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masanyan - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-04-27 09:58

2023-01-08 Sun

#5004. 聖書で英語とフリジア語を比較 --- まさにゃんの note 記事の紹介 [notice][frisian][bible][link][masanyan][khelf][contrastive_linguistics][comparative_linguistics][contrastive_language_history][germanic][voicy][heldio]

 昨日の記事「#5003. 聖書で英語史 --- 寺澤盾先生の著書と講座のご案内」 ([2023-01-07-1]) で,聖書が英語の通時的な比較に適したテキストであることを述べました.内容が原則として古今東西同一だからです.ということは,聖書は通言語的な比較にも適しているということになります.ギリシア語,ラテン語,英語,フランス語,ドイツ語,中国語,日本語などの間で手軽に言語比較できてしまいます.つまり,聖書は対照言語学 (contrastive_linguistics),比較言語学 (comparative_linguistics),そして対照言語史 (contrastive_language_history) の観点からも有用なテキストとなります.
 年末に,khelf(慶應英語史フォーラム)の会長のまさにゃんが,自身の note にて「ゼロから始めるフリジア語(シリーズ企画)」を開始しました.フリジア語は年末から始めたにわか趣味とのことです(笑).1日目2日目3日目4日目と,4日分の記事が掲載されています.「創世記」より英語訳 In the beginning God created the heaven and the earth. とフリジア語訳 Yn it begjin hat God de himel en de ierde skepen. を主に比べながら,軽妙な口調でフリジア語超入門を展開しています.
 フリジア語 (Frisian) は,比較言語学的に英語と最も近親の言語とされています.この言語について hellog でも以下の記事で触れてきましたので,ぜひご覧ください.

 ・ 「#787. Frisian」 ([2011-06-23-1])
 ・ 「#2950. 西ゲルマン語(から最初期古英語にかけての)時代の音変化」 ([2017-05-25-1])
 ・ 「#3169. 古英語期,オランダ内外におけるフリジア人の活躍」 ([2017-12-30-1])
 ・ 「#3435. 英語史において低地諸語からの影響は過小評価されてきた」 ([2018-09-22-1])
 ・ 「#4670. アジェージュによる「フリジア語の再征服」」 ([2022-02-08-1])

 Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」でも「#40. 英語に最も近い言語は「フリジア語」」にて解説しています.ぜひお聴きください.


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2022-12-10 Sat

#4975. 2重目的語を取る動詞,取りそうで取らない動詞 [transitive_verb][masanyan][voicy][heldio][preposition][complementation][syntax][genius6]

 昨日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,まさにゃんと対談した.「#557. まさにゃん対談:supply A with B の with って要りますか? --- 『ジーニアス英和辞典』新旧版の比較」と題して,supplyprovide などの動詞が give と同じように SVOO,すなわち2重目的語構文を作る動詞 (ditransitive_verb) になりつつあるという統語変化について,辞書の新旧版を比較しながら歓談した.



 この放送と関連して,現代英語で2重目的語を取る動詞,および取れそうで取れない動詞(前置詞を用いる必要のある動詞など)を整理してみたい.ただし,網羅的な一覧を作ることを目指すわけではなく,Huddleston and Pullum (309) の分類と事例を引用するにすぎない.
 まず補文に2つの項を取る give タイプの動詞を,構文ごとに5種類に分類する.

    Oi + Od    Od + NON-CORE COMP
i a. I gave her the key.b. I gave the key to her.[Oi or to]
ii a. *I explained her the problem.b. I explained the problem to her.[to only]
iii a. I bought her a hat.b. I bought a hat for her.[Oi or for]
iv a. *I borrowed her the money.b. I borrowed the money for her.[for only]
v a. I spared her the trouble.b. *I spared the trouble to/for her.[Oi only]


 この5分類に従って,それぞれの動詞のサンプルを与えよう.i, iii, v の3種が,いわゆる2重目的語を取る動詞である.

 i Oi or TO: award, bequeath, bring, cable, deny, feed, give, hand, kick, leave1, lend, offer, owe, pass, post, promise, read, sell, send, show, take, teach, tell, throw, write
 ii TO only: announce, confess, contribute, convey, declare, deliver, donate, exhibit, explain, mention, narrate, refer, return, reveal, say, submit, transfer
 iii Oi or FOR: bake, build, buy, cook, design, fetch, find, get, hire, leave2, make, order, reach, rent, reserve, save1, sing, spare1, write
 iv FOR only: acquire, borrow, collect, compose, fabricate, obtain, recover, retrieve, withdraw
 v Oi only: allow, begrudge, bet, charge, cost, envy, excuse, fine, forgive, permit, refuse, save2, spare2, strike, tax, tip, wish

 放送で話題になった supply, provide は2重目的語を取る動詞として含まれていないことからも,上記はあくまで標準的な用法に限った上でのサンプルである.
 ほかに2重目的語を取り得る動詞として,Quirk et al. (§16.57) のリストも引用しておきたい.

pay, provide, serve, tell; bring, deny, give, grant, hand, leave, lend, offer, owe, promise, read, send, show, teach, throw; do, find, make, order, reserve, save, spare; ask, envy, excuse, forgive; allow, charge, fine, refuse, wish


 ・ Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum, eds. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge: CUP, 2002.
 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

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2022-12-02 Fri

#4967. 「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&菊地翔太&堀田隆一) 第3弾」は「補充法」の回となりました [voicy][heldio][notice][sobokunagimon][khelf][masanyan][senbonknock][suppletion][link][youtube]

 昨日午後1時より Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,khelf(慶應英語史フォーラム)主催の生放送「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&菊地翔太&堀田隆一) 第3弾」をお届けしました.ライヴでお聴きくださったり,生で質問を投げ込んでいただいたリスナーの皆さん,ありがとうございました!
 今朝,生放送を収録した音声を公開しました.60分弱の本編に続いて10分の振り返りトークがあります.長めですので,ゆっくりお時間を取れるときにどうぞ.



