明日5月22日(金)と23日(土)に,福島県いわき市で「いわき太平洋・島サミット2015」が開かれる.日本,オーストラリアを含め,太平洋諸国が参加するサミットで,太平洋地域の相互外交を強化することを狙いとする.ホスト国である日本は,サミット開催に合わせ,一週間前の5月15日に駆け込みでニュージーランド自治領のニウエ (Niue /niˈuːeɪ/; 国民名と形容詞は Niuean /n(j)uːˈ(w)eɪən/) を国家承認することを決定した.日本が承認する国家はこれで195カ国となる.ニュージーランド,中国,インドなどは先だって国家承認しているが,国連には加盟していない.
ニウエは,ニュージーランドの北東約2400kmに位置し,面積は約259平方km(鹿児島県徳之島とほぼ同じ),人口は約1,500人の島国である.首都は Alofi.以下に,地図と国旗を示す.
この島国の略史を記そう.Captain James Cook が1774年に上陸し,島民の示した敵意にちなんで "Savage Island" と命名.1830年代に宣教団が来島し,1852年に島民がキリスト教化.1900年に英国がサモア分割の一部としてニウエを併合した.翌1901年には,ニュージーランドがクック諸島の一部として同島を併合したが,1904年には島は分離して自治体となった.1974年にニュージーランドと自由連合を組む自治政府が樹立した.内政的にはこのときに事実上独立したいってよいが,島民はニュージーランド市民であり,防衛・外交はニュージーランドに任意で依存してきた.ニュージーランドへの移住者も多い.
用いられている言語についていえば,Ethnologue の Niue の項によれば,ニウエ語 (Niuean) と英語が公用語となっている.国民のほとんどがニウエ語を話すが,英語も広く通用する.ニウエ語は,オーストロネシア語族ポリネシア語派に属し,隣接するトンガ語やサモア語に類似する.
英語史の観点から話題にできることが1つある.ニウエがより広く国際的に国家承認されるのは今後のことになるのかもしれないが,正式に承認されることで,ニウエは「英語を公用語としてもつ最小の国」のタイトルをナウルより奪うことになる.「#1747. 英語を公用語としてもつ最小の国」 ([2014-02-07-1]) で取り上げたナウルは,面積ではニウエよりもずっと小さく,その意味ではいまだ「最小」だが,人口についていえばナウルは約1万人いるのに対し,ニウエは千数百人という規模であるから「最小」と呼ぶことができる.英語とその分布に関連する統計その他の情報を更新する必要が生じてくるだろう.
関連して,直接ニウエの話題こそ含まれていないが,「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]),「#1591. Crystal による英語話者の人口」 ([2013-09-04-1]),「#1676. The Commonwealth of Nations」 ([2013-11-28-1]),「#1700. イギリス発の英語の拡散の年表」 ([2013-12-22-1]) などを参照されたい.英語の拡散との関連では,「#1919. 英語の拡散に関わる4つの crossings」 ([2014-07-29-1]) を参照.
ニウエに関する外部リンクとしては,以下のものがある.
・ 外務省によるニウエ基礎データ
・ CIA: The World Factbook による Niue のデータ
・ Wikipedia による Niue の記事
Mesthrie and Rakesh (12--17) に,"INTEGRATING NEW ENGLISHES INTO THE HISTORY OF THE ENGLISH LANGUAGE COMPLEX" と題する章があり,World Englishes あるいは New Englishes という現代的な視点からの英語史のとらえ方が示されており,感心した.
英語の拡散は,有史以前から現在まで,4つの crossings により進行してきたという.第1の crossing は,5世紀半ばに北西ゲルマン民族がブリテン島に渡ってきた,かの移住・侵略を指す.この段階から,ポストコロニアルあるいはポストモダンを想起させるような複数の英語変種,多言語状態,言語接触がすでに存在していた.複数の英語変種としては,アングル族,サクソン族,ジュート族などの間に民族変種の区別が移住の当初からあったろうし,移住後も地域変種や社会変種の発達がみられたろう.多言語状態および言語接触としては,基層言語としてのケルト語の影響,上層言語としてのラテン語との接触,傍層言語としての古ノルド語との混交などが指摘される.後期ウェストサクソン方言にあっては,1000年頃に英語史上初めて書き言葉の標準が発展したが,これは続くノルマン征服により衰退した.この衰退は,英語標準変種の "the first decline" と呼べるだろう (13) .
第2の crossing は,中英語期の1164年に Henry II がアイルランドを征服した際の,英語の拡散を指す.このとき英語がアイルランドへ移植されかけたが,結果としては定着することはなかった.むしろ,イングランドからの植民者はアイルランドへ同化してゆき,英語も失われた.詳しくは「#1715. Ireland における英語の歴史」 ([2014-01-06-1]) を参照されたい.
