hellog〜英語史ブログ

#4870. 英語学入門書の紹介[english_linguistics][2022_summer_schooling_english_linguistics][bibliography][review]

2022-08-27

 今週の月曜日に始まった慶應義塾大学通信教育課程の「英語学」夏期スクーリングが本日で終了します.暑い最中の集中講義でしたが,充実した1週間となりました.講義と連動して,毎日 hellog と heldio でも英語学の基本的な話題を導入してきましたが,最終日の締めくくりとして,改めて英語学入門書をコメント付きで何点か紹介します.英語学を学び始める/続けるための参考になればと思います.

 ・ 平賀 正子 『ベーシック新しい英語学概論』 ひつじ書房,2016年.
   「新しい」概論と謳っている通り,新規さが目立つ入門書.章立ての順序が伝統的な概説書とは逆で,英語変種,社会言語学,語用論から始まり,語彙と文法を経て,音声学で終わっています.今後,このような順序がスタンダードになっていくのかもしれません.記述は易しいです.

 ・ 井上 逸兵 『グローバルコミュニケーションのための英語学概論』 慶應義塾大学出版会,2015年.
   英語史と世界英語から始まり,基本6部門(音声学,音韻論,形態論,統語論,意味論,語用論)が続き,著者の専門である相互行為の社会言語学や談話分析などで締めくくられています.章ごとに参考文献も付されており有用です.

 ・ 長谷川 瑞穂(編著),大井 恭子・木全 睦子・森田 彰・高尾 享幸(著) 『はじめての英語学 改訂版』 研究社,2014年.
   言葉の起源や英語の諸変種という話題から始まり,伝統的な切り口での標準的記述が続き,文化・社会・国家・教育と英語の関係についての考察で終わっています.英語を広く見渡した概説書です.

 ・ 三原 健一・高見 健一(編著),窪薗 晴夫・竝木 崇康・小野 尚久・杉本 孝司・吉村 あき子(著)『日英対照 英語学の基礎』 くろしお出版,2013年.  *
   伝統的な基本6部門のみを扱う理論言語学的な色彩の濃い概説書で,言語学の入門書としても有用です.「日英対照」とある通り一貫して両言語比較がなされているので,日本語の関心から英語学に入っていくことができます.

 ・ 西原 哲雄(編) 『言語学入門』朝倉日英対照言語学シリーズ 3 朝倉書店,2012年.
   タイトルに言語学とあるものの,日英対照言語学シリーズの第1巻として,日本語の考察も交えた英語史入門書となっています.音声学から始まって語用論で終わる伝統的な章立てです.章ごとに演習問題や文献一覧も付されています.英語学の学びには,このシリーズの他の巻もお薦めです.

 ・ 安藤 貞雄・澤田 治美 『英語学入門』 開拓社,2001年.
   伝統的な順序で章立てが組まれており,他の入門書と比べて記述が詳しめです.最終章「日英語の比較」は有用です.

 ・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002.
   英書の入門書を1冊だけ紹介します.300頁ほどで英語学の基本6部門のみならず,英語の変種,言葉遊び,歴史までを広くカバーします.英語に関する話題と実例の宝庫です.

 楽しく実りある英語学の学びを!

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