 今回の千本ノックは矢冨弘先生(熊本学園大学),菊地翔太先生(専修大学),堀田隆一(慶應義塾大学)の3名で臨みました.3名いると答え方も多様となり,そこに化学反応も生まれ,かつ生放送のほどよい緊張感もあり,答えている側がおおいに勉強になりました.最後のほうには,Zoom 越しではありましたが矢冨先生のギャラリーとして控えていた学生さんにも参加してもらい,交流することができました.また,過去2回にもまして,司会のまさにゃんによる質問チョイスが光っていました.良問揃いです.以下に,質問と本編(第2チャプター)の分秒を一覧しておきます.

 (1) 03:36 --- good の比較級・最上級が gooder, goodest ではなく better, best なのはなぜですか?
 (2) 07:00 --- なぜ助動詞 must には過去形がないのですか?
 (3) 10:50 --- 主格 I に対して属格・対格が my, me になるのは対応が取れていないように思いますが,これも補充法でしょうか?
 (4) 12:20 --- なぜ英語は日本語よりも正確性を求める言語なのですか?
 (5) 17:09 --- なぜ英語圏では brothersister のように年上,年下を重要視しないのでしょうか?
 (6) 22:02 --- 日本語でいう「よろしくお願いします」とまったく同じ意味の英単語,英語表現はないのですか?
 (7) 23:50 --- なぜ one という綴りで「ワン」と読むのですか?
 (8) 27:52 --- once, twice なのに three times, four times となるのはなぜですか?
 (9) 32:07 --- 洋楽のタイトルや歌詞などで she don't などが出てくるのですが,文法をあまり気にしないネイティヴなどは気にならないのでしょうか?
 (10) 36:57 --- 英語には疑問文につく助動詞の do がありますが,この文法事項について教えてください.
 (11) 42:25 --- 英語は語順が厳格に定められているのに,一方で倒置のような表現が可能なのはなぜですか?
 (12) 45:08 --- 英語は多数の言語から語彙を借用してきましたが,借用の過程で優位を占める言語はどのような基準で決まりますか?
 (13) 51:18 --- 英語母語話者が英語を学ぶ際に,一番苦労する文法の分野は何だと思いますか?
 (14) 56:14 --- 仮定法の if I wereif I was の使い分けはあるのですか?

 このように様々な素朴な疑問が飛び出しましたが,補充法 (suppletion) をめぐる話題に注目が集まりました.この問題については,例えば以下の記事や heldio をご参照ください.

 ・ 「#43. なぜ go の過去形が went になるか」 ([2009-06-10-1])
 ・ 「#1482. なぜ go の過去形が went になるか (2)」 ([2013-05-18-1])
 ・ 「#4094. なぜ go の過去形は went になるのですか? --- hellog ラジオ版」 ([2020-07-12-1])
 ・ 「#4403. 『中高生の基礎英語 in English』の連載第3回「なぜ go の過去形は went になるの?」」 ([2021-05-17-1])
 ・ 「#4774. go/went は社会言語学的リトマス試験紙である」 ([2022-05-23-1])
 ・ 「#1585. 閉鎖的な共同体の言語は複雑性を増すか」 ([2013-08-29-1])
 ・ 「#764. 現代英語動詞活用の3つの分類法」 ([2011-05-31-1])
 ・ 「#4479. 不規則動詞の過去形は直接記憶保存されている」 ([2021-08-01-1])

 ・ 「#2600. 古英語の be 動詞の屈折」 ([2016-06-09-1])
 ・ 「#2090. 補充法だらけの人称代名詞体系」 ([2015-01-16-1])
 ・ 「#67. 序数詞における補充法」 ([2009-07-04-1])

 ・ 「#3859. なぜ言語には不規則な現象があるのですか?」 ([2019-11-20-1])
 ・ 「#765. 補充法は古代人の実相的・質的・単一的な観念の表現か」 ([2011-06-01-1])
 ・ 「#1580. 補充法研究の限界と可能性」 ([2013-08-24-1])
 
 ・ heldio 「#9. first の -st は最上級だった!」
 ・ heldio 「#10. third は three + th の変形なので準規則的」
 ・ heldio 「#11. なぜか second 「2番目の」は借用語!」
 ・ heldio 「#364. YouTube での「go/went 合い言葉説」への反応を受けまして」
 ・ heldio 「#483. be動詞の謎 (1)」

 また,YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」の第25弾「新説! go の過去形が went な理由」もよく視聴されていますので,ご覧ください.



 最後に矢冨弘先生(熊本学園大学)と菊地翔太先生(専修大学),そして司会のまさにゃん(慶應義塾大学大学院)の運営するウェブリソースへのリンクを以下に張っておきます.ぜひ英語史の学びのために訪問してみてください.