後期中英語から初期近代英語にかけて,英語史上2度目の書き言葉の標準化の動きが南イングランドにおいて生じた.この南イングランド発の標準変種は,それ以降,現在に至るまで,英語世界において特権的な地位を享受してきたが,20世紀に入ってからのアメリカ変種の発展により,また20世紀後半よりみられるようになったこれら標準変種から逸脱する傾向を示す世界変種の成長により,従来の特権的な地位は相対的に下がってきている.この地位の低下は,南イングランドの観点からみれば,英語標準変種の "a second decline" (16) と呼べるだろう.ただし,"a second decline" においては,"the first decline" のときのように標準変種そのものが死に絶えたわけではないことに注意したい.それはあくまで存在し続けており,アメリカ変種やその他の世界変種との間で相対的に地位が低下してきたというにすぎない.
一方で,近代英語期以降は,西欧列強による世界各地の植民地支配が進展していた.英語の拡散については「#1700. イギリス発の英語の拡散の年表」 ([2013-12-22-1]) をはじめとして,本ブログでも多く取り上げてきたが,英語はこのイギリス(とアメリカ)の掲げる植民地主義および帝国主義のもとで,世界中へ離散することになった.この離散には,母語としての英語変種がその話者とともに移植された場合 ("colonies of settlement") もあれば,経済的搾取を目的とする植民地支配において英語が第2言語として習得された場合 ("colonies of exploitation") もあった.前者は the United States, Canada, Australia, New Zealand, South Africa, St. Helena, the Falklands などのいわゆる ENL 地域,後者はアフリカやアジアのいわゆる ESL 地域に対応する(「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]) および「#409. 植民地化の様式でみる World Englishes の分類」 ([2010-06-10-1]) を参照).英米の植民地支配は被っていないが保護領としての地位を経験した Botswana, Lesotho, Swaziland, Egypt, Saudi Arabia, Iraq などでは,ESL と EFL の中間的な英語変種がみられる.また,20世紀以降は英米の植民地支配の歴史を直接的には経験していなくとも,日本,中国,ロシアをはじめ世界各地で,EFL あるいは ELF としての英語変種が広く学ばれている.ここでは,英語母語話者の人口移動を必ずしも伴わない,英語の第4の crossing が起こっているとみることができる.つまり,英語史上初めて,英語という言語がその母語話者の大量の移動を伴わずに拡散しているのだ.
英語史上の4つの crossings にはそれぞれ性質に違いがみられるが,とりわけポストモダンの第4の crossing を意識した上で,過去の crossings を振り返ると,英語史記述のための新たな洞察が得られるのではないか.この視座は,イギリス史の帝国主義史観とも相通じるところがある.
・ Mesthrie, Rajend and Rakesh M. Bhatt. World Englishes: The Study of New Linguistic Varieties. Cambridge: CUP, 2008.
標記の国がどこか分かるだろうか.答えは,ナウル共和国 (Republic of Nauru) である.南太平洋,赤道のすぐ南に浮かぶ21平方キロメートルの珊瑚礁の島で,人口は1万人ほどである.
Ethnologue の Nauru によると,オーストロネシア語族に属する Nauruan や,Chinese Pidgin English や他の移民言語なども話されているが,英語が事実上の公用語といってよい.
ナウルのみならず南太平洋の島嶼国の多くは,公用語として英語を採用しており,世界の英語使用の伝統的な分類によると ESL (English as a Second Language) 諸国である.「#177. ENL, ESL, EFL の地域のリスト」 ([2009-10-21-1]),「#1475. 英語と言語に関する地図のサイト」 ([2013-05-11-1]),「#1676. The Commonwealth of Nations」 ([2013-11-28-1]),「#1591. Crystal による英語話者の人口」 ([2013-09-04-1]) から拾い出せば,Nauru と多かれ少なかれ似たような言語状況にある島国として the Federated States of Micronesia (FSM), Fiji, Kiribati, the Marshall Islands, Palau, Samoa, Solomon Islands, Tonga, Tuvalu, Vanuatu の名前が挙がる.この地域の近代史は地域内でも様々ではあるが,ヨーロッパの航海士による「発見」,西欧の列強による利用と搾取,日本軍による占領,欧米の委任統治を経ての独立などによって特徴づけられる場合が多い.
ナウル共和国は,島の周囲がわずか19kmの,世界で3番目に小さな国である.西洋との接触は,1798年にイギリスの捕鯨船ハンター号がナウルを訪れたときに始まる.1830年代以降,捕鯨寄港地として機能し始め,1888年にはドイツの保護領となった.1907年からはイギリスの会社 Pacific Phosphate Company が,ドイツの行政機関との交渉の上,肥料や火薬の原料となるリン鉱石 (phosphate rock) の採掘を開始する.第1次世界大戦中にオーストラリア軍が島を占領し,1920年以降はイギリス,オーストラリア,ニュージーランド3国の委任統治領となる.1942年の日本軍による占領を経て,戦後は3国の委任統治に戻ったが,1968年には独立した.
ナウルは世界で最も純度の高いリン鉱石を産する国だが,現在は島の4/5を覆っていたリン鉱石の採掘は9割以上が終わり,枯渇寸前である.リン鉱石による莫大な利益により南太平洋諸国のなかでは高い生活水準を維持してきたが,今後の新しい産業育成が急務となっている.貿易相手としてはオーストラリアとニュージーランドが群を抜いている.歴史的にいえば,ナウルは,リン鉱石によってイギリスの注目を引き,列強どうしの戦争の勝者となった英語母語諸国の影響下に置かれることによって,英語という言語と関わってきたといえる.
