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2026-07-22 Wed
■ #6295. 『なぜさんたんげん』発売から42日 --- 特設HPが「ポータルサイト」へと成長・進歩を遂げています [notice][voicy][heldio][link][helkatsu][nazesantangen][review][links][nazesantangen_witness][nhkpb]

6月10日(水)の『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)の刊行から,早くも6週間が経ちました.おかげさまで,発売前増刷に始まり,現在も全国の書店で第2刷が展開されるなど,大変大きな反響をいただいております.読者の皆様,そして日々盛り上げてくださっているヘルメイトの皆さん,ありがとうございます.
さて,本日は刊行と同時に立ち上げた『なぜさんたんげん』特設HPについて改めてご紹介します.本書特設サイトとしてスタートしたこの Web ページですが,発売後のこの1ヶ月あまり,ほぼ毎日にわたってコンテンツを更新・追加してきた結果,単なる新刊紹介の域を超え,文字通り『なぜさんたんげん』を取り巻く公式ポータルサイトへと進化を遂げています.
サイト上のアクセスカウンターも,本記事の執筆時には2493アクセスを記録しており,連日多くの方にお越しいただいています.改めて,現在の特設HPがどのような充実した構成になっているのか,その見どころをご案内します.
1. 豪華陣容による反響・推薦の声:英語史研究者の寺澤盾先生(青山学院大学教授,東京大学名誉教授)からお寄せいただいた特別寄稿レビューをはじめ,杏林大学の倉林秀男先生による4連スレッド・ロングレビュー,慶應義塾大学の川原繁人先生,九州大学の内田諭先生,上智大学の小河舜先生といった専門家による熱い推薦コメントを掲載しています.さらに,SNS や note,ブクログ等で寄せられた読者の皆さんの生の声を凝縮して掲載しています.
2. 連動メディア・コンテンツへのリンク:著者自身による本文の公式朗読音声ページへのリンクのほか,NHK出版編集者の田中菜乃香さんとの Voicy 対談全7回,リスナー川上さん企画「聞かせて!『なぜさんたんげん』のなぜ」シリーズ,さらには在外の著者による現地からの最新 YouTube ミニ動画など,本と立体的に連動する音声・動画コンテンツへワンクリックでアクセスできます.
3. 全目次 & インテリジェントリアルタイム検索機能: 本書に詰め込まれた24の疑問とすべての章・節・小見出しを完全網羅.ページ上の検索窓にキーワード(例:「屈折」「マジックe」「語順」など)を入力すると,瞬時に該当するトピックが絞り込まれる便利なシステムを実装しています(←生成AIを用いて密かに実装しているのですが,ほとんど知られていません).
4. 「24の疑問・総選挙」最終結果: 発売前に実施し,投票総数96件を集めた Slido 総選挙の確定順位を全公開しています.堂々1位の「なぜ3単現の s をつけるのか」から,予想外の健闘を見せた「Z のミステリー」まで,読者のモヤモヤ度が一目でわかります.
5. なぜさんたんげん目撃マップ & 全国書店棚ギャラリー: 読者の皆様から寄せられた全国各地の目撃情報をもとに作成した Google Map (すでに100ピン近く立っています)と,撮影許可をいただいた全国の書店様の愛あふれる売り場写真をズラリと展示しています.すでに50枚以上の書棚写真が掲載されています.
6. 授業用「英語史無料レジュメ」& 店頭用POPポスター配布: 全国の中学・高校・大学の先生方が授業や学年通信でそのまま配れる特製 PDF レジュメ第1弾(「なぜ3単現の s をつけるのか」)や,書店員様向けの印刷用販促ポスター(A4/B5対応PDF/PNG)を無料配布しています.
『なぜさんたんげん』は,本を開いて読むだけでも完結する1冊ですが,この特設HPを経由して,読者の皆さんの感想,著者による音声や動画のコンテンツ,全国の書店の様子とつながることで,何倍も深く立体的に体験できる「開かれた本」となっています.