 ・ 矢冨弘先生のホームページ:英語史関連のブログ記事や YouTube 講義動画が公開されています
 ・ 菊地翔太先生のホームページ: 英語史関連の授業資料や講習会資料が公開されています
 ・ まさにゃんによる YouTube チャンネル「まさにゃんチャンネル【英語史】」: 「毎日古英語」や「語源で学ぶ英単語」のシリーズなど英語史や英語学習に関する動画が満載です

Referrer (Inside): [2023-02-23-1] [2023-01-09-1]

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2022-11-29 Tue

#4964. khelf 主催「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&菊地翔太&堀田隆一) 第3弾」のお知らせ(12月1日(木)13:00--14:00 に Voicy 生放送) [voicy][heldio][notice][senbonknock][masanyan][sobokunagimon]

 今年もあっという間に師走の声が近づいてきました.明後日12月1日(木)のお昼過ぎ13:00--14:00に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて「千本ノック」の生放送をお届けします.いつものように khelf(慶應英語史フォーラム)主催のイベントとなります.

heldio_live_20221201



 今回千本ノックを受けるのは矢冨弘先生(熊本学園大学)と堀田,そして前回の第2弾で飛び入り参加いただいた菊地翔太先生(専修大学)の3人です.司会はいつものように,khelf 会長にして日本初の古英語系 YouTube チャンネル「まさにゃんチャンネル」を運営するまさにゃん (masanyan) です(YouTube 「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」でも何度か出演しています) .
 前回の第2弾のために hellog や heldio などの広報を通じて皆さんからお寄せいただいた「素朴な疑問」が,未消化のままに数多く残っていますので,今回はそちらの疑問を中心に取り上げたいと思っています.ただし,ライブ感を出すために生放送中の投げ込み質問も歓迎しますので,ぜひ Voicy アプリよりお寄せください.
 生放送で参加していただけると臨場感も緊張感もあっておもしろいと思いますが,平日の日中ですしご都合のつかない方におかれましては,翌朝の通常回で収録の様子をアーカイヴとして配信する予定ですので,そちらからお聴きください.
 これまでの heldio の「千本ノック」シリーズ全体はこちらからお聴きいただけます.学びはすべて疑問から始まりますね.ぜひ素朴な疑問に関心を持ち続けていただければと.

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2022-10-28 Fri

#4932. 「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&堀田隆一) 第2弾」おおいに盛り上がりました [voicy][heldio][notice][sobokunagimon][khelf][masanyan][senbonknock][link]

 昨日午後1時より Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて,khelf(慶應英語史フォーラム)主催の生放送「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&堀田隆一) 第2弾」をお届けしました(予告記事も参照).
 今回も hellog の読者や heldio のリスナーの方々には,多数の質問(120本ほど!)を寄せていただき,また生放送にも参加していただきまして,ありがとうございました.おかげさまで,第1弾にもまして実りある回となりました.
 生放送を収録した音声を今朝の heldio にてアーカイヴとして配信しましたので,以下よりお聴きください(60分間と長めです).本編16:10辺りからは,たまたま居合わせた(?)専修大学の菊地翔太先生にも参加していただきました.また,本編39:48辺りからの「推し英単語は何ですか?」という愉快な問いを巡って,一部暴走者(?)も現われながら,おおいに盛り上がりました.本編後の10分間の「楽屋トーク」まで含めてお楽しみいただければと思います.出演者としてもたいへん楽しく,かつ勉強になる会となりました.



 全体として様々な角度から質問が寄せられ,良問ぞろいでした.また今回はとりわけ「英語史研究者の言葉の見方」が繰り返し話題となっていました.参考になればと思います.
 今回の「千本ノック」についてご感想やご意見などがありましたら,ぜひ Voicy のコメント機能を通じてお寄せください.よろしくお願いします.
 今回千本ノックに回答者として参戦していただいた矢冨弘先生(熊本学園大学)と菊地翔太先生(専修大学),そして司会のまさにゃん(慶應義塾大学大学院)の運営するウェブリソースへのリンクを,以下にご紹介します.英語史の学びのために,ぜひご訪問ください.

 ・ 矢冨弘先生のホームページ:英語史関連のブログ記事や YouTube 講義動画が公開されています
 ・ 菊地翔太先生のホームページ: 英語史関連の授業資料や講習会資料が公開されています
 ・ まさにゃんによる YouTube チャンネル「まさにゃんチャンネル【英語史】」: 「毎日古英語」や「語源で学ぶ英単語」のシリーズなど英語史や英語学習に関する動画が満載です

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2022-10-19 Wed

#4923. 「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&堀田隆一) 第2弾」のお知らせ(10月27日(木)13:00--14:00 に Voicy 生放送) [voicy][heldio][notice][sobokunagimon][khelf][masanyan][senbonknock]

 標記の通り,熊本学園大学の矢冨弘先生と堀田隆一とで「英語に関する素朴な疑問 千本ノック 第2弾」を企画しています.10月27日(木) 13:00--14:00 に Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の生放送という形でお届けする予定です.khelf(慶應英語史フォーラム)主催の企画となります.今回も司会を務めるのは,khelf 会長にして日本初の古英語系 YouTube チャンネル「まさにゃんチャンネル」を運営するまさにゃん (masanyan) です.
 さる9月21日に「第1弾」を Voicy 生放送でお届けしました (cf. 「#4886. 「英語に関する素朴な疑問 千本ノック(矢冨弘&堀田隆一)」のお知らせ(9月21日(水)16:00--17:00 に Voicy 生放送)」 ([2022-09-12-1])).その生放送また翌日のアーカイヴ配信も合わせ,非常に多くの方に聴取していただき好評を賜わりましたので,このたび第2弾を企画した次第です.
 前回と同様,今回の第2弾のためにも,事前に皆さんより「英語に関する素朴な疑問」を募集したいと思います.日々英語について抱いている疑問をお寄せください.矢冨&堀田が主に英語史の観点から回答したり議論したりする予定です.
 生放送でお聴きいただける場合には,ライブの投げ込み質問(Voicy アプリ経由で)も受け付ける予定ですので,ぜひご参加ください.なお,生放送でお聴きいただけない場合でも,翌日に収録した音源をアーカイヴ配信する予定ですので,そちらでお聴きください.

