昨日の記事「#2789. 現代英語の Engl&,中英語の 7honge」 ([2016-12-15-1]) で,本来の表語文字 <&> や <⁊ > が純粋に表音文字として用いられている例を見た.文字遊びとして「おもしろい」と思うかもしれないし,「中英語にもあったなんて」と驚くかもしれないが,ほとんど同じ原理の文字使用が,かつての日本語にもあった.万葉仮名の「借訓」の用法である.むしろ,大陸からもたらされた漢字という文字体系と必死に格闘せざるを得なかった上代の日本人にとっては,このような文字の使い方は,文字遊びであるという以上に,まさに真剣勝負だったのかもしれない.
ここで,上代日本人が,漢字という文字体系をいかにして日本語の書記に適用したかという観点から,漢字の用い方を整理しよう.以下,佐藤 (49--51) より,詳細な分類を再現する.
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(1) 正音(漢語をそのまま用い,字訓で読まれる)
布施(ふせ),餓鬼(がき),双六(すごろく),塔(たふ)
(2) 正訓(日本語の意味が漢字の字義と一致,あるいは共通する度合が高い場合の,日本語の訓を表す)
一字訓:心(こころ),情(こころ),思(おもふ),念(おもふ),音(こゑ・おと)
熟字訓:光儀(すがた),茅子(はぎ),織女(たなばた)
(3) 義訓(語の意味を間接的に喚起する分析的・解説的な表記)
金風(あきかぜ),暖(はる),寒(ふゆ),乞(こそ),不安(くるし)
[表音本意] 真仮名・万葉仮名と称する
(1) 音仮名(借音仮名・借音字とも呼ばれる)
・ 一音節を表示する音仮名
1. 全音仮名(無韻尾字)
阿(あ),伊(い),宇(う),麻(ま),左(さ),知(ち),之(し)
2. 略音仮名(有韻尾字,韻尾を捨てる)
安(あ),散(さ),芳(は),欲(よ),吉(き),万(ま),八(は)
3. 連合仮名(有韻尾字,韻尾を後続音に解消する)
印南(いなみ),吉師(きし),奈伎和多里南牟(なきわたりなむ)
・ 二音節を表示する音仮名(有韻尾字,韻尾に母音を加える.二合仮名とも呼ばれる)
君(くに),粉(ふに),険(けむ),兼(けむ),濫(らむ),越(をち),宿祢(すくね)
(2) 訓仮名(借訓仮名・借訓字とも呼ばれる)
・ 一音節を表示
押奈戸手(おしなべて),田八酢四(たやすし),名津蚊為(なつかし),湯目(ゆめ)(副詞),家呼家名雄母(いへをもなをも)
・ 多音節(一字二音節以上)表示
言借(いふかし)(不審),雲谷裳(くもだにも),夏樫(なつかし),名束敷(なつかしき),奈都炊(なつかしき),慍下(いかりおろし)(碇)
・ 熟合仮名(二字一音節,二字二音節など.熟字訓を利用)
五十日太(いかだ),嗚呼児乃浦(あごのうら),二十物(はたもの)(織物),見左右(みるまでに)
(3) 戯書
1. 字謎
色二山上復有有山者(いろにいでば)
2. 擬声語表記から
神楽声浪(ささなみ),馬声蜂音石花蜘虫厨荒鹿(いぶせくもあるか),追馬喚犬所見喚鶏(そまみえつつ)
3. 九九と関連して
十六自物(ししじもの),八十一隣之宮(くくりのみや),不知二五寸許瀬(いきとをきこせ)(助詞),生友奈重二(いけりともなし)
4. 義訓・熟字訓・熟合仮名の技巧から
恋渡味試(こひわたりなむ)(←舐(助動詞)),事毛告火(こともつげなむ)(←南(助詞)),暮三伏一向夜(ゆふづくよ)(古代朝鮮の木四戯の目),所聞多祢(←喧)
漢字は,表意本意の使い方と表音本意の使い方に大きく2分される.表意本意の用法は,いわばオリジナルの中国風の漢字の用法だが,表音本意の用法,すなわち万葉仮名こそが,日本における新機軸だった.万葉仮名は,見た目は漢字だが,機能としては平仮名・片仮名に類する表音文字として用いられているものである.万葉仮名の表音的用法も細かく下位区分されるが,上の (2) に挙げられている「訓仮名」の原理こそが,英語の <Engl&>, <⁊honge> に見られる原理である.
