先日「#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談」 ([2026-07-05-1]) で話題にしたとおり,6月18日に『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されて1年となり,6月30日には物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版も発売されました(アプリ版利用は現時点でiOS ユーザーのみ).
このような節目のタイミングに,冊子版・アプリ版を普段からご愛用いただいているヘビーユーザーの方々に,この1年間ハンドブック利用の感想をうかがえればという趣旨で,先日,Voicy heldio 対談回を設定しました.司会は,heldio ではお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)にお願いしました.7月14日の heldio で「#1871. 『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)の使用感をヘビーユーザーの皆さんに聞いてみました」として配信していますので,アーカイヴよりお聴きください.以下は対談回の要旨です.
対談の冒頭では,何といってもアプリ版の登場によって検索の利便性が飛躍的に向上したことが大きな話題となりました.毎日 note でハンドブックを元に記事を執筆されているみーさんは,冊子版のみでは出先での執筆の際に不便を感じることがあったようですが,アプリ版の導入によっていつでもどこでも参照できるようになり,まさに「必携の書」として使い倒しているとのことです.物書堂さんのアプリらしく,『英語語源ハンドブック』で調べた後にそのままワンタップで『ジーニアス英和辞典』のような他の辞書へポンとジャンプできる参照機能や,解説文中の「グリムの法則」といった専門用語から関連箇所へ直接飛べるジャンプ機能の快適さについても熱く語っていただきました.さらに,デジタルならではの利点として,表や記述をそのままコピペして note の参照として取り出せる点も,アウトプットを継続するユーザーにとってはたいへん有益のようです.
うろ覚えの状態で検索する際の「全文検索機能」の強力さについては,しーさんから,地の文のキーワードまで引っかかるので,なんとなくこの辺りにあったという項目からでも探しやすく,人間の記憶に優しい仕様である,との実践的な評価をいただきました.実は私自身は Android ユーザーであるため,まだアプリ版を体験できていないもどかしさを抱えつつも,もしこのような利便性が『英語語源ハンドブック』のみならず『英語語源辞典』のほうでも得られれば,情報量の多さゆえに完全に「語源の森」から抜け出せなくなって迷子になってしまうのではないかと,嬉しくもぞっとするような想像をめぐらせた次第です.
また,英語教師としての視点からユニークなレビューを寄せてくださったのが ari さんです.ari さんは,画面を自由に拡大できる視覚的な利便性に加え,本ハンドブックに載っているかどうかを,自分が授業で話す内容が一般的な範囲か,あるいはそれ以上の趣味の領域に踏み込んでいるかを見極めるための試金石として活用しているといいます.さらに,地方の書店をめぐって冊子版が2刷か3刷かなどの状況を独自に調査していた経験から,アプリ版であればどこにいても常に最新の記述が手元に届くという,新しい角度からのメリットも指摘されました.
一方で,アプリ版の引きやすさが際立つ一方で,冊子版がもつ特有の価値についても深い議論が交わされました.yuz さんからは,-fy などの接尾辞をもつ単語を検索して派生語を一網打尽にできるのは電子ならではの楽しさ,というニッチな使い方が紹介されましたが,しーさんや yuz さんが口を揃えるのは,パラパラとめくりながら余白に書き込みしていけるという,紙の本ならではの使い心地のよさです.ハンドブックは,一般的な語源辞典と違って基本1000語に絞り込んで読み物として作られているため,最初からアプリだけで入るよりも,紙でじっくりと通読して全体のネットワークを頭に入れてからアプリの全文検索を活用するほうが,そのありがたみをより深く実感できるのかもしれない,と感じました.
あまねちゃんからは,本ハンドブックを読むことで初めて知った知識の数々 --- たとえば winter がかつては年(歳)を数える単位であったことや,have と catch が実は同根語であることなど --- が具体的に挙げられ,見出し語こそ基本語でありながらも,縦と横のつながりによって英語史の深みへのめり込める格好のジャンプ台になっているとの嬉しいコメントをいただきました.専門家の立場から日々『英語語源辞典』を読み込んでいる寺澤志帆さんからも,専門書特有の略記号や前提知識の壁を,専門家が苦心して噛み砕いて展開したのが本ハンドブックであり,両者を見比べることで語彙のつながりがより良く見えてくるという評価をいただきました.
対談の締めくくりとして,orangemorishita さんからは,紙の辞典におけるレイアウトの完成度を電子化する際のノウハウや,媒体の機能性に精通したエキスパートの必要性,そして何より老眼が進む世代にとっての拡大機能のありがたみについてもユーモアを交えて語っていただきました.
結論としては,司会の Taku さんや著者陣の思いと同じく,ぜひ冊子版とアプリ版の両方を手に入れて,それぞれの特徴を活かして使い倒していただきたい,ということに尽きます.
さて,『英語語源ハンドブック』アプリ版は通常価格3,800円のところ,発売日より3週間,つまり明日7月21日(火)までは「初回セール期間」として,2,800円(26%オフ)とお得になっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックも入手いただき,使い倒していただければと思います.商品の詳細はこちらよりどうぞ.
今後も冊子版・アプリ版ともにご愛読いただけますよう,よろしくお願いします.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

7月25日(土) 15:30--17:00 に,今年度4回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」としては通算第16回目の講義となります.今回は「king を探って古英語原文の世界へ」と題して,この大物単語に迫ります.
現代英語の king は一見すると素朴な日常語ですが,英語史・語源学の観点からその歴史を紐解くと,実にダイナミックで奥深い世界が広がっています.今回の講座では,主に3つの切り口からこの「王」を意味する単語を解読していきます.
第1のポイントは,印欧語根 *gen(e)- から生み出される広大な語彙の世界です.実は king は,kin (親族)や kind (種類;親切な)などと共通の大きな語根に遡る派生語です.いつものように『英語語源辞典』 や『英語語源ハンドブック』 などの記述を突き合わせながら,印欧語根にまで遡る壮大な単語の家族のつながりを眺めていきます.接尾辞 -ing の歴史についても深掘りします.この辺りは『英語語源辞典』読み方講座に近い内容となります.
第2のポイントは,古英語期に花開いた「王」の隠喩的複合語,いわゆるケニング (kenning) の世界です.古英語の英雄詩『ベオウルフ』 (beowulf) などを覗くと,王を単に cyning ("king" の古英語形)と呼ぶだけでなく,「指輪をくれる者」 (bēagġyfa) や「黄金の友」 (goldwine) といった詩的な数々の類義語で表現していました.文学的に爛熟した多彩な語彙の魅力を味わいます.
第3のポイントは,king 周辺の語彙論と同単語の語形変化です.なぜ king と queen はノルマン征服以降の大量のフランス借用語の波に置き換えられずに生き残ることができたのか,という問題にも触れます.また,かつての古英語の綴字 <c> から中英語の <k> への変化や,軟口蓋鼻音の音素化といった,綴字と発音のダイナミックな変化についても解説します.
講義の後半には,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)に所収の古英語散文的スト『アングロサクソン年代記』より,アルフレッド大王 (King Alfred) がデーン人(ヴァイキング)との戦いに備えているシーンの短い抜粋部分を読んでみます.丁寧に解説していきますので,古英語初心者の方でも心配要りません.また,上掲書をお持ちでなくても講義資料で関連箇所を引用しますのでご安心ください.