まだ特設サイトをご覧になっていない方は,ぜひ一度覗いてみてください.そして,ぜひ周りの英語学習者や先生方,本好きのご友人にも,このポータルサイトのリンクをシェアしていただけますと幸いです.
学校英語の「呪文」の向こう側にある驚くべき歴史の物語を,一緒に目撃していきましょう!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
2026-07-21 Tue
■ #6294. 「研究者配信のポッドキャスト」広がる --- 7月14日日経新聞夕刊(10ページ)より [voicy][heldio][helwa][hellog][helkatsu]
標題の記事が掲載されていることを heldio リスナーの ykagata より教えていただき,記事全文を読んでみました.記事のリード文は次の通りです.
大学などの研究者がポッドキャストを配信する動きが広がっている。高度な内容を平明に伝える番組にはファンも付く。専門知の伝達チャネルとして音声メディアが存在感を増している。」
記事は,犯罪学・刑事政策をテーマとする丸山泰弘さん(立正大学教授)のポッドキャストチャンネル「丸ちゃん教授のツミナハナシ」の紹介に始まり,研究者によるいくつかのポッドキャストが言及されていきます.その他,記事には「研究者がパーソナリティの番組」の一覧表が掲げられているのですが,そのトップに私のチャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」が挙げられており,驚きました.ありがたいことです.

記事は次のように締めくくられています.
音声広告会社オトナル(東京・中央)の調査では月1回以上ポッドキャストを聴く人の割合は25年に18%で、増加傾向が続く。アカデミックナポッドキャストはこれからさらに広がっていきそうだ。
この記事を読んで,そして heldio やそのプレミアム版「英語史の輪 (helwa)」の音声配信に日々携わっている身として,とても感慨深いものがあります.「知の伝達,活字から声へ」という視点は,長年目指してきた「英語史をお茶の間に」というモットーの実現とも深く関わってくるからです.
活字離れが叫ばれる現代において,文字情報としての本ブログ「hellog~英語史ブログ」を毎日更新し続ける一方で,2021年からは毎朝の音声配信 heldio を開始しました.これは私にとってもひとつの大きな実験でした.今では,文字による深い解説と,声による平明で血の通った解説.今では,この2つのメディアは,決して対立するものではなく,お互いを補完し合う強力なペアになり得るという確信があります.
実際,heldio のリスナーコミュニティであるヘルメイトの皆さんとの繋がりや,そこから生まれる様々な「hel活」 (helkatsu) は,まさに「声」のメディアが媒介となって生まれたものです.音声を通じて,学問に近づくためのハードルを下げ,双方向の知的コミュニケーションの触媒になっているのです.
専門知をアカデミアの内部だけに閉じ込めておくのではなく,いかにして社会へアウトリーチしていくか.これは現代の研究者に課された重要な課題です.ポッドキャストというパーソナルで親密なメディアは,そのための最も強力な武器のひとつと言えます.
これからも,hellog による「文字」の蓄積と,heldio による「声」のダイナミズムの両輪で,英語史の魅力を発信し続けていきます.読者の皆さん,リスナーの皆さん,引き続きお付き合いのほど,よろしくお願いします.
ykagata さんによる7月16日公開の関連 note 記事「日本経済新聞が紹介した7つの「研究者配信のポッドキャスト」まとめ」もお読みください.
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2026-07-20 Mon
■ #6293. 皆さん『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)をどのように使っていますか? [notice][hee][review][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio][kdee]
先日「#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談」 ([2026-07-05-1]) で話題にしたとおり,6月18日に『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されて1年となり,6月30日には物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版も発売されました(アプリ版利用は現時点でiOS ユーザーのみ).
このような節目のタイミングに,冊子版・アプリ版を普段からご愛用いただいているヘビーユーザーの方々に,この1年間ハンドブック利用の感想をうかがえればという趣旨で,先日,Voicy heldio 対談回を設定しました.司会は,heldio ではお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)にお願いしました.7月14日の heldio で「#1871. 『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)の使用感をヘビーユーザーの皆さんに聞いてみました」として配信していますので,アーカイヴよりお聴きください.以下は対談回の要旨です.
