1月26日から2月24日までの1ヶ月間,X(旧 Twitter)にて展開してきた「古中英語30連発」企画は,無事に完走しました.この企画は,2月25日の『古英語・中英語初歩』の新装復刊を記念し,古英語や中英語の魅力を1日1ネタずつ紹介していくという試みでした.本日は,この30日間の歩みを振り返り,どのような内容の投稿が皆さんに響いたのか,そのデータ分析の結果を共有したいと思います.
まず,全体的な傾向として驚かされたのは,想像以上の反響です.全30本の投稿で得られた「いいね」の総数は約1,480件,総インプレッション数は実に31万件を超えました.平均して1投稿あたり1万ビュー以上という数字は,英語史という,ともすればマイナーと思われがちな分野に対してでも,関心が集まり得ることを示しています.
分析の結果,特に反響が大きかったのは3つのカテゴリーに集約されます.第1は日英語を比較対照する内容の投稿です.今回,圧倒的な1位(440いいね)を記録した No.11 「英語の語彙は「3階建て」の構造」は,その典型です.英語語彙の3層構造は,本ブログでも繰り返し取り上げてきたテーマですが,日本語との比較対照がおもしろい話題でもあります.英語学習者の皆さんの単語暗記の悩みにストレートに刺さったということもあったかもしれません.
第2に,日常語の意外なルーツを扱ったカテゴリーです.No.8 の Wednesday や No.9 の Friday といった,誰もが知る曜日の名前に潜む神話や語源のドラマは,安定した支持を集めました.特に Wednesday の綴字に残る d の謎などは,日頃から綴字と発音の乖離に悩まされている英語学習者の皆さんの知的好奇心を刺激したようです.
第3は,「衝撃の事実」型です.No.3 の「古英語は現代の英語ネイティヴでも理解できないほどなのに,本当に「英語」と呼べるの?」という問いかけは,5万ビューを超える最大の拡散力を発揮しました.現代英語の感覚からは想像もつかない古英語の異質さと,それでも連綿と続いてきたという矛盾する事実は,英語史のダイナミズムを物語っているといえるでしょう.
また,いくつかの話題にかこつけて「英語史大喜利」も開催しましたが,そこではリプライや引用リポストが相次ぎ,活気のある交流が生まれました.例えば No.14 の「ちゃんぽん(混種語)」の小ネタをもとにした大喜利では,主に日本語からの事例ではありましたが,多くの秀逸な混種語が集まり,たいへん賑わいました.SNS という媒体は,単なる情報発信の場に留まらず,言語に対する鋭い観察眼を持つ読者の皆さんと対話できる貴重な空間であることを再認識した次第です.
今回の企画を通じて,英語史という分野がもつ「解決力」を改めて実感しました.歴史を知ることは,現代英語の「なぜ」を解き明かす鍵となるのです.30日間の投稿の詳細やリンクは,以下のテーブルにまとめてありますので,興味のある方はぜひ各投稿へ飛んでみてください.
最後に,連日の投稿企画にお付き合いいただいたフォロワーの皆様,そして企画の原動力となった『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』に関心を寄せていただいた皆様,ありがとうございました.引き続き様々な方法で英語史の楽しさを発信していきますので,お付き合いのほど,よろしくお願いいたします.
2月16日(月)に私の X アカウント @chariderryu にて,第3回英語史大喜利 (hel_ogiri) を開催しました.今回のお題は,おもしろい偽装複合語 (disguised_compound) を寄せてくださいというものでした.ちょうど『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』のカウントダウン企画「古中英語30連発」の No. 22 として「daisy 「ヒナギク」の語源が古英語の dæges ēage "day's eye" だと知っていましたか?」と投稿した直後に,今回の大喜利も開催しました.
大喜利開催の協力者でもある heldio/helwa リスナーの ari さんのユーモラスな入れ知恵により,今回の大喜利は,遊び心を込めて「ごん,お前だったのか」選手権と命名されました.ネタ披露のフォーミュラとして,次の「ごん構文」が X 上に飛び交いました.
・ Daisy 「ごん,お前… Day (日) の Eye (目) だったのか…」
過去2回の大喜利に比べ,かなり難易度の高いお題でしたが,英語語源の猛者たちが多くの良質な例を寄せてくださいました.いつものように私の独断と偏見で,おもしろかったもの,勉強になったものをいくつか掲載します.