講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,次回以降の日程と内容は次の通りです.
・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ
いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』に基づいた「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,快進撃を続けています.隔週土曜日に新作が公開されることになっており,最新回は1週間前の7月11日に公開された第13弾「授業で使える! 中学生向け英語語源クイズ#13~和製英語・語順~」です.
今回公開された第13弾は,タイトルにもあるように「和製英語」と「語順」という,中学生にとっても身近でありながら英語史的にも奥深いテーマにまで話題が及んできました.ネタバレにならない程度にクイズ問題のラインナップを要約します.
まずは日常単語の語源を取り上げての軽いジャブから始まり,句動詞のクイズへと展開します.そして,今回の注目ポイントの1つとして,私たちが日常的に使っているカタカナ語の意外な罠を突く和製英語の謎が問われます.さらに,意味変化や語彙交替という英語史の色彩の濃いトピックに移り,最後には英語の語順の歴史的変遷へと導く文法的な問いに至ります.全体が見事なグラデーションで構成されています.単純な単語問題から,英語の統語構造の背景にまで自然と知的好奇心を誘う流れになっており,クイズ職人としての sorami さんの手腕に今回も感心しました.
とりわけ語順に関する話題は,英語史における最重要テーマの1つです.現代英語は語順が厳格に固定された言語ですが,かつての古英語期には名詞の格変化が豊かだったため,語順は比較的自由でした.歴史の過程で屈折語尾が衰退した結果,語順が文法機能を担うようになり,現代のような固定語順が確立していったのです.このあたりの語順や文法をめぐるダイナミックな変化については,先月刊行されたばかりの私の新刊書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)でも詳しく解説しています.今回の sorami さんのクイズと合わせて本書をお読みいただくことで,「英語のなぜ」の背景にある歴史のロマンがより立体的に見えてくるはずです.本書もどうぞよろしくお願いします.
いつもの通り,sorami さんの note 記事では,「授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と述べられています.全国の英語教員の皆さん,ぜひこのクイズを実際の学校の授業などで活用してみてください.ALTの先生を巻き込んでペアワークやグループ活動に導入すれば,教室が大いに盛り上がることは間違いありません.
出題や解説にあたっては,原則として『英語語源ハンドブック』に依拠しているということですので,その点もご安心ください.専門的な知見に基づいた信頼できるクイズだからこそ,自信をもって教材としてお使いいただけます.この素晴らしいクイズシリーズが,さらに多くの教育現場へと広がっていくことを願っています!
第13弾については,先日の Voicy heldio でも取り上げました.ぜひ「#1870. 和製英語と語順にフォーカス --- sorami さんの『英語語源ハンドブック』クイズ・シリーズ第13弾」をお聴きいただければ.
関連して,最後に1つお知らせです.6月30日に,物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版が発売されました(アプリ版を利用できるのは iOS ユーザーのみとなります).通常価格は3,800円ですが,発売日より3週間,7月21日までは「初回セール期間」となっており,セール期間の価格は2,800円と(26%オフ)となっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックもご活用いただければと思います.詳細はこちらよりどうぞ.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
今朝の Voicy heldio より,3日間にわたる「『英語語源辞典』読み方講座」となる対談シリーズが始まっています.本日の初回は「#1872. 寺澤志帆さんの『英語語源辞典』読み方講座 (1) --- bear 「産む」の項目を徹底解説」です.
khelf メンバーの寺澤志帆さんが,シリーズ「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」にて「384. bear「産む」についてさらに深堀り」と題する記事を投稿されたことは,「#6281. 「英語語源辞典でたどる英語綴字史」の khelf 寺澤志帆さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています!」 ([2026-07-08-1]) でご紹介したとおりです.これは,『英語語源辞典』通読挑戦者の第一人者である lacolaco さんが,先立つ6月中に,同様の試みをいち早く実践されていたものを受けての,寺澤さんとしての試みでした.今回の対談は,事情により lacolaco さんのご参加はかないませんでしたが,寺澤さんの上記記事に基づいて,ラジオ版として口頭で「読み方講座」を実践していただくという趣旨で企画したものです.
講座のなかでは,「産む」を意味する bear2 の項目を超精読していきます.1つひとつ記号や略記が意味するところを丁寧に解説し,語源情報を読み解く上で必要となる英語史の前提知識を補いながら進みますので,迷子になることはありません.項目を読み終える頃には,皆さんもほぼすべての情報をほぼ完璧に理解できており,他の単語の項目を読み解く際のスキルも手にしているはずです.
『英語語源辞典』より,今回注目している bear2 の項目を画像化したものを,版元である研究社の許可を得て,以下に掲載します.お手元に同辞典をお持ちでない方は,こちらをご覧になりながら,今朝の「読み方講義」の本体をじっくりお聴きください.明日,明後日とシリーズは続いていきますが,捕捉や深掘りのアフタートークとなる予定です.ご期待ください.

・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

7月4日,khelf メンバーの寺澤志帆さんが,シリーズ「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」にて「384. bear「産む」についてさらに深堀り」と題する記事を投稿された.
タイトルからは普段と変わりない投稿かと思いきや,記事を読んでみると何かが異なる.そう,『英語語源辞典』の読み方解説が丁寧になされているのだ.記号の使い方や略記の説明,そして専門家の視点からの追加的解説が施されており,それに沿って読み解いていくと,辞典初心者にとっても,動詞 bear 「産む」の項目に記述されている語誌の詳細が理解できるようになっているのだ.
しかも,続けて7月6日には,同じ読み解き解説の趣旨で「386. beast ―『英語語源辞典』読み解き解説第2弾―」も投稿されている.
実は2週間ほど前に,『英語語源辞典』通読挑戦者の第一人者である lacolaco さんが,同じような試みをいち早く実践されていた.すでに hellog でも「#6268. 「英語語源辞典通読ノート」の lacolaco さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています!」 ([2026-06-25-1]) で紹介した通りである.直接 lacolaco さんの desire -- desk と despite, develop, device の2つの記事をお読みいただきたい.
『英語語源辞典』通読の試み自体が勇気ある挑戦といえるが,通読挑戦者たちが自らこの辞典の(読み解きを含めた)おもしろさを広く伝えるために,読み解き方を易しく解説してくれるとは,なんという辞典愛であり語源愛だろうか.
同辞典を持っているけれども,希望するほどには読みこなせず,使いこなせていなかった,という方は少なくないだろう.この辞典は高価だが,専門性が高く信頼できる代物なので一旦入手すれば一生モノである.だからこそ,多くの方々に使いこなして欲しい.ぜひ辞典を開きつつ,先日の lacolaco さんの記事や今回の寺澤さんの記事をじっくりと読み,語源辞典の懐の深さを味わっていただきたい.
私自身もこれまでに『英語語源辞典』の読み方解説に類することを試みてきたが,必ずしも体系的に行なってきたわけではない.それでも役に立つだろうとは思われるので,ぜひ「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) に掲載されているリンク集より,各コンテンツをたどっていただければ.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
「#6265. 『英語語源ハンドブック』刊行から1年 --- 索引と正誤表の最新版も」 ([2026-06-22-1]) で予告していたように,ハンドブックの著者3名(唐澤一友さん,小塚良孝さん,堀田隆一)が刊行1周年記念日となる2026年6月18日の夜にオンラインで集合し,「居酒屋KKH」を開きつつ,本書について語り合いました.
