
去る6月10日に刊行されて以来,熱い盛り上がりを見せている新刊『英語語源で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)ですが,リアル書店での発見報告を募る「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が,連日目を見張る勢いで進展しています.全国の読者・応援者の方々が日々寄せてくださる草の根の目撃情報には,著者として感謝に堪えません.なかには書店さんの許可を得て,素晴らしい書棚の写真を撮ってくださる方も少なからずいらっしゃり,地図を開いてピンを立てるたびに胸が熱くなります.
さらに心強いことに,NHK出版の営業の皆さんも,全国の書店訪問の最前線から書棚の写真をお送りくださっています.応援読者さん×全国の書店さん×NHK出版営業さん,という3者の熱量が噛み合った結果,昨晩時点の集計で,全国津々浦々の書店に計93本ものピンが立つに至りました.100本の大台も見えてきましたね.
ここで目撃マップの凡例(ピンの色)を整理しておきましょう.
・ 赤ピン:書棚写真あり(有志の皆さんによる書店さんの許可を得ての写真撮影あり)
・ 青ピン:書棚写真なし(テキストのみのご報告のケース,あるいは私が写真をアップできていないケース)
・ 茶ピン:NHK出版営業さんが回られた書店さん(写真つき)
・ 黄ピン:書店さんご自身による書棚の SNS 広報等
・ 「文」アイコン:本書が入っていると直接・間接に確認できた図書館
さて,先日の記事「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1]) でお知らせした地方レベルでの全制覇に続き,目下の目標は第2次全国制覇,すなわち47都道府県完全制覇です.昨晩時点の最新データによれば,全都道府県制覇まで,あと9県というところまで迫っています.その9県は,以下の通りです.
・ 東北:青森県,岩手県,秋田県,山形県
・ 中部:富山県
・ 中国:島根県
・ 九州:佐賀県,熊本県,宮崎県
ぜひ該当する県民の方,あるいはビジネスや旅行でこれらの地を訪れた方は,地元のリアル書店を覗いて情報をお寄せいただけますと幸いです.SNS(主に X)にて #なぜさんたんげん目撃マップ あるいは単に #なぜさんたんげん のハッシュタグを付して街と書店の名前をつぶやいていただくか,あるいは毎朝お届けしている Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の任意の配信回のコメント欄より,お知らせください.私が必ず捕捉してピンを立てに伺います.
書店での写真撮影に関しましては,「#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています」 ([2026-06-14-1]) でも触れたとおり,必ず事前に書店員さんへ一言お声がけをいただき,そのご指示に従っていただきますようお願いいたします.撮影が難しい状況であれば,テキストのみのご報告でも十分に貴い情報となります.ご協力のほど,よろしくお願い致します.
もちろん,すでに多くのピンが立っている都道府県においても,さらに密度を濃くして地図を面で埋め尽くしていきたいと考えていますので,日本のどこからでも目撃情報をお待ちしています.「英語史をお茶の間に」流通させるためのこの壮大な知的お祭りを,引き続き皆さんとともに楽しんでいければと願っています.
これまでの「目撃マップ」企画に関する関連記事も合わせてご覧ください.
・ 「#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています」 ([2026-06-14-1])
・ 「#6267. 「なぜさんたんげん目撃マップ」へピンが多く立ってきています!」 ([2026-06-24-1])
・ 「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1])
・ 「#6275. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画で何をしようとしているのか?」 ([2026-07-02-1])
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
先月6月10日,NHK出版新書より拙著『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』が発売されました.おかげさまで大変ご好評をいただいており,全国の書店に並んでおります.毎朝配信している Voicy の 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」 とともに,応援していただけますと幸いです.
さて,本日お届けするのは,少し前の実体験をベースにしたお話です.6月,私はイギリス・スコットランドのアバディーンに滞在していました.日々,北海を望みながらジョギングをしていたのですが,先月6月23日の夕方,ついに悲願であった「北海での初泳ぎ」を敢行しました.その直後にゴーグルを頭にはめた半裸の状態で撮影したミニ動画を,個人 YouTube チャンネルの heltube にアップしたのですが,それが上掲の動画です.
ヨーロッパを襲った熱波の影響で,その日のアバディーンは最高気温が25度まで上がっていました.スコットランドの6月としては珍しい高温です.私はもともと水を見たら泳ぎたくなる性質なのですが,25度ともなれば地元のスコットランド人たちも海に入り始めます.これ幸いとばかりに水着でジョギングに出かけ,念願の北海に入ったした次第です.
しかし,気温は25度とはいえ,水温は別問題でした.北海はとにかく冷たいのです.足を入れた瞬間にその冷たさに圧倒され,えいやと飛び込んでからは,寒さに凍えないよう必死に個人メドレーを始めました.しかしまったく体は温まらず,ものの7,8分で完敗して浜に上がってきました.日本の感覚でいえば,秋の海で泳いでいるような冷たさです.
なぜ,これほどまでに冷たい北海に,私はこだわり,泳ぎたかったのか.単なる悪ノリではありません.そこには,英語史研究者としての強い憧れとロマンがありました.一言でいえば,「英語史を育んだのは北海である」という強い意識が私の中にあったからです.
古代や中世において,海とは土地を隔てる障壁ではありません.むしろ道路でした.陸路を作るのにはコストがかかりますし,山賊の危険もあります.しかし,海路・水路は多くの荷物を運べる安全なルートだったのです.今回私が泳いだイギリス東海岸の北海を東へと進むと,スカンジナビア半島の西岸やデンマークへとたどり着きます.そう,かつてこの海を支配していたのはヴァイキング (viking) たちでした.
北欧のヴァイキングたちにとって,北海は地中海や湖のようなものであり,向こう岸にグレートブリテン島があることは百も承知でした.彼らは8世紀半ばから,この北海という道路を渡ってイングランドへ殴り込みをかけ,やがて移住・植民してきました.当時,アングロサクソン人が話していた古英語に対し,同じゲルマン系の北ゲルマン語群に属する古ノルド語 (old_norse) を話すヴァイキングたちが激しい言語接触 (contact) をもたらしたのです.
この濃密な接触の結果,英語の語彙は大量の北欧系単語を受け入れ,文法も簡略化へと向かいました.現代英語のあり方を決定づけた最大の要因の1つが,このヴァイキングの影響です.そして,彼らが通ってきた物理的な通路こそが,まさにこの北海だったのです.
英語史のダイナミズムを数十年学び,その舞台となった北海を目の前にして,泳がないわけにはいきません.さすがに船で渡ることはできませんが,沿岸でちょろちょろと泳ぐことで,英語史の荒波を肌で体感したかったのです.
浜に上がった後,ブヨかノミの類におおいに刺されたのに気付き,3週間近く経った今もまだ足が痒いです.失ったもの(?)もありましたが,英語史研究者として北海を制した(いや,完敗したのですが)喜びのほうが勝っています.
そのような知的な背景をご理解いただいた上で,ゴーグル姿で「なぜ英語の文には主語が必要なのか」を滑稽に語る私の YouTube 動画をご覧いただけますと幸いです.
なお,この北海での水泳にまつわるエピソードや,ヴァイキングが英語に与えた影響については,一昨日の heldio 「#1865. 私が夏とはいえど冷たい北海で泳いだ理由」でもお話ししています.そちらも合わせてお聴きください.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

6月10日の発売以来,本ブログや heldio,各種 SNS で大々的に展開している新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)ですが,おかげさまで第2刷も全国の書店さんに出回っており,大変な盛り上がりをみせております.手に取ってくださった読者の皆様,本当にありがとうございます.
これまで本書の内容については,章や節のレベルまでの大まかな構成が公式に公開されてきましたが,さらに細かな小見出しについては公開されてきませんでした.そこで,本日の記事では,本書のすべての小見出しまでを網羅した,最も詳しい目次を一挙公開したいと思います.