なお,ナウルの東に位置する広大な島嶼国,キリバス共和国 (Republic of Kiribati) もリン鉱石の産地だったが,イギリスより独立した1979年にはすでに掘り尽くされていた.国土面積の約半分を占めるクリスマス島は,1777年のクリスマスイブに James Cook が訪れたことに由来するが,1956--58年にかけてイギリスが9回,1962年にアメリカが24回の核実験を行った地として知られる.キリバスでも英語が事実上の公用語であり,ナウルと比較される歴史をもっているといえる.
ナウルと並んで,ツバル (Tuvalu) も英語を公用語としてもつ最小の国の1つであるので,そちらも参照.
以上,石出 (22, 36--37) を参照して執筆した.
・ 石出 法太 『オセアニア日本とのつながりで見るアジア 過去・現在・未来 第7巻 オセアニア』 岩崎書店,2003年.
[2013-09-02-1]の記事に引き続き,Philippine English の歴史と現状について.鈴木 (162--63) によると,支配的な言語がスペイン語から英語へとシフトしたのは,1910--20年代のことだという.
米国は,一八九八年のフィリピン占領以来,すべての教育を英語で行なってきた.それが二〇年ほどの間に,徐々に効いていたのである./あらゆる公共の場での演説は,これまでスペイン語で行なわれてきた.しかし,ついに一九一九年一二月五日,英語による最初の演説が下院で行なわれた.フィリピン大学法学部出身の二人の議員が,演説を英語でやってのけたのだ.二二年になると,マニラ市議会も「すべての議員が英語を読み書きする」という理由で,議会用語に英語を採用した.裁判でも英語が使われるようになり,すべての官公庁が二五年までには英語の採用試験に切り替えたという.
スペイン支配とアメリカ支配を単純化して特徴づけるとすれば,前者はキリスト教の普及,後者は教育の普及といってよいだろう.そして,アメリカの文化帝国主義は見事に功を奏したのである.現在でも,フィリピンの教育では「英語第一主義」が根強く守られている.アキノ前大統領(1986--92在職)は,現地の言語がないがしろにされているという国語問題に大きな関心を払っていたが,解決に向けて大きな進展があったわけではない.鈴木によると,フィリピンの国民の帰属意識や社会矛盾の根源は「英語第一主義」にある.
現在フィリピンでは,フィリピン語と英語の「二言語教育」が小学校から行なわれている.フィリピン語を教育用言語として,国語,社会,図工,体育などが教えられている.英語で教えられているのは,英語,算数,理科などである.このため公立小学校では英語による教育についていけない生徒が続出し,教育現場は控え目に表現しても大混乱している.「英語が嫌いだ」とか「英語で教えるから算数が分からない」といった理由で,登校拒否が目立っているとおいう.子供たちの生活環境は「二言語」化されていはいない.したがって,英語はタガログ語地域では二重の負担になり,他の地方語地域では三重の負担になっているのが実状だ./ところがフィリピンは,「英語国」の立場を守っている.議会では英語で討論が行なわれ,大統領の演説も英語である.官公庁文書もすべて英語でだされ,選挙のときにだけ,タガログ語をはじめとする地方語で書かれた印刷物が配られるのである.官公庁では当然英語が使われ,会社紹介や業績発表もすべて英語である.国語の普及に責任を負っているはずの教育・文化・スポーツ省ですら,とうてい「フィリピン語使用」に本気で取り組んでいるとはいえない.〔中略〕フィリピンの政治的,社会的混乱の原因は,フィリピン人が国際理解を重視し,国際的に高い地位を占めたいと思うあまり,英語使用の公式路線を捨てきれないこととかかわりがある.とくに,二言語政策による小学校教育の混乱は,本来なら溌剌としているべき国家の活力を奪っている.フィリピン人がよく使う "tao" (庶民,小さな人々)こそ,国家の生産力と富の源泉であることを忘れるべきではない.(286--88)
さらに,鈴木 (294) は,「歴史的に見ると,英語教育はフィリピン人に劣等意識を植えつけ,アメリカ文化に憧れさせる「えさ」として提供されてきた.フィリピン政府が,「世界言語としての英語の知識は,フィリピン国民の誇りである」と言えばいうほど,国民意識をあいまいにさせている」と手厳しい.
アメリカが英語の力をもって20世紀のフィリピンを牽引してきたことは間違いない.アメリカの教育政策により,1930年代には識字率が倍増しているし,その結果として現在でもアジアの中でも教育がよく進んでいる.一方,英語を公用語とする国々のなかで4番目に多くの人口を擁していることから,世界の英語人口に大きく貢献してもいる.しかし,華やかに見える英語第一主義の正の側面の裏側には,負の側面のあることを忘れてはならない.
この7月下旬に,12年振りにフィリピンに出かける機会があった.そこでフィリピン人と,言語の問題を語る機会があった.英語一辺倒の教育は小学校レベルで見直され始めていること,とはいえ英語の社会的な権威はまったく衰えておらず,国民語たるタガログ語を差しおいて,まず英語を子供に教えようとする親が普通であることなどを聞いた.滞在中,タガログ語と英語が互いに自由に乗り入れる "Taglish" の code-mixing も,ごく普通に耳にした.