 ・ 皆さんが日々抱いている「英語に関する素朴な疑問」をこちらのフォームよりお寄せください.生放送でなるべく多く取り上げたいと思います.
 ・ Voicy 生放送への予約済みリンクはこちらとなります.「英語に関する素朴な疑問」は,事前あるいは生放送中に,こちらのリンク先より Voicy のコメント機能を通じて寄せていただいてもけっこうです.

voicy_live_ad_for_20221027



 前回の第1弾をまだ聴いていないという方は,ぜひアーカイヴ配信よりお聴きください.雰囲気がつかめるかと思います.



 第2弾もどうぞお楽しみに!
 なお,Voicy の千本ノックシリーズ全体はこちらからどうぞ.

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2022-09-08 Thu

#4882. 統語的な「省略」には様々な解釈があり得る [syntax][masanyan][subjunctive][auxiliary_verb][ame_bre][terminology][mandative_subjunctive]

 昨日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」では「#464. まさにゃんとの対談 ー 「提案・命令・要求を表わす動詞の that 節中では should + 原形,もしくは原形」」と題し,「仮定法現在」と should の問題について,日本初の古英語系 YouTuber (?)であるまさにゃん (masanyan) とインフォーマルに歓談しました.(この問題については,補足的にこちらの hellog 記事セットもご覧ください.)



 この問題の典型的な例文を挙げると,次のようになります.

 ・ I suggest that John go to see a doctor. (アメリカ英語では「仮定法現在」,すなわち形式的には「原形」)
 ・ I suggest that John should go to see a doctor. (イギリス英語では「should + 原形」)

 この事情を端的に1行で記述すれば,

 ・ I suggest that John (should) go to see a doctor. (イギリス英語では should を用いるがアメリカ英語では should を用いない)

となるでしょうか.さらに端的に説明しようと思えば「アメリカ英語では should を省略する」と言って済ませることもできます.
 今回の簡略化した説明に当たって「省略」という表現を用いてみましたが,統語論を扱っている文脈で「省略」という場合には,理論的立場によって様々な意味合いが付されているので注意が必要です.
 上記のように英文法教育の立場から使い分けの分布を簡略に伝えるに当たっては,「should の省略」という表現は妥当だと私は考えています.共時的な英米差をきわめて端的に記述・指摘できますし,1つの合理的な行き方だと思います.「仮定法現在」という比較的マイナーな用語を出さずに済ませられるという利点もあります.英文法教育の対象レベルにもよりますし,英文法全体の体系的記述の観点からは議論があり得ますが,1つの行き方ではあるという立場です.
 一方,私自身が専攻する英語史の立場,あるいは歴史的・通時的英語学の立場からすると「省略」とは言えません.対談内でも触れているように,英語史の当初より,類似した統語的文脈で「仮定法現在」と should の両方が文証されており,どちらが時間的に先立つ表現なのか,はっきりと確かめることができないからです.歴史的過程として,should が省略されたのか,あるいは逆に挿入されたのか,というような時系列を追いかけることができないのです.もっといえば,英語史や比較言語学の視点からいえば,一方から他方が派生したとは考えられていません.「仮定法現在」は形態的な現象,should を用いた表現は統語的な現象として別々の話題であり,直接的な接点はないと考えるのが一般的です.両表現は相互に代替可能だった時代が長く,そのような variation の関係だったと解釈します.つまり,一方から他方が派生したわけではないと解釈します.ですから,通時的過程としての「省略」はなかった,最も控えめにいっても,はっきりと確認されていない,という立場を取ります.
 さらに,共時的な統語理論の立場からみるとどうでしょうか,例えば生成文法による分析を念頭におくと,アメリカ英語流の「仮定法現在」は IP の主要部 V の位置に生起するけれど,イギリス英語流の should は IP の主要部 I の位置に生起するとして両者の違いを表現するのだと想定されます.生成過程でこの違いを生み出している原動力が何なのかは生成文法家ではない私には分かりませんが,少なくとも「省略」と呼ばれ得るものではないと想像されます.
 ほかにも異なる立ち位置や解釈があるはずです.
 日本で統語的な文脈の英文法用語としてしばしば用いられる「省略」は,理論的立ち位置によって多義となり得るものと理解しておくことが重要だろうと思われます.少なくとも,共時的変異を記述する便法としての「省略」が用いられている一方で,歴史的・通時的過程として時系列を念頭に置いた「省略」もあり得ます.どのような立ち位置から「省略」と述べているのかが重要だと考えています.そして,各々の立ち位置の考え方の癖を理解しておくことも同様に重要だと考えています.

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2022-08-18 Thu

#4861. YouTube 第50回記念 --- ダラダラおしゃべり飲み会,そしてまさにゃん登場 [youtube][notice][voicy][heldio][masanyan][khelf][inoueippei]

 半年ほど前の2月26日に YouTube にて「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」を開設し,毎週水・日曜日の午後6時に新作を配信してきました.本ブログの読者の皆さんの中にも,視聴していただいている方がいると思います.ここまで応援ありがとうございます(cf. 「#4689. YouTube で「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」を開設しました」 ([2022-02-27-1])).
 このたび記念すべき第50回に達しましたので,今回と次回は通常回とは異なり,2人でのダラダラおしゃべり飲み会をそのまま配信するということをやってみます.さほど英語学・言語学的な中身にはなっていない雑談回ですので,夏休みのひとときという趣旨でゆるリとご覧ください.「閲覧注意!ただ飲んでしゃべってます.50回記念雑談回<前編>」です.