階層構造を整理した詳細な目次を眺めていただくだけでも,現代英文法の背後にどれほどダイナミックな英語史のドラマが隠されているか,その一端を感じ取っていただけるはずです.
はじめに
序章 英語はどのようにして現在の姿になったのか
1. 英語のルーツを求めて --- 印欧祖語からゲルマン語へ
2. 古英語の時代(西暦700年頃~1100年頃)--- 屈折語尾の豊かさとその衰退の兆し
3. 中英語の時代(1100年頃~1500年頃)--- フランス語の洪水と多様性
4. 近代英語の時代(1500年頃~1900年頃)--- 大母音推移と規範の確立
5. 現代英語とその先へ(1900年頃~)--- 世界語としての拡大と多様化
第1章 文の骨組みはその言語の個性
1. なぜ英語の語順は SVO なのか
1. 「私」「話します」「英語」
2. 世界の言語の語順
3. 基本語順とは何か
4. 古英語では語順は可変だった
5. 屈折語尾の弱化
6. 語順すら変化する
2. なぜ英語の文には主語が必要なのか
1. 日本語では主語は省略できる
2. かつての英語では主語の省略が可能だった
3. かつての英語では主語が想定されない文があった
4. 語順の固定化との連動
5. 英語における主語の重要性
3. なぜ存在を表すのに There is/are .... という構文を使うのか
1. be 動詞の後ろに主語が来る
2. 「動詞第2位」の伝統
3. 旧情報と新情報
4. 存在を表す目印へと「文法化」した there is ...
5. 形式上の主語 there
6. なぜ here ではなく there が選ばれたのか
7. さらに進む文法化
4. なぜ疑問文に do が現れるのか
1. 語順を入れ替える疑問文
2. do が現れる疑問文
3. do 疑問文の誕生
4. do 疑問文の有用性
5. なぜ3単現の s をつけるのか
1. 3単現の s への疑問
2. 英語の 3種類のこだわり
3. 1000年前の "learn" の屈折
4. 唯一生き残った 3単現の s
5. 英語のこだわりを垣間見せてくれる "窓" として
6. なぜ will を使って未来を表すのか
1. 「未来形」ではなく「未来表現」
2. かつての英語には未来表現は存在しなかった
3. 時間≠時制
4. will の意味変化 --- 「希望」が弱まって「未来」へ
7. なぜ「時・条件を表す副詞節」では未来のことも現在形で表すのか
1. 英文法の奇妙な例外ルール
2. 初期近代以前の英語では「未来」よりも「仮定法」を優先した
3. 仮定法の衰退から現在形の採用へ
4. 未来のことは現在形でも表せる
8. なぜ仮定法では if I were a bird となるのか
1. I was ではなく I were
2. 「仮定法」とは何か
3. 古くは明確に区別されていた 2つのモード
4. 衰退の一途をたどった仮定法
5. 「妄想モード」と過去形
9. なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか
1. -ing の多義性
2. 動詞から名詞を作る -ing 形 --- 動名詞の発達
3. 動詞から形容詞を作る -ende 形 --- 現在分詞の発達
4. 進行形の成立
5. 多義性は言葉の常
第2章 語形の変化は規則的に不規則
1. なぜ foot の複数形は feet になるのか
1. 不規則な複数形
2. 母音の発音と舌の位置
3. 発音界の磁石イ
4. フォーティズからフェートへ
5. 磁石イの広範な影響
6. 狭い窓からみた「不規則」
2. なぜ child の複数形は children になるのか
1. 不規則な複数形 --- その 2
2. 古英語にはさまざまな複数形の作り方が存在した
3. 古英語でも "不規則" だった child
4. 複数形の複数形
5. なぜ発音は「チャイルドレン」にならないのか
3. なぜ go の過去形は went になるのか
1. 不規則な過去形
2. 別の動詞からの流入
3. go の過去形の謎
4. 違う語源の語が活用表に入り込む例
5. よく使うものはすぐ手の届くところに
4. なぜ形容詞の比較級には -er と more があるのか
1. 比較へのこだわり
2. 3種類の比較級
3. more 型の登場
4. -er 型と more 型のすみ分け規則の芽生え
5. 「規則」もまた変化する
第3章 なぜ文字と発音が一致しないのか
1. なぜ A の読みは「アー」ではなく「エイ」なのか
1. 英語はエイ,ビー,スィー
2. lake は「ラーケ」ではなく「レイク」
3. 英語も600年ほど前まではアー,ベー,セーだった
4. 口の開きを小さく
5. 母音は今も変化している
2. なぜ I は大文字で書くのか
1. 英語だけが I を大文字で書く
2. アルファベットは大文字から始まった
3. 中英語の「縦棒地獄」
4. 「y を i に変えて es をつける」のも縦棒地獄の仕業
3. 「マジック e」とは何か
1. 母音の「短音」を「長音」に変化させる
2. 「マジック e 」の誕生
3. e のさまざまな役割
4. なぜ know や high には発音されない文字があるのか
1. 英語のスペリングと発音の乖離
2. 古英語や中英語では k や gh は発音されていた
3. 発音が変わってもスペリングは変わりにくい
4. 黙字にも利便性はあるか
5. なぜ one, two はこのスペリングでこの発音なのか
1. 「オネ」と「トゥウォー」
2. one の歴史
3. イングランド西部の訛り
4. two の歴史 --- 発音のしやすさを求めて
5. 発音とスペリングは別物
6. なぜ eleven, twelve というのか
1. 英語の数詞の怪
2. 余りで数えた eleven と twelve
3. 12進法の余韻
4. ひっくり返った thirteen
5. どんでん返しの fifteen
6. 未解決の謎:短い ten と長い -teen
7. どのように単語ごとのアクセントの位置が決まるのか
1. 英語と日本語のアクセント
2. 英単語のアクセント位置は不規則
3. 古英語では語頭アクセントが大原則だった
4. フランス語とラテン語からの衝撃
5. アクセントの英語化と混乱
8. アルファベット最後の文字 Z のミステリー
1. Z は最も出番の少ない文字
2. Z を含む英単語
3. 日陰者としての歴史
4. 発音は「ズィー」か「ゼッド」か
第4章 社会とともに変わり続ける英語
1. なぜ英語には類義語が多いのか
1. 英語は類義語の多い言語
2. 古英語期には ask のみが存在した
3. 中英語期にフランス語から inquire が流入した
4. 初期近代英語期にラテン語から interrogate が流入した
5. 英語語彙の 3層構造
6. 日本語も類義語の多い言語
2. なぜ英語には省略語が多いのか
1. 身の回りの省略語
2. 第1の技,切り落とし
3. 第2の技,切り貼り
4. 第3の技,イニシャル取り
5. 忙しい情報化の時代
3. 単数の they とは何か
1. Everyone thinks they are right.
2. every は「すべて」を個々にとらえる
3. 「みんな」は男性だけではないはず
4. かつての男性優位の価値観?
5. 「単数の they」の復活
おわりに
英語史年表
参考文献
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,先週に引き続き井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が出演しています.7月7日(火)に配信された「「日本語は遠回りに言う」。それ誤解です。」です.ポライトネスの日英差をテーマとして,お3方で盛り上がっています.水野さんと堀元さんとの掛け合いとともに37分間,画面に釘付けで視聴しました.勉強になるし,おもしろい!
一般に「日本語は遠回りで直接言わない,英語ははっきり直接言う」というステレオタイプが広く信じられていますが,社会言語学を専門とする井上さんによれば,この認識は「3割ぐらいしか合っていない」(むしろ逆)とのこと.今回の動画は,そんな言語ごとの対人関係調整のメカニズム,すなわち ポライトネス (politeness) をめぐる,目から鱗が落ちる議論が展開されています.
動画の前半で特に興味深いのは,英語の丁寧さは形式(統語や形態)ではなく音声に依存することが多いという指摘です.英語には日本語のような文法化された「敬語」 (honorific) のシステムが乏しい分,比較的ゆっくり,かつ明瞭に発音することで経緯や丁寧さを表現する特徴があるといいます.文字情報に頼りがちな学校の英語教育ではなかなか教えにくい領域ですが,音声的なアプローチが対人関係に直結している点は刺激的な視点です.