訓仮名は,ある漢字の和訓が確定し,他の訓で読まれる可能性が少なくなってから生じる用法であるから,常に後に発生するものである.同じように,<&> や <⁊ > も各々 and という「訓読み」が確定していたからこそ,後に表音的にも用いられるようになったものである.<Engl&>, <⁊honge> における <&>, <⁊ > の使い方は,感覚的には,万葉仮名でいえば「夏樫」(なつかし),「偲食」(しのはむ)のタイプの「多音節表示の訓仮名」に近いのではないか.本来的に表意的な文字の意味を取って読み下し,その読み下した音列を,今度はその意味から切り離して,その音を部分的にもつ単語を純粋に表音的に表記するために用いる,という用法だ.言葉で説明するとややこしいが,つまるところ <Engl&> で England と読ませ,<夏樫> で「なつかし」と読ませる原理のことである.
万葉仮名については,「#2386. 日本語の文字史(古代編)」 ([2015-11-08-1]),「#2390. 文字体系の起源と発達 (2)」 ([2015-11-12-1]) を参照.
・ 佐藤 武義 編著 『概説 日本語の歴史』 朝倉書店,1995年.
「#817. Netspeak における省略表現」 ([2011-07-23-1]) で見たように,ネット上では判じ絵 (rebus) の原理による文字遊びともいえる省略表現が広まっている.<Thx2U> (= Thanks to you) や <4U> (= For you) や <CUL8R> (= See you later) や <Engl&> (= England) のような遊び心を含んだ文字列である.これらの数字や記号 <&> の用例は,本来の表語文字(記号)を表音的に用いている例として興味深い.それぞれ意味は捨象し,[tuː], [fɔː], [eɪt], [ənd] という音列を表す純粋な表音文字として機能している.
これは現代人の言葉遊びにすぎないと思われるかもしれないが,実は古くから普通に行なわれてきた.例えば,接続詞 and を書き表わすのに古くは <&> ではなく数字の <7> に似た <⁊ > という記号 (Tironian et) が用いられていた(「#1835. viz.」 ([2014-05-06-1]) を参照).そして,これが接続詞 and を表わすものとしてではなく,他の語の一部をなす音列 [and] を表わすものとして表音的に用いられる例があった.この接続詞は,現代と同様に弱い発音では語尾音がしばしば脱落したので,[and] だけでなく [an] あるいは [a] を表音する文字としても機能した.例えば,The Owl and the Nightingale から,l. 1195 に現われる動詞の過去分詞形 anhonge の接頭辞 an- が Tironian et で書かれており,<<⁊honge>> と写本に見える.同じように,l. 1200 の動詞の過去分詞形 astorue も <<⁊storue>> と書かれており,接頭辞 a- が Tironian et で表わされている.
書き手の遊び心もあるだろうし,少しでも短く楽に書きたいという思いもあるだろう.書き手の思いと,その思いを満たす手段は,昔も今も何も変わらない.
・ Cartlidge, Neil, ed. The Owl and the Nightingale. Exeter: U of Exeter P, 2001.
