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heldio - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2026-07-20 00:41

2026-07-20 Mon

#6293. 皆さん『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)をどのように使っていますか? [notice][hee][review][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio][kdee]



 先日「#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談」 ([2026-07-05-1]) で話題にしたとおり,6月18日に『英語語源ハンドブック』(研究社)が刊行されて1年となり,6月30日には物書堂さんより『英語語源ハンドブック』アプリ版も発売されました(アプリ版利用は現時点でiOS ユーザーのみ).
 このような節目のタイミングに,冊子版・アプリ版を普段からご愛用いただいているヘビーユーザーの方々に,この1年間ハンドブック利用の感想をうかがえればという趣旨で,先日,Voicy heldio 対談回を設定しました.司会は,heldio ではお馴染みの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)にお願いしました.7月14日の heldio で「#1871. 『英語語源ハンドブック』(冊子版・アプリ版)の使用感をヘビーユーザーの皆さんに聞いてみました」として配信していますので,アーカイヴよりお聴きください.以下は対談回の要旨です.
 対談の冒頭では,何といってもアプリ版の登場によって検索の利便性が飛躍的に向上したことが大きな話題となりました.毎日 note でハンドブックを元に記事を執筆されているみーさんは,冊子版のみでは出先での執筆の際に不便を感じることがあったようですが,アプリ版の導入によっていつでもどこでも参照できるようになり,まさに「必携の書」として使い倒しているとのことです.物書堂さんのアプリらしく,『英語語源ハンドブック』で調べた後にそのままワンタップで『ジーニアス英和辞典』のような他の辞書へポンとジャンプできる参照機能や,解説文中の「グリムの法則」といった専門用語から関連箇所へ直接飛べるジャンプ機能の快適さについても熱く語っていただきました.さらに,デジタルならではの利点として,表や記述をそのままコピペして note の参照として取り出せる点も,アウトプットを継続するユーザーにとってはたいへん有益のようです.
 うろ覚えの状態で検索する際の「全文検索機能」の強力さについては,しーさんから,地の文のキーワードまで引っかかるので,なんとなくこの辺りにあったという項目からでも探しやすく,人間の記憶に優しい仕様である,との実践的な評価をいただきました.実は私自身は Android ユーザーであるため,まだアプリ版を体験できていないもどかしさを抱えつつも,もしこのような利便性が『英語語源ハンドブック』のみならず『英語語源辞典』のほうでも得られれば,情報量の多さゆえに完全に「語源の森」から抜け出せなくなって迷子になってしまうのではないかと,嬉しくもぞっとするような想像をめぐらせた次第です.
 また,英語教師としての視点からユニークなレビューを寄せてくださったのが ari さんです.ari さんは,画面を自由に拡大できる視覚的な利便性に加え,本ハンドブックに載っているかどうかを,自分が授業で話す内容が一般的な範囲か,あるいはそれ以上の趣味の領域に踏み込んでいるかを見極めるための試金石として活用しているといいます.さらに,地方の書店をめぐって冊子版が2刷か3刷かなどの状況を独自に調査していた経験から,アプリ版であればどこにいても常に最新の記述が手元に届くという,新しい角度からのメリットも指摘されました.
 一方で,アプリ版の引きやすさが際立つ一方で,冊子版がもつ特有の価値についても深い議論が交わされました.yuz さんからは,-fy などの接尾辞をもつ単語を検索して派生語を一網打尽にできるのは電子ならではの楽しさ,というニッチな使い方が紹介されましたが,しーさんや yuz さんが口を揃えるのは,パラパラとめくりながら余白に書き込みしていけるという,紙の本ならではの使い心地のよさです.ハンドブックは,一般的な語源辞典と違って基本1000語に絞り込んで読み物として作られているため,最初からアプリだけで入るよりも,紙でじっくりと通読して全体のネットワークを頭に入れてからアプリの全文検索を活用するほうが,そのありがたみをより深く実感できるのかもしれない,と感じました.
 あまねちゃんからは,本ハンドブックを読むことで初めて知った知識の数々 --- たとえば winter がかつては年(歳)を数える単位であったことや,havecatch が実は同根語であることなど --- が具体的に挙げられ,見出し語こそ基本語でありながらも,縦と横のつながりによって英語史の深みへのめり込める格好のジャンプ台になっているとの嬉しいコメントをいただきました.専門家の立場から日々『英語語源辞典』を読み込んでいる寺澤志帆さんからも,専門書特有の略記号や前提知識の壁を,専門家が苦心して噛み砕いて展開したのが本ハンドブックであり,両者を見比べることで語彙のつながりがより良く見えてくるという評価をいただきました.
 対談の締めくくりとして,orangemorishita さんからは,紙の辞典におけるレイアウトの完成度を電子化する際のノウハウや,媒体の機能性に精通したエキスパートの必要性,そして何より老眼が進む世代にとっての拡大機能のありがたみについてもユーモアを交えて語っていただきました.
 結論としては,司会の Taku さんや著者陣の思いと同じく,ぜひ冊子版とアプリ版の両方を手に入れて,それぞれの特徴を活かして使い倒していただきたい,ということに尽きます.
 さて,『英語語源ハンドブック』アプリ版は通常価格3,800円のところ,発売日より3週間,つまり明日7月21日(火)までは「初回セール期間」として,2,800円(26%オフ)とお得になっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックも入手いただき,使い倒していただければと思います.商品の詳細はこちらよりどうぞ.
 今後も冊子版・アプリ版ともにご愛読いただけますよう,よろしくお願いします.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

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2026-07-19 Sun

#6292. 7月25日(土)の朝カル講座「king を探って古英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu][heldio][oe][kochushoho][anglo-saxon_chronicle][alfred][viking][suffix][indo-european][word_family][link][voicy][kdee][hee][kenning][beowulf][haplology][phonemicisation][lexicology][lexical_stratification]


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 7月25日(土) 15:30--17:00 に,今年度4回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」としては通算第16回目の講義となります.今回はking を探って古英語原文の世界へ」と題して,この大物単語に迫ります.
 現代英語の king は一見すると素朴な日常語ですが,英語史・語源学の観点からその歴史を紐解くと,実にダイナミックで奥深い世界が広がっています.今回の講座では,主に3つの切り口からこの「王」を意味する単語を解読していきます.
 第1のポイントは,印欧語根 *gen(e)- から生み出される広大な語彙の世界です.実は king は,kin (親族)や kind (種類;親切な)などと共通の大きな語根に遡る派生語です.いつものように『英語語源辞典』 や『英語語源ハンドブック』 などの記述を突き合わせながら,印欧語根にまで遡る壮大な単語の家族のつながりを眺めていきます.接尾辞 -ing の歴史についても深掘りします.この辺りは『英語語源辞典』読み方講座に近い内容となります.
 第2のポイントは,古英語期に花開いた「王」の隠喩的複合語,いわゆるケニング (kenning) の世界です.古英語の英雄詩『ベオウルフ』 (beowulf) などを覗くと,王を単に cyning ("king" の古英語形)と呼ぶだけでなく,「指輪をくれる者」 (bēagġyfa) や「黄金の友」 (goldwine) といった詩的な数々の類義語で表現していました.文学的に爛熟した多彩な語彙の魅力を味わいます.
 第3のポイントは,king 周辺の語彙論と同単語の語形変化です.なぜ kingqueen はノルマン征服以降の大量のフランス借用語の波に置き換えられずに生き残ることができたのか,という問題にも触れます.また,かつての古英語の綴字 <c> から中英語の <k> への変化や,軟口蓋鼻音の音素化といった,綴字と発音のダイナミックな変化についても解説します.
 講義の後半には,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)に所収の古英語散文的スト『アングロサクソン年代記』より,アルフレッド大王 (King Alfred) がデーン人(ヴァイキング)との戦いに備えているシーンの短い抜粋部分を読んでみます.丁寧に解説していきますので,古英語初心者の方でも心配要りません.また,上掲書をお持ちでなくても講義資料で関連箇所を引用しますのでご安心ください.
 講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.なお,次回以降の日程と内容は次の通りです.

 ・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
 ・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ

 いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.


