「#2743. 貨幣と言語」 ([2016-10-30-1]) に引き続き,"LANGUAGE IS MONEY" の概念メタファーについて.貨幣と言語の共通点を考えることで,この比喩のどこまでが有効で,どこからが無効なのか,そして特に言語の本質とは何なのかについて議論するきっかけとしたい.以下は,ナイジェル・トッド (152--67) の貨幣論における言語のアナロジーを扱った部分などを参照しつつ,貨幣と言語の機能に関する対応について,自分なりにブレストした結果である.
貨幣 | 言語 |
---|---|
貨幣は社会に流通する | 言語は社会に流通する |
物流の活発化に貢献 | (主として書き言葉により)情報の活発化に貢献 |
貨幣統一(cf. 日本史では家康が650年振りに「寛永通宝」など) | 言語の標準化(cf. 英語史では書き言葉の標準化が400?500年振りに) |
撰銭(種々の貨幣から良質のものを選る) | 言語の標準化にむけての "selection" (cf. 「#2745. Haugen の言語標準化の4段階 (2)」 ([2016-11-01-1])) |
貨幣の改鋳 | 言語の "refinement" (cf. 「#2745. Haugen の言語標準化の4段階 (2)」 ([2016-11-01-1])) |
貨幣システムはゼロサムではない(使用者間の信用創造が可能) | 言語システムはゼロサムではない(使用者間の関係創造が可能) |
貨幣はどのような相互行為においても使用できるわけではない | 言語はどのような相互行為においても使用できるわけではない |
非即時交換性を実現する掛け売り,付けでの支払い(cf. 通帳) | 書き言葉により可能となる非同期コミュニケーション |
貨幣は価値を貯蔵できる(=貯金) | 言語は価値を貯蔵できる(=記憶)? |
金貨,銀貨,銭貨,紙幣のあいだの換金性 | 言語(変種)間の翻訳可能性 |
偽造・変造・私銭の違法性 | 規範から外れた語法に対する批判 |
貨幣の収集(趣味のコレクション;貨幣で貨幣を買う) | 語彙の収集(メタ言語的な関心;言語で言語を説明する) |
貨幣は諸悪の根源 | 言葉は諸悪の根源? |
貨幣の魔術性(魔除け,悪魔払い;cf. 硬貨に記された言葉や絵) | 言語の魔術性 |
商品価値のシンボルのなかのシンボル | 概念価値のシンボルのなかのシンボル? (cf. semantic primitive) |
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