その鼎談の様子は録音していましたが,本編だけでも計60分を優に超える長丁場となったので,前編と後編に分けて Voicy heldio にて公開しました.濃密な対談となっています.お時間のあるときにじっくりお聴きいただければ.
・ 「#1861. (前編)居酒屋KKH --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念」(7月4日配信)
・ 「#1862. (後編)居酒屋KKH --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念」(7月5日配信)
前編では,この1年間で読者の方々より Amazon レビューで寄せられてきたご感想をいくつか紹介しつつ,3人でハンドブックの活用法や意義について改めて議論しました.
後編も,Amazon レビューを取り上げてコメントバックするところから始まりましたが,3人の議論が段々と濃厚になってきます.私の「英語史は伏線回収である」との発言を拾ってくれた唐澤さんが,話しをどんどんおもしろい方向に展開してくれ,さらに小塚さんが「英語史×英語教育」論にまで発展させてくれたおかげで,議論が大きく広がっていきました.一般のハンドブックの読者にとってはもちろん,広く英語教育関係の方々にも示唆のある内容となっていると思います.また,あまり表には出ない英語史研究者の視点についてもおおいに語りましたので,それなりに貴重な対談となっているのではないかと考えています.実際,3人自身が対談を非常に楽しむことができました.
この1年間,多くの読者の皆さんに,『英語語源ハンドブック』へ様々な角度からご意見をお寄せいただいたり,ハンドブックに基づいて関連する教材や記事などのコンテンツを制作・公開していただきました.ぜひ今後も引き続きご愛用,ご愛読いただき,ハンドブックの価値を広めていってください.
最後に重要なお知らせです.6月30日に,物書堂さんより本書のアプリが発売されました.物書堂のアプリを利用できるのは iOS ユーザーのみとなりますが,ハンドブックをアプリ版で入手できるようになりました.通常価格は3,800円ですが,発売日より3週間は「初回セール期間」となっており,セール期間の価格は2,800円と(26%オフ)となっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックもご活用いただければと思います.詳細はこちらよりどうぞ.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
heldio/helwa コアリスナーの sorami さんによる『英語語源ハンドブック』に基づいた「授業で使える!中学生向け英語語源クイズ」シリーズが,素晴らしい注目度を集めつつ継続しています.隔週土曜日に新作が公開されていますが,最新は6月27日に公開された第12弾です.
今回のクイズは,目下開催中の FIFA World Cup を睨んで,サッカーやスポーツに関連する言葉の特集となっており,非常にタイムリーな企画です.
毎回のことながら,相変わらずの良質の出題と丁寧な解説には脱帽するばかりです.あまり細かく書いてしまうとネタバレになってしまうので,ここではいくつかのおもしろい問いを厳選して紹介していきましょう.
まずは基本となる soccer というスポーツ名についてです.日本やアメリカでは soccer と呼びますが,実はサッカー発祥の地であるイギリスでは soccer とは呼ばない,というナゾから始まります.イギリスでは football なのですが,ではなぜ soccer という語が生まれたのかという語源のストーリーが解説されています.日常的な英単語の背景に,意外と知られていない語形成の歴史が隠されているのを知ると,ニヤリとしてしまうはずです.
さらにクイズは英語にとどまらず,日中語スポーツ名比較へと展開します.中国語で野球を「○球」,テニスを「○球」と別の呼び方をするなど,同じスポーツを翻訳するにしても言語によって着眼点が異なるという指摘は,対照言語学的に興味深い視点です.また,ある球技で「0点」のことを love と呼ぶのはなぜかという問いや,大谷翔平選手が所属するドジャースのチーム名とも深く関わる dodgeball の語源など,知的好奇心をくすぐる良問が目白押しです.
嬉しいことに,作者の sorami さん自ら「今回のスポーツ関連クイズも,授業の小ネタ,ウォームアップ,グループ活動などに自由に使っていただければ幸いです.ALTの先生を巻き込むのもありですね!」と言ってくださっています.pdf 形式の印刷用資料も用意されていますので,英語の教材として学校の授業やサークルなどで,すぐにでも活用できます.
さて,この出題のベースとなっている『英語語源ハンドブック』(研究社)ですが,2週間前の6月18日に,めでたく刊行1周年を迎えました.また,3日前の6月30日には物書堂より『英語語源ハンドブック』アプリ (iOS) が発売されました.7月21日までセール販売とのことですので,こちらより詳細をご覧ください.
この1年間,本当に多くの読者の皆様に温かく迎えられ,愛用されてきたことは,著者陣・関係者一同にとって大きな喜びです.心より御礼申し上げます.読者の皆さん,今後とも本書を末永くご愛用いただけますよう,よろしくお願いいたします.
今回の sorami さんのクイズ記事を通じて,1人でも多くの方が英単語の奥深い世界に触れ,英語史のロマンを感じていただければ幸いです.ぜひ過去号も含め sorami さんの note へと足をお運びください!
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
3ヶ月ほど前の記事「#6177. 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』関連シリーズを heldio で配信しています」 ([2026-03-26-1]) でご案内した Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」での古英語入門講義シリーズが,先日12回をもって完結しました.本日は hellog 読者の皆さんへ,シリーズ完結の報告を兼ねて,アーカイヴに残っている配信回をいつでも復習していただけるよう,リンクを一覧としてまとめました.
本講義シリーズは,今年2月の刊行以来お薦めし続けている市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社)の古英語テキストパートより,歴史的・文献学的にきわめて重要な記述である Early Britain (pp. 86--89) から抜粋された1節を対象とし,じっくりと精読・解説を加えてきたものです.
音声配信という特性を最大限に活かし,紙面だけでは捉えきれない古英語原文の読み上げにも力を注いでお届けしてきました.不規則で複雑に見える文法体系や現代とは一見異なる語彙の解説はもちろん,歴史的な背景を踏まえつつ,語源の話題を随所に盛り込むなど,可能な限り現代英語の知識に引き付けながら分かりやすく解きほぐしてきました.このような音声による本格的な古英語入門講義が一般に広く公開される機会はほとんどないため,貴重なアーカイヴ資料としてぜひ何度もお聴きいただき,古い時代の英語の世界を立体的に味わっていただければと思います.
シリーズ全12回(+最初の導入回)の配信タイトルと各リンクは以下の通りです
・ 「#1751. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を音読する」 (2026/03/16)
・ 「#1755. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (1)」 (2026/03/20)
・ 「#1758. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (2)」 (2026/03/23)
・ 「#1761. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (3)」 (2026/03/26)
・ 「#1764. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (4)」 (2026/03/29)
・ 「#1767. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (5)」 (2026/04/01)
・ 「#1771. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (6)」 (2026/04/05)
・ 「#1774. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (7)」 (2026/04/08)
・ 「#1777. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (8)」 (2026/04/11)
・ 「#1787. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (9)」 (2026/04/21)
・ 「#1799. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (10)」 (2026/05/03)
・ 「#1813. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (11)」 (2026/05/17)
・ 「#1851. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (12)」 (2026/06/24)
講義の精読対象となった古英語の原文テキスト,詳細な文法注釈,そして現代英語訳については,ぜひ本書『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』の該当箇所 (pp. 86--89) を直接開いて確認しながらお聴きいただければと思います.もし現時点で本書をまだ入手されていないという方は,当面の間は本ブログの過去記事「#2909. Peterborough Chronicle の Early Britain の記述」 ([2017-04-14-1]) をあわせて参照していただければ原文の一端を追うことができます.しかし,講義内でもたびたび言及している詳しい語彙解説やグロッサリーの利便性は,やはり本書の紙面を通じてしか十分にアクセスすることができないため,知的好奇心に従って学びを深めたいと思われた方は,ぜひこの機会に本書をご自身の本棚に迎え入れてください.