中世英文学の規範テキストといえば,言わずとしれた Geoffrey Chaucer (1340--1400) の諸作品,なかんずく The Canterbury Tales である.英文学史の本流をなすこのテキストの評価は,今なお高い.一方,中世英文学の珠玉の名作と言われる Sir Gawain and the Green Knight をものした無名の詩人の諸テキストも文学的な評価は高いが,英文学史上の位置づけは Chaucer と比して周辺的である.これは,SGGK に類似したテキストが後に現われなかったことや,詩人の用いた言語が,英語の本流から外れた非標準的な匂いのするイングランド北西方言のものだったことが関わっているだろう.このように,英語や英文学に何らかの規範性を無意識のうちに認めている現代の校訂者や読者のもつ Chaucer と Gawain 詩人に対する見解には,多分に先入観が含まれている可能性がある.
Horobin (106) は,この先入観を,現代の校訂者が各々のテキストにおける綴字をどのように校訂したかという観点から明らかにしようとした.Horobin は,The Canterbury Tales の "The General Prologue" の有名な冒頭部分について,現代の標準的な校訂版である Riverside Chaucer のものと,最も権威ある写本の1つ Hengwrt 写本のものとを対比して,いかに校訂者が写本にあった綴字を現代風に改変しているかを示した.例えば,写本に現われる <þ> は校訂本では <th> に置き換えられており,種々の省略記号も暗黙のうちに展開されており,句読点も現代の読者に自然に見えるように付加されている.
一方,SGGK では,校訂者は写本テキストにそれほど改変を加えていない.<þ> や <ȝ> はそのまま保たれており,校訂本でも写本の見栄えを,完璧とはいわずともなるべく損なわないようにとの配慮が感じられるという.
Horobin (106) は,両作品の綴字の校訂方法の違いは現代校訂者の両作品に対する文学史上の評価を反映したものであると考えている.
The tendency for editors to remove the letter thorn in modern editions of Chaucer is quite different from the way other Middle English texts are treated. The poem Sir Gawain and the Green Knight, for instance, written by a contemporary of Chaucer's, is edited with its letters thorn and yogh left intact. This difference in editorial policy is perhaps a reflection of different attitudes to the two authors. Because Chaucer is seen as central to the English literary canon, there is a tendency to present his works as more 'modern', thereby accentuating the myth of an unbroken, linear tradition. The anonymous poet who wrote Sir Gawain and the Green Knight, using a western dialect and the old-fashioned alliterative metrical form, is further cut off from the literary canon by presenting his text in authentic Middle English spelling.
このような現代校訂者には,特に悪意はないかもしれないが,少なくとも何らかの英文学史上の評価に関わる作為はあるということだろうか.
・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
viz. は "namely" (すなわち)の意を表わす語で,/vɪz/ と読まれることもあるが,普通は namely /ˈneɪmli/ と発音される.もっぱら書き言葉に現れるので,ある種の省略符合と考えてよいだろう.もとの形は,英語でもまれにそのように発音されることはあるが, videlicet /vɪˈdɛləsɪt/ という語で,これはラテン語で「すなわち,換言すると」を意味する vidēlicet に由来する.このラテン語自体は,vidēre licet (it is permitted to see) という慣用表現のつづまったものである.OED によると,英語での初出は videlicet が1464年,省略形の viz. がa1540年である.
viz. の現代英語における用例をいくつか見てみよう.とりわけイギリス英語の形式張った書き言葉において,より明確に説明を施したり,具体例を列挙したりするのに用いられる.
・ four major colleges of surgery, viz. London, Glasgow, Edinburgh and Dublin
・ We both shared the same ambition, viz, to make a lot of money and to retire at 40.
・ The school offers two modules in Teaching English as a Foreign Language, viz. Principles and Methods of Language Teaching and Applied Linguistics.
関連して,ラテン語 scīre licet (it is permitted to know) のつづまった scilicet /ˈsɪləˌsɛt/ とその略形 scil. sc. も,英語でおよそ同じ意味に用いられる.