 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-07-15 Wed

#6288. heldio で khelf 寺澤志帆さんによる3回シリーズ「寺澤志帆さんの『英語語源辞典』読み方講座」が始まりました --- bear 「産む」の項目を徹底解説 [notice][kdee][hel_education][helkatsu][khelf][terasawashiho][voicy][heldio]



 今朝の Voicy heldio より,3日間にわたる「『英語語源辞典』読み方講座」となる対談シリーズが始まっています.本日の初回は「#1872. 寺澤志帆さんの『英語語源辞典』読み方講座 (1) --- bear 「産む」の項目を徹底解説」です.
 khelf メンバーの寺澤志帆さんが,シリーズ「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」にて「384. bear「産む」についてさらに深堀り」と題する記事を投稿されたことは,「#6281. 「英語語源辞典でたどる英語綴字史」の khelf 寺澤志帆さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています!」 ([2026-07-08-1]) でご紹介したとおりです.これは,『英語語源辞典』通読挑戦者の第一人者である lacolaco さんが,先立つ6月中に,同様の試みをいち早く実践されていたものを受けての,寺澤さんとしての試みでした.今回の対談は,事情により lacolaco さんのご参加はかないませんでしたが,寺澤さんの上記記事に基づいて,ラジオ版として口頭で「読み方講座」を実践していただくという趣旨で企画したものです.
 講座のなかでは,「産む」を意味する bear2 の項目を超精読していきます.1つひとつ記号や略記が意味するところを丁寧に解説し,語源情報を読み解く上で必要となる英語史の前提知識を補いながら進みますので,迷子になることはありません.項目を読み終える頃には,皆さんもほぼすべての情報をほぼ完璧に理解できており,他の単語の項目を読み解く際のスキルも手にしているはずです.
 『英語語源辞典』より,今回注目している bear2 の項目を画像化したものを,版元である研究社の許可を得て,以下に掲載します.お手元に同辞典をお持ちでない方は,こちらをご覧になりながら,今朝の「読み方講義」の本体をじっくりお聴きください.明日,明後日とシリーズは続いていきますが,捕捉や深掘りのアフタートークとなる予定です.ご期待ください.


ダブリン・ギネス収録会



 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-07-13 Mon

#6286. 「ダブリン・ギネス収録会」 --- helwa の価値が最大限に発揮された完全オンライン土曜日 [heldio][helwa][helkatsu][helmate][dubline_guinness_recording_session][note][kdee][hee]


ダブリン・ギネス収録会



 一昨日の土曜日,7月11日の午後,アイルランドはダブリンの地より Zoom で繋ぎ,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」のメンバー(ヘルメイト)の皆さんとともに半日を費やすオンラインでの「ダブリン・ギネス収録会」を敢行しました.急な呼びかけであったにもかかわらず,入れ替わり立ち替わりで延べ20名近くのヘルメイトの皆さんにお集まりいただき,盛況のうちに幕を閉じることができました.ご参加くださった方々,そしてチャット等で場を盛り上げてくださったギャラリーの皆さんに,この場を借りて心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
 滞在先のダブリンでは朝の6時(日本時間の午後2時)からスタートし,気がつけば日本時間の夜11時まで,実にみっちり9時間にわたる濃密な時間でした.もともとは少人数での小さな対談会を調整していたのですが,オープンなオンラインイベントとして企画を立ち上げたところ,驚くべきフットワークの軽さで多くのヘルメイトのご都合がカチリと噛み合い,嵐のような収録会の決行に至りました.前々から周到に準備された企画よりも,こうした突発的なお祭りのほうが不思議とうまくいくケースがあるのですが,今回はまさにその例でした.
 今回の収録会では良質な対談回をたくさん収録することができましたが,その「取れ高」以上に私にとって貴い財産となったのは,ヘルメイトの皆さんと深く歓談し,親睦を深めることができたことです.結果として,今回の収録会の最大の意義はそこにあったと思っています.
 収録会のメニューを時系列で振り返っておきましょう.まず午後2時過ぎのオープニングに続き,kendama_player さんの英語史講義報告の対談から始まりました.3時過ぎからは,khelf(慶應英語史フォーラム)の寺澤志帆さんをゲストに迎え,『英語語源辞典』 (kdee) の bear の項目をじっくりと読み解く対談を行ないました.普段は私自身が解説する側に回ることが多いのですが,寺澤さんの明快な語り口を,ひたすら聞き役に回って味わうという体験は,たいへんに新鮮な時間でした.解説を聴くうちに次々と新しいアイディアが湧き出し,大いに知的好奇心が刺激されました.
 4時過ぎからは上智大学の小河舜さんにお越しいただき,昨日の記事でも触れた「地球ことば村オンラインサロン」より配信された最新動画に絡めて「英国地名×英語史」をテーマに熱く語り合いました.さらに5時過ぎからは,刊行から1年が経ち,物書堂さんからアプリ版もリリースされた『英語語源ハンドブック』 (hee) の使用感について,ご参加されているヘルメイトの皆さんにマイクを回しながら語り合うコーナーを設けました.
 6時からは,本日の目玉企画である川上さん持ち込みの「聞かせて!『なぜさんたんげん』のなぜ」の heldio 生配信を90分枠で敢行しました.私の側の機器の不調により,途中で生配信が途切れるというトラブルがありましたが,『なぜさんたんげん』をご担当いただいたNHK出版の編集者・田中菜乃香さんにもご出演いただくことができました.著者に向けられた鋭いツッコミに対し,著者は頭をフル回転させ,言葉を整理しながら喋る,きわめて消耗的ながらも価値のある時間となりました.後半の生配信未配信部分は別途録音してあるため,後日,アーカイヴ配信したいと思っています.ぜひご期待ください.
 その後は主にギネスビールを片手に,ヘルメイトの皆さんとの Zoom 上での懇親会へと移りましたが,ari さんykagata さんを中心とした「なぜさんたんげんカウントダウン企画」(そして,ari さんによる4コマ漫画シリーズ「英子さんたんげん」)を振り返る回顧展の対談も収録しました.最後には,ヘルメイトの皆さんから総括のコメントをいただきました.
 半日の収録会を通じて私が確信したのは,このコミュニティ「英語史の輪 (helwa)」が,単なるクローズドな音声配信のチャンネルではなく,「学びと継続をお互いに支援し合う最強の環境」に育ってきているという事実です.毎日記事を書く方,独自の新しい勉強法を開発される方,そして何より,対談収録中に驚異的な集中力を発揮して体系的なライヴ議事録を書き残してくださった orangemorishita さんのような存在.各メンバーによる活動が有機的に結びつき,お互いの学びのモチベーションを高め合う文化が形成されてきています.寺澤志帆さんが最後に投げかけてくれた「純度100パーセント」というキラーフレーズが,まさにこのコミュニティの本質を言い当てていました.
 今回の「ダブリン・ギネス収録会」で収録した濃密な対談や振り返りの数々は,今後の heldio 通常回で配信していく予定です.第1弾は,すでに昨日の朝に「#1869. コアリスナー kendama_player さんが,前橋市立図書館で英語史講座を開かれました」としてお届けしました.ぜひ hellog 読者の皆さんも,今後の配信にご期待いただければ.
 そして,もしこの「純度100パーセント」の学びの熱気や,お互いに刺激を与え合うコミュニティの空気を直に体験してみたいと思われた方は,ぜひプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討いただければと思います.毎週火・木・土の午後6時に,heldio レギュラー配信とは一味違うテイストの話題をお届けしています.月額800円のサブスクリプション配信ですが,初月無料のサービスも用意されていますので,一歩足を踏み入れ,数週間その環境に浸っていただければ,なぜこれほどまでに今「hel活」(helkatsu) が盛り上がっているのか,その理由が必ずお分かりいただけるはずです.hellog 読者の皆さんを helwa でもお待ちしています!

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2026-07-07 Tue

#6280. B&C の第64節 "Influence of The Benedictine Reform on English" (3) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][lexicology][borrowing][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate][philology]



 昨日に続き,英語史の古典的名著 Baugh and Cable (第6版)を helwa の熱心な仲間たちと1文ずつ解剖していく超精読会の実況録音シリーズです.Voicy heldio の配信と連動しながら,名著の行間から立ち上る歴史の息吹を再現する試みを続けています.
 今朝の heldio 最新回では,第64節 "Influence of The Benedictine Reform on English" の締めくくりとなる後半部分 (p. 85) の精読をお届けしています.今回も,精読のリード役は,helwa/heldio コミュニティに欠かせないヘルメイトであり,同志である Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)です.
 昨日までに見てきたように,ベネディクト改革期に英語へ流入したラテン語借用語の多くは,本を通じて導入された書物的・学術的な用語でした.本日のターゲットとなる英文では,これらの単語が当時の古英語の語彙体系においてどのような位置づけにあったのか,そして文献学的な視点から借用時期をどのように特定・推定すべきなのか,というテーマが議論されます.ラテン語形のまま用いられており完全に同化しなかった単語のリストを眺めながら,文献上の沈黙をどのように解釈すべきかという,文献学や歴史言語学の方法論に関する問題にまで踏み込んで議論しています.ぜひお付き合いください

It would be possible to extend these lists considerably by including words that were taken over in their foreign form and not assimilated. Such words as epactas, corporale, confessores, columba (dove), columne, cathedra, catacumbas, apostata, apocalipsin, acolitus, absolutionem, invitatorium, unguentum, cristalla, cometa, bissexte, bibliothece, basilica, adamans, and prologus show at once by their form their foreign character. Although many of them were later reintroduced into the language, they do not constitute an integral part of the vocabulary at this time. In general, the later borrowings of the Christian period come through books. An occasional word assigned to this later period may have been in use earlier, but there is nothing in the form to indicate it, and in the absence of any instance of its use in the literature before Alfred it is safer to put such borrowings in the latter part of the Old English period.