対談の冒頭では,何といってもアプリ版の登場によって検索の利便性が飛躍的に向上したことが大きな話題となりました.毎日 note でハンドブックを元に記事を執筆されているみーさんは,冊子版のみでは出先での執筆の際に不便を感じることがあったようですが,アプリ版の導入によっていつでもどこでも参照できるようになり,まさに「必携の書」として使い倒しているとのことです.物書堂さんのアプリらしく,『英語語源ハンドブック』で調べた後にそのままワンタップで『ジーニアス英和辞典』のような他の辞書へポンとジャンプできる参照機能や,解説文中の「グリムの法則」といった専門用語から関連箇所へ直接飛べるジャンプ機能の快適さについても熱く語っていただきました.さらに,デジタルならではの利点として,表や記述をそのままコピペして note の参照として取り出せる点も,アウトプットを継続するユーザーにとってはたいへん有益のようです.
うろ覚えの状態で検索する際の「全文検索機能」の強力さについては,しーさんから,地の文のキーワードまで引っかかるので,なんとなくこの辺りにあったという項目からでも探しやすく,人間の記憶に優しい仕様である,との実践的な評価をいただきました.実は私自身は Android ユーザーであるため,まだアプリ版を体験できていないもどかしさを抱えつつも,もしこのような利便性が『英語語源ハンドブック』のみならず『英語語源辞典』のほうでも得られれば,情報量の多さゆえに完全に「語源の森」から抜け出せなくなって迷子になってしまうのではないかと,嬉しくもぞっとするような想像をめぐらせた次第です.
また,英語教師としての視点からユニークなレビューを寄せてくださったのが ari さんです.ari さんは,画面を自由に拡大できる視覚的な利便性に加え,本ハンドブックに載っているかどうかを,自分が授業で話す内容が一般的な範囲か,あるいはそれ以上の趣味の領域に踏み込んでいるかを見極めるための試金石として活用しているといいます.さらに,地方の書店をめぐって冊子版が2刷か3刷かなどの状況を独自に調査していた経験から,アプリ版であればどこにいても常に最新の記述が手元に届くという,新しい角度からのメリットも指摘されました.
一方で,アプリ版の引きやすさが際立つ一方で,冊子版がもつ特有の価値についても深い議論が交わされました.yuz さんからは,-fy などの接尾辞をもつ単語を検索して派生語を一網打尽にできるのは電子ならではの楽しさ,というニッチな使い方が紹介されましたが,しーさんや yuz さんが口を揃えるのは,パラパラとめくりながら余白に書き込みしていけるという,紙の本ならではの使い心地のよさです.ハンドブックは,一般的な語源辞典と違って基本1000語に絞り込んで読み物として作られているため,最初からアプリだけで入るよりも,紙でじっくりと通読して全体のネットワークを頭に入れてからアプリの全文検索を活用するほうが,そのありがたみをより深く実感できるのかもしれない,と感じました.
あまねちゃんからは,本ハンドブックを読むことで初めて知った知識の数々 --- たとえば winter がかつては年(歳)を数える単位であったことや,have と catch が実は同根語であることなど --- が具体的に挙げられ,見出し語こそ基本語でありながらも,縦と横のつながりによって英語史の深みへのめり込める格好のジャンプ台になっているとの嬉しいコメントをいただきました.専門家の立場から日々『英語語源辞典』を読み込んでいる寺澤志帆さんからも,専門書特有の略記号や前提知識の壁を,専門家が苦心して噛み砕いて展開したのが本ハンドブックであり,両者を見比べることで語彙のつながりがより良く見えてくるという評価をいただきました.
対談の締めくくりとして,orangemorishita さんからは,紙の辞典におけるレイアウトの完成度を電子化する際のノウハウや,媒体の機能性に精通したエキスパートの必要性,そして何より老眼が進む世代にとっての拡大機能のありがたみについてもユーモアを交えて語っていただきました.