だが,フィリピンは ESL 国の1つの例にすぎない.英語が世界化する過程には他にも様々なパターンがありうるだろう.未来の英語史は,これらのパターンの1つ1つを記述してゆく必要があるのだろう.
・ 鈴木 静夫 『物語フィリピンの歴史』 中央公論新社〈中公新書〉,1997年.
昨日の記事で扱った「#1590. アジア英語の諸変種」 ([2013-09-03-1]) から世界の英語変種へ目を広げると,それこそおびただしい English varieties が,今現在,発展していることがわかる.英語変種の数ばかりでなく英語変種の話者の数もおびただしく,「#397. 母語話者数による世界トップ25言語」 ([2010-05-29-1]) の記事の終わりで触れたように,母語話者数と非母語話者を足し合わせると,英語は世界1の大言語となる.英語話者人口の過去,現在,未来については,以下の記事で扱ってきた.
・ 「#319. 英語話者人口の銀杏の葉モデル」 ([2010-03-12-1])
・ 「#427. 英語話者の泡ぶくモデル」 ([2010-06-28-1])
・ 「#933. 近代英語期の英語話者人口の増加」 ([2011-11-16-1])
・ 「#173. ENL, ESL, EFL の話者人口」 ([2009-10-17-1])
・ 「#375. 主要 ENL,ESL 国の人口増加率」 ([2010-05-07-1])
・ 「#759. 21世紀の世界人口の国連予測」 ([2011-05-26-1])
・ 「#414. language shift を考慮に入れた英語話者モデル」 ([2010-06-15-1])
現在の世界における英語話者人口を正確に把握することは難しい.Crystal (61, 65--67) で述べられているように,この種の人口統計には様々な現実的・理論的な制約が課されるからだ.Crystal (62--65) は,その制約のなかで2001年現在の英語人口を推計した.近年,最もよく引き合いに出される英語話者の人口統計である.
Territory | L1 | L2 | Population (2001) |
---|---|---|---|
American Samoa | 2,000 | 65,000 | 67,000 |
Antigua & Barbuda* | 66,000 | 2,000 | 68,000 |
Aruba | 9,000 | 35,000 | 70,000 |
Australia | 14,987,000 | 3,500,000 | 18,972,000 |
Bahamas* | 260,000 | 28,000 | 298,000 |
Bangladesh | 3,500,000 | 131,270,000 | |
Barbados* | 262,000 | 13,000 | 275,000 |
Belize* | 190,000 | 56,000 | 256,000 |
Bermuda | 63,000 | 63,000 | |
Botswana | 630,000 | 1,586,000 | |
British Virgin Islands* | 20,000 | 20,800 | |
Brunei | 10,000 | 134,000 | 344,000 |
Cameroon* | 7,700,000 | 15,900,000 | |
Canada | 20,000,000 | 7,000,000 | 31,600,000 |
Cayman Islands* | 36,000 | 36,000 | |
Cook Islands | 1,000 | 3,000 | 21,000 |
Dominica* | 3,000 | 60,000 | 70,000 |
Fiji | 6,000 | 170,000 | 850,000 |
Gambia* | 40,000 | 1,411,000 | |
Ghana* | 1,400,000 | 19,894,000 | |
Gibraltar | 28,000 | 2,000 | 31,000 |
Grenada* | 100,000 | 100,000 | |
Guam | 58,000 | 100,000 | 160,000 |
Guyana* | 650,000 | 30,000 | 700,000 |
Hong Kong | 150,000 | 2,200,000 | 7,210,000 |
India | 350,000 | 200,000,000 | 1,029,991,000 |
Ireland | 3,750,000 | 100,000 | 3,850,000 |
Jamaica* | 2,600,000 | 50,000 | 2,665,000 |
Kenya | 2,700,000 | 30,766,000 | |
Kiribati | 23,000 | 94,000 | |
Lesotho | 500,000 | 2,177,000 | |
Liberia* | 600,000 | 2,500,000 | 3,226,000 |
Malawi | 540,000 | 10,548,000 | |
Malaysia | 380,000 | 7,000,000 | 22,230,000 |
Malta | 13,000 | 95,000 | 395,000 |
Marshall Islands | 60,000 | 70,000 | |
Mauritius | 2,000 | 200,000 | 1,190,000 |
Micronesia | 4,000 | 60,000 | 135,000 |
Montserrat* | 4,000 | 4,000 | |
Namibia | 14,000 | 300,000 | 1,800,000 |
Nauru | 900 | 10,700 | 12,000 |
Nepal | 7,000,000 | 25,300,000 | |
New Zealand | 3,700,000 | 150,000 | 3,864,000 |
Nigeria* | 60,000,000 | 126,636,000 | |
Northern Marianas* | 5,000 | 65,000 | 75,000 |
Pakistan | 17,000,000 | 145,000,000 | |
Palau | 500 | 18,000 | 19,000 |
Papua New Guinea* | 150,000 | 3,000,000 | 5,000,000 |
Philippine$ | 20,000 | 40,000,000 | 83,000,000 |
Puerto Rico | 100,000 | 1,840,000 | 3,937,000 |
