[2010-01-24-1]の記事でみたように,国際語としての英語という話題では,ELF ( English as a Lingua Franca ) や EIL ( English as an International Language ) という呼称がよく聞かれるようになってきた.英語話者数を始めとする国際語としての英語に関する最新の数値については,Crystal や Graddol がよく引き合いに出される.この種の統計値は最新のものが手に入りにくく,出版されるものは常に数年前のデータというのが普通である.
今回は,2005年時点でNewsweek が関連記事を掲載しているのをみつけたので,そこから世界英語の趨勢についての気になる事実・統計をいくつか抜き出してみたい.5年後の現在,すでに古くなっている情報もあるかもしれないのであしからず.
・ インド国内で英語学習産業は年間1億ドルのビジネスである
・ the British Council によると,10年以内に英語学習者数は20億人に達し,英語話者は30億人に達すると見込まれる
・ アジアの英語使用数は3億5千万人に達する(←アメリカ,イギリス,カナダの人口の和に相当する数)
・ 中国の1億人の子供たちが英語を学んでいる
・ インドは英語教師を中国や中東へ輸出し始めている(← [2009-10-07-1])
・ 反英語主義と結びつけられることの多いフランスでも,教育大臣が英語必修化に反対したものの,選択必修として96%の生徒がすでに英語を履修している(←事実上の必修科目)
・ 世界の電子情報の80%が英語で蓄積されている(← [2010-04-13-1] のイントロクイズで採用した問題.しかし,電子情報における英語の相対頻度は年々減ってきている.いつのデータかは本文内だけでは不明.)
・ the British Council によると,世界中の科学者の66%が英語を読む
・ 中国は,一部 China English を Standard English に取り込む方向で英語のカリキュラムを検討しつつある
このような記事だけを読んでいると英語の勢いは止まらないという一方的な印象を受ける.しかし,実際には諸事情で英語の近未来像を明確に想像することは難しい.その諸事情については,Jenkins の著書がよくまとまっている.
・ "Not the Queen's English". Newsweek 145. 10. March 7, 2005, 41--45.
・ Crystal, David. English As a Global Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003.
・ Graddol, David. English Next. British Council, 2006. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-englishnext.htm.44--45.
・ Graddol, David. The Future of English? The British Council, 1997. Digital version available at http://www.britishcouncil.org/learning-research-futureofenglish.htm.
・ Jenkins, Jennifer. World Englishes: A Resource Book for Students. 2nd ed. London: Routledge, 2009.
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