言語変化がなぜ生じるか,その原因については様々な研究がなされてきた.言語変化の causation に関する議論は,基本的には後付けの議論である.過去に生じた,あるいは今生じている言語変化を観察し,状況証拠から何が原因だろうかと推測する.多くの場合,そのように推測された原因は当該の言語変化についてのみ有効な説明であり,別の変化に適用したり,今後の変化を予測するのには役立たない.また,ほぼすべての言語変化において原因は一つではなく複数の原因が複合的に組み合わさっていると考えられ,causation の議論では一般論が成立しにくい.
しかし,概論的にいえば多くの言語変化に当てはまると考えられる傾向はあり,いろいろと分類されている.細分化すればきりがないが,基本的に同意されていると思われるのは,言語内的 ( language-internal ) な原因と言語外的 ( language-external ) な原因とに二分するやり方である.Brinton and Arnovick ( 56--62 ) に従って,代表的な原因を箇条書きしよう.いくつかの項目の末尾に,関連するキーワードと本ブログ内へのリンクを付した.
・ Language-Internal Causes
[ 話者がおよそ無意識的 ]
・ ease of articulation ( assimilation )
・ perceptual clarity ( dissimilation )
・ phonological symmetry ( [2009-11-27-1] )
・ universal tendencies
・ efficiency or transparency
[ 話者がおよそ意識的 ]
・ spelling pronunciation ( spelling_pronunciation )
・ hypercorrection
・ overgeneralization
・ analogy ( analogy )
・ renewal
・ reanalysis ( reanalysis, metanalysis )
・ Language-External Causes
・ contact-induced language change ( contact )
・ extreme language mixture ( leading to pidgins, creoles, and bilingual mixed languages ) ( pidgin, creole )
・ language death ( language_death )
言語内的な原因については,話者が当該の変化について無意識的なのか意識的なのかで二分されているが,意識の有無は程度の問題なので絶対的な基準にはならないだろう.
関連する記事として,[2010-07-01-1], [2010-06-01-1]の記事も参照.
・ Brinton, Laurel J. and Leslie K. Arnovick. The English Language: A Linguistic History. Oxford: OUP, 2006.
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