hellog〜英語史ブログ

#424. 現代アメリカ英語における wh- 関係代名詞の激減[relative_pronoun][syntax][ame][corpus]

2010-06-25

 現代英語に起きている文法上の変化として wh- 関係代名詞が減少し,that や zero 関係代名詞が増加しているという例が挙げられる.wh- 関係詞は比較的 formal な響きを有しており,話し言葉よりも書き言葉に現れることが多いとされるが,その書き言葉においても頻度が目に見えて落ちているという.
 Leech and Smith (195--96) は the Brown family of corpora を用いて英米各変種における1961年と1991/1992年の間に起こったいくつかの言語変化を調査した.調査によると,AmE では30年ほどの間に関係詞 which が34.9%減少した.それに対して,that は48.3%増加し,zero も23.1%増加した.同様に,BrE でも which は9.5%減少し,that が9%増加,zero が17.1%増加した.いずれの関係詞も,AmE のほうが BrE よりも振れ幅が大きい,つまり増減が激しいということになる.特に AmE での which の減少率が著しい.
 これには,私自身も思い当たる経験がある.ちょうど1991/1992年辺りに中学・高校の学校英文法をたたきこまれた私は,関係詞 which の使用についてはドリル練習を通じて精通していた.ところが,後に英語論文を書く立場になって自信をもって which を連発したところ,アメリカ英語母語話者のネイティブチェックでことごとく which でなく that にせよと朱を入れられてしまった経験がある.それが一種のトラウマになったようで,最近は関係詞 which の使用にはかなり慎重である.自分の中で Americanisation が起こりつつあるということだろうか.
 アメリカ英語では which は非限定用法にしか使われなくなりつつあるというが,ワープロソフトの校正機能もこうした傾向を助長している節がある.かつてのあのドリル練習は何だったのだろうかと改めて思わせる言語変化である.ドリルに励んでいたあの1991年の時点でもすでに限定用法としての which の衰退は方向づけられていたのに・・・.

 ・ Leech, Geoffrey and Nicholas Smith. "Recent Grammatical Change in Written English 1961--1992: Some Preliminary Findings of a Comparison of American with British English." The Changing Face of Corpus Linguistics. Ed. Antoinette Renouf and Andrew Kehoe. Amsterdam and New York: Rodopi, 2006. 185--204.

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