 最後に登場してくる「まさにゃん」は,日本初の古英語系 YouTube チャンネルである「まさにゃんチャンネル」を配信しています.とりわけ「毎日古英語」シリーズは,古英語初学者向けの導入シリーズとなっていますので,どうぞご覧ください.とりわけ昨日アップされた新作動画「毎日古英語 【中間テスト!】」は,まさにゃん渾身の(?)企画です.ぜひ受験してみてください(←私はすでに受験しました).遊び心がありながらも真面目なチャンネルです.
 まさにゃんは khelf(慶應英語史フォーラム)の会長でもあり,本ブログおよび Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にもたびたび登場しています.以下をご訪問ください.

 ・ hellog 「#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ」 ([2020-04-14-1])
 ・ hellog 「#4566. heldio で古英語期と古英語を手短かに紹介しています(10分×2回)」 ([2021-10-27-1])
 ・ hellog 「#4740. 古英語入門のためのオンラインリソース」 ([2022-04-19-1])

 ・ heldio 「#149. 対談 「毎日古英語」のまさにゃんと、古英語ってどんな言語?」(2021年10月27日)
 ・ heldio 「#307. khelf 会長「まさにゃん」による『英語史新聞』の紹介」(2022年4月3日)
 ・ heldio 「#308. khelf 会長「まさにゃん」による「英語史コンテンツ50」の紹介」(2022年4月4日)
 ・ heldio 「#309. khelf 会長「まさにゃん」による「第一回古英語模試」」(2022年4月5日)
 ・ heldio 「#437. まさにゃんとの対談 ― メガフェップスとは何なの?」 (2022年8月11日)

 今後も「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」では,英語学・言語学が身近に感じられてくるような話題をお届けしていきます.引き続きよろしくお願いいたします.

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2022-04-19 Tue

#4740. 古英語入門のためのオンラインリソース [notice][oe][hel_education][voicy][youtube][link][masanyan]

 新年度が始まり,大学(院)の英文科の専門科目などで「古英語」の授業が開講されたところもあるかと思います.「英語史」概説はまだしも,「古英語」入門の授業というのは日本の大学(院)でもかなり稀で,絶滅危惧種といってよい代物です.大学(院)の正規の授業ですらそのような状況ですので,せめて別メディアでの「古英語学習」のための情報を発信したいと思います.ということで,「古英語入門」の入門を提供する各種メディアへのリンクを紹介します.

 ・ 「まさにゃんチャンネル」の,シリーズ「毎日古英語」は,日本初の古英語系 YouTube チャンネルです.
 ・ まさにゃんには,私の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) にも2度ほど出演してもらっています.以下より2本の放送をお聴きください.
   - 「#149. 対談 「毎日古英語」のまさにゃんと、古英語ってどんな言語?」(2021年10月27日)
   - 「#309. khelf 会長「まさにゃん」による「第一回古英語模試」」(2022年4月5日放送):世界初の試み.古英語模試そのものはこちらからどうぞ.



 ・ 堀田による Voicy の古英語関連としては,次の通りです.
   - 「#148. 古英語期ってどんな時代?」(2021年10月26日)
   - 「#321. 古英語をちょっとだけ音読 マタイ伝「岩の上に家を建てる」寓話より(2022年4月17日)
   - 「#326. どうして古英語の発音がわかるのですか?」(2022年4月22日)(←後日付け足しました)
 ・ 古英語の屈折表のアンチョコ (PDF) はこちらからどうぞ.
 ・ Essentials of Old English: オンラインで古英語を勉強するならここ.古英語の歴史的背景や文法などが学べます.とりわけ A short grammar of Old English は手軽で必見.
 ・ Readings in Early English: 古英語,中英語,初期近代英語のテキストとそれを読み上げたオーディオファイルが入手できます.
 ・ Essentials of Early Englishリソース集: 古英語の屈折表などがPDFで手に入ります.中世の写本へのリンクも張られています.本書はこちら
 ・ Peter S. Baker による YouTube での Old English Readings
 ・ 本ブログより oe のタグの付いた記事群も,もちろん有用なはずです.

 ・ Smith, Jeremy J. Essentials of Early English. 2nd ed. London: Routledge, 2005.

Referrer (Inside): [2022-08-18-1]

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2022-04-12 Tue

#4733. 英語史はおもしろい! --- Voicy「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) での連続対談 [heldio][start_up_hel_2022][notice][khelf][hel_education][bibliography][link][youtube][masanyan]

 4月1日より「#4722. 新年度の「英語史スタートアップ」企画を開始!」 ([2022-04-01-1]) と題して英語史の学びを応援しています.hellog の姉妹版というべき Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) でも,連日,新年度の勢いを借りて普段とは異なる風味の放送をお届けしています.具体的には英語史・英語学を専攻する方々を招いて対談を行ない,様々な角度から同分野の魅力を伝えてきました.この11日間続いてきた対談企画について,改めて振り返りつつ紹介します.