結論としては,司会の Taku さんや著者陣の思いと同じく,ぜひ冊子版とアプリ版の両方を手に入れて,それぞれの特徴を活かして使い倒していただきたい,ということに尽きます.
さて,『英語語源ハンドブック』アプリ版は通常価格3,800円のところ,発売日より3週間,つまり明日7月21日(火)までは「初回セール期間」として,2,800円(26%オフ)とお得になっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックも入手いただき,使い倒していただければと思います.商品の詳細はこちらよりどうぞ.
今後も冊子版・アプリ版ともにご愛読いただけますよう,よろしくお願いします.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
2026-07-19 Sun
■ #6292. 7月25日(土)の朝カル講座「king を探って古英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu][heldio][oe][kochushoho][anglo-saxon_chronicle][alfred][viking][suffix][indo-european][word_family][link][voicy][kdee][hee][kenning][beowulf][haplology][phonemicisation][lexicology][lexical_stratification]

7月25日(土) 15:30--17:00 に,今年度4回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」としては通算第16回目の講義となります.今回は「king を探って古英語原文の世界へ」と題して,この大物単語に迫ります.
現代英語の king は一見すると素朴な日常語ですが,英語史・語源学の観点からその歴史を紐解くと,実にダイナミックで奥深い世界が広がっています.今回の講座では,主に3つの切り口からこの「王」を意味する単語を解読していきます.
第1のポイントは,印欧語根 *gen(e)- から生み出される広大な語彙の世界です.実は king は,kin (親族)や kind (種類;親切な)などと共通の大きな語根に遡る派生語です.いつものように『英語語源辞典』 や『英語語源ハンドブック』 などの記述を突き合わせながら,印欧語根にまで遡る壮大な単語の家族のつながりを眺めていきます.接尾辞 -ing の歴史についても深掘りします.この辺りは『英語語源辞典』読み方講座に近い内容となります.
第2のポイントは,古英語期に花開いた「王」の隠喩的複合語,いわゆるケニング (kenning) の世界です.古英語の英雄詩『ベオウルフ』 (beowulf) などを覗くと,王を単に cyning ("king" の古英語形)と呼ぶだけでなく,「指輪をくれる者」 (bēagġyfa) や「黄金の友」 (goldwine) といった詩的な数々の類義語で表現していました.文学的に爛熟した多彩な語彙の魅力を味わいます.
第3のポイントは,king 周辺の語彙論と同単語の語形変化です.なぜ king と queen はノルマン征服以降の大量のフランス借用語の波に置き換えられずに生き残ることができたのか,という問題にも触れます.また,かつての古英語の綴字 <c> から中英語の <k> への変化や,軟口蓋鼻音の音素化といった,綴字と発音のダイナミックな変化についても解説します.
講義の後半には,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)に所収の古英語散文的スト『アングロサクソン年代記』より,アルフレッド大王 (King Alfred) がデーン人(ヴァイキング)との戦いに備えているシーンの短い抜粋部分を読んでみます.丁寧に解説していきますので,古英語初心者の方でも心配要りません.また,上掲書をお持ちでなくても講義資料で関連箇所を引用しますのでご安心ください.
講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,次回以降の日程と内容は次の通りです.
・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ
いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
2026-07-18 Sat
■ #6291. 和製英語と語順(文法)にまで話題が及んできました --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ第13弾 [note][hee][helkatsu][hel_education][quiz][waseieigo][word_order][nazesantangen]
heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』に基づいた「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,快進撃を続けています.隔週土曜日に新作が公開されることになっており,最新回は1週間前の7月11日に公開された第13弾「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#13~和製英語・語順~」です.
今回公開された第13弾は,タイトルにもあるように「和製英語」と「語順」という,中学生にとっても身近でありながら英語史的にも奥深いテーマにまで話題が及んできました.ネタバレにならない程度にクイズ問題のラインナップを要約します.