さらに議論は,英語における他者の領域への配慮へと展開します.日本語は自分の意見を緩めるヘッジ (hedge) を多用して関節的になりますが,英語はむしろ,相手の領域に土足で踏み込まないための固有の装置をもっています.I want to do this. という直接表現を避け,I am just wondering if I could ... のように「くねくね」と迂回する表現や,最上級表現を薄めて one of the best . . . などとする言い方が,その例とのことです.英語話者がいかに相手の独立を重んじているかが,映画の字幕翻訳の事例なども交えて解説されています.
動画の後半では,ガソリンスタンドや玄関先での「お見送り文化」の日米差や,都市部で見られる「儀礼的無関心」,さらには幼少期の子育てにおける言語化の訓練の差異にまで話が及びます.言葉にしないものを察する日本のコミュニケーション文化と,すべてを言語化する欧米の文化モデルの対比は,堀元さんが取り上げた現代の生成AI時代における言語化のストレスの話題ともリンクし,終始笑いが絶えないながらも深い思索へと誘われます.最後は,井上さんが仕掛けたといってよい学術的な「状況による」ボケの連発に,水野さんと堀元さんが応酬する展開も必見です.
日英差に関するステレオタイプを突き崩し,言葉の裏にある文化や心理を深く覗き込める,井上さん出演回らしい内容ですので,ぜひ上記の動画を視聴していただければとと思います.来週は井上さん出演の第3回,いよいよ爆発的なファイナル回が予定されています.すでに待ち遠しいです.
あわせて,井上&堀田のペアで緩く(ときに熱く)言語学を語る「いのほた言語学チャンネル」のほうも,ぜひチャンネル登録をお願いします!
人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,「いのほた言語学チャンネル」で私もいつも一緒におしゃべりしている同僚の井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が初登場されています! 6月30日(火)に配信された「ラーメン二郎の言語学。「ニンニク入れますか?」を解剖する。」です.お相手の水野さん,堀元さんとの掛け合いが実に見事で,37分の動画を私も笑いながらすっかり一気見してしまいました.
タイトルにある通り,今回の素材はなんと「ラーメン二郎」です.あの独特な注文システムを言語学の俎上に載せるという引きの強さですが,中身は社会言語学・言語人類学の本格的な導入となっています.お3方が縦横無尽に展開するトークのなかで,「コンテキスト化の合図」「スクリプト」「指標性」,さらには日本語の多種多様な「自称詞」の話題に至るまで,専門用語や概念がぎっしりと詰め込まれています.
同じ言語学を専門とするといっても,私の主たるフィールドは英語史であり,こうした社会言語学的な領域の本格的な議論は,はるか昔の学生時代に読んだきりのものも多いです.しかし,「いのほた言語学チャンネル」を始めて以来,井上さんの講義を一番近くで聴くことになり,いわば贅沢な「耳学問」を経ていつも復習させてもらっています.学びが本当に大きいです.
今回の「ゆる言語学ラジオ」の動画の最後では,井上さんが「いのほた言語学チャンネル」の宣伝をしっかりと差し込んでくれています.そちらの「いのほた」ですが,現在私が在外研究で海外に身を置いている関係上,収録の都合もあり,目下は週1回の更新ペースで不定の曜日にお届けしています.
「いのほた」の最新回として上がっている動画は,私がメインで「本は読むのも作るのも楽しい!出版には未来がある!」として熱く語っています.去る6月10日に刊行され,ありがたいことに早速増刷が出荷となった新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の制作舞台裏や流通の話題に触れています.出版不況と言われる時代にあっても,やはり「本づくりには夢がある」という著者としての思いを込めた回ですので,ぜひ合わせてご視聴いただき,チャンネル全体を応援していただければ幸いです.
さらにもう1つ,井上&堀田ペアの活動として,大修館書店が刊行する月刊誌『英語教育』にて,「いのほた言語学チャンネル presents 英語を深める社会言語学・英語史の視点」という連載記事を展開しています.基本的には,2人が毎月交代でメイン記事を執筆し,相方がコメントを寄せるという,まさに「いのほた」の雰囲気を誌面で再現するコンセプトです.現在発売中の7月号(6月12日刊行)は井上さんがメイン担当で,タイトルは「「あぶない!」はなぜ Watch out! になるのか ―― 日常に転がるスピーチアクトの日英比較」という,これまた魅力的な社会言語学のトピックです.
今回の「ゆる言語学ラジオ」への井上さんの出演回は来週と再来週も続く予定と聞いています.ぜひ今後の展開にも大いに期待したいですね!
去る6月10日に刊行された新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ三人称単数のsを付けるのか』(NHK出版新書)をめぐり,全国のリアル書店での発見報告を募る「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が連日盛り上がっています.毎朝の Voicy heldio のコメント欄などを通じて,有志の読者の皆さんから全国津々浦々のリアル書店での目撃証言が続々と寄せられており,感謝に堪えません.私が皆さんからの報告をもとに Google マップ上にピンを1本ずつ立てていくという企画ですが,本日までに累計で73本もの熱いピンが立っています.地図を画面で開くたびに,あちらこちらに熱いピンが灯っていく様子は,壮観です.
関連して重要なのは先日6月29日に出来した第2刷分が,今まさに全国の書店の棚に並び始めていることです.リアルな本の流通というダイナミックな動きと,デジタル上のマップが連動していくおもしろさ.今回は,著者の視点から,単なる本書のプロモーションを超えた,この目撃マップ企画の真の狙いを,学問論・メディア論の観点からお話ししてみたいと思います.
結論から申し上げれば,この「なぜさんたんげん目撃マップ」企画は,もちろん販促活動の一環ではあるのですが,3つのレイヤーにおいて学問と社会の新しいつなぎ方の実験でもあるのです.
第1のレイヤーは,書店員さんへのエールです.日々無数の新刊に囲まれるなかで,『なぜさんたんげん』に注目し,平積みや面陳をしてくれる全国の書店員さんがいらっしゃいます.その熱意をマップ上で可視化すること.また,それを見た他の書店員さんに影響を与えていただくこと.それによって,私の「英語史をお茶の間に」も,現実的な意味で達成されるからです.
第2のレイヤーとして,読者の皆さんに,hel活の当事者になっていただきたい,という思いがあります.ただ本を買って読むだけの存在から,目撃情報を寄せていただくことで,英語史を世の中へ流通させる同志兼当事者になっていただきたいという趣旨です.読者・著者・書店・出版社の「運命共同体」の創造ですね.
第3のレイヤーは,人文系アカデミアにとってのメディアサバイバル戦略としての側面です.とりわけ人文系に関して大学や学界が縮小の危機に瀕している現代,研究者が研究室や論文のみに閉じこもっている時代は終わりました.研究者がマルチメディア/クロスメディアを自前で構築し,時間をかけて,新しいインフラを整えていくこと.これこそが新しい時代においてアカデミアの活力となるだろうと信じています.
先日の記事「#6271. 「なぜさんたんげん目撃マップ」の第1次全国制覇達成!」 ([2026-06-28-1]) で触れた地方レベルでの第1次全国制覇に続き,ここからの目標は第2次全国制覇,すなわち47都道府県完全制覇です.以下の通り,まだピンの立っていない空白地帯は数多く残っています.
【 まだピンが立っていない県 】
・ 東北:青森県,岩手県,秋田県,山形県
・ 関東:栃木県
・ 中部:富山県,福井県,山梨県,静岡県
・ 中国:鳥取県,島根県,岡山県,広島県
・ 四国:徳島県,香川県
・ 九州:佐賀県,熊本県,宮崎県
もちろん,すでに多くのピンが立っている東京都,大阪府,愛知県などの皆さんも,さらに密度を濃くして面で埋め尽くすための追加報告は大歓迎です.「〇〇県〇〇市の〇〇書店に平積みされていました!」という一言の報告が,日本地図を英語史で埋め尽くしていく原動力になります.2刷を店頭で見つけた hellog 読者の皆さん,そして書店員さんからも,さらなる目撃情報をお待ちしています.皆さんとともに日本地図がピンで埋め尽くされる日を楽しみにしています!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
去る6月28日,「英語史をお茶の間に」届けようと日々奮闘している有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 7月号が公開されました.通算第21号となります.
