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collocation - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2023-02-04 19:56

2011-03-02 Wed

#674. semantic prosody [semantics][corpus][collocation][semantic_prosody][terminology]

 semantic prosody は,近年のコーパス言語学の興隆によって生み出された概念であり,研究課題としても注目されるようになってきた.同じくコーパス言語学によって注目を集めるようになった collocation とも深く関連している.Louw (57) によれば,semantic prosody の定義は "a form of meaning which is established through the proximity of a consistent series of collocates" である.もう少し分かりやすい定義として Crystal からも引用しよう.

A term sometimes used in corpus-based lexicology to describe a word which typically co-occurs with other words that belong to a particular semantic set. For example, utterly co-occurs regularly with words of negative evaluation (e.g. utterly appalling). (428)


 例として utterly appalling が挙げられているように,utterly という強意の副詞は常に,否定的な性質を表わす語を強調する.他に,happenset in という(句)動詞も不快な出来事を表わす名詞と共起することが多い.semantic prosody とは,共起によって強く顕現するこのような「意味上の音色」のことを指し,その主たる機能は話者の態度や評価を表わすことである.多くは否定的な評価に関するものであり,肯定的な評価の例は少ない(後者の例としては,否定的な強意副詞 utterly に対して肯定的な強意副詞 perfectly が挙げられよう).semantic prosody が collocation と強く結びつていることは,McEnery et al. (83) の挙げている personal price の例から明らかである.personalprice も単独ではその評価は中立的だが,共起すると通常否定的な意味上の音色を伴う.
 特定の共起によって特定の semantic prosody が生じ,それが十分に定着してくると,その共起を故意に逸脱させることによって皮肉,偽善,ユーモアなどの特殊な効果を表わすことができるようにもなる.例えば,Cobuild written corpus に次のような例文がある.

Their relationship in fact was so complete that they were utterly content in each other's company.


 semantic prosody に関して避けることのできない議論は,語と語の共起によってなぜ特定の音色(主に否定的な音色)が顕現するのか,あるいは歴史的に獲得されてきたのか,という問題である.utterly はなぜ否定的な音色を帯びるのか.この問いに対して,否定的な語と共起することが多かったから utterly 自体も否定の音色を帯びるようになったという答えがあるかもしれない.しかし,そもそも否定的な語と共起することが多かったのはなぜなのか.それは utterly 自体が本来的に否定的な音色を帯びていたからではないか.まさに鶏が先か卵が先かの問題に陥ってしまう.このような場合の常として,(1) 本来的に否定的な性質と (2) 特定の否定的な語との頻繁な共起、という2つの要因が相互に作用した結果だろうという説明がもっとも穏健かもしれない.しかし,比較的最近,接尾辞 -ish の否定的な含意の獲得について歴史的な研究を行なった私にとっては,この問題は悩ましい問題である.McEnery et al. (84) もこの問題に触れている.

It might be argued that the negative (or less frequently positive) prosody that belongs to an item is the result of the interplay between the item and its typical collocates. On the one hand, the item does not appear to have an affective meaning until it is in the context of its typical collocates. On the other hand, if a word has typical collocates with an affective meaning, it may take on that affective meaning even when used with atypical collocates. As the Chinese saying goes, 'he who stays near vermilion gets stained red, and he who stays near ink gets stained black' --- one takes on the colour of one's company --- the consequence of a word frequently keeping 'bad company' is that the use of the word alone may become enough to indicate something unfavourable . . . .


 ・ Crystal, David, ed. A Dictionary of Linguistics and Phonetics. 6th ed. Malden, MA: Blackwell, 2008. 295--96.
 ・ Louw, B. 2000. "Contextual Prosodic Theory: Bringing Semantic Prosodies to Life." Words in Context: A Tribute to John Sinclair on his Retirement. Eds. C. Heffer, H. Sauntson and G. Fox. Birmingham: U of Birmingham, 2000.
 ・ McEnery, Tony, Richard Xiao, and Yukio Tono. Corpus-Based Language Studies: An Advanced Resource Book. London: Routledge, 2006.

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2011-02-24 Thu

#668. Chaucer の knight との脚韻語 [chaucer][bnc][collocation][kyng_alisaunder]

 Chaucer の全作品中,knight という語は90回以上,脚韻箇所に現われている.対応する脚韻語を調べ,さらにロンドンの方言で書かれた2つのロマンス Kyng AlisaunderArthur and Merlin でも同様に調べてみると,非常におもしろい事実が浮かび上がる.
 Chaucer で knight と脚韻を踏む語として5回以上現われるものに,might (32), wight (22), night (9), right (8), bright (5) がある.Kyng Alisaunder では高頻度のものには wiȝth, fiȝth, riȝth / miȝth があり,同じく Arthur and Merlin では ''fiȝt, riȝt, riȝth がある.脚韻語の分布をまとめたのが以下の図である(Burnley, p. 130 の図をもとに作成).