Rwanda | 20,000 | 7,313,000 | |
St Kitts & Nevis* | 43,000 | 43,000 | |
St Lucia* | 31,000 | 40,000 | 158,000 |
St Vincent & Grenadines* | 114,000 | 116,000 | |
Samoa | 1,000 | 93,000 | 180,000 |
Seychelles | 3,000 | 30,000 | 80,000 |
Sierra Leone* | 500,000 | 4,400,000 | 5,427,000 |
Singapore | 350,000 | 2,000,000 | 4,300,000 |
Solomon Islands* | 10,000 | 165,000 | 480,000 |
South Africa | 3,700,000 | 11,000,000 | 43,586,000 |
Sri Lanka | 10,000 | 1,900,000 | 19,400,000 |
Suriname* | 260,000 | 150,000 | 434,000 |
Swaziland | 50,000 | 1,104,000 | |
Tanzania | 4,000,000 | 36,232,000 | |
Tonga | 30,000 | 104,000 | |
Trinidad & Tobago* | 1,145,000 | 1,170,000 | |
Tuvalu | 800 | 11,000 | |
Uganda | 2,500,000 | 23,986,000 | |
United Kingdom | 58,190,000 | 1,500,000 | 59,648,000 |
UK Islands (Channel, Man) | 227,000 | 228,000 | |
United States | 215,424,000 | 25,600,000 | 278,059,000 |
US Virgin Islands* | 98,000 | 15,000 | 122,000 |
Vanuatu* | 60,000 | 120,000 | 193,000 |
Zambia | 110,000 | 1,800,000 | 9,770,000 |
Zimbabwe | 250,000 | 5,300,000 | 11,365,000 |
Other dependencies | 20,000 | 15,000 | 35,000 |
Total | 329,140,800 | 430,614,500 | 2,236,730,800 |
昨日の記事「#1589. フィリピンの英語事情」 ([2013-09-02-1]) と関連して,アジアにおける英語変種について一般的な話題を取り上げる.アジアの諸地域は,交易や植民地時代を含む4世紀にわたる英語との接触の歴史を通じて,独自の英語変種を発達させてきた.これら Asian English(es) と呼ばれる ESL あるいは EFL としての英語変種は,地域および使用(制度化されているか否か)の観点から分類される (Jenkins 45) .
South Asian varieties | South-East Asian and Pacific varieties | East Asian varieties |
---|---|---|
Bangladesh | Brunei | China |
Bhutan | Cambodia | Hong Kong |
India | Fiji | Japan |
Maldives | Indonesia | Korea |
Nepal | Laos | Taiwan |
Pakistan | Malaysia | |
Sri Lanka | Myanmar | |
Philippines | ||
Singapore | ||
Thailand | ||
Vietnam |
Institutionalised varieties (Outer Circle) | Non-institutionalised varieties (Expanding Circle) |
---|---|
Bangladesh | Cambodia |
Bhutan | China |
Brunei | Indonesia |
Fiji | Japan |
Hong Kong | Korea |
India | Laos |
Malaysia | Maldives |
Nepal | Myanmar |
Pakistan | Taiwan |
Philippines | Thailand |
Singapore | Vietnam |
Sri Lanka |
フィリピン (The Philippines) は,言語多様性の高い国である.日本の4/5ほどの面積に約8,800万人が住んでおり,Ethnologue の Philippines の項によれば,181の言語が行なわれているという(フィリピンの現況を報告する一般の概説書によれば80程度ともされ,数え方により大きく異なる).「#401. 言語多様性の最も高い地域」 ([2010-06-02-1]) で取り上げた多様性指数 (diversity index) のランキングでいえば,0.855の値を示し,世界25位である.土着語のほとんどがオーストロネシア語族に属する言語であり,VSOの語順を示すなど,言語的には比較的類似している.母語話者人口の最も多いのは Cebuano (約1,200万人)だが,公用語としてはルソン島南部を中心に母語人口1,000万人を誇る Tagalog をもとにした Filipino が国語とされているほか,英語がもう1つの公用語として広く学ばれ,行われている(政府は1972年より Filipino と英語の2言語教育の方針を打ち出している).Crystal (64) の統計によれば,国民の半数近くが英語を話すとされ,東南アジアにおいて最も英語話者の多い国といえるだろう.(フィリピンの言語地図はこちらを参照). *
フィリピンは,16世紀後半から続いた300年のスペインによる支配の後,1898年の米西戦争 (the Spanish-American War) を経て,アメリカの支配下に入った(「#255. 米西戦争と英語史」[2010-01-07-1]を参照).1942--45年の日本による占領時代を経て1946年に独立したが,独立後もアメリカとの関係は密であり,アメリカ英語の影響が色濃い.全般的にイギリス英語の色彩が圧倒的である東南アジアにあって,異色である(「#376. 世界における英語の広がりを地図でみる」[2010-05-08-1]を参照).