また,このたび完結を迎えた Early Britain シリーズに先立ち,heldio にて本書の冒頭に位置する重要な基礎パート「綴りと発音」をじっくりと解説した全4回の先行シリーズについても,ここで改めてご紹介し,合わせて宣伝しておきます.古英語を本格的に読み進める上での堅牢な基礎知識を養うための講義となっており,解説対象となった中身は研究社の本書に関する公式HPの試し読みコーナーでも手軽に閲覧することができます.本書がお手元にない段階からでも十分に理解を深められるように工夫しましたので,こちらもぜひアーカイヴよりチェックしてみてください.
・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」
このように hellog や heldio では,復刊された名著を道標としながら,古い時代の英語の姿を皆さんと共有していくための活動を今後も展開して行ければと考えています.ぜひ『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』に息づく原文の世界にご注目ください.
なお,月に一度オンライン開催している朝日カルチャーセンター新宿教室での講座でも,本書を参照しながら短めの古英語・中英語原文を丁寧に読む試みを続けており,7月からの夏期シリーズでも継続していきます.詳細・お申し込みはこちらのページよりどうぞ.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) の周辺が実に熱くなっています.本ブログでも要注目としてたびたび紹介してきた,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの lacolaco さんが,「英語語源辞典通読ノート」シリーズにて,目下 D の項目をひた走っています.
驚くべきは,その圧倒的な継続力のみならず,そこに込められた「hel活」スピリットの進化にあります.最新の2つの記事,すなわち6月13日公開の desire -- desk,および6月20日公開の despite, develop, device を拝読し,胸が熱くなりました.
この最新の2回において,lacolaco さんは貴重で有用な,新しい試みを始められています.前者では desk を,後者では device をサンプルとして取り上げ,『英語語源辞典』初心者に向けて,同辞典の読み方をきわめて丁寧に解説してくれているのです.同辞典特有の専門記号,略称,句読点などの1つひとつにまでこだわり,それが何を意味しているのかを噛み砕いて説明しているセクションは,『英語語源辞典』を所有していながらも,専門的すぎて使いこなせていなかった多くの方々にとって福音となるはずです.
これは,1ヶ月ほど前の hellog 記事「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) における問題提起を受けての,lacolaco さんによる見事なイニシアチブであり,実践です.さらに先立つ「いのほた言語学チャンネル」の研究社ロケ回でも話題となったように,『英語語源辞典』は世界最高峰の辞典でありながら,一般読者がその価値を本格的に享受するためには「読み解き方の手ほどき」がどうしても必要でした.まさにそのギャップを埋める体系的なガイドを,1人のヘルメイトが自らの note で,これほどハイレベルな形で実現してくれたわけです.これぞ草の根から湧き上がる純粋なhel活であり,hel活コミュニティのつながりが生んだ貴い果実です.
この丁寧な解説は,同辞典の魅力と威力をお茶の間に届ける素晴らしい踏み台となるはずです.一般の英語学習者の皆さんにとどまらず,同辞典の出版元である研究社の方々をはじめ,英語史の研究・教育に携わる専門の関係者の皆さんにも,大いに注目していただきたい画期的な試みです.ぜひ lacolaco さんのノートを訪問し,『英語語源辞典』の読み方解説を味読してみてください
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

去る6月18日,あの熱狂の発売からちょうど1周年を迎えることとなりました.『英語語源ハンドブック』(研究社)です.
刊行から1年が経ち,ありがたいことに重版を重ねておりますが,それに伴う正誤表がこちらの研究社公式HPより公開されています.最新版は2026年6月17日に更新されたものとなりますので,お手元の書籍と合わせてご確認いただければ幸いです.
さらに,本書で言及されている実に4083語もの単語・表現を網羅した索引が,追加資料としてダウンロードできるようになっています.それもこちらの研究社公式HPよりEXCELファイルやPDFフィあるとして入手できます,最新版が,同じく2026年6月17日付けで公開されています.この索引を活用することで,本書の利便性は一層高まるはずです.この索引を用いると,いろいろなことが可能となります.ぜひ「#6084. 『英語語源ハンドブック』の索引の歩き方」 ([2025-12-23-1]) の記事をお読みください.
最新のリンクを含め,『英語語源ハンドブック』に関する各種情報は,『英語語源ハンドブック』の特設HPに集約されていますので,ぜひ訪れていただければ.
この1年間,読者の皆さんの手によって,実におもしろく多様な『英語語源ハンドブック』関連コンテンツが制作・公開されてきました.それらの素晴らしい広報活動の足跡も,上記の特設HPに一覧としてまとめられております.皆さんの熱量には本当に脱帽するばかりです.
関連コンテンツの盛り上がりについては,6月20日に Voicy heldio で配信した「#1847. 『英語語源ハンドブック』発売1周年 --- 読者の皆さんによる関連コンテンツがたくさん」でも詳しくお話ししております.1周年の記念に,ぜひ合わせてお聴きください.
なお,1周年記念日となる6月18日の夜には,著者3名がオンラインで一堂に会し「居酒屋KKY」を開催しました.その様子は近々に heldio にてオンエアしますので,ご期待ください.
『英語語源ハンドブック』が,拙著新刊『『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)とともに,多くの人々にとって英語史へのジャンプ台であり続けることを願っています.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

1週間後の6月27日(土) 15:30--17:00 に,今年度の3回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の通算第15弾ということで,今回は「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して,皆が気になる単語 ghost を深掘りしていきます.
現代英語の ghost の最も普通の語義は「幽霊」ですね.この世ではしばしば恐れられている,あの不思議な存在です.しかし,本来は広く「精霊」 (spirit) を表わし,あらゆるものに生命を吹き込むパワーを表わしていましたが,歴史の過程で意味の縮小が起こったことになります.キリスト教の「聖霊」は the Holy Spirit と言いますが,古くは the Holy Ghost と言われたのも,この経緯と関係しています.
また,発音や綴字の観点からも興味深い事実があります.古英語や中英語では gast のような綴字が普通でした.母音として ā という長母音をもっていたのです.ところが現代では /oʊ/ という2重母音になっていますね.また,後期中英語以降,どこからともなく綴字に <h> の文字が紛れ込み,現代では ghost となっていますね.講座では,<gh> という綴字の様々な謎にも触れていきたいと思っています.その他,動詞としての ghost,「幽霊語」 (ghost_word) の話題,もちろん ghost の語源自体にも触れていきます.
講座の後半には,本シリーズの「古い英語の原文で味わう」趣旨に沿って,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)より古英語のなかに実際に現われる "ghost" を覗いてみます.丁寧に解説しますので,古英語初心者の方も心配無用です.また,上掲書をお持ちでなくても講座資料として配付しますのでご安心ください.
