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ippeiinoue - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2026-10-03 05:00

2026-09-30 Wed

■ #6365. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第7回 --- 『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊 [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][kdee][dictionary][lexicography][etymology][kenkyusha][notice][hel_education]


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 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵さんとともに連載している「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」.9月12日発売の10月号に,第7回記事「『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊」が掲載されました.今回のメイン執筆者は私です.
 きっかけは,井上さんと配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」で初めて実現した現地ロケです.1年ほど前,日本の英語辞書出版の老舗,研究社にお邪魔し,私が日頃「世界最強の語源辞典」と激賞してやまない,寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社)の制作秘話を,編纂・出版に携わったプロフェッショナルの方々に直接うかがうという主旨のロケでした.
 取材で明かされたのは,本辞典が研究社における「最後の活版印刷による英語辞書」であるという事実です.気の遠くなるような歳月と職人技が注ぎ込まれた,二度と再現されないであろうものづくりの舞台裏について,記事では詳しく綴っています.続きはぜひ本誌でお確かめください.
 研究社ロケの模様は,「いのほた言語学チャンネル」にて全3回のシリーズ動画としても公開中です.



 なお,今回の『英語教育』の記事でも触れられている,上記の取材を通して立ち上がりつつある新企画については,近々に hellog などでもご報告できればと思っています.
 最後に,井上さんからの一言も紹介します.

堀田さんが「世界一」と激賞する『英語語源辞典』.私もロケで,鉛の活字が並んだ組版の重さと歴史に感銘を受けました.続きはぜひ本誌で!


 『英語教育』10月号,書店やオンライン書店で手にとっていただければ幸いです.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第7回 「『英語語源辞典』は英語語彙史の豊かさを伝えてくれる極上の1冊」『英語教育』2026年10月号,大修館書店,2026年9月12日.44--45頁.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-08-24 Mon

■ #6328. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第6回 --- 英語は本当に「直接的」なのか [inohota][ippeiinoue][youtube][inohota_rensai][sociolinguistics][pragmatics][notice][inohotanaze][speech_act]


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 月刊誌『英語教育』(大修館書店)にて,同僚の井上逸兵氏(慶應義塾大学)とともに「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を連載しています.8月12日に発売された9月号に,第6回記事「英語は本当に「直接的」なのか ―― 「察し」を再考する」が掲載されました.
 今回のメイン執筆者は井上逸兵さんです.世間でよく耳にする「日本語は察しの文化,英語ははっきりと意思表示する言語」というステレオタイプを,社会言語学や語用論の視点から鮮やかに切り崩していく,痛快で知的な論考となっています.
 記事ではまず,ビジネスシーンなどでも安易に持ち出されがちな「高コンテクスト/低コンテクスト」という文化の2分法に対して疑問符が投げかけられます.親しい英語母語話者同士の会話がきわめて高コンテクストであるように,どのような言語共同体であっても間接的な伝達や「察し」は存在します.
 本稿の中心となるのは,英語の慣用表現にみられる高度な間接性の分析です.たとえば,相手への押しつけを弱める依頼表現 I don't suppose you could help me with this, could you? や,異議を婉曲に伝える We might want to reconsider that. など,字面通りの意味とは異なる意図を聞き手に推論させる「型」が英語には豊富に備わっています.また,イギリス英語でとりわけ好まれる皮肉や控えめな表現を取り上げ,散々な結果の後に発せられる Well, that went well. のように,表面の意味をひっくり返して理解させる複雑な言語行為の仕組みを解き明かしています.これらは単なる当てこすりではなく,前提を共有する者同士の仲間意識を確かめ合う機能を持つという指摘にも納得させられます.
 さらに興味深いのは,映画翻訳の対照分析です.挙げられている例については記事本体を参照いただければと思いますが,相手への直接的な働きかけを避け,状況を示して判断を相手に委ねる英語のあり方は,まさに「独立」の尊重と「つながり」の維持という2つの対人関係的配慮から生まれているのです.
 記事の末尾には,恒例の「相方からの一言」も付しています.現在,サバティカル研究でイギリスやアイルランドに滞在している私自身の実感としても,人間関係に影響する場面で用いられる回りくどい言い回しや,高度な皮肉には日々遭遇しており,まさに英語における「察し」の奥深さと難しさを肌で感じているところです.
 形式上の直接性と実際のコミュニケーションにおける直接性の違いに目を向けることで,英語と日本語の新たな側面が見えてくる好編となっています.ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,『英語教育』9月号を手にとっていただければ.

 ・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第6回 「英語は本当に「直接的」なのか ―― 「察し」を再考する」『英語教育』2026年9月号,大修館書店,2026年8月12日.44--45頁.

