ英語史概説の修得を視野に入れたい.そんなときに役立つのが,下宮ほか編の『スタンダード英語語源辞典』の付録である.語彙学習にカスタマイズされた簡易的な英語史の概説として,おおいに奨められる.pp. 611--41 という40頁ほどの(内容の割には)コンパクトな解説だが,よく書けており,これを読んでおくのとおかないのとではスタートラインが違うと思う.以下に,章節の見出しを再現し,雰囲気をつかんでもらおう.語彙の観点に立った英語史入門と理解して差支えない.
1. 英語の語源
1.1. 英語の語源を知るための予備知識
英語の歴史と同系の諸言語
1.2 歴史言語学 (historical linguistics) のキーワード
二重語
ウムラウトとアプラウト
1.3 単語の構造
派生語,複合語
混種語
1.4 音韻変化 (phonetic change)
同化
異化
音位転換
1.5 同源であるかどうかの見分け方
形が似ていて語源が異なる場合
形が異なっても同源の場合
1.6 印欧語根の例
1.7 英語・ドイツ語・フランス語の関係
ドイツ語とは文法・基本単語が共通
フランス語とは語彙が共通
2. 印欧祖語からゲルマン語へ
2.1 サンスクリットの発見と印欧祖語
比較言語学の成立
印欧語族の発見
2.2 印欧祖語と印欧語族
祖語の再建
印欧語族の系統
2.3 ゲルマン民族とゲルマン語
ゲルマン祖語
イギリス人の祖先
ゲルマン祖語の分化
2.4 印欧祖語からゲルマン語へ
グリムの法則
ヴェルナーの法則
ゲルマン語のアクセントの特徴
ゲルマン語の分化の進展
3. 英語の歴史 --- 古英語・中英語を中心にして ---
3.1 Stratford-upon-Avon について
英語の歴史の原点を見る
ブリテン島の原住民
ケルト語起源の語
ラテン語起源の語
本来の英語 --- ゲルマン起源の語 ---
3.2 英語の歴史の時代区分
3つの時代区分
古英語と中英語
古英語の時代
中英語の時代
3.3 外来語について
ラテン語からの借用
古ノルド語からの借用
フランス語からの借用
3.4 古英語ミニ解説
聖書の古英語訳
ドイツ語と似た文法上の性
名詞・形容詞・動詞の変化
屈折の実例
4. ラテン語・ギリシア語ミニマム
4.1 ヨーロッパの二大文明語
語彙の60%はギリシア・ラテン起源
4.2 ラテン語
名詞
動詞
文例
4.3 ギリシア語
豊富な変化形
名詞
動詞
用例
なお,筆者も別の観点から「語彙学習のための英語史」を試みたことがある(「#3381. 講座「歴史から学ぶ英単語の語源」」 ([2018-07-30-1]) を参照).
・ 下宮 忠雄・金子 貞雄・家村 睦夫(編) 『スタンダード英語語源辞典』 大修館,1989年.
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