 この B&C 超精読シリーズの過去回のリンク集へは,「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) からアクセスできます.ぜひ過去回も含めてお聴きになり,本書の精読を通じて,豊穣なる英語史の世界に足を踏み入れていただければ.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2026-07-06 Mon

#6279. B&C の第64節 "Influence of The Benedictine Reform on English" (2) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][lexicology][borrowing][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate][helwa]



 前回の関連記事 ([2026-06-19-1]) に引き続き,Voicy heldio の収録会の形をとりながら,英語史の名著,Baugh and Cable のテキスト(第6版)を,helwa の志高き仲間たちとともに徹底的に精読していく会の記録をお届けします.この熱気あふれる読書会の音声をそのままお届けする heldio 配信シリーズは,コアなリスナーの皆さんの応援に支えられて,ゆっくりとではありますが順調に進んでいます.
 今朝配信の heldio 最新回では,引き続き第64節の精読を進めています.本日のブログ記事はこの音声配信とリンクした内容となります.今回も,helwa/heldio のコミュニティを熱く盛り上げてくださっているヘルメイトであり,コアリスナーの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に,精読をリードしていただきました.
 前回の heldio 配信「#1846. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (64-1) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」では,ベネディクト改革がもたらした宗教関係のラテン借用語に焦点を当てました.今回はさらにその外側に広がる書物的・学術的な語彙へと突入します.古英語期の借用語といえば,キリスト教伝来に伴う初期の日常的・一般的なラテン借用語が想起されますが,ベネディクト改革期にラテン語から流入した語彙の性質はそれらとは一線を画しています.きわめて学術的な専門用語が目立つようになるのです.今回の精読のターゲットとなった英文を以下に掲げます (p. 85) .植物名や医学用語,動物の名称など,当時の知識階級が本を通じて導入した語彙の数々を味わいました.

But we miss the group of words relating to everyday life characteristic of the earlier period. Literary and learned words predominate. Of the former kind are accent, brief (the verb), decline (as a term of grammar), history, paper, pumice, quatern (a quire or gathering of leaves in a book), and term(inus), title. A great number of plant names are recorded in this period. Many of them are familiar only to readers of old herbals. Some of the better known include celandine, centaury, coriander, cucumber, ginger, hellebore, lovage, periwinkle, petersili (parsley), and verbena.9 A few names of trees might be added, such as cedar, cypress, fig, laurel, and magdala (almond).10 Medical terms, like cancer, circulādl (shingles), paralysis, scrofula, plaster, and words relating to the animal kingdom, like aspide (viper), camel, lamprey, scorpion, and tiger, belong apparently to the same category of learned and literary borrowings.

9 A number of interesting words of this class have not survived in modern usage, such as aprotane (wormwood), armelu (wild rue), caric (dry fig), elehtre (lupin), mānrūfie (horehound), nepte (catnip), pollegie (pennyroyal), and hymele (hop-plant).
10 Most of these words were apparently bookish at this time and had to be reintroduced later from French.


 この B&C 超精読シリーズの過去の足跡については,すべてアーカイヴに網羅されており,いつでもバックナンバーにアクセス可能です.各回へのナビゲーションは,「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をご覧ください.この超精読シリーズを通じて知的好奇心をくすぐられた方は,ぜひ本書をお手元にご用意の上,この音声を道しるべに精読体験を味わっていただければ幸いです.さらに,「ただ聴くだけでなく,自分も対面やオンラインの現場に飛び込んでリアルタイムに議論の輪に加わりたい!」という熱量をお持ちの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討ください.月額800円,初月無料のサブスクです.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2026-07-05 Sun

#6278. 「居酒屋KKH」 --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念のオンライン対談 [notice][izakaya_kkh][hee][review][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio]



 「#6265. 『英語語源ハンドブック』刊行から1年 --- 索引と正誤表の最新版も」 ([2026-06-22-1]) で予告していたように,ハンドブックの著者3名(唐澤一友さん,小塚良孝さん,堀田隆一)が刊行1周年記念日となる2026年6月18日の夜にオンラインで集合し,「居酒屋KKH」を開きつつ,本書について語り合いました.
 その鼎談の様子は録音していましたが,本編だけでも計60分を優に超える長丁場となったので,前編と後編に分けて Voicy heldio にて公開しました.濃密な対談となっています.お時間のあるときにじっくりお聴きいただければ.

 ・ 「#1861. (前編)居酒屋KKH --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念」(7月4日配信)
 ・ 「#1862. (後編)居酒屋KKH --- 『英語語源ハンドブック』発売1周年記念」(7月5日配信)

 前編では,この1年間で読者の方々より Amazon レビューで寄せられてきたご感想をいくつか紹介しつつ,3人でハンドブックの活用法や意義について改めて議論しました.
 後編も,Amazon レビューを取り上げてコメントバックするところから始まりましたが,3人の議論が段々と濃厚になってきます.私の「英語史は伏線回収である」との発言を拾ってくれた唐澤さんが,話しをどんどんおもしろい方向に展開してくれ,さらに小塚さんが「英語史×英語教育」論にまで発展させてくれたおかげで,議論が大きく広がっていきました.一般のハンドブックの読者にとってはもちろん,広く英語教育関係の方々にも示唆のある内容となっていると思います.また,あまり表には出ない英語史研究者の視点についてもおおいに語りましたので,それなりに貴重な対談となっているのではないかと考えています.実際,3人自身が対談を非常に楽しむことができました.
 この1年間,多くの読者の皆さんに,『英語語源ハンドブック』へ様々な角度からご意見をお寄せいただいたり,ハンドブックに基づいて関連する教材や記事などのコンテンツを制作・公開していただきました.ぜひ今後も引き続きご愛用,ご愛読いただき,ハンドブックの価値を広めていってください.
 最後に重要なお知らせです.6月30日に,物書堂さんより本書のアプリが発売されました.物書堂のアプリを利用できるのは iOS ユーザーのみとなりますが,ハンドブックをアプリ版で入手できるようになりました.通常価格は3,800円ですが,発売日より3週間は「初回セール期間」となっており,セール期間の価格は2,800円と(26%オフ)となっています.この機会に,ぜひアプリ版のハンドブックもご活用いただければと思います.詳細はこちらよりどうぞ.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

Referrer (Inside): [2026-07-20-1]

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2026-07-01 Wed

#6274. 英語史の月刊ウェブマガジン Helvillian の2026年7月号が公開されました [helwa][heldio][notice][helmate][helkatsu][helvillian][link][nazesantangen]



 去る6月28日,「英語史をお茶の間に」届けようと日々奮闘している有志ヘルメイトによる月刊ウェブマガジン Helvillian 7月号が公開されました.通算第21号となります.
 今号のキャッチコピーは「まだまだ続く,#なぜさんたんげん そしてhel活の波」です.6月10日に世に送り出された新著『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)に関連する記事や熱い応援記事が,前号に引き続き,誌面を埋め尽くしています.
 まずは ykagata さんによる「表紙のことば」から覗いてみましょう.瀬戸内海から四国をめぐる旅の記憶とともに,ドイツ語の "Straße von Hormus" (ホルムズ海峡)が英語 street に対応するという興味深い話題を展開してくれています.広い海峡を「ストリート」と呼ぶ言語的なおもしろさを,旅の実感と結びつける筆致はさすがです.ykagata さんは他にも「[古英語]名詞屈折表が stān で始まる本,始まらない本」など,英語史に直接・間接に関わる魅力的な記事を多数寄稿されています.
 今号の収載記事をいくつかカテゴリー別に紹介していきましょう.
 何といっても今号のお祭りの中心は『なぜさんたんげん』です.ari さんによる「英子さんたんげんシリーズ」は,普段のユーモアとダジャレのセンスが凝縮された4コマ漫画で,『なぜさんたんげん』のエッセンシャル版としての期待が集まっています.Grace さんの「『なぜさんたんげん』目撃の巻」は,書店での劇的な「昇格」の瞬間を淡々と描き出し,多くのリスナーの涙を誘う秀逸なドキュメンタリー「石巻の奇跡」を世に送り出しました.さらに umisio さんは「告白・懺悔」と題して,自身が過去に「3単現の s」に疑問を抱かなかった理由を深く掘り下げるシリーズを連載されています.
 一方,お祭りの熱気の中でも淡々と学びを進めるレギュラー陣の記事も輝いています.その代表格が,listener kawakami さんによる「Prologue to Eneydos を読むシリーズ」です.Caxton の印刷技術と英語史の深淵に迫るこの硬派な連載は,編集委員の umisio さんをして「浮かれた頭を冷やしてくれる,ウェーランドの経済学言論の講義のようだ」と言わしめるほどのシリーズとなっています.私自身も,専門家の観点から,これが貴重な中英語精読シリーズになっているものと評価しています.
 語源やクイズの分野も百花繚乱です.mozhi gengo さんは「Beryl と同語源の日本語は○○」やヒンディー語の借用語コラムなど,圧倒的な知識量で独自の深掘りを展開されています.lacolaco さんによる「英語語源辞典通読ノート D」は,着実に歩みを進める職人技の鑑です.『英語語源辞典』の読み方解説も加わり,ますます有用性が高まっています.sorami さんの「中学生向け英語語源クイズ」は,学校の授業ですぐに使える実践的な内容とすぐれた出題センスが相変わらず光っています.
 さらに,前橋市での英語史講座を満員御礼のなかで終えられた kendama_player さんの熱い報告記事や,あまねちゃんによる「オフ会感想」と『英語語源ハンドブック』1周年記念記事,こじこじ先生の楽曲「不規則動詞戦争」,みーさんによる「小学生と学ぶ英語史」シリーズなど,各世代や地域におけるhel活のリアルな息吹が伝わってきます.佐久間さんの「日本語由来の医学英語」も専門家らしい視点を与えてくれます.
 巻末の「あゆみ」では,Grace さんが北千住オフ会の定着や helwa 開設3周年の軌跡をきれいにまとめてくださいました.そして umisio さんによる「編集後記」は,今号の多様な熱量をユーモアたっぷりに総括してくれています.
 最後になりますが,今号を編み上げてくださった編集委員の Lilimi さん,Galois さん,Grace さん,umisio さんには深く感謝いたします.そして,素晴らしいコンテンツを寄稿してくださったヘルメイトの皆さんも,本当にありがとうございました.
 hellog 読者の皆さんも,ぜひこの熱気溢れる Helvillian 7月号のページを訪れて,じっくりと味わってみてください.そして,自分も日頃のhel活の成果をこのウェブマガジンに載せてみたい,英語史の輪に加わりたい,と思われた方は,ぜひ Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への参加をご検討いただければと思います.helwa にお入りになった瞬間から,あなたもヘルメイトです.一緒に英語史をお茶の間に届けていきましょう!