それにしても,videlicet が viz. と略されるのはなぜだろうか.中世ラテン語の写本では,<z> の文字は,-et, -(b)us, -m などの省略記号として一般に用いられていた.そこで,<z> = <et> と見立て,表記上 <vi(delic)z> とつづめたのである.古くは,<vidz.>, <vidzt>, <vz.> などとも表記された.ラテン語では et は "and" を意味するのでこの <z> の略記は多用され,古英語や中英語の写本でもそれをまねて and の語(あるいはその音価)に代わって頻繁に現れた.実際の <z> の字形は現在のものとは異なり,数字の <7> に似た <⁊ > という字形 (Unicode ⁊) で,この記号は Tironian et と呼ばれた.古代ローマのキケロの筆記者であった Marcus Tullius Tiro が考案した速記システム (Tironian notes, or notae Tironianae) で用いられた速記記号の1つである.これが,後に字形の類似から <z> に置き換えられるようになった.Irish や Scottish Gaelic では現在も Tironian et が使用されるが,英語では viz. にそのかすかな痕跡を残すのみである.
これはイングランドの50ポンド札の写しである.上方から左中程にかけて,"I PROMISE TO PAY THE BEARER ON DEMAND THE SUM OF FIFTY POUNDS For the Gov:r and Comp:a of the BANK of ENGLAND" という文が読める."Gov:r" は governor,"Comp:a" は company の略だが,このような略記は一般にはお目にかからない.特に company は co と省略されるのが普通であり,compa は珍しいだろう.実際に,OED (compa | Compa, n.) を参照すると,現在では紙幣における表記としての使用がほぼ唯一の使用例であるという.
1940 G. Crowther Outl. Money i. 25 Every Bank of England note..bears the legend, 'I Promise to pay the Bearer on Demand the sum of One Pound' ..signed, 'For the Govr'. and Compa. of the Bank of England' by the Chief Cashier.
これを Company (< ME compaignie < AF compainie = OF compa(i)gnie) の略記であると解釈することに異論はないが,歴史的にはイングランドに銀行業をもたらしたイタリアとの関連で,イタリア語の同根語 compagnia の影響を認めてもよいかもしれない.Praz (35) は,次のように述べている.
Banking, as is well known, was first introduced into England by Italians; first by Sienese, then, after the middle of the thirteenth century, by Florentine merchants; Venice appeared on the scene at the beginning of the fourteenth century. Italian merchants were protected by Wolsey and Thomas Cromwell; they began to lose ground only during the age of Elizabeth. . . . The abbreviation Comp:a on the Bank of England notes is nothing else but a faint echo of the vanished glory of many an Italian Compagnia or firm.
「#1411. 初期近代英語に入った "oversea language"」 ([2013-03-08-1]) の最後に触れた通り,ロマンス諸語からの借用の多くは,フランス語を経由するなどしてフランス語化した形態で英語に入ってくることが多かった.語の借用過程は主として形態を参照しながら探るのが歴史言語学の定石だが,語源学や語誌研究においては形態以外の項目にも注意を払うと,新たな洞察が得られて実り豊かである.
・ Praz, Mario. "The Italian Element in English." Essays and Studies 15 (1929): 20--66.
Chaucer など中英語の文学テキストをはじめとして,英語史で引用されることの多い主要な作品の略記を一覧にしておくと便利である.そこで,『英語語源辞典』 (xvii--xx) より,中英語作品,Chaucer,Shakespeare,聖書の書名の略記を抜き出した.関連して MED の HyperBibliography も参照.
