hellog〜英語史ブログ

#311. girl とよく collocate する形容詞は何か[corpus][collocation][bnc]

2010-03-04

 コーパスを使った collocation 研究は多い.しかし自分では行ったことがなかったので,McEnery et al. (56--57, 210--20) を参考にしつつ,自らお題を一つ掲げて collocation 研究のさわりを試してみた.特に collocation にかかわる様々な統計指標の特徴に注意してみたい.
 お題は「girl とよく collocate する形容詞は何か」.使用するコーパスは BNCWebgirl の左側3語までに現れる形容詞を検索対象とし,collocation の強度を示す様々な指標を出して,指標ごとに上位20個までの形容詞を一覧にしたのが下表である.

Rankraw frequencyobserved/expectedt-scorez-scorelog-likelihoodMIMI3
1little15-year-oldlittlelittlelittle15-year-oldlittle
2young16-year-oldyoungyoungyoung16-year-oldyoung
3thatdark-hairedgood15-year-oldgooddark-hairedgood
4this13-year-oldthatdark-hairedclever13-year-oldclever
5goodnine-year-oldthis16-year-oldpoornine-year-oldpretty
6one14-year-oldoldcleverpretty14-year-oldthat
7oldfour-year-oldpoorprettyoldfour-year-old15-year-old
8otheryear-oldotherteenagethatyear-olddark-haired
9poorcleverclever13-year-oldbeautifulcleverpoor
10cleverteenageonenine-year-oldlovelyteenage16-year-old
11beautifulblondeprettyfour-year-oldgoldenblondethis
12prettyprettybeautifulheadniceprettyold
13smallheadnice14-year-old15-year-oldheadbeautiful
14anylittlelovelypoorteenagelittleteenage
15niceweebigblondedark-hairedweelovely
16bigeldestsmallgoodheadeldesthead
17anotherbravegoldengolden16-year-oldbravegolden
18lovelygoldentallbeautifultallgoldennice
19newsillydearlovelythissillytall
20goldenyoungteenageyear-olddearyoungblonde


 各指標の読み方を以下にメモ.

 ・ raw frequency: コーパス内の総頻度.統計計算を加える前のベースとなる値で,それ自体は collocation の強度計測にはほとんど役に立たない.
 ・ observed/expected: 偶然に collocate している可能性からどれだけ隔たっているか.collocation の指標としては粗い.
 ・ t-score: 広く使われる指標.コーパスのサイズが勘案されている.通常は,2以上の値でその collocation が統計的に有意とみなされる.collocation 強度そのものの指標というよりも,互いに関連があると言い切れる確信度の指標.(後記 2010/03/21(Sun):特定の2語の共起頻度に焦点を当てるため,キーワードの前後に頻繁に生起する前置詞,不変化詞,人称代名詞,限定詞などの文法構造を満たすための語のほか,常套句や使い古されてしまった比喩,決まり文句などを構成する語が上位にランクインする.つまり,主に文型や機能語の連語情報 [ grammatical collocation ] に寄与する.)
 ・ z-score: 両語それぞれのコーパス中の全頻度を勘案したうえで,その collocation が期待値よりどれだけ高い頻度で現れているかを示す.広く使われている指標だが,データが正規分布をなすとの前提に立っており,多くの場合に必ずしも適切でない.コーパスが巨大か,あるいは(たいてい関心を引かない)超高頻度語を対象にするのでない限り,問題が生じうる.低頻度語が強調される傾向がある.
 ・ log-likelihood (LL test): データの正規分布を前提としない.コーパスのサイズが小さめでも有効.高頻度語にも低頻度語にも有効.手堅い統計値.
 ・ MI (mutual information): LL ほど統計的に厳格ではないが,z-score や LL の代替指標として広く使われている.3以上の値をもって collocate しているとみなせるといわれる.負の値が出ると,むしろ両語が背反し合うという意味になる.コーパスのサイズに依存しない.z-score と同様に低頻度語が強調される傾向がある.unique collocation を知るなど辞書学的な用途には役立つ指標だが,英語教育用には不向き.(後記 2010/03/21(Sun):共起する2語が持つ意味的特性に焦点が当てられる傾向がある.慣用句,ことわざ,複合語,専門用語など独特の言い回しを構成する語に高い値が与えられる.)
 ・ MI3: MI の低頻度語を強調しがちな傾向を補正した指標の一つ.英語教育用に向いている.同様の趣旨の指標として,log-log test というものもある.

 正直なところ,どう読み解けばいいのかよくわからない(あくまで練習題なので・・・).little, young, good, clever などいずれの指標でもランクの高いものはあり,これらは明らかに強い collocation ありとみなしてよいだろう.ほかには, z-score や MI が 15-year-old などの影響を激しく反映しているのに対して,手堅い log-likelihood や補正済みの MI3 の値は -year-old を比較的よくはじいていることがわかる.このことから,-year-oldgirl とよく collocate することは確かながらも,いくつかの指標が示唆するような最上位のランクであるというのは言い過ぎであるといえそうである.MI値の上位にはやや個性的と思われる形容詞も含まれており,若干くせのある値だということも肌で感じることができた.だが,統計値の解読はなかなかに難しい・・・.

 ・ McEnery, Tony, Richard Xiao, and Yukio Tono. Corpus-Based Language Studies: An Advanced Resource Book. London: Routledge, 2006.

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