明けましておめでとうございます.昨年は hellog への訪問をありがとうございました.本年も続けます.よろしくお願いいたします.
さて,新年の話題は,去る秋に英語史の授業で課した自由レポートについて.学生が英語史のどのような点に関心をもっているかを知りたかったので,レポートのテーマは自由にした.129名の学生から回収したレポートについて扱われている話題を大雑把にキーワードで分類し,人気上位を出した.以下の通りである.
1位の「借用語」は,英語のたどってきた諸言語との接触の歴史に広く関心がもたれたためだろう.語彙は「見えやすい」話題なので,上位に来ることは予想された.この点は4位タイの「語源」も同様である.
2位は「アメリカ英語(とイギリス英語の比較)」.今回のレポートでも,普段の授業のリアクションペーパーでも,アメリカ英語についての話題の人気ぶりはとりわけ目立った.このようなランキングでは講義で扱った内容が学生の関心に影響を与えるということは多分にあるだろうが,アメリカ英語の歴史の講義は今回のレポートの提出後のことである.講義を受ける以前にデフォルトとして関心の高い話題だということがよく分かった.
3位の「フランス語の影響」としては,特にフランス借用語への関心が高かった.中英語期におけるフランス(語)の支配とそこからの脱却の歴史(7位タイ「中世の英語の復権」)は,現代的な話題である7位タイ「世界語としての英語」を考える上でも,重要な歴史的役割を担っているという視点が多かったように思われる.
4位タイの「方言」も,デフォルトで人気が高い.Irish English, Australian English, Black English, Malaysian English などを英語の方言として考えて票に含めるのであれば,もっと上位にランクインしただろう.
6位の「社会史(と英語史の関連)」は,「かつて歴史の授業で学習した内容と英語史が結びついた」という趣旨のコメントからも理解できる.中世でいえば,黒死病,百年戦争,活版印刷術の発明といった著名な歴史の話題が,英語の歴史とも関連が深いという気づきが反映されているようだ.
7位タイの「アルファベット(の歴史)」は,とりわけ講義で取りあげた話題ではないが,一定の人気があった.同じく7位タイの「綴字と発音の乖離」については,講義でも本ブログでも繰り返し取りあげた内容である.最後に「統語論」は,カテゴリーとして広くくくったこともあろうが,これまでに学んできた英文法への関心が反映されたということだろう.語順や do-periphrasis の話題が何件か扱われていた.
以上,今期の英語史受講生の関心をざっとまとめた.「借用語」「語源」「綴字と発音の乖離」「統語論」などは英語学習との結びつきが比較的強い話題であり,上位に来ることは予想できた.また,「アメリカ英語」や「世界語としての英語」は現代英語のおかれている社会的役割を考えれば,関心のある話題であることは理解できる.一方,「アルファベット」の上位ランキングはやや意外だった.
来期の英語史の講義を再構成するにあたって今回の結果を参考にしたいと思う.特に,アメリカ英語に関する話題の絶大な人気,方言や World Englishes への興味,アルファベット(ひいては文字論一般)への関心などは,今期の講義では比較的扱いが弱かったので,来年度の講義には是非とも反映したい.本ブログでも,今後,これらの話題を意識して取りあげるつもりである.
全統計結果はこのページのHTMLソースを参照.
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