今号のキャッチコピーは「まだまだ続く,#なぜさんたんげん そしてhel活の波」です.6月10日に世に送り出された新著『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)に関連する記事や熱い応援記事が,前号に引き続き,誌面を埋め尽くしています.
まずは ykagata さんによる「表紙のことば」から覗いてみましょう.瀬戸内海から四国をめぐる旅の記憶とともに,ドイツ語の "Straße von Hormus" (ホルムズ海峡)が英語 street に対応するという興味深い話題を展開してくれています.広い海峡を「ストリート」と呼ぶ言語的なおもしろさを,旅の実感と結びつける筆致はさすがです.ykagata さんは他にも「[古英語]名詞屈折表が stān で始まる本,始まらない本」など,英語史に直接・間接に関わる魅力的な記事を多数寄稿されています.
今号の収載記事をいくつかカテゴリー別に紹介していきましょう.
何といっても今号のお祭りの中心は『なぜさんたんげん』です.ari さんによる「英子さんたんげんシリーズ」は,普段のユーモアとダジャレのセンスが凝縮された4コマ漫画で,『なぜさんたんげん』のエッセンシャル版としての期待が集まっています.Grace さんの「『なぜさんたんげん』目撃の巻」は,書店での劇的な「昇格」の瞬間を淡々と描き出し,多くのリスナーの涙を誘う秀逸なドキュメンタリー「石巻の奇跡」を世に送り出しました.さらに umisio さんは「告白・懺悔」と題して,自身が過去に「3単現の s」に疑問を抱かなかった理由を深く掘り下げるシリーズを連載されています.
一方,お祭りの熱気の中でも淡々と学びを進めるレギュラー陣の記事も輝いています.その代表格が,listener kawakami さんによる「Prologue to Eneydos を読むシリーズ」です.Caxton の印刷技術と英語史の深淵に迫るこの硬派な連載は,編集委員の umisio さんをして「浮かれた頭を冷やしてくれる,ウェーランドの経済学言論の講義のようだ」と言わしめるほどのシリーズとなっています.私自身も,専門家の観点から,これが貴重な中英語精読シリーズになっているものと評価しています.
語源やクイズの分野も百花繚乱です.mozhi gengo さんは「Beryl と同語源の日本語は○○」やヒンディー語の借用語コラムなど,圧倒的な知識量で独自の深掘りを展開されています.lacolaco さんによる「英語語源辞典通読ノート D」は,着実に歩みを進める職人技の鑑です.『英語語源辞典』の読み方解説も加わり,ますます有用性が高まっています.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」は,学校の授業ですぐに使える実践的な内容とすぐれた出題センスが相変わらず光っています.
さらに,前橋市での英語史講座を満員御礼のなかで終えられた kendama_player さんの熱い報告記事や,あまねちゃんによる「オフ会感想」と『英語語源ハンドブック』1周年記念記事,こじこじ先生の楽曲「不規則動詞戦争」,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,各世代や地域におけるhel活のリアルな息吹が伝わってきます.佐久間さんの「日本語由来の医学英語」も専門家らしい視点を与えてくれます.
巻末の「あゆみ」では,Grace さんが北千住オフ会の定着や helwa 開設3周年の軌跡をきれいにまとめてくださいました.そして umisio さんによる「編集後記」は,今号の多様な熱量をユーモアたっぷりに総括してくれています.
最後になりますが,今号を編み上げてくださった編集委員の Lilimi さん,Galois さん,Grace さん,umisio さんには深く感謝いたします.そして,素晴らしいコンテンツを寄稿してくださったヘルメイトの皆さんも,本当にありがとうございました.
hellog 読者の皆さんも,ぜひこの熱気溢れる Helvillian 7月号のページを訪れて,じっくりと味わってみてください.そして,自分も日頃のhel活の成果をこのウェブマガジンに載せてみたい,英語史の輪に加わりたい,と思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への参加をご検討いただければと思います.helwa にお入りになった瞬間から,あなたもヘルメイトです.一緒に英語史をお茶の間に届けていきましょう!
一昨日の6月28日,「いのほた言語学チャンネル」の最新回「本は読むのも作るのも楽しい!出版には未来がある!」が公開されました.
今回の動画では,今月10日に刊行され,おかげさまで発売前増刷を達成した新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の制作体験の舞台裏を,相棒の井上逸兵さんとともに熱く語っています.今回は本の内容そのものというよりも,「本を作る,売る,届ける」という出版メディアのからくりや裏側にスポットを当てた,メディア論的な対談となっています.
今回の本は,6年ほど担当の編集者さんと二人三脚で文体調整や構成を練り上げてきたものであり,本の半分は編集者さんの作品であるといっても過言ではないほどのコラボレーション作品となりました.著者の名前が前面に出る本というメディアも,背後には編集長,校正・校閲の方々など多くの人々が関わっており,まさに「皆で担ぎ上げて作るもの」なのだと改めて実感させられました.
対談の後半では,井上さんより,英米における日本文学の翻訳を小規模な出版社が仕掛けてブームを起こしている興味深い現象が紹介され,出版不況と言われる現代における「小さな出版」の可能性について議論が及びました.また,新聞の書評欄の広告出稿の変化など,時代の移り変わりを示す生々しい業界事情に触れつつ,これからのアカデミアや出版界を盛り上げるための「ソーシャルメディア」「出版」「リアルイベント」という3本柱の重要性について熱く語り合っています.
本というメディアの特性や,言葉が読者に届くまでのダイナミズムに関心のある方は,ぜひ動画をご視聴ください.動画を視聴し終わった後には,本書やリアル書店の棚の見え方が少し変わってくるかもしれません.
本書の刊行を支えてくださったNHK出版の編集や営業の皆さん,熱心に店頭に並べてくださっている書店員の皆さん,そして様々な形で応援し,本書を手に取ってくださっている読者の皆さんに,この場を借りて心より深く御礼申し上げます.
『なぜさんたんげん』は,昨日,元気に2刷出来しています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
本日6月29日,いよいよ新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の第2刷が出来となります!
おかげさまで6月10日の発売以来,非常に好調な滑り出しとなり,今週中には増刷分が全国の書店の店頭に並び始める予定です.未入手の方は,ぜひこの機会にお近くのリアル書店などで手に取っていただければ幸いです.
さて,この直近の週末に,本書の編集を担当してくださったNHK出版の田中菜乃香さんとともに,Voicy heldio にて3回にわたる対談を収録・公開しました.読者の皆さんよりお寄せいただいたたくさんのレビューやご感想に対して,2人でじっくりとコメントバックしていくという企画です.まずは,本書をいち早く読み,貴重な声を届けてくださったすべての皆さんに,この場を借りて心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
配信した3回分のリンクを以下に集約しておきますので,ぜひお聴きください.
・ 「#1854. 『なぜさんたんげん』最速レビューへ2人でコメントバック(前編) with 編集者・田中菜乃香さん」 (2026/06/27)
・ 「#1855. 『なぜさんたんげん』最速レビューへ2人でコメントバック(後編) with 編集者・田中菜乃香さん」 (2026/06/28)
・ 「#1856. 『なぜさんたんげん』2刷出来! --- 編集者・田中菜乃香さんとのアフタートーク」 (2026/06/29)
上記2つめの「後編」配信回において,私が問題提起も含めて「英語史は役に立たない」という趣旨の発言をしたところ,heldio/helwa のコアリスナーである ykagata さんより,洞察に満ちたコメントをいただきました.とても腑に落ちる内容だったので,こちらにも引用させていただきます.