 ・ 「市川誠先生との対談 長万部はイングランドか!?」(4月2日放送):市川誠先生(東京理科大学)とのおしゃべりです.まさかの「長万部」からつながる地名の英語史.英語史との接点は,日常の身近なところにあります.
 ・ 「khelf 会長「まさにゃん」による『英語史新聞』の紹介」(4月3日放送):khelf として世界初(?)の『英語史新聞』第1号を発行しました.その編集委員長も務めた khelf 会長からのお話しです.
 ・ 「khelf 会長「まさにゃん」による「英語史コンテンツ50」の紹介」(4月4日放送):続いて,khelf のもう1つの新年度目玉企画「英語史コンテンツ50」の紹介です.毎日,1つ英語史の話題が上がってきます.同企画の会場はこちらです.
 ・ 「khelf 会長「まさにゃん」による「第一回古英語模試」」(4月5日放送):khelf 会長が研究・教育活動と趣味(?)の延長で,世界初となる古英語の模試を作成しました.添削サービスあり.
 ・ 「山本史歩子先生との対談 英語教員を目指す大学生への英語史のすすめ」(4月6日放送):山本史歩子先生(青山学院大学)と,英語教育と英語史の接点について熱く語りました.
 ・ 「矢冨弘先生との対談 グラスゴー大学話しを1つ」(4月7日放送):矢冨弘先生(熊本学園大学)との,英語史およびグラスゴー大学の話題で盛り上がりました.矢冨先生も私も同大学に留学し,同じ Jeremy J. Smith 先生に師事しました.
 ・ 「古田直肇先生との対談 標準英語幻想について語る」(4月8日放送):古田直肇先生(東洋大学)との標準英語にまつわる神話を巡る熱い対談です.この問題は,英語史の知恵が最も活かされるトピックだと思っています.
 ・ 「唐澤一友先生との対談 今なぜ世界英語への関心が高まっているのか?」(4月9日放送):唐澤一友先生(立教大学)との,人気が高まる World Englishes についての対談.なぜ今なのか,議論しました.
 ・ 「泉類尚貴先生との対談 手に取って欲しい原書の英語史概説書3冊」(4月10日放送):泉類尚貴先生(福島高専)による厳選3冊の紹介.新年度の学び始めに,たいへん役に立つ情報です.その3冊については『英語史新聞』新年度号外としても紹介しています.
 ・ 「和田忍先生との対談 Baugh and Cable の英語史概説書を語る」(4月11日放送):和田忍先生(駿河台大学)が,世界中の大学で最も広く読まれている英語史概説書といわれる Baugh and Cable について詳しく解説しています.こちらの関連記事もどうぞ.
 ・ 「井上逸兵先生との対談 YouTube を始めて1月半になりますが」(4月12日放送):井上逸兵先生(慶應義塾大学)と私が週2回公開している「井上逸兵・堀田隆一英語学言語学チャンネル」について,これまで13回放送の振り返りと未来の展望を語ります.

 連続対談はいったんここで終わりますが,今後も折をみて対談を行なっていきたいと思っています.よろしくどうぞ.

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2022-04-04 Mon

#4725. khelf イベント「英語史コンテンツ50」が始まっています [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_contents_50_2022][khelf_hel_intro_2021][masanyan]

 連日,新年度に開始した,khelf による「英語史スタートアップ」企画に関する話題をお知らせしています.本日は4月1日から始まっている「英語史コンテンツ50」についてご案内です.
 4月1日より開始して,6月上旬までの2ヶ月間ほど,日曜日を除く毎日,khelf メンバーが作成した英語史に関する「コンテンツ」がウェブ上にアップされてきます.いわば,サクッと読める,しかし限りなく知的好奇心をそそる「英語史ネタ」が,日々楽しめるという企画です.
 掲載される場所は,khelf ホームページのなかの「英語史コンテンツ50」です.ここに毎日コンテンツが追加されてきますので,ぜひ尽きることのない英語史ネタを堪能してください.新年度ということで,英語史に初めて触れる初学者を念頭に置いたコンテンツが多く上がってくると思います.主として学部生・大学院生によるコンテンツですので,学びの応援という意味合いも含めてどうぞよろしくお願いいたします.日々のコンテンツ情報は khelf の公式ツイッターアカウント @khelf_keio でもお知らせすることになっていますので,ぜひフォローしてリマインダーとしてご利用ください.
 実は,昨年度の4月と5月にも同趣旨の「英語史導入企画2021」を実施し,49本の英語史コンテンツが集まりました.当時は,本ブログでも毎日のようにコンテンツを追いかけてレビューしましたが,アレはきつかったです(笑)(「#4417. 「英語史導入企画2021」が終了しました」 ([2021-05-31-1]) および khelf_hel_intro_2021 の記事を参照).素晴らしいトピックが集まったと思います.昨年度のコンテンツについては,今からでもじっくりご鑑賞ください.暇つぶし以上の良質の読書となります.
 今回の「英語史コンテンツ50」の催しは,その2022年度版ということになります.「英語史コンテンツ50」については,本日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) にて,khelf 会長である「まさにゃん」と対談しながら紹介していますので,そちらもお聴きください.



 ちなみに,4月1日の一発目は,大学院生による「冠詞はなぜ生まれたのか」と題するたいへん興味深いコンテンツです.ぜひご一読を.

