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#6282. 井上逸兵さんが「ゆる言語学ラジオ」に2度目の登場[notice][inoueippei][yurugengogakuradio][inohota][youtube][nazesantangen][politeness][sociolinguistics][honorific][hedge]

2026-07-09



 人気 YouTube チャンネル「ゆる言語学ラジオ」の最新回で,先週に引き続き井上逸兵さん(慶應義塾大学教授)が出演しています.7月7日(火)に配信された「「日本語は遠回りに言う」。それ誤解です。」です.ポライトネスの日英差をテーマとして,お3方で盛り上がっています.水野さんと堀元さんとの掛け合いとともに37分間,画面に釘付けで視聴しました.勉強になるし,おもしろい!
 一般に「日本語は遠回りで直接言わない,英語ははっきり直接言う」というステレオタイプが広く信じられていますが,社会言語学を専門とする井上さんによれば,この認識は「3割ぐらいしか合っていない」(むしろ逆)とのこと.今回の動画は,そんな言語ごとの対人関係調整のメカニズム,すなわち ポライトネス (politeness) をめぐる,目から鱗が落ちる議論が展開されています.
 動画の前半で特に興味深いのは,英語の丁寧さは形式(統語や形態)ではなく音声に依存することが多いという指摘です.英語には日本語のような文法化された「敬語」 (honorific) のシステムが乏しい分,比較的ゆっくり,かつ明瞭に発音することで経緯や丁寧さを表現する特徴があるといいます.文字情報に頼りがちな学校の英語教育ではなかなか教えにくい領域ですが,音声的なアプローチが対人関係に直結している点は刺激的な視点です.
 さらに議論は,英語における他者の領域への配慮へと展開します.日本語は自分の意見を緩めるヘッジ (hedge) を多用して関節的になりますが,英語はむしろ,相手の領域に土足で踏み込まないための固有の装置をもっています.I want to do this. という直接表現を避け,I am just wondering if I could ... のように「くねくね」と迂回する表現や,最上級表現を薄めて one of the best . . . などとする言い方が,その例とのことです.英語話者がいかに相手の独立を重んじているかが,映画の字幕翻訳の事例なども交えて解説されています.
 動画の後半では,ガソリンスタンドや玄関先での「お見送り文化」の日米差や,都市部で見られる「儀礼的無関心」,さらには幼少期の子育てにおける言語化の訓練の差異にまで話が及びます.言葉にしないものを察する日本のコミュニケーション文化と,すべてを言語化する欧米の文化モデルの対比は,堀元さんが取り上げた現代の生成AI時代における言語化のストレスの話題ともリンクし,終始笑いが絶えないながらも深い思索へと誘われます.最後は,井上さんが仕掛けたといってよい学術的な「状況による」ボケの連発に,水野さんと堀元さんが応酬する展開も必見です.
 日英差に関するステレオタイプを突き崩し,言葉の裏にある文化や心理を深く覗き込める,井上さん出演回らしい内容ですので,ぜひ上記の動画を視聴していただければとと思います.来週は井上さん出演の第3回,いよいよ爆発的なファイナル回が予定されています.すでに待ち遠しいです.
 あわせて,井上&堀田のペアで緩く(ときに熱く)言語学を語る「いのほた言語学チャンネル」のほうも,ぜひチャンネル登録をお願いします!

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