「英語史は役に立たない」は強烈なパンチラインですね。「役に立つ」は美徳のようでいて、同じことに「役に立つ」別のものと交換できてしまう弱みあります。その点「おもしろい」は唯一無二で替えの効かないところが、歴史のようなエヴァーグリーンなものにふさわしい美徳だと思いました。なぜさんたんげん」、長く書店に置かれますように。
「役に立つ」という実用性の軸だけで言語や歴史を測ろうとすると,より効率的な別の手段が現れた瞬間に,その存在意義が代替されてしまう --- まさに鋭い一喝ですね.それに引き換え,ことばの歴史を紐解くプロセスから得られる「おもしろさ」や知的好奇心の充足は,他の何物にも替えがたい唯一無二の価値をもっています.英語史という分野の価値をこれ以上ない形でことばにしていただき,著者としても深く励まされました.ykagata さん,素敵なメッセージをありがとうございました.
改めまして,『なぜさんたんげん』は今回の増刷(第2刷)を経て,さらに多くの読者のもとへ羽ばたこうとしています.すでに入手されている皆さんにおかれましては,全国各地の書店での並び具合を報告し合うお祭り企画「なぜさんたんげん目撃マップ」企画へのご協力を,引き続きよろしくお願いいたします.皆さんとともに,この英語史の輪をさらに広げていければと願っています.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

発売からほぼ18日が経ちました.新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書,通称『なぜさんたんげん』)のプロモーションとして,Google マップ上で展開してきた「なぜさんたんげん目撃マップ」企画にて,ついに第1次全国制覇(地方レベルでの全制覇)を成し遂げました.
実際の達成は6月24日のことだったのですが,日本全国すべての地方(北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州・沖縄)にヘルメイトの皆さんの熱い視線が届き,ピンが灯りきりました!
このスピードでの地方レベル全制覇は,在外の著者1人の力では到底成し遂げられませんでした.まさに「応援読者×全国の書店様×NHK出版営業さん」という三位一体の熱量が,見事なパスを繋ぎ続けた結果にほかなりません.
まずは,ヘルメイトの皆さんの草の根の力がありました.未来屋書店石巻店での素晴らしいドラマを note で熱く語ってくださった Grace さんの「石巻の奇跡」をはじめ,khelf 藤平さん作の特製POPを携えて三省堂書店岐阜店にアプローチしてくれたあまねちゃんの見事なパスなど,全国の有志による「hel活」 (helkatsu) がすべての起点となりました.
そして,その熱量を受け止めてくださった全国の書店員の皆さんの熱い共感に,最大の敬意を表します.三省堂書店岐阜店の書店員さんの「中学生の時のなんで??を思い出した」というコメントに代表されるように,「丸暗記の呪縛を解く」という本書の思想に深く共感し,一等地で平積みしてくださっている現場の力には感謝しかありません.直近でも,くまざわ書店エキア北千住店などが素早く連動し,棚を盛り上げてくださいました.書店員の皆さんにおかれましては,ぜひ以下の note 記事もご参照ください.
さらに,この動きを公式の武器として全面バックアップしてくれたのが,NHK出版営業部の皆様の総進撃です.前線から,まだピンの立っていなかった中国・四国地方を中心に14件ものピン写真をドカドカっと送り届けてくれたプロの組織力と熱量には脱帽するばかりです.この週末の連続新聞広告などの強力な空中戦も含め,この本を届けようとするプロフェッショナルなエネルギーを感じました.
さて,お祭りのような初速の盛り上がりを経て,本書は次のステージへと進みます.明日6月29日は,待望の第2刷出来となります.全国の書店の棚が再び『なぜさんたんげん』で燃え上がります.ここからは,英語の丸暗記の圧力に苦しんでいる一般の学習者や教育現場に,英語史から救いを届けるフェーズに入ります.
そして,目指すは第2次全国制覇.すなわち都道府県レベルでの完全制覇です.東北,中国・四国を含め,まだ白地図のまま残っている県がいくつもあります.ぜひ,お近くの書店で本書を見かけましたら,「#なぜさんたんげん目撃マップ」のハッシュタグとともに,heldio のコメント欄や X 投稿などで目撃情報をお寄せください.引き続き,皆様の熱い応援をよろしくお願いいたします!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が好評発売中である.おかげさまで各地の書店でもよく売れている模様で,著者として嬉しい限りである.
さて,先日6月20日付けで,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの ykagata さんが,ご自身の note にて実に読み応えのある批評的考察記事を公開してくださった.タイトルは「「語源」の本でなく「英語史」の本が書店に並ぶこと」である.この記事が,英語史の非専門家である読者の視点から書かれたものとは信じられないほどに鋭く,かつ温かい賛辞に満ちており,私は深く感激した.本日の記事では,この ykagata さんの note 記事を紹介しながら,hellog 読者の皆さんにもぜひご一読を促したいと思う.
ykagata さんの考察の主眼は,今回の新著のメインタイトルに,敢えて「語源」ではなく「英語史」という硬派なキーワードが掲げられたことの歴史的・出版史的な意義にある.近年の出版界における「語源」ブームの商業的な軽薄さに緩やかな警鐘を鳴らしつつ,地味で硬派な「英語史」こそが市民権を得ていくのかもしれない,力をもつ本当のムーブメントになっていくのかもしれない,という実に刺激的な予言が展開されているのだ.
とりわけ,著者の私自身が読みながら文字通りに打ち震えたのが次の3箇所である.
まず1点目として,編集者として表題にずばり「英語史」を掲げる決断をしたNHK出版の編集者,田中菜乃香さんは慧眼だった,という指摘である.
2点目に,その決断に至る背景には,著者の堀田による「hel活」すなわち英語史のアウトリーチ活動の長年の積み重ねが欠かせなかった,と言及してくださっている点である.
そして3点目に,「英語史だなんていって一般読者に分かってもらえるだろうか」と躊躇していた英語史関係者自身が,今後堂々と「英語史」を謳う契機として,今回の本の出版が重要な出来事なのではないか,と寿いでくださっている点である.出版史上,表題に「英語の歴史」を掲げる新書は寺澤盾先生の名著などがあるけれども,「英語史」をずばり掲げた新書はきわめて珍しいのではないか,という出版史的な縦のパースペクティブにも唸らされた.実際,その通りなのだ.
これまでは一般向けの書物のタイトルにするには「硬すぎる」と敬遠されがちだった「英語史」であるが,これからはもっと多くの関連書が安心してこの名前を題名に冠して出てこられるようになるのではないか,という予言は本当に力強く,勇気づけられる.
著者として,また1人の英語史研究者として,この評価を最大の賛辞と感謝をもって受け入れたい.ぜひ ykagata さんの note 記事をじっくりと味わっていただければっc.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

「#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています」 ([2026-06-14-1]) でお知らせしたとおり,6月10日に発売されたNHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)について,リアル書店での目撃情報を Google Map 上にピン留めして可視化していくという試みを進めています.
発売・企画開始から2週間が経ちますが,全国津々浦々より,書店で平積みになっていた,面陳されていた,などのご報告が届いています.書店員さんによる撮影・SNS投稿の許可をいただくことができた写真については,写真も地図上に反映しています.こちらの目撃マップより現時点での状況をご確認いただければと思います.
ありがたいことに,NHK出版公式からは「地域の偏りなく全国の書店でよく売れている」という非常に嬉しい報告が入ってきています.この全国的な展開には大きな意義があります.というのも,本書のような英語史の専門知識をベースとした書籍が,一部の限られた大都市圏だけでなく,全国各地の書店で手にとられているということは,「英語史をお茶の間に」広げていきたいという私の長年掲げてきたモットーがが,着実に実を結びつつあることを示すものだからです.著者としてこれほど心強いことはありません.