Chaucer's Rhymes with

 Chaucer の脚韻語は,高頻度のものを中心として大半が他の2つのロマンス作品と重複しており,全体として中英語ロマンスの伝統的な脚韻語を受け継いでいると解釈できる.一方で,Chaucer のみが用いている脚韻語もいくつか確認され,詩人の脚韻語の幅の広さが示唆される.
 しかし,比較によってしか得られない非常に興味深い事実がある.他のロマンス2作品,ひいては中英語ロマンス全体として,最も頻度が高い脚韻語とみなしてもよいと思われる fight が,Chaucer には一度も現われないのである.knightfight は縁語であり,collocation の度合いが高いことは自明であるから,Chaucer における不在は不自然とも思える.Burnley (131) は,脚韻語としての fight の不在は,Chaucer の選択した主題との関連もあるかもしれないが,おそらくは Chaucer が "a hackneyed rhyme" 「使い古された脚韻」とみなして意識的に避けたためだろうという.

Although he [Chaucer] was often content to employ familiar and traditional rhymes, there is also evidence of resourcefulness in seeking unusual rhymes, as well as of avoiding rhymes which might have proved unacceptable to his audience. (Burnley 131)


 詩人が用いた脚韻語ではなく,用いなかった脚韻語を指摘することで,その詩人の特徴や詩の言語に対する態度が浮き彫りになりうる好例である.何が不在なのか,何を用いなかったのかを知るには,他と比較しなければならない.対象の本質を知るには,それが置かれている環境を広く見渡す必要がある.文献学の神髄を見せられるような印象的な例である.
 ちなみに,knightfight の collocation は強かったに違いないと述べたが,それは中世での話しである.現代英語における両語の collocation は BNCweb で調べたところそれほど顕著ではない.名詞 knight の前後5語以内に fight が現われる頻度はコーパス中で10回きりである.ただし,[2010-03-23-1]の記事で触れた MI と T-score の値を見ると,それぞれ 3.5415, 2.8907 であり,collocation と認めてよい水準ではある.

 ・ Burnley, David. The Language of Chaucer. Basingstoke: Macmillan Education, 1983. 13--15.

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2010-03-23 Tue

#330. Cobuild Concordance and Collocations Sampler [corpus][bnc][cobuild][collocation]

 本ブログでは,オンラインで利用できる現代英語のコーパスとして,簡便に使える BNC ( The British National Corpus ),より本格的に使える BNCWeb(要無料登録)を紹介してきた.BNC はその名の如くイギリス英語専門のコーパスで,ほぼ1975年以降の英語が約1億語おさめられている.そのうち9割は書き言葉,1割は話し言葉という構成である.現在オンラインで利用できる最大級の規模の英語コーパスである.
 規模だけでいえば,もっと大きな英語コーパスが存在する.常に拡大を続けるモニターコーパス The Bank of English であり,その規模は5億5000万語にまで達する.BNC と異なり,イギリス英語だけでなくアメリカ英語を含めた他の変種もカバーしている.
 このうちの一部,約5600万語が Cobuild Concordance and Collocations Sampler としてオンラインで無料で公開されている.コンコーダンス・ラインは40行まで,コロケーションのスコア・ランキングは100位までしか出力されない「デモ版」ではあるが,検索語に簡単なタグ指定ができるなど,手軽な目的であれば十分に使える仕様だろう(有料版 Collins WordbanksOnline もあり).
 コロケーションのスコアとしては,T-score か MI ( Mutual Information ) かを選べる.[2010-03-04-1]でも触れたが,それぞれのスコアの特徴を簡単に述べる.

 ・ MI (mutual information): 共起する2語が持つ意味的特性に焦点が当てられる傾向がある.慣用句,ことわざ,複合語,専門用語など独特の言い回しを構成する語に高い値が与えられる.コーパスのサイズに依存しない.3以上の値をもって collocate しているとみなせるといわれる.イメージとしては,連想ゲーム的な語と語の関係が明らかになると考えるとよい ( = lexical collocation ).低頻度語が強調される傾向があり,独特でおもしろい結果になることがある.

 ・ T-score: collocation 強度そのものの指標というよりも,互いに関連があると言い切れる確信度の指標.コーパスのサイズが勘案されている.通常は,2以上の値でその collocation が統計的に有意とみなされる.特定の2語の共起頻度に焦点を当てるため,キーワードの前後に頻繁に生起する前置詞,不変化詞,人称代名詞,限定詞などの文法構造を満たすための語のほか,常套句や使い古されてしまった比喩,決まり文句などを構成する語が上位にランクインする.イメージとしては,主に文型や機能語の連語情報が明らかになると考えるとよい ( = grammatical collocation ) .

 コンコーダンスやコロケーションの出力は,英語の研究や学習のためだけでなく,汎用の発想ツール,連想ツールとしても使える.例えば,octopus のコロケーションの MI 値を出してみると,上位に squid, dried, october などが現れる.味わい深い.

 ・ 鷹家 秀史,須賀 廣 『実践コーパス言語学』 桐原ユニ,1998年.113--15頁.