まずは日常単語の語源を取り上げての軽いジャブから始まり,句動詞のクイズへと展開します.そして,今回の注目ポイントの1つとして,私たちが日常的に使っているカタカナ語の意外な罠を突く和製英語の謎が問われます.さらに,意味変化や語彙交替という英語史の色彩の濃いトピックに移り,最後には英語の語順の歴史的変遷へと導く文法的な問いに至ります.全体が見事なグラデーションで構成されています.単純な単語問題から,英語の統語構造の背景にまで自然と知的好奇心を誘う流れになっており,クイズ職人としての sorami さんの手腕に今回も感心しました.
とりわけ語順に関する話題は,英語史における最重要テーマの1つです.現代英語は語順が厳格に固定された言語ですが,かつての古英語期には名詞の格変化が豊かだったため,語順は比較的自由でした.歴史の過程で屈折語尾が衰退した結果,語順が文法機能を担うようになり,現代のような固定語順が確立していったのです.このあたりの語順や文法をめぐるダイナミックな変化については,先月刊行されたばかりの私の新刊書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)でも詳しく解説しています.今回の sorami さんのクイズと合わせて本書をお読みいただくことで,「英語のなぜ」の背景にある歴史のロマンがより立体的に見えてくるはずです.本書もどうぞよろしくお願いします.
いつもの通り,sorami さんの note 記事では,「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と述べられています.全国の英語教員の皆さん,ぜひこのクイズを実際の学校の授業などで活用してみてください.ALTの先生を巻き込んでペアワークやグループ活動に導入すれば,教室が大いに盛り上がることは間違いありません.
出題や解説にあたっては,原則として『英語語源ハンドブック』に依拠しているということですので,その点もご安心ください.専門的な知見に基づいた信頼できるクイズだからこそ,自信をもって教材としてお使いいただけます.この素晴らしいクイズシリーズが,さらに多くの教育現場へと広がっていくことを願っています!
第13弾については,先日の Voicy heldio でも取り上げました.ぜひ「#1870. 和製英語と語順にフォーカス --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第13弾」をお聴きいただければ.
関連して,最後に1つお知らせです.6月30日に,物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版が発売されました(アプリ版を利用できるのは iOS ユーザーのみとなります).通常価格は3,800円ですが,発売日より3週間,7月21日までは「初回セール期間」となっており,セール期間の価格は2,800円と(26%オフ)となっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックもご活用いただければと思います.詳細はこちらよりどうぞ.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
2026-07-17 Fri
■ #6290. 月刊誌『英語教育』の「いのほた連載」第5回 --- 英語と日本語の語彙の3層構造 [inohota][youtube][inohota_rensai][notice][lexical_stratification][lexicology][japanese][loan_word][french][latin][synonym][nazesantangen][contact]

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7月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の7月号が刊行されました.今年度,同雑誌において,YouTube 「いのほた言語学チャンネル」でご一緒している同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を担当しています.
最新号の第5回の記事は,私が主に執筆しました.タイトルは「英語と日本語の語彙の3層構造」です.新刊『英語語源で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)の第4章第1節「なぜ英語には類義語が多いのか」で注目した話題をご紹介しています.
英語は語彙が豊富で,類義語も多い言語です.諸言語の最大の辞書の見出し語数で比べてみても,英語は少なく見積もっても60万語(実際には優にその数倍はあると予想されます)と,他の主要な言語を大きく引き離しています.たとえば「尋ねる」を意味する基本的な動詞に ask がありますが,ほかにも inquire や interrogate といった類義語がいくつも存在します.英語に類義語が多い理由は,歴史における他言語との接触の累積によって,語彙の階層構造ができあがってきたことにあります.