さて,手元にある6月21日付けの「なぜさんたんげん目撃マップ」のデータを紐解いてみましょう.現時点での登録状況を分析すると,やはり東京や大阪をはじめとする大都市圏の大型書店を中心に多くのピンが集中していることが見て取れます.どうしても人口や書店の規模に比例して目撃情報が集まりやすいため,マップの上では都市部にピンが重なる傾向にあります.本書の全国展開という観点からすれば,非都市部の書店での目撃情報はまだまだこれからという段階ではありますが,特筆すべきはピンの数が日々どんどん増えてきているという事実です.日々草の根のように情報が寄せられ,地図がジワジワと埋まっていく動態そのものが,本書が世の中に受け入れられていく様子を物語っています.
また,目撃マップを注意深く眺めてみると,岐阜の辺りにぽつんと紫色のピンが付されているのにお気づきの方もいるかもしれません.実はこれ,いずれ本格化するはずの新企画の「前哨戦の跡」です.この企画については,いずれ時期が来ましたら告知したいと考えておりますので,今は静かにその伏線を示唆するにとどめておきたいと思います.どうぞお楽しみに.
今後とも,皆様からの目撃情報をお待ちしております.SNS などでハッシュタグ「#なぜさんたんげん目撃マップ」あるいは単に「#なぜさんたんげん」と付していただけますと,私のほうで必ず捕捉します.ぜひ引き続き本書を応援していただけますと幸いです.ともにこのお祭りを盛り上げていきましょう!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
6月10日(水),NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が発売され,おかげさまで全国各地より温かい反響をいただいています.今回は,先日宮城県の未来屋書店石巻店で起きた,ある胸の熱くなる実話を枕にして,英語史という学問分野の地位の変遷について考えてみたいと思います.
ことの始まりは,熱心な「ヘルメイト」(英語史を広める活動をしている仲間)の1人である Grace さんが発売直後に同書店を訪れた際,拙著が入荷直後のラックの最下段,「日陰の棚」にひっそりと置かれているのを目撃したことでした.Grace さんはその様子を note に投稿され,それに感銘を受けた私がさらに note で応答,すると今度は Grace さんが本書のレビューをお書きになるという流れで,それこそ本書が目立つ特等席へと「昇格」を果たすという,劇的なドラマが展開しました.
この一連の「棚の昇格」をめぐる応酬は,単なる人情話や一著者の嬉しかった報告にとどまらない,きわめて象徴的な意味を帯びています.ぜひ,以下の note 記事のダイナミックな流れを直接ご覧いただければと思います.
・ 6月13日の Grace さんによる note 記事「『なぜさんたんげん』目撃の巻」
・ 6月19日の堀田による note 記事「石巻の奇跡――『なぜさんたんげん』がラックの最下段から「昇格」した日」
・ 6月20日の Grace さんによる note 記事「心に刻みたい「英語史が教えてくれること」」
この「ラックの最下段(日陰)から,教養新書棚の正面(表舞台)への昇格」という物理的な移動の軌跡は,昨今の「英語史」という学問分野そのものが辿ってきた,そして向かっていくメタファーのように思われます.
これまで英語史という分野は,実用英語や記述文法,あるいはTOEIC対策といった華やかな「表舞台」の影に隠れ,いわば書棚の「最下段」のような扱いを受けることが少なくありませんでした.「そんな古い言葉の歴史を知って何になるのか」「試験に出ないから不要だ」という実利主義の波に押され,日陰の道を歩まざるを得なかった時代が長かったのです.
しかし,現代の英語学習者が抱く「なぜ3単現には s がつくのか」「なぜ go の過去形は went になるのか」といった素朴な「なぜ」にもっとも上手に答えを与えられるのは,多くの場合,英語史の知見なのです.暗記の呪縛から学習者を解放する力をもつこの学問,そして言語と歴史の深い教養を内包するこの学問が,いつまでも最下段に眠っていてよいはずがないのです.
今回の石巻での出来事は,全国の「hel活」(英語史を広める活動)の仲間たちの草の根の熱意が書店員さんの心を動かし,学問をついに表舞台へと引き上げている象徴です.背景には,もちろん,多くの英語史研究者によるたゆまぬ研究・教育・啓蒙活動の努力があったことも事実です.
読者の皆さんとともに,この英語史の表舞台への登場を静かに愛でつつ,今後とも「英語史をお茶の間に」浸透させていくことをここに改めて宣言したいと思います.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
一昨日6月13日(土),英語教員が集うオンライン・セミナーにて,新刊『なぜさんたんげん』についてトークさせていただく機会をいただきました.参加者が小中高などの英語の先生方ということで,本書で取り上げている数々の「英語に関する素朴な疑問」の代表選手である,「なぜ3単現の s をつけるのか?」をピックアップし,学校の授業などでそのまま使えるレジュメを作成・配布しました.そちらに若干の改変を加えて,以下のようにブログ記事化しました.
なお,改変済みの PDF をこちらに置いておきますので,先生方におかれましては,自由にダウンロードし,配布・引用・改変していただいてけっこうです.授業の導入,学年通信,図書室の掲示用コラムなどに最大限にご活用ください.生徒からの「なぜ丸暗記しなきゃいけないの?」という疑問に,英語の歴史から明快に応える内容となっています。
【 英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか 】
1. 現代英語の「いびつな」現在人称活用
私たちが中学校で最初に習う一般動詞の活用(例:learn「学ぶ」)を改めて見直してみましょう.
| 人称 | 単数形 (Singular) | 複数形 (Plural) |
|---|---|---|
| 1人称 | I learn | we learn |
| 2人称 | you learn | you learn |
| 3人称 | he/she/it learns | they learn |
| 人称 | 単数形 (Old English) | 複数形 (Plural) |
|---|---|---|
| 1人称 | ic leorn-ie | wē leorn-iaþ |
| 2人称 | þū leorn-ast | yē leorn-iaþ |
| 3人称 | hē/hēo/hit leorn-aþ | hīe leorn-iaþ |
上記のオンライン・セミナーでの私のトークについては,参加者のお1人 Rie Miyazaki 先生が note 上で公開されている記事「【開催レポート】Galileo Neo 第3回セミナー:「AI時代の熟練指導者の腕の見せどころと,3単現のSから始まる英語史のロマン」2026.6.14」の後半にて,素晴らしい紹介とまとめをくださっているので,そちらもご覧ください.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

6月10日(水),NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が発売されました.大変ありがたいことに,皆さんの熱い応援のおかげで発売前増刷となり,発売後もご好評いただいています.心より御礼申し上げます.
本書の刊行に合わせて,このたび全国のリアル書店での本書の目撃情報を皆さんと共有し,ともに楽しむための新企画「なぜさんたんげん目撃マップ」を立ち上げました.
本企画は,全国のリアル書店を訪れた皆さんから「ここに『なぜさんたんげん』が並んでいた!」「こんな風に平積みされていた!」という目撃情報を寄せていただき,それをもとに著者が Google Map 上にピンを立てて「見える化」していくという試みです.私自身は現在,イギリスのスコットランドに滞在しているところですが,数千キロ離れた地からも,日本地図の上に次々とピンが立っていく様子を不思議な,かつ熱い気持ちで見つめています.
企画がスタートしてまだ間もない状況ですが,本日23:50の段階で,日本全国のあちらこちらの書店に計19本のピンが立っており,素晴らしい走り出しです.これまでにご報告をいただいた皆さん,本当にありがとうございます.地図は,直接 Google Map の URL からアクセスできるほか,こちらの 『なぜさんたんげん』著者公式HPからもジャンプすることができます.
hellog 読者の皆さんにも,地元や学校・職場近くや旅先のリアル書店へ足を運ばれた際には,ぜひ本書を探していただき,目撃情報をテキストや写真でご報告いただけますと幸いです.SNS へは #なぜさんたんげん目撃マップ とハッシュタグを付けて投稿していただけますと,著者が定期的に巡回して受け取ることができます.あるいは,毎朝お届けしている Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の任意の配信回のコメント欄より,お知らせいただく形でもけっこうです.
