hellog〜英語史ブログ

#50. インドヨーロッパ語族の系統図をお遊びで[indo-european][family_tree][flash][mindmap]

2009-06-17

 英語史のどの概説書でも見つけられる類のインドヨーロッパ語族(印欧語族)の系統図だが,マインドマップ風にアレンジしてみた.また,絵だけでは芸がないと思ったので,今回はこちらのページに Flash で遊べるものも作ってみた.クリックしてゆくと枝葉が展開するという仕掛け.

(図をクリックすると拡大)
Indo-European Family Tree

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

#455. インドヨーロッパ語族の系統図(日本語版)[indo-european][family_tree][flash]

2010-07-26

 [2009-06-17-1]でインドヨーロッパ語族の系統図を掲載したが,言語名を日本語表記とする改訂版を作成してみた.向かって左側が centum グループ,右側が satem グループ ( see [2009-08-05-1] ).合わせてノードを開閉できるFlash版も作ったので,戯れにどうぞ.
 今回あらためて印欧語系統図を作成して分かったことは,参考書によって言語の所属や配置が異なる,言語名の列挙の仕方に方針がない,言語名の日本語表記に揺れがあるなど,未確定だったり不明だったりする点が多いということ.言語の系統というのは難しいものだと実感した ( see [2010-05-01-1] ) .

(図をクリックすると拡大)
Indo-European Family Tree

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

#1146. インドヨーロッパ語族の系統図(Fortson版)[indo-european][family_tree][flash]

2012-06-16

 印欧語族の系統図や地図については,本ブログでも何度か触れてきた.

 ・ [2009-06-17-1]: 「#50. インドヨーロッパ語族の系統図をお遊びで」(Flash版
 ・ [2010-07-26-1]: 「#455. インドヨーロッパ語族の系統図(日本語版)」(Flash版
 ・ [2012-05-19-1]: 「#1118. Schleicher の系統樹説」
 ・ [2012-05-30-1]: 「#1129. 印欧祖語の分岐は紀元前5800--7800年?」
 ・ [2011-04-12-1]: 「#715. Britannica Online で参照できる言語地図」.特に現代における印欧諸語の地理的分布については Approximate locations of Indo-European languages in contemporary Eurasia を参照.  *  

 上記に加えて,今回,新たに Fortson (10) の系統図を3種類の方法で再現してみる.もとより網羅的ではないが,これまでの系統図に比べれば詳しい.* 印のあるものは,死語,あるいは現代語の古い段階を表わす.
 複数の印欧語系統図を示す意義は,研究者ごとに諸言語の分類や図の描き方の異なる点を強調することにより,言語の系統というものが絶対的なものではないことを確認する点にある.この点については,「#807. 言語系統図と生物系統図の類似点と相違点」 ([2011-07-13-1]) や「#1118. Schleicher の系統樹説」 ([2012-05-19-1]) も参照.

 ・ PNG画像版の系統図(=以下の画像の拡大版)
 ・ ノードを開閉できるFLASH版の系統図
 ・ ノードを開閉できるHTML版のリスト型系統図

Indo-European Family Tree by Fortson

 ・ Fortson IV, Benjamin W. Indo-European Language and Culture: An Introduction. Malden, MA: Blackwell, 2004.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

#1339. インドヨーロッパ語族の系統図(上下反転版)[indo-european][family_tree][historiography]

2012-12-26

 本ブログでは,印欧語族の系統図をいくつかの形で示してきた.

 ・ [2009-06-17-1]: 「#50. インドヨーロッパ語族の系統図をお遊びで」(Flash版
 ・ [2010-07-26-1]: 「#455. インドヨーロッパ語族の系統図(日本語版)」(Flash版
 ・ [2012-06-16-1]: 「#1146. インドヨーロッパ語族の系統図(Fortson版)」

 今回は,寺澤・川崎 (2--3) の印欧語族系統図を参照した上で,2種類の版を作成してみた.いずれも横長の系統図だが,1つ目は印欧祖語が上に来る通常のタイプ,2つ目は印欧祖語が下に来る通常のタイプである(それぞれ下図をクリックすると拡大版を表示できる).

Indo-European Family Tree with GraphViz
Reversed Indo-European Family Tree with GraphViz

 系統図は系統樹とも呼ばれるが,本来の木は,当然のことながら,下が根で上が梢である.しかし,系統関係を示す系統樹においては,ほとんどの場合,上下が反転しており,上が根で下が梢である.これは,上から下へ時間が流れて行くという我々の時間についての直感に合うために採用されているわけだが,ある意味では歴史的な見方に反している.歴史をみる場合,現在を起点にして過去へ遡って行くというのが自然な動機づけではないだろうか.現在の物事の起源は何かと問うて過去を振り返るのが,歴史に対する関心というものではないだろうか.また,このようにして過去へ遡及してゆくとき,ビッグバンのような宇宙史規模の時間の幅を念頭におくのでない限り,終着点は想定されず,さらなる過去へと常に開かれている.この歴史観や時間観は,現在を一応の終着点とみなす通常の系統図が前提とする歴史観や時間観とはおおいに異なる.
 上に述べた系統図の上下を反転させるという発想と意義は,時間遡及的な英語史を著わした Strang に負っている.印欧語族の見え方も変わってくるのではないか.関連して,「#253. 英語史記述の二つの方法」 ([2010-01-05-1]) を参照.

 ・ 寺澤 芳雄,川崎 潔 編 『英語史総合年表?英語史・英語学史・英米文学史・外面史?』 研究社,1993年.
 ・ Strang, Barbara M. H. A History of English. London: Methuen, 1970.