ME期主要作品の成立年代と作品名(MED による略形)
?lateOE | Lambeth Homilies |
a1121--60 | Peterb. Chron. = Peterborough Chronicle |
c1175 | Body & Soul |
?c1175 | Poema Morale |
?a1200 | Ancrene Riwle |
?a1200 | Layamon Brut |
?c1200 | St. Juliana |
?c1200 | St. Katherine |
?c1200 | St. Margaret |
?c1200 | Hali Meidenhad |
?c1200 | Sawles Warde |
?c1200 | Ormulum |
c1200 | Vices & Virtues |
?c1225 | Horn |
c1250 | Owl & Nightingale |
c1250 | Floris |
c1250 | Genesis & Exodus |
c1275 | Kentish Sermons |
?a1300 | Kyng Alisaunder |
?a1300 | Richard Coer de Lyon |
c1300 | Havelok |
c1300 | Gloucester Chronicle |
c1300 | South English Legendary |
c1303 | Mannyng Handlyng Synne |
a1325 | Cursor Mundi |
c1330 | Orfeo |
a1333 | Shoreham Poems |
a1338 | Mannyng Chronicle |
1340 | Ayenbite |
c1340 | Rolle Psalter |
c1350 | Prose Psalter |
c1353 | Wynnere & Wastoure |
a1375 | William of Palerne |
1375 | Barbour The Bruce |
a1376 | Piers Plowman A |
a1378 | Piers Plowman B |
?c1380 | Cleanness |
?c1380 | Patience |
?c1380 | Pearl |
c1384 | Wycl. Bible (1) = Wycliffite Bible |
c1386 | St. Erkenwald |
?a1387 | Piers Plowman C |
a1387 | Trevisa Polychronicon |
?c1390 | Gawain = Sir Gawain and the Green Knight |
a1393 | Gower Confessio Amantis |
c1395 | Wycl. Bible (2) = Wycliffite Bible |
?c1395 | Pierce the Ploughman's Creed |
a1396 | Hilton Scale of Perfection |
a1398 | Trevisa Bartholomew |
?a1400 | Destruction of Troy |
?a1400 | Morte Arthure |
c1400 | Mandeville |
?a1425 | Polychronicon (Harley) |
?a1425 | Chauliac (1) = Guy de Chauliac's Grande Chirurgie |
?c1425 | Chauliac (2) = Guy de Chauliac's Grande Chirurgie |
?a1438 | MKempe = Book of Margery Kempe |
1440 | Promp. Parv. = Promptorium Parvulorum |
?a1450 | Gesta Romanorum |
a1470 | Malory |
ABC | An ABC |
Adam | Chaucers Wordes Unto Adam, His Owne Scriveyn |
Anel. | Anelida and Arcite |
Astr. | A Treatise on the Astrolabe |
Bal. Ch. | A Balade of Complaint |
BD | The Book of the Duchess |
Bo. | Boece |
Buk. | Lenvoy de Chaucer a Bukton |
Comp. A. | Complaynt D'Amours |
Comp. L. | Complaint to His Lady |
CT. | The Canterbury Tales |
CT. Cl. | The Clerk's Prologue and Tale |
CT. Co. | The Cook's Prologue and Tale |
CT. CY. | The Canon's Yeoman's Prologue and Tale |
CT. Fkl. | The Franklin's Prologue and Tale |
CT. Fri. | The Friar's Prologue and Tale |
CT. Kn. | The Knight's Tale |
CT. Mch. | The Merchant's Prologue, Tale, and Epilogue |
CT. Mk. | The Monk's Tale |
CT. Mcp. | The Manciple's Prologue and Tale |
CT. Mel. | The Tale of Melibee |
CT. Mil. | The Miller's Prologue and Tale |
CT. ML. | The Man of Law's Introduction, Prologue, Tale, and Epilogue |
CT. Mk. | The Monk's Prologue and Tale |
CT. NP. | The Nun's Priest's Prologue, Tale, and Epilogue |
CT. Pard. | The Pardoner's Introduction, Prologue, and Tale |
CT. Pars. | The Parson's Prologue and Tale |
CT. Ph. | The Physician's Tale |
CT. Pri. | The Prioress's Prologue and Tale |
CT. Prol. | General Prologue |
CT. Rt. | Chaucer's Retraction |
CT. Rv. | The Reeve's Prologue and Tale |