ただし,書店での写真撮影に関しましては,ぜひ留意していただきたいマナーがあります.撮影の可否や SNS へのアップロードに関する対応は書店さんによって対応が異なりますので,必ず事前に書店員さんへ「写真を撮ってよいですか」「SNS にあげても良いですか」と一言お声がけをいただき,そのご指示に従っていただきますようお願いいたします.ご報告はテキストのみでも十分ですので,気軽にご参加ください.
皆さんからお寄せいただく1本1本のピンが,本書を,そして英語史を日本全国へと広げていく大きな力となります.ぜひ,この発売後のお祭りをコミュニティの皆さんと一緒に楽しんでいければと願っています.皆様の積極的なご参加を心よりお待ちしています.
一昨日の heldio でも「#1839. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画を立ち上げました」として本企画をご案内していますので,そちらも合わせてお聴きいただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の版元のNHK出版より,本書に掲載されている古英語・中英語部分を読み上げた音声にアクセスできる特設ページが公開されています.著者による読み上げ音声をお聴きいただけます.
画面上の英文の上をクリック・タップしていただくだけで,簡単に音声を再生することができます.本書の第1章や第3章で登場する Gregorius hine afligde などの古英語文や,Ich was in one sumere dale といった中英語文の「生の響き」を,ぜひ耳から体験してみてください.
古英語や中英語といった古い時代の英語を学ぶ際,誰もが抱く最初の,そして最も素朴な疑問の1つが「どうして大昔の英語の発音がわかるのか」という点ではないでしょうか.録音機器など存在しなかった1000年も前の言語音をいかにして推定するのかという問いは,歴史言語学にとってきわめて本質的な課題です.
この問題については,本ブログでも「#5314. どうして古英語の発音がわかるのですか? --- YouTube で答える素朴な疑問」 ([2023-11-14-1]) や,そこから張られているリンク先の記事でも取り上げていますので,ご参照ください.当時の表音文字としてのローマン・アルファベットの綴字体系を分析すること,あるいは詩の脚韻や頭韻といった韻文の証拠を活用すること,さらには現代の諸方言に残る痕跡から比較言語学的に復元することなど,様々な文献学的・言語学的なアプローチを通じて,かつての発音に迫ることができるのです.
そのような緻密な研究の積み重ねによって明らかになった古音の響きを,今回の特設ページでは実際に再現しています.文字として眺めるだけではなかなか実感が湧きにくい中世の英語ですが,声に出して読まれた音を聴くことで,現代の英語やあるいは他のゲルマン諸語との有機的なつながりが見えて(聞こえて)くるはずです.
新書をお手元に置いていただき,各章の解説と合わせて音声を聴き進めていただけますと,英語の文法が歴史を通じていかにダイナミックに変容してきたか,その立体的な姿をより深く,納得して味わっていただけることと思います.
上記のNHK出版公式の読み上げ音声HPとは別に,本書に関する著者による公式のHPもオープンしており,そちらはすでに1000回を超えるアクセス数となっています.様々な形で本書の魅力を伝えていますので,ぜひどうぞ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

昨日2026年6月10日に刊行された新著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)ですが,たいへんありがたいことに,発売初日から大きな反響をいただいております.手に取ってくださった皆様に,この場を借りて心より御礼申し上げます.
さて,本日はまだ本書を購入しようか迷っている方,あるいは「英語史という分野に興味はあるけれど,新書1冊を読み通せるか不安だ」という方にお届けしたいニュースがあります.昨日付けで,NHK出版公式のデジタルマガジンにて,本書の「序章」の全文が無料公開されました.記事のタイトルは「英語はどのようにして現在の姿になったのか──英語の歴史を遡る旅【英語史で解く英文法の謎】」です.
今回のデジタルマガジンで公開された「序章」は,本書に沿った「英語史概説」であり,本書全体の「地図」でもあります.壮大なる英語史のタイムラインを一望できる構成となっています.英語が独自の歩みを始める前の「印欧祖語」の時代から,5世紀の西ゲルマン諸民族のブリテン島渡来による「古英語」の誕生,1066年のノルマン征服がもたらした「中英語」の激変期,そして大母音推移や規範主義の台頭をくぐり抜けた「近代英語」を経て,21世紀の「現代英語」にいたるまでの1500年以上の旅路が,コンパクトに凝縮されています.
この序章を読んでいただくと,本書の狙いがよく分かると思います.本書を通読すれば,私たちが日頃学校文法で悩まされている「スペリングと発音の乖離」の謎や,なぜ feet や went のような不規則変化が残っているのかという素朴な疑問に対して,歴史的な視点から「なるほど,そういうことだったのか!」と腑に落ちる感覚を味わっていただけるはずです.英語という言語は,ゲルマン語の頑丈な骨格の上に,フランス語やラテン語の要素を幾重にも積み上げ,社会の荒波に揉まれながら増改築を繰り返してきた「巨大な建築物」なのです.
本書の目的は,単に過去の歴史的事実を羅列することではありません.一見すると不合理に思える英文法の「例外」や「謎」を歴史の流れの中に正しく位置づけることで,単語や文法の解解像度を上げ,納得しながら英語を学んでいただくことにあります.
まずはこの無料公開された「序章」をお読みいただければと思います.序章に続く本書の本体の部分,第1章から第4章で取り上げられる「謎解き」については,ぜひ全国の書店やオンライン書店にて,新書の実物を手にお楽しみいただければ幸いです.
1人でも多くの英語学習者、そして英語教育に携わる先生方のもとに本書が届き,英語を学ぶ楽しさがさらに広がっていくことを願ってやみません.SNS などでも、ぜひハッシュタグ「#なぜさんたんげん」をつけて応援していただけますと大変励みになります.どうぞよろしくお願いいたします.
NHK出版デジタルマガジンからは,他にも本書からの2つの部分がすでに公開されています.以下より訪れていただければ.
・ 5月11日公開,「紀元前からのこだわり?なぜ3単現の s をつけるのか【英語史で解く英文法の謎】」(本書の第1章第5節に相当)
・ 5月28日公開,「英語の「なぜ」には,驚くべき歴史と物語が潜んでいる【英語史で解く英文法の謎】」(本書の「はじめに」に相当)
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

ついに,この日を迎えることができました.長年本ブログを読み,応援してくださっている読者の皆さんに,まずは何よりも先にこの言葉をお届けしたいと思います.
本日2026年6月10日,拙著『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書),通称・略称『なぜさんたんげん』が,公式に全国の書店で発売日を迎えました.月刊誌での2年間にわたる連載期間から数えれば実に長い道のりでした.担当編集者の方とは実に500通を超えるメールのラリーを重ね,時にはニュージーランド,オーストラリア,そしてスコットランドへの移動を跨ぎながら,原稿を書き直し,校正を続けてきました.それらがついに1冊の書籍として結実し,日本の皆さんの手元に届く瞬間を迎えたことになります.著者として実に深い感慨を抱いています.
そして本日,発売当日に当たり,もう1つ爆弾級のご報告を差し上げます.発売日の前日となる昨日6月9日の夕方,NHK出版より公式のアナウンスがありました.なんと「発売前増刷」が決定したというのです.
まだ全国の書店のレジを通っていない段階、つまり発売日前に増刷がかかるというのは,著者にとって名誉です.それはひとえに,SNS や note 等を通じて「hel活」 (helkatsu) を応援してくださっている皆さんが自発的に作り出した圧倒的な熱量と大波ゆえにほかなりません.著者として,これほど嬉しく心強い応援はありません.深く御礼申し上げます.
今日の発売に向けて,1ヶ月前から毎日のように hellog, heldio, SNS, YouTube 等で展開してきた発売前の広報は昨晩をもって無事に全日程を完走いたしました.これは,「著者が自分でできる最大限の広報をやってみたら,一体どこまで行けるか」を確かめる1つの挑戦でもありました.これほどまでにエネルギーを費やし,読者の皆さんと一緒になって駆け抜けた1ヶ月間は,どのような結果になろうとも「完全にやりきった」と言い切れるものです.この爽快なやりきった感があること自体で,私としては大成功だったと考えています.お祭りに付き合ってくださった皆さん,本当にありがとうございました.