上記のような経緯で Philippine English ("Taglish" とも呼ばれる)は,Singapore English と並んで東南アジアの数ある英語変種のなかでも目立った存在となっている.Jenkins (47) によると,東南アジア英語変種のなかでもとりわけ研究が進んでおり,例えば Tay, M. ("Southeast Asia and Hongkong." English around the World. Ed. J. Cheshire. Cambridge: CUP, 1991.) や World Englishes の2004年の Bautista et al. によるフィリピン英語特集などが挙げられている.フィリピン英語は1960年代後半から記録されており,独特な発音や文法が発達してきていることが知られている.また,新旧の世代差や formality による差など,フィリピン英語内での変種も多様化してきているようだ.
英語が非母語として用いられている他の地域の英語事情については,「#273. 香港の英語事情」 ([2010-01-25-1]),「#404. Suriname の歴史と言語事情」 ([2010-06-05-1]),「#412. カメルーンの英語事情」 ([2010-06-13-1]),「#514. Nigeria における英語の位置づけ」 ([2010-09-23-1]),「#1536. 国語でありながら学校での使用が禁止されている Bislama」 ([2013-07-11-1]) などの記事を参照.
・ バーナード・コムリー,スティーヴン・マシューズ,マリア・ポリンスキー 編,片田 房 訳 『新訂世界言語文化図鑑』 東洋書林,2005年.
・ Crystal, David. English As a Global Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.
・ Jenkins, Jennifer. World Englishes: A Resource Book for Students. 2nd ed. London: Routledge, 2009.
Indian English や Nigerian English など,ESL地域で行なわれている英語の変種は "New Englishes" と呼ばれることがあるが,その発展は歴史的に見ると以下の過程を経ている.地域によって過程を経る速度は異なるが,およそ共通していることから,"New Englishes" のライフサイクルと呼んでよいだろう.Mazzon (78--79) を要約する.
(1) indigenisation: 英語が国際的な用途ではなく国内的な用途のために受け入れられる段階.
(2) expansion: 新変種がより多くの,より幅広い用途に用いられるようになる段階.
(3) a change from an exonormative model to an endonormative one: [2009-12-05-1]の記事「#222. 英語話者の同心円モデル (2)」の Kachru の用語でいうところの "norm-dependent" から "norm-developing" へと,話者の態度の変化がみられる段階.新変種に特有の語法はもはや標準英語からの逸脱とはみなされなくなる.その地域の要求に応えるべく,語彙や会話規則が発達し,文学なども現われるようになる."Indian" English などの形容詞から軽蔑的な含蓄が消え,純粋に記述的な意味を獲得する.
(4) institutionalisation: 学校,メディア,政府,知識人などによって広く使用され,使用が推奨される段階.新変種が重要な社会言語学的機能を獲得する.話者に同変種への愛着が生じる段階でもある.
その次に,もう1つの段階があると想定してもよいかもしれない.どの "New Englishes" も達しておらず,達することのない段階かもしれないが,それは restriction という段階である.新変種の英語の使用が制限され,地元の言語の地位が復活して,英語の社会的機能を置きかえるという段階である.ライフサイクルの終着点だ.
各段階において,国際的に用いられる標準英語への態度も変化するだろう.(4) に至るまで,威信のある変種としての標準英語の立場は,特に教育の場などでは変わらないだろうが,(4) へ進むにつれて,地域の代表として発達した新変種がその威信に接近することになる.しかし,接近するにつれて,標準変種と新変種に対するアンビバレントな態度が社会のなかに生じてくるのが常である.一方では,イギリス英語などの標準変種が優秀さの象徴と捉えられ,良い英語の使用が近代性やあらゆる良きものへのパスポートと認識される.他方で,新変種には国家主義的な愛着が感じられ,過程を追うごとにかつて付随していた劣等変種としてのイメージも払拭されるために,自信をもって使用する機会も増える.このアンビバレントな心理状況を,ある学者は統合失調症 (schizophrenia) になぞらえて schizoglossia (Mazzon 83) と呼んだが,ESL地域のたどった歴史の重さを思わずにはいられない悲痛な用語ではある.
・ Mazzon, Gabriella. "The Development of Extraterritorial Englishes." The Development of Standard English, 1300--1800. Ed. Laura Wright. Cambridge: CUP, 2000. 73--92.
世界の ESL ( English as a Second Language ) 地域は,[2009-10-21-1]の記事で列挙したように多数あり,[2009-06-23-1]で示唆したように今後も増えてゆくことが見込まれ,世界英語へ及ぼす影響は大きいと考えられる.ESL 地域は主に英米植民地化の歴史を背負っており,それゆえにというべきだが日本にとってあまり馴染みのない地域が多い.現代日本にとって比較的関心の強いところでは Hong Kong, India, Malaysia, the Philippines, Singapore などの南・東南アジア諸国が挙げられる.特に India は ESL を論じる場合には欠かすことのできない主要国だが,それ以外の世界の ESL 地域における言語事情については,日本では一般にあまり知られていない.ESL 地域のもつ潜在的な影響力を考えれば,各 ESL 地域について無知でいることは許されない.私自身も言語事情をよく知らない地域が多いし,ESL に言及するときに India の話題だけでは心許ないので,これから少しずつ調べていきたいと思っている.そこで,今回は典型的な ESL 国の1つ Nigeria ( Federal Republic of Nigeria ) に焦点を当ててみたい.