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2026-06-29 Mon

#6272. 『なぜさんたんげん』第2刷出来! --- 編集者・田中さんとの最速レビューへコメントバック [notice][nazesantangen][nhkpb][voicy][heldio]

 本日6月29日,いよいよ新刊『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)の第2刷が出来となります!
 おかげさまで6月10日の発売以来,非常に好調な滑り出しとなり,今週中には増刷分が全国の書店の店頭に並び始める予定です.未入手の方は,ぜひこの機会にお近くのリアル書店などで手に取っていただければ幸いです.
 さて,この直近の週末に,本書の編集を担当してくださったNHK出版の田中菜乃香さんとともに,Voicy heldio にて3回にわたる対談を収録・公開しました.読者の皆さんよりお寄せいただいたたくさんのレビューやご感想に対して,2人でじっくりとコメントバックしていくという企画です.まずは,本書をいち早く読み,貴重な声を届けてくださったすべての皆さんに,この場を借りて心より御礼申し上げます.ありがとうございました.
 配信した3回分のリンクを以下に集約しておきますので,ぜひお聴きください.

 ・ 「#1854. 『なぜさんたんげん』最速レビューへ2人でコメントバック(前編) with 編集者・田中菜乃香さん」 (2026/06/27)
 ・ 「#1855. 『なぜさんたんげん』最速レビューへ2人でコメントバック(後編) with 編集者・田中菜乃香さん」 (2026/06/28)
 ・ 「#1856. 『なぜさんたんげん』2刷出来! --- 編集者・田中菜乃香さんとのアフタートーク」 (2026/06/29)

 上記2つめの「後編」配信回において,私が問題提起も含めて「英語史は役に立たない」という趣旨の発言をしたところ,heldio/helwa のコアリスナーである ykagata さんより,洞察に満ちたコメントをいただきました.とても腑に落ちる内容だったので,こちらにも引用させていただきます.

「英語史は役に立たない」は強烈なパンチラインですね。「役に立つ」は美徳のようでいて、同じことに「役に立つ」別のものと交換できてしまう弱みあります。その点「おもしろい」は唯一無二で替えの効かないところが、歴史のようなエヴァーグリーンなものにふさわしい美徳だと思いました。なぜさんたんげん」、長く書店に置かれますように。


 「役に立つ」という実用性の軸だけで言語や歴史を測ろうとすると,より効率的な別の手段が現れた瞬間に,その存在意義が代替されてしまう --- まさに鋭い一喝ですね.それに引き換え,ことばの歴史を紐解くプロセスから得られる「おもしろさ」や知的好奇心の充足は,他の何物にも替えがたい唯一無二の価値をもっています.英語史という分野の価値をこれ以上ない形でことばにしていただき,著者としても深く励まされました.ykagata さん,素敵なメッセージをありがとうございました.
 改めまして,『なぜさんたんげん』は今回の増刷(第2刷)を経て,さらに多くの読者のもとへ羽ばたこうとしています.すでに入手されている皆さんにおかれましては,全国各地の書店での並び具合を報告し合うお祭り企画「なぜさんたんげん目撃マップ」企画へのご協力を,引き続きよろしくお願いいたします.皆さんとともに,この英語史の輪をさらに広げていければと願っています.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-06-27 Sat

#6270. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を heldio で精読・解説する講義シリーズ全12回が完結 [notice][kochushoho][kenkyusha][oe][hel_education][literature][popular_passage][pchron][oe_text][pictish][voicy][heldio][asacul]

 3ヶ月ほど前の記事「#6177. 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』関連シリーズを heldio で配信しています」 ([2026-03-26-1]) でご案内した Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」での古英語入門講義シリーズが,先日12回をもって完結しました.本日は hellog 読者の皆さんへ,シリーズ完結の報告を兼ねて,アーカイヴに残っている配信回をいつでも復習していただけるよう,リンクを一覧としてまとめました.
 本講義シリーズは,今年2月の刊行以来お薦めし続けている市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社)の古英語テキストパートより,歴史的・文献学的にきわめて重要な記述である Early Britain (pp. 86--89) から抜粋された1節を対象とし,じっくりと精読・解説を加えてきたものです.
 音声配信という特性を最大限に活かし,紙面だけでは捉えきれない古英語原文の読み上げにも力を注いでお届けしてきました.不規則で複雑に見える文法体系や現代とは一見異なる語彙の解説はもちろん,歴史的な背景を踏まえつつ,語源の話題を随所に盛り込むなど,可能な限り現代英語の知識に引き付けながら分かりやすく解きほぐしてきました.このような音声による本格的な古英語入門講義が一般に広く公開される機会はほとんどないため,貴重なアーカイヴ資料としてぜひ何度もお聴きいただき,古い時代の英語の世界を立体的に味わっていただければと思います.
 シリーズ全12回(+最初の導入回)の配信タイトルと各リンクは以下の通りです

 ・ 「#1751. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を音読する」 (2026/03/16)
 ・ 「#1755. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (1)」 (2026/03/20)
 ・ 「#1758. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (2)」 (2026/03/23)
 ・ 「#1761. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (3)」 (2026/03/26)
 ・ 「#1764. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (4)」 (2026/03/29)
 ・ 「#1767. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (5)」 (2026/04/01)
 ・ 「#1771. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (6)」 (2026/04/05)
 ・ 「#1774. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (7)」 (2026/04/08)
 ・ 「#1777. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (8)」 (2026/04/11)
 ・ 「#1787. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (9)」 (2026/04/21)
 ・ 「#1799. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (10)」 (2026/05/03)
 ・ 「#1813. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (11)」 (2026/05/17)
 ・ 「#1851. 『古英語・中英語初歩』より古英語 Early Britain の1節を精読する (12)」 (2026/06/24)

 講義の精読対象となった古英語の原文テキスト,詳細な文法注釈,そして現代英語訳については,ぜひ本書『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』の該当箇所 (pp. 86--89) を直接開いて確認しながらお聴きいただければと思います.もし現時点で本書をまだ入手されていないという方は,当面の間は本ブログの過去記事「#2909. Peterborough Chronicle の Early Britain の記述」 ([2017-04-14-1]) をあわせて参照していただければ原文の一端を追うことができます.しかし,講義内でもたびたび言及している詳しい語彙解説やグロッサリーの利便性は,やはり本書の紙面を通じてしか十分にアクセスすることができないため,知的好奇心に従って学びを深めたいと思われた方は,ぜひこの機会に本書をご自身の本棚に迎え入れてください.
 また,このたび完結を迎えた Early Britain シリーズに先立ち,heldio にて本書の冒頭に位置する重要な基礎パート「綴りと発音」をじっくりと解説した全4回の先行シリーズについても,ここで改めてご紹介し,合わせて宣伝しておきます.古英語を本格的に読み進める上での堅牢な基礎知識を養うための講義となっており,解説対象となった中身は研究社の本書に関する公式HPの試し読みコーナーでも手軽に閲覧することができます.本書がお手元にない段階からでも十分に理解を深められるように工夫しましたので,こちらもぜひアーカイヴよりチェックしてみてください.

 ・ 「#1710. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (1) --- 古英語の母音」
 ・ 「#1713. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (2) --- 古英語の子音(前編)」
 ・ 「#1716. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (3) --- 古英語の子音(後編)」
 ・ 「#1722. 『古英語・中英語初歩』試し読み部分の解説シリーズ (4) --- 古英語の強勢」

 このように hellog や heldio では,復刊された名著を道標としながら,古い時代の英語の姿を皆さんと共有していくための活動を今後も展開して行ければと考えています.ぜひ『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』に息づく原文の世界にご注目ください.
 なお,月に一度オンライン開催している朝日カルチャーセンター新宿教室での講座でも,本書を参照しながら短めの古英語・中英語原文を丁寧に読む試みを続けており,7月からの夏期シリーズでも継続していきます.詳細・お申し込みはこちらのページよりどうぞ.