さて,本日無事に発売日を迎えたわけですが,もちろん今後も hellog では『なぜさんたんげん』に注目していきます.本書で取り上げた24の英文法の謎について,さらに一歩深掘りした解説や考察を増やしていくつもりです.ここからは本を開きながら,じっくりと英語史の沼を一緒に歩んでいただければと思います.
本日以降,全国のリアル書店の店頭に,本書が並び始めているかと思います.もし書店の棚や新刊コーナーで本書を見かけましたら,写真付きでもテキストのみでも構いませんので,SNS 等で「#なぜさんたんげん」 のハッシュタグを付けつつ,教えてください.皆様からのリアルなご報告を,ドキドキしながらお待ちしております.
『なぜさんたんげん』著者公式HPも,最速レビューのコンテンツを含め,たいへん盛り上がっています.ぜひ訪れていただければ.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
いよいよ明日6月10日,私の最新刊「#なぜさんたんげん」こと『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』が発売となります.これまで本ブログ,Voicy heldio などで大々的に広報活動を展開してまいりましたが,すでに皆さんから温かいご声援やご期待の声を多くいただき,著者としてこれほど嬉しいことはありません.心より御礼申し上げます.
本日の hellog 記事では,発売が明日に迫った発売前最後のタイミングで,あらためて Amazon 予約特典についてご紹介したいと思います.今回の予約購入者に PDF で配布される書き下ろし特別編のタイトルは,「なぜ doubt のスペリングに b があるのか」です.この特典節は一般には出回らない限定コンテンツとなりますので,ぜひこの最後のタイミングで Amazon 予約を検討していただければ幸いです.
今回の書き下ろし特典節は,単なるおまけのコラムではありません.本書の本体とみごとに溶け込むスタイルで書かれており,とりわけ第3章第4節や第3章第5節との連携にご注目いただければと思います.実際に,入手されたら本書を印刷してページの間に折り込んでいただきたいくらいなのです.そのために,なんと配布される PDF は最初から「トンボ」付きの仕様になっているという,編集の田中菜乃香さんの芸の細かさにも要注目です.この仕掛けには私も深く唸らされました.
ここで,特典節 PDF の最初のページの冒頭部分を画像でチラ見せいたします.

いかがでしょうか.ここを入り口として,中身ではルネサンス期の知識人たちの「ラテン語かぶれ」の暴走が描き出されていきます.フランス語から入ってきた doute というシンプルなスペリングに対し,彼らが「由緒正しき語源形」であるラテン語 dubitare の存在とその知識をひけらかしたいがために,わざわざ発音もしない b をねじ込んだという,歴史の人間味あふれるドラマが展開します.
これはいわゆる語源的綴字 (etymological_respelling) の典型例ですが,特典節ではさらに暴走の極めつきである island の勘違いスペリングの謎や,なぜ発音がスペリングについていかなかったのかという深い議論へとつながっていきます.
本書をより深く,立体的に楽しむための強力な橋渡しとなる1節です.発売後にはこの PDF 特典は入手できなくなってしまいますので,まだ迷われている方は,ぜひ今すぐ Amazon の『なぜさんたんげん』のページ よりご予約ください.
それでは,明日の『なぜさんたんげん』の正式な船出を,皆さんと一緒にお祭りとして楽しんでいきましょう!
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
先日の記事「#6244. 『なぜさんたんげん』の担当編集者・田中さんと対談しています」 ([2026-06-01-1]) の続編です.
いよいよ発売日まであと2日と迫りました,NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)に関する heldio 対談の続編をお届けします.今回は直近に配信された2回の対談回(Part 3 および Part 4)のエッセンスをぎゅっとまとめてご紹介したいと思います.
・ 第3回対談(6月4日配信),「#1831. 『なぜさんたんげん』総選挙の結果を編集者・田中菜乃香さんとともにレビュー」
・ 第4回対談(6月7日配信),「#1834. 新書『なぜさんたんげん』はベースとなった連載記事からいかに成長したか --- 編集者・田中菜乃香さんとの対談 Part 4」
まず,6月4日に配信した Part 3 では,5月下旬に実施した「24の疑問総選挙」の確定結果を,著者の私から編集の田中さんへ初めてサプライズシェアする,という企画を行ないました.96名もの方にご投票いただきまして,その節は皆さん本当にありがとうございました.
注目の第1位は,我々の期待と狙い通り,やはり「なぜ3単現の s をつけるのか」が38%の得票率でダントツのトップでした.もしこれが1位でなかったら本書のタイトルはどうなっていたんだという恐怖もありましたが,一安心です.驚いたのは2位以下のランキングで,第2位に「なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか」(21%),第3位に同率で「なぜ時・条件を表す副詞節では未来のことも現在形で表すのか」と「アルファベット最後の文字 z のミステリー」(19%)がランクインしたことです.
田中さんも指摘されていましたが,学校文法の定番である go/went のような理不尽度の高い具体的な疑問よりも,むしろ抽象度や玄人好みの高い問いが上位へ食い込んできたのは意外な結果でした.対談では,お互いの「推し疑問」についても初めて語り合っており,田中さんは自明すぎて普通は疑問にすら思わない数詞の「one, two の綴字と発音の謎」や「eleven, twelve の形」を挙げられ,さすがプロの編集者というべき鋭い視点に唸らされました.私は「I の大文字問題」や,「there is/are 構文」に一票を投じています.
続いて,6月7日に配信した Part 4 では,数年にわたる雑誌連載から新書へと編み直すプロセスにおいて,編集者と著者がどのような共同作業をしてきたのか,その舞台裏を赤裸々にトークしました.
元の雑誌連載は中学生向けに相当優しく書かれていたため,二字熟語を制限するなど日本語の言い回しを徹底的にチューニングしていましたが,新書化にあたっては大人向けの文体へと仕立て直す大がかりな文体調整を行ないました.そのなかで,単行本ならではの魅力として加わったのが,いくつかの「書き下ろし」コンテンツです.
とりわけ大きな柱となったのが,今回の新書で新たに追加された「there is/are 構文」に関する節です.これは田中さんからの「教科書における学習順序を意識したときに,中学2年生で習うテーマが穴になっているので,存在を表す構文について書いてほしい」という具体的なリクエストから生まれた,文字通りの書き下ろしです.後から付け足したピースであるにもかかわらず,英語における SVO の語順や主語の必須性といった収載済みの統語論的テーマとみごとに融合し,味わい深い節として仕上がりました.
さらに,Amazon 事前予約特典として用意した1節分の書き下ろし「なぜ doubt のスペリングに b があるのか」についても言及しています.実は,田中さんが私に最初にくださった連載の打診メールで,私が過去に書いた doubt に関するウェブ記事「圧倒的腹落ち感!英語の発音と綴りが一致しない理由を専門家に聞きに行ったら,犯人は中世から近代にかけての「見栄」と「惰性」だった.」を読まれていたことが触れられており,この思い出深いテーマが巡り巡って発売直前の特典として結実したという,言語史ならぬ「本の歴史」の美しい結末には深い感慨を覚えます.
この2回の対談を通じて改めて強く実感したのは,同じ1冊の本を対象にしていても,著者・研究者の目線と,プロのエディターとしての目線では,見ている角度やポイントが全く異なるということです.お互いの視点が火花を散らし,アドバイスを潤滑剤としながら融合したからこそ,2日後に世に出る新書が,このような形に成長してきたのだと確信しています.
音声配信では,文字通り2人の息づかいやプロフェッショナルとしての裏話が満載ですので,ぜひ heldio の音声を直接お聴きいただき,本を手に取る前のワクワク感を高めていただければ幸いです.どうぞお楽しみに.
・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.
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