Nigeria は西アフリカのギニア湾に面するアフリカで最も人口の多い国である.人口が多いだけでなく,アフリカの多くの国々と同様に民族の多様性も高い.[2010-06-02-1]の記事で言語の多様性指数 ( diversity index ) を取りあげたが,Nigeria の多様性指数は 0.869 で世界第23位である.1国内に使用されている言語の数でいえば実に521言語を数え,Papua New Guinea, Indonesia に次いで世界第3位を誇る.言語的同質性の高い日本からみると想像を絶する言語事情である.Nigeria で使用されている諸言語の詳細については Ethnologue report for Nigeria を参照.
主要な言語としては,北部の Hausa, Fula,南西部の Yoruba,南東部の Igbo が挙げられる.このうち Hausa は Afro-Aisatic 語族,それ以外は Niger-Congo 語族に属する.政治的に特に重要な言語は Hausa で,国内の lingua franca の1つとなっているが,母語話者と第2言語話者を合わせても総人口(1億4000万を超える)の1/4に届かない.English, Nigerian Pidgin English もそれぞれ1000万人,3000万人ほどの話者を有し,lingua franca として国内でよく通用する.いずれにせよ単独で人口の1/4ほどのシェアを占める言語は存在しないが,政治や教育の場で公式に用いられる言語は英語である.話者数では1000万人ほどにもかかわらず,国のなかで英語が高い地位を確保されているのはなぜだろうか.
1つは歴史的な遺産である.西アフリカ,ギニア湾沿岸へのヨーロッパ人の訪問の歴史は,[2010-06-13-1]で紹介したカメルーンの英語事情に記した通りである.15世紀にポルトガル商船の交易基地が Nigeria 地域にも築かれ,16世紀にはイギリス人との接触により同地域に様々な英語変種が話されるようになった.ただし,イギリス人による植民地が Lagos (旧首都)に正式に設立されたのは1861年のことである.他の多くの植民地と同様に,このイギリス統治時代に標準イギリス英語が政治・教育などの公式な言語となり,1960年の独立後も現在にいたるまでその状況が遺産として受け継がれている.
2つ目に,英語が民族的,政治的に最も中立な言語とみなされているということがある.India の場合と同様に,多民族・多言語国家 Nigeria では公用語をある1つの言語に特定することは民族対立の原因となる.Nigeria には圧倒的な多数派がいないことも,公用語の制定を難しくしている.もし Hausa を採用すれば非 Hausa 系が団結して対抗するだろうし,政治問題そして流血の惨事へと発展する可能性が高い.実際に,Hausa と Igbo が血を流した1967年からの数年にわたる内戦(ビアフラ戦争)では150万の犠牲者が出た.このような国では,ある言語話者にとって「不平等に有利」になる社会状況を作り出すよりは,すべての言語にとって「平等に不利」であるほうが平和的である.そこで,言語的有利を犠牲にして万人にとって(第2言語という意味で)不利な言語である外来の言語たる英語を選ぶということが現実的な解決策になる.
3つ目に,上記のような国内政治的な理由で英語を用いざるを得ない状況のポジティヴな側面を見れば,英語を用いることによって世界とつながる機会が増えることにもなる.英語を公用語に掲げる国家としても外交上有利だし,英語を習得する個人としてもキャリア上有利だろう.
多くの ESL 地域の言語事情は複雑である.このような地域の言語事情を調べると,世界の人々が英語を話したり学んだりする理由も千差万別だということが改めてわかる.[2010-01-19-1]の記事も改めて参照されたい.
[2009-10-17-1]で,英語話者人口の内訳を ENL, ESL, EFL の三区分で見た.今日は,各区分の話者人口ではなく,各区分を体現する世界の地域の数に注目してみたい.
以下の地域名リストは,主に ENL 人口を擁する地域を (1),主に ESL 人口を擁する地域を (2),主に EFL 人口を擁する地域を (3) として分類したものである.(1) については,事実上ライバル言語のない地域を (1a),主要なライバル言語が一つあるいは二つ以上存在する地域を (2a) としてある.また,(3) については,英語を教育のなかで外国語として習得されているものの,社会における英語の使われ方が広まってきており,事実上 ESL 地域とみなしてもよい地域を (3a) として,それ以外の通常の EFL 地域を (3b) としてある.いずれも1998年出版の McArthur のリストに拠っているため,必ずしも最新の情報ではないことを断っておく.リストをこうして電子化しておけば再利用が可能かと思っての掲載.
