言語の機能については,「#523. 言語の機能と言語の変化」 ([2010-10-02-1]) や「#1071. Jakobson による言語の6つの機能」 ([2012-04-02-1]) ほか,function_of_language で話題にした.今回は,Ogden and Richards の挙げている言語の5機能を紹介する (226--27) .
(i) Symbolization of reference;
(ii) The expression of attitude to listener;
(iii) The expression of attitude to referent;
(iv) The promotion of effects intended;
(v) Support of reference;
「#1259. 「Jakobson による言語の6つの機能」への批判」 ([2012-10-07-1]) や「#1326. 伝え合いの7つの要素」 ([2012-12-13-1]) でも論じたとおり,様々に提示される「言語の諸機能」は,実際には,言語表現において個別に実現されるわけではなく,不可分に融合した状態で実現されると考えられる.その点では,Ogden and Richards の5機能も,抽象化の産物にすぎない.それにしても,この5機能は,少なくとも各々が極めて端的に表現されているという意味において,ことさらに抽象度が高いように見える.これは,Ogden and Richards が「#1769. Ogden and Richards の semiotic triangle」 ([2014-03-01-1]) で示した semiotic triangle の記号論を前提にしているからだろう.
(i) の機能は換言すれば symbolic function,(ii) と (iii) の機能は emotive function と呼んでよいだろう.(iv) はその2つの本来的な機能の働きを強める機能,(v) は,Jakobson のいうメタ言語機能に相当するものと考えられる.Ogden and Richards は,この5機能で言語の諸機能をほぼ網羅していると述べている (227) .
なお,Ogden and Richards は,著書の別の箇所 (46fn) で,A. Ingraham, Swain School Lectures (1903), pp. 121--182 のなかで "Nine Uses of Language" として言及されているものを挙げている.これは言語の諸機能のもう1つのバージョンといってよいが,ユーモラスである.
(i) to dissipate superfluous and obstructive nerve-force.
(ii) for the direction of motion in others, both men and animals.
(iii) for the communication of ideas.
(vi) as a means of expression.
(v) for purposes of record.
(vi) to set matter in motion (magic).
(vii) as an instrument of thinking.
(viii) to give delight merely as sound.
(ix) to provide an occupation for philologists.
・ Ogden, C. K. and I. A. Richards. The Meaning of Meaning. 1923. San Diego, New York, and London: Harcourt Brace Jovanovich, 1989.
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