Referrer (Inside): [2011-03-03-1] [2011-02-24-1]

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2010-03-04 Thu

#311. girl とよく collocate する形容詞は何か [corpus][collocation][bnc]

 コーパスを使った collocation 研究は多い.しかし自分では行ったことがなかったので,McEnery et al. (56--57, 210--20) を参考にしつつ,自らお題を一つ掲げて collocation 研究のさわりを試してみた.特に collocation にかかわる様々な統計指標の特徴に注意してみたい.
 お題は「girl とよく collocate する形容詞は何か」.使用するコーパスは BNCWebgirl の左側3語までに現れる形容詞を検索対象とし,collocation の強度を示す様々な指標を出して,指標ごとに上位20個までの形容詞を一覧にしたのが下表である.

Rankraw frequencyobserved/expectedt-scorez-scorelog-likelihoodMIMI3
1little15-year-oldlittlelittlelittle15-year-oldlittle
2young16-year-oldyoungyoungyoung16-year-oldyoung
3thatdark-hairedgood15-year-oldgooddark-hairedgood
4this13-year-oldthatdark-hairedclever13-year-oldclever
5goodnine-year-oldthis16-year-oldpoornine-year-oldpretty
6one14-year-oldoldcleverpretty14-year-oldthat
7oldfour-year-oldpoorprettyoldfour-year-old15-year-old
8otheryear-oldotherteenagethatyear-olddark-haired
9poorcleverclever13-year-oldbeautifulcleverpoor
10cleverteenageonenine-year-oldlovelyteenage16-year-old
11beautifulblondeprettyfour-year-oldgoldenblondethis
12prettyprettybeautifulheadniceprettyold
13smallheadnice14-year-old15-year-oldheadbeautiful
14anylittlelovelypoorteenagelittleteenage
15niceweebigblondedark-hairedweelovely
16bigeldestsmallgoodheadeldesthead
17anotherbravegoldengolden16-year-oldbravegolden
18lovelygoldentallbeautifultallgoldennice
19newsillydearlovelythissillytall
20goldenyoungteenageyear-olddearyoungblonde


 各指標の読み方を以下にメモ.

 ・ raw frequency: コーパス内の総頻度.統計計算を加える前のベースとなる値で,それ自体は collocation の強度計測にはほとんど役に立たない.
 ・ observed/expected: 偶然に collocate している可能性からどれだけ隔たっているか.collocation の指標としては粗い.
 ・ t-score: 広く使われる指標.コーパスのサイズが勘案されている.通常は,2以上の値でその collocation が統計的に有意とみなされる.collocation 強度そのものの指標というよりも,互いに関連があると言い切れる確信度の指標.(後記 2010/03/21(Sun):特定の2語の共起頻度に焦点を当てるため,キーワードの前後に頻繁に生起する前置詞,不変化詞,人称代名詞,限定詞などの文法構造を満たすための語のほか,常套句や使い古されてしまった比喩,決まり文句などを構成する語が上位にランクインする.つまり,主に文型や機能語の連語情報 [ grammatical collocation ] に寄与する.)
 ・ z-score: 両語それぞれのコーパス中の全頻度を勘案したうえで,その collocation が期待値よりどれだけ高い頻度で現れているかを示す.広く使われている指標だが,データが正規分布をなすとの前提に立っており,多くの場合に必ずしも適切でない.コーパスが巨大か,あるいは(たいてい関心を引かない)超高頻度語を対象にするのでない限り,問題が生じうる.低頻度語が強調される傾向がある.
 ・ log-likelihood (LL test): データの正規分布を前提としない.コーパスのサイズが小さめでも有効.高頻度語にも低頻度語にも有効.手堅い統計値.
 ・ MI (mutual information): LL ほど統計的に厳格ではないが,z-score や LL の代替指標として広く使われている.3以上の値をもって collocate しているとみなせるといわれる.負の値が出ると,むしろ両語が背反し合うという意味になる.コーパスのサイズに依存しない.z-score と同様に低頻度語が強調される傾向がある.unique collocation を知るなど辞書学的な用途には役立つ指標だが,英語教育用には不向き.(後記 2010/03/21(Sun):共起する2語が持つ意味的特性に焦点が当てられる傾向がある.慣用句,ことわざ,複合語,専門用語など独特の言い回しを構成する語に高い値が与えられる.)
 ・ MI3: MI の低頻度語を強調しがちな傾向を補正した指標の一つ.英語教育用に向いている.同様の趣旨の指標として,log-log test というものもある.

 正直なところ,どう読み解けばいいのかよくわからない(あくまで練習題なので・・・).little, young, good, clever などいずれの指標でもランクの高いものはあり,これらは明らかに強い collocation ありとみなしてよいだろう.ほかには, z-score や MI が 15-year-old などの影響を激しく反映しているのに対して,手堅い log-likelihood や補正済みの MI3 の値は -year-old を比較的よくはじいていることがわかる.このことから,-year-oldgirl とよく collocate することは確かながらも,いくつかの指標が示唆するような最上位のランクであるというのは言い過ぎであるといえそうである.MI値の上位にはやや個性的と思われる形容詞も含まれており,若干くせのある値だということも肌で感じることができた.だが,統計値の解読はなかなかに難しい・・・.

 ・ McEnery, Tony, Richard Xiao, and Yukio Tono. Corpus-Based Language Studies: An Advanced Resource Book. London: Routledge, 2006.

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