Referrer (Inside): [2026-08-26-1]

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2026-07-12 Sun

■ #6285. 小河舜さん(上智大学)×井上逸兵さん「古英語と英国地名からみるイギリスの言語文化」ダイジェスト版 [youtube][ogawashun][onomastics][name_project][toponymy][anglo-saxon][oe][celtic][old_norse][viking][ippeiinoue][norman_conquest][north_sea][contact]



 昨日の記事「#6284. 英語史を育んだ北海 --- だから私は泳いだ」 ([2026-07-11-1]) との関係も深い話題.
 去る7月8日(水),「NPO 法人地球ことば村」のオンラインサロンにて,臨場感あふれる YouTube 対談動画が公開されました.お相手は,本ブログや Voicy heldio の「千本ノック」などの企画でお馴染みの英語史研究者小河舜さん(上智大学)と,私の同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学)のお2人です.
 この収録自体は,2年ほど前,2024年10月31日の夜に,慶應義塾大学三田キャンパスの東館オープンラボにて行なわれたものです.私自身は,当夜は仕事の都合で対談本編には立ち会えなかったのですが,その後に催された熱い懇親会の席にはしっかりと滑り込み,英語史トークに花を咲かせたという良き思い出があります.今回はその対談の22分ほどの「ダイジェスト版」が公開されたということで,そのエッセンスをかいつまんで紹介しつつ,hellog 読者の皆さんにもぜひ動画を視聴していただければと思います.
 対談の主たるテーマは,小河さんの主たる研究フィールドである「古英語」と「地名」です.
 英語史における最大の画期といえば,誰もが忘れることのできない1066年のノルマン征服 (norman_conquest) ですが,それ以前の時代を指すのが古英語です.小河さんは,外から新しい言語話者がブリテン島にやってきたときに,既存の地名がどのように置き換えられたのか,あるいは塗り替えられずに痕跡を残したのか,という動態に関心を抱かれています.
 動画内では,とりわけ8世紀以降にブリテン島へ侵入・定住したヴァイキング (viking) の母語である古ノルド語 (old_norse) に由来する地名が具体的に取り上げられています.現代の私たちが抱く「凶暴な海賊」というヴァイキングのステレオタイプは,実は18世紀以降の創作による後付けのイメージが多分に含まれており,実際には商人として定住し,アングロサクソン人とある程度言葉を通じ合わせながら共存していた側面も強かったという指摘には,目から鱗が落ちる方も多いのではないでしょうか.
 そのヴァイキングの言語的痕跡として最も著名な地名要素が,Rugby などの地名に見られる -by 要素です.古ノルド語で「村」や「集落」を意味するこの要素は,イングランドの北東部に明らかに集中的に分布しており,当時のヴァイキングたちの勢力圏を雄弁に物語っています.
 一方で,本来のアングロサクソン系の地名として優勢なのが,Washington や Newton などに見られる -ton 要素です.古英語の日常語としては「柵」や「囲われた場所」を意味する tūn という単語の縮約形ですが,これが日常言語として発展したのが,私たちが当たり前のように使っている town (町)というわけです.まさに日本の「〇〇町」という感覚と同じ最優勢の地名要素が,歴史の波に揉まれてきたのですね.
 対談では,10世紀の歴史書にラテン語で記された地名表記から,アングロサクソン系の旧名 Norðworðig とヴァイキング系の新名 Derby が並置されている移行期・接触期の揺らぎが生々しく見えるという,文献学的な醍醐味も語られています.
 さらに話題は,より古い層に属するケルト語由来の地名(とりわけ水にまつわる川の名前に多く残る Avon や Thames の逸話など)から,スコッチ・ウィスキーの「ジョニー・ウォーカー」 (Johnnie Walker) のロゴに隠された興味深い語源説にまで及びます.歩く姿のシルエットで有名なウォーカーという姓ですが,語源を遡れば「歩く人」とは全く無関係で,羊毛を圧縮する職業名やヴァイキングの言語に由来する可能性が高く,現代的な解釈(誤解)によって,あの闊歩する姿のデザインが生まれたというエピソードは,言語学・文化史的にも実に興味深い話題です.
 地名や人名というものは,人間がその時代にその場所とどのような関わりを持っていたかを示すアイデンティティの証にほかなりません.22分の動画のなかに,英語史のロマンと固有名詞学の奥深さが凝縮された対談となっています.
 hellog 読者の皆様におかれましては,ぜひ上掲の YouTube スクリーン,あるいはこちらの直接リンクより,この魅力的な対談動画をじっくりとご視聴いただければ幸いです.

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