講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.
なお,この先の夏期クールのテーマと日程をお伝えしておきます.夏期もシリーズを継続していきます.そちらの詳細・お申し込みはこちらのページよりどうぞ.
・ 夏期第1回(2026年7月25日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "king" を探って古英語原文の世界へ
・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ
いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.
(以下,後記:2026/06/22(Mon))
今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1849. 6月27日(土)の朝カル講座は ghost を深掘り」をお聴きください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
去る5月23日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の第2回となるオンライン講座を開きました.春期クール全体のタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語 語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」です.今回は,「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,平凡ながらも豊かな歴史と含蓄をもつ単語 again に迫りました.具体的な中英語原文を抜き出し,文脈を押さえながら読み解くことで,この基本語の理解を深めようという趣旨です.参考としたテキストは前回に続き市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)です.
今回の講座でまず注目したのは,現代英語の again と前置詞 against の関係です.本来は同一語であり,両方とも副詞・前置詞として用いられていましたが,中英語期に副詞を示す属格語尾 -es が付与され,さらに1300年頃から謎の -t が添加されることで against が誕生しました.この -t の添加には,最上級語尾 -st との類推説(betwixt,amongst,amidst など)や異分析説が指摘されています.近代英語期に入ると,again が副詞,against が前置詞という棲み分けが生じるに至ったドラマも詳しく扱いました.
語源としては,古英語の ongēan (接頭辞 on- + -ȝeȝn)に遡り,原義は「まっすぐに,真正面に」でした.現代の g の綴字と発音は古ノルド語の影響を受けた北部方言に由来するもので,中英語期の南部方言では onyen のように y が優勢でした.かつては gainsay (否定する)などのように接頭辞としても活躍していましたが,現代ではその多くが衰退してしまっている点も興味深いところです.
講座の終盤では,初期中英語の第1級の史料でもある『ピーターバラ年代記』 (pchron) の1137年の記述より,中世イングランドの拷問シーンの原文を味読しました.その直前の部分に "agænes him hēolden" 「王に敵対して(城を)保持した」という表現が見え,今回注目した単語の前置詞用法が現われています.古英語の屈折体系が崩壊しつつある時期の英語の雰囲気がつかめたかと思います.
次回の講座は,6月27日(土)に「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して開かれます.次回も引き続き『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』より古英語のテキストを参照しながら,魅力的な言葉の歴史をひもといていきます.ご関心のある方は,ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
一昨日6月13日(土),英語教員が集うオンライン・セミナーにて,新刊『なぜさんたんげん』についてトークさせていただく機会をいただきました.参加者が小中高などの英語の先生方ということで,本書で取り上げている数々の「英語に関する素朴な疑問」の代表選手である,「なぜ3単現の s をつけるのか?」をピックアップし,学校の授業などでそのまま使えるレジュメを作成・配布しました.そちらに若干の改変を加えて,以下のようにブログ記事化しました.
なお,改変済みの PDF をこちらに置いておきますので,先生方におかれましては,自由にダウンロードし,配布・引用・改変していただいてけっこうです.授業の導入,学年通信,図書室の掲示用コラムなどに最大限にご活用ください.生徒からの「なぜ丸暗記しなきゃいけないの?」という疑問に,英語の歴史から明快に応える内容となっています。
【 英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか 】
1. 現代英語の「いびつな」現在人称活用
私たちが中学校で最初に習う一般動詞の活用(例:learn「学ぶ」)を改めて見直してみましょう.
| 人称 | 単数形 (Singular) | 複数形 (Plural) |
|---|---|---|
| 1人称 | I learn | we learn |
| 2人称 | you learn | you learn |
| 3人称 | he/she/it learns | they learn |
| 人称 | 単数形 (Old English) | 複数形 (Plural) |
|---|---|---|
| 1人称 | ic leorn-ie | wē leorn-iaþ |
| 2人称 | þū leorn-ast | yē leorn-iaþ |
| 3人称 | hē/hēo/hit leorn-aþ | hīe leorn-iaþ |
上記のオンライン・セミナーでの私のトークについては,参加者のお1人 Rie Miyazaki 先生が note 上で公開されている記事「【開催レポート】Galileo Neo 第3回セミナー:「AI時代の熟練指導者の腕の見せどころと,3単現のSから始まる英語史のロマン」2026.6.14」の後半にて,素晴らしい紹介とまとめをくださっているので,そちらもご覧ください.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
昨日の記事「#6236.heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」 ([2026-06-03-1]) に続いて,5月28日時点での Voicy のアナリティクスに基づく記事をお届けします.一昨日2026年6月2日は,heldio 5周年記念日であると同時に,実は helwa 3周年記念日でもありました.Voicy heldio 開始からちょうど2年目に当たる日に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を開始したのでした.
helwa は週2回ベースで配信を始めましたが,途中から週3回ペースとなり今に至ります.3年間で積み上げてきた helwa の配信数は,449本に達しました.冷静に考えると,これはなかなか異常なペースです.普通の有料コミュニティであれば,数十本の限定雑談や月1回のイベント程度で終わることも多いかと思いますが,helwa は heldio とは異なるもう1つの英語史コミュニティへと成長してきました.
当初は,これほどニッチな学術分野で有料チャンネルを始めて本当に人が集まるのか,どのような雰囲気の場になるのか,大きな不安があったのも事実です.しかし,蓋を開けてみればそこは heldio 通常回の特典音源の置き場ではなく,日常的な英語史雑談,Discord 上での交流,オフ会ルポ,書籍の共同企画,学会の裏話など,多岐にわたる談義が繰り広げられる「英語史サロン」へと発展していきました.そして,helwa リスナーを増やすことを主目的とするのではなく,英語史を一緒に楽しむ仲間を作ることが最重要視される,そのような空間に育ってきたのです.
この3年間における最大の成果の1つは,音声配信チャンネルというオンラインの枠を飛び出し,オフ会や「英語史ライヴ」など,現実のコミュニティが実現したことでしょう.泊まりがけのオフ会も複数回開催され,その熱気はこのコミュニティから生まれた月刊ウェブマガジン Helvillian などで熱くレポートされています.英語史という実利の外側にある学問が,学生,社会人,教員といった幅広い層の垣根を越えて,純粋な大人の「居場所」となったことは,きわめて感慨深いことです.
しかし,helwa がもたらした最大の変革は,「英語史が雑談になった」という点に尽きるかもしれません.本来,英語史は大学の講義室や専門論文のなかに閉じ込められた世界でした.それがこのコミュニティでは,「その語源おもしろい」「その発音変化わかる」「それ英語史的な発想だよね」といった言葉が日常的に交わされています.オフ会での乾杯の挨拶もすっかり古英語の Wes hal! に定着しています.英語史が一部の専門家だけのものではなく,コミュニティの皆さんの間で一種の「生活言語」として根付いているといったらよいでしょうか.
常連文化,内輪ネタ,定番フレーズが自然発生するその空気感は,深夜ラジオ共同体にかなり近いものがあるように思っています.「英語史」という硬派なテーマなのに,やっていることは深夜ラジオというギャップが,何ともおもしろいところです.また,リスナーの皆さんが単なる受信者にとどまらず,コメントや note や SNS を利用した発信者となってhel活を推進し,英語史エコシステムを想像している点も,helwa の本質といえます.