古英語期には,アングロサクソン人が用いていた本来の英単語 ask だけで,一般的な「尋ねる」の意味がおよそまかなわれていました.しかし,1066 年のノルマン征服(フランス北部のノルマン人がイングランドを征服した事件)の余波により,支配層の言語となったフランス語から inquire という語が英語に流入しました.さらに初期近代英語期に入ると,ルネサンス期を特徴づける古典語への関心の高まりにより,権威あるラテン語から interrogate が持ち込まれました.こうして,文化的香りの高いラテン借用語を頂点とし,その下にノルマン征服を象徴するフランス借用語が位置づけられ,さらにその下に被支配者の言語としての英語本来語が置かれる,ピラミッド風の3層構造が英語語彙において確立したのです.
記事では,他の具体的な例を列挙し,対応する日本語における語彙階層についても触れました.両言語に見られる語彙の階層構造は,各言語の言語接触の歴史の生き証人なのです.過去から現代に至るまで,ことばがいかに社会の影響を受けて変容してきたのかに関心のある方は,ぜひ今回の『英語教育』の連載記事や新刊『なぜさんたんげん』の扉も叩いてみてください.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第5回 「英語と日本語の語彙の3層構造」『英語教育』2026年8月号,大修館書店,2026年7月14日.44--45頁.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
2026-07-16 Thu
■ #6289. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に3度目の登場 [notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen][politeness][sociolinguistics][honorific][hedge]
人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が,先々週と先週に引き続き3度目(最終回)の出演です.堀元さんが熱血教師,井上さんと水野さんが生徒に扮する,驚きの教室コントのシチュエーションで,堀元先生が「いのほた言語学チャンネル」の編集にアドバイスを加えつつ,YouTuber 論を語るという異色の回です.抱腹絶倒の36分ですが,極上の YouTube 制作技術論かつメディア論となっています.動画公開からの初速も著しく,とんでもなく注目されています!
今回の動画を視聴して感じたのは,コントの枠を超えて堀元さんの「YouTube 哲学・技術論」の結晶となっていたということです.その裏で,とりわけ印象深かったのは,井上さんが語った知の流れ方の大変化,ひいては学術とメディアの関係の革命という視点です.井上さんによれば,大学という権威の象徴が民を啓蒙するという20世紀型の中央集権的なスタイルは終わりを告げ,21世紀はアルゴリズム型の分散型社会へと移行しています.学術についても,もはや本や雑誌という媒体だけでは立ちゆかない時代が到来していると,私も考えています.
動画のなかで堀元さんが放った「YouTube は学校じゃねえんだよ」という言葉は,本質を突いています.YouTube には視聴維持率の戦いがあるけれども,授業にはそれがありません,最初の数秒で引きつけ,1文字でも無駄な情報を削り,スマホの画面で省略されない短いタイトルに引きのある情報を詰め込む --- この「手前に引きのある情報をもってくる」という徹底的な技術論は,大学教員が必ずしも得意とするわけではないウケる発信の難しさを浮き彫りにしています.
今回のゆる言語学ラジオ回で,大学教授が「もっとおもしろくしたい」「YouTuber として数字を出したい」とプロのアドバイスを真摯に仰ぐ姿勢は,きわめて珍しいことです.研究者からの YouTube 等の新メディアでの発信が当たり前になってくる時代は,まだ数年先のことかもしれませんが,間違いなく到来するだろうと思っています.
井上・堀田は職業 YouTuber ではありません.動画内で堀元さんが「YouTuber は怒りと憎しみを食って大きくなる生き物だ」「視聴者を騙せ」と述べているような方向性を追い求める生き方は不可能です.私たちが目指しているのは,学問の魅力で世の中の人々の知的好奇心を刺激することです.プロ YouTuber のアドバイスはありがたくちょうだいしつつ,基本は学問のおもしろさを元気に長く伝えていく継続性こそが大事なのだろうと,改めて認識した次第です.
「ゆる言語学ラジオ」のお二方には,言語学という分野をここまで盛り上げ,さらに私たちを収録にお呼びいただいた旨,改めて深く感謝します.抱腹絶倒のコントの裏にある YouTuber 論を,ぜひ皆さんも視聴して味わってみてください.
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