 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.

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2026-06-25 Thu

#6268. 「英語語源辞典通読ノート」の lacolaco さんが『英語語源辞典』の読み方解説を始められています! [notice][voicy][heldio][helwa][inohota][kenkyusha][link][kdee][lacolaco][helkatsu][hel_education][helmate]



 英語史を広める活動「hel活」 (helkatsu) の周辺が実に熱くなっています.本ブログでも要注目としてたびたび紹介してきた,heldio/helwa のコアリスナーでヘルメイトの lacolaco さんが,「英語語源辞典通読ノート」シリーズにて,目下 D の項目をひた走っています.
 驚くべきは,その圧倒的な継続力のみならず,そこに込められた「hel活」スピリットの進化にあります.最新の2つの記事,すなわち6月13日公開の desire -- desk,および6月20日公開の despite, develop, device を拝読し,胸が熱くなりました.
 この最新の2回において,lacolaco さんは貴重で有用な,新しい試みを始められています.前者では desk を,後者では device をサンプルとして取り上げ,『英語語源辞典』初心者に向けて,同辞典の読み方をきわめて丁寧に解説してくれているのです.同辞典特有の専門記号,略称,句読点などの1つひとつにまでこだわり,それが何を意味しているのかを噛み砕いて説明しているセクションは,『英語語源辞典』を所有していながらも,専門的すぎて使いこなせていなかった多くの方々にとって福音となるはずです.
 これは,1ヶ月ほど前の hellog 記事「#6232. 『英語語源辞典』を読みこなせるようになりたい方へ」 ([2026-05-20-1]) における問題提起を受けての,lacolaco さんによる見事なイニシアチブであり,実践です.さらに先立つ「いのほた言語学チャンネル」の研究社ロケ回でも話題となったように,『英語語源辞典』は世界最高峰の辞典でありながら,一般読者がその価値を本格的に享受するためには「読み解き方の手ほどき」がどうしても必要でした.まさにそのギャップを埋める体系的なガイドを,1人のヘルメイトが自らの note で,これほどハイレベルな形で実現してくれたわけです.これぞ草の根から湧き上がる純粋なhel活であり,hel活コミュニティのつながりが生んだ貴い果実です.
 この丁寧な解説は,同辞典の魅力と威力をお茶の間に届ける素晴らしい踏み台となるはずです.一般の英語学習者の皆さんにとどまらず,同辞典の出版元である研究社の方々をはじめ,英語史の研究・教育に携わる専門の関係者の皆さんにも,大いに注目していただきたい画期的な試みです.ぜひ lacolaco さんのノートを訪問し,『英語語源辞典』の読み方解説を味読してみてください

 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

Referrer (Inside): [2026-07-08-1]

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2026-06-22 Mon

#6265. 『英語語源ハンドブック』刊行から1年 --- 索引と正誤表の最新版も [notice][hee][etymology][hel_education][helkatsu][link][voicy][heldio]


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 去る6月18日,あの熱狂の発売からちょうど1周年を迎えることとなりました.『英語語源ハンドブック』(研究社)です.
 刊行から1年が経ち,ありがたいことに重版を重ねておりますが,それに伴う正誤表がこちらの研究社公式HPより公開されています.最新版は2026年6月17日に更新されたものとなりますので,お手元の書籍と合わせてご確認いただければ幸いです.
 さらに,本書で言及されている実に4083語もの単語・表現を網羅した索引が,追加資料としてダウンロードできるようになっています.それもこちらの研究社公式HPよりEXCELファイルやPDFフィあるとして入手できます,最新版が,同じく2026年6月17日付けで公開されています.この索引を活用することで,本書の利便性は一層高まるはずです.この索引を用いると,いろいろなことが可能となります.ぜひ「#6084. 『英語語源ハンドブック』の索引の歩き方」 ([2025-12-23-1]) の記事をお読みください.
 最新のリンクを含め,『英語語源ハンドブック』に関する各種情報は,『英語語源ハンドブック』の特設HPに集約されていますので,ぜひ訪れていただければ.
 この1年間,読者の皆さんの手によって,実におもしろく多様な『英語語源ハンドブック』関連コンテンツが制作・公開されてきました.それらの素晴らしい広報活動の足跡も,上記の特設HPに一覧としてまとめられております.皆さんの熱量には本当に脱帽するばかりです.
 関連コンテンツの盛り上がりについては,6月20日に Voicy heldio で配信した「#1847. 『英語語源ハンドブック』発売1周年 --- 読者の皆さんによる関連コンテンツがたくさん」でも詳しくお話ししております.1周年の記念に,ぜひ合わせてお聴きください.
 なお,1周年記念日となる6月18日の夜には,著者3名がオンラインで一堂に会し「居酒屋KKY」を開催しました.その様子は近々に heldio にてオンエアしますので,ご期待ください.
 『英語語源ハンドブック』が,拙著新刊『『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)とともに,多くの人々にとって英語史へのジャンプ台であり続けることを願っています.

 ・ 唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一(著),福田 一貴・小河 舜(校閲協力) 『英語語源ハンドブック』 研究社,2025年.

Referrer (Inside): [2026-07-05-1]

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2026-06-20 Sat

#6263. 6月27日(土)の朝カル講座「ghost を探って古英語原文の世界へ」 [asacul][notice][kdee][hee][etymology][hel_education][helkatsu][heldio][me][oe][kochushoho][pchron][adverb][preposition][link][voicy]


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 1週間後の6月27日(土) 15:30--17:00 に,今年度の3回目となる朝日カルチャーセンター新宿教室でのオンライン講座が開かれます.昨年度より継続しているシリーズ「歴史上もっとも不思議な英単語」の通算第15弾ということで,今回は「ghost を探って古英語原文の世界へ」と題して,皆が気になる単語 ghost を深掘りしていきます.
 現代英語の ghost の最も普通の語義は「幽霊」ですね.この世ではしばしば恐れられている,あの不思議な存在です.しかし,本来は広く「精霊」 (spirit) を表わし,あらゆるものに生命を吹き込むパワーを表わしていましたが,歴史の過程で意味の縮小が起こったことになります.キリスト教の「聖霊」は the Holy Spirit と言いますが,古くは the Holy Ghost と言われたのも,この経緯と関係しています.
 また,発音や綴字の観点からも興味深い事実があります.古英語や中英語では gast のような綴字が普通でした.母音として ā という長母音をもっていたのです.ところが現代では /oʊ/ という2重母音になっていますね.また,後期中英語以降,どこからともなく綴字に <h> の文字が紛れ込み,現代では ghost となっていますね.講座では,<gh> という綴字の様々な謎にも触れていきたいと思っています.その他,動詞としての ghost,「幽霊語」 (ghost_word) の話題,もちろん ghost の語源自体にも触れていきます.
 講座の後半には,本シリーズの「古い英語の原文で味わう」趣旨に沿って,市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』(研究社,2026年)より古英語のなかに実際に現われる "ghost" を覗いてみます.丁寧に解説しますので,古英語初心者の方も心配無用です.また,上掲書をお持ちでなくても講座資料として配付しますのでご安心ください.
 講座の詳細とお申込みは,朝カルのこちらの公式ページをご覧ください.
 なお,この先の夏期クールのテーマと日程をお伝えしておきます.夏期もシリーズを継続していきます.そちらの詳細・お申し込みはこちらのページよりどうぞ.

 ・ 夏期第1回(2026年7月25日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "king" を探って古英語原文の世界へ
 ・ 夏期第2回(2026年8月22日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "riddle" を探って古英語原文の世界へ
 ・ 夏期第3回(2026年9月26日):歴史上もっとも不思議な英単語 --- "through" を探って中英語原文の世界へ

 いずれの講座につきましても,多くの方の受講をお待ちしております.

(以下,後記:2026/06/22(Mon))
 今回の講座については Voicy heldio でも案内を放送しています.ぜひ「#1849. 6月27日(土)の朝カル講座は ghost を深掘り」をお聴きください.



 ・ 市河 三喜,松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社,2026年.
 ・ 寺澤 芳雄(編集主幹) 『英語語源辞典』新装版 研究社,2024年.