CT. Sh. | The Shipman's Tale |
CT. SN. | The Second Nun's Prologue and Tale |
CT. Spurious Pard. Sh. Link | The Spurious Pardoner-Shipman Link |
CT. Sq. | The Squire's Introduction and Tale |
CT. Sum. | The Summoner's Prologue and Tale |
CT. Th. | The Prologue and Tale of Sir Thopas |
CT. WB. | The Wife of Bath's Prologue and Tale |
Form. A. | The Former Age |
Fort. | Fortune |
Gent. | Gentilesse |
HF | The House of Fame |
LGW | The Legend of Good Women |
LGW Prol. | Prologue |
L. St. | Lak of Stedfastnesse |
Mars | The Complaint of Mars |
Merc. B. | Merciles Beaute |
PF | The Parliament of Fowls |
Pity | The Complaint unto Pity |
Prov. | Proverbs |
Purse | The Complaint of Chaucer to His Purse |
Rosem. | To Rosemounde |
RRose | The Romaunt of the Rose |
Scog. | Lenvoy de Chaucer a Scogan |
TC | Troilus and Criseyde |
Truth | Truth |
Ven. | The Complaint of Venus |
W. Unc. | Against Women Unconstant |
AWW | All's Well That Ends Well |
AYL | As You Like It |
Ado | Much Ado About Nothing |
Ant | Antony and Cleopatra |
Cor | Coriolanus |
Cym | Cymbeline |
Err | The Comedy of Errors |
1H4 | 1 Henry IV |
2H4 | 2 Henry IV |
H5 | Henry V |
1H6 | 1 Henry VI |
2H6 | 2 Henry VI |
3H6 | 3 Henry VI |
H8 | Henry VIII |
Ham | Hamlet |
JC | Julius Caesar |
Jn | King John |
LC | Lover's Complaint |
LLL | Love's Labour's Lost |
Lr | King Lear |
Luc | The Rape of Lucrece |
MM | Measure for Measure |
MND | A Midsummer-Night's Dream |
MV | The Merchant of Venice |
MWW | The Merry Wives of Windsor |
Mac | Macbeth |
Oth | Othello |
Per | Pericles |
Phoe | The Phoenix and Turtle |
R2 | Richard II |
R3 | Richard III |
RJ | Romeo and Juliet |
Shr | The Taming of the Shrew |
Son | Sonnets |
TC | Troilus and Cressida |
TGV | The Two Gentlemen of Verona |
TNK | The Two Noble Kinsmen (with Fletcher) |
TN | Twelfth Night |
Tem | Tempest |
Tim | Timon of Athens |
Tit | Titus Andronicus |
VA | Venus and Adonis |
WT | The Winter's Tale |
Acts | The Acts of the Apostles |
Amos | Amos |
1 Chron. | The First Book of the Chronicles |
2 Chron. | The Second Book of the Chronicles |
Col. | The Epistle of Paul the Apostle to the Colossians |
1 Cor. | The First Epistle of Paul the Apostle to the Corinthians |
2 Cor. | The Second Epistle of Paul the Apostle to the Corinthians |
Dan. | The Book of Daniel |
Deut. | The Fifth Book of Moses, called Deuteronomy |
Eccles. | Ecclesiastes, or the Preacher |
Ephes. | The Epistle of Paul the Apostle to the Ephesians |
Esth. | The Book of Esther |
Exod. | The Second Book of Moses, called Exodus |
Ezek. | The Book of the Prophet Ezekiel |
Ezra | Ezra |
Gal. | The Epistle of Paul the Apostle to the Galatians |
Gen. | The First Book of Moses, called Genesis |
Hab. | Habakkuk |
Hag. | Haggai |
Heb. | The Epistle of Paul the Apostle to the Hebrews |
Hos. | Hosea |
Isa. | The Book of the Prophet Isaiah |
James | The General Epistle of James |
Jer. | The Book of the Prophet Jeremiah |
Job | The Book of Job |
Joel | Joel |
