[2010-02-28-1]の第二弾.重複することもあるが,改めてコーパス利用研究の注意点や弱点を備忘録として書き留めておきたい.いずれもコーパスやコーパス研究それ自身が悪いわけではなく,コーパス(研究)に依存しすぎると問題が生じると考えられるポイントである.
・ コーパスで研究できないことは研究しなくなる
・ コーパスで都合のよい結果が出ればそれを採用し,都合の悪い結果が出れば見て見ぬふりをする,というアドホックな態度に陥りがちになる
・ コーパスの扱いそのものが目的となってしまう傾向がある
・ コーパス研究はとりあえず数値として明確な結果が出るのでそれで満足してしまい,次の段階へ進まなくなる可能性がある
・ user-friendly なコーパス解析ツールの登場により分析の過程が black box 化されることが多く,行っている作業に無自覚・無責任になる傾向がある
最初の点について付言すると,コーパス研究が可能あるいはふさわしいテーマについては,当然,一つの方法論としてコーパス利用が検討されるべきである.頻度を数え上げるタイプの研究課題がコーパス研究に向いているというのは言わずもがなだが,それ以外にどのようなタイプの研究がコーパスに向いているのか,きちんと考えてみる必要があるだろう.例えば,文献学ではほんの一例の存在が意味をもつことが少なくないので,頻度検索ならぬ有無検索にもコーパスは力を発揮しそうだ.
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