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2026-06-19 Fri

#6262. B&C の第64節 "Influence of The Benedictine Reform on English" (1) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][lexicology][borrowing][latin][loan_word][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate]



 昨日に引き続き,英語史の名著,Baugh and Cable のテキスト(第6版)を,helwa の志高き仲間たちと徹底的に腑に落としていく「超精読会」の記録です.この熱気あふれる現場の音声をそのままお届けする Voicy heldio の配信シリーズも,おかげさまで息長く続いています.
 今朝配信の heldio 最新回では,新しい節の冒頭を精読する回をお届けしています.「#1846. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (64-1) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」 です.本日のブログ記事はこの最新音源と密接にリンクした誌上実況中継となります.
 今回も,helwa/heldio のコミュニティを熱く盛り上げてくださっている重要ヘルメイトであり,コアリスナーの Taku さんことhttps://www.ntu.ac.jp/research/kyoin/kodomo/gakoukyouiku/kaneta_t.html">金田拓さん(帝京科学大学)に,水先案内人として精読をリードしていただきました.
 さて,今回からはいよいよ "Influence of The Benedictine Reform on English" と題された新セクションへ突入します.前回まで追ってきた「ベネディクト改革」という歴史的うねりが,実際の英語の語彙にどのような変化をもたらしたのか,具体的な借用語 (loan_word) のリストとともに検証していくことになります.今回の精読のターゲットとなった英文を以下に掲げます(Baugh and Cable, pp. 84--85).第64節の冒頭から,およそ30分弱をかけて計6文の細部を解剖していきました.

The influence of Latin upon the English language rose and fell with the fortunes of the church and the state of learning so intimately connected with it. As a result of the renewed literary activity just described, a new series of Latin importations took place. These differed somewhat from the earlier Christian borrowings in being words of a less popular kind and expressing more often ideas of a scientific and learned character. They are especially frequent in the works of Ælfric and reflect not only the theological and pedagogical nature of his writings but also his classical tastes and attainments. His literary activity and his vocabulary are equally representative of the movement. As in the earlier Christian borrowings, a considerable number of words have to do with religious matters: alb, Antichrist, antiphoner, apostle, canticle, cantor, cell, chrism, cloister, collect, creed, dalmatic, demon, dirge, font, idol, nocturn, prime, prophet, sabbath, synagogue, troper.


 この B&C 超精読シリーズの過去の足跡については,すべてアーカイヴに網羅されており,いつでもバックナンバーにアクセス可能です.各回へのナビゲーションは,「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) をハブとしてご利用ください.英語史のロマンに知的好奇心をくすぐられた方は,ぜひ本書をお手元にご用意の上,この音声を道しるべに深い読書体験を味わっていただければ幸いです.さらに,「ただ聴くだけでなく,自分も対面やオンラインの現場に飛び込んでリアルタイムに議論の輪に加わりたい!」という熱量をお持ちの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」へのご参加をご検討ください.知的なお祭りをともに楽しめる仲間を,いつでもお待ちしております.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

Referrer (Inside): [2026-07-06-1]

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2026-06-18 Thu

#6261. B&C の第63節 "The Benedictine Reform" (7) --- Taku さんとの超精読会 [bchel][oe][benedictine_reform][christianity][link][voicy][heldio][anglo-saxon][history][helmate]



 英語史を学ぶ者にとってのバイブルとも言える Baugh and Cable の名著(第6版)を,helwa の志高きメンバーとともに1文ずつ(いな,1語ずつ)じっくりと読み解いていく「超精読会」を,半定期的なペースで重ねています.この濃密な読書会の空気感をそのままお届けする Voicy heldio の音声配信シリーズも,気づけば継続中です.開始から3年近くが経過しましたが,歩みは着実に進んでおり,現在は第63節の後半戦に突入しています.
 今朝の heldio にて,その最新の配信回を公開いたしました.「#1845. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (63-7) with Taku さん --- helwa 北千住オフ会より」です.本日のブログ記事はこの音声配信とがっちり連動する形でのアップデートとなります.
 今回も,heldio/helwa コミュニティを牽引するヘルメイトでありコアリスナーの Taku さんこと金田拓さん(帝京科学大学)に,ナビゲーターとして精読を力強くリードしていただきました.現場に集まった数名のギャラリーとともに,テキストの奥底に潜む歴史的背景を掘り起こすような,いつもながらのディープな読みを堪能する時間となりました.
 今回の読書会でターゲットとした英文を以下に提示します(Baugh and Cable, pp. 83--84) .第63節の幕引きに近い箇所から,およそ40分もの時間をかけて計6文を緻密に読み解いていきました.10世紀後半のベネディクト改革の英語史上の意義を堪能してください!

One of the objects of special concern in this work of rehabilitation was the improvement of education---the establishment of schools and the encouragement of learning among the monks and the clergy. The results were distinctly gratifying. By the close of the century the monasteries were once more centers of literary activity. Works in English for the popularizing of knowledge were prepared by men who thus continued the example of King Alfred, and manuscripts both in Latin and the vernacular were copied and preserved. It is significant that the four great codices in which the bulk of Old English poetry is preserved date from this period. We doubtless owe their existence to the reform movement.


 この B&C 読書会のこれまでの軌跡については,すべてアーカイヴ化されており,いつでも過去回へアクセスが可能です.各配信回へのナビゲーションリンクは,過去の記事「#5291. heldio の「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」シリーズが順調に進んでいます」 ([2023-10-22-1]) にまとまっていますので,ぜひそちらをご参照ください.知的好奇心を刺激された方は,ぜひご自身でも本書を入手され,この超精読会の音声をガイドブック代わりにお聴きいただければ幸いです.また「聴くだけでなく,対面やオンラインの現場でリアルタイムに議論に加わりたい!」という熱意をお持ちの方は,ぜひ Voicy のプレミアムリスナー限定配信チャンネルである「英語史の輪 (helwa)」の門を叩いてみてください.皆さんのご参加を心よりお待ちしております.


Baugh, Albert C. and Thomas Cable. ''A History of the English Language''. 6th ed. London: Routledge, 2013.



 ・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.

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2026-06-14 Sun

#6257. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画が走り出しています [notice][nazesantangen][nazesantangen_witness][heldio]

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 6月10日(水),NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)が発売されました.大変ありがたいことに,皆さんの熱い応援のおかげで発売前増刷となり,発売後もご好評いただいています.心より御礼申し上げます.
 本書の刊行に合わせて,このたび全国のリアル書店での本書の目撃情報を皆さんと共有し,ともに楽しむための新企画「なぜさんたんげん目撃マップ」を立ち上げました.
 本企画は,全国のリアル書店を訪れた皆さんから「ここに『なぜさんたんげん』が並んでいた!」「こんな風に平積みされていた!」という目撃情報を寄せていただき,それをもとに著者が Google Map 上にピンを立てて「見える化」していくという試みです.私自身は現在,イギリスのスコットランドに滞在しているところですが,数千キロ離れた地からも,日本地図の上に次々とピンが立っていく様子を不思議な,かつ熱い気持ちで見つめています.
 企画がスタートしてまだ間もない状況ですが,本日23:50の段階で,日本全国のあちらこちらの書店に計19本のピンが立っており,素晴らしい走り出しです.これまでにご報告をいただいた皆さん,本当にありがとうございます.地図は,直接 Google Map の URL からアクセスできるほか,こちらの 『なぜさんたんげん』著者公式HPからもジャンプすることができます.
 hellog 読者の皆さんにも,地元や学校・職場近くや旅先のリアル書店へ足を運ばれた際には,ぜひ本書を探していただき,目撃情報をテキストや写真でご報告いただけますと幸いです.SNS へは #なぜさんたんげん目撃マップ とハッシュタグを付けて投稿していただけますと,著者が定期的に巡回して受け取ることができます.あるいは,毎朝お届けしている Voicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」の任意の配信回のコメント欄より,お知らせいただく形でもけっこうです.
 ただし,書店での写真撮影に関しましては,ぜひ留意していただきたいマナーがあります.撮影の可否や SNS へのアップロードに関する対応は書店さんによって対応が異なりますので,必ず事前に書店員さんへ「写真を撮ってよいですか」「SNS にあげても良いですか」と一言お声がけをいただき,そのご指示に従っていただきますようお願いいたします.ご報告はテキストのみでも十分ですので,気軽にご参加ください.
 皆さんからお寄せいただく1本1本のピンが,本書を,そして英語史を日本全国へと広げていく大きな力となります.ぜひ,この発売後のお祭りをコミュニティの皆さんと一緒に楽しんでいければと願っています.皆様の積極的なご参加を心よりお待ちしています.
 一昨日の heldio でも「#1839. 「なぜさんたんげん目撃マップ」企画を立ち上げました」として本企画をご案内していますので,そちらも合わせてお聴きいただければ.



 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-06-08 Mon

#6251. 『なぜさんたんげん』の担当編集者・田中さんとの対談シリーズの続編 [notice][nazesantangen][nhkpb][voicy][heldio][ranking][sobokunagimon]



 先日の記事「#6244. 『なぜさんたんげん』の担当編集者・田中さんと対談しています」 ([2026-06-01-1]) の続編です.
 いよいよ発売日まであと2日と迫りました,NHK出版新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(通称『なぜさんたんげん』)に関する heldio 対談の続編をお届けします.今回は直近に配信された2回の対談回(Part 3 および Part 4)のエッセンスをぎゅっとまとめてご紹介したいと思います.