・ Gospel 「ごん,お前… Good (良い) Spell (知らせ) だったのか…」
・ Curfew 「ごん,お前… Cover (消す) Fire (火) だったのか…」
・ But 「ごん,お前… By (そばに) Out (外に) だったのか…」
・ About 「ごん,お前… On (上に) By (そばに) Out (外に) だったのか…」
・ Kitchen 「ごん,お前… Cook (料理する) の -ina (場所) だったのか…」
・ Don 「ごん,お前… Do (する,置く) の On (上に) だったのか…」
・ Lapwing 「ごん,お前… Leap (跳ねる) Wink (ウィンク) だったのか…」
・ Answer 「ごん,お前… And (に対して) Swear (誓う) だったのか…」
・ Worship 「ごん,お前… Worth (価値) -ship (があること) だったのか…」
・ Chameleon 「ごん,お前… Khamaí (地を這う) Léōn (獅子) だったのか…」
・ Zebra 「ごん,お前… Equus (馬) Ferus (野生) だったのか…」
・ Giraffe 「ごん,お前… Zurnā (ラッパ) Pāy (足) だったのか…」
・ Pyjamas 「ごん,お前… Pāy (足) Jāma (服) だったのか…」
・ Philip 「フィリップ,お前… Philéō (好き) Híppos (馬) だったのか…」
・ Barn 「ごん,お前… Bere (大麦) Ærn (家屋) だったのか…」
そして,ari さんが,まさかの掟破りのフォーマットで11連発.
その bridal は eleven の決まりがあった.11時,neighbor の Marshal が alarm を鳴らすと,一匹の squirrel が vinegar と garlic 塗れの handkerchief を奪い去った.この dismal な光景こそが,求婚に対する彼女の明確な answer だった.
こんなにたくさん例が集まるとは! ぜひ英単語語源学習とボキャビルにご活用ください.
皆さんから寄せていただいたのは,大部分が英語からの例でしたが,以下は寄せていただいた日本語からの例です.日本語を主とすると大変なことになりそうですね.
・ 聖(ひじり) 「ごん,お前… 日 (ひ) 知り (しり) だったのか…」
・ 社(やしろ) 「ごん,お前… 屋 (や) 代 (しろ) だったのか…」
・ 仏(ほとけ) 「ごん,お前… 浮屠 (ふと=ブッダ) 家 (け) だったのか…」(諸説あり)
本記事と同じ趣旨で,2月27日の heldio にて「 #1734. 「偽装複合語大喜利」 --- 皆さんからの傑作選を発表」をお届けしました.ぜひそちらもお聴きください.
先日ご紹介した「#6133. 日英語の「語彙の3層構造」で大喜利をしました」 ([2026-02-10-1]) に引き続き,2月8日(日)に私の X アカウント @chariderryu にて,おもしろい混種語 (hybrid) を寄せてくださいという趣旨のお題を立てて,呼びかけました.ちょうど『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』のカウントダウン企画「古中英語30連発」の No. 14 として「英語も日本語もちゃんぽん(雑種語)がお好き?」と投稿した直後のことでした.
中英語からの例として,英・語幹 + 仏・接尾辞 = goddess (女神),仏・語幹 + 英・接尾辞 = beautiful (美しい),仏・語幹 + 英・語幹 = court house (裁判所庁舎)を挙げつつ,このような混種語で,おもしろい例が,英語にも,そしてとりわけ日本語にもたくさんあるので,皆さんに出していただこうと考えた次第です.集まってきた例は,事実上すべて日本語からの例でしたが,唸らされるようなおもしろい例をたくさん挙げてくださいました.ありがとうございます.以下,独断と偏見で傑作選を掲載します.
【 食物・料理部門 】
・ カレー南蛮そば
・ ツナおろしキムチ和風パスタ
・ うにいくら濃厚クリームパスタ
・ 生バウムケーキショコラクリーム
・ 生チョコトリュフ芳醇ミルクティー(ブルボン)
・ タンドリーチキンブルゴーニュ風パイ包み焼き
【 場所の名前部門 】
・ 横浜アンパンマンこどもミュージアム
・ 白浜エネルギーランド海ゲート駐車場
【 その他,商品名等 】
・ カラオケ大会
・ 京都サンガF.C.