英語史研究者としては「英語史って,本来こんなふうにワイワイ雑談する分野じゃなかったんですよ(笑)」と,嬉しい悲鳴を上げたいです.この helwa という舞台裏の熱量とエネルギー源があるからこそ,表舞台である heldio の5年間にわたる毎日更新も維持されてきたと思っています.3年間で醸成されたこの愛すべきニッチ共同体の文化を,今後もさらにディープに,そして楽しく発展させていきたいと考えています.
新たな月となりました.heldio リスナーの皆さんにおかれましては,heldio 5周年かつ helwa 3周年の機会に,ぜひ「英語史の輪 (helwa)」へご入会ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しにお入りいただければ.今月は helwa では『なぜさんたんげん』の裏話が多くなるはずです.
一昨日の helwa 「【英語史の輪 #0453】helwa 3周年 --- 英語史エコシステムが完成した」を,ぜひお聴きください.
昨日2026年6月2日,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,おかげさまで5周年を迎えることになりました.丸5年間,毎日マイクやレコーダーに向かって英語史を語り続けてきたことになりますが,この機会に Voicy のアナリティクスから抽出されたデータを皆さんと共有しつつ,この5年間の heldio の進化を振り返ってみたいと思います.アナリティクスは5月28日時点のデータを用いています.
まず配信回数ですが,5年間で2,340本を配信してきました.これは毎朝6時の heldio 通常配信のほか,生配信や特別配信,そしてプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」の配信を加えた総数です.我ながら,英語史という単一テーマで,よく持ったと思います.単なる毎日更新にとどまらず,英語史というニッチな学術分野において,これだけの高頻度で5年間メディアが回り続けたというのは,リスナーの皆さんにとっても「え,そんな本数だったの!?」と驚かれるのではないでしょうか.
では,リスナーの皆さんにとって,heldio への「入口」となったのはどのような回だったのでしょうか.歴代の総再生回数および新規リスナー獲得数のランキングを見てみると,きわめて一貫した heldio の原点が見えてくるように思われます.
不動の歴代1位に君臨しているのは,記念すべき初回配信である「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」(合計リスナー3,104人,新規獲得1,757人)です.これは完全に他を圧倒する入口回となっています.ここで重要なのは,この回が扱っているテーマが a/an の使い分けという,中学1年生で習う初歩的で素朴な疑問である点です.ここから分かるのは,heldio の原点がハードルの高い専門知識の講義ではなく,誰もが抱く学校英語への違和感や日常の小さな謎に寄り添う姿勢だったということです.
もう1つの興味深いデータとして,2022年の「#408. 自己紹介:英語史研究者の堀田隆一です」(新規995人)と,2024年の「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」(新規989人)という,2回の自己紹介回がどちらもヒットしている現象が挙げられます.リスナーさんの関心が,英語史そのものだけでなく,それを語っているパーソナリティにも向いているものと理解してよいのでしょうか.その辺りが謎ではあります.
また,外部コミュニティとの接続という点では,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」さんにお招きいただいた際の 「#705. ゆる言語学ラジオにお招きいただき初めて出演することに!」(新規609人)が爆発的な流入を生みました.「英語史をお茶の間に」というモットーが,専門界隈の外へと届いた象徴的な瞬間でした.さらに,純粋な歴史の話題だけでなく,「#729. なぜ英語を学ばなければならないの?」(新規558人)のように,英語教育や現代人の英語観を照らす類いの話題も,強い新規流入を呼び込んでいます.トップに近い配信回を眺めまわしてみると,結局のところ違和感を共有する「英語に関する素朴な疑問」(sobokunagimon)が核であったことが示されています.
一方で,年別の平均リスナー数の推移を見ると,数字の上では減少傾向にあるように見えます.これには様々な原因があると思いますが,Voicy と同一のコンテンツを,他の音声配信プラットフォームでも配信し始めたので,Voicy 単独でのリスナー数が減ったということが大きいように思われます.もう1つは,リスナー集団の中心がライト層からコア層へシフトしてきたようにも感じます.リスナー数が減少した分,チャンネルが成熟していったのではないかと私は分析しています.
実際に現在のアナリティクスによれば,「とても熱心なリスナー」が72.7%,「熱心なリスナー」が7.9%を占めており,全体の約8割が濃いリスナーを占める,そのようなチャンネルへと進化しています.そして,この超コア化・定着化を支える巨大な「地下アーカイブ」となっているのが,3年間で449本を積み上げてきた「英語史の輪 (helwa)」の存在です.ここでは,日常的な英語史談義,Discord 上での交流,オフ会報告,コアな研究雑談などが蓄積され,単なる有料配信メンバーの集団という以上の濃いコミュニティが形成されています.
リスナーさんたちの属性分析からも,heldio の独特な受容スタイルが浮かび上がってきます.まず,男女比が男性45.9%,女性43.8%(無回答10.2%)と,ほぼ五分五分で均衡しています.一般に,語学学習系番組は女性に偏りやすく,IT・学術雑談系は男性に偏りやすい傾向がありますが,heldio はその中間に位置しています.大人の知的雑談メディアとしてバランスよく受け入れられているものと考えています.
年齢層を見ると,30代が24.3%,40代が25.5%,50代が23.1%となっており,実に大人の30--50代で全体の約73%を占めています.まさに「学び直し」や通勤・家事の合間の知的時間を求める成熟したリスナー層です.さらに職業分布では,会社員が46.3%,自営業が12.5%を占め,英語教員や学生といった層だけでなく,実務の外側にある純粋な知的好奇心として英語史を楽しんでいる一般のビジネスパーソンが圧倒的多数派のようです.
さらに国内での地域的な広がりを見ると,東京が38.9%と最大ですが,大阪6.7%,神奈川6.0%,千葉3.9%,北海道3.6%と続き,全国(さらには海外)に薄く広く分散しています.大学の講義室であれば物理的な制約がありますが,インターネットの音声配信という特性を活かし,英語史の地方分散化が数字として実現しているのは,興味深いファクトです.
これらすべてのデータを総括するならば,この5年間は,「マスメディア的なリスナー数の拡大」ではなく「英語史に関心を寄せるリスナーの着実な増加」を示す時間だった,ということです.実利的な英語スキルのためではなく,「英語っておもしろい」「言葉って不思議だな」という感覚を共有し,英語について雑談する文化圏・公共圏がここに誕生したのです.
大学の研究者が専門分野を掲げてこのようなコミュニティを形成できたことは,稀な事例ではないかと思っています.これまで heldio を支え,一緒に知的な遊び場を作ってくださったリスナーの皆さんに,改めて心より感謝申し上げます.
これからも heldio は様々な進化を遂げていくものと思われます.直近では,今月6月10日発売予定の近刊 『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)をめぐるお祭り企画やイベントも目白押しです.
新たな月となりましたし,heldio 5周年のこの機会に,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への入会もぜひご検討ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しに覗いてみていただければ.今月は helwa でも『なぜさんたんげん』の話題が多くなるだろうと思います.
昨日の heldio 「#1829. heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」もお聴きいただければ.それでは,明日もいつも通り,朝6時に heldio でお会いしましょう.