Referrer (Inside): [2016-02-01-1] [2012-12-27-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

#2466. インドヨーロッパ語族の系統図(Algeo and Pyles 版)[indo-european][family_tree]

2016-01-27

 何度目かの印欧語系統図になるが,Algeo and Pyles (62--63) の図を参照して,横長版と縦長版の系統図を作成した.大きな大文字は主たる枝を,小さな大文字は下位の枝を,通常文字は個別言語を表わす.死語については,* を付してある.これまでに挙げてきた印欧語系統図については,indo-european family_tree の各記事を参照されたい.

[横長版](下の画像をクリック)
Indo-European Family Tree by Algeo and Pyles (Horizontal)

[縦長版](下の画像をクリック)
Indo-European Family Tree by Algeo and Pyles (vertical)

 ・ Algeo, John, and Thomas Pyles. The Origins and Development of the English Language. 5th ed. Thomson Wadsworth, 2005.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

#1925. 語派間の関係を示したインドヨーロッパ語族の系統図[indo-european][family_tree]

2014-08-04

 インドヨーロッパ語族の系統図は,全体的なものと部分的なものを含めて,indo-european family_tree の各記事で描いてきた.Miller (1) は,近年の印欧語比較言語学の知見と参考文献に基づき,大区分としてまず以下のような図を掲げている.

Major Divisions of Indo-European

 最も古く分岐したのは Hittite などを配下にもつ Anatolian で,次に Tocharian が分かれた(「#101. 比較言語学のロマン --- Tocharian と Anatolian」 ([2009-08-06-1]) 及び「#109. 比較言語学のロマン --- Tocharian (2)」 ([2009-08-14-1]) を参照).その後,Italo-Celtic とその他の塊 (Central IE) が分岐したという概観である.Central IE 以下も含めてやや詳細に描きなおすと,Miller (2) の示す以下のような系統図となる.

Elaborated Into-European Tree

 この系統図に従うと,英語を含む Germanic は,Balto-Slavic 及び Indo-Iranian と大結点を共有することになる.一方,英語が歴史的に濃密に接触してきた Italic や,近年英語との言語接触論で話題を集めている Celtic は,系統的にむしろ英語から遠いことになる.
 この言語系統図は,語派ごとの分岐のタイミングを示している点で「#50. インドヨーロッパ語族の系統図をお遊びで」 ([2009-06-17-1]) のようなフラットな図よりは,「#1129. 印欧祖語の分岐は紀元前5800--7800年?」 ([2012-05-30-1]) の言語年代学に基づいた図に近い.この種の系統図は,各語派の歴史的な発展をたどって語派間の関係を把握するのにはすこぶる便利だが,言語接触が示されないという欠点がある.この問題については,「#999. 言語変化の波状説」 ([2012-01-21-1]),「#1118. Schleicher の系統樹説」 ([2012-05-19-1]),「#1236. 木と波」 ([2012-09-14-1]) でも触れてきたとおりである.Old English 以降,Middle English, Modern English は,系統的には比較的遠いこれらの Italic (及び Celtic)の諸言語から多大な影響を受けてきたことを考えると,英語史は,最上部の Tocharian A, B や Hittite などを除いたこの詳細図の大部分と,系統あるいは影響という軸で,何らかの関係をもってきたことになる.英語(史)を他の言語(史)に比して特別視するつもりはないが,英語という末端言語の目線からインドヨーロッパ語族の系統図を眺めるというのは,1つの意義ある眺め方ではないだろうか.

 ・ Miller, D. Gary. External Influences on English: From its Beginnings to the Renaissance. Oxford: OUP, 2012.

Referrer (Inside): [2014-08-09-1]

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

#1930. 系統と影響を考慮に入れた西インドヨーロッパ語族の関係図[indo-european][family_tree][contact][loan_word][borrowing][geolinguistics][linguistic_area][historiography][french][latin][greek][old_norse]

2014-08-09

 「#999. 言語変化の波状説」 ([2012-01-21-1]),「#1118. Schleicher の系統樹説」 ([2012-05-19-1]),「#1236. 木と波」 ([2012-09-14-1]),「#1925. 語派間の関係を示したインドヨーロッパ語族の系統図」 ([2014-08-04-1]) で触れてきたように,従来の言語系統図の弱点として,言語接触 (language contact) や地理的な隣接関係に基づく言語圏 (linguistic area; cf. 「#1314. 言語圏[2012-12-01-1])がうまく表現できないという問題があった.しかし,工夫次第で,系統図のなかに他言語からの影響に関する情報を盛り込むことは不可能ではない.Miller (3) がそのような試みを行っているので,見やすい形に作図したものを示そう.

Family Tree with Interactive Contact of Western Indo-European and English

 この図では,英語が歴史的に経験してきた言語接触や地理言語学的な条件がうまく表現されている.特に,主要な言語との接触の性質,規模,時期がおよそわかるように描かれている.まず,ラテン語,フランス語,ギリシア語からの影響が程度の差はあれ一方的であり,語彙的なものに限られることが,赤線の矢印から見て取れる.古ノルド語 (ENorse) との言語接触についても同様に赤線の一方向の矢印が見られるが,緑線の双方向の矢印により,構造的な革新において共通項の少なくないことが示唆されている.ケルト語 (Brythonic) との関係については,近年議論が活発化してきているが,地域的な双方向性のコネクションが青線によって示されている.
 もちろん,この図も英語と諸言語との影響の関係を完璧に示し得ているわけではない.例えば,矢印で図示されているのは主たる言語接触のみである(矢印の種類と数を増やして図を精緻化することはできる).また,フランス語との接触について,中英語以降の継続的な関与はうまく図示されていない.それでも,この図に相当量の情報が盛り込まれていることは確かであり,英語史の概観としても役に立つのではないか.

 ・ Miller, D. Gary. External Influences on English: From its Beginnings to the Renaissance. Oxford: OUP, 2012.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]