・ キッチン収納棚
・ ドモホルンリンクル
・ サマージャンボ宝くじ
・ スーパーエネルギー回収
・ 仲良しアベック専用シート
・ ルスツリゾートゴンドラリフト券
・ 反復学習ソフト付き正規表現書き方ドリル(技術評論社)
・ クライネ・ソプラニーノ・リコーダー・奏者
【 英語より特別部門:「希羅希羅ネーム」(ギリシア語とラテン語の混種語) 】
・ pseudo-science
・ finalize
・ television
・ sociology
【 大喜利に参加できなかった残念な語 】
・ バカ旦那
思ったよりも日常は混種語にあふれていますね.お寄せくださった皆さん,ありがとうございました.
本記事と同じ趣旨で,2月17日の heldio にて「#1724. 日英語「混種語大喜利」 --- 皆さんからの傑作選を発表」をお届けしました.ぜひそちらもお聴きいただければ.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
2月25日(水)に研究社より『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』が刊行されます.本書の1ファンとして,3週間ほど前より復刊を祝って盛り上げるべく,様々な関連企画を実施しています.ついに刊行1週間前となりました.
先日2月13日(金),研究社のご厚意により本書のホヤホヤの出来上がり見本を,目下滞在中のメルボルンまでお送りいただきました(ありがとうございます!).興奮のあまり,すぐに「開封の儀」を収録し,翌日には YouTube や Voicy で配信しました.盛り上げコンテンツとして興奮の様子が伝わるかと思いますので,ぜひご視聴ください.
・ YouTube heltube 版:「特別配信 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』開封の儀」
・ Voicy heldio 版:「特別配信 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』開封の儀」
・ note でも関連記事を書いています:「メルボルンで「開封の儀」 --- 研究者のちょっと幸せな朝」
この3週間で折に触れていくつかのメディアで関連コンテンツを公開してきましたが,以下にまとめておきます.とりわけ heldio での「『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ」は,古い英語に初めて触れる方にお薦めです.本書を手に取る前に,ぜひお聴きいただければ.
【 hellog 】
・ 「#6117. 伝説的入門書『古英語・中英語初歩』が新装復刊されます!」 ([2026-01-25-1])
・ 「#6120. 『古英語・中英語初歩』新装復刊のカウントダウン企画「古中英語30連発」を始めています」 ([2026-01-28-1])
【 heldio 】
・ 「#1706. 伝説の教科書『古英語・中英語初歩』(研究社)が新装復刊
・ 「#1708. 『古英語・中英語初歩』新装復刊のカウントダウン企画「古中英語30連発」を始めています」
・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」
・ 「#1723. 『古英語・中英語初歩』新装復刊の裏にはヘルメイトたちのドラマがあった」
【 X(旧Twitter) 】
・ 私の X アカウント @chariderryu より,カウントダウン企画「古中英語30連発」を展開しています.
あと1週間,待ちきれないですね!
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
先日2月6日(金)の正午より,Voicy heldio にて「【生配信】日英語「語彙の3層構造」大喜利!皆さんからの傑作選を発表」をお届けしました.
目下,2月25日に研究社より刊行予定の『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を盛り上げるべく,私の X アカウント @chariderryu より,カウントダウン企画「古中英語30連発」を展開しています.その No. 11 として「英語の語彙は「3階建て」の構造」を紹介したところ,多くの反響をいただきました.
英語の「英・仏・羅」の3層構造は,日本語の「和語・漢語・外来語」に緩く対応します.そこで,X より呼びかけて,日本語でも英語でも「きれいな3層構造」の例をお寄せくださいと募ったところ,言語センスの光る傑作が続々と寄せられました.その傑作選を声で読み上げたのが,上記の配信回です.私が独断と偏見でおもしろいと思った例(金賞・銀賞・特別賞あり)を取り上げさせていただきましたが,それを hellog にも記録として残しておきたいと思います.日本語の3層構造の事例が中心となりましたが,英語についてもいくつかお寄せいただきました.
