hellog〜英語史ブログ     ChangeLog 最新     カテゴリ最新     前ページ 1 2 / page 2 (2)

language_shift - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2019-10-21 08:10

2010-06-14 Mon

#413. カメルーンにおける英語への language shift [pidgin][sociolinguistics][language_shift]

 昨日の記事[2010-06-13-1]に続き,カメルーンの英語の話題.昨日も触れたが,現在のカメルーンでは標準的なイギリス英語 Educated English ( EdE ) はエリートと結びついており,対照的に Cameroon Pidgin English ( PE ) は社会的地位が相対的に低くなっている.PE は国内で広く長く使われてきた歴史があり,本来は社会言語学的にも無色透明に近いはずだが,公用語として採用された EdE との対比により「色」がついてきた.
 他言語社会カメルーンの人々は多くが multilingual だが,どの言語を母語とするか,どの順序で複数の言語を習得するかについては都市部と地方部でかなりの揺れがある.特に近年は,都市部で現地の言語や PE ではなく EdE を母語として(第二言語としてではなく)教える親が増えているという.日本でも,将来性を見込んで我が子に英語の早期教育を,という状況は普通に見られるようになってきているが,まさか日本語をさしおいて英語を母語として教えるというケースはないだろう.以下は,カメルーンの諸都市で EdE と PE を第一言語としている子供の比率の通時的変化を示した表である ( Jenkins 176-77 ).20年ほどの間に,EdE を母語とする子供の比率が伸び出してきたのが分かる.

CityEdE (%)PE (%)
1977-781998?1977-781998?
Bamenda13.52224
Mamfe012525
Kumba131922
Buea7132628
Limbe493130


 (両)親の母語が EdE でないにもかかわらず子供が EdE を母語として習得するという状況はカメルーンでなくとも世界各地で起こり始めている.これは新しい ENL 変種が現れてくる可能性を示唆している.母語をある言語から他の言語へと乗り換えることを language shift と呼ぶが,英語はこうした language shift によっても母語話者数を少しずつ伸ばしているということになる.英語の language shift に関する統計はまだ少なく,世界中での進行状況はよく分かっていないが,英語の実力,あるいは「株価」のようなものがあるとすれば,そこに language shift の数値も織り込む必要があるのではないだろうか.もちろん英語の株価上昇の背後には,現地で用いられている他言語が犠牲になっているという陰の側面があることは認識しておかなければならない.

 ・ Jenkins, Jennifer. World Englishes: A Resource Book for Students. 2nd ed. London: Routledge, 2009. 176--83.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

2009-06-23 Tue

#56. 英語の位置づけが変わりつつある国 [esl][efl][denmark][language_shift]

 以下の国名リストから何が連想されるだろうか.

 ・Argentina
 ・Belgium
 ・Costa Rica
 ・Denmark
 ・Ethiopia
 ・Honduras
 ・Lebanon
 ・Myanmar
 ・Nepal
 ・Netherlands
 ・Nicaragua
 ・Norway
 ・Panama
 ・Somalia
 ・Sudan
 ・Suriname
 ・Sweden
 ・Switzerland
 ・United Arab Emirates

 これは国内での英語の位置づけが EFL ( English as a Foreign Language ) から ESL ( English as a Second Language ) の地位へと変化しつつある国のリストである ( Graddol 11 ).こうした国では,専門職や高等教育といった領域を中心に,国内コミュニケーションのために英語が用いられる機会が増えているという.
 北欧人の英語が上手なことはよく知られているが,私がデンマークを訪れたときに,ある印象的な出来事があった.Shakespeare の Hamlet の舞台となった Kronborg Castle の観光ツアーに参加したときのこと.10名以上いた参加者のうち,私が唯一の外国人であり,残りは皆デンマーク人だった.そこでツアー開始時にツアーガイドから自然に発せられた一言,「これからの観光案内は英語でいたします」.参加者の一人で中学生くらいとおぼしき若者がジェスチャーで「英語は苦手だよ」と冗談めかしていたが,その後ツアーはごく自然に英語で進行した.英語が国内でも広く受け入れられている証拠だろう.
 英語が ESL の地位を得つつあるデンマークのような国が増えてきていることは,英語の未来を考える上で重要な意味をもつだろう.

 ・Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow