hellog〜英語史ブログ

#2825. 「トランプ話法」[discourse_analysis][rhetoric][implicature]

2017-01-20

 本日,いよいよ Donald John Trump が第45代アメリカ大統領に就任する(cf. 「#2656. 歴代アメリカ大統領と任期の一覧」 ([2016-08-04-1])).
 トランプ氏の話す英語については,選挙戦を通じて様々な評価がなされてきた.2日前の1月18日の読売新聞朝刊6面にも「トランプ話法」に関する記事があった.昨年3月の大統領候補者の話法研究によると,トランプ氏の文法は6年生レベルで,ヒラリー・クリントン氏は7年生レベルだったという.最近は plain spoken の英語が有権者に受けるということで,リンカーンやケネディの格調高い演説はすでに過去のものとなったかのようだ.
 認知言語学の大家 George Lakoff によると,トランプ大統領のツイッター上の発言を分析すると,誇張やすり替えを効果的に利用しつつ保守層を取り込んでいることが分かるという.論法という側面で言うと,(1) はなから決めつける,(2) 極端な物言い,(3) 論点のすり替え,(4) 観測気球を揚げる,という特徴が見られるという.これらのレトリックはもちろん意図的であり,国民もマスコミもその手に乗ってしまっていると分析する.(1) は,根拠のないことを前提として提示し,話を進める傾向があることを指す.(2) については,直接いわずとも,保守層には理解できる言い方をすることで示唆する,いわゆる implicature の戦略的利用に長けているという.(4) は,世論の反応を見極めるために「メキシコとの国境の壁を作った後にメキシコに弁済させる」などとぶち上げることなどが相当する.
 このようなトランプ話法は,リベラル層から見れば馬鹿げたレトリックということになるが,保守層には効果覿面のようだ.
 演説,討論,ツイッターでは registerstyle も異なり,それに応じてレトリックを含む言語戦略が異なってくるのは当然だが,ときにメディアを嫌う姿勢を示しながらも実はおおいに利用してきたトランプ氏の談話分析は,大統領就任以降も,ますます注目されていくことになるかもしれない.
 少々前のことになるが,2013年2月12日の The Guardian より,アメリカ大統領のスピーチレベルの変化に関して,The state of our union is . . . dumber: How the linguistic standard of the presidential address has declined のデータも参照.

Referrer (Inside): [2017-01-23-1]

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