 ・ 第3回対談(6月4日配信),「#1831. 『なぜさんたんげん』総選挙の結果を編集者・田中菜乃香さんとともにレビュー」
 ・ 第4回対談(6月7日配信),「#1834. 新書『なぜさんたんげん』はベースとなった連載記事からいかに成長したか --- 編集者・田中菜乃香さんとの対談 Part 4」

 まず,6月4日に配信した Part 3 では,5月下旬に実施した「24の疑問総選挙」の確定結果を,著者の私から編集の田中さんへ初めてサプライズシェアする,という企画を行ないました.96名もの方にご投票いただきまして,その節は皆さん本当にありがとうございました.
 注目の第1位は,我々の期待と狙い通り,やはり「なぜ3単現の s をつけるのか」が38%の得票率でダントツのトップでした.もしこれが1位でなかったら本書のタイトルはどうなっていたんだという恐怖もありましたが,一安心です.驚いたのは2位以下のランキングで,第2位に「なぜ現在分詞と動名詞は同じ -ing で表されるのか」(21%),第3位に同率で「なぜ時・条件を表す副詞節では未来のことも現在形で表すのか」と「アルファベット最後の文字 z のミステリー」(19%)がランクインしたことです.
 田中さんも指摘されていましたが,学校文法の定番である go/went のような理不尽度の高い具体的な疑問よりも,むしろ抽象度や玄人好みの高い問いが上位へ食い込んできたのは意外な結果でした.対談では,お互いの「推し疑問」についても初めて語り合っており,田中さんは自明すぎて普通は疑問にすら思わない数詞の「one, two の綴字と発音の謎」や「eleven, twelve の形」を挙げられ,さすがプロの編集者というべき鋭い視点に唸らされました.私は「I の大文字問題」や,「there is/are 構文」に一票を投じています.
 続いて,6月7日に配信した Part 4 では,数年にわたる雑誌連載から新書へと編み直すプロセスにおいて,編集者と著者がどのような共同作業をしてきたのか,その舞台裏を赤裸々にトークしました.
 元の雑誌連載は中学生向けに相当優しく書かれていたため,二字熟語を制限するなど日本語の言い回しを徹底的にチューニングしていましたが,新書化にあたっては大人向けの文体へと仕立て直す大がかりな文体調整を行ないました.そのなかで,単行本ならではの魅力として加わったのが,いくつかの「書き下ろし」コンテンツです.
 とりわけ大きな柱となったのが,今回の新書で新たに追加された「there is/are 構文」に関する節です.これは田中さんからの「教科書における学習順序を意識したときに,中学2年生で習うテーマが穴になっているので,存在を表す構文について書いてほしい」という具体的なリクエストから生まれた,文字通りの書き下ろしです.後から付け足したピースであるにもかかわらず,英語における SVO の語順や主語の必須性といった収載済みの統語論的テーマとみごとに融合し,味わい深い節として仕上がりました.
 さらに,Amazon 事前予約特典として用意した1節分の書き下ろし「なぜ doubt のスペリングに b があるのか」についても言及しています.実は,田中さんが私に最初にくださった連載の打診メールで,私が過去に書いた doubt に関するウェブ記事「圧倒的腹落ち感!英語の発音と綴りが一致しない理由を専門家に聞きに行ったら,犯人は中世から近代にかけての「見栄」と「惰性」だった.」を読まれていたことが触れられており,この思い出深いテーマが巡り巡って発売直前の特典として結実したという,言語史ならぬ「本の歴史」の美しい結末には深い感慨を覚えます.

 この2回の対談を通じて改めて強く実感したのは,同じ1冊の本を対象にしていても,著者・研究者の目線と,プロのエディターとしての目線では,見ている角度やポイントが全く異なるということです.お互いの視点が火花を散らし,アドバイスを潤滑剤としながら融合したからこそ,2日後に世に出る新書が,このような形に成長してきたのだと確信しています.
 音声配信では,文字通り2人の息づかいやプロフェッショナルとしての裏話が満載ですので,ぜひ heldio の音声を直接お聴きいただき,本を手に取る前のワクワク感を高めていただければ幸いです.どうぞお楽しみに.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

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2026-06-04 Thu

#6247. helwa 3周年 --- データで振り返るプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 [voicy][heldio][helwa][notice][helkatsu][helmate][hel_education]



 昨日の記事「#6236.heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」 ([2026-06-03-1]) に続いて,5月28日時点での Voicy のアナリティクスに基づく記事をお届けします.一昨日2026年6月2日は,heldio 5周年記念日であると同時に,実は helwa 3周年記念日でもありました.Voicy heldio 開始からちょうど2年目に当たる日に,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」を開始したのでした.
 helwa は週2回ベースで配信を始めましたが,途中から週3回ペースとなり今に至ります.3年間で積み上げてきた helwa の配信数は,449本に達しました.冷静に考えると,これはなかなか異常なペースです.普通の有料コミュニティであれば,数十本の限定雑談や月1回のイベント程度で終わることも多いかと思いますが,helwa は heldio とは異なるもう1つの英語史コミュニティへと成長してきました.
 当初は,これほどニッチな学術分野で有料チャンネルを始めて本当に人が集まるのか,どのような雰囲気の場になるのか,大きな不安があったのも事実です.しかし,蓋を開けてみればそこは heldio 通常回の特典音源の置き場ではなく,日常的な英語史雑談,Discord 上での交流,オフ会ルポ,書籍の共同企画,学会の裏話など,多岐にわたる談義が繰り広げられる「英語史サロン」へと発展していきました.そして,helwa リスナーを増やすことを主目的とするのではなく,英語史を一緒に楽しむ仲間を作ることが最重要視される,そのような空間に育ってきたのです.
 この3年間における最大の成果の1つは,音声配信チャンネルというオンラインの枠を飛び出し,オフ会や「英語史ライヴ」など,現実のコミュニティが実現したことでしょう.泊まりがけのオフ会も複数回開催され,その熱気はこのコミュニティから生まれた月刊ウェブマガジン Helvillian などで熱くレポートされています.英語史という実利の外側にある学問が,学生,社会人,教員といった幅広い層の垣根を越えて,純粋な大人の「居場所」となったことは,きわめて感慨深いことです.
 しかし,helwa がもたらした最大の変革は,「英語史が雑談になった」という点に尽きるかもしれません.本来,英語史は大学の講義室や専門論文のなかに閉じ込められた世界でした.それがこのコミュニティでは,「その語源おもしろい」「その発音変化わかる」「それ英語史的な発想だよね」といった言葉が日常的に交わされています.オフ会での乾杯の挨拶もすっかり古英語の Wes hal! に定着しています.英語史が一部の専門家だけのものではなく,コミュニティの皆さんの間で一種の「生活言語」として根付いているといったらよいでしょうか.
 常連文化,内輪ネタ,定番フレーズが自然発生するその空気感は,深夜ラジオ共同体にかなり近いものがあるように思っています.「英語史」という硬派なテーマなのに,やっていることは深夜ラジオというギャップが,何ともおもしろいところです.また,リスナーの皆さんが単なる受信者にとどまらず,コメントや note や SNS を利用した発信者となってhel活を推進し,英語史エコシステムを想像している点も,helwa の本質といえます.
 英語史研究者としては「英語史って,本来こんなふうにワイワイ雑談する分野じゃなかったんですよ(笑)」と,嬉しい悲鳴を上げたいです.この helwa という舞台裏の熱量とエネルギー源があるからこそ,表舞台である heldio の5年間にわたる毎日更新も維持されてきたと思っています.3年間で醸成されたこの愛すべきニッチ共同体の文化を,今後もさらにディープに,そして楽しく発展させていきたいと考えています.
 新たな月となりました.heldio リスナーの皆さんにおかれましては,heldio 5周年かつ helwa 3周年の機会に,ぜひ「英語史の輪 (helwa)」へご入会ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しにお入りいただければ.今月は helwa では『なぜさんたんげん』の裏話が多くなるはずです.
 一昨日の helwa 「【英語史の輪 #0453】helwa 3周年 --- 英語史エコシステムが完成した」を,ぜひお聴きください.