昨日の記事「#6231. 研究社ロケ in 「いのほた言語学チャンネル」の第2弾と第3弾が公開されています」 ([2026-05-19-1]) でご案内した研究社ロケ回の第3弾では,『英語語源辞典』の読みこなしについても話題となりました.
編集者の星野龍さん,中川京子さん,青木奈都美さんとのお話しのなかで,『英語語源辞典』(や OED の語源関係欄)は,情報がぎっしり詰め込まれており,専門的な記号や略称も多いので,一般読者は読みこなすのが難しい.一般の英語学習者が,同辞典の良さを本格的に味わおうと思えば,読み解き方の手ほどきが必要なほどだ.そのための講座やガイドブックがあるとよい,という趣旨のお話しも出ました.
一般の方々にとって『英語語源辞典』を使いこなすのが容易ではないことは,同辞典を激推ししてきた私自身も気付いており,そのためにいくつかの活動もしてきました.1つは,動画内で私自身も触れている通り,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」のなかで,まさに『英語語源辞典』読み解き講座に近い配信回をしばしばお届けしてきました.英語史を専攻する大学院生などとともに,同辞典の読み方を解説したり,議論したりしています.以下に主だった回を一覧します.
・ 2023年10月23日 heldio にて「#875. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (1) --- 藤原くんと foot を語る」が配信され,藤原郁弥さんとの画期的なシリーズの幕開きとなる.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第2位に入った.
・ 2023年10月26日 heldio にて「#878. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (2) --- 藤原くんと foot を語る」が配信される.
・ 2023年11月8日 heldio にて「#891. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (3) --- khelf 藤原くんと marble を語る第1弾」が配信される.ちなみに,この回は2023年の heldio 配信回のリスナー投票で第9位に入った.
・ 2023年11月11日 heldio にて「#894. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (4) --- khelf 藤原くんと marble を語る第2弾」が配信される.
・ 2023年11月14日 heldio にて「#897. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (5) --- khelf 藤原くんと marble を語る第3弾」が配信される.
・ 2023年12月15日 heldio にて「#928. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (6) --- khelf 藤原くんと2重語 compute/count を語る」が配信される.
・ 2024年1月31日 heldio にて「#975. 『英語語源辞典』の収録語彙」が公開される.
・ 2024年2月2日 heldio にて「#977. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (7) --- khelf 藤原くんと同音異義語 bank の項を精読する」が配信される.
・ 2024年2月3日 heldio にて「#978. 『英語語源辞典』の語義・初出年代 --- khelf 藤原くんと凡例を読もう」が配信される.凡例を熟読するという稀代な企画がスタート.
・ 2024年6月6日 heldio にて「#1101. 『英語語源辞典』凡例読みシリーズ with 藤原郁弥さん&青木輝さん」が配信される.
・ 2024年07月26日 heldio で「#1153. 『英語語源辞典』を読むシリーズ (8) --- khelf 藤原くんと king の項を精読する」が公開される.
・ 2024年08月24日 heldio で「#1182. 【緊急のご報告】研究社『英語語源辞典』新装版が重版決定!」が公開される.
・ 2024年09月23日 heldio で「#1212. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 --- 「英語史ライヴ2024」より」が公開される.
・ 2024年10月21日 heldio で「#1240. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (2) --- KDEE の編集方針を理解しよう」が公開される.
・ 2024年10月26日 heldio で「#1236. mine を『英語語源辞典』で読み解く」が公開される.
・ 2024年11月14日 heldio で「#1264. 『英語語源辞典』通読はキツい,無理!」が公開される.
・ 2024年11月16日 heldio で「#1266. chair と sit --- 『英語語源辞典』精読会 with lacolaco さんたち」が公開される.
・ 2024年12月26日 heldio で「#1306. 『英語語源辞典』の「語源学解説」精読 (3) --- 印欧語比較言語学の学史をたどる」が公開される.
・ 2025年04月25日 heldio で「#1426. 『英語語源辞典』をランダム読み --- khelf メンバーとの思いつき企画」が公開される.
また,私は数年来朝日カルチャーセンター新宿教室にて定期的に英語史関連の講座を開いてきましたが,とりわけ2024年度の毎月の講座では,「語源辞典でたどる英語史」をシリーズタイトルとして掲げて,事実上の『英語語源辞典』読み解き講座を展開していました.現行の毎月講座でも,『英語語源辞典』は常に参照し,その一部を精読するということを続けています.今週土曜日に予定されている5月回でも,もちろん参照する予定です(先日の hellog 記事「#6228. 「again を探って中英語原文の世界へ」 --- 今年度の朝カル英語史シリーズ第2回」([2026-05-16-1]) をご参照ください).
ほかには,上記 Voicy heldio から派生したプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」や khelf(慶應英語史フォーラム)のメンバーによる,『英語語源辞典』をめぐる様々な活動も,『英語語源辞典』の読みこなしに貢献しています.とりわけ同辞典の通読に挑戦されているお2人 lacolaco さんによる note 上の「英語語源辞典通読ノート」や寺澤志帆さんの連載企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」は要注目です.ari さんによる『英語語源辞典』で一人遊びするアプリ「#266【KQ2】ゴラクエを update して遊ぶ!!」も参照ください.
上記のように,これまでにも仲間たちと私とで様々な活動を展開してきましたが,『英語語源辞典』を読みこなせるようになるための「体系的」な講座やガイドブックなどは,確かに存在しませんでした.どのくらいの需要があるのか,という問題はありますが,今回のいのほた動画で触れている通り,一考の余地はあるかもしれません.
読者の皆さん,需要はありますか?
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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5月14日,大修館書店より月刊誌『英語教育』の6月号が発売されました.今年度,同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)とともに配信している YouTube 「いのほた言語学チャンネル」をベースとして,連載企画「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点」を始めています.
連載第3回となる今回は,私がメイン執筆者として「英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」を書いています.前号の井上さんによる「社会言語学の3つの扉:人はことば「で」何をしているのか」への返答のような形になります.井上さんからの温かいコメントも最後に付いた文章です.
今回の記事タイトルは,前号の井上さんの記事タイトルへのオマージュ(いや,パロディというべきでしょうか)として生まれたものです.井上さんがそう来るなら,私としては「英語史の3つの扉」しかない,と直感し,先にタイトルが決まりました.では,その3つとは何か.それは後から考え出すという,いかにも「いのほた」らしいライブ感のある記事執筆です.
記事では,英語史への3つの入口として,「比較言語学」 (),「文献学」 (philology),「歴史言語学」 (historical_linguistics) を取り上げています.第1の扉「比較言語学」では,文献に残らない祖語の姿を「再建」 )という手法によって浮かび上がらせる営みを論じました.第2の扉「文献学」では,1文字・1語に宿る言語的・社会的文脈を丁寧に読み解くことの醍醐味を述べています.そして第3の扉「歴史言語学」では,言語変化 (language_change) のメカニズムを体系的に追う視点を紹介しました.3者はそれぞれ異なる分野でありながらも「社会と言語の接点」という点で通底しています.この締めくくりによって,社会言語学を専門とされる井上さんとのコラボ的なエッセイとして仕上げることができたかな,と感じています.