(1a) The ENL territories without major competition (30 territories)
Anguilla, Antigua and Barbuda, Ascension (Island), Australia, Bahamas, Barbados, Bermuda, British Indian Ocean Territory (BIOT), the Cayman Islands, Dominica, England (UK), the Falkland Islands, Grenada, Guyana, Hawaii, Liberia, Jamaica, the Irish Republic, the Isle of Man, Montserrat, New Zealand, Northern Ireland (UK), Saint Christopher and Nevis, Saint Helena, Saint Lucia, Saint Vincent and the Grenadines, Scotland (UK), the Turks and Caicos Islands, Trinidad and Tobago, Tristan da Cunha, the United States, the Virgin Islands (US), the Virgin Islands (British)
(1b) The ENL territories with one or more other major languages (6 territories)
Belize (also Spanish), Canada (also French), the Channel Islands (also French), Gibraltar (also Spanish), South Africa (also Afrikaans, Xhosa, Zulu, and other major local languages), Wales (UK: also Welsh)
(2) The ESL territories (57 territories)
Bahrain, Bangladesh, Belau, Bhutan, Botswana, Brunei, Cameroon, the Cook Islands, Costa Rica, Egypt, the Federated States of Micronesia (FSM), Fiji, Gambia, Ghana, Hong Kong, India, Israel, Jordan, Kenya, Kiribati, Lebanon, Lesotho, Malaysia, Malawi, the Maldives, Malta, the Marshall Islands, Mauritius, Namibia, Nauru, Nepal, Nigeria, the Northern Marianas, Oman, Panama, Puerto Rico, Pakistan, Papua New Guinea, the Philippines, Qatar, Rwanda, Seychelles, Sierra Leone, Singapore, the Solomon Islands, Sri Lanka, Surinam, Swaziland, Tanzania, Tonga, Tuvalu, Uganda, Vanuatu, American Samoa, Western Samoa, Zambia, Zimbabwe
(3a) The EFL territories with English a virtual second language (17 territories)
Argentina, Belgium, Burma/Myanmar, Denmark, Ethiopia, the Faeroe Islands, Honduras, Kuwait, the Netherlands, the Netherlands Antilles, Nicaragua, Norway, Somalia, Sudan, Sweden, Switzerland, the United Arab Emirates
(3b) The EFL territories with English learned as the global lingua franca (the rest of the world) (122 territories)
Afghanistan, Albania, Algeria, Andorra, Angola, Armenia, Aruba, Austria, Azerbaijan, the Azores, the Balearic Islands, Belarus, Benin, Bolivia, Bosnia-Herzegovina, Brazil, Bulgaria, Burkina Faso, Burundi, Cambodia, the Canary Islands, Cape Verde, Central African Republic, Chad, Chile, China, Colombia, the Comoros Islands, Congo, Croatia, Cuba, Cyprus, the Czech Republic, Djibouti, the Dominican Republic, Ecuador, El Salvador, Equatorial Guinea, Estonia, Finland, France, French Guiana, French Polynesia, Gabon, Georgia, Germany, Goa, Greece, Greenland, Guadeloupe, Guatemala, Guinea, Guinea-Bissau, Haiti, Hungary, Iceland, Indonesia, Iran, Iraq, Italy, the Ivory Coast, Japan, Kazakhstan, Kirghizia, Korea (North), Korea (South), Laos, Latvia, Libya, Liechtenstein, Lithuania, Luxembourg, Macau, Macedonia, Madagascar, Madeira, Mali, Martinique, Mauritania, Mexico, Moldavia, Monaco, Mongolia, Morocco, Mozambique, New Caledonia, Niger, Paraguay, Peru, Poland, Pondicherry, Portugal, Réunion, Romania, Russia, Saint Pierre et Miquelon, San Marino, Sao Tomé and Principé, Saudi Arabia, Senegal, Slovakia, Slovenia, Spain, Syria, Taiwan, Tajikistan, Thailand, Timor, Togo, Tunisia, Turkey, Turkmenistan, Ukraine, Uruguay, Uzbekistan, the Vatican City, Venezuela, Vietnam, the Wallis and Futuna Islands, Yemen, Yugoslavia, Zaire
以上,合計232地域.
・ McArthur, Tom. The English Languages. Cambridge: CUP, 1998. 53--54.
以下の国名リストから何が連想されるだろうか.
・Argentina
・Belgium
・Costa Rica
・Denmark
・Ethiopia
・Honduras
・Lebanon
・Myanmar
・Nepal
・Netherlands
・Nicaragua
・Norway
・Panama
・Somalia
・Sudan
・Suriname
・Sweden
・Switzerland
・United Arab Emirates
これは国内での英語の位置づけが EFL ( English as a Foreign Language ) から ESL ( English as a Second Language ) の地位へと変化しつつある国のリストである ( Graddol 11 ).こうした国では,専門職や高等教育といった領域を中心に,国内コミュニケーションのために英語が用いられる機会が増えているという.
北欧人の英語が上手なことはよく知られているが,私がデンマークを訪れたときに,ある印象的な出来事があった.Shakespeare の Hamlet の舞台となった Kronborg Castle の観光ツアーに参加したときのこと.10名以上いた参加者のうち,私が唯一の外国人であり,残りは皆デンマーク人だった.そこでツアー開始時にツアーガイドから自然に発せられた一言,「これからの観光案内は英語でいたします」.参加者の一人で中学生くらいとおぼしき若者がジェスチャーで「英語は苦手だよ」と冗談めかしていたが,その後ツアーはごく自然に英語で進行した.英語が国内でも広く受け入れられている証拠だろう.
英語が ESL の地位を得つつあるデンマークのような国が増えてきていることは,英語の未来を考える上で重要な意味をもつだろう.
・Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm.
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