昨日の記事「#1961. 基本レベル範疇」 ([2014-09-09-1]) で,概念階層 (conceptual hierarchy) あるいは包摂関係 (hyponymy) という術語を出した.後者の包摂関係は語彙的な関係を念頭においた見方であり,「家具」と「いす」の例で考えれば,「家具」は「いす」の上位語 (hypernym) であるといわれ,「いす」は「家具」の下位語 (hyponym) であるといわれる.一方,前者の概念階層は概念間の関係を念頭においた見方であり,上位と下位の関係が幾重にも広がり,巨大なネットワークが展開されているととらえる.
概念階層を理解するは,具体的にある意味場 (semantic_field) を取り上げ,関係を図示してみるのがよい.生物学における界 (kingdom),門 (phylum or division),綱 (class),目 (order),科 (family),属 (genus),種 (species) の分類図はよく知られた概念階層であるし,比較言語学の系統図 (family_tree) もその一種である.以下では中野 (17) に挙げられている日本語「家具」の意味場における概念階層と,英語 COOK(動詞)の意味場における概念階層を示す.
「家具」について[用途]と[形状・構造]というノードがあるが,これはそれ以下の分類が視点に基づいたものであることを示す.意味場に応じてあり得る視点も変わるだろうし,個人によっても異なる可能性があるので,上の図は1つのモデルと考えたい.
すぐに気づくように,概念階層は語彙学習にも役立つ.上記の COOK は動詞の例だが,FURNITURE, FRUIT, VEHICLE, WEAPON, VEGETABLE, TOOL, BIRD, SPORT, TOY, CLOTHING などの名詞の概念階層を描いてみると勉強になりそうだ.
・ 中野 弘三(編)『意味論』 朝倉書店,2012年.
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