昨日の記事[2010-04-29-1]では敢えてコーパスの負の側面を見たが,それは近年のコーパスが大いに英語学に貢献してきた状況へのリアクションからであり,コーパス英語学の正の側面を指摘しない限り,評価は完成しない.そこで,特に英語史研究の視点から,コーパス英語学の発展がいかに多大な好影響を与えてきたかを,家入先生による指摘ポイントを含めつつ,何点か列挙したい.
・ 散文と韻文などテキストの形式やジャンルをまたいでの比較が可能になった
・ コーパスの巨大化により,低頻度事項でも例数を集められるようになり,研究可能なテーマが広がった
・ 現代英語の研究者に通時的研究の契機を与えることとなり,英語史研究の裾野が広がった
・ コーパスでは校訂やその他の annotation がタグにより明示されるので,研究者間で共通の前提に立った議論が成り立ちやすい
・ 研究テーマについて,コーパス研究で結論の見当をつけ,次に詳細研究に進むという研究手法が可能になった
・ 定説を含めた従来の仮説をコーパスによって検証するという基盤的な研究ジャンルが開かれた
英語史研究の視点からと述べたが,他分野でも似たようなポイントは挙げられるだろう.
・ 家入 葉子 「<特集:コーパス言語学の現在>英語史研究とコーパス」 『英語青年』 2004年2月号,15-17頁.
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