なお,本連載は月々メイン執筆者を交代するスタイルをとっており,サブの側がコメントを数行添える形式をとっています.今回,井上さんからは「英語史ってロマンですねー」という言葉をいただきました.「いのほた言語学チャンネル」のゆるいライブ感を,誌面でも少しずつ体現できているとすれば,望外の喜びです.
本連載記事と関連して,heldio でも先日「#1812. 英語史の3つの扉 --- 『英語教育』の「いのほた連載」第3弾より」としてお話ししました.あわせてお聴きください.
・ 井上 逸兵・堀田 隆一 「いのほた言語学チャンネル PRESENTS 英語を深める社会言語学・英語史の視点 第3回 英語史の3つの扉:ことばの考察に通時的な次元を復活させる」『英語教育』2026年6月号,大修館書店,2026年5月14日.44--45頁.

1週間後の5月23日(土) 15:30--17:00 に,今年度の2回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の通算第14弾ということで,今回は「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,日常的な副詞 again とその双子の兄弟である前置詞 against に注目します.
講座では,『英語語源辞典』や『英語語源ハンドブック』を参照しつつ,この単語の語源や意味・形態上の発達を追いかけ,副詞 again と前置詞 against とで棲み分けがなされるようになった背景に迫ります.本来は接頭辞にすぎなかった形態素が,独立した単語となっていくという興味深い歴史をもっているのです.関連して,古英語の前置詞全体についても概観する予定です.
この単語の発音やスペリングの変化・変異にも注目します.異形が非常に多く,古英語や中英語の辞書ではどの形が見出し語に上がっているのかを予想するのが困難なほどです.
また,この春期クールでは,2月25日に研究社より刊行された伝説的入門書,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)を参考テキストとして活用します.今回はこの入門書に収載されている初期中英語のテキスト Peterborough Chronicle より,again を含む,中世の拷問をおどろおどろしく描写する箇所を少々読んでみたいと思います.
中英語の原文が初めてという方も心配は要りません.上記参考テキストについても,講座で読む部分については配付資料内で引用しますので,受講に必須ではありませんが,テキストには現代英語訳や辞書も付属していますので,あれば学びが深まると思います.
講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.See you again!
(以下,後記:2026/05/18(Mon))
今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1814. 5月23日(土)の朝カル講座は again に注目」をお聴きください.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
去る4月25日(土)に,朝日カルチャーセンター新宿教室にて今年度の初回となるオンライン講座を開きました.春期クール全体のタイトルは「歴史上もっとも不思議な英単語 語源を探って古英語・中英語原文の世界へ!」です.初回となる今回は,「knight を探って中英語原文の世界へ」と題して西洋中世を理解するうえで重要な文化語 knight に迫りました.主に中英語原文から,この単語を含む具体的な箇所を抜き出して,文脈を押さえながら読みことで,knight の理解を深めようという趣旨です.参考としたテキストは,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)です.
今回の講座でまず注目したのは,knight という語の現代での語感です.「騎士」や「勲爵士」といった高潔なイメージを纏っていますね.しかし,古英語期までさかのぼれば,その原義は単なる「少年」 (boy) や「召使い」 (servant) にすぎませんでした.この意味変化の背景には,「従者」たちが軍事的な功績を立て,社会的な地位を獲得していくという姿が映し出されています.knight がたどってきた意味上の「出世」についても,詳しく扱いました.
講座の中盤では,実際に中英語の原文を味読しました.Chaucer の The Canterbury Tales の冒頭に登場する騎士の描写 "A KNYGHT ther was, and that a worthy man" をはじめとして,いくつかの原文を紹介しました.語源辞典で単語を引くだけでは味わえない,原文の文脈に照らして初めて感じられる knight に迫ることができたと思います.
さらに,この単語の綴字と発音の関係についても深掘りしました.現代の knight に含まれる黙字 <k> や <gh> は,かつてはしっかりと発音されていました.古英語期の綴字は cniht であり,[knɪçt] のように発音されていたのです.17世紀頃に語頭の [k] が脱落し,語中の喉を鳴らすような [ç] 音も消失しましたが,綴字だけが取り残された結果,現在の不規則な姿となりました.講座では,歴史上確認される knight の綴字が63種類にも及ぶことを紹介し,標準化以前の英語の多様性を視覚的に提示しました.
次回の講座は,5月23日(土)に「again を探って中英語原文の世界へ」と題して,knight とは趣が異なりますが,やはり興味深い単語に迫ります.次回も『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』を参照します.ご関心のある方は,ぜひ朝カルのこちらの公式ページよりお申込みいただければ.
・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

heldio/helwa のコアリスナーであるみーさんが,note 上で展開されている連載「小学生と学ぶ英語史」が,先日4月21日に記念すべき第100回に到達しました.1月12日の連載開始以来,一日も欠かすことなく毎日更新を続けての100回達成です.この偉業に,心よりお祝い申し上げます.
このシリーズは『英語語源ハンドブック』の項目をベースとしながら,みーさんご自身が教えられている英語教室での経験を活かし,小学生にもわかるように丁寧に,かつ優しくかみ砕いて解説されているものです.タイトルには「小学生と学ぶ」とありますが,その内容は決して小学生向けに限定されるわけではありません.各記事には語源に関する確かな知識に加え,学習上の助けとなる周辺知識やエピソードが豊富に盛り込まれており,中高生や大学生,さらには学び直しを志す大人の学習者にとっても,非常に示唆に富む内容となっています .
みーさんの記事の魅力は,何といっても語り口の柔らかさにあります.『英語語源ハンドブック』の記述をそのまま提示するのではなく,目の前にいる子供たちがどこで躓き,どこで目を輝かせるのかを熟知した教育実践者としての視点が貫かれています.たとえば,lady の語源が「パンをこねる女性」であるという話から,聖母マリアにちなむ ladybug 「てんとう虫」の話題へと繋げ,子供たちの好奇心を刺激する手法などは,まさにその真骨頂と言えるでしょう .
また,みーさんは,hel活をしている helwa の仲間たちがアルファベット順に語源をたどる試みにインスピレーションを受け,ご自身も a, b, c ... と一巡し,また a に戻るという独自のルーティンを確立されました.このように志を同じくする仲間たちが互いに刺激し合い,学びを深めていく姿は,まさに「英語史をお茶の間に」を体現するものだと思います.
このたび,100回突破を祝して heldio にてみーさんとの対談を収録しました.4月28日(火)の朝に配信した「#1794. 祝・みーさん「小学生と学ぶ英語史」100回記念対談」です.連載を始めたきっかけから,日々の継続のコツ,そして教室での子供たちの生の反応まで,たっぷりとお話しを伺っています.
さらに,同日の夕方に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」でも,対談の続編を「【英語史の輪 #0438】みーさんとお祝い対談(今朝の続き)」と題して配信しています.こちらでは,よりリラックスした雰囲気で,継続の仕組みや仲間との交流について深掘りしています.ご関心のある方は,あわせてお聴きください.
英語史という分野は,一見すると難解に思われがちですが,みーさんのように橋渡しをされる方がいれば,小学生であっても「印欧祖語」 (indo-european) などの用語も自然に使いこなすようになるのです.こうした英語史の草の根の活動が,英語教育の現場に新しい風を吹き込むことを期待してやみません.読者の皆様も,ぜひみーさんの note を訪れ,フォローしたり温かいコメントを寄せていただければと思います
・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
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