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onomatopoeia - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2022-05-26 13:57

2010-07-02 Fri

#431. 諸説紛々の言語の起源 [origin_of_language][onomatopoeia]

 言語の起源は謎に包まれている.なぜ,どのように,どのタイミングでヒトは言語を獲得したのか.言語の起源に関しては,古来,議論百出,諸説紛々である.あまりに途方もない説が次々と提案されたこともあって,[2009-12-14-1]の記事でみたようにフランスの言語学会は1866年にこの議論を禁止したほどである.(言語起源論の復活については[2010-01-04-1]を参照.)
 これらの珍説はいずれも想像の産物なのだが,現代の言語学の教科書でも繰り返し取り上げられてきた伝統的な「申し送り事項」なので,本ブログもその伝統の継承に貢献したい.それぞれ名付け方がおもしろい.

 ・ the bow-wow theory
   動物の鳴き声などをまねた擬声語 ( onomatopoeia ) から発達した.
 ・ the pooh-pooh theory
   感極まって発した本能的な叫びから発達した.
 ・ the ding-dong theory
   雷の音などをまねた擬音語 ( onomatopoeia ) から発達した.
 ・ the yo-he-ho theory
   集団が共同作業するときに発する掛け合いの声から発達した.
 ・ the ta-ta theory
   言語は身振りが声として反映されたものである.
 ・ the ta-ra-raboom-de-ay theory
   儀式的な歌や踊りから発達した.

 Brinton and Arnovick (18--19) によればこれらの珍説が受け入れられないのは,客観的な裏付けがないということはいうに及ばず,二つの誤った前提に基づいているからだという.(1) 言語が擬音語や直示語から発達したという前提だが,そこからどのように高度に記号的な体系へと飛躍したかが説明されない.(2) 言語は原始的な形態から複雑な形態へと発達したという前提だが,記録に残る最古の言語は現在に比べて特に単純な形態を有しているわけではない.言語の複雑さという観点からは,原初の言語も現代の言語も遜色はないはずである.
 現段階では言語の起源については speculation 以外の解答はないようである.Edward Vajda 氏による The Origin of Language の記事も参照.

 ・ Brinton, Laurel J. and Leslie K. Arnovick. The English Language: A Linguistic History. Oxford: OUP, 2006.

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2009-12-25 Fri

#242. phonaesthesia と 遠近大小 [sound_symbolism][onomatopoeia][phonaesthesia][phonetics]

 Glasgow 大学の恩師 Jeremy J. Smith 先生のお気に入りの話題の一つに sound symbolism がある.sound symbolism には onomatopoeiaphonaesthesia があり,後者については[2009-11-20-1]で触れた.
 本来,音それ自身は意味をもたないが,ある音や音の連鎖が特定の概念,あるいはより抽象度の高い印象,と結びつくことがある.この結びつきのことを phonaesthesia と呼ぶ.これは言語ごとに異なるが,言語間で共通することも多い.英語では,前舌母音や高母音は「近い,小さい」印象を,後舌母音や低い母音は「遠い,大きい」印象と結びつくことが多い.例えば,遠近の対立は以下のペアにみられる.

近い遠い
meyou (sg.)
weyou (pl.)
herethere
thisthat
thesethose


 大小の対立については,Pinker (162--63) から説明とともに例を引こう.

When the tongue is high and at the front of the mouth, it makes a small resonant cavity there that amplifies some higher frequencies, and the resulting vowels like ee and i (as in bit) remind people of little things. When the tongue is low and to the back, it makes a large resonant cavity that amplifies some lower frequencies, and the resulting vowels like a in father and o in core and in cot remind people of large things. Thus mice are teeny and squeak, but elephants are humongous and roar. Audio speakers have small tweeters for the high sounds and large woofers for the low ones.



 ・Pinker Steven. The Language Instinct. New York: HarperCollins, 1994. Harper Perennial Modern Classics. 2007.

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2009-07-02 Thu

#65. 英語における reduplication [reduplication][onomatopoeia]

 reduplication重複」はおそらく人類言語に普遍的な言語現象だろう.The Oxford Companion to the English Language では,次のような定義が与えられている.

The act or result of doubling a sound, word, or word element,usually for grammatical or lexical purposes.

 要するに,重複される単位は様々だが,似たような要素を繰り返すことによって,造語したり,文法的機能を変化させたりする作用である.英語では,papamama などの幼児語に始まり,bow-wow, tut-tut, zig-zag などの擬音語や擬態語,helter-skelter 「混乱」, mishmash 「ごたまぜ」, mumbo-jumbo 「訳の分からぬ言葉」, yum-yum などの口語表現,again and again, far far away などの強調表現にいたるまで,数多くの表現の創出に貢献している.
 日本語は実は reduplication が大の得意である.「ブーブー」,「クック」などの幼児語に始まり,「ギャーギャー」,「しとしと」,「ぐずぐず」などの擬音語や擬態語,「めちゃくちゃ」,「はちゃめちゃ」,「どさくさ」などの口語表現,「昔々」「大々的な」などの強調表現にいたるまで枚挙にいとまがない.
 ここまでであれば英語も同じだが,日本語には単なる語句の創出にとどまらず,文法機能を担う reduplication の作用も見られる.一部の名詞に限るのだが,繰り返すことによって複数を表すことができるものがある:「山々」「家々」「木々」「人々」.
 現代英語の reduplication は上で見たように,もっぱら造語や強調にしか用いられず,文法機能を担うことはない.しかし,古英語以前のゲルマン祖語の段階では,一部の動詞の完了過去を作るのに,語頭の子音を繰り返す reduplication が利用された.例えば,古英語の feallan "fall" の過去形は feoll "fell" だが,後者は本来は *fe-fall と f 音を繰り返す形態だったものが縮まったものである.完了過去において語頭子音を繰り返すという作用は,実際,古代ギリシャ語やラテン語では広く行われている.例えば,ラテン語の currō "I run" の完了過去は cucurrī となる.
 現代英語には文法機能を担う reduplication はないと上で述べたばかりだが,日本語の「山々」のような複数性を示す reduplication が非常に周辺的な形で存在していることに気づいた.これは書き言葉限定なので graphemic reduplication とでも呼ぶべきものかもしれない.それは,複数ページを表す pp. や,複数行を表す ll. である.それぞれ,pages, lines の略だが,子音を重ねることによって複数を表している.これは,現代英語における文法機能を表す reduplication の例にならないだろうか?

 ・McArthur, Tom, ed. The Oxford Companion to the English Language. Oxford: OUP, 1992.

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