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2026-06-03 Wed

#6246.heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化 [voicy][heldio][helwa][notice][helkatsu][hel_education][sobokunagimon]



 昨日2026年6月2日,Voicy チャンネル「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」は,おかげさまで5周年を迎えることになりました.丸5年間,毎日マイクやレコーダーに向かって英語史を語り続けてきたことになりますが,この機会に Voicy のアナリティクスから抽出されたデータを皆さんと共有しつつ,この5年間の heldio の進化を振り返ってみたいと思います.アナリティクスは5月28日時点のデータを用いています.
 まず配信回数ですが,5年間で2,340本を配信してきました.これは毎朝6時の heldio 通常配信のほか,生配信や特別配信,そしてプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」の配信を加えた総数です.我ながら,英語史という単一テーマで,よく持ったと思います.単なる毎日更新にとどまらず,英語史というニッチな学術分野において,これだけの高頻度で5年間メディアが回り続けたというのは,リスナーの皆さんにとっても「え,そんな本数だったの!?」と驚かれるのではないでしょうか.
 では,リスナーの皆さんにとって,heldio への「入口」となったのはどのような回だったのでしょうか.歴代の総再生回数および新規リスナー獲得数のランキングを見てみると,きわめて一貫した heldio の原点が見えてくるように思われます.
 不動の歴代1位に君臨しているのは,記念すべき初回配信である「#1. なぜ A pen なのに AN apple なの?」(合計リスナー3,104人,新規獲得1,757人)です.これは完全に他を圧倒する入口回となっています.ここで重要なのは,この回が扱っているテーマが a/an の使い分けという,中学1年生で習う初歩的で素朴な疑問である点です.ここから分かるのは,heldio の原点がハードルの高い専門知識の講義ではなく,誰もが抱く学校英語への違和感や日常の小さな謎に寄り添う姿勢だったということです.
 もう1つの興味深いデータとして,2022年の「#408. 自己紹介:英語史研究者の堀田隆一です」(新規995人)と,2024年の「#1171. 自己紹介 --- 英語史研究者の堀田隆一です」(新規989人)という,2回の自己紹介回がどちらもヒットしている現象が挙げられます.リスナーさんの関心が,英語史そのものだけでなく,それを語っているパーソナリティにも向いているものと理解してよいのでしょうか.その辺りが謎ではあります.
 また,外部コミュニティとの接続という点では,人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」さんにお招きいただいた際の 「#705. ゆる言語学ラジオにお招きいただき初めて出演することに!」(新規609人)が爆発的な流入を生みました.「英語史をお茶の間に」というモットーが,専門界隈の外へと届いた象徴的な瞬間でした.さらに,純粋な歴史の話題だけでなく,「#729. なぜ英語を学ばなければならないの?」(新規558人)のように,英語教育や現代人の英語観を照らす類いの話題も,強い新規流入を呼び込んでいます.トップに近い配信回を眺めまわしてみると,結局のところ違和感を共有する「英語に関する素朴な疑問」(sobokunagimon)が核であったことが示されています.
 一方で,年別の平均リスナー数の推移を見ると,数字の上では減少傾向にあるように見えます.これには様々な原因があると思いますが,Voicy と同一のコンテンツを,他の音声配信プラットフォームでも配信し始めたので,Voicy 単独でのリスナー数が減ったということが大きいように思われます.もう1つは,リスナー集団の中心がライト層からコア層へシフトしてきたようにも感じます.リスナー数が減少した分,チャンネルが成熟していったのではないかと私は分析しています.
 実際に現在のアナリティクスによれば,「とても熱心なリスナー」が72.7%,「熱心なリスナー」が7.9%を占めており,全体の約8割が濃いリスナーを占める,そのようなチャンネルへと進化しています.そして,この超コア化・定着化を支える巨大な「地下アーカイブ」となっているのが,3年間で449本を積み上げてきた「英語史の輪 (helwa)」の存在です.ここでは,日常的な英語史談義,Discord 上での交流,オフ会報告,コアな研究雑談などが蓄積され,単なる有料配信メンバーの集団という以上の濃いコミュニティが形成されています.
 リスナーさんたちの属性分析からも,heldio の独特な受容スタイルが浮かび上がってきます.まず,男女比が男性45.9%,女性43.8%(無回答10.2%)と,ほぼ五分五分で均衡しています.一般に,語学学習系番組は女性に偏りやすく,IT・学術雑談系は男性に偏りやすい傾向がありますが,heldio はその中間に位置しています.大人の知的雑談メディアとしてバランスよく受け入れられているものと考えています.
 年齢層を見ると,30代が24.3%,40代が25.5%,50代が23.1%となっており,実に大人の30--50代で全体の約73%を占めています.まさに「学び直し」や通勤・家事の合間の知的時間を求める成熟したリスナー層です.さらに職業分布では,会社員が46.3%,自営業が12.5%を占め,英語教員や学生といった層だけでなく,実務の外側にある純粋な知的好奇心として英語史を楽しんでいる一般のビジネスパーソンが圧倒的多数派のようです.
 さらに国内での地域的な広がりを見ると,東京が38.9%と最大ですが,大阪6.7%,神奈川6.0%,千葉3.9%,北海道3.6%と続き,全国(さらには海外)に薄く広く分散しています.大学の講義室であれば物理的な制約がありますが,インターネットの音声配信という特性を活かし,英語史の地方分散化が数字として実現しているのは,興味深いファクトです.
 これらすべてのデータを総括するならば,この5年間は,「マスメディア的なリスナー数の拡大」ではなく「英語史に関心を寄せるリスナーの着実な増加」を示す時間だった,ということです.実利的な英語スキルのためではなく,「英語っておもしろい」「言葉って不思議だな」という感覚を共有し,英語について雑談する文化圏・公共圏がここに誕生したのです.
 大学の研究者が専門分野を掲げてこのようなコミュニティを形成できたことは,稀な事例ではないかと思っています.これまで heldio を支え,一緒に知的な遊び場を作ってくださったリスナーの皆さんに,改めて心より感謝申し上げます.
 これからも heldio は様々な進化を遂げていくものと思われます.直近では,今月6月10日発売予定の近刊 『英語史で解く英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版新書)をめぐるお祭り企画やイベントも目白押しです.
 新たな月となりましたし,heldio 5周年のこの機会に,Voicy プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪 (helwa)」への入会もぜひご検討ください.helwa は毎週火木土の午後6時に配信しています.月額800円のサブスクで,初月無料サービスがありますので,まず試しに覗いてみていただければ.今月は helwa でも『なぜさんたんげん』の話題が多くなるだろうと思います.
 昨日の heldio 「#1829. heldio 5周年 --- データで振り返る heldio の進化」もお聴きいただければ.それでは,明日もいつも通り,朝6時に heldio でお会いしましょう.

Referrer (Inside): [2026-06-04-1]

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2026-06-01 Mon

#6244. 『なぜさんたんげん』の担当編集者・田中さんと対談しています [notice][nazesantangen][nhkpb][voicy][heldio]



 連日,6月10日に発売予定の新書『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』(NHK出版)に関連する記事を書いています.
 今回は,NHK出版の本書担当編集者と著者が heldio で対談した様子をお伝えしたいと思います.発売前に,二人三脚で本を作ってきた編集者と著者が語り合う様子が公開されるというのも珍しいかと思います.これまで2回にわたって対談してきました.

 ・ 第1回対談(5月13日配信),「#1809. 一昨日の『なぜさんたんげん』予約爆撃アワー生配信をアーカイヴでお届け」(対談自体は終わりの30分ほどをお聴きください)
 ・ 第2回対談(5月30日配信),「#1826. 『なぜさんたんげん』の裏側をお話しします --- NHK出版編集者・田中菜乃香さんとの対談 Part 2」

 今回は,直近に配信された第2回対談の主旨をご紹介します.

 対談の大きな柱となったのは,本書のタイトル決定に至るまでの長い舞台裏です.5月11日の「予約爆撃アワー企画」の初速や Amazon での好調な動き,またNHK出版デジタルマガジンでの第1章第5節(まさに「なぜ3単現の s をつけるのか」の目玉の節)の先行無料公開が3万ページビューを突破したことなど,発売前の大きな反響を喜びつつ,その魅力の根源がタイトル周りの議論にあったことを振り返りました.
 実は,タイトルが最終的に決まったのは3月末から4月初めという,かなりギリギリのタイミングであり,そこに至るまでには数百通りもの組み合わせを検討するプロセスがありました.編集の田中さんは,手探りだった本文の調整以上にタイトル周りで「自分を信じられるか」という疑心暗鬼に陥った瞬間があったと明かしてくれました.とりわけ,一時はタイトルから「3単現の s」という文言そのものを消去しようとした段階すらあった旨,触れられています.それは「サブタイトルに説明を付け足すのは長さに甘えているのではないか」という葛藤から生じた迷いでしたが,編集者と著者の間では盛り上がっていた意見に対して,社内の経験豊富な先輩たちのノウハウや蓄積に基づく異なる案が潤滑剤として加わったことで,最終的に現在の形に落ち着きました.このプロセスを通じて,この本を本当に必要としている層の読者は,自分に必要なのが「英語史」であるとは気づいていない,という原点に立ち返ることができたのは,編集者および著者にとって非常に大きな成果でした.
 また,本書のもう1つの魅力として,文体調整と用語解説へのこだわりが挙げられます.中高生向けの連載をベースとしつつも,新書という大人向けのジャンルに仕立て直すにあたり,ある程度の専門用語もあえて交えるという挑戦を試みました.ただし,専門知識がない読者でも自然と読み進められるよう,丁寧な言い換え表現や解説は加えてあります.読者の代表としての編集者目線と,伝えたい熱意が先走りがちな著者・研究者目線という,2つのプロフェッショナルな視点が火花を散らしつつも,最終的に融合したからこそ,今回の形にこぎつけることができたのだと,改めて実感させられる対談となりました.

 以上が第2回対談の概要となりますが,第1回・第2回ともに,ぜひ上記の音声配信を直接お聴きいただければと思います.編集者と著者の息づかいが伝わるかと思います.
 近日中に対談の続編をお届けする予定ですので,どうぞお楽しみに.

 ・ 堀田 隆一 『英語史で解く 英文法の謎 --- なぜ「3単現の s」をつけるのか』 NHK出版〈NHK出版新書〉,2026年.

Referrer (Inside): [2026-06-08-1]

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