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2022-04-03 Sun

#4724. 慶應英語史フォーラム (khelf) の活動 [notice][khelf][hel_education][start_up_hel_2022][hel_herald][hel_contents_50_2022][masanyan]

 「慶應英語史フォーラム」,通称「khelf」 (= Keio History of the English Language Forum) については,本ブログで何度も触れてきましたが,新年度開始を機に正式にお披露目します.

khelf logo    khelf banner
(上記のロゴとバナーは khelf メンバーが作成)



 khelf(= Keio History of the English Language Forum = 慶應英語史フォーラム)は,2020年1月に立ち上げられた慶應義塾大学文学部・文学研究科英米文学専攻の英語史ゼミ(堀田隆一研究会)をベースとした,英語史について議論したり,情報共有するためのフォーラムです.
 英語史を専攻する現役の学部ゼミ生と院生を中心とする「拡大版ゼミ」に相当しますが,一部 OB・OG や通信教育課程の英語史専攻の学生なども含めた,ある程度の緩さをもったフォーラムです.
 世の中に存在する英語史関係の学会・研究会は,年に1回か2回の大会を中心とする季節イベントにとどまっていますが,khelf は「日常的な活動」を目指します.英語史を学ぶ人々が数十名という規模で「日常的に」集まっている場所は他にはほとんどありませんので,khelf は小刻みながらも「日常的な活動」を重視します.
 随時,研究発表会,セミナー,講演,コンテンツ展覧会などのイベントを企画・開催していきますが,それ以上に,英語史の話題が日々空気のように漂っているというようなフォーラムを目指しています.たまの点的なイベントもおもしろいですが,それよりも日々の線的な活動に力を入れていきたいと思っています.
 英語史の学術を通じて,内部的には互いに学びを促し,対外的には情報を発信して社会貢献を行なっていくことを目標とします.英語史の学び方,教え方,研究の仕方について議論し,情報発信していくことはもちろん,(現代)英語の素朴な疑問を取り上げ,それを英語史の観点から解きほぐしていくという啓発的な活動も推進していきます.

 これまでの khelf の活動実績については,khelf ホームページより「活動実績」をご覧ください.
 また,本日の Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) では,本記事とも連動して khelf 会長「まさにゃん」による『英語史新聞』の紹介を放送していますので,ぜひお聴きください.



 khelf では,この新年度の4月1日より「英語史スタートアップ」企画と称して,以下のようなさまざまなイベントを展開しています.

 1. 『英語史新聞』創刊号のウェブ公開
 2. khelf の公式ツイッターアカウント @khelf_keio の開設
 3. 「英語史コンテンツ50」のウェブ公開(日曜日を除く毎日,khelf メンバーが作成した英語史に関する「コンテンツ」が掲載されます)
 4. 本ブログや Voicy 「英語の語源が身につくラジオ」 (heldio) でも連動企画を毎日実施しています

 連日,イベントが続きます.日々の案内や情報は,上記の khelf のツイッターアカウント および khelf ホームページに流れてきますので,ぜひ本ブログの読者の皆さんにも追いかけていただければと思います.

Referrer (Inside): [2022-07-12-1] [2022-04-07-1]

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2021-10-27 Wed

#4566. heldio で古英語期と古英語を手短かに紹介しています(10分×2回) [notice][hel_education][oe][heldio][link][masanyan]

 昨日と今日の2日間,私の Voicy の番組 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」で古英語(期)の超入門をお届けしています.10分×2回の短いものです.現代の英語は知っているけれども古い英語はまったく初めて,という多くの方々に向けて,古英語期とはどんな時代なのか,古英語とはどんな言語なのかについて,おしゃべりしています.



 1本目の「古英語期ってどんな時代?」では,英語の始まりから説き起こして,英語の歴史の時代区分,そして古英語期といわれる5?12世紀のイングランドについて,駆け足で独りごちました.
 2本目の「対談 『毎日古英語』のまさにゃんと,古英語ってどんな言語?」では,日本初の古英語系 YouTuber であるまさにゃんとインフォーマルな対談を通じて,古英語という言語の特徴を紹介しました.
 ちなみに,最近まさにゃん「まさにゃんチャンネル」にて,シリーズ「毎日古英語」を精力的に展開しています.今回の heldio 対談は古英語の超入門のみで終わっていますので,関心をもった方はぜひ「毎日古英語」で具体的な古英語にテキストに触れてみてください.なお,本ブログでも1年半ほど前に「#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ」 ([2020-04-14-1]) で紹介しています.

Referrer (Inside): [2022-08-18-1]

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2021-10-18 Mon

#4557. 「英語史への招待:入門書10選」 [hel_education][bibliography][khelf][link][heldio][masanyan][voicy]

 昨日,青山英語史研究会(青山学院大学・寺澤盾先生主催)がオンラインで開催されました.「研究会」とはいうものの,今回は英語史を学ぶ大学生を主たるオーディエンスとして想定し,英語史の学びをエンカレッジする様々な企画が組まれました.私も参加させていただきましたが,たいへん実りの多い会となりました.ありがとうございます.
 プログラムの1つとして,明治学院大学で英語史の授業を担当している泉類尚貴氏による「英語史への招待:入門書10選」が紹介されました.氏の許可を得て,そのリスト(実際にはオマケ付きで11冊)を以下に掲載します.氏によると,この順序で手に取ってみることをお勧めするとのことです.
 ちなみに泉類氏とは,本日の「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」にて同じ話題で対談していますので,こちらも是非お聴きください.推薦書リストというものは,選者による簡単な解説があるだけでも説得力が増しますね.



 ・ 寺澤 盾 『英語の歴史:過去から未来への物語』 中公新書,2008年.
 ・ 家入 葉子 『ベーシック英語史』 ひつじ書房,2007年.
 ・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』 研究社,2016年.
 ・ 唐澤 一友 『英語のルーツ』 春風社,2011年.
 ・ 唐澤 一友 『世界の英語ができるまで』 亜紀書房,2016年.
 ・ 寺澤 盾 『聖書でたどる英語の歴史』 大修館書店,2013年.
 ・ 鳥飼 玖美子 『国際共通語としての英語』 講談社現代新書,2011年.
 ・ 西村 秀夫 編 『コーパスと英語史』 ひつじ書房,2019年.
 ・ 高田 博行・渋谷 勝巳・家入 葉子(編著) 『歴史社会言語学入門』 大修館書店,2015年.
 ・ Baugh, A. C. and T. Cable. A History of the English Language. 6th ed. Routledge, 2013.
 ・ Crystal, D. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 3rd ed. CUP, 2018.