【 概念・抽象語部門 】
・ ぐちゃぐちゃ・混乱・カオス
・ おそれ・恐怖・パニック
・ こい(したう)・恋愛/愛情・ラブ
【 日常生活・道具部門 】
・ 音入れ・録音機・レコーダー(金賞:TAKAHASHI さん)
・ かぎ・錠・キー
・ こしかけ・椅子・チェアー
・ かなづち・鉄槌・ハンマー
・ おたより・郵便・メール
・ まなびや・教室・クラスルーム
・ つれあい・配偶者・パートナ
【 身体・自然部門 】
・ からだ・身体・ボディー
・ あたま・頭部・ヘッド
・ 天の川・銀河・ギャラクシー
・ すばる・昴星・プレアデス
・ たから・宝物・トレジャー(銀賞:mozhi gengo さん)
【 動詞部門 】
・ 見張る・監視する・モニタリングする(モーラ数の配置が美しい例)
・ 車に乗る・運転する・ドライブする
・ 繰り返す・復唱する・リピートする
・ 打ち込む・入力する・タイプする
【 特異な三層(あるいはそれ以上)部門 】
・ パクチー・香菜(こうさい)・シャンツァイ・コリアンダー・コエンドロ(特別賞:川上さん)
・ 盲腸・虫垂炎・アッペ(俗称・学術語・ジャーゴンの重なり)
【 英語の3層構造 】
・ hurly-burly - confusion - chaos
・ fear - terror - panic/phobia
・ love - affection - eros/philia
・ grasp - seize - capture
・ hallow - deify - consecrate
・ say - mention - refer
・ teacher - tutor - evangelist
・ old - ancient - senior
・ wonderful - surprising - terrific
・ bright - sparkling - splendid
・ great - excellent - superb
いかがでしょうか.「きれいな例」を探すのは意外と難しいものです.単なる言い換えではなく,下層から上層へ向かうにつれて「日常」から「公的」,そして「専門的」あるいは「モダン」へと語感が変わっていくグラデーションが感じられるかどうかがポイントになります.モーラ数・音節数の違いなども意識するとおもしろいですね.
英語史の観点からいえば,このような語彙の層の厚みは,その言語が歩んできた歴史の厚みそのものでもあります.かつて古英語期には1階建てだった語彙の家が,中英語期にフランス語という2階部分が増築され,さらに近代英語期にかけてはラテン語(やギリシア語)の3階が積み上がってきました.
拙著『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』の第5章でも詳しく解説していますが,中英語期はまさに1階と2階が混ざり合っていくダイナミズムを観察できる時代です.近刊書『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を通して,ぜひその歴史の現場を追体験してみてください.
・ 堀田 隆一 『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』 研究社,2016年.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

一昨日1月26日(月)より,私の X(旧Twitter)アカウント @chariderryu にて,新たな連載企画 #古中英語30連発 をスタートさせました.これは,来たる2月25日に研究社より新装復刊される予定の,市河三喜・松浪有(著)の伝説的な入門書『古英語・中英語初歩』を寿ぐカウントダウン企画です.
今回の主役である『古英語・中英語初歩』は,先日の記事「#6117. 伝説的入門書『古英語・中英語初歩』が新装復刊されます!」 ([2026-01-25-1]) でご紹介したように,1935年に『古代中世英語初歩』というタイトルで世に出た歴史ある教科書です.「古英語」や「中英語」という表現が一般化する以前には,「古代英語」や「中世英語」という名称が使われていました.そんな時代の重みが感じられる1冊ですね.
今回の新装復刊にあたり,その魅力を1人でも多くの方に伝えるべく,刊行日までの1ヶ月間,毎日1つずつ古英語・中英語に関わる小ネタを投稿していくことにしました.ハッシュタグ #古中英語30連発 で展開しています.
本日は企画の3日目となりますが,1日目,2日目には古英語の文字,綴字,発音の話題を取り上げました.新装復刊でも古英語の第1章は「綴りと発音」で始まるのです.本書の中身は,研究社公式HPの近刊案内より部分的に「試し読み」できますので,ぜひチェックしてみてください.
小さなトピックを朝の早い時間帯に1日1ネタのペースで届けることで,皆さんの日常に古英語・中英語の香りを添えられればと思います.1ヶ月後の刊行までに,皆さんが古英語・中英語の世界に踏み出す心の準備ができるように,という意味合いもありますので,ぜひ覗いてみてください.
各小ネタの引用リポストやリプライも,ぜひ気軽にお願いします.私もなるべく反応します.また,私は X 上で本企画以外にも様々なhel活を展開していますので,ぜひ X アカウント をフォローし,日々チェックしていただければ.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
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