John | The Gospel according to St. John |
1 John | The First Epistle General of John |
2 John | The Second Epistle of John |
3 John | The Third Epistle of John |
Jonah | Jonah |
Josh. | The Book of Joshua |
Jude | The General Epistle of Jude |
Judges | The Book of Judges |
1 Kings | The First Book of the Kings |
2 Kings | The Second Book of the Kings |
Lam. | The Lamentations of Jeremiah |
Lev. | The Third Book of Moses, called Leviticus |
Luke | The Gospel according to St. Luke |
Mal. | Malachi |
Mark | The Gospel according to St. Mark |
Matt. | The Gospel according to St. Matthew |
Mic. | Micah |
Nah. | Nahum |
Neh. | The Book of Nehemiah |
Num. | The Fourth Book of Moses, called Numbers |
Obad. | Obadiah |
1 Pet. | The First Epistle General of Peter |
2 Pet. | The Second Epistle General of Peter |
Philem. | The Epistle of Paul to Philemon |
Philip. | The Epistle of Paul the Apostle to the Philippians |
Prov. | The Proverbs |
Ps. | The Book of Psalms |
Rev. | The Revelation of St. John the Divine |
Rom. | The Epistle of Paul the Apostle to the Romans |
Ruth | The Book of Ruth |
1 Sam. | The First Book of Samuel |
2 Sam. | The Second Book of Samuel |
Song of Sol. | The Song of Solomon |
1 Thess. | The First Epistle of Paul the Apostle to the Thessalonians |
2 Thess. | The Second Epistle of Paul the Apostle to the Thessalonians |
1 Tim. | The First Epistle of Paul the Apostle to Timothy |
2 Tim. | The Second Epistle of Paul the Apostle to Timothy |
Titus | The Epistle of Paul to Titus |
Zech. | Zechariah |
Zeph. | Zephaniah |
紊???? (Apocrypha) | |
Baruch | Baruch |
Bel and Dragon | The History of the Destruction of Bel and the Dragon |
Ecclus. | The Wisdom of Jesus the Son of Sirach, or Ecclesiasticus |
1 Esd. | I. Esdras |
2 Esd. | II. Esdras |
Judith | Judith |
1 Macc. | The First Book of the Maccabees |
2 Macc. | The Second Book of the Maccabees |
Pr. of Man | The Prayer of the Manasses |
Rest of Esther | The Rest of the Chapters of the Book of Esther |
Song of Three Children | The Song of the Three Holy Children |
Susanna | The History of Susanna |
Tobit | Tobit |
Wisd. of Sol. | The Wisdom of Solomon |
[2011-05-06-1]の記事「glide, prosthesis, epenthesis, paragoge」でわたり音 (glide) を含んだ例の1つとして触れた number と,その省略表記 no., No., no, No について.名詞 number はラテン語 numerus に由来し,フランス語 no(u)mbre を経由して1300年頃までに英語に借用されていた.動詞 number もほぼ同時期に英語に入ってきている.いずれの品詞においても,わたり音 /b/ の挿入はフランス語の段階で起こっていた.
一方,ラテン語 numerus の奪格形 numerō は "in number" の意味で用いられていたが,この省略表記 no., No. が17世紀半ばに英語に入ってきた.発音は英語形に基づき,あくまで /ˈnʌmbə/ である.複数形は Nos., nos. と綴り,記号表記では "#" が用いられる(この記号は number sign あるいは hash (sign) と呼ばれるが,後者は格子状の模様を表わす hatch(ing) の連想による民間語源と言われる).フランス語では no,ドイツ語では Nr. と綴られる.
つまり現代英語の number と no. は語源的には厳密に完全形と省略形の関係ではないということになる.むしろラテン語 numerus に起源を一にする2重語 ( doublet ) の例と呼ぶべきだろう.
なお,わたり音 /b/ の挿入されていない「正しい」形態は,ラテン語 numerus の派生語という形で英語にも多く借用されている.
denumerable, enumerate, enumeration, innumerable, numerable, numeral, numeration, numerator, numerical, supernumerary
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