 番外編として,参考になるウェブサイトということで以下の4点も紹介されました.

 ・ TED Ed
 ・ YouTube 「まさにゃんチャンネル」
 ・ 「hellog?英語史ブログ」
 ・ khelf (= Keio History of the English Language Forum)

 以上,英語史の学びのエンカレッジでした.昨日の記事「#4556. 英語史の世界にようこそ」 ([2021-10-17-1]) も合わせてどうぞ.

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2021-04-10 Sat

#4366. 英語における言語と性の問題について [gender][gender_difference][sociolinguistics][link][khelf_hel_intro_2021][masanyan]

 標題の2つのキーワード「言語」と「性」と聞いてピンと来る場合にも,そのピンの種類には3通りがありそうです.まず,昨今の「性」にまつわる種々の用語問題を思い浮かべる人も少なくないでしょう.英語に関していえば,たとえば singular they の問題があります(cf. 「#1054. singular they」 ([2012-03-16-1])).また,昨秋 JAL が乗客に対して「レディース・アンド・ジェントルメン」の呼びかけをやめ「オール・パッセンジャーズ」へ切り替える決定をしたという事例もあります(cf. 「#4182. 「言語と性」のテーマの広さ」 ([2020-10-08-1])).
 しかし,むしろ言語学的な意味での性,いわゆる文法性 (grammatical gender) を思い浮かべる人もいると思います.特にフランス語,ドイツ語,ロシア語等の英語以外のヨーロッパの諸言語を学んだことがあれば,名詞に割り振られている文法上の性 (gender) のことが最初に想起される,という人も多いに違いありません.
 ほかには,日本語の「男言葉」と「女言葉」のように,話者によって言葉使いが変わる現象を指して,言語における性を考えるという向きもあるでしょう (cf. gender_difference) .
 上記3種類の「言語における性」は,確かに互いに異なる「性」の側面に注目していることは確かです.しかし,私はこれらすべてが精妙なやり方で関連し合っていると考えています.言語と性に関わる探究においては,上記のような一見異なる諸側面を分割しないないほうがよいだろうと考えています.
 このテーマは,多くの人が思っている以上に幅広いのです.この幅広さについては,私の厳選した「言語と性」に関する記事セットをご覧いただければと思います.ほかにも,gendergender_difference の記事も要参照.
 さて,この4月初めに立ち上げた「英語史導入企画2021」の一環として,昨日,慶應義塾大学大学院の学生より「コロナ(Covid-19)って男?女?」と題する,非常に興味深いコンテンツがアップロードされました.コンテンツの作者は,YouTube 「まさにゃんチャンネル」を運営する「まさにゃん」です(cf. 「#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ」 ([2020-04-14-1])).まさにゃんは公的に活動している英語史の伝道師で,数週間前には母校の鳥取県立八頭高等学校にて英語史と英語学習に関する授業も担当したとのことです.上記のコンテンツも,英語における「言語と性」の問題を考えるきっかけを与えてくれる好コンテンツですので,こちらもどうぞ一読を.

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2020-04-14 Tue

#4005. オンラインの「まさにゃんチャンネル」 --- 英語史の観点から英単語を学ぶ [hel_education][youtube][link][etymology][masanyan]

 コロナ禍の影響で,今期,多くの大学の授業の基調はオンライン授業(遠隔授業)となる見込みです.私の所属する慶應義塾大学も例外ではなく,今年度の私の英語史その他の講義もオンラインとなります.にわかにオンライン授業が活気づいてきたこの機会に,英単語を英語史や語源の観点から学べる「まさにゃんチャンネル」の YouTube 動画を紹介したいと思います.本ブログの趣旨とも合致する学習動画です.
 高校生をターゲットにした語源から英単語を学ぶ楽しさを伝える一連の動画で,単語も話題も構成も実によく練られています.その弁舌からは,講師の英語史への熱い想いも伝わってきます.高校生の皆さんも,そうでない皆さんも,これをきっかけに英語史や語源の話題に関心をもってもらえればと思います.
 動画の作者に,今回のシリーズ企画「語源で学ぶ英単語」を担当することになった経緯をうかがうことができました.

YouTube の予備校「ただよび」・河合塾英語講師の森田鉄也先生が YouTube 上で開催された英語講師オーディションに応募し,決勝戦に進出.おしくも優勝は逃したものの,動画内容を評価していただき今回このシリーズ企画を担当させてもらう運びとなりました.またこの動画のメインターゲットは大学受験を目指して英単語を覚えようとしている高校生です.ただ,同時に英語好きの大学生や大人にも楽しんでもらえる動画になるように意識して作りました.


 上で触れられている英語講師オーディションの決勝戦の様子はこちらです.そして「語源で学ぶ英単語」のシリーズそのものはこちら(全7回を連続で再生)からどうぞ.各回の動画へのリンクは以下の通りです.

第1回「英語の始まり」
第2回「グリムの法則で繋がる英単語」
第3回「古英語由来の接頭辞/動詞の語法」
第4回「同語源の意外な単語」
第5回「ヴァイキングの襲来と古ノルド語」
第6回「ヴァイキングが英文法に与えた影響」
最終回「なぜ英語には類義語が多いのか」

 作者の森田真登さんは,慶應義塾大学文学研究科英米文学専攻博士課程に在籍し,英語史を専攻しています.つまり身内ということなのでした.よろしくどうぞ.

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